(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085069
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 25/304 20060101AFI20240619BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240619BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B41J25/304 H
B41J2/01 307
B41J29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199397
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 武志
(72)【発明者】
【氏名】野原 亮
(72)【発明者】
【氏名】黒木 友和
(72)【発明者】
【氏名】前原 和也
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
2C064
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056HA07
2C061AQ05
2C061AS06
2C061BB10
2C061CF01
2C061CF02
2C064CC02
2C064CC05
2C064CC11
2C064EE01
2C064EE18
(57)【要約】
【課題】インクジェット方式の記録ユニットのように記録ユニットの重量が大きい場合、内部の構造体の剛性を高める必要があるが、剛性を高くすると、開閉機構を閉じたときに記録媒体を搬送する搬送ユニットに対する記録ユニットの位置合わせが困難になるという課題がある。
【解決手段】記録手段と、搬送手段と、記録手段を回動可能に支持するヒンジと、を有する記録装置において、ヒンジの回動軸をヒンジから搬送手段に向かって下降する方向に傾斜を持つように配置する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録を行う記録手段と、
前記記録媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記記録手段を、前記搬送手段に対して接離するように、回動軸を中心に回動可能に支持するヒンジと、
を有し、
前記ヒンジは、水平面と平行で前記搬送方向と直交する方向において、前記搬送手段と重ならない位置に配置され、
前記ヒンジの回動軸は、前記ヒンジから前記搬送手段に向かって下降する方向に傾斜している
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記搬送手段に対して前記記録手段を固定するロック手段と、
前記ロック手段による前記記録手段の固定を解除する解除レバーと、
をさらに有し、
前記解除レバーは、前記搬送手段よりも前記搬送方向の下流側に位置することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール状に巻き取られたシートを記録媒体としてロールシート給送部から給送し、シート搬送部によってシートを記録領域に搬送し、シートに対して記録ヘッドで記録を行う記録装置がある。ロールシートを記録媒体として扱う記録装置は、ロールシート搬送部でロールシートの詰まりが発生した時に、ロールシートの詰まりを解消してロールシートを再度セットする作業を行う必要がある。この時、特許文献1のように記録部を筐体の一部と一緒に移動させてロールシートの搬送経路を開放し、ユーザが作業を行うためのスペースを確保するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の記録装置においては、ロールシートの搬送経路を露出させるために移動させる記録ユニットの記録方式は、熱転写方式である。熱転写方式の記録ユニットは比較的軽量であるため、開閉機構を備える筐体に大きな強度を必要としない。しかし、記録ユニットの記録方式をインクジェット方式とする場合、熱転写方式よりも記録部の重量が増加する。記録部の重量の増加に伴い、内部構造の剛性を高める必要があるが、内部構造の剛性を高くすると、開閉機構を閉じたときに記録媒体を搬送する搬送ユニットに対する記録ユニットの位置合わせが困難になるという課題がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、開閉機構を有する記録装置において搬送ユニットと記録ユニットの位置合わせを容易とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明に係る一実施形態は、記録媒体に記録を行う記録手段と、前記記録媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、前記記録手段を、前記搬送手段に対して接離するように、回動軸を中心に回動可能に支持するヒンジと、を有し、 前記ヒンジは、水平面と平行で前記搬送方向と直交する方向において、前記搬送手段と重ならない位置に配置され、前記ヒンジの回動軸は、前記ヒンジから前記搬送手段に向かって下降する方向に傾斜していることを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、開閉機構を有する記録装置において搬送部と記録部の位置合わせを容易とすることが可能な記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の記録装置の全体構成を説明する図
【
図4】本実施形態の記録装置の制御部の構成を示すブロック図
【
図6】ロールシートとメンテナンスカートリッジの位置を示す図
【
図12】記録ユニットと搬送ユニットが固定された状態を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係わる記録装置の実施形態を図に基づいて説明する。
【0009】
<記録装置の全体構成>
図1は、本実施形態の記録装置を示した斜視図である。記録装置100は、LCD及びタッチパネルからなる操作部102が設けられた装置本体101と、記録媒体がロール状に巻き取られたロールシートを装填するロールシートホルダ103と、を備えている。記録装置100は、ロールシートを搬送手段によって搬送しつつ、そのロールシートに付されたラベルに合わせて、ホストコンピュータ104から受信したデータに基づいて記録を行う。記録装置100とホストコンピュータ104とは、プリンタケーブル105によってつながれている。
【0010】
図2は、本実施形態の記録装置の模式断面図である。記録装置100は、ロールシートホルダ103に装填している記録媒体としてのロールシート200を、搬送ユニット201で搬送するよう構成されている。ロールシート200は、搬送ユニット201の搬送ローラ202と搬送ベルト207とで搬送される。搬送ユニット201の内部にはファン208が設けられ、搬送ユニット201は、ファン208によって負圧を発生させてロールシート200を搬送ベルト207に吸いつけながらロールシート200の搬送を行う。
【0011】
本実施形態の記録装置は、記録手段としてインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドを有するインクジェット記録装置であり、インクを吐出する多数のノズルを有する記録ヘッド210が搬送ベルト207の記録媒体を搬送する面と対向するように保持されている。この記録ヘッド210には不図示のインクタンクが接続されている。そして、記録に際しては搬送ユニット201によって搬送されるロールシート200に対して、信号に応じて記録ヘッド210からインクを吐出することにより記録を行う。また、記録装置には記録ヘッド210のノズルを覆うことが可能な記録ヘッドメンテナンス部602のキャップが設けられている。キャップには不図示のポンプが接続され、キャップ内を負圧とすることによりノズル内のインクを吸引することができる。吸引や吐出によりノズル内部のインクをキャップに排出することで、ノズルの目詰まりを防止することができる。
【0012】
記録ヘッド210よりもロールシート200の搬送方向上流側の位置には、ロールシート200に貼付されたラベルの有無を検出することが可能なメディアセンサ209が配置されている。ロールシート200の構成を
図3に示す。ロールシート200は連続したシートをロール状に巻き取ったものであるが、台紙701上にラベル702が等間隔に貼り付けられている。記録装置100は、ロールシート200を搬送し、ラベル702に記録を行う。
【0013】
<制御部>
図4は、本実施形態の記録装置の動作を制御する制御部の構成を示すブロック図である。記録装置100は制御部からの制御信号により、記録動作や後述するクリーニング動作を実行する。
図3において、301は記録装置全体を制御するメインコントローラであり、データを格納する格納手段としての機能、及びデータ制御手段及び、設定データに基づいて本体の動作を変更する設定手段としての機能などを有する。メインコントローラ301はホストコンピュータ104に接続され、互いに信号の授受を行う。302はメインコントローラ301に接続され、制御プログラムなどが格納されているROMであり、それらのプログラムに従いメインコントローラ301はRAM303を作業用メモリとして使用する。304は前記ホストコンピュータ104から送信されてきたデータを格納するイメージバッファメモリである。305は前記記録ヘッド201に内蔵される発熱体(不図示)を駆動させる駆動回路であり、前記メインコントローラ301に接続されたドライバコントローラ306が、前記イメージバッファメモリ305に格納されたビットマップ形式のデータに従ってヘッド駆動回路305を制御することで記録を行う。307は搬送部等に設けられた搬送モータ206を駆動する駆動回路であり、メインコントローラ301によって制御される。そして、操作部102のLCDに表示する画面や、ユーザがタッチパネルを操作した場合の挙動もメインコントローラ301によって制御される。また、センサ回路309によってメディアセンサ等の検出が行われる。
【0014】
<搬送ユニット>
図5は搬送ユニット201の斜視図である。搬送ユニット201は、記録を行う際、ロールシート200を矢印Aの方向に搬送する。搬送ユニット201は、搬送ローラ202、ピンチローラ203、搬送ベルト207、プラテン402、シートガイド403を備えている。
【0015】
本実施形態の搬送ローラ202は、表面をセラミックでコーティングすることで、搬送するロールシート200との摩擦力を高めている。セラミックによるコーティングの他に、表面にブラスト処理を施したローラを搬送ローラとして用いることで、ロールシート200との摩擦力を高めることも可能である。
【0016】
ピンチローラ203は、バネ401の弾性力によって、搬送ローラ202へ向けて付勢されている。搬送ローラ202とピンチローラ203とでロールシート200を挟持する。 搬送ベルト207は、搬送方向(矢印A)において搬送ローラ202よりも下流側に、搬送方向(矢印A)に沿って架け渡される。搬送ベルト207には、開口が設けられている。搬送ユニット201の内部には
図2に示すファン208が設けられており、ファン208で発生させた負圧によって、搬送ベルト207の開口から空気が吸い込まれる。搬送ユニット201にロールシート200がセットされているとき、搬送ベルト207の開口への吸気によって、ロールシート200の裏面は搬送ベルト207の上面に吸い付けられる。
【0017】
プラテン402の上面は、搬送ベルト207の上面と同じ高さとなるように構成されている。プラテン402の上面には、搬送ベルト207と同様に、開口が設けられている。プラテン402の開口からも、ファン208で発生させた負圧によって空気が吸い込まれ、ロールシート200の裏面をプラテン402の上面に吸いつける。ロールシート200が搬送されるとき、ロールシート200の裏面は、プラテン402の上面に接触しながら搬送される。ファン208の排気は、搬送ユニット201下部へ流される。
【0018】
プラテン402において、
図5の矢印Bで示す範囲は、記録ヘッド210によるロールシート200への記録が行われる領域である。プラテン402上で矢印Bの範囲を吸引することにより、ロールシート200の記録を行う領域をプラテン402の表面に吸い付ける。そして、ロールシート200の浮き上がりを抑制することで、ロールシート200が記録ヘッド210に接触するのを抑えたり、ロールシート200と記録ヘッド210との間隔が狭くなって記録画質が低下するのを抑えたりすることが出来る。
【0019】
シートガイド403は、ロールシート200の幅方向の位置を規制する。シートガイド403は、ロールシート200のシート搬送方向と直交する幅方向における両端部を規制するために一対で構成されている。一対のシートガイド403は、ラックアンドピニオンの機構によって、片方を幅方向に移動させると、他方が連動して逆方向に同距離だけ移動する。この機構により、異なる幅のロールシート200に記録する場合であっても、ロールシート200の幅方向における中心は同じ位置となる。搬送ベルト207及びプラテン402とシートガイド403の搬送面は、略同じ高さとなるように構成されている。
【0020】
搬送ベルト207のベルト幅方向の中心は、シートガイド403によって規制されるシート幅の中心と一致するように配置されている。そのため、異なる幅のロールシート200が記録装置にセットされた場合でも、搬送ベルト207はロールシート200の幅方向の中心部分に接触して搬送することができる。
【0021】
図6に示すように、ロールシートホルダ103に保持されるロールシート200は、外径の最も高い位置が、搬送ベルト207の搬送面すなわち搬送ベルト207のロールシート200と接触する領域(点線C)の高さよりも低くなるように保持される。また、プラテン402およびシートガイド403の搬送面すなわちロールシート200と接触する領域の高さは、搬送ベルトの搬送面と略同じ高さであるため、ロールシートホルダ103に保持されるロールシート200の外径で最も高い位置は、プラテン402とシートガイド403の搬送面より低い位置となる。ロールシート200の外径で最も高い位置をシートガイド403の搬送面よりも低く設定することで、ロールシート200をロール状に巻き取られている方向と逆の方向に曲げることなく、ロールシートホルダに保持されたロールシート200を搬送ユニットに供給することができる。
【0022】
<メンテナンスカートリッジ>
図7は、メンテナンスカートリッジの構成の斜視図である。メンテナンスカートリッジ500は、箱型構成となっており、内部に廃インクを貯留する不図示のインク吸収体を備えている。インク吸収体は多孔質材料で形成されており、内部に廃インクを吸収し保持することで、廃インクが記録装置100の外部へ容易に漏れないようになっている。メンテナンスカートリッジ500の上部には開口が2か所ある。一方は記録ヘッド210から排出された廃インクをメンテナンスカートリッジ内部に流入させるための廃インク流入口501である。他方はファン208からの排気が吹き付けられるミスト流入口503である。ミスト流入口503は、搬送ユニット201が備えるプラテン402の開口から吸引した排気が通過する経路に接続されるものであり、記録ヘッド201から発生するインクミストや、ロールシート200の搬送に伴って発生する紙粉を含む排気を、ミスト流入口503に吹き付けることにより、インクミストや紙粉をメンテナンスカートリッジ500の内部に回収する。
【0023】
また、メンテナンスカートリッジ500は、EEPROMなどの情報の書き込みが可能なチップ502を備えている。メンテナンスカートリッジ500を記録装置100に装着すると、チップ502は記録装置100と電気的に接続され、記録装置100の記録動作や回復動作に応じてインクの貯留量が書き込まれる。
【0024】
図6に示すように、メンテナンスカートリッジ500は、重力を利用して廃インクやインクミスト、紙粉を効率よく回収するために、搬送ユニット201の搬送面(点線C)よりも下方に配置されている。
【0025】
<搬送ユニットの保持部>
図8は搬送ユニットの保持部を示す、記録装置内部の斜視図である。搬送ユニット201は、搬送ユニット保持フレーム700により保持されている。また搬送ユニット保持フレーム700には、ヒンジユニット800が取り付けられている。ヒンジユニット800には、後述するように記録ユニット600が取り付けられる。
【0026】
<記録ユニットの保持部>
図9は記録を行う記録ユニットとその保持フレームの斜視図である。記録ユニット600は、記録ヘッド210、記録ヘッド昇降部601、キャップとワイパーを含む記録ヘッドメンテナンスユニット602が、記録ユニットフレーム604に取り付けられたものである。記録ユニット600は記録ユニット保持フレーム605に取り付けられている。記録ユニット保持フレーム605は、
図8のヒンジユニット800に取り付けられる。ロールシート200の詰まりが生じた場合には、ユーザがヒンジユニット800に取り付けられた記録ユニット600を移動させてロールシート200の搬送経路を露出させ、詰まったシートを取り除く作業を行う。
【0027】
<ヒンジユニット>
図10はヒンジユニット800の斜視図である。ヒンジユニット800は、記録ユニット600を回動可能に支持するものである。ヒンジユニット800は、水平面と平行で搬送方向(矢印A)と直交する方向において、搬送ユニット201から離れて配置される。ヒンジユニット800は支持軸802を備えており、記録ユニット保持フレームは支持軸805を回動軸(一点鎖線D)として回動することが可能である。ヒンジユニット800は内部に付勢バネを備えており、記録ユニット保持フレーム605が回動軸(一点鎖線D)を中心に上方に回動するように付勢している。支持軸802は、搬送ユニット201側すなわちヒンジユニット800から遠い側が下方となるように、傾けてヒンジユニット800に取り付けられている。
【0028】
<ロック部材と操作レバー>
図11はロック部材901と操作レバー902の斜視図である。ロック部材901と操作レバー902は、搬送ユニット保持フレーム700に取り付けられている。ロック部材901により、記録ユニット600は搬送ユニット201に対して位置合わせされた状態で固定される。記録ユニット600の固定は、操作レバー902の操作により解除される。ロック部材901と操作レバー902は、搬送ユニット201の搬送ローラ202よりも、ロールシート200の搬送方向の下流側に位置する。
【0029】
<記録ユニットと搬送ユニットの固定>
図12は記録ユニット600が搬送ユニット201に対して位置決めされて固定された状態を示す図である。記録ユニット600は記録ユニット保持フレーム605に対して固定されておらず、ガタをもって取り付けられている。記録ユニット600が搬送ユニット201に対して固定されたときに、記録ユニット600と搬送ユニット201が位置決めされるような構成となっている。ピンチローラ203も同様に搬送ユニット201に対して固定されたときに搬送ローラ202に対して位置決めされるような構成となっている。
【0030】
ヒンジユニット800の支持軸802は、搬送ユニット201側が下方となるように傾いて設置されている。そのため、記録ユニット保持フレーム604が上方にある状態から下方に回動させて、記録ユニット600を搬送ユニット201に対して固定するとき、確実に記録ユニット600と搬送ユニット201とを当接させて、容易に位置決めを行うことができる。
【0031】
本発明によれば、開閉機構を有する記録装置において搬送ユニットと記録ユニットの位置合わせを容易とすることが可能な記録装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0032】
100 記録装置、200 ロールシート、201 搬送ユニット、202 搬送ローラ、203 ピンチローラ、210 記録ヘッド、500 メンテナンスカートリッジ、600 記録ユニット、605 記録ユニット保持フレーム、700 搬送ユニット保持フレーム、800 ヒンジユニット、802 支持軸、901 ロック部材、902 操作レバー