(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085073
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】変額資産管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/08 20120101AFI20240619BHJP
【FI】
G06Q40/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199407
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】橋間 陽一
(72)【発明者】
【氏名】高浪 竜平
(72)【発明者】
【氏名】染井 康太郎
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB61
5L055BB61
(57)【要約】
【課題】既存の契約管理システムに対して簡易・迅速に変額商品特有の資産運用機能を付加する。
【解決手段】保険会社における変額商品に係る資産運用機能を提供する変額資産管理システム3であって、契約管理システム2において管理される利用者の保険契約につき、当該保険契約に係る口座および当該口座に保有する変額商品の情報を保持して管理する変額資産管理部32を有し、変額資産管理部32は、利用者4からの資産に係る照会要求もしくは運用指示を受けて、投信会社5のシステムに接続して前記要求もしくは前記指示を実行し、保険契約に係る応当日に、契約管理システム2からの入金に対応して所定の変額商品の買付を行い、もしくは前記口座に保有する所定の変額商品の売却を行って、売却代金を契約管理システム2に出金し、契約管理システム2に対して特別勘定での仕訳処理を指示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保険会社における変額商品に係る資産運用機能を提供する変額資産管理システムであって、
保険会社における保険保障機能を提供する情報処理システムである契約管理システムにおいて管理される利用者の保険契約につき、当該保険契約に係る口座および当該口座に保有する変額商品の情報を保持して管理する変額資産管理部を有し、
前記変額資産管理部は、前記利用者からの資産に係る照会要求もしくは運用指示を受けて、外部の投資信託会社のシステムに接続して前記要求もしくは前記指示を実行し、前記保険契約に係る応当日に、前記契約管理システムからの入金に対応して所定の変額商品の買付を行い、もしくは前記口座に保有する所定の変額商品の売却を行って、売却代金を前記契約管理システムに出金し、前記契約管理システムに対して特別勘定での仕訳処理を指示する、変額資産管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の変額資産管理システムにおいて、
前記変額資産管理部は、前記契約管理システムを介して前記利用者からの前記要求もしくは前記指示を受ける、変額資産管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の変額資産管理システムにおいて、
保険会社における既存の前記契約管理システムに対して付加する構成である、変額資産管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の変額資産管理システムにおいて、
保険会社における既存の前記契約管理システムから呼び出し可能なAPI(Application Programming Interface)により資産運用機能を提供する、変額資産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関における変額資産の管理に係る技術に関し、特に、生命保険会社等における変額保険や変額年金等の管理を支援する変額資産管理システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2025年度より、国内保険会社に適用される資本規制として、新たにESR(Economic Solvency Ratio:経済価値ベースのソルベンシー比率)が導入され、健全性を示すソルベンシーマージン比率にいわゆる時価評価の計算法が導入されることになる。この動きに伴い、保険会社では、所定の金額の保険金支払いを約束するタイプの従来の保険商品から、保険会社の運用リスクを回避して契約者が一定の運用リスクを負担する変額タイプの商品へのシフトが起きることが予想されている。
【0003】
変額商品は、日本では1970年代に取扱いが開始され、バブル期の好景気の中で各社が相次いで参入したものの、その後はバブル崩壊やリーマンショック等もあり、株安・円高により運用資産の元本割れが続出したことで、撤退やハイリスク商品の取扱い停止などが相次いだ。現在では多くの生命保険会社で変額商品を取り扱っておらず、取り扱っている一部の会社でも販売チャネルが制限されていたり、商品が陳腐化していたりなど、変額商品に注力している会社は少ない。
【0004】
変額商品の取扱いに関する技術として、例えば、特開2004-118732号公報(特許文献1)には、銀行等の金融機関で保険商品の窓口販売を行うためのシステムであるが、保険会社から取得した契約処理情報に含まれる変額保険の数量の情報と、当該変額保険の更新された時価の情報とから、当該変額保険の積立金額を算出することが記載されている。
【0005】
また、特開2003-67575号公報(特許文献2)には、保険会社のフロント部門においてコンピュータに入力された約定データを、バック部門の管理用コンピュータに送信、記録してそのまま利用することで、バック部門における約定データの重複入力を不要とし、有価証券の売買情報全体を集中的に管理することで、投資リスクを保険契約者が負うことになる変額商品について、運用実績等に関する情報開示をより迅速に行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-118732号公報
【特許文献2】特開2003-67575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
変額商品のトレンドは、現在ではバブル期から大きく転換している。すなわち、バブル期では契約者が保険会社に運用を一任するものが一般的だったのに対し、バブル崩壊後は、契約者が投資先のファンドを選定するものが主流になっている。
【0008】
したがって、生命保険会社では、過去に変額商品の販売実績がある場合であっても、現在において新たに変額商品を取り扱おうとする場合、従来技術のような変額商品を取り扱う仕組みでは大幅なシステムの改修等が必要となり、なかなか取り組むことができないという課題がある。すなわち、現状の生命保険会社では、基幹業務である保険保障の領域(既存の契約管理システム)と、変額商品に係る資産運用の領域とで、システムの機能やデータの管理構造などが切り分けられておらず混在して複雑化しており、また、変額商品についても新商品として対応したときから年数が経過して、ノウハウが属人化しているという状況がある。そして、変額商品の開発のために、保険保障と資産運用の両分野のシステムに精通した人材の育成や維持、アサインも困難な状況にある。
【0009】
そこで本発明の目的は、保険会社において保険保障を行う既存の契約管理システムに対して簡易・迅速に変額商品特有の資産運用機能を付加することを可能とする変額資産管理システムを提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0012】
本発明の代表的な実施の形態である変額資産管理システムは、保険会社における変額商品に係る資産運用機能を提供する変額資産管理システムであって、保険会社における保険保障機能を提供する情報処理システムである契約管理システムにおいて管理される利用者の保険契約につき、当該保険契約に係る口座および当該口座に保有する変額商品の情報を保持して管理する変額資産管理部を有するものである。
【0013】
そして、前記変額資産管理部は、前記利用者からの資産に係る照会要求もしくは運用指示を受けて、外部の投資信託会社のシステムに接続して前記要求もしくは前記指示を実行し、前記保険契約に係る応当日に、前記契約管理システムからの入金に対応して所定の変額商品の買付を行い、もしくは前記口座に保有する所定の変額商品の売却を行って、売却代金を前記契約管理システムに出金し、前記契約管理システムに対して特別勘定での仕訳処理を指示する。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0015】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、保険会社において保険保障を行う既存の契約管理システムに対して簡易・迅速に変額商品特有の資産運用機能を付加することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態である変額資産管理システムを含む保険会社システムの構成例について概要を示した図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における変額商品の取扱いに係るシステム的な概念を示した図である。
【
図3】本発明の一実施の形態における保険料入金の処理の流れの例について概要を示した図である。
【
図4】本発明の一実施の形態における契約応当日の処理の流れの例について概要を示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態における利用者からの運用指示に係る処理の流れの例について概要を示した図である。
【
図6】本発明の一実施の形態における解約の処理の流れの例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0018】
<概要>
本発明の一実施の形態である変額資産管理システムは、保険会社(本実施の形態では生命保険会社を例とする)の既存の契約管理システムに対して変額商品(変額保険、変額年金等)特有の機能を付加する情報処理システムであり、変額商品の管理機能を有していない、もしくは有していても既存の契約管理システムとの結合が強く、契約管理システムの機能制約を受けているようなケースにおいて、変額商品特有の資産運用機能を容易に付加することを可能とするシステムである。
【0019】
図2は、本発明の一実施の形態における変額商品の取扱いに係るシステム的な概念を示した図である。上段の図は、既存の契約管理システムに対して、例えば、従来の変額商品管理パッケージを組み込むことで対応する場合の例を示している。従来の変額商品管理パッケージは、契約管理機能と変額資産管理機能が一体となっていて切り分けがされていないのが一般的であり、これを組み込むことで、契約管理機能については機能が重複する二重投資となり、機能的にも制約が生じることを概念的に示している。
【0020】
一方、下段の図は、既存の契約管理システムに対して、本発明の一実施の形態における変額資産管理システムを適用することで対応する場合の例を示している。ここでは、変額資産管理システムが契約管理機能から分離されており、既存の契約管理システムに対して外付けするような形で変額資産管理機能を付加することが可能であることを示している。
【0021】
すなわち、本実施の形態では、生命保険会社が本来注力すべき保険保障領域(既存の契約管理システム)と、非競争領域である変額商品に係る資産運用領域(変額資産管理システム)とを重複なく分離することで、両者の特性に合わせたシステムとその開発体制を整備することを可能とするものである。さらに、変額資産管理システムの機能を、生命保険業界共同のサービスとして提供することで、生命保険会社が保険保障領域に注力することを可能とするものである。
【0022】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態である変額資産管理システムを含む保険会社システムの構成例について概要を示した図である。生命保険会社の保険会社システム1は、既存の契約管理システム2と、変額資産管理システム3から構成され、これらは、上述したとおり分離された形で構成される。
【0023】
契約管理システム2および変額資産管理システム3は、それぞれ、例えば、1つ以上のサーバ機器もしくはクラウドコンピューティングサービス上に構築された1つ以上の仮想サーバ等により実装され、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、それぞれ、保険保障領域および資産運用領域に係る各種機能を実現する。変額資産管理システム3は、その機能をAPI(Application Programming Interface)として公開することで、各生命保険会社の契約管理システム1に対してサービスとして提供する構成としてもよい。
【0024】
契約管理システム2は、例えば、ソフトウェアとして実装されたフロント部21、契約管理部22、および経理・資産運用部23などの各部を有する。また、データベースとして実装された契約データベース(DB)24などのデータストアを有する。
【0025】
フロント部21は、利用者4(契約者や保険金の受取人)や生命保険会社の担当者等が、PCやスマートフォンなどの情報処理端末を利用して契約管理システム2にアクセスするためのフロントエンド機能を有する。例えば、生命保険会社のホームページやネットサービスなどのWebサイト、専用アプリケーション等により対象の生命保険会社固有のユーザインタフェース(UI)を提供する。例えば、利用者4からの指示を受け付けて、契約管理部22に対して保険金の入金や契約の指示を行ったり、契約管理部22からの指示に基づいて利用者4に対する保険金や年金の支払いに係る処理を行ったりする。変額保険管理システム3が各生命保険会社に対して提供・公開するAPIを呼び出して、利用者4から受け付けた変額商品に係る各種照会や運用指示を行えるようにしてもよい。
【0026】
契約管理部22は、保険保障領域における契約管理業務のバックオフィス機能を有する。例えば、各利用者4の契約状況の維持管理や履歴情報の保持、利用者4からの履歴の照会に対する応答、契約管理処理(入金、解約、減額、失効等)の実行、契約管理に伴う仕訳(一般勘定)の作成、解約返戻金の計算などの各種処理を実行する。後述するように、保険関係費用を算出して、変額資産管理システム3に対して請求する処理も行う。なお、契約DB24には、利用者4の契約に係る情報を保持し、例えば、証券番号をキーとして、顧客情報や保障内容、収納情報、取扱者情報などの項目のデータを保持する。契約内容の変動の履歴情報を保持するデータストアを別途有してもよい。
【0027】
経理・資産運用部23は、仕訳などの経理に係る処理を行う。契約管理部22での処理に伴う一般勘定の仕訳処理に加えて、後述するように、変額資産管理システム3での処理に伴う特別勘定の仕訳処理も行う。変額資産管理システム3が提供するAPIを呼び出して変額商品に係る投資信託の取引照会を行う機能を有していてもよい。
【0028】
変額資産管理システム3は、例えば、ソフトウェアとして実装されたポータル部31、変額資産管理部32、およびファンド連携部33などの各部を有する。また、データベースとして実装された口座ファンドDB34などのデータストアを有する。
【0029】
ポータル部31は、利用者4が変額資産管理システム3にアクセスして利用するためのポータル機能を提供する。例えば、各生命保険会社共通のポータルとしてのWebサイトや専用のアプリケーション(例えば、一般的な資産管理アプリケーション等)等により利用者4に対して資産運用に係るUIを提供する。例えば、証券番号別の資産照会やその推移の照会、取り扱っているファンドの照会などの各種照会を行うためのUIや、スイッチング、繰入比率変更、オートリバランス、定期的積立金移転、新規ファンドの組入れなどの各種運用指示を行うためのUIを提供する。
【0030】
変額資産管理部32は、資産運用領域における変額資産管理業務のバックオフィス機能を有する。例えば、各利用者4の積立金(保有ファンドの評価価格)の計算、資産の照会に対する応答、資産状況の維持管理や履歴情報の保持、資産推移の照会に対する応答、資産管理処理(スイッチング、繰入比率変更、オートリバランス、定期的積立金移転等)の実行、資産管理に伴う仕訳(特別勘定)の作成、マイナンバーの収集・保管などの各種処理を実行する。後述するように、契約管理システム2からの請求に基づいて保険関係費用を払い出す処理も行う。なお、口座ファンドDB34には、利用者4の契約に関連付けられた口座内のファンドに係る情報を保持し、例えば、口座番号やファンドコードをキーとして、保有口数や基準日、評価価格などの項目のデータを保持する。口座ファンドの変動の履歴情報を保持するデータストアを別途有してもよい。
【0031】
ファンド連携部33は、ファンドを取り扱う外部の投信会社5のシステムに対する接続インタフェースの機能を有する。例えば、変額資産管理部32からの要求に基づいて、投信会社5に対してファンドの基準価格を照会したり、買付や売却の指示を行ったり等の機能を有する。
【0032】
<処理の流れ>
以下では、本発明の一実施の形態における保険会社システム1(契約管理システム2および変額資産管理システム3)での各種業務やイベントに係る処理の流れの例について示す。
【0033】
図3は、本発明の一実施の形態における保険料入金の処理の流れの例について概要を示した図である。まず、契約管理システム2の契約管理部22が、所定のタイミングで契約DB24を参照して、利用者4(契約者)に対して保険料の請求を行い(S01)、利用者4が請求に係る保険料を入金する(S02)。例えば、利用者4の銀行口座から保険料を口座振替するよう指示するような構成とすることができる。
【0034】
保険料の入金がされると、そのうちの純保険料については、資産運用に回すために変額資産管理システム3の変額資産管理部32において管理されている利用者4の証券番号に関連付けられた口座に入金処理する(S03)とともに、付加保険料については、経理・資産運用部23において一般勘定での仕訳処理を行う(S04)。
【0035】
変額資産管理システム3の変額資産管理部32では、純保険料の入金に対応して、ファンド連携部33を介して投信会社5に対して所定のファンドの買付を行い(S05、S06)、買い付けたファンドの情報に基づいて口座ファンドDB34の内容を更新する(S07)。さらに、契約管理システム2の経理・資産運用部23に指示して、特別勘定での仕訳処理を行って(S08)、一連の処理を終了する。
【0036】
なお、契約管理システム2と変額資産管理システム3とが分離された構成であることから、ステップS03の純保険料の入金と、ステップS05のファンドの買付との間で時点差異が生じる場合があるが、本実施の形態ではこれを吸収することができる。すなわち、時点差異が生じるケースとして、例えば、上述した処理の流れとは異なり、買付の際に入金が間に合わず、買付→入金の流れとなった場合は、いわゆる「みなし入金」があったものとして買付処理を行い、後の実際の入金によって追完する。また、複数の入金がある場合は、翌月の同一日にまとめて買付を行うことで、各入金のタイムラグを吸収する。
【0037】
図4は、本発明の一実施の形態における契約応当日の処理の流れの例について概要を示した図である。利用者4の契約日に対する毎月や毎年の応当日において、変額資産管理システム3の変額資産管理部32では、必要に応じて、ファンド連携部33を介して投信会社5に対して保有ファンドの売却を行い(S11、S12)、売却したファンドの情報に基づいて口座ファンドDB34の内容を更新する(S13)。さらに、契約管理システム2の経理・資産運用部23に指示して、特別勘定での仕訳処理を行う(S14)。
【0038】
一方、契約管理システム2の契約管理部22は、契約DB24を参照して、契約者4に係る保険関係費用の請求を、変額資産管理システム3に対して行う(S15)。変額資産管理システム3の変額資産管理部32では、請求に係る保険関係費用を対象の口座から控除した上で、これを契約管理システム2に対して払い出す(S16)。払出しを受けた契約管理システム2の契約管理部22は、経理・資産運用部23に指示して、一般勘定での仕訳処理を行って(S17)、一連の処理を終了する。
【0039】
なお、入出金と、ファンドの買付・売却の損益との関係では、入出金の日付に対して生命保険特有の基準日に係る処理(例えば、死亡日に遡及させる等)を行った場合、ファンドの買付・売却との間で時点差異が生じる場合があるが、本実施の形態では、この時点差異による損益の差分を、変額資産管理システム3の変額資産管理部32において把握し管理するものとする。
【0040】
図5は、本発明の一実施の形態における利用者4からの運用指示に係る処理の流れの例について概要を示した図である。利用者4が、変額資産管理システム3のポータル部31へのアクセスを介して、保有するファンドに係るスイッチング等の運用指示を行うと(S21)、変額資産管理部32では、運用指示に従い、ファンド連携部33を介して投信会社5に対して対象のファンドの買付もしくは売却を行い(S22、S23)、買付もしくは売却の情報に基づいて口座ファンドDB34の内容を更新する(S24)。さらに、契約管理システム2の経理・資産運用部23に指示して、特別勘定での仕訳処理を行って(S25)、一連の処理を終了する。
【0041】
図6は、本発明の一実施の形態における解約の処理の流れの例について概要を示した図である。利用者4が、例えば、契約管理システム2のフロント部21等へのアクセスを介して、保険契約の解約を指示すると(S31)、契約管理部22では、変額資産管理システム3に対してファンドの売却の指示を行う(S32)。
【0042】
変額資産管理システム3の変額資産管理部32では、指示に従い、ファンド連携部33を介して投信会社5に対して解約に係る口座内の全ファンドの売却を行い(S33、S34)、売却の内容に基づいて口座ファンドDB34の内容を更新する(S35)。さらに、契約管理システム2の経理・資産運用部23に指示して、特別勘定での仕訳処理を行う(S36)とともに、売却代金を含む積立金を契約管理システム2に対して出金する(S37)。
【0043】
出金を受けた契約管理システム2の契約管理部22は、解約に伴う諸経費等を控除した上で、経理・資産運用部23に指示して一般勘定での仕訳処理を行う(S38)。また、解約返戻金を計算して、利用者4に支払い(S39、S40)、一連の処理を終了する。
【0044】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態である変額資産管理システム3によれば、変額商品に係る資産運用機能を、既存の契約管理システム2から分離した形で構築することができ、変額商品の取扱いに対するシステム対応を簡易・迅速化することが可能になるとともに、保険保障領域と資産運用領域のそれぞれの特性に合わせたシステムと開発体制の整備を容易にすることが可能となる。また、変額資産管理システム3による資産運用機能を、クラウド上でのサービスとして提供することで、生命保険会社は、差別化領域である保険保障領域に注力することが可能となる。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0046】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0047】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、生命保険会社等における変額保険や変額年金等の管理を支援する変額資産管理システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…保険会社システム、2…契約管理システム、3…変額資産管理システム、4…利用者、5…投信会社、
21…フロント部、22…契約管理部、23…経理・資産運用部、24…契約DB。
31…ポータル部、32…変額資産管理部、33…ファンド連携部、34…口座ファンドDB