(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085102
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】作業機械を含むシステム、作業機械の制御方法、および作業機械のコントローラ
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199448
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 高史
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】積付け作業で形成されるマテリアルの山の高さを適正に決定する。
【解決手段】作業機械本体は、走行体を有している。作業機は、作業機械本体に取り付けられ、バケットを有している。コントローラは、走行体および作業機の動作を指令する。コントローラは、走行体が地面に接地した状態でバケット内のマテリアルを地面上に排出することで形成されるマテリアルの山の高さである積付け高さH1を、作業機械本体の寸法と作業機の寸法とを含む機械寸法より決定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体を有する作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられ、バケットを有する作業機と、
前記走行体および前記作業機の動作を指令するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記走行体が地面に接地した状態で前記バケット内のマテリアルを前記地面上に排出することで形成される前記マテリアルの山の高さを、前記作業機械本体の寸法と前記作業機の寸法とを含む機械寸法より決定する、作業機械を含むシステム。
【請求項2】
前記作業機は、先端に前記バケットが取り付けられるブームを有し、
前記機械寸法は、前記作業機械本体への前記ブームの取付位置の高さを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バケットは、刃先を有し、
前記機械寸法は、前記ブームの前記取付位置から前記刃先までの長さを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記山の前記高さを、前記機械寸法と前記マテリアルの安息角とにより決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記作業機械本体の周辺の物体を検出する物体センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記物体センサにより検出された前記山の形状から前記山の現状高さを認識し、前記山の前記現状高さが前記高さに到達したか否かを判断する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記地面上に目標点を設定し、前記目標点への前記マテリアルの排出を複数回実行するように前記走行体および作業機を制御することにより前記山を形成する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記山の前記現状高さが前記高さに到達したと判断されると、前記目標点への前記マテリアルの排出を停止し、前記地面上に次の目標点を設定する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
走行体を有する作業機械本体の寸法と、前記作業機械本体に取り付けられバケットを有する作業機の寸法と、を含む機械寸法を取得することと、
前記走行体が地面に接地した状態で前記バケット内のマテリアルを前記地面上に排出することで形成される前記マテリアルの山の高さを、前記機械寸法より決定することと、を備える、作業機械の制御方法。
【請求項9】
走行体を有する作業機械本体の寸法と、前記作業機械本体に取り付けられバケットを有する作業機の寸法と、を含む機械寸法を取得し、
前記走行体が地面に接地した状態で前記バケット内のマテリアルを前記地面上に排出することで形成される前記マテリアルの山の高さを、前記機械寸法より決定する、作業機械のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械を含むシステム、作業機械の制御方法、および作業機械のコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-043887号公報(特許文献1)には、積込対象車両における積込状況に基づいて積込対象車両に対する積込位置を決定する、作業機械の制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールローダによる作業の1つとして、ストックヤードにマテリアルを充填する作業がある。マテリアルは、作業現場で掘削された、またはダンプトラックなどの運搬機械により作業現場に搬入された、土砂、岩石または鉱石などである。
【0005】
ストックヤードへのマテリアルの充填作業は、以下の手順で行われる。第1の手順は、ホイールローダで同じ場所にマテリアルを複数回積み、マテリアルの山を作ることである。第1の手順を積付け作業と称する。第2の手順は、ストックヤード内に積付けた山の前後/左右方向に、同様形状の山を整列させるように積付けることである。第3の手順は、整列した山の斜面を掘削しながらホイールローダが山を登り、バケットに掬い込んだマテリアルを山の上部に積み上げる作業である。第3の手順をかき上げ作業と称する。
【0006】
ストックヤードなどのマテリアル集積地へのマテリアルの充填を効率よくするために、積付け作業において、マテリアルの山を適正なサイズにすることが求められている。本開示では、積付け作業で形成されるマテリアルの山の高さを適正に予想できる技術が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に係る作業機械を含むシステムは、走行体を有する作業機械本体と、作業機械本体に取り付けられ、バケットを有する作業機と、走行体および作業機の動作を指令するコントローラとを備えている。コントローラは、走行体が地面に接地した状態でバケット内のマテリアルを地面上に排出することで形成されるマテリアルの山の高さを、作業機械本体の寸法と作業機の寸法とを含む機械寸法より決定する。
【0008】
本開示のある局面に係る作業機械の制御方法は、以下のステップを備えている。第1のステップは、走行体を有する作業機械本体の寸法と、作業機械本体に取り付けられバケットを有する作業機の寸法と、を含む機械寸法を取得することである。第2のステップは、走行体が地面に接地した状態でバケット内のマテリアルを地面上に排出することで形成されるマテリアルの山の高さを、機械寸法より決定することである。
【0009】
本開示のある局面に係る作業機械のコントローラは、走行体を有する作業機械本体の寸法と、作業機械本体に取り付けられバケットを有する作業機の寸法と、を含む機械寸法を取得する。コントローラは、走行体が地面に接地した状態でバケット内のマテリアルを地面上に排出することで形成されるマテリアルの山の高さを、機械寸法より決定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、積付け作業で形成されるマテリアルの山の高さを適正に予想することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
【
図2】
図1に示されるホイールローダの平面図である。
【
図3】ホイールローダの制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】ホイールローダの自動制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】ホイールローダによる掘削作業を説明する図である。
【
図6】ホイールローダによるかき上げ作業を説明する図である。
【
図7】自動制御により積付け作業およびかき上げ作業を実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】積付け目標点および積付け高さの設定について示す図である。
【
図9】積付け目標点に向かって前進するホイールローダを模式的に示す図である。
【
図10】積付け作業中のホイールローダを模式的に示す図である。
【
図11】積付け作業により形成されたマテリアルの山を模式的に示す図である。
【
図12】かき上げ領域および被かき上げ領域の設定について示す図である。
【
図13】積付け作業を継続中のホイールローダを模式的に示す図である。
【
図14】積付け作業完了時のマテリアルの山を模式的に示す図である。
【
図15】かき上げ作業完了時のマテリアルの山を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0013】
<ホイールローダ1の全体構成>
実施形態においては、作業機械の一例としてホイールローダ1について説明する。
図1は、作業機械の一例としてのホイールローダ1の側面図である。
図2は、
図1に示されるホイールローダ1の平面図である。
【0014】
図1,2に示されるように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置4と、キャブ5とを主に備えている。車体フレーム2、キャブ5などからホイールローダ1の車体が構成されている。ホイールローダ1の車体には、作業機3および走行装置4が取り付けられている。ホイールローダ1の本体(作業機械本体)は、車体と、走行装置4とを有している。
【0015】
走行装置4は、ホイールローダ1の車体を走行させるものであり、走行輪4a,4bを含んでいる。ホイールローダ1は、車体の左右方向の両側に走行用回転体として走行輪4a,4bを備える装輪車両である。ホイールローダ1は、走行輪4a,4bが回転駆動されることにより自走可能であり、作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。走行装置4は、「走行体」の一例に対応する。
【0016】
本明細書中において、ホイールローダ1が直進走行する方向を、ホイールローダ1の前後方向という。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ1の左右方向とは、平坦な地面上にあるホイールローダ1を平面視したときに前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0017】
車体フレーム2は、前フレーム2aと後フレーム2bとを含んでいる。前フレーム2aは、後フレーム2bの前方に配置されている。前フレーム2aと後フレーム2bとは、センタピン10により、互いに左右方向に動作可能に取り付けられている。
【0018】
前フレーム2aと後フレーム2bとに亘って、左右一対のステアリングシリンダ11が取り付けられている。ステアリングシリンダ11は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ11が図示しないステアリングポンプからの作動油によって伸縮することによって、ホイールローダ1の進行方向が左右に変更される。前フレーム2aと後フレーム2bとにより、アーティキュレート構造の車体フレーム2が構成されている。ホイールローダ1は、前フレーム2aと後フレーム2bとが屈曲動作可能に連結されたアーティキュレート式の作業機械である。
【0019】
前フレーム2aには、作業機3および一対の走行輪(前輪)4aが取り付けられている。作業機3は、ホイールローダ1の車体の前方に取り付けられている。作業機3は、ホイールローダ1の車体によって支持されている。作業機3は具体的には、車体フレーム2、より特定的には前フレーム2aによって、回転可能に支持されている。作業機3は、車体フレーム2の前方に配置されている。
【0020】
作業機3は、ブーム14を含んでいる。ブーム14の基端部は、ブームピン9によって前フレーム2aに回転自在に取付けられている。ブーム14は、左ブーム部材14Lと、右ブーム部材14Rとを含んでいる。左ブーム部材14Lと右ブーム部材14Rとが左右方向に延びる接合部材により互いに相対移動不能に接合されて、一体構造のブーム14が形成されている。ブームピン9は、左右一対の左ブームピン9Lと右ブームピン9Rとを含んでいる。ブーム14は、左ブームピン9Lおよび右ブームピン9Rを回転中心として、前フレーム2aに対して回転可能である。左ブームピン9Lと右ブームピン9Rとは、作業機3を車体フレーム2に対して回転可能に支持している。
【0021】
作業機3は、バケット6を含んでいる。バケット6は、作業機3の先端に配置されている。バケット6は、掘削・積込用の作業具である。刃先6aは、バケット6の先端部である。背面6bは、バケット6の外面の一部である。背面6bは、平面で形成されている。背面6bは、刃先6aから後方に延びている。バケット6は、ブーム14の先端に位置するバケットピン17によって、回転自在にブーム14に取付けられている。バケット6は、左ブーム部材14Lが取り付けられる左ブーム取付部と、右ブーム部材14Rが取り付けられる右ブーム取付部とを有している。
【0022】
作業機3は、ベルクランク18と、リンク15とをさらに含んでいる。ベルクランク18は、そのほぼ中央部が、ブーム14の長手方向のほぼ中央に位置する支持ピン18aによって、ブーム14に回転自在に支持されている。リンク15は、ベルクランク18の下端部(先端部)に設けられた連結ピン18cに連結されている。リンク15は、ベルクランク18とバケット6とを連結している。ベルクランク18とリンク15とは、左右方向において、左ブーム部材14Lと右ブーム部材14Rとの間に配置されている。
【0023】
前フレーム2aとブーム14とは、一対のブームシリンダ16により連結されている。ブームシリンダ16は、油圧シリンダである。ブームシリンダ16は、ブーム14を、ブームピン9を中心として上下に回転駆動する。ブームシリンダ16の基端は、前フレーム2aに取り付けられている。ブームシリンダ16の先端は、ブーム14に取り付けられている。ブームシリンダ16は、ブーム14を前フレーム2aに対し上下に動作させる油圧アクチュエータである。ブーム14の昇降に伴って、ブーム14の先端に取り付けられたバケット6も昇降する。
【0024】
バケットシリンダ19は、ベルクランク18と前フレーム2aとを連結している。バケットシリンダ19の基端は、前フレーム2aに取り付けられている。バケットシリンダ19の先端は、ベルクランク18の上端部(基端部)に設けられた連結ピン18bに取り付けられている。バケットシリンダ19は、バケット6をブーム14に対し上下に回動させる油圧アクチュエータである。バケットシリンダ19は、バケット6を駆動する作業具シリンダである。バケットシリンダ19は、バケット6を、バケットピン17を中心として回転駆動する。バケット6は、ブーム14に対し動作可能に構成されている。バケット6は、前フレーム2aに対し動作可能に構成されている。
【0025】
ブームシリンダ16と、バケットシリンダ19とは、作業機3を駆動する作業機アクチュエータを構成している。
【0026】
後フレーム2bには、オペレータが搭乗するキャブ5、および一対の走行輪(後輪)4bが取り付けられている。箱状のキャブ5は、ブーム14の後方に配置されている。キャブ5は、後フレーム2bに搭載されている。キャブ5は、車体フレーム2上に載置されている。キャブ5内には、ホイールローダ1のオペレータが着座するシート、および後述する操作装置8などが配置されている。
【0027】
キャブ5には、知覚装置111が設けられている。知覚装置111は、たとえばキャブ5の天井部に配置されている。知覚装置111は、たとえばキャブ5の上面に搭載されている。知覚装置111は、たとえばキャブ5の前部に配置されている。知覚装置111は、たとえば前方を向いてキャブ5に取り付けられており、キャブ5の前方の情報を取得可能である。知覚装置111の詳細は後述する。
【0028】
図1に示される長さL1は、前後方向における、前輪4aの中心から後輪4bの中心までの長さ(ホイールベース長)である。長さL2は、前後方向における、後輪4bの中心から車体の後端までの長さ(リアオーバハング長)である。長さL3は、後輪4bの径(タイヤ径)であって、上下方向における地面Gから後輪4bの中心までの長さである。長さL4は、前後方向における、前輪4aの中心からブームピン9の中心までの長さである。長さL5は、上下方向における、地面Gからブームピン9の中心までの長さである。長さL6は、バケットピン17の中心からバケット6の刃先6aまでの長さ(バケット長)である。長さL7は、ブームピン9の中心からバケットピン17の中心までの長さ(ブーム長)である。
【0029】
図1に示される角度αは、ブームピン9の中心とバケットピン17の中心とを通る直線であるブーム基準線Aと、ブームピン9の中心から前方に延びる水平線Hと、の成す角度(ブーム角度)である。ブーム基準線Aが水平である場合を角度α=0°と定義する。ブーム基準線Aが水平線Hよりも上方にある場合に角度αを正とする。ブーム基準線Aが水平線Hよりも下方にある場合に角度αを負とする。
【0030】
角度βは、支持ピン18aの中心と連結ピン18bの中心とを通る直線であるベルクランク基準線Bと、ブーム基準線Aと、の成す角度(ベルクランク角度)である。バケット6を接地した状態でバケット6の背面6bが地上において水平となる場合を角度β=0°と定義する。バケット6を掘削方向(上向き)に移動した場合に角度βを正とする。バケット6をダンプ方向(下向き)に移動した場合に角度βを負とする。
【0031】
角度γは、車体後方下部の角度(背離角)である。角度γ(背離角)は、後輪4bが地面Gに接地する接地部と車体の後端の下面とを結ぶ直線である背離角規定線と、地面Gとの成す角度である。背離角規定線は、角度γ(背離角)を規定する線である。
【0032】
図2に示される長さL8は、左右方向における、左ブームピン9Lから右ブームピン9Rまでの長さ(ブームピン間距離)である。長さL9は、左右方向における、バケット6の左端から右端までの長さ(バケット幅)である。
【0033】
図1,2に示される長さL1~L5,L8は、作業機械本体の寸法に含まれる。
図1,2に示される長さL6,L7,L9は、作業機3の寸法に含まれる。長さL1~L9および角度α,β,γは、作業機械本体の寸法および作業機3の寸法を含む、機械寸法に含まれる。長さL1~L9および角度γは、ホイールローダ1の個体ごとに固有の値であり、後述する車体コントローラ50に記憶されている。角度α,βは、作業機3の姿勢によって変動し、後述するブーム角度センサ123およびバケット角度センサ124の検出結果に基づいて求められる。
【0034】
<システム構成>
図3は、ホイールローダ1を制御する制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【0035】
エンジン21は、作業機3および走行装置4を駆動するための駆動力を発生する駆動源であり、たとえばディーゼルエンジンである。駆動源として、エンジン21に代えて、蓄電体により駆動するモータが用いられてもよく、またエンジンとモータとの双方が用いられてもよい。エンジン21の出力は、エンジン21のシリンダ内に噴射する燃料量を調整することにより制御される。
【0036】
エンジン21の発生する駆動力は、トランスミッション23へ伝達される。トランスミッション23は、駆動力を適切なトルクおよび回転速度に変速する。トランスミッション23の出力軸に、アクスル25が接続されている。トランスミッション23で変速された駆動力は、アクスル25に伝達される。アクスル25から走行輪4a,4b(
図1,2)に、駆動力が伝達される。これにより、ホイールローダ1が走行する。実施形態のホイールローダ1においては、走行輪4aと走行輪4bとの両方が、駆動力を受けてホイールローダ1を走行させる駆動輪を構成している。
【0037】
エンジン21の駆動力の一部は、作業機ポンプ13に伝達される。作業機ポンプ13は、エンジン21により駆動され、吐出する作動油によって作業機3を作動させる油圧ポンプである。作業機3は、作業機ポンプ13からの作動油によって駆動される。作業機ポンプ13から吐出された作動油は、メインバルブ32を介して、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19に供給される。ブームシリンダ16が作動油の供給を受けて伸縮することによって、ブーム14が昇降する。バケットシリンダ19が作動油の供給を受けて伸縮することによって、バケット6が上下に回動する。
【0038】
ホイールローダ1は、車体コントローラ50を備えている。車体コントローラ50は、エンジンコントローラ60と、トランスミッションコントローラ70と、作業機コントローラ80とを含んでいる。
【0039】
車体コントローラ50は、一般的にCPU(Central Processing Unit)により各種のプログラムを読み込むことにより実現される。車体コントローラ50は、図示しないメモリを有している。メモリは、ワークメモリとして機能するとともに、ホイールローダ1の機能を実現するための各種のプログラムを格納する。
【0040】
操作装置8は、キャブ5に設けられている。操作装置8は、オペレータによって操作される。操作装置8は、オペレータがホイールローダ1を動作させるために操作する、複数種類の操作部材を備えている。操作装置8は、アクセルペダル41と、作業機操作レバー42とを含んでいる。操作装置8は、図示しないステアリングハンドル、シフトレバーなどを含んでいてもよい。
【0041】
アクセルペダル41は、エンジン21の目標回転数を設定するために操作される。エンジンコントローラ60は、アクセルペダル41の操作量に基づいて、エンジン21の出力を制御する。アクセルペダル41の操作量(踏み込み量)を増大すると、エンジン21の出力が増大する。アクセルペダル41の操作量を減少すると、エンジン21の出力が減少する。トランスミッションコントローラ70は、アクセルペダル41の操作量に基づいて、トランスミッション23を制御する。
【0042】
作業機操作レバー42は、作業機3を動作させるために操作される。作業機コントローラ80は、作業機操作レバー42の操作量に基づいて、電磁比例制御弁35,36を制御する。
【0043】
電磁比例制御弁35は、バケットシリンダ19を縮めて、バケット6がダンプ方向(バケット6の刃先が下がる方向)に移動するように、メインバルブ32を切り換える。また電磁比例制御弁35は、バケットシリンダ19を伸ばして、バケット6がチルト方向(バケット6の刃先が上がる方向)に移動するように、メインバルブ32を切り換える。電磁比例制御弁36は、ブームシリンダ16を縮めて、ブーム14が下がるようにメインバルブ32を切り換える。また電磁比例制御弁36は、ブームシリンダ16を伸ばして、ブーム14が上がるようにメインバルブ32を切り換える。
【0044】
機械モニタ51は、車体コントローラ50から指令信号の入力を受けて、各種情報を表示する。機械モニタ51に表示される各種情報は、たとえば、ホイールローダ1により実行される作業に関する情報、燃料残量、冷却水温度および作動油温度などの車体情報、ホイールローダ1の周辺を撮像した周辺画像などであってもよい。機械モニタ51はタッチパネルであってもよく、この場合、オペレータが機械モニタ51の一部に触れることにより生成される信号が、機械モニタ51から車体コントローラ50に出力される。
【0045】
<ホイールローダ1の自動制御システム>
ホイールローダ1の作業を自動化するにあたり、熟練オペレータの操作を自動制御によって再現することが望まれている。
図4は、ホイールローダ1の自動制御システムの構成を示すブロック図である。
【0046】
自動化コントローラ100は、
図3を参照して説明した車体コントローラ50との間で信号の送受信が可能に構成されている。自動化コントローラ100はまた、外界情報取得部110との間で信号の送受信が可能に構成されている。外界情報取得部110は、知覚装置111と、位置情報取得装置112とを有している。知覚装置111と位置情報取得装置112とは、ホイールローダ1に搭載されている。
【0047】
知覚装置111は、ホイールローダ1の周囲の情報を取得する。知覚装置111は、たとえばキャブ5の上面の前部に取り付けられている。知覚装置111は、ホイールローダ1の本体(作業機械本体)の周辺の物体を検出する「物体センサ」の一例に対応する。
【0048】
知覚装置111は、ホイールローダ1の外部の対象物の方向および対象物までの距離を、非接触で検出する。知覚装置111はたとえば、レーザ光を射出して対象物の情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)である。知覚装置111は、カメラを含む視覚センサであってもよい。知覚装置111は、電波を射出することにより対象物の情報を取得するRadar(Radio Detection and Ranging)であってもよい。知覚装置111は、赤外線センサであってもよい。
【0049】
位置情報取得装置112は、ホイールローダ1の現在位置の情報を取得する。位置情報取得装置112はたとえば、衛星測位システムを利用して、地球を基準としたグローバル座標系におけるホイールローダ1の位置情報を取得する。位置情報取得装置112はたとえば、GNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)を用いるものであり、GNSSレシーバを有している。衛星測位システムは、GNSSレシーバが衛星から受信した測位信号により、GNSSレシーバのアンテナの位置を演算して、ホイールローダ1の位置を算出する。
【0050】
知覚装置111によるホイールローダ1の外界情報、および、位置情報取得装置112によるホイールローダ1の位置情報は、自動化コントローラ100に入力される。
【0051】
車体コントローラ50は、車両情報取得部120との間で信号の送受信が可能に構成されており、車両情報取得部120が取得するホイールローダ1の情報の入力を受ける。車両情報取得部120は、ホイールローダ1に搭載されている各種のセンサにより構成されている。車両情報取得部120は、アーティキュレート角度センサ121、車両速度センサ122、ブーム角度センサ123、バケット角度センサ124、およびブームシリンダ圧力センサ125を有している。
【0052】
アーティキュレート角度センサ121は、前フレーム2aと後フレーム2bとのなす角度であるアーティキュレート角度を検出し、検出したアーティキュレート角度の信号を発生する。アーティキュレート角度センサ121は、アーティキュレート角度の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0053】
車両速度センサ122は、たとえば、トランスミッション23の出力軸の回転速度を検出することにより、走行装置4によるホイールローダ1の移動速度を検出し、検出した車速の信号を発生する。車両速度センサ122は、車速の信号を車体コントローラ50に出力する。車両速度センサ122は、走行装置4(走行体)の進行状況を検出する走行センサの一例に対応する。
【0054】
ブーム角度センサ123は、たとえば、ブーム14の車体フレーム2に対する取付部であるブームピン9に設けられたロータリーエンコーダで構成される。ブーム角度センサ123は、水平方向に対するブーム14の角度(
図1に示される角度α(ブーム角度))を検出し、検出したブーム14の角度の信号を発生する。ブーム角度センサ123は、ブーム14の角度の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0055】
バケット角度センサ124は、たとえば、ベルクランク18の回転軸である支持ピン18aに設けられたロータリーエンコーダで構成される。バケット角度センサ124は、ブーム14に対するベルクランク18の角度(
図1に示される角度β(ベルクランク角度))を検出し、検出したベルクランク18の角度の信号を発生する。車両情報取得部120、または車体コントローラ50は、検出したベルクランク18の角度から、ブーム14に対するバケット6の角度(バケット角度)を算出する。バケット角度は、バケットピン17の中心とバケット6の刃先6aとを通る直線と、ブーム基準線Aとの成す角度である。
【0056】
ブーム角度センサ123と、バケット角度センサ124とは、作業機3の姿勢を検出する作業機姿勢センサの一例に対応する。ブーム角度センサ123は、ブームシリンダ16に配置されたストロークセンサであってもよい。バケット角度センサ124は、バケットピン17に取り付けられたポテンショメータまたは近接スイッチであってもよく、バケットシリンダ19に配置されたストロークセンサであってもよい。
【0057】
ブームシリンダ圧力センサ125は、ブームシリンダ16のボトム側の圧力(ブームボトム圧)を検出し、検出したブームボトム圧の信号を発生する。ブームボトム圧は、バケット6に荷が積まれた場合に高くなり、空荷の場合に低くなる。ブームシリンダ圧力センサ125は、ブームボトム圧の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0058】
車体コントローラ50は、車両情報取得部120から入力された情報を、自動化コントローラ100へ出力する。自動化コントローラ100は、車体コントローラ50を介して、車両速度センサ122、ブーム角度センサ123およびバケット角度センサ124の検出値を入力する。
【0059】
アクチュエータ140は、車体コントローラ50との間で信号の送受信が可能に構成されている。車体コントローラ50からの指令信号を受けて、アクチュエータ140が駆動する。アクチュエータ140は、走行装置4のブレーキを作動させるためのブレーキEPC(電磁比例制御弁)141と、ホイールローダ1の走行方向を調節するためのステアリングEPC142と、作業機3を動作させるための作業機EPC143と、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)144とを含んでいる。
【0060】
図3に示される電磁比例制御弁35,36は、作業機EPC143を構成している。
図3に示されるトランスミッション23は、電子制御を活用したHMT144として実現される。トランスミッション23は、HST(Hydro-Static Transmission)であってもよい。エンジン21から走行輪4a,4bへ動力を伝達する動力伝達装置は、ディーゼル・エレクトリック方式などの電気式駆動装置を含んでもよく、HMT、HST、電気式駆動装置のいずれかの組み合わせを含んでもよい。
【0061】
トランスミッションコントローラ70は、ブレーキ制御部71と、アクセル制御部72とを有している。ブレーキ制御部71は、ブレーキEPC141に対して、ブレーキの作動を制御するための指令信号を出力する。アクセル制御部72は、HMT144に対して、車速を制御するための指令信号を出力する。
【0062】
作業機コントローラ80は、ステアリング制御部81と、作業機制御部82とを有している。ステアリング制御部81は、ステアリングEPC142に対して、ホイールローダ1の走行方向を制御するための指令信号を出力する。作業機制御部82は、作業機EPC143に対して、作業機3の動作を制御するための指令信号を出力する。
【0063】
自動化コントローラ100は、位置推定部101と、パスプランニング部102と、経路追従制御部103とを有している。
【0064】
位置推定部101は、位置情報取得装置112が取得した位置情報によって、ホイールローダ1の自己位置を推定する。また位置推定部101は、知覚装置111が取得した外界情報によって、目標位置を認識する。目標位置は、たとえば、地面Gに設定される目標点(後述)の位置、または、バケット6内のマテリアルを地面上に排出することで形成されるマテリアルの山の位置である。知覚装置111が目標位置を認識して自動化コントローラ100に入力してもよく、知覚装置111が検出した検出結果に基づいて位置推定部101が目標位置を認識してもよい。
【0065】
パスプランニング部102は、ホイールローダ1を自動制御するときの、ホイールローダ1の最適経路を生成する。最適経路は、走行装置4による走行の経路と、作業機3の動作の経路とを含んでいる。たとえばパスプランニング部102は、同じ目標点に複数回マテリアルを積みマテリアルの山を作る積付け作業における、目標点に向かって直線的に前進する走行装置4の走行の経路と、バケット6内のマテリアルを目標点に排出する作業機3の動作の経路と、の最適経路を生成する。パスプランニング部102はまた、かき上げ作業における、マテリアルの山に向かって前進してマテリアルの山を登る走行装置4の走行の経路と、マテリアルの山の斜面を掘削しバケット6に掬い込んだマテリアルを山の上部に積み上げる作業機3の動作の経路と、の最適経路を生成する。
【0066】
経路追従制御部103は、走行装置4および作業機3の動作を指令する。経路追従制御部103は、パスプランニング部102が生成した最適経路に追従してホイールローダ1が走行するように、アクセル、ブレーキおよびステアリングを制御する。経路追従制御部103から、ブレーキ制御部71、アクセル制御部72およびステアリング制御部81に、ホイールローダ1を最適経路に沿って走行させるための指令信号が出力される。経路追従制御部103は、パスプランニング部102が生成した最適経路に沿って作業機3が動作するように、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19を制御する。経路追従制御部103から、作業機制御部82に、作業機3を最適経路に沿って移動させるための指令信号が出力される。
【0067】
インターフェース130は、車体コントローラ50との間で信号の送受信が可能に構成されている。インターフェース130は、自動化切替スイッチ131、エンジン緊急停止スイッチ132、およびモードランプ133を有している。
【0068】
自動化切替スイッチ131は、オペレータによって操作される。オペレータは、自動化切替スイッチ131を操作することにより、ホイールローダ1をマニュアルで操作するか、ホイールローダ1を自動制御するかを切り替える。エンジン緊急停止スイッチ132は、オペレータによって操作される。エンジン21を緊急停止させることが求められる事象が発生したとき、オペレータは、エンジン緊急停止スイッチ132を操作する。自動化切替スイッチ131およびエンジン緊急停止スイッチ132の操作の信号は、車体コントローラ50に入力される。
【0069】
モードランプ133は、ホイールローダ1が現在、オペレータによるマニュアル操作されるモードであるか、または自動制御されるモードであるか、を表示する。車体コントローラ50からモードランプ133に、ランプの点灯を制御するための指令信号が出力される。
【0070】
<掘削作業>
実施形態のホイールローダ1は、土砂などのマテリアルをバケット6に掬い取る掘削作業を実行する。
図5は、ホイールローダ1による掘削作業を説明する図である。
【0071】
図5に示されるように、ホイールローダ1は、土砂などのマテリアル200へ向かって前進走行する。ホイールローダ1がバケット6をマテリアル200へ突っ込み、バケット6の刃先6aをマテリアル200に食い込ませた状態で、前進方向に牽引力を掛けながら、バケット6を上昇させる。
図5中に曲線矢印で示されるバケット軌跡BLに表されるように、バケット6が動作する。これにより、バケット6にマテリアル200を掬い取る掘削作業が実行される。
【0072】
ホイールローダ1は、掬い込んだバケット6内のマテリアル200を、走行装置4の前輪4aおよび後輪4bの両方が地面Gに接地した状態で、地面Gの同じ場所に複数回排出して、地面G上にマテリアル200の山を形成する、積付け作業を実行する。
【0073】
<かき上げ作業>
実施形態のホイールローダ1は、積付けたマテリアル200により形成される山の斜面をバケット6で掘削しながらマテリアル200の山の斜面を上方へ登り、マテリアル200の山の斜面の上部に新たなマテリアル200を積み上げる、かき上げ作業を実行する。
図6は、ホイールローダ1によるかき上げ作業を説明する図である。
【0074】
図6に示されるように、ホイールローダ1は、マテリアル200の山へ向かって前進走行する。バケット6の刃先6aをマテリアル200に食い込ませた状態で、バケット6を上昇させる。このときホイールローダ1は前進走行を継続しており、ホイールローダ1はマテリアル200の山をバケット6で掘削しながら山の中腹まで登るように走行する。
図6中に曲線矢印で示されるバケット軌跡BLに表されるように、バケット6が動作する。バケット6が山の上部に到達すると、ホイールローダ1は、バケット6をダンプ動作させて、バケット6内のマテリアル200をバケット6から排出する。これにより、バケット6に掬い込んだマテリアル200を山の上部に積み上げるかき上げ作業が実行される。
【0075】
<積付け/かき上げ作業の自動制御>
図7は、自動制御により積付け作業およびかき上げ作業を実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図7および後続の
図8~15を適宜参照して、積付け作業およびかき上げ作業の自動制御について、説明する。
【0076】
まず、ステップS1において、自動化コントローラ100のパスプランニング部102は、地面G上に、積付け目標点Oを設定する。積付け目標点Oは、たとえば、ストックヤード内への積付け作業のために、ストックヤード内の地面Gに設定されてもよい。または積付け目標点Oは、更地に設定されてもよい。
【0077】
ステップS2において、パスプランニング部102は、積付け高さH1を決定する。
図8は、積付け目標点Oおよび積付け高さH1の設定について示す図である。積付け目標点Oの真っ直ぐ上方に、積付け作業により形成されるマテリアル200の山の頂点Pが設定される。積付け高さH1は、地面Gから頂点Pまでの距離である。
図8に示される角度θは、マテリアル200の安息角である。パスプランニング部102は、ホイールローダ1の機械寸法より、積付け高さH1が最大になる頂点Pを決定する。
【0078】
具体的に、マテリアル200の安息角θは、マテリアル200の素材および状態によって異なる。マテリアルの安息角θが小さければ、マテリアル200の山が前輪4aと干渉しないためには、頂点Pをホイールローダ1の車体からより離れた位置に設定する必要があり、このときの積付け高さH1は比較的小さくなる。マテリアルの安息角θが大きければ、マテリアル200の山が自発的に崩れにくくなるので、頂点Pをホイールローダ1の車体により近くより高い位置に設定でき、積付け高さH1は比較的大きくなる。
【0079】
パスプランニング部102は、ホイールローダ1の機械寸法より、作業機械本体に対してバケット6の刃先6aを配置可能な領域を算出する。具体的には、パスプランニング部102は、
図1に示される、ブームピン9の高さを示す長さL5と、作業機3の寸法(長さL6(バケット長)および長さL7(ブーム長))と、作業機械本体に対してとり得るブーム14の角度(ブーム角、角度α)と、ブーム14に対してとり得るバケット6の角度(バケット角)と、より、作業機械本体に対してバケット6の刃先6aを配置可能な領域を算出する。ブームピン9は、作業機械本体へのブーム14の取付位置である。作業機3の寸法は、ブームピン9からバケット6の刃先6aまでの長さを含む。
【0080】
上述したように、長さL5~L7は、車体コントローラ50に記憶されている。ブーム角およびバケット角は、ブーム角度センサ123およびバケット角度センサ124の検出結果より求められる。
【0081】
パスプランニング部102は、前輪4aと後輪4bとを地面Gに接地した状態で積付け高さH1を最大にできる頂点Pを、ホイールローダ1の機械寸法と、マテリアルの安息角θとにより決定する。パスプランニング部102は、作業機械本体に対してバケット6の刃先6aを配置可能な領域内の各位置にバケット6の刃先6aを配置した状態で、バケット6からマテリアル200を排出した場合に、形成されるマテリアル200の山が前輪4aと干渉しない条件を満たす、刃先6aの位置を算出する。パスプランニング部102は、算出された刃先6aの位置のうち、地面Gから最も離れ最も高い位置にある刃先6aの位置を決定する。パスプランニング部102は、その刃先6aの最も高い位置を、積付け作業により形成されるマテリアル200の山の頂点Pとする。
【0082】
パスプランニング部102は、積付け高さH1を最も高くできる頂点Pを決定し、その頂点Pに対応する積付け高さH1を決定する。パスプランニング部102は、積付け作業によって形成されるマテリアル200の山の高さを、積付け高さH1とする。パスプランニング部102は、その頂点Pおよび積付け高さH1を有するマテリアル200の山を形成するときの走行装置4および作業機3の位置を決定し、その位置に向かうホイールローダ1の最適経路を生成する。
【0083】
マテリアルの安息角θは、オペレータがインターフェース130を介して入力し、車体コントローラ50に記憶されてもよい。自動化コントローラ100のパスプランニング部102は、車体コントローラ50に記憶された安息角θを適宜読み出して、積付け高さH1の計算、および後述するかき上げ高さH2の計算などの他の計算に使用してもよい。または、パスプランニング部102は、知覚装置111により検出された車体前方のマテリアル200の情報と、自動化コントローラ100または車体コントローラ50に記憶されているデータベースとを照合することで、マテリアル200の素材および状態を認識して、安息角θを決定してもよい。
【0084】
図7に戻って、ステップS3において、自動化コントローラ100の経路追従制御部103は、積付け目標点Oを通る直線に沿って積付け作業を実行するように、ホイールローダ1を最適経路に追従して動作させる。
【0085】
図9は、積付け目標点Oに向かって前進するホイールローダ1を模式的に示す図である。
図9に示される中心線CLは、左右方向におけるホイールローダ1の中心線である。中心線CLは直線である。中心線CL上に、積付け目標点Oがある。
図9に示される中心線CLは、積付け目標点Oを通る直線の一例である。ホイールローダ1は、中心線CLに沿って直進して、積付け目標点Oに向かって前進する。積付け目標点Oに向かって前進するホイールローダ1は、バケット6にマテリアル200を搭載している。
【0086】
図10は、積付け作業中のホイールローダ1を模式的に示す図である。
図10および後続の
図11,13,15では、
図1,2に示されるホイールローダ1の構成のうち、前フレーム2a、後フレーム2b、前輪4a、後輪4b、バケット6、およびブーム14のみが、代表的に図示されている。
【0087】
自動化コントローラ100の経路追従制御部103は、
図9に示される中心線CLに沿ってホイールローダ1を直線的に前進させて、積付け目標点Oに接近させる。経路追従制御部103は、バケット6の刃先6aが積付け目標点Oの上方(すなわち、頂点Pの上方)に到達すると、バケット6をダンプ動作させて、バケット6内のマテリアル200を地面G上に排出させる。これにより、地面G上にマテリアル200の山が形成される。マテリアル200の排出を複数回繰り返すことによって積付け高さH1のマテリアル200の山が形成される。
図10に示される積付け作業の途中では、マテリアル200の山の頂点は、ステップS2で決定された頂点Pよりも低い(地面Gに近い)位置にある。
【0088】
図7に戻って、ステップS4において、マテリアル200の山の高さが積付け高さH1に達したか否かが判断される。知覚装置111は、マテリアル200の山を検出する。知覚装置111は、現在のマテリアル200の山の形状を検出する。知覚装置111が検出した検出結果は、自動化コントローラ100の位置推定部101に入力される。位置推定部101は、知覚装置111により検出されたマテリアル200の山の形状から、山の現状高さを認識する。マテリアル200の山の現状高さは、積付け高さH1以下の高さになる。
【0089】
自動化コントローラ100は、マテリアル200の山の現状高さと、ステップS2で決定された積付け高さH1とを比較する。現状高さが積付け高さH1よりも低いと判断されると、マテリアル200の山の高さが積付け高さH1に達していない(ステップS4においてNO)と判断される。その場合、処理はステップS3に戻り、積付け作業が継続される。
【0090】
図11は、積付け作業により形成されたマテリアル200の山を模式的に示す図である。
図11には、自動化コントローラ100の経路追従制御部103が、積付け目標点Oへのマテリアル200の排出を複数回実行するように走行装置4および作業機3を制御した後の状態が示されている。
図11に示されるマテリアル200の山の高さは、積付け高さH1に到達している。このとき、自動化コントローラ100は、マテリアル200の山の現状高さが積付け高さH1に達した(ステップS4においてYES)と判断して、積付け作業を終了する。
【0091】
ステップS5に進み、自動化コントローラ100のパスプランニング部102は、かき上げ高さH2を決定する。
図12は、かき上げ領域V1および被かき上げ領域V2の設定について示す図である。かき上げ高さH2は、地面Gから、かき上げ作業によって成形された後のマテリアル200の山の頂点Qまでの距離である。頂点Qは、頂点Pよりも高い位置にある。
【0092】
かき上げ作業は、マテリアル200の山をバケット6で掘削しながらホイールローダ1がマテリアル200の山を登っていく作業である。ホイールローダ1が山を登るにつれて、ホイールローダ1の車体は、その前方が上向きになるように傾斜する。ホイールローダ1は、車体が地面Gに接触する角度まで車体を傾けて斜面を登ることができる。
【0093】
自動化コントローラ100のパスプランニング部102は、ホイールローダ1の機械寸法より、かき上げ高さH2を決定する。パスプランニング部102は、ホイールローダ1がマテリアル200の山の斜面を登るときに、ホイールローダ1の後フレーム2bの後端の下面が地面Gに接触することなくホイールローダ1の車体が傾斜可能な範囲を、ホイールベース長(長さL1、
図1)、リアオーバハング長(長さL2、
図1)、および背離角(角度γ、
図1)より、決定する。
【0094】
パスプランニング部102は、マテリアル200の山の頂点Pから
図12中の右下方向に延びる斜面に平行な、仮想直線VL1を設定する。
図12に示される仮想直線VL1は、かき上げ作業によって成形された後のマテリアル200の山の斜面の一例に相当する。またパスプランニング部102は、マテリアル200の山の頂点Pから
図12中の左下方向に延びる斜面を頂点Pの右上方向に延長した仮想直線VL2を設定する。仮想直線VL1,VL2は、
図12においては破線で図示されている。
【0095】
パスプランニング部102は、後フレーム2bの後端の下面を地面Gに接触させずに、仮想直線VL1に沿ってマテリアル200の山の斜面を登り、仮想直線VL2上にバケット6の刃先6aを配置することが可能な、ホイールローダ1の姿勢を算出する。パスプランニング部102は、そのようなホイールローダ1の姿勢を、少なくとも1つ、好ましくは複数、好ましくは取り得る全ての姿勢を、算出する。
【0096】
パスプランニング部102は、
図1に示される、ホイールベース長を示す長さL1と、リアオーバハング長を示す長さL2と、ブームピン9の高さを示す長さL5と、作業機3の寸法(長さL6(バケット長)および長さL7(ブーム長))と、作業機械本体に対してとり得るブーム14の角度(ブーム角、角度α)と、ブーム14に対してとり得るバケット6の角度(バケット角)と、背離角を示す角度γと、より、仮想直線VL1に沿ってマテリアル200の山の斜面を登り仮想直線VL2上にバケット6の刃先6aを配置可能な、ホイールローダ1の姿勢を算出する。ブームピン9は、作業機械本体へのブーム14の取付位置である。作業機3の寸法は、ブームピン9からバケット6の刃先6aまでの長さを含む。
【0097】
上述したように、長さL1~L2,L5~L7および角度γは、車体コントローラ50に記憶されている。ブーム角およびバケット角は、ブーム角度センサ123およびバケット角度センサ124の検出結果より求められる。
【0098】
パスプランニング部102は、上記の仮想直線VL2上における、バケット6の刃先6aを配置可能な範囲のうち、地面Gから最も離れ最も高い位置にある刃先6aの位置を、決定する。パスプランニング部102は、その刃先6aの最も高い位置を、かき上げ作業により成形されるマテリアル200の山の頂点Qとする。パスプランニング部102は、かき上げ高さH2を最も高くできる頂点Qを決定し、その頂点Qに対応する仮想直線VL1をマテリアル200により成形される山の斜面として決定し、その頂点Qに対応するかき上げ高さH2を決定する。パスプランニング部102は、かき上げ作業によって成形されるマテリアル200の高さを、かき上げ高さH2とする。
【0099】
パスプランニング部102は、その頂点Qおよびかき上げ高さH2を有するマテリアル200の山を成形するときの走行装置4および作業機3の位置を決定し、その位置に向かうホイールローダ1の最適経路を生成する。パスプランニング部102は、マテリアル200の山の頂点Qを目標位置として、バケット6内にマテリアル200を掬い込みながら、走行装置4を前進走行させてホイールローダ1に斜面を登らせるように、最適経路を生成する。パスプランニング部102は、目標位置である山の頂点Qの位置にバケット6の刃先6aが到達すると、バケット6をダンプ動作させてバケット6内のマテリアル200を排出させて、マテリアル200の山の斜面の上部にマテリアル200を積み上げるように、最適経路を生成する。
【0100】
図7に戻って、ステップS6において、パスプランニング部102は、かき上げ領域V1を計算する。
図12を再び参照して、パスプランニング部102は、積付け作業により形成されるマテリアル200の山の頂点Pを通り、地面Gと平行に延びる、典型的には水平に延びる、仮想平面を設定する。かき上げ作業で成形されるマテリアル200の山の頂点Qから
図12中の右下方向に延びる仮想直線VL1と、上記の仮想平面との成す角度は、安息角θである。したがって
図12中に破線で示される、頂点Pと頂点Qとを2つの頂点とする三角形は、両底角が安息角θで等しいので、二等辺三角形である。その二等辺三角形の底辺は
図12中の左右方向に延び、その底辺の長さを辺長SL1とする。パスプランニング部102は、その二等辺三角形で囲まれる領域を、かき上げ領域V1とする。
【0101】
図12に示される上記の二等辺三角形の高さは、かき上げ高さH2と積付け高さH1との差である。マテリアル200の安息角θによって二等辺三角形の2つの等辺が決定され、2つの等辺をむすぶ二等辺三角形の底辺が決定される。二等辺三角形の底辺の長さは、辺長SL1である。積付け高さH1と、かき上げ高さH2と、マテリアル200の安息角θから決定される辺長SL1と、により、二等辺三角形の面積が計算される。
【0102】
かき上げ作業(および積付け作業)により形成される山は三次元形状を有しており、
図12における紙面垂直方向に幅を有している。したがって、かき上げ作業によってかき上げ領域V1に積み上げられるマテリアル200に関して、そのマテリアル200の体積が決定される。かき上げ領域V1に積み上げられるマテリアル200の体積を、積み上げ体積とも称する。たとえば、かき上げ作業によって
図12の紙面垂直方向に同じ幅のマテリアル200が積み上げられると想定し、そのマテリアル200の幅がバケット6の幅と等しいと想定すれば、
図12に示される上記の二等辺三角形の面積に、バケット幅を示す長さL9(
図2)を乗じることによって、積み上げ体積を計算することができる。
【0103】
図7に戻って、ステップS7において、パスプランニング部102は、被かき上げ領域V2を計算し、仮想面VPを設定する。被かき上げ領域V2は、かき上げ作業によってかき上げ領域V1に運ばれるべきマテリアル200が積まれる領域である。パスプランニング部102は、かき上げ領域V1の体積である積み上げ体積と、被かき上げ領域V2との体積とが等しくなるように、積み上げ体積に基づいて被かき上げ領域V2を計算する。パスプランニング部102は、被かき上げ領域V2の境界の一部を構成する仮想面VPを設定する。
【0104】
図12を再び参照して、ステップS6で設定した、かき上げ作業で形成されるマテリアル200の山の頂点Qから
図12中の右下方向に延びる仮想直線VL1は、かき上げ作業の終了後のマテリアル200の山の斜面に対応する。パスプランニング部102は、その山の斜面と、仮想直線VL1と平行に延び
図12の紙面垂直方向に延びる平面である仮想面VPと、地面Gと、地面Gと平行に延び頂点Pを通る平面と、によって囲まれる領域を、被かき上げ領域V2とする。パスプランニング部102は、かき上げ作業の終了後のマテリアル200の山の斜面に沿って、被かき上げ領域V2を設定する。パスプランニング部102は、かき上げ作業の終了後のマテリアル200の山の外側に、被かき上げ領域V2を設定する。仮想面VPと地面Gとの成す角度であって鋭角である角度は、安息角θである。
【0105】
図12に示される、被かき上げ領域V2を設定する四角形は、平行四辺形である。その平行四辺形の上辺は
図12中の左右方向に延び、その上辺(および下辺)の長さを辺長SL2とする。平行四辺形の高さは積付け高さH1である。被かき上げ領域V2は、平行四辺形を底面とする四角柱形状を有している。
図12に示される、辺長SL1を有する辺と、辺長SL2を有する辺とは、一直線上にある。かき上げ領域V1の底面と、被かき上げ領域V2の頂面とは、同一平面上にある。
【0106】
かき上げ領域V1の体積と被かき上げ領域V2の体積とが等しいので、
図12の紙面垂直方向におけるマテリアル200の幅がかき上げ領域V1と被かき上げ領域V2とで等しいと仮定すれば、
図12に示される二等辺三角形の面積と、
図12に示される平行四辺形との面積が等しくなる。したがって、下記の式1によって、辺長SL2を計算することができる。
【0107】
SL1×(H2-H1)/2=SL2×H1 ・・・ (式1)
被かき上げ領域V2の高さは、必ずしも積付け高さH1でなくてもよい。被かき上げ領域V2の形状は、四角柱に限られない。被かき上げ領域V2の体積がかき上げ領域V1の体積と等しければ、被かき上げ領域V2は任意の形状を有していてもよい。被かき上げ領域V2の全体が、頂点Pよりも高さの低い位置に設定されてもよい。
図12の紙面垂直方向における、かき上げ領域V1の幅と、被かき上げ領域V2の幅とが、互いに異なってもよい。
【0108】
図7に戻って、ステップS8において、自動化コントローラ100は、積付け作業を継続する。
図13は、積付け作業を継続中のホイールローダ1を模式的に示す図である。パスプランニング部102は、地面G上の、ステップS1で設定した積付け目標点Oよりも後方(ホイールローダ1の前後方向における後方。
図13においては図中の右方)に、次の目標点を設定する。パスプランニング部102は、その次の目標点の真っ直ぐ上方の点であって、ステップS2で設定される頂点Pと同じ高さの点を、次の山の頂点として決定する。パスプランニング部102は、その次の山を形成するときの走行装置4および作業機3の位置を決定し、その位置に向かうホイールローダ1の最適経路を生成する。
【0109】
経路追従制御部103は、新たに生成された最適経路に追従してホイールローダ1を動作させることにより、次の山の積付け作業を実行する。経路追従制御部103は、複数の山の積付け作業を繰り返し実行する。
図13には、最初の積付け作業により形成されたマテリアル200の山の後方に、3つの山が形成された状態が図示されている。
【0110】
図7に戻って、ステップS9において、自動化コントローラ100は、仮想面VP内が充填されたか否かを判断する。知覚装置111は、マテリアル200の山を検出する。知覚装置111は、現在のマテリアル200の山の形状を検出する。知覚装置111が検出した検出結果は、自動化コントローラ100の位置推定部101に入力される。位置推定部101は、知覚装置111の検出結果から、積付け作業により形成されたマテリアル200の山の現在の形状を認識し、マテリアル200の山の現状高さを認識する。
【0111】
自動化コントローラ100は、積付け作業により形成されたマテリアル200の山の斜面と、ステップS7で決定された仮想面VPとを比較する。マテリアル200の山の斜面が仮想面VPに到達していないと判断されると(ステップS9においてNO)、処理はステップS8に戻り、積付け作業が継続される。たとえば
図13に示される山の状態では、直近に積付けられたマテリアル200の山の斜面が仮想面VPよりも前方(図中の左方)にあり、マテリアル200の山の斜面が仮想面VPに到達していない。したがって被かき上げ領域V2内にマテリアル200が積まれていない。
【0112】
自動化コントローラ100は、積付け作業によって被かき上げ領域V2にマテリアル200を積み、被かき上げ領域V2にマテリアル200を充填するように、走行装置4および作業機3を制御する。積付け作業により形成されたマテリアル200の山の斜面が仮想面VPに到達し、かつ、その山の現状高さが積付け高さH1に到達したと判断されると(ステップS9においてYES)、被かき上げ領域V2にマテリアル200が積まれたと判断され、積付け作業を完了する。
【0113】
図14は、積付け作業完了時のマテリアル200の山を模式的に示す図である。
図14には、最初の積付け作業により形成されたマテリアル200の山の後方(
図14においては図中の右方)に、6つの山が形成された状態が図示されている。最後に積付けられたマテリアル200の山の斜面が、仮想面VPに到達して、被かき上げ領域V2内のほぼ全体にマテリアル200が積まれている。
【0114】
被かき上げ領域V2にマテリアル200が積まれると、積付け作業からかき上げ作業へ移行する。
図7に戻って、ステップS10において、自動化コントローラ100の経路追従制御部103は、ステップS5で生成された最適経路に追従してホイールローダ1を動作させることにより、かき上げ作業を実行する。
【0115】
経路追従制御部103は、マテリアル200の山に向かってホイールローダ1を前進走行させて、被かき上げ領域V2内のマテリアル200にバケット6の刃先6aを食い込ませる。経路追従制御部103は、その状態でホイールローダ1を前進走行させて、ホイールローダ1が、被かき上げ領域V2のマテリアル200をバケット6内に掬い込みながら、マテリアル200の山の斜面を登るようにする。バケット6が山の上部の目標位置である頂点Qに到達すると、経路追従制御部103は、バケット6内のマテリアル200を排出して、山の斜面の上部にマテリアル200を積み上げる。このようにして、被かき上げ領域V2のマテリアル200の、かき上げ領域V1への移動が実行される。
【0116】
ステップS11において、マテリアル200の山の高さがかき上げ高さH2に達したか否かが判断される。知覚装置111は、マテリアル200の山を検出する。知覚装置111は、現在のマテリアル200の山の形状を検出する。知覚装置111が検出した検出結果は、自動化コントローラ100の位置推定部101に入力される。位置推定部101は、知覚装置111により検出されたマテリアル200の山の形状から、山の現状高さを認識する。
【0117】
自動化コントローラ100は、かき上げ作業によって成形されるマテリアル200の山の現状高さと、ステップS5で決定されたかき上げ高さH2とを比較する。現状高さがかき上げ高さH2よりも低いと判断されると、マテリアル200の山の高さがかき上げ高さH2に達していない(ステップS11においてNO)と判断される。その場合、処理はステップS10に戻り、かき上げ作業が継続される。
【0118】
図15は、かき上げ作業完了時のマテリアル200の山を模式的に示す図である。
図15には、自動化コントローラ100の経路追従制御部103が、被かき上げ領域V2のマテリアル200の全部をかき上げ領域V1に移動させるように、走行装置4および作業機3を制御した後の状態が示されている。
図15に示されるマテリアル200の山の高さは、かき上げ高さH2に到達している。自動化コントローラ100は、知覚装置111の検出結果から、マテリアル200の山の現状高さがかき上げ高さH2に達した(ステップS11においてYES)と判断して、かき上げ作業を終了する。
【0119】
このようにして、積付け作業およびかき上げ作業を実行する一連の処理を終了する(
図7の「終了」)。
【0120】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0121】
図7、
図8および
図11に示されるように、自動化コントローラ100のパスプランニング部102は、前輪4aと後輪4bとが地面Gに接地した状態でバケット6内のマテリアルを地面G上に排出することで形成されるマテリアル200の山の高さである積付け高さH1を、作業機械本体の寸法と作業機3の寸法とを含む機械寸法より決定する。
【0122】
ホイールローダ1の本体(作業機械本体)および作業機3の幾何学的形状で決まるホイールローダ1の機械寸法から、積付け作業で形成されるマテリアル200の山の高さである積付け高さH1を決定することで、マテリアル200の山の高さを適正に決定することができる。ストックヤードなどの限られたスペースにマテリアル200を充填する場合に、充填するマテリアル200を増大することができる。
【0123】
図1に示されるように、ブームピン9は、作業機械本体へのブーム14の取付位置であり、ホイールローダ1の機械寸法は、ブームピン9の高さである長さL5を含んでもよい。ブームピン9の高さから積付け高さH1を決定することで、マテリアル200の山の高さを適正に決定することができる。
【0124】
図1に示されるように、ホイールローダ1の機械寸法は、ブーム14の取付位置であるブームピン9からバケット6の刃先6aまでの長さを含んでもよい。作業機3の寸法から積付け高さH1を決定することで、マテリアル200の山の高さを適正に決定することができる。
【0125】
図8に示されるように、パスプランニング部102は、積付け高さH1を、ホイールローダ1の機械寸法とマテリアル200の安息角θとにより決定してもよい。ホイールローダ1の機械寸法に加えてマテリアル200の安息角θを考慮して積付け高さH1を決定することで、マテリアル200の山の高さを適正に決定することができる。
【0126】
図7、
図10および
図11に示されるように、自動化コントローラ100は、知覚装置111により検出されたマテリアル200の山の形状からマテリアル200の山の現状高さを認識し、マテリアル200の現状高さが積付け高さH1に到達したか否かを判断してもよい。マテリアル200の現状高さが積付け高さH1に到達していなければ積付け作業を継続し、マテリアル200の現状高さが積付け高さH1に到達した時点で積付け作業を終了とすることで、積付け高さH1を有するマテリアル200の山を確実に形成することができる。
【0127】
図7、
図8および
図11に示されるように、パスプランニング部102は、地面G上に積付け目標点Oを設定し、経路追従制御部103は、積付け目標点Oへのマテリアル200の排出を複数回実行するように走行装置4および作業機3を制御することにより、マテリアル200の山を形成してもよい。このようにすれば、積付け目標点Oに積付け高さH1のマテリアル200の山を確実に形成することができる。積付け目標点Oをストックヤード内に設定すれば、ストックヤードへのマテリアル200の充填量を増大することができる。
【0128】
図7、
図11および
図13に示されるように、自動化コントローラ100は、マテリアル200の山の現状高さが積付け高さH1に到達したと判断されると、積付け目標点Oへのマテリアル200の排出を停止し、地面G上に次の目標点を設定してもよい。積付け目標点Oから少し離れた適切な位置に次の目標点を設定することで、
図14に示されるように、積付け作業によって、同様形状のマテリアル200の山を整列させて形成することができる。
図15に示されるように、この連なった山の中央に、かき上げ作業によりマテリアル200を積み上げることで、限られたスペースへのマテリアル200の充填量をさらに増大することができる。
【0129】
上記の実施形態で説明した、ホイールローダ1の自動制御システムを構成する自動化コントローラ100は、必ずしもホイールローダ1に搭載されていなくてもよい。ホイールローダ1に搭載されたコントローラが、外界情報取得部110および車両情報取得部120などによって取得された情報を、外部のコントローラへ送信する処理を行い、信号を受信した外部のコントローラがホイールローダ1を自動制御するシステムを構成してもよい。外部のコントローラは、ホイールローダ1の作業現場に配置されてもよく、ホイールローダ1の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。
【0130】
実施形態では、ホイールローダ1はキャブ5を備えており、オペレータがキャブ5に搭乗する有人車両である例について説明した。ホイールローダ1は、無人車両であってもよい。ホイールローダ1は、オペレータが搭乗して操作するためのキャブ5を備えていなくてもよい。ホイールローダ1は、搭乗したオペレータによる操縦機能を搭載していなくてもよい。ホイールローダ1は、遠隔操縦専用の作業機械であってもよい。ホイールローダ1の操縦は、遠隔操縦装置からの無線信号により行われてもよい。
【0131】
<付記>
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0132】
(付記1)
走行体を有する作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられ、バケットを有する作業機と、
前記走行体および前記作業機の動作を指令するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記走行体が地面に接地した状態で前記バケット内のマテリアルを前記地面上に排出することで形成される前記マテリアルの山の高さを、前記作業機械本体の寸法と前記作業機の寸法とを含む機械寸法より決定する、作業機械を含むシステム。
【0133】
(付記2)
前記作業機は、先端に前記バケットが取り付けられるブームを有し、
前記機械寸法は、前記作業機械本体への前記ブームの取付位置の高さを含む、付記1に記載のシステム。
【0134】
(付記3)
前記バケットは、刃先を有し、
前記機械寸法は、前記ブームの前記取付位置から前記刃先までの長さを含む、付記1または付記2に記載のシステム。
【0135】
(付記4)
前記コントローラは、前記山の前記高さを、前記機械寸法と前記マテリアルの安息角とにより決定する、付記1から付記3のいずれか1つに記載のシステム。
【0136】
(付記5)
前記作業機械本体の周辺の物体を検出する物体センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記物体センサにより検出された前記山の形状から前記山の現状高さを認識し、前記山の前記現状高さが前記高さに到達したか否かを判断する、付記1から付記4のいずれか1つに記載のシステム。
【0137】
(付記6)
前記コントローラは、前記地面上に目標点を設定し、前記目標点への前記マテリアルの排出を複数回実行するように前記走行体および作業機を制御することにより前記山を形成する、付記1から付記5のいずれか1つに記載のシステム。
【0138】
(付記7)
前記コントローラは、前記山の前記現状高さが前記高さに到達したと判断されると、前記目標点への前記マテリアルの排出を停止し、前記地面上に次の目標点を設定する、付記6に記載のシステム。
【0139】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0140】
1 ホイールローダ、2 車体フレーム、2a 前フレーム、2b 後フレーム、3 作業機、4 走行装置、4a 前輪、4b 後輪、6 バケット、6a 刃先、6b 背面、9 ブームピン、14 ブーム、17 バケットピン、18 ベルクランク、18a 支持ピン、18b,18c 連結ピン、100 自動化コントローラ、101 位置推定部、102 パスプランニング部、103 経路追従制御部、110 外界情報取得部、111 知覚装置、120 車両情報取得部、123 ブーム角度センサ、124 バケット角度センサ、125 ブームシリンダ圧力センサ、130 インターフェース、140 アクチュエータ、200 マテリアル、A ブーム基準線、B ベルクランク基準線、BL バケット軌跡、CL 中心線、G 地面、H 水平線、H1 積付け高さ、H2 かき上げ高さ、L1~L9 長さ、O 積付け目標点、P,Q 頂点、V1 かき上げ領域、V2 被かき上げ領域、VP 仮想面、α ブーム角、β ベルクランク角、γ 背離角、θ 安息角。