(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085098
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】ケラチン繊維のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20240619BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240619BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/37
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199443
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】淺間 仁美
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 宜己
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由実子
(72)【発明者】
【氏名】アイザック・エン・ティン・リー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083BB13
4C083CC33
4C083DD23
4C083DD30
4C083EE28
(57)【要約】
【課題】毛髪等のケラチン繊維のための組成物であって、着色したケラチン繊維の色を保護又は維持できる組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪を処置するための組成物であって、
(a)少なくとも1種の脂肪酸と、
(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーと、
を含み、組成物中の(a)脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための組成物であって、
(a)少なくとも1種の脂肪酸と、
(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーと、
を含み、
組成物中の(a)脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、組成物。
【請求項2】
脂肪酸が、直鎖状飽和脂肪酸及び1~3つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状不飽和脂肪酸から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂肪酸が、6~28個の炭素原子、好ましくは8~24個の炭素原子、より好ましくは10~22個の炭素原子を有する脂肪酸から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
脂肪酸が、アラキジン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、リノール酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの混合物から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、3質量%~20質量%、好ましくは4質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~12質量%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(b)オリゴマー中のヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドが、以下の式(A):
【化1】
(式中、
R
1は、例えば1~18個の炭素原子を含む、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、
R
2は、例えば1~12個の炭素原子を含む、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す)
によって表される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(b)オリゴマー中の飽和二酸が、以下の式(B):
【化2】
(式中、
X
1は、直鎖状又は分枝状のアルキレン基、好ましくは直鎖状のアルキレン基-(CH
2)
x-(式中、xは、1~30、好ましくは3~15の整数である)である)
によって表される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(b)ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーが、水添ヒマシ油/セバシン酸コポリマーである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物中のヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーの量が、組成物の総質量に対して、0.05質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.15質量%~5質量%の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の油を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
油がトリグリセリドから選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
リンスオフタイプである、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物をケラチン繊維に適用する工程を含む、美容方法。
【請求項14】
ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、
(i)(a)少なくとも1種の脂肪酸又は(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーのいずれか一方を含む第1の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
(ii)第1の組成物中に含まれない、(a)少なくとも1種の脂肪酸又は(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーの他方を含む第2の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
を含み、第1又は第2の組成物中の(a)脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の美容処置の分野において、リンスオフタイプの毛髪用化粧料は、ヘアケアのカテゴリーにおける重要な部門であり、消費者はこれらの毛髪用化粧料を使用して、毛髪に滑らかさ等を付与する。
【0003】
例えば、WO 2017/132308は、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪族アルコール、及びこれらの混合物から選択される1種以上の不飽和脂肪物質である脂質を約0.01%~約20%含むヘアケア組成物を開示している。
【0004】
しかしながら、この先行技術は、毛髪の着色、特に着色した毛髪の色の保護を対象としたものではない。ケラチン繊維、特に毛髪を処置するための化粧用組成物であって、着色したケラチン繊維、特に着色した毛髪に改善された色保護特性を付与できる化粧用組成物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2017/132308
【特許文献2】仏国特許出願公開第8516334号
【特許文献3】米国特許第4,957,732号
【特許文献4】欧州特許第0186507号
【特許文献5】欧州特許出願第0342834号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Walter NOLL著、「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年)、Academic Press
【非特許文献2】Cosmetics and Toiletries、第91巻、1976年1月、27~32頁、TODD & BYERS、「Volatile Silicone Fluids for Cosmetics」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、毛髪等のケラチン繊維のための組成物であって、着色したケラチン繊維の色を保護又は維持できる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための組成物であって、
(a)少なくとも1種の脂肪酸と、
(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーと、
を含み、
組成物中の(a)脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、組成物によって達成することができる。
【0009】
脂肪酸は、直鎖状飽和脂肪酸及び1~3つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状不飽和脂肪酸から選択されうる。
【0010】
脂肪酸は、6~28個の炭素原子、好ましくは8~24個の炭素原子、より好ましくは10~22個の炭素原子を有する脂肪酸から選択されうる。
【0011】
脂肪酸は、アラキジン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、リノール酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0012】
組成物中の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、3質量%~20質量%、好ましくは4質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~12質量%の範囲でありうる。
【0013】
(b)オリゴマー中のヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドは、以下の式(A):
【0014】
【0015】
(式中、
R1は、例えば1~18個の炭素原子を含む、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、
R2は、例えば1~12個の炭素原子を含む、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す)
によって表されうる。
【0016】
(b)オリゴマー中の飽和二酸は、以下の式(B):
【0017】
【0018】
(式中、
X1は、直鎖状又は分枝状のアルキレン基、好ましくは直鎖状のアルキレン基-(CH2)x-(式中、xは、1~30、好ましくは3~15の整数である)である)
によって表されうる。
【0019】
(b)ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、水添ヒマシ油/セバシン酸コポリマーであってもよい。
【0020】
組成物中のヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーの量は、組成物の総質量に対して、0.05質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.15質量%~5質量%の範囲でありうる。
【0021】
本発明による組成物は、少なくとも1種の油を更に含んでもよい。油は、トリグリセリドから選択してもよい。
【0022】
組成物は、リンスオフタイプであってもよい。
【0023】
本発明はまた、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン繊維に適用する工程を含む、美容方法にも関する。
【0024】
本発明はまた、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、
(i)(a)少なくとも1種の脂肪酸又は(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーのいずれか一方を含む第1の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
(ii)第1の組成物中に含まれない、(a)少なくとも1種の脂肪酸又は(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーの他方を含む第2の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
を含み、第1又は第2の組成物中の(a)脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、美容方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
鋭意検討の結果、本発明者らは、本発明の成分の組合せが、着色したケラチン繊維に対して改善された色保護特性を示すことができる、毛髪等のケラチン繊維のための組成物を生成することを発見した。
【0026】
そのため、本発明は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための組成物であって、
(a)少なくとも1種の脂肪酸と、
(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーと、
を含み、
組成物中の(a)脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、組成物に主に関する。
【0027】
本発明による組成物は、着色したケラチン繊維のために、特に着色したケラチン繊維の色の保護及び/又は維持のために使用することができ、改善された色の保護及び/又は維持効果をもたらす。
【0028】
「ケラチン繊維」としては、本明細書では、毛髪、眉毛、まつ毛等が挙げられる。本発明は、毛髪用に使用されることが好ましい。
【0029】
「着色したケラチン繊維の色の保護」又は「着色したケラチン繊維の色の維持」という表現は、ケラチン繊維を染色することによって既にケラチン繊維に付与されたケラチン繊維の色を保護又は維持する効果を意味する。そのため、「着色したケラチン繊維の色の保護」又は「着色したケラチン繊維の色の維持」という表現は、着色したケラチン繊維からの色の退色又は侵出を防止する効果としても理解される。本発明による組成物はまた、ケラチン繊維に、改善された色の永続性も付与することができる。
【0030】
本発明による組成物で処置しようとするケラチン繊維は、該ケラチン繊維を染色することによって着色できてきた。ケラチン繊維の染色方法は特に限定されないが、典型的には、ケラチン繊維は、酸化染料を使用した酸化着色前駆体で着色されてきた。
【0031】
本発明による組成物は、好ましくは化粧用組成物として使用されうる。特に、本発明による組成物は、毛髪等のケラチン繊維上への適用が意図されてもよい。そのため、本発明による組成物は、ケラチン繊維のための美容方法のために使用することができる。
【0032】
本発明による組成物は、溶液、ゲル、ローション、セラム、懸濁液、分散体、流体、乳液、増粘化されているか若しくは増粘化されていないW/O若しくはO/Wエマルション、ペースト、フォーム、又はクリーム等の任意の形態で存在することができる。
【0033】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、リンスオフタイプの化粧用組成物である。リンスオフンタイプの組成物は、ケラチン繊維上で使用された後に洗い落とされることが意図される。
【0034】
以下、本発明を、詳細に説明する。
【0035】
[組成物]
本発明の一態様は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための組成物であって、
(a)少なくとも1種の脂肪酸と、
(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーと、
を含む、組成物に関する。
【0036】
各成分を、以下で詳細に説明する。
【0037】
(脂肪酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の脂肪酸を含む。2種以上の脂肪酸を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの脂肪酸、又は異なるタイプの脂肪酸の組合せを使用することができる。
【0038】
用語「脂肪酸」は、本明細書では、脂肪族鎖を有する単官能性カルボン酸を意味する。
【0039】
脂肪酸は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。本発明の好ましい一実施形態では、脂肪酸は直鎖状である。
【0040】
脂肪酸は、飽和であっても、不飽和であってもよい。本発明の好ましい一実施形態では、脂肪酸は、飽和脂肪酸から選択される。本発明の別の好ましい実施形態では、脂肪酸は、1~3つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸から選択される。
【0041】
脂肪酸の非限定的な例には、6~28個の炭素原子、好ましくは8~24個の炭素原子、より好ましくは10~22個の炭素原子、更により好ましくは12~20個の炭素原子、特に14~18個の炭素原子を有する脂肪酸が挙げられる。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態では、脂肪酸は、直鎖状飽和脂肪酸及び1~3つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状不飽和脂肪酸から選択される。
【0043】
本発明の更に好ましい実施形態では、脂肪酸は、6~28個の炭素原子、好ましくは8~24個の炭素原子、より好ましくは10~22個の炭素原子、更により好ましくは12~20個の炭素原子、特に14~18個の炭素原子を有する直鎖状脂肪酸から選択され、ここで、脂肪酸は、飽和又は1~3つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和である。
【0044】
脂肪酸は、以下の式(I):
RCOOH (I)
(式中、
Rは、直鎖状又は分枝状の、好ましくは直鎖状のC6~C28アルキル基又はアルケニル基、好ましくはC8~C24アルキル基又はアルケニル基、より好ましくはC10~C20アルキル基又はアルケニル基、特にC12~C18アルキル基又はアルケニル基である)
で表すことができる。Rは、1~3つの炭素-炭素二重結合を含んでもよい。
【0045】
脂肪酸の非限定的な例としては、アラキジン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、リノール酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0046】
好ましくは、脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、及びこれらの混合物から選択される。
【0047】
本発明による組成物中の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である。好ましくは、組成物中の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更により好ましくは5質量%以上でありうる。
【0048】
本発明による組成物中の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下でありうる。
【0049】
本発明による組成物は、脂肪酸を、組成物の総質量に対して、3質量%~20質量%、好ましくは4質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~12質量%の量で含有してもよい。
【0050】
本発明の文脈において、上記の上限値と下限値との任意の組合せは、好ましい量の範囲を表すために利用可能でありうる。
【0051】
(ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマー)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーを含む。2種以上の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマー、又は異なるタイプの、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーの組合せを使用することができる。
【0052】
用語「オリゴマー」は、本明細書では、そこで比較的少ない数のモノマーが結合されているポリマーを意味する。オリゴマー中のモノマーの数が、100以下、より好ましくは50以下、更により好ましくは20以下であることが好ましい。
【0053】
(b)ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリド(例えば水添ヒマシ油)と飽和二酸との反応によって得ることができる。この反応は、エステル化であってもよい。そのため、(b)ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、ヒドロキシ化脂肪酸と飽和二酸とのオリゴエステルであってもよい。
【0054】
本発明によれば、二酸は、それからそれが構成されている炭化水素系鎖が、不飽和基、すなわち炭素-炭素二重結合を有していないときに、飽和であると言われる。用語「二酸」は、本明細書では、2つの-COOHカルボキシル官能基を含む炭化水素系化合物を意味する。二酸は、単一の二酸であってもよく、又はいくつかの異なる二酸の混合物であってもよい。
【0055】
本発明の一実施形態において、二酸は、鎖の末端に2つの-COOHカルボキシル官能基を含む。
【0056】
同様に、本発明の意味において、オリゴマーは、いくつかの異なるオリゴマーの混合物であることができる。
【0057】
使用されうる飽和二酸の中で、セバシン酸(又は1,10-デカン二酸)、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、オクタデカメチレンジカルボン酸及びエイコサジカルボン酸を挙げることができる。
【0058】
より詳細には、オリゴマーは、その各モノマーが、次式(A)のトリグリセリドと次式(B)の二酸によって表される、オリゴエステルであってもよい:
【0059】
【0060】
[式中、
R1は、例えば1~18個の炭素原子を含む、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、好ましくは-(CH2)l-基(式中、「l」は、1~20、特に3~16、例えば6~12で変化しうる)を表し、
R2は、例えば1~12個の炭素原子を含む、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、好ましくは-(CH2)m-CH3基(式中、「m」は、0~11、特に2~11、例えば3~9で変化しうる)を表し、
X1は、直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、好ましくは直鎖状のアルキレン基-(CH2)x-(式中、「x」は、1~30、好ましくは3~15の整数である)を表す]。
【0061】
一実施形態によれば、l=10であり、m=5であり、且つ上式(A)中の基:
【0062】
【0063】
は、12-ヒドロキシステアリン酸(水添ヒマシ油の主要成分)のアルキル残基を表す。
【0064】
二酸がセバシン酸であるとき、X1は、直鎖状のアルキレン基-(CH2)x-(式中、「x」は8である)を表す。
【0065】
オリゴマーの平均重合度は、3から12の間で、好ましくは4から10の間で変動しうる。
【0066】
そのため、(b)ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、以下の式(C):
【0067】
【0068】
(式中、
R1、R2及びX1のそれぞれは、上に説明した意味を有し、
nは、3から12の間、好ましくは4から10の間の平均重合度を意味する)
によって表すことができる。
【0069】
上式(C)中の以下の基:
【0070】
【0071】
が、12-ヒドロキシステアリン酸のアルキル残基を表し、且つX1が、-(CH2)8-を表すことが好ましい。
【0072】
(a)ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーが、水添ヒマシ油とセバシン酸とのオリゴエステル、すなわち水添ヒマシ油とセバシン酸とから形成された水添ヒマシ油/セバシン酸コポリマーであることが、より好ましい。
【0073】
水添ヒマシ油/セバシン酸コポリマーは、特にクローダ株式会社により、重合度に応じて様々な名称で販売されている。
【0074】
水添ヒマシ油/セバシン酸コポリマーの中で、約4.6の重合度を有するものが商品名「CROMADOL CWS-5」で入手可能であり、約9.5の重合度を有するものが商品名「CROMADOL CWS-10」で入手可能であり、クローダジャパン株式会社により販売されている。
【0075】
クローダ株式会社により名称CRODABOND CSA(MW=3,500)で販売されている、水添ヒマシ油とセバシン酸とのオリゴマーもまた挙げることができる。
【0076】
ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上の量で存在しうる。
【0077】
ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の量で存在しうる。
【0078】
ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、0.05質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.15質量%~5質量%の範囲の量で存在しうる。
【0079】
(油)
本発明による組成物は、少なくとも1種の油を含んでもよい。2種以上の油を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの油、又は異なるタイプの油の組合せを使用することができる。
【0080】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)にて、液体又はペースト(非固体)の形態にある脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品に一般に使用されるものを、単独で又はそれらの組合せで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0081】
油は、非極性油、例えば炭化水素油若しくはシリコーン油等、極性油、例えば植物若しくは動物油、エステル油、エーテル油、若しくは脂肪族アルコール、又はこれらの混合物であってもよい。
【0082】
油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油、及び脂肪族アルコール、並びにこれらの組合せからなる群から選択されうる。
【0083】
植物油の例として、例えば、アマニ油、カメリア油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0084】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0085】
合成油の例として、アルカン油、例えば、イソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、特に人工トリグリセリド等のトリグリセリド、並びにエーテル油を挙げることができる。
【0086】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、該エステルの炭素原子の総数は10以上である。
【0087】
好ましくは、一価アルコールのエステルの場合、本発明のエステルが誘導されるアルコール及び酸のうちの少なくとも1種は、分枝状である。
【0088】
一酸と一価アルコールとのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0089】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、及びモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルも使用されうる。
【0090】
とりわけ挙げることができるのは、セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールである。
【0091】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の、糖エステル及びジエステルを使用することができる。「糖」という用語は、いくつかのアルコール官能基を含有し、アルデヒド又はケトン官能基を有し又は有さず、且つ少なくとも4個の炭素原子を含む、酸素を保持する炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖、又は多糖であってもよい。
【0092】
挙げることができる好適な糖の例には、スクロース(又はサッカロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにこれらの誘導体、特にアルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてはメチルグルコースが含まれる。
【0093】
脂肪酸の糖エステルは、特に、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状の、飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物を含む群から選択されうる。これらの化合物が不飽和である場合、1~3つの共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有しうる。
【0094】
この変形形態によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0095】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えばとりわけ、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルでありうる。
【0096】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、とりわけスクロース、グルコース、又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0097】
挙げることができる例は、ジオレイン酸メチルグルコースである、Amerchol社により名称Glucate(登録商標) DOで販売されている製品である。
【0098】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0099】
トリグリセリドは、グリセロールと3つの脂肪酸とから誘導されるエステルであり、トリアシルグリセロールと呼ばれることもある。
【0100】
トリグリセリドは、少なくとも1つの飽和又は不飽和脂肪酸残基を含む。トリグリセリドは、少なくとも1つの飽和脂肪酸残基を有することが好ましい。言い換えれば、トリグリセリドは、グリセロールと、少なくとも1つの飽和脂肪酸とから誘導されるエステルであることが好ましい。2つ以上の飽和又は不飽和脂肪酸が使用される場合、それらは同じであっても異なってもよく、好ましくは異なってもよい。したがって、特定の一実施形態において、トリグリセリドは、2つの異なる飽和脂肪酸残基を含む。
【0101】
トリグリセリド中の脂肪酸部分は、4~30個の炭素原子、好ましくは5~20個の炭素原子、より好ましくは6~12個の炭素原子を有しうる。
【0102】
トリグリセリドは、人工トリグリセリドであってもよい。人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0103】
シリコーン油の例を含むシリコーン油の詳細な説明に関しては、以下の(シリコーン油)の項を参照されたい。
【0104】
炭化水素油は、以下から選択されうる:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカンが含まれる。
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、流動パラフィン、流動石油ゼリー、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、並びにスクアラン。
【0105】
炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば液状パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等;水添ポリイソブテン、イソエイコサン、及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0106】
脂肪族アルコールにおける「脂肪族」という用語は、比較的多数の炭素原子の包含を意味する。そのため、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪族アルコールの範囲内に包含される。脂肪族アルコールは、飽和であっても、不飽和であってもよい。脂肪族アルコールは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0107】
脂肪族アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和で、直鎖状及び分枝状の基から選択される)を有しうる。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル基及びC12~C20アルケニル基から選択されうる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0108】
脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0109】
そのため、脂肪族アルコールは、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和C6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0110】
用語「飽和の脂肪族アルコール」は、本明細書では、長い脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和の脂肪族アルコールが、任意の直鎖状又は分枝状の、飽和のC6~C30脂肪族アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪族アルコールの中で、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪族アルコールが、好ましくは使用されうる。任意の直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪族アルコールを、より好ましくは使用することができる。分枝状C16~C20脂肪族アルコールが、更により好ましくは使用されうる。
【0111】
飽和脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールが、飽和の脂肪族アルコールとして使用されうる。
【0112】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中に使用される脂肪族アルコールは、好ましくは、セチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール及びこれらの混合物から選択される。
【0113】
油が、分子量が600g/mol未満の油から選択されることが好ましい場合がある。
【0114】
好ましくは、油は、600g/mol未満等の低分子量を有し、炭化水素短鎖(C1~C12)を有するエステル油(例えば、ラウロイルサルコシンイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、及びパルミチン酸エチルヘキシル)、カプリリル/カプリルトリグリセリド等の人工トリグリセリド、炭化水素油(例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、及びスクアラン)、オクチルドデカノール及びオレイルアルコール等の分枝状及び/又は不飽和脂肪族アルコール(C12~C30)型油、並びにジカプリリルエーテル等のエーテル油のうちから選択される。
【0115】
本発明による組成物中の油は、シリコーン油であってもよい。単一のタイプのシリコーン油を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのシリコーン油を組み合わせて使用することもできる。
【0116】
本明細書では、「シリコーン油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)にて、液体又はペーストの形態にある、シリコーン化合物又はシリコーン物質を意味する。シリコーン油としては、化粧品中に一般に使用されるものが、単独又はそれらの組合せで使用されうる。
【0117】
シリコーン又はオルガノポリシロキサンは、例としては、Walter NOLLにより「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年)、Academic Pressにおいて定義されている。これらは、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0118】
そのため、シリコーン油は、揮発性シリコーン、不揮発性シリコーン、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0119】
そのため、シリコーン油は、少なくとも1種の揮発性シリコーン油若しくは少なくとも1種の不揮発性シリコーン油のいずれか、又は少なくとも1種の揮発性シリコーン油と少なくとも1種の不揮発性シリコーン油との両方を含んでもよい。
【0120】
揮発性又は不揮発性シリコーンは、少なくとも1つの有機官能性部分又は基で任意選択により変性された、直鎖状、分枝状又は環状シリコーンから選択されうる。
【0121】
例えば、シリコーン油は、ポリジアルキルシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルトリメチコーン、ポリジアリールシロキサン;並びにポリ(オキシアルキレン)部分又は基、アミン又はアミド部分又は基、アルコキシ又はアルコキシアルキル部分又は基、ヒドロキシル又はヒドロキシル化部分又は基、アシルオキシ又はアシルオキシアルキル部分又は基、カルボン酸又はカルボキシレート部分又は基、ヒドロキシアシルアミノ部分又は基、アクリル部分又は基、ポリアミン又はポリアミド部分又は基、及びオキサゾリン部分から選択される少なくとも1つの有機官能性部分又は基を含む、有機変性されたポリシロキサンからなる群から選択されうる。
【0122】
シリコーン油が揮発性である場合、シリコーン油は、沸点が60℃~260℃の範囲のものから選ばれてよく、例えば以下である:
(i)環状シリコーン、例えば、3~7個、例としては4~6個のケイ素原子を含むポリジアルキルシロキサン。このようなシロキサンの非限定的な例には、例としてはUNION CARBIDE社により商品名VOLATILE SILICONE(登録商標)7207で、及びRHODIA社によりSILBIONE(登録商標)70045 V2で市販されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、UNION CARBIDE社により商品名VOLATILE SILICONE(登録商標)7158で、及びRHODIA社によりSILBIONE(登録商標)70045 V5で、信越化学工業株式会社によりKF-995で市販されているデカメチルシクロペンタシロキサン、並びに例としては、Dow Corning社により商品名XIAMETER(登録商標)PMX-246及び商品名DC246 Fluidで市販されているドデカメチルシクロヘキサシロキサン(INCI:シクロヘキサシロキサン)、並びにこれらの混合物が挙げられる。また、使用してもよいシクロメチコーンとしては、例えばDOW CORNING社によりDC 244、DC 245、DC 344、DC 345、及びDC 246の参照名で市販されているものがある。ジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサンのタイプのシクロコポリマー、例えば次式:
【0123】
【0124】
(式中、
【0125】
【0126】
)
の、UNION CARBIDE社により市販されているSILICONE VOLATILE(登録商標)FZ 3109もまた使用されてもよい。ポリジアルキルシロキサン等の環状シリコーンの、ケイ素由来の有機化合物との組合せ、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの(50/50)混合物、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-(ヘキサ-2,2,2',2',3,3'-トリメチルシリルオキシ)ビス-ネオペンタンとの混合物もまた使用されてもよい。
(ii)2~9個のケイ素原子を含む直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサン。そのような化合物の非限定的な例は、例えばTORAY SILICONE社により商品名「SH-200」で市販されているデカメチルテトラシロキサンである。このクラスに属するシリコーンは、例えば、Cosmetics and Toiletries、第91巻、1976年1月、27~32頁、TODD & BYERS、「Volatile Silicone Fluids for Cosmetics」にも記載されている。
【0127】
シリコーン油が揮発性である場合、シリコーン油は、環状シリコーンから選択されうる。
【0128】
一方、シリコーン油は、不揮発性シリコーンから、例えばポリジアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、ポリジアリールシロキサン、及び上に説明した有機変性ポリシロキサンから選択されうる。
【0129】
一実施形態によれば、シリコーン油は、不揮発性ポリジアルキルシロキサンから、例えば、ジメチコーンの商品名で知られる、トリメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサンから選択されうる。
【0130】
そのようなポリジアルキルシロキサンに対応する市販製品の非限定的な例には、以下が含まれる:
RHODIA社により市販されているSILBIONE(登録商標)液の47及び70 047シリーズ、並びにMIRASIL(登録商標)液、例えば70 047液V 500 000、
RHODIA社により市販されているMIRASIL(登録商標)シリーズの液、
DOW CORNING社により市販されている200シリーズの液、例えば粘度が60,000mm2/sのDC200、
Dow Corning社により市販されているXIAMETER(登録商標) PMX-200 SILICONE FLUID 60000CS、
GENERAL ELECTRIC社のVISCASIL(登録商標)液、及びGENERAL ELECTRIC社のSFシリーズのいくつかの液(例えばSF 96及びSF 18)、並びに
DOW CORNING社により参照名DC 1664で市販されている液。
【0131】
このクラスのポリジアルキルシロキサンに属する、GOLDSCHMIDT社により「ABIL Wax(登録商標) 9800及び9801」の商品名で市販されている製品は、ポリジアルキル(C1~C20)シロキサンであり、これもまた使用されうる。
【0132】
ポリアルキルアリールシロキサンは、ポリジメチル/メチルフェニルシロキサン、直鎖状及び/又は分枝状のポリジメチル/ジフェニルシロキサンから選択されうる。
【0133】
このようなポリアルキルアリールシロキサンの非限定的な例には、以下の商品名で市販されている製品が挙げられる:
RHODIA社製のSILBIONE(登録商標)液の70 641シリーズ、RHODIA社からのRHODORSIL(登録商標)液の70 633シリーズ及び763シリーズ、
DOW CORNING社によりDOW CORNING 556 COSMETIC GRADE FLUIDの参照名で市販されているフェニルトリメチコーン液、
BAYER社製のPKシリーズのシリコーン、例えばPK20製品、
BAYER社によるPNシリーズ、PHシリーズのシリコーン、例えばPN1000製品及びPH1000製品、並びに
GENERAL ELECTRIC社による幾つかのSFシリーズの液、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0134】
本発明に従って使用されうる有機変性シリコーンには、先に定義し、それらの構造内に、直接結合された、又は炭化水素基の手段により結合された少なくとも1つの有機官能性部分又は基を含むもの等のシリコーンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0135】
有機変性シリコーンには、例えば、以下を挙げることができる:
ポリエチレンオキシ部分及び/又はポリプロピレンオキシ部分を含み、C6~C24アルキル部分を任意選択で含むポリオルガノシロキサン、例えば、DOW CORNING社によりDC 1248の商品名及びDC Q2-5220の商品名で市販されているジメチコーンコポリオールと呼ばれる製品、並びにUNION CARBIDE社により市販されているSILWET(登録商標) L 722、L 7500、L 77及びL 711液、並びにDOW CORNING社によりXIAMETER(登録商標) OFX-0193 FLUIDの商品名で市販されているPEG-12ジメチコーン、並びにDOW CORNING社によりQ2 5200の商品名で市販されている(C12)アルキル-メチコーンコポリオール;
任意選択で置換されているアミン部分を含むポリオルガノシロキサン、例えばGENESEE社によりGP 4 Silicone Fluid及びGP 7100の商品名で市販されている製品、並びにDOW CORNING社によりQ2 8220、並びにDOW CORNING 929及び939の商品名で市販されている製品。置換されているアミン部分は、例えば、アミノC1~C4アルキル部分から選択されうる。アミノシリコーン又はアモジメチコーンは、追加のC1~C4アルコキシ官能基を有してもよく、例えばWACKER BELSIL ADM LOG 1製品に相当するものがある。アミノシリコーン又はアモジメチコーンは、好ましくはその分子鎖の末端に、少なくとも1つの、好ましくは2つの追加のアルキル基、例えばC12~C20、好ましくはC14~C18、より好ましくはC16~C18アルキル基を有していてもよく、例えばMomentive Performance Materials社により「Silsoft Ax」の商品名で市販されているビス-セテアリールアモジメチコーンがある;
アルコキシル化部分を含むポリオルガノシロキサン、例えば、SWS SILICONES社により「SILICONE COPOLYMER F-755」の商品名、並びにGOLDSCHMIDT社によりABIL WAX(登録商標) 2428、2434、及び2440の商品名で市販されている製品;
ヒドロキシル化部分を含むポリオルガノシロキサン、例えば、仏国特許出願公開第8516334号に記載されている、ヒドロキシアルキル官能基含有ポリオルガノシロキサン等;
アシルオキシアルキル部分を含むポリオルガノシロキサン、例えば、米国特許第4,957,732号に記載されているポリオルガノシロキサン;
カルボン酸型のアニオン性部分を含むポリオルガノシロキサン、例えばチッソ株式会社により市販されている、欧州特許第0186507号に記載されている製品、並びにカルボキシルアルキルのアニオン性部分を含むポリオルガノシロキサン、例えば信越化学工業株式会社により市販されているX-22-3701E製品中に存在するもの;スルホン酸2-ヒドロキシアルキルを含むポリオルガノシロキサン;及びチオ硫酸2-ヒドロキシアルキルを含むポリオルガノシロキサン、例えばGOLDSCHMIDT社により商品名「ABIL(登録商標)S201」及び「ABIL(登録商標)S255」で市販されている製品;
ヒドロキシアシルアミノ部分を含むポリオルガノシロキサン、例えば欧州特許出願第0342834号に記載されているポリオルガノシロキサン。対応する市販製品の非限定的な例は、DOW CORNING社により市販されているQ2-8413の製品である;
アクリル部分を含むポリオルガノシロキサン、例えば3M社により名称VS80及びVS70で市販されている製品;
ポリアミン部分を含むポリオルガノシロキサン、並びに
オキサゾリン部分を含むポリオルガノシロキサン
【0136】
【0137】
本発明に従って使用されてもよいシリコーンは、1つ又は2つのオキサゾリン基、例えばポリ(2-メチルオキサゾリン-b-ジメチルシロキサン-b-2-メチルオキサゾリン)及びポリ(2-エチル-2-オキサゾリン-ジメチルシロキサン)を含んでもよい。花王株式会社により参照名OX-40、OS-51、OS-96及びOS-88で市販されている製品もまた使用されうる。
【0138】
ジメチルシラノール末端基を有するポリジメチルシロキサンもまた使用することができ、例えば商品名ジメチコノール(CTFA)で販売されているもの、例えばRHODIA社により市販されている48シリーズの液がある。
【0139】
シリコーン油が不揮発性である場合、シリコーン油は、ポリジメチルシロキサン及び有機変性ポリジメチルシロキサンから選択されうる。有機変性されたポリジメチルシロキサンは、ジメチコーンコポリオールから選択されうる。ポリジメチルシロキサン又は有機変性ポリジメチルシロキサンの粘度は、1,000,000cst~20,000,000cstでありうる。
【0140】
シリコーン油が、揮発性又は不揮発性のシリコーン油から、例えば室温で液状又はペースト状である直鎖状又は環式シリコーン鎖を含有する揮発性又は不揮発性のポリジメチルシロキサン(PDMS)から、具体的にはシクロペンタシロキサン及びシクロヘキサシロキサン等のシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコーン);ペンダントである及び/又はシリコーン鎖の末端にある、アルキル基、アルコキシ基又はフェニル基を含有するポリジメチルシロキサン(これらの基は、1~24個の炭素原子を有する);フェニルトリメチコーン、フェニルジメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコーン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、シロキシケイ酸2-フェニルエチルトリメチル、及びポリメチルフェニルシロキサン等のフェニルシリコーン;並びにジメチコノール、ジメチコーンコポリオール(例えばPEG-12ジメチコーン及びPEG14ジメチコーン)及びアモジメチコーン(例えばビス-セテアリールアモジメチコーン)等の有機変性されたシリコーンから選択されることが好ましい場合がある。
【0141】
シリコーン油として、少なくとも1種の揮発性シリコーンと少なくとも1種の不揮発性シリコーンとの組合せを使用することが可能である。このような組合せの非限定的な例には、例としてはDow Corning社により商品名Xiameter PMX-1501 Fluidで市販されている、シクロペンタシロキサンとジメチコノールとの混合物が挙げられる。
【0142】
本発明の好ましい一実施形態において、油は、アルカン油、エステル油、特に人工トリグリセリド等のトリグリセリド、エーテル油、及びこれらの組合せから選択される、より好ましくはエステル油、及び特にカプリリル/カプリルトリグリセリド等の人工トリグリセリドから選択される合成油から選択される。
【0143】
本発明による組成物中の油の量は、限定されない。例えば、本発明の一部の実施形態では、油の量は、組成物の総質量に対して、3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更により好ましくは20質量%以上、優先的には35質量%以上、特に50質量%以上でありうる。
【0144】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下であってよい。
【0145】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、3質量%~99質量%、好ましくは5質量%~97質量%、より好ましくは10質量%~95質量%でありうる。上記の上限値と下限値との任意の組合せは、好ましい量の範囲を表すために利用可能でありうる。
【0146】
(親水性有機溶媒)
本発明による組成物は、少なくとも1種の化粧料として許容される親水性有機溶媒を含んでもよい。
【0147】
用語「親水性」は、本明細書では、室温(25℃)及び大気圧(105Pa)下、水中で、少なくとも1g/L、好ましくは少なくとも10g/L、より好ましくは少なくとも100g/Lの溶解度を有する物質を意味する。したがって、化粧料として許容される親水性有機溶媒は、存在する場合、水性相中に含まれる。
【0148】
化粧料として許容される親水性有機溶媒には、例えば、1~8個の炭素原子を有する実質的に直鎖状又は分枝状の低級一価アルコール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール及びイソブタノール;芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール;ポリオール又はポリオールエーテル、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、プロパンジオール、ペンチレングリコール、カプリリルグリコール、ソルビトール、エチレングリコールのモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、プロピレングリコールエーテル、例えばプロピレングリコールのモノメチルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールのモノエチルエーテル又はモノブチルエーテル;ポリエチレングリコール、例えばPEG-4、PEG-6、PEG-8、PEG-10、及びPEG-20、並びにそれらの誘導体、並びにこれらの組合せを挙げることができる。
【0149】
本発明による組成物中の化粧料として許容される親水性有機溶媒の量は、特に限定されない。例えば、化粧料として許容される親水性有機溶媒の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~90質量%でありうる。
【0150】
(その他の任意選択の添加剤)
本発明による組成物はまた、例えば、水、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性の界面活性剤、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性ポリマー、ガム、樹脂、親水性増粘剤、疎水性増粘剤、分散剤、抗酸化剤、成膜剤、防腐剤、香料、中和剤、化粧用活性剤、保湿剤、エモリエント、及びこれらの混合物から選択される、化粧品の分野で通常使用される他の何らかの任意選択の添加剤を含んでもよい。
【0151】
本発明による組成物中に存在しうる上記の任意選択の添加剤の性質及び量を、所望の美容特性が該添加剤により影響を受けないよう調節することは、当業者にとって常法である。
【0152】
本発明による組成物は、水を含んでいても、含んでいなくてもよい。特定の一実施形態において、本発明による組成物は、水を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、0.1質量%以下、又は0.01質量%以下の量で、任意選択により含みうる。別の実施形態では、組成物は水を含まない。
【0153】
組成物が水を含む場合、水の量は特に限定されないが、一般に0.1~90%である。
【0154】
本発明による組成物は、上に説明した必須成分と、必要な場合には上に説明した任意選択の成分とを混合することによって、調製することができる。
【0155】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合し、本発明による組成物を調製することができる。
【0156】
[美容方法]
本発明はまた、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン繊維に適用する工程を含む、美容方法にも関する。
【0157】
本発明の美容方法は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための処置、コンディショニング、及び/又はケアの美容方法でありうる。
【0158】
本発明による組成物が適用されたケラチン繊維は、ケラチン繊維を処置するのに必要とされる適切な時間の間放置されうる。各処置のための時間の長さは限定されないが、5秒~60分、好ましくは10秒~45分、より好ましくは30秒~40分でありうる。
【0159】
ケラチン繊維は、室温にて処置されてもよい。別法では、本発明による組成物をケラチン繊維上に適用する工程の前に及び/又はその間に及び/又は後に、15℃~45℃、好ましくは20℃~40℃、より好ましくは25℃~35℃、更により好ましくは27℃~35℃にてケラチン繊維を加熱することができる。
【0160】
本発明による組成物は、ケラチン繊維を組成物で処置した後に洗い落としてよい。したがって、本発明の一実施形態において、本発明による方法は、ケラチン繊維から組成物を洗い落とす追加の工程を含んでもよい。
【0161】
本発明による方法は、ケラチン繊維を処置、コンディショニング、且つ/又はケアしながら、着色したケラチン繊維のために、特に着色したケラチン繊維の色の保護又は維持のために使用されうる。
【0162】
そのため、美容方法の実施形態(I)として、本発明は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、
(i)本発明による組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
(ii)任意選択により、ケラチン繊維上の組成物を特定の時間の間、維持する工程と
(iii)任意選択により、ケラチン繊維から組成物を洗い落とす工程と
を含む、美容方法に関する。
【0163】
美容方法の別の実施形態(II)として、(a)少なくとも1種の脂肪酸、及び(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーの各活性成分を別々に、ケラチン繊維に適用することができる。
【0164】
実施形態(II)において、最初に(a)少なくとも1種の脂肪酸をケラチン繊維に適用し、次いで(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーをケラチン繊維に適用してもよい、又は最初に(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーをケラチン繊維に適用し、次いで(a)少なくとも1種の脂肪酸をケラチン繊維に適用してもよい。
【0165】
そのため、本発明はまた、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、
(i)(a)少なくとも1種の脂肪酸又は(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーのいずれか一方を含む第1の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
(ii)第1の組成物中に含まれない、(a)少なくとも1種の脂肪酸又は(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーの他方を含む第2の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
を含み、第1又は第2の組成物中の(a)脂肪酸の量が、第1又は第2の組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、美容方法にも関する。
【0166】
本発明による美容方法の実施形態(II)は、以下の態様を含みうる。
【0167】
一態様は、最初に(a)脂肪酸をケラチン繊維に適用する美容方法である。そのため、この態様は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、
(i)(a)少なくとも1種の脂肪酸を含む第1の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、次いで、
(ii)(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーを含む第2の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
を含み、第1の組成物中の(a)脂肪酸の量が、第1の組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、美容方法に関する。
【0168】
別の態様は、最初に(b)ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーをケラチン繊維に適用する美容方法である。そのため、この態様は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、
(i)(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーを含む第1の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、次いで
(ii)(a)少なくとも1種の脂肪酸を含む第2の組成物をケラチン繊維に適用する工程と
を含み、第2の組成物中の(a)脂肪酸の量が、第2の組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、美容方法に関する。
【0169】
第1又は第2の組成物中の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である。好ましくは、第1又は第2の組成物中の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更により好ましくは8質量%以上でありうる。
【0170】
第1又は第2の組成物中の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下でありうる。
【0171】
第1又は第2の組成物中の脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、2質量%~40質量%、好ましくは4質量%~30質量%、より好ましくは6質量%~20質量%、更により好ましくは8質量%~20質量%でありうる。
【0172】
ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、第1又は第2の組成物中に、組成物の総質量に対して、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上の量で存在しうる。
【0173】
ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、第1又は第2の組成物中に、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下の量で存在しうる。
【0174】
ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーは、第1又は第2の組成物中に、組成物の総質量に対して、0.05質量%~20質量%、好ましくは0.1質量%~15質量%、より好ましくは0.2質量%~10質量%の範囲の量で存在しうる。
【0175】
第2の組成物は、第1の組成物を適用した後でケラチン繊維に適用される。第1の組成物が適用されたケラチン繊維は、ケラチン繊維を処置するのに必要とされる適切な時間の間、放置することができる。第1の組成物の適用と第2の組成物の適用との間の第1の組成物による処置の時間の長さは、特に限定されないが、1分~30分、好ましくは2分~25分、より好ましくは5分~20分でありうる。
【0176】
本発明の一実施形態において、本発明の美容方法の実施形態(II)における工程(i)と(ii)との間に、第1の組成物の洗い落とし工程は含まれない。
【0177】
該方法の実施形態(I)と同じ任意選択の工程を、該方法の実施形態(II)に組み込むことができる。例えば、第1及び第2の組成物が適用されたケラチン繊維は、ケラチン繊維を処置するのに必要とされる適切な時間の間、放置することができる。処置のための時間の長さは限定されないが、5秒~15分、好ましくは10秒~10分、より好ましくは30秒~5分でありうる。
【0178】
そのため、本発明はまた、ケラチン繊維、好ましくは毛髪のための美容方法であって、
(i)(a)少なくとも1種の脂肪酸又は(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーのいずれか一方を含む第1の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
(ii)第1の組成物中に含まれない、(a)少なくとも1種の脂肪酸又は(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーの他方を含む第2の組成物をケラチン繊維に適用する工程と、
(iii)任意選択により、ケラチン繊維上の組成物を特定の時間の間、維持する工程と、
(iv)任意選択により、ケラチン繊維から組成物を洗い落とす工程と
を含み、
第1又は第2の組成物中の(a)脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して少なくとも2質量%である、
美容方法にも関する。
【0179】
組成物、(a)少なくとも1種の脂肪酸、及び(b)少なくとも1種の、ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーに関して記載されたものと同じ説明が、別段の指定がない限り、本発明による方法に関するものに適用することができる。本発明による方法において使用される組成物は、本発明による組成物に関して上で説明された任意選択の成分のいずれかを含むことができる。
【実施例0180】
本発明は、実施例によって、より詳細な方法で記載されることになる。しかしながら、これらの実施例が本発明の範囲を限定するものとは解釈すべきでない。
【0181】
(実施例1~8及び比較例1)
[調製]
実施例1~8(Ex.1~Ex.8)及び比較例1(Comp. Ex.1)による毛髪用の各組成物を、周囲条件下で成分を均一になるまで混合して調製した。各組成物の配合をTable 3(表3)及びTable 4(表4)に示した。クローダ株式会社からCrodabond CSAの名称で販売されている水添ヒマシ油/セバシン酸コポリマーを入手した。成分の量の数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0182】
[評価]
100%中国人の白髪見本(1g、10cm)を30℃のホットプレート上に置いた。還元剤(PREMIA WAVE、L'Oreal Professionnel社製)を見本に適用し(2g/毛髪1g)、次いでそれをビニルラップで覆った。該見本をホットプレート上で15分間放置した後、ビニルラップを取り外し、次いで該見本を水道水(37℃)で濯ぎ、後続して、タオルで乾燥した。酸化剤(PREMIA WAVE、L'Oreal Professionnel社製)を見本に適用し(2g/毛髪1g)、次いでそれをビニルラップで覆った。該見本をホットプレート上で10分間放置した後、ビニルラップを取り外し、次いで該見本を水道水(37℃)で濯ぎ、後続して、タオルで乾燥し、且つドライヤーで乾燥して、パーマヘア見本を得た。
【0183】
得られたパーマヘア見本を27℃のホットプレート上に置いた。カラー製品(Majifashion Pastel Blue 8.11、色調8、L'Oreal Professionnel社製)と酸化剤製品(Oxidant Creme 6%、20容、L'Oreal Professionnel社製)との質量比1:1.5の混合物を見本に適用し(混合物3g/毛髪1g)、35分間放置した後、水道水(37℃)で濯ぎ、次いでプレーンシャンプーを用いて洗浄し、次いでタオルで乾燥し、且つドライヤーで乾燥して、着色されたパーマヘア見本を得た。着色手順の中で使用したプレーンシャンプーの配合を、以下のTable 1(表1)に示す。成分の量の数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0184】
【0185】
得られた着色パーマヘア見本(1g、10cm)を27℃のホットプレート上に置いた。実施例1~9及び比較例1による各組成物を1g/毛髪1gの量で見本に適用し、次いでそれをビニルラップで覆った。該見本をホットプレート上で30分間放置した後、ビニルラップを取り外し、次いで該見本を水道水(37℃)で濯いだ。余分な水を絞り出した後、各見本を1wt%のプレーンシャンプー液で5分間、1340rpmにて洗浄し、次いで水道水(37℃)で濯ぎ、ドライヤーで乾燥した。退色分析の中で使用したプレーンシャンプーの配合を、以下のTable 2(表2)に示す。成分の量の数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0186】
【0187】
退色のためのシャンプー洗浄の前後の着色パーマヘア見本の色の差を、Konica Minolta社製の分光光度計CM-3600Aを使用して測色値(L*、a*、b*、明度/緑-赤/青-黄)を測定することによって測定した。(ΔL*a*b系の下での着色プロセスの処置前後の見本間の)ΔE*ab値を算出した。2つのサンプルの平均値を各実験に対して算出した。より小さなΔE*abは、より良好な色の保護を示す。
【0188】
【0189】
【0190】
Table 3(表3)及びTable 4(表4)で確認できるように、成分(a)と(b)との特定の組合せを含んでいた実施例1~8による組成物は、低ΔE*abを達成でき、これは、ケラチン繊維からの染料の侵出を防止することができ、色保護効果が改善された着色ケラチン繊維をもたらすことができたことを意味する。
【0191】
一方、(b)ヒドロキシ化脂肪酸のトリグリセリドと飽和二酸とのオリゴマーを含んでいなかった比較例1による組成物は、より高いΔE*abを示し、色の保護が欠乏していたことを示す。
【0192】
(実施例9)
[調製]
実施例9による毛髪用の第1の組成物及び第2の組成物を、周囲条件下で成分を均一になるまで混合して調製した。各組成物の配合をTable 5(表5)に示した。クローダ株式会社からCrodabond CSAの名称で販売されている水添ヒマシ油/セバシン酸コポリマーを入手した。成分の量の数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0193】
[評価]
上記の実施例1~8及び比較例1において使用したものと同じ着色パーマヘア見本を、この実施例で使用した。
【0194】
着色パーマヘア見本(1g、10cm)を27℃のホットプレート上に置いた。第1の組成物を1g/毛髪1gの量で毛髪見本に適用し、次いでそれをビニルラップで覆った。該見本をホットプレート上で15分間放置した後、一切の濯ぎ工程を入れずに、第2の組成物を1g/毛髪1gの量で毛髪見本に適用し、次いでそれをビニルラップで覆った。それを15分間放置した後、ビニルラップを取り外し、次いで該毛髪見本を水道水(37℃)で濯いだ。余分な水を絞り出した後、退色分析のために、見本を1wt%のプレーンシャンプー液で5分間、1340rpmにて洗浄し、次いで水道水(37℃)で濯ぎ、ドライヤーで乾燥した。退色分析のためのプレーンシャンプーは、実施例1~9並びに比較例1及び2で使用したものと同じであり、その配合は、上記のTable 2(表2)に示す。
【0195】
退色のためのシャンプー洗浄の前後の着色パーマヘア見本の色の差を、Konica Minolta社製の分光光度計CM-3600Aを使用して測色値(L*、a*、b*、明度/緑-赤/青-黄)を測定することによって測定した。(ΔL*a*b系の下での着色プロセスの処置前後の見本間の)ΔE*ab値を算出した。2つのサンプルの平均値を各実験に対して算出した。より小さなΔE*abは、より良好な色の保護を示す。
【0196】
【0197】
Table 5(表5)で確認できるように、第1の組成物及び第2の組成物を連続してケラチン繊維上に適用した本発明による方法は、改善された色保護効果を示した。
【0198】
これに応じて、本発明による組成物及び美容方法は、改善された色保護効果を示すことができるため、着色ケラチン繊維の処置に非常に適していると結論付けることができる。