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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085062
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】リードフレーム及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20240619BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H01L23/48 T
H01L21/52 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199387
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】玉手 登志幸
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AB02
(57)【要約】
【課題】想定外のはんだの流れ出しを抑制することができるとともに、樹脂封止を行って半導体パッケージとしたときには、ダイパッドと樹脂との剥離を抑制することができるリードフレームを提供する。
【解決手段】半導体チップ20の一方の面が接続される半導体チップ接続部11を有する板状のダイパッド10を備えるリードフレーム1であって、ダイパッド10は、半導体チップ接続部11の周縁部11aに沿って形成された凹溝12を有し、凹溝12における半導体チップ接続部11の側の壁面を第1壁面12aとしたとき、凹溝12の第1壁面12aと対向する側には、凹溝12の開口側に突出した突壁13が半導体チップ接続部11の周縁部11aに沿って形成され、当該突壁13は、所定の傾斜角度で第1壁面12aの側に傾斜しているリードフレーム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの一方の面が接続される半導体チップ接続部を有する板状のダイパッドを備えるリードフレームであって、
前記ダイパッドは、前記半導体チップ接続部の周縁部に沿って形成された凹溝を有し、
前記凹溝における前記半導体チップ接続部の側の壁面を第1壁面としたとき、
前記凹溝の前記第1壁面と対向する側には、前記凹溝の開口側に突出した突壁が前記半導体チップ接続部の周縁部に沿って形成され、当該突壁は、所定の傾斜角度で前記第1壁面の側に傾斜していることを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記半導体チップ接続部は、当該半導体チップ接続部を平面視したときの外形サイズが前記半導体チップを平面視したときの外形サイズより小サイズに設定されており、
前記半導体チップを前記半導体チップ接続部に接続したときに、前記半導体チップは当該半導体チップの周縁部が前記半導体チップ接続部の周縁部よりも外側に張り出すように前記半導体チップ接続部に接続され、
前記凹溝は、前記半導体チップを前記半導体チップ接続部に接続したときに、前記半導体チップの周縁部が前記第1壁面と前記突壁との間に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記突壁の傾斜角度は、前記半導体チップが前記半導体チップ接続部にはんだによって接続されたときに、前記凹溝に形成されるはんだフィレットの表面と前記突壁の前記第1壁面の側を向く壁面との間に隙間が形成される角度に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項4】
前記ダイパッドには、前記凹溝を横切る方向の断面形状がV字形状をなす溝が、前記突壁との間に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項5】
前記第1壁面は、前記凹溝の開口側の角部から前記凹溝の底面に向かって下り傾斜となるテーパー面となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項6】
前記凹溝及び前記突壁は、前記半導体チップ接続部の周縁部の全周に渡って連続的に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項7】
前記凹溝及び前記突壁は、前記半導体チップ接続部の周縁部の全周に渡って断続的に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項8】
リードフレームと、当該リードフレームが備えるダイパッドに実装されている半導体チップとが樹脂封止されてなる半導体パッケージであって、
前記リードフレームは、請求項1又は2に記載のリードフレームであることを特徴とする半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップをダイパッド上に実装する際においては、想定外のはんだの流れ出しが問題となる。想定外のはんだの流れ出しが生じると、ダイパッドと半導体チップとの「はんだ厚」にばらつきが生じて、ダイパッドと半導体チップとの間の「はんだ厚」が適切なものとならなかったり、想定外の箇所にまではんだが流れてしまい、短絡など回路に悪影響を及ぼしたりするといった問題が生じる。また、想定外のはんだの流れ出しの問題に加えて、ダイパッド上に半導体チップを実装した後に樹脂封止を行って半導体パッケージを製造したときにダイパッドと樹脂との剥離が問題となる。
【0003】
このような問題のうち、ダイパッドと樹脂との剥離を抑制する構造を有するものとしては、例えば、ダイパッドにおける半導体チップ接続部の外周部に凹部を設けたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
図6は、特許文献1に記載されている半導体パッケージ900を示す図である。図6(a)は特許文献1に記載されている半導体パッケージ900を平面視した図である。また、図6(b)及び図6(c)は、図6(a)のa-a矢視拡大断面図であり、半導体チップ920を囲むように形成されている凹部としての複数の係合穴930のうちの1つの係合穴930の構造を示している。ここで、図6(b)は係合穴930の構造の第1例を示し、図6(c)は係合穴930の構造の第2例を示している。
【0005】
特許文献1に記載されている従来の半導体パッケージ900は、図6(a)に示すように、ダイパッド910上に搭載されている半導体チップ920を囲むように、係合穴930が複数配列されている。そして、係合穴930には、図6(b)及び図6(c)に示すように、当該係合穴930の内周面から径方向に突出する突起931が設けられている。図6(b)示す第1例では、突起931が係合穴930の内周に沿って周方向全体に渡って形成されており、図6(c)示す第2例では、突起931が周方向の一部のみの形成されている。
【0006】
特許文献1に記載の半導体パッケージ900が、このような構造の係合穴930を有することによって、樹脂封止した際には、溶融した樹脂が係合穴930の底面932と突起931との間に入り込んで、その後、硬化した樹脂が突起931と係合することにより、ダイパッド910と樹脂とが剥離することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-114190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の半導体パッケージ900においては、ダイパッド910と樹脂との剥離を抑制することができるが、想定外のはんだの流れ出しを抑制することはできない。すなわち、特許文献1に記載の半導体パッケージ900においては、半導体チップ920を囲むように配列されている複数の係合穴930は、隣接する係合穴930の間にそれぞれ隙間940(図6(a)参照。)を有している。このため、隣接する係合穴930の間の隙間940をはんだがすり抜けてしまう可能性があり、想定外のはんだの流れ出しを抑制する効果は期待できない。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、想定外のはんだの流れ出しを抑制することができるとともに、樹脂封止を行って半導体パッケージとしたときには、ダイパッドと樹脂との剥離を抑制することができるリードフレームを提供することを目的とする。また、リードフレームとして本発明のリードフレームを用いた半導体パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のリードフレームは、半導体チップの一方の面が接続される半導体チップ接続部を有する板状のダイパッドを備えるリードフレームであって、前記ダイパッドは、前記半導体チップ接続部の周縁部に沿って形成された凹溝を有し、前記凹溝における前記半導体チップ接続部の側の壁面を第1壁面としたとき、前記凹溝の前記第1壁面と対向する側には、前記凹溝の開口側に突出した突壁が前記半導体チップ接続部の周縁部に沿って形成され、当該突壁は、所定の傾斜角度で前記第1壁面の側に傾斜していることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体パッケージは、リードフレームと、当該リードフレームが備えるダイパッドに実装されている半導体チップとが樹脂封止されてなる半導体パッケージであって、前記リードフレームは、本発明のリードフレームであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリードフレームは、ダイパッドにおける半導体チップ接続部の周縁部に沿って凹溝が形成されており、当該凹溝の第1壁面(半導体チップ接続部側の壁面)と対向する側には、凹溝の開口側に突出した突壁が半導体チップ接続部の周縁部に沿って形成されている。そして、当該突壁は、所定の傾斜角度で第1壁面の側に傾斜している。これにより、半導体チップを半導体チップ接続部にはんだにより接続する際においては、凹溝に流れ込んで行くはんだは、突壁により流れが確実に阻止されるため、想定外のはんだの流れ出しを抑制できる。また、樹脂封止を行って半導体パッケージとしたときには、硬化した樹脂が突壁に係合するため、突壁がモールド樹脂をロックするモールドロック機能を有するものとなり、ダイパッドと樹脂との剥離を抑制できる。
【0013】
また、本発明の半導体パッケージは、リードフレームとして本発明のリードフレームを用いていることにより、ダイパッドと樹脂とが剥離しにくいものとなり、さらに、半導体チップと半導体チップ接続部の間の「はんだ厚」が適切なものとなっているとともに、短絡など回路への悪影響が防止されたものとなっている。このように、本発明の半導体パッケージは、リードフレームとして本発明に係るリードフレームを用いていることにより、樹脂が剥離しにくく耐久性に優れ、信頼性の高い高品質な半導体パッケージとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るリードフレーム1の構成要素であるダイパッド10に半導体チップ20が搭載された状態を示す図である。
図2図1の要部を拡大して示す図である。
図3】突壁13を形成する工程の一例を模式的に示す図である。
図4】半導体チップ接続部11と半導体チップ20との関係を説明する図である。
図5】実施形態に係るリードフレーム1を用いた半導体パッケージ2を示す断面図である。
図6】特許文献1に記載されている半導体パッケージ900を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のリードフレーム及び半導体パッケージについて説明する。まず、本発明のリードフレームの実施形態について説明する。
【0016】
図1は、実施形態に係るリードフレーム1のダイパッド10に半導体チップ20が実装された状態を示す図である。なお、図1において、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A矢視断面図である。
【0017】
図2は、図1の要部を拡大して示す断面図である。なお、図2図1(b)における破線枠B内を拡大して示す図であり、図1と同一箇所には同一符号が付されているが、図1においては示されていない符号も存在する。
【0018】
図1及び図2に示すように、ダイパッド10は半導体チップ20を接続するための半導体チップ接続部11を有している。半導体チップ20は一方の面に設けられている第1電極21が半導体チップ接続部11に接続され、他方の面に設けられている第2電極22が接続子30を介してリード端子40に接続されている。なお、実施形態に係るリードフレーム1においては、半導体チップ20及び半導体チップ接続部11は平面視形状が矩形であるとして説明する。また、凹溝12の半導体チップ接続部11側の壁面を凹溝12の第1壁面12aとして説明する。
【0019】
半導体チップ接続部11の周縁部11aには、当該周縁部11aに沿って凹溝12が形成されている。なお、半導体チップ接続部11の周縁部11aというのは、半導体チップ接続部11の外周を形成する縁部であり、これは凹溝12の開口における第1壁面12a側の角部12bともいえる。
【0020】
凹溝12の第1壁面12aは、半導体チップ接続部11の周縁部11aから凹溝12の底面12cに向かって下り傾斜のテーパー面となっている。上述したように、半導体チップ接続部11の周縁部11aは、凹溝12の開口における第1壁面12a側の角部12bでもあるため、第1壁面12aは、凹溝12の開口側の角部12bから凹溝12の底面12cに向かって下り傾斜のテーパー面となっていると言い換えることもできる。
【0021】
凹溝12は、半導体チップ接続部11に半導体チップ20をはんだによって接続する際に、溶融して流れ出たはんだを溜める「はんだ溜め」の機能を有している。図1及び図2においては、硬化した状態のはんだが示されており、硬化した状態のはんだを「はんだ60」とする。これは、後述する図5においても同様である。なお、実施形態に係るリードフレーム1においては、凹溝12は、半導体チップ接続部11を囲むように半導体チップ接続部11の周縁部11aの全周に渡って連続的に形成されている。
【0022】
また、凹溝12の第1壁面12aと対向する側には、凹溝12の開口側に突出した突壁13が形成されている。突壁13は、凹溝12の底面12cに対して90度未満(鋭角)の傾斜角度θ1を有して第1壁面12aの側に傾斜している。また、突壁13は凹溝12の周方向に沿って形成されている。具体的には、突壁13は、半導体チップ接続部11を囲むように半導体チップ接続部11の周縁部11aの全周に渡って連続的に形成されている。なお、突壁13の機能については後述する。
【0023】
続いて、図3を参照して突壁13を形成する工程の一例について説明する。図3において、図3(a)は突壁13が形成される前の凹溝12の断面図であり、図3(b)はパンチ50によるプレス加工によって突壁13が形成される様子を示す図であり、図3(c)は突壁13が形成された状態を示す図である。なお、図3においても、図1及び図2と同一箇所には同一符号が付されている。ここで、凹溝12の第1壁面12aに対向する面を凹溝12の第2壁面12dとして説明する。なお、第2壁面12dは、突壁13が形成される前の段階(図2(a)参照。)においては、凹溝12の底面12cとのなす角度は90度であるとする。
【0024】
図3(a)及び図3(b)に示すように、まず、ダイパッド10の表面10aにおいて、凹溝12の外側の所定位置(第2壁面12dから凹溝12の外方向の所定位置)をパンチ位置Pとし、当該パンチ位置Pにパンチ50の先端部50aが当接するようにプレス加工する。これによって、ダイパッド10の厚み方向に所定の深さd1まで、V字形状をなす溝15(V字溝15という。)を形成する。V字溝15の深さd1は、図3の例では、凹溝12の深さd2の例えば2/3程度としているが、これに限られるものではなく、もう少し深くてもよく、逆に、もう少し浅くてもよい。
【0025】
ここで、パンチ50においては、図3におけるx軸に沿った断面(凹溝12を横切る方向に沿った断面)がV字形状をなしている。なお、V字形状というのは、両面がテーパー面となっている形状に限られるものではなく、図3(b)に示すように、一方の面50bのみがテーパー面となっている形状もV字形状に含むものとする。
【0026】
そして、パンチ50の一方の面50b(テーパー面50bという。)が凹溝12の側を向くようにしてプレス加工すると、ダイパッド10上には、凹溝12を横切る方向の断面形状がV字形状をなすV字溝15が形成される。なお、「凹溝12を横切る方向」というのは、凹溝12の幅W方向(図3(a)参照。)である。このようにしてV字溝15が形成される際には、パンチ50のテーパー面50bがパンチ位置Pと凹溝12の第2壁面12dとの間のダイパッド10を凹溝12側に押圧することとなるため、第1壁面12a側に傾斜した突壁13が形成される。
【0027】
ここで、凹溝12の底面12cに対する突壁13の傾斜角度θ1は、パンチ50のテーパー面50bの傾斜角度θ2に依存する。これにより、例えば、パンチ50のテーパー面50bの傾斜角度θ2が仮に30度であって、パンチ50がz軸に沿った垂線に沿って下降した場合、突壁13はz軸に沿った垂線に対してほぼ30度で傾斜する。このため、突壁13と凹溝12の底面12cとの間の傾斜角度θ1はほぼ60度ということができる。
【0028】
このように、突壁13は、凹溝12の底面12cに対して90度未満の角度(鋭角)で傾斜することとなる。以下の説明においては、突壁13と凹溝12の底面12cとの間の傾斜角度θ1は、「突壁13の傾斜角度θ1」と略記する。なお、突壁13の傾斜角度θ1は、所望とする角度となるように設定する必要であるが、これについては後述する。
【0029】
また、突壁13の厚みt(図3(c)参照。)は、パンチ50によるダイパッド10上のパンチ位置Pと突壁13が形成される前の凹溝12の第2壁面12d(図3(a)参照。)との間の間隔となる。なお、図3の例では、突壁13の頂部は平坦である場合が示されているが尖っていてもよい。この場合、パンチ位置Pをダイパッド10上において凹溝12の第2壁面12dに限りなく近い位置とすればよい。
【0030】
図3に示すような加工を行うことにより、凹溝12の第1壁面12aと対向する側には、凹溝12の開口側に突出した突壁13が形成される。このように形成された突壁13の第1壁面12a側を向く壁面は、凹溝12の第2壁面12dということができる。このように、突壁13は凹溝12に一体的に形成されているといえる。換言すれば、凹溝12と突壁13とは一体的な構造として形成されているといえる。また、突壁13は、半導体チップ接続部11の周囲を囲むように形成されている凹溝12の周方向に沿って全周に渡って形成される。
【0031】
なお、突壁13を形成する際は、ダイパッド10を平面視したときの横方向(x軸に沿った方向)に延在する凹溝及び縦方向(y軸に沿った方向)に延在する凹溝のうち、一方の凹溝を優先して突壁を形成することを例示できる。一例を挙げて説明すると、図1(a)に示すように、横方向に延在する凹溝12の左端部から右端部までの間に突壁(突壁13aとする。)を形成し、そのあと、縦方向に延在する凹溝12に突壁(突壁13bとする。)を形成する。なお、ここでは、横方向に延在する凹溝12を優先して突壁13aを形成し、そのあとで縦方向に延在する凹溝12に突壁13bを形成する場合を例示したが、その逆であってもよい。
【0032】
続いて、半導体チップ接続部11と半導体チップ20との関係について図4を参照して説明する。なお、図4は半導体チップ接続部11に半導体チップ20を接続した状態が示されており、半導体チップ接続部11及び半導体チップ20のみが示されている。このため、半導体チップ接続部11及び半導体チップ20以外の構成要素は図示が省略されている。
【0033】
半導体チップ接続部11は、上述したように、平面視形状が半導体チップ20と同様に矩形をなしているが、当該半導体チップ接続部11を平面視したときの外形サイズは、半導体チップ20を平面視したときの外形サイズよりも一回り小サイズとなっている。すなわち、図4に示すように、半導体チップ接続部11のx軸に沿った長さLx1は、半導体チップ20のx軸に沿った長さLx2よりもやや短く、半導体チップ接続部11のy軸に沿った長さLy1は、半導体チップ20のy軸に沿った長さLy2よりもやや短い。なお、図4においては、半導体チップ接続部11と半導体チップ20とのサイズの違いが明確となるように、サイズの違いが誇張して描かれている。
【0034】
このように、半導体チップ接続部11を平面視したときの外形サイズは、半導体チップ20を平面視したときの外形サイズよりも一回り小サイズとなっている。そして、半導体チップ接続部11に半導体チップ20を接続する際には、半導体チップ20の周縁部20aが半導体チップ接続部11の周縁部11aから全周に渡って張り出した状態で接続されるものとする。
【0035】
このため、半導体チップ20が半導体チップ接続部11に接続された状態(図1図2及び図4参照。)においては、半導体チップ20は、周縁部20aが半導体チップ接続部11の周縁部11aから凹溝12の開口に「ひさし」のごとく張り出している張り出し部20b(図2及び図4参照。)が全周に渡って存在するものとなる。これは換言すると、凹溝12は、図1及び図2に示すように、半導体チップ20が半導体チップ接続部11に接続されたときに、半導体チップ20の周縁部20aが第1壁面12aと突壁13との間に位置するようにダイパッド10上に形成されているということである。
【0036】
このように、半導体チップ20が張り出し部20bを有した状態で半導体チップ接続部11に接続されることによって、半導体チップ20と突壁13との間には図2に示すようなはんだフィレット61を形成することができるが、これについては後述する。
【0037】
なお、半導体チップ20の張り出し部20bの張り出し量は、張り出し部20bが凹溝12の開口全体を覆うことがなければ特に限定されるものではないが、半導体チップ20を半導体チップ接続部11にはんだによる接続を行ったときにおいては、半導体チップ20と突壁13との間には図1(b)及び図2に示すようなはんだフィレット61を形成することができ、かつ、樹脂封止する際においては、溶融した樹脂が凹溝12内にスムーズに流入できるように設定されることが望ましい。
【0038】
実施形態に係るリードフレーム1におけるダイパッド10が上述したような構成となっていることにより、半導体チップ接続部11に半導体チップ20を接続する際には、想定外のはんだの流れ出しを抑制できる。すなわち、半導体チップ20が半導体チップ接続部11に対して張り出し部20bを有した状態として、当該半導体チップ接続部11と半導体チップ20との間に、はんだ部材として例えばクリームはんだを介在させて、リフロー炉を通すと、半導体チップ接続部11と半導体チップ20との間からは、溶融したはんだが凹溝12内に流れ込むが、凹溝12に流れ込んで行くはんだは、突壁13により流れが確実に阻止される。これは、突壁13は第1壁面12a側に向かって傾斜しているために、突壁13が「はんだの流れ返し」の機能を有することによるものである。これにより、想定外のはんだの流れ出しを抑制できる。
【0039】
想定外のはんだの流れ出しを抑制できることによって、ダイパッド10(半導体チップ接続部11)と半導体チップ20との間のはんだ60の厚み、すなわち、「はんだ厚」のばらつきをなくすことができるとともに、溶融したはんだが想定外の箇所にまで流れてしまうことを防止できる。「はんだ厚」のバラつきをなくすことによって、ダイパッド10と半導体チップ20との間の「はんだ厚」を適切なものとすることができ、また、はんだが想定外の箇所にまで流れてしまうこと抑制できることによって、短絡など回路に悪影響を及ぼすことを未然に防止できる。
【0040】
また、はんだが凹溝12に流れ込むと、半導体チップ20と突壁13との間においては、図2に示すようなはんだフィレット61が形成される。すなわち、前述したように、半導体チップ20が半導体チップ接続部11に対して張り出し部20bを有しているため、凹溝12に流れ込もうとするはんだは、半導体チップ20の張り出し部20bによって、上方向(凹溝12の開口の外側に向かう方向)への流れが規制され、張り出し部20bに沿って流れて行き、張り出し部20bと凹溝12の底面12cとの間の空間にはんだが隙間なく充填される。これにより、半導体チップ20と突壁13との間、すなわち、半導体チップ20の周縁部20aと突壁13の根元部との間には、図1(b)及び図2に示すようなはんだフィレット61が形成される。ここで、突壁13の根元部というのは、突壁13の第1壁面12a側を向く壁面(凹溝12の第2壁面12d)と凹溝12の底面12cの境界部であるとする。
【0041】
なお、はんだフィレット61は、凹溝12の容積、半導体チップ接続部11と半導体チップ20との間に塗布されるクリームはんだの量、溶融したはんだの「濡れ性」の高さなどにもよるが、流れ方向の先端部が図1(b)及び図2に示すように、突壁13の根元部に達した状態となる。
【0042】
ところで、前述したように、凹溝12の第1壁面12aは、凹溝12の底面12cに向かって下り傾斜のテーパー面となっているため、溶融したはんだが凹溝12に流れ込んで行く際においては、はんだは下り傾斜のテーパー面となっている第1壁面12aに沿ってスムーズに凹溝12に流れ込んで行く。また、凹溝12の第1壁面12aがテーパー面となっていると、第1壁面12aと底面12cとの間の角部は鈍角であるため、第1壁面12aと底面12cとの境界部(鈍角の角部)にも隙間なくはんだが充填され易くなり、はんだフィレット61内に空洞が形成されにくくなるといった効果も期待できる。
【0043】
このようにして、半導体チップ20と突壁13との間には、図1(b)及び図2に示すようなはんだフィレット61が形成されるが、形成されたはんだフィレット61の表面61a(図2参照。)と突壁13の第1壁面12a側を向く壁面との間には隙間S(図2参照。)が形成されることが必要となる。従って、はんだフィレット61と突壁13の第1壁面12a側を向く壁面との間には隙間Sが形成されるように、突壁13の傾斜角度を設定する必要がある。なお、「突壁13の第1壁面12a側を向く壁面」は、上述したように、凹溝12の第2壁面12dでもある。このため、「はんだフィレット61の表面61aと突壁13の第1壁面12a側を向く壁面との間の隙間S」は、「はんだフィレット61の表面61aと凹溝12の第2壁面12dとの間の隙間S」ということもできるが、ここでは、「はんだフィレット61と突壁13との間の隙間S」と略記して説明する。また、単に「隙間S」とさらに略記する場合もある。
【0044】
はんだフィレット61と突壁13との間の隙間Sは、半導体チップ接続部11に半導体チップ20を接続した後に行われる樹脂封止工程において、流し込んだ樹脂を当該隙間Sに流入させるためのものである。
【0045】
ここで、はんだフィレット61は、前述したように、半導体チップ20の張り出し部20bの張り出し量だけでなく、凹溝12の容積、半導体チップ接続部11と半導体チップ20との間に塗布されるはんだの量、溶融したはんだの「濡れ性」の高さなどに依存したものとなる。従って、半導体チップ20の張り出し部20bの張り出し量、凹溝12の容積、塗布されるはんだの量、溶融したはんだの「濡れ性」の高さなどに基づいて、突壁13の傾斜角度をどのような傾斜角度に設定すれば所望とする隙間Sが形成されるかをシミュレーションすることによって、突壁13の傾斜角度を設定することができる。
【0046】
はんだフィレット61と突壁13との間に隙間Sが形成されていることにより、半導体チップ20を半導体チップ接続部11に接続した後に行われる樹脂封止工程において樹脂を流し込んだ際には、流し込んだ樹脂を当該隙間Sに流入させることができる。これにより、ダイパッド10と樹脂との剥離を抑制することができる。すなわち、流し込んだ樹脂が当該隙間Sに流入して硬化することによって、硬化した樹脂が突壁13に係合した状態となる。すなわち、突壁13がモールドロック機能を有するものとなることにより、ダイパッド10と樹脂との剥離を抑制できる。
【0047】
また、溶融した樹脂は、はんだフィレット61と突壁13との間の隙間Sだけではなく、ダイパッド10のV字溝15にも流入して硬化する。これにより、硬化した樹脂がV字溝15に係合することとなり、V字溝15もモールドロック機能を有するものとなる。この場合、ダイパッド10の面に沿った方向(xy平面に沿った方向)の剥離の抑制に効果を有するものとなる。
【0048】
以上説明したように、実施形態に係るリードフレーム1は、想定外のはんだの流れ出しを抑制する機能と、ダイパッド10と樹脂との剥離を抑制する機能とを有するものとなる。しかも、実施形態に係るリードフレーム1においては、これらの機能が、一体的な構造として形成されている凹溝12と突壁13とによって実現されている。これにより、ダイパッド10は、想定外のはんだの流れ出しを抑制する機能と、ダイパッド10と樹脂との剥離を抑制する機能とを有しながら、これらの機能を実現するための構造をシンプルなものとすることができるとともにダイパッドを小型化することができる。
【0049】
続いて、リードフレームとして実施形態に係るリードフレーム1を用いた半導体パッケージ2について説明する。
【0050】
図5は、実施形態に係るリードフレーム1を用いた半導体パッケージ2を示す断面図である。なお、図5に示す半導体パッケージ2は、実施形態に係るリードフレーム1を図示しない所定の金型内にセットし、溶融した樹脂を金型内に充填して硬化させることにより製造されたものである。このようにして製造された半導体パッケージ2においては、はんだフィレット61と突壁13との間の隙間Sには硬化した樹脂80が存在し、硬化した樹脂80が突壁13に係合した状態となる。また、V字溝15にも硬化した樹脂80が存在し、硬化した樹脂80がV字溝15に係合した状態となる。
【0051】
これにより、半導体パッケージ2は、ダイパッド10と樹脂80とが剥離しにくいものとなる。例えば、半導体チップ20が発熱と冷却とを繰り返したときに、ダイパッド10と樹脂80との間の熱伝導率や膨張係数などの違いにより、樹脂80の剥離が生じる場合があるが、実施形態に係るリードフレーム1を用いた半導体パッケージ2においては、硬化した樹脂80が突壁13に係合するとともに、V字溝15に係合することにより、ダイパッド10と樹脂80とが剥離しにくいものとなる。
【0052】
また、実施形態に係るリードフレーム1を用いた半導体パッケージ2は、樹脂の剥離を抑制できるといった効果に加えて、半導体チップ20と半導体チップ接続部11との間の「はんだ厚」が適切なものとなっているとともに、短絡など回路への悪影響が防止されたものとなっている。
【0053】
このように、半導体パッケージ2は、リードフレームとして実施形態に係るリードフレーム1を用いていることにより、樹脂が剥離しにくく耐久性に優れ、信頼性の高い高品質な半導体パッケージとなる。
【0054】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0055】
(1)前述の実施形態においては、凹溝12は半導体チップ接続部11の周縁部11aの全周に渡って連続的に形成されている場合を例示したが、必ずしも、連続的に形成されていなくてもよく、凹溝12は半導体チップ接続部11の周縁部11aの全周に渡って断続的に形成されていてもよい。凹溝12が半導体チップ接続部11の周縁部11aの全周に渡って断続的に形成されている例としては、例えば、半導体チップ接続部の周縁部11aの殆どが凹溝によって囲まれていて、ところどころに凹溝12が途切れる箇所が存在するというように形成されている場合を例示できる。この場合、凹溝12が途切れる箇所の数は、できるだけ少なくし、かつ、隣接する凹溝12の間隔(凹溝12が存在しない箇所の長さ)はできるだけ短くすることが好ましい。なお、突壁13は断続的に形成されている各凹溝12の端から端まで形成されていることが好ましい。これにより、突壁13も半導体チップ接続部11の周縁部11aの全周に渡って続的に形成されていることとなる。
【0056】
このように、凹溝12及び突壁13は半導体チップ接続部11の外周の全周に渡って断続的に形成されている場合であっても、凹溝12及び突壁13が形成されていない箇所の数を少なくし、かつ、隣接する凹溝12及び突壁13の間隔をできるだけ短くすれば、想定外のはんだの流れ出しを抑制する効果を有するとともに、ダイパッドと樹脂との剥離を抑制できる効果も有する。また、このようなリードフレームを用いて製造した半導体パッケージは、樹脂が剥離しにくく耐久性に優れ、信頼性の高い高品質な半導体パッケージとなる。
【0057】
(2)前述の実施形態においては、ダイパッド10に実装されている半導体チップ20は、一方の面及び他方の面にそれぞれ1個の電極を有する半導体チップを例示したが、このような半導体チップに限られるものではなく、例えば、それぞれの面に複数の電極を有する半導体チップであってもよく、また、一方の面には1つの電極を有し、他方の面には複数の電極を有する半導体チップであってもよい。
【0058】
(3)前述の実施形態においては、突壁13は直線をなす形状である場合を例示したが、はんだフィレット61と突壁13との間に所望とする隙間Sが形成されれば、突壁13は必ずしも直線である必要はなく湾曲していてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・・リードフレーム、2・・・半導体パッケージ、10・・・ダイパッド、10a・・・ダイパッド10の表面、11・・・半導体チップ接続部、11a・・・半導体チップ接続部11の周縁部、12・・・凹溝、12a・・・凹溝12の第1壁面、12b・・・凹溝12の開口側の角部、12c・・・凹溝12の底面、12d・・・凹溝12の第2壁面、13・・・突壁、15・・・V字溝、20・・・半導体チップ、20a・・・半導体チップ20の周縁部、20b・・・張り出し部、21・・半導体チップ20の第1電極、22・・半導体チップ20の第2電極、30・・・接続子、40・・・リード端子、50・・・パンチ、50a・・・パンチ50の先端部、50b・・・パンチ50のテーパー面、60・・・はんだ、61・・・はんだフィレット、61a・・・はんだフィレット61の表面、80・・・樹脂、S・・・はんだフィレット61と突壁13との間の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6