(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008510
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】車両、車両の制御方法、車両の制御プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20240112BHJP
【FI】
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110446
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 真
(72)【発明者】
【氏名】砂本 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】野村 真成
(72)【発明者】
【氏名】大貫 博崇
(57)【要約】
【課題】走行場面に応じて、電動機によるアシストを行う走行状態を自動的に遷移可能な車両、車両の制御方法、車両の制御プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】電動自転車10は、乗員の脚部からのクランクペダル79に入力されたペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th11以上、及び車速Vがゼロのときに、制御部40がモータMにアシストレベル3の大きさの動力を発生させるよう制御して走行するゼロ発進モードに遷移する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
前記電動機を制御する制御部と、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得する第1状態量取得部と、
車体の速度を示す第2状態量を取得する第2状態量取得部と、
を備える車両であって、
前記第1状態量が第1閾値以上、及び、
前記第2状態量がゼロのときに、
前記制御部が前記電動機に第1レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第1走行状態に遷移する、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記車両が前記第1走行状態である場合に、
前記第1状態量が前記第1閾値より小さな第2閾値以下、又は、
前記第2状態量が第3閾値以上となったときに、
前記制御部が前記電動機に前記第1レベルよりも小さい第2レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第2走行状態に遷移する、車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両であって、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量を取得する第3状態量取得部をさらに備え、
前記第1状態量が第4閾値以上、
前記第2状態量が第5閾値以上、及び、
前記第3状態量が第6閾値以上のときに、
前記制御部が前記電動機に前記第1レベルと同じ又は前記第1レベルよりも小さい第3レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第3走行状態に遷移する、車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両であって、
前記車両が前記第3走行状態である場合に、
前記第1状態量が前記第4閾値より小さな第7閾値以下、
前記第2状態量が前記第5閾値と同じ若しくは小さな第8閾値以下、又は、
前記第3状態量が前記第6閾値より小さな第9閾値以下若しくは前記第6閾値より大きな第10閾値以上、となったときに、
前記制御部が前記電動機に前記第3レベルよりも小さい第4レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第4走行状態に遷移する、車両。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両であって、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量を取得する第3状態量取得部をさらに備え、
前記第1状態量が第11閾値以下、
前記第2状態量が第12閾値以下、及び、
前記第3状態量が第13閾値以下のときに、
前記制御部が前記電動機に前記第1レベルよりも小さい第5レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第5走行状態に遷移する、車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両であって、
前記車両が前記第5走行状態である場合に、
前記第1状態量が前記第11閾値より大きな第14閾値以上、
前記第2状態量が前記第12閾値と同じ若しくは大きな第15閾値以上、又は、
前記第3状態量が前記第13閾値より大きな第16閾値以上、となったときに、
前記制御部が前記電動機に前記第5レベルよりも大きい第6レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第6走行状態に遷移する、車両。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両であって、
前記制御部は、前記第2動力の大きさを変更するときに、変更の応答性を変更可能に構成される、車両。
【請求項8】
請求項7に記載の車両であって、
前記制御部は、走行状態を他の走行状態に遷移するときに、前記応答性を変更する、車両。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の車両であって、
前記制御部は、前記電動機に前記入力部に入力された前記第1動力に相関する前記第2動力を発生させるよう制御する、車両。
【請求項10】
請求項4に記載の車両であって、
前記車両が前記第3走行状態である場合に、
前記第1状態量が前記第7閾値よりも大きな且つ前記第4閾値よりも小さな第17閾値以下となったときに、
前記制御部は、前記電動機に前記第4レベルの大きさよりも大きく且つ前記第3レベルよりも小さい第7レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御する、車両。
【請求項11】
請求項10に記載の車両であって、
前記車両が前記第3走行状態である場合に、且つ、前記制御部が前記電動機に前記第7レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御している状態で、
前記第1状態量が前記第4閾値以上となったときに、
前記制御部は、前記電動機に前記第3レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御する、車両。
【請求項12】
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
前記電動機を制御する制御部と、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得する第1状態量取得部と、
車体の速度を示す第2状態量を取得する第2状態量取得部と、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量を取得する第3状態量取得部と、
を備える車両であって、
前記第1状態量が第4閾値以上、
前記第2状態量が第5閾値以上、及び、
前記第3状態量が第6閾値以上のときに、
前記制御部が前記電動機に第3レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第3走行状態に遷移する、車両。
【請求項13】
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
前記電動機を制御する制御部と、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得する第1状態量取得部と、
車体の速度を示す第2状態量を取得する第2状態量取得部と、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量を取得する第3状態量取得部と、
を備える車両であって、
前記第1状態量が第11閾値以下、
前記第2状態量が第12閾値以下、及び、
前記第3状態量が第13閾値以下のときに、
前記制御部が前記電動機に第5レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第5走行状態に遷移する、車両。
【請求項14】
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
を備える車両の制御方法であって、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得するステップと、
車体の速度を示す第2状態量を取得するステップと、
前記第1状態量が第1閾値以上、及び、
前記第2状態量がゼロのときに、
前記車両を、前記電動機に第1レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第1走行状態に遷移させるステップと、を備える、車両の制御方法。
【請求項15】
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
を備える車両の制御プログラムであって、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得するステップと、
車体の速度を示す第2状態量を取得するステップと、
前記第1状態量が第1閾値以上、及び、
前記第2状態量がゼロのときに、
前記車両を、前記電動機に第1レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第1走行状態に遷移させるステップと、
をコンピュータに実行させるための、車両の制御プログラム。
【請求項16】
請求項15に記載の制御プログラムを記憶した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、車両の制御方法、車両の制御プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクペダルの踏力をモータの動力でアシストする電動アシスト自転車が知られている(例えば、特許文献1)。従来の電動アシスト自転車には、走行場面(例えば、発進時や通常走行時、登坂時)に応じて、運転者が走行モードを切り替えることが可能なものがあった。このような電動アシスト自転車では、各走行モードにおいて、車速に応じてアシスト比が自動的に切り替わる構成となっている。ここで、アシスト比は、クランクペダルの踏力に対する、モータを用いて踏力を補う力の比率である。
【0003】
上述した従来の電動アシスト自転車では、走行モードを切り替える際に、車体に設けられた切替スイッチを操作する必要があった。また、切替スイッチが設けられていない電動アシスト自転車の場合は、運転者が所持する携帯端末を操作して走行モードを切り替えることが想定される。いずれの場合であっても、運転者が手動で走行モードを切り替える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、運転者が走行中に手元の切替スイッチや携帯端末を操作すると、運転者の視線が手元に移り、周辺監視が疎かになる。また、走行モードを切り替える操作を手動で行うのは、運転者にとって煩雑な動作でもある。
【0006】
本発明は、走行場面に応じて、電動機によるアシストを行う走行状態を自動的に遷移可能な車両、車両の制御方法、車両の制御プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
前記電動機を制御する制御部と、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得する第1状態量取得部と、
車体の速度を示す第2状態量を取得する第2状態量取得部と、
を備える車両であって、
前記第1状態量が第1閾値以上、及び、
前記第2状態量がゼロのときに、
前記制御部が前記電動機に第1レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第1走行状態に遷移する。
【0008】
また、本発明は、
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
前記電動機を制御する制御部と、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得する第1状態量取得部と、
車体の速度を示す第2状態量を取得する第2状態量取得部と、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量を取得する第3状態量取得部と、
を備える車両であって、
前記第1状態量が第4閾値以上、
前記第2状態量が第5閾値以上、及び、
前記第3状態量が第6閾値以上のときに、
前記制御部が前記電動機に第3レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第3走行状態に遷移する。
【0009】
また、本発明は、
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
前記電動機を制御する制御部と、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得する第1状態量取得部と、
車体の速度を示す第2状態量を取得する第2状態量取得部と、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量を取得する第3状態量取得部と、
を備える車両であって、
前記第1状態量が第11閾値以下、
前記第2状態量が第12閾値以下、及び、
前記第3状態量が第13閾値以下のときに、
前記制御部が前記電動機に第5レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第5走行状態に遷移する。
【0010】
また、本発明は、
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
を備える車両の走行状態を遷移させる制御方法であって、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得するステップと、
車体の速度を示す第2状態量を取得するステップと、
前記第1状態量が第1閾値以上、及び、
前記第2状態量がゼロのときに、
前記車両を、前記電動機に第1レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第1走行状態に遷移させるステップと、を備える。
【0011】
また、本発明は、
乗員の脚部からの入力を受ける入力部と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪に伝達される電動機と、
を備える車両の走行状態を遷移させる制御プログラムであって、
前記入力の大きさを示す第1状態量を取得するステップと、
車体の速度を示す第2状態量を取得するステップと、
前記第1状態量が第1閾値以上、及び、
前記第2状態量がゼロのときに、
前記車両を、前記電動機に第1レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第1走行状態に遷移させるステップと、
をコンピュータに実行させる。
【0012】
また、本発明は、
上記制御プログラムを記憶した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両は、走行場面に応じて、電動機によるアシストを行う走行状態を走行場面に応じて自動的に遷移可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】動力ユニット20やクランク軸83、後輪78の周辺における、動力を伝達する機構を示す模式図である。
【
図3】電動自転車10における、動力ユニット20、バッテリ2、及び制御部40の電気経路と通信経路を説明する図である。
【
図5】走行モードによるアシスト比の違いを示す、電動自転車10のアシスト比と車速との関係を示すグラフである。
【
図6】車速及び目標トルクに対する目標電流が設定された制御マップである。
【
図7】各走行モードに関して、アシストレベル、発動条件、及び解除条件を示す表である。
【
図8A】IIR(Infinite Impulse Response)フィルタを使用した場合における、指示電流の応答性の一例を示すグラフである。
【
図8B】FIR(Finite Impulse Response)フィルタを使用した場合における、指示電流の応答性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[車両構造]
以下、本発明の車両の一実施形態として電動自転車を例示する。
電動自転車10は、
図1及び
図2に示すように、前輪73と、後輪78と、自転車フレーム67と、後輪78を駆動する動力ユニット20と、動力ユニット20と電気的に接続されるバッテリユニット4と、を備え、動力ユニット20が発生するアシスト力が出力可能に構成された電動アシスト自転車である。
【0016】
自転車フレーム67は、前端のヘッドパイプ68と、ヘッドパイプ68から後下りに車体前方から後方へ延びるダウンパイプ69と、ダウンパイプ69の後端に固着されて左右に延びる支持パイプ66(
図2参照)と、支持パイプ66から上方に立ち上がるシートポスト71と、支持パイプ66から後方側に延出される左右一対のリヤフォーク70と、を備える。
【0017】
ヘッドパイプ68にはフロントフォーク72が操向可能に支承され、フロントフォーク72の下端に前輪73が軸支されている。フロントフォーク72の上端には操向ハンドル74が設けられている。操向ハンドル74には、乗員(例えば運転者)が所有する携帯端末8(
図3参照)を保持する携帯端末ホルダ6が設けられている。なお、携帯端末ホルダ6は必ずしも必要ではなく、携帯端末8は、乗員自体、乗員の装着物(衣服、バッグ)に装着(収納)されていてもよい。シートポスト71から後方側に延出される左右一対のリヤフォーク70の後端間には、駆動輪としての後輪78が軸支されている。シートポスト71には、上端にシート76を備える支持軸75が、シート76の上下位置を調整可能として装着されている。
【0018】
ダウンパイプ69には、動力ユニット20へ電力を供給するバッテリユニット4が着脱可能に固定されている。より詳しく説明すると、バッテリユニット4は、ダウンパイプ69の上面に取り付けられる台座3と、台座3に対し着脱可能に設けられ、内部に複数のセルを有するバッテリ2と、を備える。
【0019】
図3は、電動自転車10における、動力ユニット20、バッテリ2、及び制御部40の電気経路と通信経路を説明する図である。
【0020】
制御部40は、例えば、各種演算を実行可能なCPU(Central Processing Unit)と、CPUのワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)と、各種情報を記憶するROM(Read Only Memory)等の記憶媒体と、を備える。制御部40は、後述のペダル踏力と電動自転車10の車速に応じたアシスト比とによって定められるアシスト力が発生するように、動力ユニット20のモータMから発生させるトルク(単に動力とも称する)を演算する。これにより、モータMは、制御部40からの演算結果(駆動要求)を受けた動力ユニット20のCPU22に従って動作する。コンバータDC/DCは、供給される直流電圧を直流のまま降圧して制御部40、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit、図中のIMU)41、メモリ42、GNSS(Global Navigation Satellite System)43、及びBLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))通信装置44の電源電圧を生成する。
【0021】
慣性計測装置41は、例えば、3軸加速度センサ、3軸角速度センサ、及び3軸方位センサの機能をあわせもつ9軸センサであり、制御部40の搭載姿勢を検出する。GNSS43は、電動自転車10の位置情報を取得する。メモリ42は、例えばSDカードであり、電動自転車10の情報、走行データ等を一時的又は永続的に保持する。BLE通信装置44は、携帯端末8等とBT接続(Bluetooth通信)するための通信装置である。
【0022】
このように構成された電気系統及び通信系統では、バッテリ2からの電力が電力線51、55を介して動力ユニット20のモータMに供給されるとともに、電力線56、52を介して動力ユニット20からコンバータDC/DCを介して降圧された電力が制御部40、慣性計測装置41、GNSS43、メモリ42、及びBLE通信装置44に供給される。そして、制御部40に電力が供給された状態で、電源スイッチ又は携帯端末8を介して動力ユニット20の起動要求があると、信号線53、57を介して動力ユニット20にパワーオン信号が発信され、動力ユニット20のCPU22が起動する。これにより、動力ユニット20が発生するアシスト力が出力可能な電動アシスト機能が有効となる。動力ユニット20が起動すると、信号線54、58を介して動力ユニット20と制御部40とで情報交換が行われるとともに、BLE通信装置を介して制御部40と携帯端末8等とで情報交換が可能となる。
【0023】
図1及び
図2に戻って、自転車フレーム67の支持パイプ66を同軸に貫通するクランク軸83の左端及び右端には一対のクランクペダル79が連結される。乗員からクランクペダル79に加えられた踏力(以下、ペダル踏力)はクランク軸83へ伝達され、駆動スプロケット80を介して無端状のチェーン82へ入力される。チェーン82は、駆動スプロケット80と、後輪78の車軸に設けられた従動スプロケット81とに巻掛けられている。
【0024】
動力ユニット20は、モータMの出力軸21と、クランク軸83とが平行に配置される。クランク軸83は、筒状のスリーブ26の内側に第1ワンウェイクラッチ28を介して回転自在に支持されており、このスリーブ26の外周側にモータMの出力軸21に設けられたモータ出力ギヤ21aと噛み合う従動ギヤ26a及び駆動スプロケット80が固定されている。したがって、モータMのトルクが、モータ出力ギヤ21a、従動ギヤ26a、及びスリーブ26を介して駆動スプロケット80に伝達される。即ち、モータMは、クランクペダル79と並列に設けられている。
【0025】
また、従動スプロケット81と後輪78との間には第2ワンウェイクラッチ32が設けられている。
【0026】
このように構成された電動自転車10では、クランクペダル79を前進方向(正回転方向、順方向とも称す)に漕いだ場合には、第1ワンウェイクラッチ28が係合してクランク軸83の正回転動力がスリーブ26を介して駆動スプロケット80に伝達され、さらにチェーン82を介して従動スプロケット81に伝達される。このとき第2ワンウェイクラッチ32も係合することで、従動スプロケット81に伝達された正回転動力が、後輪78に伝達される。
【0027】
一方、クランクペダル79を後進方向(逆回転方向、逆方向とも称す)に漕いだ場合には、第1ワンウェイクラッチ28が係合せず、クランク軸83の逆回転動力がスリーブ26に伝達されずクランク軸83が空転する。
【0028】
また、例えば電動自転車10を前進方向に押し進める場合のように、後輪78から前進方向(正回転方向)の正回転動力が入力される場合、第2ワンウェイクラッチ32が係合せず、後輪78の正回転動力が従動スプロケット81に伝達されない。そのため、後輪78は、従動スプロケット81に対し相対回転する。一方、電動自転車10を後進方向に押し進める場合のように、後輪78から後進方向(逆回転方向)の逆回転動力が入力される場合には、第2ワンウェイクラッチ32が係合して後輪78の逆回転動力が従動スプロケット81に伝達され、さらにチェーン82を介して駆動スプロケット80に伝達される。また、このとき第1ワンウェイクラッチ28も係合することから、駆動スプロケット80に伝達された逆回転動力が、クランク軸83及びクランクペダル79に伝達されてクランク軸83及びクランクペダル79が逆回転する。
【0029】
動力ユニット20には、モータMの回転速度を検知するモータ回転数センサSE1が設けられている。モータ回転数センサSE1は、モータMの出力軸21の外周部に設けられた磁石及びホールICから構成される。
【0030】
スリーブ26には、ペダル踏力によって発生するペダルトルク値Tqを検知するトルクセンサSE2が設けられている。トルクセンサSE2は、スリーブ26の外周部に配設された磁気変位検出式のトルクセンサから構成される。
【0031】
動力ユニット20を制御する制御部40は、トルクセンサSE2の出力値であるペダルトルク値Tqからペダル踏力を算出し、このペダル踏力と電動自転車10の速度(以下、車速とも称する。)に応じたアシスト比とによって定められるアシスト力が発生するように、モータMをPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0032】
リヤフォーク70には、後輪回転数センサSE3が設けられている。後輪回転数センサSE3は、例えば磁気検知センサであり、後輪78のスポークに取り付けられた磁石がセンサを通過するときの磁気パルスを検知する。後輪回転数センサSE3は検知した磁気パルスを車速パルスとして制御部40に送信し、制御部40はそのパルス間隔から車速を計算する。一般に、後輪78に取り付けられる磁石は1個なので、磁気パルスは後輪78の1回転につき1回検出される。このため、車速V[km/h]、後輪78の周長Ct[m]とすると、車速V[km/h]は以下の(1)式で表される。
【0033】
V[km/h]={Ct[m]/磁気パルス間隔(s)}×3600/1000
(1)
【0034】
駆動スプロケット80の周辺には、ケイデンスセンサSE4が取り付けられている。駆動スプロケット80は、第1ワンウェイクラッチ28の係合時にクランクペダル79と一体に回転するため、駆動スプロケット80の回転は、クランクペダル79の回転と見なすことができる。ケイデンスセンサSE4は、例えば磁気検知センサである。駆動スプロケット80には、周方向に均等に8個の磁石が設けられており、ケイデンスセンサSE4は、磁石がセンサを通過するときの磁気パルスを検知する。ケイデンスセンサSE4は検知した磁気パルスをケイデンスパルス(ケイデンス関連情報)として後述する制御部40に送信し、制御部40はそのパルス間隔からクランクペダル79の回転(運動)の速さを示すケイデンスを計算する。ケイデンスパルスはクランクペダル79の1回転につき8回検出される。このため、ケイデンスC[rpm]は以下の(2)式で表される。
【0035】
C[rpm]={1/(8×磁気パルス間隔(s))}×60 (2)
【0036】
なお、駆動スプロケット80はスリーブ26を介して従動ギヤ26aに連結されているので、従動ギヤ26aのギヤ径がモータ出力ギヤ21aのギヤ径と同一であるとき、駆動スプロケット80及びモータ出力ギヤ21aの回転数は同一となる。したがって、モータ出力ギヤ21a及び従動ギヤ26aが同一のギヤ径であるとき、モータ回転数センサSE1によりケイデンスCを取得することもできる。また、ケイデンスセンサSE4及びモータ回転数センサSE1の両方で並列にケイデンスCを取得してもよい。
【0037】
[アシスト比に関する法規]
次に、日本における電動自転車に課される法規について説明する。
日本の法規では、
図5の太い実線(以下、太実線)で示されるように、車速が10km/hまではアシスト比の上限値が2で、車速が10km/hから24km/hまでの間にアシスト比を2から0まで漸減させる必要がある。そのため、電動アシスト機能がオンである状態では、制御部40は、日本の法規制(太実線)に対し、これを超えないようなアシスト比となるようにプログラムされている。
【0038】
[電動アシスト機能]
続いて、電動アシスト機能がオンであるときの走行モード(以下、単にモードとも称する)の詳細について、
図4から
図7を参照して説明する。
図4に示すように、電動自転車10の走行モードは、通常モード、ゼロ発進モード、登坂モード、及び徐行モードに分けられ、電動自転車10はモード間を遷移可能に構成されている。以下、各モードの詳細について説明する。
【0039】
通常モードは、ゼロ発進モード、登坂モード、及び徐行モードが選択されていないときに選択されるモードであり、例えば、電動自転車10が平坦な道や下り坂等を通常走行するときに選択される。また、通常モードは、電動自転車10が停止状態(すなわち、車速V=0km/hの状態)であるときも選択される。通常モードではアシスト比が「アシストレベル1」に設定され、アシスト比と車速との関係は
図5の細い実線で示す関係となる。アシストレベル1では、車速が10km/hまではアシスト比は1で一定であり、車速が10km/hから24km/hまでの間はアシスト比はゼロまで漸減し、車速が24km/h以上ではアシスト比はゼロとなる。すなわち、アシストレベル1における最大アシスト比は1である。通常モードである間、制御部40は、モータMにアシストレベル1に基づく動力を発生させる。
【0040】
ゼロ発進モードは、電動自転車10が停止状態から、クランクペダル79を前進方向に漕いで発進する際に選択されるモードである。停止状態からクランクペダル79を漕ぐとき、通常走行時のペダル踏力よりも大きいペダル踏力が必要となるため、ゼロ発進モードでは通常モードで発生する動力よりも大きい動力をモータMに発生させる。ゼロ発進モードではアシスト比が「アシストレベル3」に設定され、アシスト比と車速との関係は
図5の一点鎖線で示す関係となる。アシストレベル3では、車速が10km/hまではアシスト比は1.9で一定であり、車速が10km/hから24km/hまでの間はアシスト比はゼロまで漸減し、車速が24km/h以上ではアシスト比はゼロとなる。すなわち、最大アシスト比は1.9である。ゼロ発進モードである間、制御部40は、モータMにアシストレベル3に基づく動力を発生させる。
【0041】
アシストレベル3は、アシストレベル0~3(アシストレベル0及び2については後述する)の中でアシスト比が最も大きいアシストレベルである。ただし、日本の法規制におけるアシスト比の上限(太実線)を超えないよう、アシストレベル3での最大アシスト比は2ではなく1.9としており、所定の余裕幅(マージン)が確保されるよう設定されている。
【0042】
登坂モードは、電動自転車10が上り坂を走行する際に選択されるモードである。上り坂を走行する際、クランクペダル79を漕ぐ際の乗員の負荷が大きいので、登坂モードでは、通常モードのアシスト比よりも大きなアシスト比が設定される。これにより、乗員の負荷を低減することができる。本実施形態では、登坂モードは、上り坂の斜度に応じて、アシストレベル3である場合とアシストレベル2である場合とで切り替え可能に構成されている。
【0043】
電動自転車10が斜度の大きい急斜面を上るとき、ゼロ発進モードの場合と同様に、アシスト比がアシストレベル3に設定され、制御部40は、モータMにアシストレベル3に基づく動力を発生させる。登坂モードにおいてアシストレベル3が設定されている間、制御部40は、モータMにアシストレベル3に基づく動力を発生させる。
【0044】
電動自転車10が急斜面より斜度の小さい緩斜面を上るとき、アシスト比が「アシストレベル2」に設定される。アシストレベル2では、アシスト比と車速との関係は
図5の二点鎖線で示す関係となる。アシストレベル2では、車速が10km/hまではアシスト比は1.5で一定であり、車速が10km/hから24km/hまでの間はアシスト比はゼロまで漸減し、車速が24km/h以上ではアシスト比はゼロとなる。すなわち、最大アシスト比は1.5である。このように、アシストレベル2のアシスト比は、アシストレベル1のアシスト比よりも大きく、アシストレベル3のアシスト比よりも小さい。登坂モードにおいてアシストレベル2が設定されている間、制御部40は、モータMにアシストレベル2に基づく動力を発生させる。
【0045】
徐行モードは、電動自転車10が狭い道や悪路、混雑した道を低速で走行する際や、急旋回が必要な場合等に選択されるモードである。徐行モードでは、通常モードのアシスト比よりも小さなアシスト比が設定される。徐行モードではアシスト比が「アシストレベル0」に設定され、アシスト比と車速との関係は
図5の破線で示す関係となる。アシストレベル0では、車速が10km/hまではアシスト比は0.3で一定であり、車速が10km/hから24km/hまでの間はアシスト比はゼロまで漸減し、車速が24km/h以上ではアシスト比はゼロとなる。すなわち、最大アシスト比は0.3である。徐行モードである間、制御部40は、モータMにアシストレベル0に基づく動力を発生させる。なお、徐行モードでは、車速にかかわらず、常にアシスト比を0、換言すると、モータMによるアシストを行わないとしてもよい。
【0046】
上述したいずれかのモードが選択されたとき及び選択されている間、制御部40は、選択されたモードのアシストレベルに基づいて、モータMにクランクペダル79に入力された動力に相関する(例えば、比例する)動力を発生させるよう制御する。具体的には、制御部40は、トルクセンサSE2で取得されるペダルトルク値Tqに車速に応じたアシスト比をかけた大きさを有する目標トルクをモータMに発生させ、電動自転車10のアシスト制御を実行する。
【0047】
より具体的にアシスト制御を説明すると、制御部40は、先ず選択されたモードのアシストレベルを参照し、
図5から現在の車速に対応するアシスト比を取得する。次に、制御部40は、上述のとおりペダルトルク値Tq及びアシスト比から目標トルクを決定する。次に、制御部40は、
図6に示すように、車速及び目標トルクに対する目標電流が設定された3次元の制御マップに基づいてモータMに対する目標電流を設定する。そして、制御部40は、目標電流に所定のフィルタ関数をかけたものを指示電流として、信号線54、58を介して動力ユニット20のCPU22に送信する。モータMは、CPU22からの指令に基づき、指示電流に基づく動力を出力する。時間経過とともに指示電流が目標電流に近づいていくのに応じて、モータMから発生する動力は目標トルクに近づいていく。指示電流が目標電流に到達したとき又は到達したと近似できたとき、モータMから発生する動力が目標トルクに到達した又は到達したと近似できる。
【0048】
[走行モードの遷移]
本実施形態では、制御部40は、ペダルトルク値Tq、車速V、及びケイデンスCが後述する発動条件又は解除条件を満たすと、電動自転車10を自動的に適切な走行モードに遷移させる。
図4に示す一例では、制御部40は、通常モードとゼロ発進モードとの間、通常モードと登坂モードとの間、通常モードと徐行モードとの間で電動自転車10を遷移させる。ただし、モード遷移はこれに限られない。例えば、登坂モードと徐行モードとの間で遷移可能であってもよい。また、ゼロ発進モードから登坂モードに遷移可能であってもよいし、ゼロ発進モードから徐行モードに遷移可能であってもよい。
【0049】
走行場面に応じて電動自転車10が自動的に適切なモードに遷移するので、モードを切り替える際に、例えば、車体に設けられる切替スイッチを操作したり、切替スイッチが設けられていない場合は携帯端末8等を操作したりして、乗員が手動でモードを切り替える必要がない。よって、乗員の周辺監視が疎かになることが抑制され、安全な走行が可能となる。また、制御部40は、アシスト力を必要とする場面や必要としない場面で自動的にアシスト力を調整するので、快適な電動アシストを実現しつつバッテリ2の消費を抑えて効率的な電動アシストが可能となる。したがって、電動アシストによる航続距離を伸ばすことができる。
【0050】
続いて、ゼロ発進モード、登坂モード、及び徐行モードに遷移する条件(以下、発動条件とも称する)と、他のモードに遷移する条件(以下、解除条件とも称する)とについて、
図7を参照して説明する。
【0051】
ゼロ発進モードの発動条件は、ペダルトルク値Tqと車速Vとに基づいて定められる。具体的には、ペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th11(例えば、Tq_th11=25Nm)以上、及び、車速Vがゼロのとき、ゼロ発進モードの発動条件を満たす。ここで、発動条件におけるペダルトルク値Tqは瞬間値であり、トルクセンサSE2の出力値がトルク閾値Tq_th11以上となった時点で、ゼロ発進モードの発動条件のうちペダルトルク値Tqに関する条件を満たす。
【0052】
ゼロ発進モードの発動条件を満たしたとき、制御部40は、モータMにアシストレベル3の大きさの動力を発生させるよう、モータMを制御する。したがって、電動自転車10の発進に必要なペダル踏力をモータMによりアシストし、電動自転車10を円滑に発進することができる。ゼロ発進モードに遷移した後、後述の解除条件を満たすまで、ゼロ発進モードが継続する。
【0053】
ゼロ発進モードの解除条件は、ペダルトルク値Tq又は車速Vに基づいて定められる。具体的には、電動自転車10がゼロ発進モードである場合に、ペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th11より小さなトルク閾値Tq_th12(例えば、Tq_th12=10Nm)以下、又は、車速Vが速度閾値V_th11(例えば、V_th11=10km/h)以上となったとき、ゼロ発進モードの解除条件を満たす。ここで、解除条件におけるペダルトルク値Tqは、所定の時間(例えば1秒間)の移動平均値である。
【0054】
ゼロ発進モードの解除条件を満たしたとき、電動自転車10はゼロ発進モードから通常モードへ遷移し、制御部40はモータMにアシストレベル3よりも小さいアシストレベル1の大きさの動力を発生させる。よって、ゼロ発進モードによるアシスト制御を実行して電動自転車10の走行が落ち着いたときは、小さいアシストレベルに自動的に切り替えるので、不必要に大きいアシスト比に基づくアシスト制御が継続することを抑制できる。これにより、乗員の意図しないアシスト力が発生することが抑制され、安全な走行が可能となる。また節電にも寄与する。なお、ゼロ発進モードの解除条件と、登坂モード又は徐行モードの発動条件とを両方満たす場合には、電動自転車10はゼロ発進モードから登坂モード又は徐行モードへ遷移してもよい。
【0055】
登坂モードの発動条件は、ペダルトルク値Tqと、車速Vと、ケイデンスCと、に基づいて定められる。具体的には、ペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th21(例えば、Tq_th21=25Nm)以上、車速Vが速度閾値V_th21(例えば、V_th21=0km/h)以上、及び、ケイデンスCがケイデンス閾値C_th21(例えば、C_th21=20rpm)以上のとき、登坂モードの発動条件を満たす。ここで、発動条件におけるペダルトルク値Tqは瞬間値であり、トルクセンサSE2の出力値がトルク閾値Tq_th21以上となった時点で、登坂モードの発動条件のうちペダルトルク値Tqに関する条件を満たす。なお、上り坂を走行するとき、クランクペダル79を漕ぐ際の乗員の負荷が大きいので、ケイデンスCは大きくなりにくい。すなわち、ケイデンスCが大きい場合は、電動自転車10は上り坂を走行していないとも判断し得る。よって、登坂モードの発動条件のうちケイデンスCに関する条件として、ケイデンスCの上限値(すなわち、ケイデンスCがケイデンス閾値C_th22(例えば、C_th22=70rpm)以下)を加えてもよい。
【0056】
本実施形態では、制御部40は、登坂モードの発動条件を満たしたとき、斜度に関わらず、先ずアシストレベル3を設定する。よって、電動自転車10が上り坂を走行するのに必要なペダル踏力をモータMによりアシストするので、乗員の負荷を低減することができ、円滑に上り坂を走行することができる。電動自転車10が登坂モードに遷移した後、後述する解除条件を満たすまで、登坂モードが継続する。また、詳細は後述するが、ペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th21よりも小さいトルク閾値Tq_th23以下となったとき、制御部40は、登坂モードを維持したまま、アシストレベル2を設定する。
【0057】
登坂モードの解除条件は、ペダルトルク値Tq、車速V、又はケイデンスCに基づいて定められる。具体的には、ペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th22(例えば、Tq_th22=15Nm)以下、車速Vが速度閾値V_th21と同じ若しくはそれより小さな速度閾値V_th22(例えば、V_th22=0km/h)以下、又は、ケイデンスCがケイデンス閾値C_th21より小さなケイデンス閾値C_th23(例えば、C_th23=0rpm)以下若しくはケイデンス閾値C_th21(及びケイデンス閾値C_th22)よりも大きなケイデンス閾値C_th24(例えば、C_th24=80rpm)以上となったとき、登坂モードの解除条件を満たす。ここで、解除条件におけるペダルトルク値Tqは、所定の時間(例えば1秒間)の移動平均値である。
【0058】
登坂モードの解除条件を満たしたとき、電動自転車10は登坂モードから通常モードへ遷移し、制御部40はモータMにアシストレベル3及び2よりも小さいアシストレベル1の大きさの動力を発生させる。よって、例えば上り坂を上り終えたときは、小さいアシストレベルに自動的に切り替えるので、不必要に大きいアシスト比に基づくアシスト制御が継続することを抑制できる。これにより、乗員の意図しないアシスト力が発生することが抑制され、安全な走行が可能となる。また節電にも寄与する。なお、登坂モードの解除条件と、徐行モードの発動条件とを両方満たす場合には、電動自転車10は登坂モードから徐行モードへ遷移してもよい。
【0059】
登坂モードを継続している間、制御部40は、アシストレベル3とアシストレベル2との間で切り替え可能に構成されている。登坂モードにおけるアシストレベルの切り替えは、ペダルトルク値Tqにより判断する。
【0060】
具体的には、ペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th22よりも大きな且つトルク閾値Tq_th21よりも小さなトルク閾値Tq_th23(例えば、Tq_th23=20Nm)以下となったとき、制御部40は、モータMにアシストレベル2の大きさの動力を発生させるよう制御する。この条件を満たすとき、電動自転車10が走行する上り坂は比較的斜度の小さい緩斜面であると想定されるため、不必要に大きいアシスト比に基づくアシスト制御が継続することを抑制でき、安全な走行が可能となる。また節電にも寄与する。
【0061】
また、アシストレベル2である状態で、ペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th21以上となったとき、制御部40は、モータMにアシストレベル3の大きさの動力を発生させるよう制御する。この条件を満たすとき、電動自転車10が走行する上り坂は比較的斜度の大きな急斜面であると想定されるため、必要なペダル踏力をモータMによりアシストして円滑に上り坂を走行することができる。
【0062】
徐行モードの発動条件は、ペダルトルク値Tqと、車速Vと、ケイデンスCと、に基づいて定められる。具体的には、ペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th31(例えば、Tq_th31=10Nm)以下、車速Vが速度閾値V_th31(例えば、V_th31=10km/h)以下、及び、ケイデンスCがケイデンス閾値C_th31(例えば、C_th31=40rpm)以下のとき、徐行モードの発動条件を満たす。ここで、徐行モードの発動条件におけるペダルトルク値Tqは瞬間値であり、トルクセンサSE2の出力値がトルク閾値Tq_th31以下となった瞬間に、徐行モードの発動条件のうちペダルトルク値Tqに関する条件を満たす。
【0063】
徐行モードの発動条件を満たしたとき、電動自転車10は通常モードから徐行モードへ遷移し、制御部40は、モータMにアシストレベル0に基づく動力を発生させる。よって、乗員が低速で電動自転車10を走行することを望む場合にはアシスト比の小さいアシストレベルでアシストを行うので、過剰なアシストにより乗員が望まない加速が発生することを抑制でき、安全な走行が可能となる。徐行モードに遷移した後、後述する解除条件を満たすまで、徐行モードが継続する。
【0064】
徐行モードの解除条件は、ペダルトルク値Tq、車速V、又はケイデンスCに基づいて定められる。具体的には、ペダルトルク値Tqがトルク閾値Tq_th32(例えば、Tq_th32=15Nm)以上、車速Vが速度閾値V_th31と同じ若しくはそれより大きな速度閾値V_th32(例えば、V_th32=10km/h)以上、又は、ケイデンス閾値C_th31よりも大きなケイデンス閾値C_th32(例えば、C_th32=50rpm)以上となったとき、登坂モードの解除条件を満たす。
【0065】
徐行モードの解除条件を満たしたとき、電動自転車10は徐行モードから通常モードへ遷移し、制御部40はモータMにアシストレベル0よりも大きいアシストレベル1の大きさの動力を発生させる。よって、例えば低速で走行する必要がなくなったときは、大きいアシストレベルに自動的に切り替えるので、車速を上げて走行することができる。なお、徐行モードの解除条件と、登坂モードの発動条件とを両方満たす場合には、電動自転車10は徐行モードから登坂モードへ遷移してもよい。
【0066】
[モータの動力変更の応答性]
本実施形態では、制御部40は、モータMの動力の大きさを変更するときに、変更の応答性を変更可能に構成される。ここで、「モータMの動力の大きさを変更するとき」は、例えば、ペダルトルク値Tq(ペダル踏力)が大きくなったことに応じて目標トルクが大きくなるときや、車速Vが変化してアシスト比が変更されるとき、制御部40が電動自転車10をあるモードから別のモードに遷移させるとき、登坂モードの状態でアシストレベル2とアシストレベル3の間で切り替えるときを含む。
【0067】
制御部40は、上述のとおり、モータMへの目標電流に対して所定のフィルタ関数をかけて指示電流を得る。モータMの動力変更の応答性はフィルタ関数の時定数Tにより変化するので、時定数Tを変更することで当該応答性を変更することができる。
【0068】
フィルタ関数としては、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いることが好ましい。
図8Aは、IIRフィルタを用いた場合において、モータMの動力の大きさを変更するときにおける、指示電流の応答性の一例を示すグラフである。
【0069】
グラフ中において、Iは所定の時刻における目標電流又は指示電流であり、I1はモータMの動力の大きさを変更する前の第1状態における目標電流であり、I2はモータMの動力の大きさを変更した後の第2状態における目標電流である。また、グラフ中において、太実線は目標電流を示し、一点鎖線は時定数T=0.1secのときの指示電流を示し、二点鎖線は時定数T=0.3secのときの指示電流を示し、細実線は時定数T=1secのときの指示電流を示し、破線は時定数T=2secのときの指示電流を示す。
【0070】
図8Aは、時刻2secのときに、目標電流がI1からI2に切り替わる一例を示し、時刻2sec以前では、目標電流I1に基づきモータMが駆動しているとする。時定数Tが小さいほど応答性は高く、指示電流は即時に目標電流I2に近づく。すなわち、モータMの動力の大きさが即時に変更されるので、クランクペダル79の入力に即応したアシストが可能となる。一方、時定数Tが大きいほど応答性は低く、指示電流は目標電流I2にゆっくりと近づく。すなわち、モータMの動力の大きさがゆっくりと変更されるので、穏やかで急な加速のないアシストが可能となる。
【0071】
また、IIRフィルタを用いた場合、モータMの動力を変更する際の立ち上がりを緩和させることができ、段差のない立ち上がりとなる。したがって、違和感なく自然にモータMの動力を変更することができる。
【0072】
なお、フィルタ関数としてFIRフィルタ(Finite Impulse Response)を用いてもよい。
図8Bは、フィルタ関数としてFIRフィルタを用いた場合における、指示電流の応答性の一例を示すグラフである。
図8B中の符号は
図8Aと同様である。
【0073】
FIRフィルタを用いた場合、IIRフィルタを用いた場合と異なり、立ち上がりに段差が形成されるものの、指示電流が目標電流に到達する時間が、IIRフィルタを用いた場合よりも短くなり、モータMの動力の大きさがより早く変更される。
【0074】
時定数T=0.1sec、0.3sec、1sec、2secのときの応答性をそれぞれレスポンスレベル3、2、1、0とするとき、本実施形態では、レスポンスレベル3~0はアシストレベル3~0にそれぞれ対応している。具体的には、アシストレベル3であるとき及びアシストレベル3に変更するときレスポンスレベル3が設定され、アシストレベル2であるとき及びアシストレベル2に変更するときレスポンスレベル2が設定され、アシストレベル1であるとき及びアシストレベル1に変更するときレスポンスレベル1が設定され、アシストレベル0であるとき及びアシストレベル0に変更するときレスポンスレベル0が設定されている。大きなアシスト力が必要とされるときには応答性を高めて即時にモータMによるアシスト力を変更し、大きなアシスト力を必要としないときには応答性を低くすることでゆっくりと違和感なくアシスト力を変更することができる。
【0075】
なお、上記の実施形態で説明した電動自転車10の走行モードを遷移させる制御方法は、例えば、あらかじめ用意された制御プログラムをコンピュータ(プロセッサ)で実行することにより実現できる。本制御プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本制御プログラムは、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。
【0076】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0077】
例えば、車両として二輪の電動自転車10を例示したが、二輪車以外の三輪車、四輪車であってもよい。
【0078】
上述した実施形態では、動力ユニット20は後輪78を駆動するものであったが、前輪73を駆動するものでもよい。
【0079】
上述した実施形態では、電動自転車10の速度(車速V)を後輪回転数センサSE3に基づき取得したが、これに限られない。例えば、車速Vは、GPS等に基づき取得してもよい。
【0080】
上述した最大アシスト比やトルク閾値、速度閾値、ケイデンス閾値、時定数等の具体的な値はあくまで例示であり、例示した値に限られない。
【0081】
上述の実施形態では、制御部40は、登坂モードの発動条件を満たしたとき、斜度に関わらず、先ずアシストレベル3を選択したが、これに限られず、アシストレベル2を選択してもよい。この場合、登坂モードの発動条件におけるトルク閾値Tq_th21(例えば25Nm)をトルク閾値Tq_th23(例えば20Nm)としてもよい。
【0082】
上述した登坂モードは、典型的には上り坂を走行するときに選択されるが、これに限られず、例えば向かい風が強く、クランクペダル79を漕ぐ際の乗員の負荷が大きいときにも選択され得る。
【0083】
上述の実施形態では、電動自転車10の走行モードは4つのモードを有したが、これに限られず、2つ又は3つのモードを有する構成であってもよい。また、走行モードは5つ以上のモードを有する構成であってもよい。
【0084】
上述の実施形態では、レスポンスレベル3~0をそれぞれアシストレベル3~0に対応付けたがこれに限られない。例えば、アシストレベル3~0であるとき及びアシストレベル3~0に遷移させるときのレスポンスレベルを全て同じにしてもよい。
【0085】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0086】
(1) 乗員の脚部からの入力を受ける入力部(クランクペダル79)と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪(後輪78)と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪(前輪73)に伝達される電動機(モータM)と、
前記電動機を制御する制御部(制御部40)と、
前記入力の大きさを示す第1状態量(ペダルトルク値Tq)を取得する第1状態量取得部(トルクセンサSE2)と、
車体の速度を示す第2状態量(車速V)を取得する第2状態量取得部(後輪回転数センサSE3)と、
を備える車両(電動自転車10)であって、
前記第1状態量が第1閾値(トルク閾値Tq_th11)以上、及び、
前記第2状態量がゼロのときに、
前記制御部が前記電動機に第1レベル(アシストレベル3)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第1走行状態(ゼロ発進モード)に遷移する、車両。
【0087】
走行場面に応じて、乗員が電動機に発生させる動力の大きさを手動で変更することは、車両の走行に際し、周辺監視が疎かになる。(1)によれば、車両が発進するとき、車両は適切に発進をアシストする走行状態に自動的に遷移することができる。よって、走行状態の遷移の際に乗員による手動の切り替え操作がないので、安全な走行が可能となる。
なお、「取得」とは、検出に限らず、検出に基づいて算出したり、推定したりする場合を包含する概念である。また、「速度」とは、車体の移動方向も考慮したベクトル量と、スカラー量と含む概念である。
【0088】
(2) (1)に記載の車両であって、
前記車両が前記第1走行状態である場合に、
前記第1状態量が前記第1閾値より小さな第2閾値(トルク閾値Tq_th12)以下、又は、
前記第2状態量が第3閾値(速度閾値V_th11)以上となったときに、
前記制御部が前記電動機に前記第1レベルよりも小さい第2レベル(アシストレベル1)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第2走行状態(通常モード)に遷移する、車両。
【0089】
(2)によれば、車両の発進後、走行が落ち着いたとき、車両は、制御部が電動機に第1レベルよりも小さい第2レベルの大きさの動力を発生させるよう制御して走行する第2走行状態に遷移するので、電動機が不必要に大きい動力を発生し続けることを抑制できる。これにより、乗員の意図しないアシスト力が発生することが抑制され、安全な走行が可能となる。また節電にも寄与する。
【0090】
(3) (1)又は(2)に記載の車両であって、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量(ケイデンスC)を取得する第3状態量取得部(ケイデンスセンサSE4)をさらに備え、
前記第1状態量が第4閾値(トルク閾値Tq_th21)以上、
前記第2状態量が第5閾値(速度閾値V_th21)以上、及び、
前記第3状態量が第6閾値(ケイデンス閾値C_th21)以上のときに、
前記制御部が前記電動機に前記第1レベルと同じ又は前記第1レベルよりも小さい第3レベル(アシストレベル3又は2)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第3走行状態(登坂モード)に遷移する、車両。
【0091】
(3)によれば、第1状態量、第2状態量、及び第3状態量が所定の閾値以上のときに、すなわち脚部からの入力の際の乗員の負荷が大きいときに、適切なレベルの大きさでアシストする第3走行状態に自動的に遷移することができる。したがって、適切なアシストにより乗員の負荷を低減でき、また、円滑な走行も可能となる。
【0092】
(4) (3)に記載の車両であって、
前記車両が前記第3走行状態である場合に、
前記第1状態量が前記第4閾値より小さな第7閾値(トルク閾値Tq_th22)以下、
前記第2状態量が前記第5閾値と同じ若しくは小さな第8閾値(速度閾値V_th22)以下、又は、
前記第3状態量が前記第6閾値より小さな第9閾値(ケイデンス閾値C_th23)以下若しくは前記第6閾値より大きな第10閾値(ケイデンス閾値C_th24)以上、となったときに、
前記制御部が前記電動機に前記第3レベルよりも小さい第4レベル(アシストレベル1)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第4走行状態(通常モード)に遷移する、車両。
【0093】
(4)によれば、第3走行状態による走行が落ち着いたとき、電動機が不必要に大きい動力を発生し続けることを抑制できる。これにより、乗員の意図しないアシスト力が発生することが抑制され、安全な走行が可能となる。また節電にも寄与する。
【0094】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の車両であって、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量(ケイデンスC)を取得する第3状態量取得部(ケイデンスセンサSE4)をさらに備え、
前記第1状態量が第11閾値(トルク閾値Tq_th31)以下、
前記第2状態量が第12閾値(速度閾値V_th31)以下、及び、
前記第3状態量が第13閾値(ケイデンス閾値C_th31)以下のときに、
前記制御部が前記電動機に前記第1レベルよりも小さい第5レベル(アシストレベル0)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第5走行状態(徐行モード)に遷移する、車両。
【0095】
(5)によれば、乗員が低速での車両の走行を望むとき、車両は、第1レベルよりも小さな第5レベルの大きさでアシストする第5走行状態に遷移する。よって、過剰なアシストにより乗員が望まない加速が発生することを抑制でき、安全な走行が可能となる。
【0096】
(6) (5)に記載の車両であって、
前記車両が前記第5走行状態である場合に、
前記第1状態量が前記第11閾値より大きな第14閾値(トルク閾値Tq_th32)以上、
前記第2状態量が前記第12閾値と同じ若しくは大きな第15閾値(速度閾値V_th32)以上、又は、
前記第3状態量が前記第13閾値より大きな第16閾値(ケイデンス閾値C_th32)以上、となったときに、
前記制御部が前記電動機に前記第5レベルよりも大きい第6レベル(アシストレベル1)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第6走行状態(通常モード)に遷移する、車両。
【0097】
(6)によれば、車両が低速で走行する必要がなくなったとき、車両は、第5レベルよりも大きい第6レベルに自動的に遷移するので、車速を上げて走行することができる。
【0098】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の車両であって、
前記制御部は、前記第2動力の大きさを変更するときに、変更の応答性を変更可能に構成される、車両。
【0099】
(7)によれば、変更の応答性を高めて即時に電動機によるアシスト力を変更したり、変更の応答性を低くしてゆっくりと違和感なくアシスト力を変更したりすることができる。
【0100】
(8) (7)に記載の車両であって、
前記制御部は、走行状態を他の走行状態に遷移するときに、前記応答性を変更する、車両。
【0101】
(8)によれば、応答性を高めて遷移後の走行状態に基づくアシスト力に即時に変更したり、応答性を低くして遷移後の走行状態に基づくアシスト力にゆっくりと違和感なく変更したりすることができる。
【0102】
(9) (1)から(8)のいずれかに記載の車両であって、
前記制御部は、前記電動機に前記入力部に入力された前記第1動力に相関する前記第2動力を発生させるよう制御する、車両。
【0103】
(9)によれば、電動機から発生する第2動力の大きさを入力部に入力された第1動力に基づいて決定することができる。
【0104】
(10) (4)に記載の車両であって、
前記車両が前記第3走行状態である場合に、
前記第1状態量が前記第7閾値よりも大きな且つ前記第4閾値よりも小さな第17閾値(トルク閾値Tq_th23)以下となったときに、
前記制御部は、前記電動機に前記第4レベルの大きさよりも大きく且つ前記第3レベルよりも小さい第7レベル(アシストレベル2)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御する、車両。
【0105】
(10)によれば、車両が第3走行状態である場合に、第1状態量が小さくなったとき、電動機が発生する動力の大きさを小さくする。よって、電動機が不必要に大きい動力を発生し続けることを抑制できる。これにより、過剰なアシストにより乗員が望まない加速が発生することを抑制でき、安全な走行が可能となる。また節電にも寄与する。
【0106】
(11) (10)に記載の車両であって、
前記車両が前記第3走行状態である場合に、且つ、前記制御部が前記電動機に前記第7レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御している状態で、
前記第1状態量が前記第4閾値以上となったときに、
前記制御部は、前記電動機に前記第3レベルの大きさの前記第2動力を発生させるよう制御する、車両。
【0107】
(11)によれば、車両が第3走行状態である場合に、且つ、制御部が電動機に第7レベルの大きさの動力を発生させるよう制御している状態で、第1状態量が大きくなったとき、電動機が発生する動力の大きさを第3レベルの大きさまで大きくする。したがって、脚部からの入力の際の乗員の負荷が大きいとき、電動機は適切なレベルの大きさでアシストすることができる。
【0108】
(12) 乗員の脚部からの入力を受ける入力部(クランクペダル79)と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪(後輪78)と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪(前輪73)に伝達される電動機(モータM)と、
前記電動機を制御する制御部(制御部40)と、
前記入力の大きさを示す第1状態量(ペダルトルク値Tq)を取得する第1状態量取得部(トルクセンサSE2)と、
車体の速度を示す第2状態量(車速V)を取得する第2状態量取得部(後輪回転数センサSE3)と、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量(ケイデンスC)を取得する第3状態量取得部(ケイデンスセンサSE4)と、
を備える車両(電動自転車10)であって、
前記第1状態量が第4閾値(トルク閾値Tq_th21)以上、
前記第2状態量が第5閾値(速度閾値V_th21)以上、及び、
前記第3状態量が第6閾値(ケイデンス閾値C_th21)以上のときに、
前記制御部が前記電動機に第3レベル(アシストレベル3又は2)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第3走行状態(登坂モード)に遷移する、車両。
【0109】
走行場面に応じて、乗員が電動機に発生させる動力の大きさを手動で変更することは、車両の走行に際し、周辺監視が疎かになる。(12)によれば、車両は、脚部からの入力の際の乗員の負荷が大きいとき、適切にアシストする走行状態に自動的に遷移することができる。よって、走行状態の遷移の際に乗員による手動の切り替え操作がないので、安全な走行が可能となる。さらに、適切なアシストにより乗員の負荷を低減でき、また円滑な走行が可能となる。
【0110】
(13) 乗員の脚部からの入力を受ける入力部(クランクペダル79)と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪(後輪78)と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪(前輪73)に伝達される電動機(モータM)と、
前記電動機を制御する制御部(制御部40)と、
前記入力の大きさを示す第1状態量(ペダルトルク値Tq)を取得する第1状態量取得部(トルクセンサSE2)と、
車体の速度を示す第2状態量(車速V)を取得する第2状態量取得部(後輪回転数センサSE3)と、
前記入力部の運動の速さを示す第3状態量(ケイデンスC)を取得する第3状態量取得部(ケイデンスセンサSE4)と、
を備える車両(電動自転車10)であって、
前記第1状態量が第11閾値(トルク閾値Tq_th31)以下、
前記第2状態量が第12閾値(速度閾値V_th31)以下、及び、
前記第3状態量が第13閾値(ケイデンス閾値C_th31)以下のときに、
前記制御部が前記電動機に第5レベル(アシストレベル0)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第5走行状態に遷移する、車両。
【0111】
走行場面に応じて、乗員が電動機に発生させる動力の大きさを手動で変更することは、車両の走行に際し、周辺監視が疎かになる。(13)によれば、乗員が低速で走行することを望むとき、車両は、第5レベルの大きさでアシストする第5走行状態に自動的に遷移することができる。よって、走行状態の遷移の際に乗員による手動の切り替え操作がないので、安全な走行が可能となる。
【0112】
(14) 乗員の脚部からの入力を受ける入力部(クランクペダル79)と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪(後輪78)と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪(前輪73)に伝達される電動機(モータM)と、
を備える車両(電動自転車10)の制御方法であって、
前記入力の大きさを示す第1状態量(ペダルトルク値Tq)を取得するステップと、
車体の速度を示す第2状態量(車速V)を取得するステップと、
前記第1状態量が第1閾値(トルク閾値Tq_th11)以上、及び、
前記第2状態量がゼロのときに、
前記車両を、前記電動機に第1レベル(アシストレベル3)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第1走行状態(ゼロ発進モード)に遷移させるステップと、を備える、車両の制御方法。
【0113】
走行場面に応じて、乗員が電動機に発生させる動力の大きさを手動で変更することは、車両の走行に際し、周辺監視が疎かになる。(14)によれば、車両が発進するとき、車両は適切に発進をアシストする走行状態に自動的に遷移することができる。よって、走行状態の遷移の際に乗員による手動の切り替え操作がないので、安全な走行が可能となる。
【0114】
(15) 乗員の脚部からの入力を受ける入力部(クランクペダル79)と、
前記入力部に入力された第1動力が伝達される車輪(後輪78)と、
出力した第2動力が前記車輪又は前記車輪とは異なる他の車輪(前輪73)に伝達される電動機(モータM)と、
を備える車両(電動自転車10)の制御プログラムであって、
前記入力の大きさを示す第1状態量(ペダルトルク値Tq)を取得するステップと、
車体の速度を示す第2状態量(車速V)を取得するステップと、
前記第1状態量が第1閾値(トルク閾値Tq_th11)以上、及び、
前記第2状態量がゼロのときに、
前記車両を、前記電動機に第1レベル(アシストレベル3)の大きさの前記第2動力を発生させるよう制御して走行する第1走行状態(ゼロ発進モード)に遷移させるステップと、
をコンピュータ(制御部40)に実行させるための、車両の制御プログラム。
【0115】
走行場面に応じて、乗員が電動機に発生させる動力の大きさを手動で変更することは、車両の走行に際し、周辺監視が疎かになる。(15)によれば、車両が発進するとき、車両は適切に発進をアシストする走行状態に自動的に遷移することができる。よって、走行状態の遷移の際に乗員による手動の切り替え操作がないので、安全な走行が可能となる。
【0116】
(16) (15)に記載の制御プログラムを記憶した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【0117】
(16)によれば、(15)に記載の制御プログラムをコンピュータで実行することを可能にする。
【符号の説明】
【0118】
10 電動自転車(車両)
40 制御部
73 前輪(他の車輪)
78 後輪(車輪)
79 クランクペダル(入力部)
M モータ(電動機)
SE2 トルクセンサ(第1状態量取得部)
SE3 後輪回転数センサ(第2状態量取得部)
SE4 ケイデンスセンサ(第3状態量取得部)