IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-信号変換回路 図1
  • 特開-信号変換回路 図2
  • 特開-信号変換回路 図3
  • 特開-信号変換回路 図4
  • 特開-信号変換回路 図5
  • 特開-信号変換回路 図6
  • 特開-信号変換回路 図7
  • 特開-信号変換回路 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008506
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】信号変換回路
(51)【国際特許分類】
   H03H 11/32 20060101AFI20240112BHJP
   H03H 7/42 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H03H11/32
H03H7/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110438
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】本多 悠里
【テーマコード(参考)】
5J098
【Fターム(参考)】
5J098AA02
5J098AA03
5J098AA11
5J098AA14
5J098AB11
5J098AB12
5J098AC06
5J098AC14
5J098AD20
5J098GA02
(57)【要約】
【課題】設計の自由度の低下を抑制する。
【解決手段】差動信号を構成する第1信号及び第2信号をシングルエンドの第3信号に変換する信号変換回路であって、1次巻線の一端に第1信号が入力され、1次巻線の他端に第2信号が入力され、2次巻線の一端から第1信号と同じ極性の第3信号が出力され、2次巻線の他端が基準電位に電気的に接続されたトランスと、1次巻線の一端と基準電位との間に電気的に接続された第1コンデンサと、1次巻線の他端と2次巻線の一端との間に電気的に接続された負性容量と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動信号を構成する第1信号及び第2信号をシングルエンドの第3信号に変換する信号変換回路であって、
1次巻線の一端に前記第1信号が入力され、前記1次巻線の他端に前記第2信号が入力され、2次巻線の一端から前記第1信号と同じ極性の前記第3信号が出力され、前記2次巻線の他端が基準電位に電気的に接続されたトランスと、
前記1次巻線の一端と基準電位との間に電気的に接続された第1コンデンサと、
前記1次巻線の他端と前記2次巻線の一端との間に電気的に接続された負性容量と、
を含む、
信号変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載の信号変換回路であって、
前記負性容量は、インダクタである、
信号変換回路。
【請求項3】
請求項1に記載の信号変換回路であって、
前記負性容量は、
能動素子を含むアクティブ負性容量回路である、
信号変換回路。
【請求項4】
請求項3に記載の信号変換回路であって、
前記アクティブ負性容量回路は、
コレクタ又はドレインが、第1端子に電気的に接続され、ベース又はゲートが第2端子に電気的に接続された第1トランジスタと、
コレクタ又はドレインが、前記第2端子に電気的に接続され、ベース又はゲートが前記第1端子に電気的に接続された第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのエミッタ又はソースに電気的に接続された第1定電流源と、
前記第2トランジスタのエミッタ又はソースに電気的に接続された第2定電流源と、
前記第1トランジスタのエミッタ又はソースと、前記第2トランジスタのエミッタ又はソースと、の間に電気的に接続された第2コンデンサと、
を含む、
信号変換回路。
【請求項5】
請求項4に記載の信号変換回路であって、
前記アクティブ負性容量回路は、
エミッタ又はソースが前記第1トランジスタのベース又はゲートに電気的に接続され、ベース又はゲートが前記第2端子に電気的に接続され、コレクタ又はドレインが電源電位に電気的に接続された第3トランジスタと、
エミッタ又はソースが前記第2トランジスタのベース又はゲートに電気的に接続され、ベース又はゲートが前記第1端子に電気的に接続され、コレクタ又はドレインが電源電位に電気的に接続された第4トランジスタと、
を更に含む、
信号変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号をシングルエンド信号に変換する信号変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスを用いて、電力増幅器などが出力する差動信号をシングルエンド信号に変換する場合、1次巻線と2次巻線との間に存在する寄生容量の影響により、差動信号が入力される1次巻線の両端の入力インピーダンスに非対称性が生じる。
【0003】
関連する技術として、下記の特許文献1の第6図及びその説明には、シングルエンド信号を差動信号に変換する場合に、1次巻線と2次巻線との間の寄生容量により、1次巻線に非対称性が生じることが示されている。
【0004】
特許文献1の第7図及びその説明には、上記の非対称性を解決するために、1次巻線のセンタータップを接地し、1次巻線の一端に信号を入力し、1次巻線の他端をフローティングにすることが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2938082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した通り、特許文献1には、寄生容量の影響を低減するトランスの構成技術が記載されている。しかしながら、特許文献1記載の技術では、寄生容量を含めてトランスを設計する必要がある。従って、特許文献1記載の技術では、インピーダンスの十分大きな変換比が得られないなど、設計の自由度が低下する問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、設計の自由度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面の信号変換回路は、差動信号を構成する第1信号及び第2信号をシングルエンドの第3信号に変換する信号変換回路であって、1次巻線の一端に第1信号が入力され、1次巻線の他端に第2信号が入力され、2次巻線の一端から第1信号と同じ極性の第3信号が出力され、2次巻線の他端が基準電位に電気的に接続されたトランスと、1次巻線の一端と基準電位との間に電気的に接続された第1コンデンサと、1次巻線の他端と2次巻線の一端との間に電気的に接続された負性容量と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設計の自由度の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、比較例の信号変換回路の構成を示す図である。
図2図2は、本開示の信号変換回路の原理を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態の信号変換回路の構成を示す図である。
図4図4は、第2の実施の形態の信号変換回路の概略平面図である。
図5図5は、第3の実施の形態の信号変換回路の構成を示す図である。
図6図6は、第3の実施の形態の信号変換回路の負性容量回路の構成を示す図である。
図7図7は、第4の実施の形態の負性容量回路の構成を示す図である。
図8図8は、第5の実施の形態の負性容量回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の信号変換回路の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0012】
<本開示の原理及び比較例>
以下、本開示の原理について説明するが、本開示の原理の理解を容易にするために、比較例について先に説明する。
【0013】
(比較例)
図1は、比較例の信号変換回路の構成を示す図である。
【0014】
信号変換回路201は、差動信号を構成する第1入力信号21及び第2入力信号22を、シングルエンドの出力信号23に変換する。
【0015】
増幅器31は、トランジスタ41を含む。トランジスタ41は、第1極性の第1入力信号21を、コレクタ又はドレインから信号変換回路201の第1入力端子IN+に出力する。第1極性は、正極性が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0016】
増幅器32は、トランジスタ42を含む。トランジスタ42は、第2極性の第2入力信号22を、コレクタ又はドレインから信号変換回路201の第2入力端子IN-に出力する。第2極性は、負極性が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0017】
第1入力信号21と第2入力信号22とは、振幅の大きさが同じ、且つ、位相が逆である(位相が180度異なる)ものとする。
【0018】
信号変換回路201は、トランス10を含む。トランス10は、第1巻線11と、第2巻線12と、を含む。第1巻線11と第2巻線12とは、電磁界的に結合されている。
【0019】
第1巻線11の一端11aは、第1入力端子IN+に電気的に接続されている。第1巻線11の他端11bは、第2入力端子IN-に電気的に接続されている。
【0020】
第1巻線11のセンタータップ11cは、直流電源51の高電位側端に電気的に接続されている。直流電源51の低電位側端は、基準電位に電気的に接続されている。基準電位は、接地電位が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0021】
直流電源51は、第1巻線11を介して、トランジスタ41及び42のコレクタ又はドレインにバイアス電圧を与えるが、本開示はこれに限定されない。トランジスタ41及び42のコレクタ又はドレインへは、第1巻線11を介するのではなく、チョークコイル(図示せず)を介してバイアス電圧が夫々与えられても良い。
【0022】
第2巻線12の一端12aは、信号変換回路201の出力端子OUTに電気的に接続されている。第2巻線12の他端12bは、基準電位に電気的に接続されている。
【0023】
出力端子OUTからは、シングルエンドの出力信号23が出力される。出力信号の極性は、第1極性である。出力信号23の振幅は、第1入力信号21及び第2入力信号22と比較して、相対的に大きい。
【0024】
トランス10は、第1巻線11と第2巻線12とを巻き合わせて構成されている。そのため、第1巻線11の一端11aと第2巻線12の一端12aとの間には、寄生容量CP1が生ずる。第1巻線11の他端11bと第2巻線12の他端12bとの間には、寄生容量CP2が生ずる。
【0025】
第2巻線12の一端12aと、他端12bとでは、電圧波形が異なる。そのため、第1入力端子IN+の側と、第2入力端子IN-の側とでは、動作の非対称性が現れる。
【0026】
即ち、第1入力端子IN+の側は、寄生容量CP1を介して、出力信号23の影響を受ける。一方、第2入力端子IN-の側は、寄生容量CP2が負荷として追加されるが、寄生容量CP2の接続先は基準電位であり、出力信号23の影響を受けない。
【0027】
これにより、第1入力端子IN+の入力インピーダンスと、第2入力端子IN-の入力インピーダンスと、が異なることになる。つまり、トランジスタ41の負荷インピーダンスと、トランジスタ42の負荷インピーダンスと、が異なることになる。
【0028】
従って、第1入力信号21と第2入力信号22とは、振幅が異なったり、位相差が180°からずれたりしてしまう。或いは、第1入力信号21又は第2入力信号22の信号波形が乱れたりしてしまう。
【0029】
(本開示の原理)
図2は、本開示の信号変換回路の原理を示す図である。
【0030】
信号変換回路1は、信号変換回路201(図1参照)と比較して、容量Cと、負性容量-Cと、を含む。ここで、C>0であり、-C<0である。なお、負性容量は、図1では容量の記号を用いて記載されているものの、便宜上容量として示しているだけであり、実際は容量素子から構成されるわけではない。例えば、後述のとおり、トランジスタを合成した回路や、二酸化ハフニウムといった材料を用いて構成される回路である。
【0031】
容量Cの一端は、増幅器31及び第1入力端子IN+に電気的に接続されている。容量Cの他端は、基準電位に電気的に接続されている。
【0032】
負性容量-Cの一端は、第2入力端子IN-及び第1巻線11の他端11bに電気的に接続されている。負性容量-Cの他端は、第2巻線12の一端12a及び出力端子OUTに電気的に接続されている。
【0033】
ここで、第1入力信号21、第2入力信号22及び出力信号23の角周波数をωとし、第1入力信号21の電圧をVとし、第2入力信号22の電圧を-Vとし、出力信号23の電圧をaVとする。aは、正の数である。
【0034】
寄生容量CP1の両端間の電圧は、V(1-a)である。従って、寄生容量CP1に流れる電流I11は、次の式(1)で表される。
11=V(1-a)ωCP1 ・・・(1)
【0035】
寄生容量CP2の両端間の電圧は、-Vである。従って、寄生容量CP2に流れる電流I22は、次の式(2)で表される。
22=-VωCP2 ・・・(2)
【0036】
本開示は、非対称性を解消するために、次の2つの対策を行う。
【0037】
第1の対策として、容量Cの一端が、第1入力端子IN+に電気的に接続されている。容量Cの他端は、基準電位に電気的に接続されている。
【0038】
容量Cの値は、寄生容量CP2の値とほぼ同じに設定(例えば、容量Cの値が、容量Cp2の値に比べて±30%以内の差分を有する場合も含む)する。
【0039】
容量Cの両端間の電圧は、Vである。従って、容量Cに流れる電流I12は、次の式(3)で表される。
12=VωC
=VωCP2 ・・・(3)
【0040】
式(2)及び式(3)を参照すると、電流I12は、電流I22と比べて極性が反転しており、電流I12と電流I22とは対称になる。
【0041】
第2の対策として、負の静電容量を持つ負性容量-Cが、第2入力端子IN-と出力端子OUTとの間に電気的に接続されている。
【0042】
容量-Cの両端間の電圧は、-V(1+a)ある。従って、容量-Cに流れる電流I21は、次の式(4)で表される。
21=V(1+a)ωC ・・・(4)
【0043】
次の式(5)が成立するように、負性容量-Cの値を設定する。
=((a-1)/(a+1))CP1 ・・・(5)
【0044】
式(5)を式(4)に代入すると、次の式(6)が得られる。
21=V(1+a)ωC
=V(1+a)ω((a-1)/(a+1))CP1
=V(a-1)ωCP1
=-V(1-a)ωCP1 ・・・(6)
【0045】
式(1)及び式(6)を参照すると、電流I21は、電流I11と比べて極性が反転しており、電流I21と電流I11とは対称になる。
【0046】
上記のように、本開示は、容量C及び負性容量-Cを追加することで、寄生容量CP1及び寄生容量CP2に起因する非対称性を解消することができる。これにより、本開示は、第1入力端子IN+及び第2入力端子IN-の入力インピーダンスの対称性を保つことができ、増幅器31及び増幅器32の負荷インピーダンスの対称性を保つことができる。
【0047】
<第1の実施の形態>
図3は、第1の実施の形態の信号変換回路の構成を示す図である。
【0048】
信号変換回路1Aは、信号変換回路1(図2参照)と比較して、負性容量-Cの一例として、インダクタLを含む。
【0049】
信号変換回路1Aでは、負性容量-Cを簡便に実現できるインダクタLを用いて、非対称性の解消を実現した。
【0050】
負性容量-CとインダクタLとのインピーダンスを比較すると、次の式(7)の通りとなる。
jωL=j/(ωC) ・・・(7)
【0051】
つまり、インダクタLの値を次の式(8)のように設定すれば、各角周波数ωにおいて非対称性を解消できる。
=1/(ω) ・・・(8)
【0052】
信号変換回路1Aは、周波数依存性が存在するものの、負性容量-Cを用いることなく、増幅器31及び増幅器32の負荷インピーダンスの非対称性を解消することができる。
【0053】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の構成要素のうち、第1の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
図4は、第2の実施の形態の信号変換回路の概略平面図である。
【0055】
第2の実施の形態は、信号変換回路1A(図3参照)を電力増幅器の出力整合回路へ適用した場合に、平面上に配置した具体例である。
【0056】
信号変換回路1Aは、基板61に形成されている。第1巻線11と第2巻線12とは、基板61の異なる層に形成されていることとするが、本開示はこれに限定されない。第1巻線11と第2巻線12とは、基板61の同じ層に形成されても良い。
【0057】
第1巻線11の第1入力端子IN+及び第2入力端子IN-は、図4中の左側に形成されている。第1巻線11は、略円形状を有する。第1巻線11のセンタータップ11cは、第1巻線11の図4中の右端に位置する。センタータップ11cには、直流電源51からバイアス電圧が入力される。
【0058】
第2巻線12の出力端子OUTは、図4中の右側に形成されている。第2巻線12は、第1巻線11の内側を略1周した後、第1巻線11を跨いで、第1巻線の外側を略1周している。第2巻線12の他端は、基準電位に電気的に接続されている。
【0059】
第1巻線11に流れる電流71及び第2巻線12に流れる電流72は、第1巻線11及び第2巻線12の磁界の向きが共通になる方向に、流れる。
【0060】
出力整合回路では、負荷インピーダンスよりも出力インピーダンス(例えば、50Ω)の方が大きい場合が多い。従って、第2巻線12のインダクタンス値は、第1巻線11のインダクタンス値よりも大きい場合が多い。
【0061】
容量C及びインダクタLは、例えば、SMD(Surface Mount Device:表面実装部品)であることが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0062】
容量Cは、第1入力端子IN+の近傍に配置することが例示されるが、本開示はこれに限定されない。例えば、容量Cと第1入力端子IN+との間の距離は、他の構成要素と第1入力端子IN+との間の距離よりも、短くすることが例示される。
【0063】
インダクタLのインダクタンス値は、比較的大きな値となる場合が多い。例えば、信号の周波数を1.85GHz(ギガヘルツ)とし、第2巻線12と第1巻線11との巻線比を2:1とし、CP1=CP2=C=1.0pF(ピコファラド)とした場合、インダクタLのインダクタンス値は、15.5nH(ナノヘンリー)となる。従って、インダクタLは、直列接続されている配線62及び配線63のインダクタンス値も含めて、設計することができる。
【0064】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の信号変換回路1Aを基板61上に実現でき、物理的に回路を実現できる。
【0065】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態の構成要素のうち、他の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図5は、第3の実施の形態の信号変換回路の構成を示す図である。
【0067】
信号変換回路1Bは、信号変換回路1(図2参照)と比較して、負性容量-Cの一例として、負性容量回路81を含む。負性容量回路81は、能動素子(トランジスタ)を用いて実現されたアクティブ負性容量回路である。
【0068】
負性容量回路81の第1端子81a及び第2端子81bは、後で説明するように、電源電位VCCに電気的に接続されており、直流レベルを有する。そこで、第2入力端子IN-と第1端子81aとの間に、DCカットコンデンサCDCが設けられている。なお必要に応じて出力側にもDCカットコンデンサCDC2を追加しても良い。
【0069】
図6は、第3の実施の形態の信号変換回路の負性容量回路の構成を示す図である。
【0070】
負性容量回路81は、抵抗91及び抵抗92と、トランジスタ93及びトランジスタ94と、コンデンサ95と、定電流源96及び定電流源97と、を含む。
【0071】
トランジスタ93及びトランジスタ94はバイポーラトランジスタとするが、本開示はこれに限定されない。トランジスタ93及びトランジスタ94は、FET(Field Effect Transistor)であっても良い。トランジスタ93及びトランジスタ94がFETの場合、ソースがエミッタに相当し、ゲートがベースに相当し、ドレインがコレクタに相当する。
【0072】
抵抗91の抵抗値と抵抗92の抵抗値とは同じとするが、本開示はこれに限定されない。トランジスタ93の電気的特性とトランジスタ94の電気的特性とは同じとするが、本開示はこれに限定されない。定電流源96の電流値と定電流源97の電流値とは同じとするが、本開示はこれに限定されない。
【0073】
抵抗91及び抵抗92の抵抗値は、電源電位VCCやトランジスタ93及びトランジスタ94の電気的特性などに基づいて、設定される。
【0074】
抵抗91の一端は、電源電位VCCに電気的に接続されている。抵抗91の他端は、第1端子81a、トランジスタ93のコレクタ、及び、トランジスタ94のベースに、電気的に接続されている。
【0075】
抵抗92の一端は、電源電位VCCに電気的に接続されている。抵抗92の他端は、第2端子81b、トランジスタ94のコレクタ、及び、トランジスタ93のベースに、電気的に接続されている。
【0076】
トランジスタ93のベースは、第2端子81bに電気的に接続されている。トランジスタ94のベースは、第1端子81aに電気的に接続されている。
【0077】
コンデンサ95の一端は、トランジスタ93のエミッタに電気的に接続されている。コンデンサ95の他端は、トランジスタ94のエミッタに電気的に接続されている。
【0078】
定電流源96は、トランジスタ93のエミッタと基準電位との間に電気的に接続されている。
【0079】
定電流源97は、トランジスタ94のエミッタと基準電位との間に電気的に接続されている。
【0080】
第1端子81aの直流レベルは、電源電位VCCから抵抗91の電圧降下分を引いたレベルとなる。同様に、第2端子81bの直流レベルは、電源電位VCCから抵抗92の電圧降下分を引いたレベルとなる。
【0081】
トランジスタ93は、直流的には、コレクタバイアス電圧及びベースバイアス電圧が与えられ、コレクタ電流I31及びエミッタ電流I32が流れる。同様に、トランジスタ94は、直流的には、コレクタバイアス電圧及びベースバイアス電圧が与えられ、コレクタ電流I41及びエミッタ電流I42が流れる。
【0082】
第1端子81aの電圧が交流的に下降し且つ第2端子81bの電圧が交流的に上昇する場合の負性容量回路81の動作について説明する。
【0083】
トランジスタ93は、ベース電圧が上昇するので、コレクタ電流I31及びエミッタ電流I32が増加する。一方、トランジスタ94は、ベース電圧が下降するので、コレクタ電流I41及びエミッタ電流I42が減少する。
【0084】
エミッタ電流I32の増加分は、コンデンサ95を介して、定電流源97に流れる。
【0085】
第1端子81aから交流的に流入する電流は、コレクタ電流I31が増加するので、増加する。第2端子81bから交流的に流入する電流は、コレクタ電流I41が減少するので、減少する。
【0086】
第1端子81aの電圧が交流的に上昇し且つ第2端子81bの電圧が交流的に下降する場合の負性容量回路81の動作は、上記と逆になる。
【0087】
インダクタLを負性容量の代わりに用いた場合、ある角周波数ωでのみω=1/(ω)が成立する。これに比較してトランジスタ93及びトランジスタ94を用いると、広帯域に動作可能である。従って、負性容量回路81は、インダクタLと比較して、広帯域な負性容量を実現できる。
【0088】
これにより、信号変換回路1Bは、信号変換回路1及び信号変換回路1Aと比較して、広帯域に非対称性を解消することができる。
【0089】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態の構成要素のうち、他の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
図7は、第4の実施の形態の負性容量回路の構成を示す図である。
【0091】
負性容量回路81Aは、負性容量回路81(図6参照)と比較して、抵抗91及び抵抗92に代えて、トランジスタ98及びトランジスタ99を含む。
【0092】
トランジスタ98及びトランジスタ99はバイポーラトランジスタとするが、本開示はこれに限定されない。トランジスタ98及びトランジスタ99は、FETであっても良い。
【0093】
トランジスタ98の電気的特性とトランジスタ99の電気的特性とは同じとするが、本開示はこれに限定されない。
【0094】
トランジスタ98のコレクタは、電源電位VCCに電気的に接続されている。トランジスタ98のベースは、第2端子81bに電気的に接続されている。トランジスタ98のエミッタは、トランジスタ93のベースに電気的に接続されている。つまり、トランジスタ98は、エミッタフォロワ接続されている。
【0095】
トランジスタ99のコレクタは、電源電位VCCに電気的に接続されている。トランジスタ99のベースは、第1端子81aに電気的に接続されている。トランジスタ99のエミッタは、トランジスタ94のベースに電気的に接続されている。つまり、トランジスタ99は、エミッタフォロワ接続されている。
【0096】
負性容量回路81Aは、負性容量回路81と比較して、エミッタフォロワ接続されたトランジスタ98及びトランジスタ99を含むことにより、第1端子81a及び第2端子81bに入力される電圧の許容最大電圧振幅を大きくすることができる。なお、ここでは図6に記載していた抵抗91及び92を省略して記載している。第1端子81a及び第2端子81bに適切な直流バイアスが印加されれば、抵抗91及び92は省略できる。
【0097】
<第5の実施の形態>
第5の実施の形態の構成要素のうち、他の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
図8は、第5の実施の形態の負性容量回路の構成を示す図である。
【0099】
負性容量回路81Bは、負性容量回路81(図6参照)と比較して、抵抗91及び抵抗92並びにトランジスタ93及びトランジスタ94に代えて、トランジスタ101及びトランジスタ102を含む。トランジスタ101及びトランジスタ102は、FETである。
【0100】
トランジスタ101の電気的特性とトランジスタ102の電気的特性とは同じとするが、本開示はこれに限定されない。
【0101】
トランジスタ101のドレインは、第1端子81aに電気的に接続されている。トランジスタ101のゲートは、第2端子81bに電気的に接続されている。トランジスタ101のソースは、コンデンサ95の一端及び定電流源96に電気的に接続されている。
【0102】
トランジスタ102のドレインは、第2端子81bに電気的に接続されている。トランジスタ102のゲートは、第1端子81aに電気的に接続されている。トランジスタ102のソースは、コンデンサ95の他端及び定電流源97に電気的に接続されている。
【0103】
このように、負性容量回路81Bは、能動素子としてFETを利用して実現することができる。なお、ここでは図6に記載していた抵抗91及び92を省略して記載している。第1端子81a及び第2端子81bに適切な直流バイアスが印加されれば、抵抗91及び92は省略できる。
【0104】
<付記>
第3から第5の実施の形態では、能動素子(トランジスタ)を使用して負性容量回路を実現したが、本開示はこれに限定されない。負性容量回路は、HfO(二酸化ハフニウム)などの負性容量特性を有する材料を用いて実現することも可能である。
【0105】
<本開示の構成例>
本開示は、下記の構成をとることもできる。
【0106】
(1)
差動信号を構成する第1信号及び第2信号をシングルエンドの第3信号に変換する信号変換回路であって、
1次巻線の一端に第1信号が入力され、1次巻線の他端に第2信号が入力され、2次巻線の一端から第1信号と同じ極性の第3信号が出力され、2次巻線の他端が基準電位に電気的に接続されたトランスと、
1次巻線の一端と基準電位との間に電気的に接続された第1コンデンサと、
1次巻線の他端と2次巻線の一端との間に電気的に接続された負性容量と、
を含む、
信号変換回路。
【0107】
(2)
上記(1)に記載の信号変換回路であって、
負性容量は、インダクタである、
信号変換回路。
【0108】
(3)
上記(1)に記載の信号変換回路であって、
負性容量は、
能動素子を含むアクティブ負性容量回路である、
信号変換回路。
【0109】
(4)
上記(3)に記載の信号変換回路であって、
アクティブ負性容量回路は、
コレクタ又はドレインが、第1端子に電気的に接続され、ベース又はゲートが第2端子に電気的に接続された第1トランジスタと、
コレクタ又はドレインが、第2端子に電気的に接続され、ベース又はゲートが第1端子に電気的に接続された第2トランジスタと、
第1トランジスタのエミッタ又はソースに電気的に接続された第1定電流源と、
第2トランジスタのエミッタ又はソースに電気的に接続された第2定電流源と、
第1トランジスタのエミッタ又はソースと、第2トランジスタのエミッタ又はソースと、の間に電気的に接続された第2コンデンサと、
を含む、
信号変換回路。
【0110】
(5)
上記(4)に記載の信号変換回路であって、
アクティブ負性容量回路は、
エミッタ又はソースが第1トランジスタのベース又はゲートに電気的に接続され、ベース又はゲートが第2端子に電気的に接続され、コレクタ又はドレインが電源電位に電気的に接続された第3トランジスタと、
エミッタ又はソースが第2トランジスタのベース又はゲートに電気的に接続され、ベース又はゲートが第1端子に電気的に接続され、コレクタ又はドレインが電源電位に電気的に接続された第4トランジスタと、
を更に含む、
信号変換回路。
【0111】
なお、上記した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1、201 信号変換回路
10 トランス
11 第1巻線
12 第2巻線
31、32 増幅器
41、42、93、94、98、99、101、102 トランジスタ
51 直流電源
61 基板
81 負性容量回路
91、92 抵抗
95 コンデンサ
96、97 定電流源
P1、CP2 寄生容量
容量
-C 負性容量
インダクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8