(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085064
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去装置および水和物除去方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240619BHJP
H05F 3/06 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H01L21/304 646
H05F3/06
H01L21/304 651L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199390
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000163660
【氏名又は名称】ケンブリッジフィルターコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】木崎原 稔郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸太
(72)【発明者】
【氏名】杉山 訓樹
【テーマコード(参考)】
5F157
5G067
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB13
5F157AB33
5F157AC03
5F157AC15
5F157BH14
5F157CB15
5F157CB28
5F157CF60
5F157CF90
5F157DB32
5F157DB33
5F157DC90
5G067AA42
5G067DA01
5G067DA22
5G067DA24
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で積層半導体チップのビアホール内部に付着した水和物を除去することが可能な装置および方法を提供すること。
【解決手段】ビアホール22を有する半導体チップ搭載積層ウエハ20を支持する半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置10と、半導体チップ搭載積層ウエハにイオン化された空気62を供給するイオン化空気供給装置30であって、空気60をイオン化するための軟X線を発生する軟X線発生装置32と、軟X線により空気をイオン化し、イオン化された空気が出口38から流出する容器34と、容器の出口に配置される軟X線遮蔽シート40を有する、イオン化空気供給装置とを備える、積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビアホールを有する半導体チップ搭載積層ウエハを支持する半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置と;
前記半導体チップ搭載積層ウエハにイオン化された空気を供給するイオン化空気供給装置であって、空気をイオン化するための軟X線を発生する軟X線発生装置と、軟X線により空気をイオン化し、イオン化された空気が出口から流出する容器と、前記容器の出口に配置される軟X線遮蔽シートを有する、イオン化空気供給装置とを備える;
積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去装置。
【請求項2】
前記軟X線遮蔽シートが、
軟X線を通さない素材で形成される第1外層シートと、
軟X線を通さない素材で形成される中間層シートと、
軟X線を通さない素材で形成される第2外層シートとを有し、
前記第1外層シートには、イオン化空気の供給口が形成され、
前記中間層シートには、前記供給口と連通するイオン化空気流入開口を備えたイオン化空気通路が形成され、
前記第2外層シートには、前記イオン化空気通路に連通する排出口が形成され、
前記第1外層シート、前記中間層シートおよび前記第2外層シートは積層固着され、前記供給口、イオン化空気通路および排出口を連通して設けられたイオン化空気通過部を備えて形成される;
請求項1に記載の積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去装置。
【請求項3】
前記供給口から前記排出口に至るイオン化空気通路に、折曲部を有する、
請求項2に記載の積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去装置。
【請求項4】
前記軟X線遮蔽シートは前記半導体チップ搭載積層ウエハに対向して配置される;
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去装置。
【請求項5】
半導体チップ搭載積層ウエハのビアホールの水和物除去方法であって:
空気に軟X線を照射してイオン化する、空気イオン化工程と;
イオン化された前記空気を軟X線遮蔽シートを通過させることにより軟X線を減衰させる軟X線遮断工程と;
前記軟X線を減衰させられたイオン化された空気を前記半導体チップ搭載積層ウエハに供給して、前記ビアホールの水和物を除去する水和物除去工程とを備える;
積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去方法。
【請求項6】
前記軟X線遮蔽シートが、
軟X線を通さない素材で形成される第1外層シートと、
軟X線を通さない素材で形成される中間層シートと、
軟X線を通さない素材で形成される第2外層シートとを有し、
前記第1外層シートには、イオン化空気の供給口が形成され、
前記中間層シートには、前記供給口と連通するイオン化空気流入開口を備えたイオン化空気通路が形成され、
前記第2外層シートには、前記イオン化空気通路に連通する排出口が形成され、
前記第1外層シート、前記中間層シートおよび前記第2外層シートは積層固着され、前記供給口、イオン化空気通路および排出口を連通して設けられたイオン化空気通過部を備えて形成される;
請求項5に記載の積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層半導体チップのビアホール内部の水分を除去する装置および方法に関する。特に、簡便な装置で効率よくビアホール内面に付着した水和物を除去する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高密度化方法にチップの多層化がある。数十枚から数百枚重ねた積層半導体チップ間を電気的に連結する回路を形成する為にビアホールが開けられる。ビアホ―ル形成から内部に連結用導体を形成する間にホール内部に水分が付着し、この水分により腐食が発生する。この腐食防止対策の要求が高まっている。高集積化傾向で、積層半導体チップのビアホールは小径化、縦長化し、ビアホールに残留する水分の除去が喫緊の課題となってきている。
【0003】
例えば特許文献1に示された従来の水分除去方法は、ウエハの水分を吸引器で吸引し、さらに温風にて乾燥させる方法であるが、ビアホールに付着した水分を除去することには時間を要し、効率的とは言えないものであった。
【0004】
そこで、作業空間全体を水分を含まない窒素でパージすることも一つの対策として実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業空間全体を窒素パージするには大掛かりな装置が必要となる。さらに、作業空間全体を窒素パージした場合であっても、装置のメンテナンス等のために作業空間を開放する必要が生ずる。一旦、開放すると、再度窒素ガスを流し作業空間の水分を所定値まで除去をするには時間が掛かかり、効率的であるとは言えないのが実情である。
【0007】
一方、多数の半導体チップを搭載するウエハは乾燥空気中に放置すると帯電することが知られている。すると、ビアホール内部も帯電し、水分は水和物イオンの形で、ビアホール内部に付着しているものと、発明者らは考えた。そこで、帯電したウエハにイオン風を吹き付けることにより除電して水和物イオンを除去することが一方法として考えられる。
【0008】
しかし、コロナ放電を利用したイオナイザーを用いてイオン風を吹き付ける方法では、コロナ放電電極から塵埃が発生する。更にコロナ放電式イオナイザーは、±イオンのいずれかを発生するものでバランス調整が困難な為、当目的には適切な方法とは言えない。
【0009】
そこで本発明は簡単な装置構造で、積層半導体チップに開けたビアホール内部に付着した水和物を除去することが可能な装置および方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1は、例えば
図1に示すように、ビアホール22を有する半導体チップ搭載積層ウエハ20を支持する半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置10と、半導体チップ搭載積層ウエハ20にイオン化された空気62を供給するイオン化空気供給装置30であって、空気60をイオン化するための軟X線を発生する軟X線発生装置32と、軟X線により空気をイオン化し、イオン化された空気62が出口38から流出する容器34と、容器34の出口38に配置される軟X線遮蔽シート40を有する、イオン化空気供給装置30とを備える。
【0011】
このように構成すると、イオン化空気供給装置からイオン化された空気が半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置に支持された半導体チップ搭載積層ウエハに供給されるので、積層半導体チップのビアホール内部に付着している水和物イオンを除電・除去することができる装置となる。また、軟X線は軟X線遮蔽シートで減衰・遮断され、軟X線でイオン化された空気の出口からは漏出しないので、簡単な装置で安全に用いることができる。
【0012】
また、本発明の第2の態様に係る積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1では、例えば
図3に示すように、軟X線遮蔽シート40が、軟X線を通さない素材で形成される第1外層シート42と、軟X線を通さない素材で形成される中間層シート44と、軟X線を通さない素材で形成される第2外層シート46とを有し、第1外層シート42には、イオン化空気62の供給口52が形成され、中間層シート44には、供給口52と連通するイオン化空気流入開口58を備えたイオン化空気通路54が形成され、第2外層シート46には、イオン化空気通路54に連通する排出口56が形成され、第1外層シート42、中間層シート44および第2外層シート46は積層固着され、供給口52、イオン化空気通路54および排出口56を連通して設けられたイオン化空気通過部50を備えて形成される。このように構成すると、容器内で軟X線によりイオン化されたイオン化空気を軟X線遮蔽シートのイオン化空気通過部を通過させることにより、軟X線を減衰遮断し、軟X線の漏洩無しでイオン化空気を半導体チップ搭載積層ウエハに供給することができる。よって、装置にX線遮断壁を設ける必要がなく、簡単な構造の装置となる。
【0013】
また、本発明の第3の態様に係る積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1では、例えば
図3に示すように、供給口52から排出口56に至るイオン化空気通路54に、折曲部を有する。このように構成すると、軟X線は、折曲部を通過するために内壁により多数回衝突することになり、衝突により減衰し、確実に軟X線を遮断することができる。
【0014】
また、本発明の第4の態様に係る積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1では、例えば
図1に示されるように、軟X線遮蔽シート40は半導体チップ搭載積層ウエハ20に対向して配置される。このように構成すると、軟X線遮蔽シートが半導体チップ搭載積層ウエハに対向して配置されるので、軟X線遮蔽シートを通過して供給されるイオン化空気は、半導体チップ搭載積層ウエハの面に向けて流れるので、積層半導体チップのビアホールに入り込みやすく、ビアホール内壁に付着している水和物イオンを除電しやすくなる。
【0015】
また、本発明の第5の態様に係る積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去方法では、例えば
図1および
図3に示されるように、空気60に軟X線を照射してイオン化する、空気イオン化工程と、イオン化された空気62を軟X線遮蔽シート40を通過させることにより軟X線を減衰させる軟X線遮断工程と、軟X線を減衰させられたイオン化された空気62を半導体チップ搭載積層ウエハ20に供給して、積層半導体チップ23のビアホール22の水和物24を除去する水和物除去工程とを備える。
【0016】
このように構成すると、軟X線の照射によりイオン化された空気を軟X線遮蔽シートを通過させを半導体チップ搭載積層ウエハに供給するので、イオン化空気により半導体チップ搭載積層ウエハの積層半導体チップのビアホールに付着している水和物イオンを除電し、除去することができ、かつ、軟X線遮蔽シートにより軟X線を遮断できる。
【0017】
また、本発明の第6の態様に係る積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去方法では、例えば
図3に示すように、軟X線遮蔽シート40が、軟X線を通さない素材で形成される第1外層シート42と、軟X線を通さない素材で形成される中間層シート44と、軟X線を通さない素材で形成される第2外層シート46とを有し、第1外層シート42には、イオン化空気62の供給口52が形成され、中間層シート44には、供給口52と連通するイオン化空気流入開口58を備えたイオン化空気通路54が形成され、第2外層シート46には、イオン化空気通路54に連通する排出口56が形成され、第1外層シート42、中間層シート44および第2外層シート46は積層固着され、供給口52、イオン化空気通路54および排出口56を連通して設けられたイオン化空気通過部50を備えて形成される。このように構成すると、容器内で軟X線によりイオン化されたイオン化空気を軟X線遮蔽シートのイオン化空気通過部を通過させることにより、軟X線を減衰遮断し、軟X線の含まれないイオン化空気を半導体チップ搭載積層ウエハに供給することができる。よって、X線遮断壁を設ける必要がなく、簡単な方法となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去装置によれば、イオン化空気供給装置からイオン化された空気が半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置に支持された半導体チップ搭載積層ウエハに供給されるので、半導体チップのビアホールに付着している水和物イオンを除電・除去することができる装置となる。また、軟X線でイオン化された空気の軟X線を軟X線遮蔽シートで遮断することができる。よって、簡単な構造で半導体チップのビアホール内面に付着した水和物を除去することが可能な装置となる。
【0019】
本発明の積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去方法によれば、軟X線の照射によりイオン化された空気を軟X線遮蔽シートを通過させを半導体チップ搭載積層ウエハに供給するので、イオン化空気により半導体チップ搭載積層ウエハの積層半導体チップのビアホールに付着している水和物イオンを除電し、除去することができ、かつ、軟X線遮蔽シートにより軟X線を遮断できる。また、軟X線でイオン化された空気の軟X線を軟X線遮蔽シートで遮断することができる。よって、簡単な方法で半導体チップのビアホール内面に付着した水和物を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去装置の一例を説明するための概念図である。
【
図2】積層半導体チップのビアホールに付着する水和物を説明するための概念図で、(a)は半導体チップ搭載積層ウエハの斜視図、(b)は積層半導体チップのビアホールの斜視図、(c)はビアホール内部に付着する水和物イオンを説明する図である。
【
図3】本発明の軟X線遮蔽シートを説明するための概念図で、(a)は断面図、(b)は第1外層シート、中間層シート、第2外層シートを分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。先ず、
図1を参照して、本発明の積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1を説明する。
【0022】
積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1は、ビアホール22が削孔された半導体チップ23を搭載した半導体チップ搭載積層ウエハ20を支持する半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置10を備える。本書でビアホール22という場合、半導体チップ搭載積層ウエハ20のそれぞれの積層半導体チップ23の各層を電気的に接続するためのホールを指し、貫通していても貫通していなくてもよい。また、半導体チップ搭載積層ウエハ20とは、半導体回路のチップを造り込まれたウエハを複数枚積層したものを指す。半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置10は、半導体チップ搭載積層ウエハ20を台の上に乗せても、チャックで挟んで支持してもよく、半導体チップ搭載積層ウエハ20は、水平に置かれても、垂直に置かれても、傾斜していてもよい。更に、半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置10はビアホール内部にイオン流が流れるのを阻害しない素材または構造とするのが良い。
図1に示す例では、半導体チップ搭載積層ウエハ20は、台の上に水平に載置される。
【0023】
積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1は、半導体チップ搭載積層ウエハ20にイオン化された空気62を供給するイオン化空気供給装置30を備える。イオン化空気供給装置30は、空気をイオン化し、イオン化された空気であるイオン化空気62が流れる空間を提供する容器34を有する。容器34は、容器34内に湿度管理された空気60を取り入れる吸気管36を有する。吸気管36にはファンを備え、容器34外の空気を強制的に容器34内に取り入れてもよい。容器34に接続して軟X線発生装置32が配置される。軟X線発生装置32から軟X線を発生し、容器34内で空気に照射することにより、空気がイオン化される。軟X線発生装置32は公知の軟X線装置でよいので、詳細な説明は省略する。容器34に吸気管36が接続された位置から離れた位置に、イオン化空気62の出口38が形成される。なお、容器34は、ステンレス鋼その他の金属で成形されるのが一般的である。
【0024】
出口38には、軟X線遮蔽シート40が配置される。すなわち、イオン化空気62が容器34から放出されるには、軟X線遮蔽シート40を通過することになる。そのため、軟X線発生装置32から発生し、容器34内に存在する軟X線が、容器34からイオン化空気62と共に外部に漏出することがない。よって、積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1の周囲で、X線障害を生ずることがなく、X線管理区域を設定する必要もない。
【0025】
イオン化空気供給装置30から流出したイオン化された空気62は、半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置10に支持された半導体チップ搭載積層ウエハ20に供給される。イオン化された空気62が供給されることにより、半導体チップ搭載積層ウエハ20の積層半導体チップ23のビアホール22の内部は除電される。イオン化空気供給装置30のイオン化空気62の出口38、すなわち軟X線遮蔽シート40は、半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置10に支持される半導体チップ搭載積層ウエハ20に対向して配置されるのが、イオン化された空気62がビアホール22に入り易くなり好ましい。
【0026】
積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1は、閉じられた作業空間6に収納される。作業空間6は微細な粉塵が含まれていても、ウエハに付着すると障害を生じ得るので、クリーンルーム環境とされるのが一般的である。同様に、イオン化空気供給装置30に供給される容器34外の空気60は湿度管理されたクリーンルーム用の空気でも良い。
【0027】
ここで、
図2を参照して、半導体チップ搭載積層ウエハ20の積層半導体チップ23のビアホール22に存在する水和物24について説明する。
図2(a)に示すように、半導体チップ搭載積層ウエハ20には多くの積層半導体チップ23が搭載される。そして、
図2(b)に示すように、その積層半導体チップ23には多数のビアホール22が形成される。ウエハが帯電することにより、ビアホール22内面も帯電する。そこで、
図2(c)に示すように、水分は、水分子が単独ではなく、水分子はその双極子モーメントによりクラスター化し、イオンに付着し水和物イオン24となる。水和物イオン24は、ビアホール22内面に電気的に結合するので、強固な結合となる。そのために、空気流等の力だけで水和物イオン24をビアホール22内面からはがして除去するのは難しい。そこで、イオン化された空気62を供給して、除電し、水和物をはがしやすくして、除去する。
【0028】
積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1によれば、イオン化空気供給装置30から流出したイオン化された空気62によりビアホール22内面の水和物イオン24を除電し、ビアホール22内面からはがして除去できる。そして、イオン化空気供給装置30の出口38に軟X線遮蔽シート40が配置されるので、軟X線が減衰・除去されイオン化された空気62とともにイオン化空気供給装置30から漏出することがなくて安全であり、積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1を簡単な構造と出来る。
【0029】
またこれまでは積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1に基づき説明したが、これまでの説明のように、空気に軟X線を照射してイオン化する空気イオン化工程と、イオン化された空気を軟X線遮蔽シートを通過させることにより軟X線を減衰させる軟X線遮断工程と、軟X線を減衰させられたイオン化された空気を半導体チップ搭載積層ウエハに供給して、ビアホールの水和物を除去する水和物除去工程とを備える、積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去方法によれば、同様に、イオン化された空気によりビアホール内面の水和物イオンを除電し、ビアホール内面からはがして除去できる。そして、イオン化された空気を軟X線遮蔽シートを通過させることで、軟X線が減衰・除去され、漏出することがなくて安全であり、簡単な方法となる。
【0030】
ここで
図3を参照して、イオン化空気供給装置30に用いられる軟X線遮蔽シート40について説明する。
図3(a)は軟X線遮蔽シート40のイオン化空気通過部50付近での断面図、
図3(b)は第1外層シート42、中間層シート44および第2外層シート46の分解斜視面図である。軟X線遮蔽シート40は、軟X線を通さない素材で形成される第1外層シート42、軟X線を通さない素材で形成される中間層シート44および軟X線を通さない素材で形成される第2外層シート46の3枚のシートが積層固着され形成されている。ここで、軟X線を通さない素材とは、鉛、鉄、アルミニウムなどの金属が代表的であるが、金属には限られない。金属であると薄くても軟X線の通過を遮断できるとともに薄く形成しやすく、軟X線遮蔽シート40用には適している。また、積層固着する方法は、特に限定されない。第1外層シート42には、容器34内のイオン化空気62が軟X線遮蔽シート40に進入する供給口52が開口する。中間層シート44には、その両端部にイオン化空気流入開口58を備えてイオン化空気通路54が開口する。第2外層シート46には、軟X線が減衰・除去されたイオン化空気62が容器34外に放出される排出口56が開口している。
【0031】
本実施例では、第1外層シート42の供給口52は、第1外層シート42にそれぞれ間隔を有して2個開口している。中間層シート44のイオン化空気通路54は、第1外層シート42の供給口52と連通する位置にそれぞれ開口されたイオン化空気流入開口58を備えると共に、各イオン化空気流入開口58を連通するイオン化空気通路54が形成されている。第2外層シート46の排出口56は、中間層シート44のイオン化空気通路54と連通する位置に開口している。
【0032】
上述のように形成された第1外層シート42、中間層シート44および第2外層シート46を積層固着すると、第1外層シート42の各供給口52と中間層シート44の各イオン化空気流入開口58とが連通され、更に中間層シート44のイオン化空気通路54の中央位置において、イオン化空気通路54と、第2外層シート46の排出口56とが連通して、イオン化空気通過部50が形成される。軟X線遮蔽シート40には、1個のイオン化空気通過部50が形成されてもよいが、複数のイオン化空気通過部50が形成されてもよい。また、積層固着されるシートは4枚以上であってもよい。
【0033】
軟X線が供給口52から入射して排出口56に至る間に、第2外層シート46の内側面と、第1外層シート42の内側面への衝突回数が増え、軟X線が減衰・消滅するように、イオン化空気通路54には、平面上で90度折れ曲がる折曲部が設けられる。
【0034】
また、イオン化されたイオン化空気62の流体抵抗を抑え、短時間で排出口56に至り、プラスイオンとマイナスイオンの再結合を抑えるように、イオン化空気通路54の各折曲部は、イオン化空気62の流体抵抗を低くするべく、それぞれ湾曲した湾曲面を備えて形成されるのが好ましい。また、イオン化空気通路54は、平面上で90度折れ曲がる少なくとも1個所以上の折曲部を備え、内側面、すなわち通路、への軟X線の衝突による消滅を図っている。なお、イオン化空気通路54の形状は他の形状であってもよい。軟X線の通路への衝突の回数を増やしつつ、イオン化空気62の流体抵抗を抑える形状が好ましい。
【0035】
なお、
図3に示す軟X線遮蔽シート40では、供給口52が2箇所、排出口56が1箇所となっているが、イオン化空気通路54を経て、双方から流れてくるイオン化空気62が排出口56で衝突することにより、排出口56からのイオン化空気62を垂直に噴出させることができる。しかし、1つのイオン化空気通路54に設けられる供給口52は2箇所に限られず、また、排出口56も1箇所には限られない。
【0036】
また、容器34と軟X線遮蔽シート40とを絶縁層(不図示)で絶縁してもよい。絶縁層は、例えば、円形の軟X線遮蔽シート40の外周に3個の円弧形のセラミックを配置して形成する。セラミックであると、軟X線の照射を受けても劣化しにくいので、好ましい。ただし、軟X線はセラミックを透過する。そこで、軟X線が軟X線遮蔽シート40の外周を覆う円環形状の絶縁層を透過して漏洩するの防ぐために、軟X線遮蔽シート40のケーシング(不図示)により絶縁層を覆うようにする。ケーシングは、ステンレス鋼など、容器34と同質の材料で形成されるのが一般的であり、軟X線遮蔽シート40とケーシングの間を、軟X線が通り抜けることが防止されるように隙間を小さく構成すればよい。なお、絶縁層の構成は上記に限られず、適宜設計することが可能である。
【0037】
容器34と軟X線遮蔽シート40とを絶縁層で絶縁することにより、運転初期にイオンが軟X線遮蔽シート40にトラップされると、軟X線遮蔽シート40はトラップしたイオンの電位(プラスまたはマイナス)を有することになり、以降は同性(プラスまたはマイナス)の電位のイオンはトラップされず、軟X線遮蔽シート40を通過することになる。したがって、軟X線遮蔽シート40を通過して放出されるイオン化空気は増大する。
【0038】
さらに、絶縁層で絶縁されるので、容器34と軟X線遮蔽シート40に電位差を印加することが可能になる。電源装置(不図示)を備え、プラスまたはマイナスの電極を軟X線遮蔽シート40に接続し、他の電極を容器34に接続する。すると、軟X線遮蔽シート40はプラスまたはマイナスに帯電し、容器34はプラス/マイナスが逆の電圧に帯電する。容器34が帯電していることにより、容器34での同性のイオン(プラスに帯電しているならプラスイオン、マイナスに帯電しているならマイナスイオン)の逸散が減少し、容器34内の同性イオンが増大し、軟X線遮蔽シート40を通過する同性イオンが増加するものと推測される。すなわち、放出されるプラス/マイナスイオンの量を調整できることになる。このように、イオン化された空気のイオン量を調整することも可能で、より使いやすい積層半導体チップ23のビアホール22内部の水和物除去装置1となる。
【0039】
これまでの説明では、軟X線遮蔽シート40は、積層したシート42、44、46にイオン化空気通過部50が形成されるものとして説明したが、軟X線遮蔽シートは別の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 積層半導体チップのビアホール内部の水和物除去装置
6 作業空間
10 半導体チップ搭載積層ウエハ支持装置
20 半導体チップ搭載積層ウエハ
22 ビアホール
23 積層半導体チップ
24 水和物(水和物イオン)
30 イオン化空気供給装置
32 軟X線発生装置
34 容器
36 吸気管
38 出口
40 軟X線遮蔽シート
42 第1外層シート
44 中間層シート
46 第2外層シート
50 イオン化空気通過部
52 供給口
54 イオン化空気通路
56 排出口
58 イオン化空気流入開口
60 湿度管理された空気
62 (軟X線が除去された)イオン化された空気