(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085105
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240619BHJP
H01F 41/10 20060101ALI20240619BHJP
H01F 17/04 20060101ALN20240619BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F27/29 120
H01F41/10 C
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199454
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 東
(72)【発明者】
【氏名】陳 利益
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FG01
5E062FG12
5E070AA01
5E070AB01
5E070BB03
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】コイルパターン及び導体ポストが磁性素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品において、絶縁膜に形成する開口部について高い位置精度を要さずに、信頼性が高い部品を構成する。
【解決手段】コイル部品1は、磁性素体Mに埋め込まれたコイル部3及び導体ポストP1と、磁性素体Mの実装面4を覆うカバー絶縁膜21と、カバー絶縁膜21に設けられた開口21aを介して導体ポストP1に接続された端子電極E1とを備える。導体ポストP1の上面Tは、カバー絶縁膜21の表面と同一平面を構成する。これにより、導体ポストP1と端子電極E1の接触面積が増大することから、両者間における接続抵抗が低減される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する磁性素体と、
前記磁性素体に埋め込まれたコイルパターンと、
前記磁性素体に埋め込まれ、一端が前記コイルパターンに接続された導体ポストと、
前記磁性素体の前記実装面を覆うカバー絶縁膜と、
前記カバー絶縁膜に設けられた開口を介して前記導体ポストの他端に接続された端子電極と、を備え、
前記導体ポストの前記他端は、前記カバー絶縁膜の表面と同一平面を構成する、コイル部品。
【請求項2】
前記導体ポストと前記磁性素体の間に設けられたポスト保護膜をさらに備える、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記ポスト保護膜の端面は、前記導体ポストの前記他端及び前記カバー絶縁膜の前記表面と同一平面を構成する、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記カバー絶縁膜と前記ポスト保護膜が互いに接触する、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記カバー絶縁膜は、フィラーを含み、
前記カバー絶縁膜の前記表面には、前記フィラーの脱落痕によって形成される複数の凹部が形成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
コイルパターンと、一端が前記コイルパターンに接続され、他端が前記磁性素体の実装面から露出する導体ポストを磁性素体で埋め込む第1の工程と、
前記導体ポストの前記他端及び前記磁性素体の前記実装面にカバー絶縁膜を形成する処理と、前記導体ポストの前記他端を前記磁性素体の前記実装面から突出させる処理と、を含む第2の工程と、
前記実装面を覆う前記カバー絶縁膜が残存するよう、前記導体ポストの前記他端が露出するまで前記カバー絶縁膜の表面を研磨する第3の工程と、
前記導体ポストの前記他端に端子電極を形成する第4の工程と、を備えるコイル部品の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程は、前記実装面から所定の深さだけ前記磁性素体を除去することによって、前記導体ポストの前記他端を前記磁性素体の前記実装面から突出させた後、前記カバー絶縁膜を形成することにより行う、請求項6に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項8】
前記第2の工程は、前記カバー絶縁膜を形成した後、前記磁性素体を加圧することによって、前記導体ポストの前記他端を前記磁性素体の前記実装面から突出させることにより行う、請求項6に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、コイルパターン及びこれに接続された導体ポストが磁性素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルパターン及びこれに接続された導体ポストが磁性素体に埋め込まれた構造を有するコイル部品が開示されている。特許文献1においては、磁性素体の実装面が絶縁膜で覆われており、この絶縁膜上に端子電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコイル部品においては、磁性素体の実装面を覆う絶縁膜に開口部が設けられており、この開口部を介して端子電極と導体ポストが接続される。
【0005】
本開示においては、コイルパターン及び導体ポストが磁性素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法において、絶縁膜に形成する開口部について高い位置精度を要さずに、信頼性が高い部品を構成する技術が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面によるコイル部品は、実装面を有する磁性素体と、磁性素体に埋め込まれたコイルパターンと、磁性素体に埋め込まれ、一端がコイルパターンに接続された導体ポストと、磁性素体の実装面を覆うカバー絶縁膜と、カバー絶縁膜に設けられた開口を介して導体ポストの他端に接続された端子電極とを備え、導体ポストの前記他端は、カバー絶縁膜の表面と同一平面を構成する。
【0007】
本開示の一側面によるコイル部品の製造方法は、コイルパターンと、一端がコイルパターンに接続され、他端が磁性素体の実装面から突出する導体ポストを磁性素体で埋め込む第1の工程と、導体ポストの他端及び磁性素体の実装面にカバー絶縁膜を形成する第2の工程と、実装面を覆うカバー絶縁膜が残存するよう、導体ポストの他端が露出するまでカバー絶縁膜の表面を研磨する第3の工程と、導体ポストの他端に端子電極を形成する第4の工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
このように、本開示によれば、コイルパターン及び導体ポストが磁性素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法において、カバー絶縁膜に形成する開口部について高い位置精度を要さずに、信頼性が高い部品を構成する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態によるコイル部品1の外観を説明するための略斜視図である。
【
図2】
図2は、コイル部品1の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、導体層C0のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図4】
図4は、導体層C1のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図5】
図5は、導体層C2のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図6】
図6は、導体層C3のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図7】
図7は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図8】
図8は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図9】
図9は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】
図10は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図11】
図11は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図12】
図12は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図13】
図13は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図14】
図14は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図15】
図15は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図16】
図16は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図17】
図17は、カバー絶縁膜21の表面状態を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態によるコイル部品1の外観を説明するための略斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、Z方向をコイル軸とするコイル部3が磁性素体Mに埋め込まれた構造を有するチップ型のコイル部品である。磁性素体Mは、コイル軸と直交しXY面を構成する実装面4及び上面5を有している。実装面4と上面5は、互いに反対側に位置する。実装面4には端子電極E1,E2が設けられており、実装時においては、実装面4が回路基板と向かい合うよう、端子電極E1,E2が回路基板にハンダ付けされる。つまり、
図1に示すコイル部品1の上下方向は、実装時とは180°異なっている。
【0013】
図2は、本実施形態によるコイル部品1の模式的な断面図である。
【0014】
図2に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、コイル軸方向(Z方向)に交互に積層された層間絶縁膜10~14及び導体層C0~C3を有している。導体層C0~C3はCuなどからなり、コイル部3を構成する。磁性素体Mは、磁性樹脂層M1,M2からなる。このうち、磁性樹脂層M1はコイル部3の内径領域、コイル部3の径方向における外側領域、並びに、コイル部3のコイル軸方向における一方側に設けられる。磁性樹脂層M2は、コイル部3のコイル軸方向における他方側に設けられる。磁性樹脂層M1,M2は、磁性フィラーとバインダー樹脂を含む複合磁性材料からなる。磁性樹脂層M1を構成する複合磁性材料と磁性樹脂層M2を構成する複合磁性材料は、互いに同じ材料であっても構わないし、互いに異なる材料であっても構わない。磁性フィラーとしては、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などの金属磁性材料を用いることができる。バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0015】
磁性樹脂層M1には導体ポストP1,P2が埋め込まれている。導体ポストP1,P2はCuなどからなり、Z方向に延在するピラー状の導体である。このうち、導体ポストP1の一端である下面Bは、導体層C0~C3によって構成されるコイルの一端に接続され、導体ポストP2の一端である下面Bは、導体層C0~C3によって構成されるコイルの他端に接続される。一方、導体ポストP1,P2の他端である上面Tは実装面4から露出し、それぞれ端子電極E1,E2に接続される。導体ポストP1,P2の側面S(Z方向に沿った面)は、ポスト保護膜15で覆われている。これにより、導体ポストP1,P2と磁性素体Mの間にポスト保護膜15が介在することから、導体ポストP1,P2と磁性素体Mの接触が防止され、両者の絶縁が確保される。また、導体ポストP1,P2を有する本実施形態のコイル部品1を回路基板等に実装すると、導体ポストP1,P2によって応力が緩和され、コイル部3へのダメージが低減される。このため、コイル部品1の実装信頼性も向上する。
【0016】
磁性素体Mの実装面4及び上面5は、それぞれカバー絶縁膜21,22で覆われている。このうち、カバー絶縁膜22については上面5のほぼ全面を覆うのに対し、カバー絶縁膜21には導体ポストP1,P2をそれぞれ露出させる開口21a,21bが設けられている。これにより、導体ポストP1,P2の上面T(XY面)は、カバー絶縁膜21の開口21a,21bからそれぞれ露出する。開口21a,21bから露出する導体ポストP1,P2の上面Tには、それぞれ端子電極E1,E2が設けられる。端子電極E1,E2の一部は、カバー絶縁膜21の表面上に位置していても構わない。端子電極E1,E2は、例えば、Agなどからなる金属粉とバインダー樹脂を含む導電性樹脂材料からなる導体層31と、導体層31の表面に形成された金属からなる導体層32によって構成される。したがって、導体層32を構成する導電材料は、導体層31を構成する導電材料よりも抵抗値が低い。
【0017】
導体層32は、複数の金属の積層膜、例えばNiとSnの積層膜であっても構わない。NiとSnの積層膜は、銀ペーストなどの導電性樹脂材料よりも十分に低抵抗であるとともに、ハンダに対する高い耐熱性と高い濡れ性を有している。一方、下層に位置する導体層31は、上層に位置する導体層32と比べ、カバー絶縁膜21に対して高い密着性を得ることができるとともに、導電性樹脂の持つ高い柔軟性によって熱衝撃や外部応力を緩和することができるため、信頼性が高められる。
【0018】
このように、磁性素体Mの実装面4がカバー絶縁膜21で覆われていることから、端子電極E1,E2と磁性素体Mの接触が防止され、これにより製品の信頼性が高められる。導体ポストP1,P2の上面Tについては、カバー絶縁膜21で覆われることなく、その全面がそれぞれ端子電極E1,E2で覆われている。ここで、導体ポストP1,P2の上面Tは、カバー絶縁膜21の表面と同一又は略同一の平面を構成している。このような構成により、導体ポストP1,P2と端子電極E1,E2の接触面積が増大するため、両者間における接触抵抗を低減することが可能となる。しかも、導体ポストP1,P2の上面Tがカバー絶縁膜21で覆われていないことから、全体の高さも低背化される。また、ポスト保護膜15の端面についても、実装面4から露出する。ポスト保護膜15は、カバー絶縁膜21と接触するとともに、その上端面は、導体ポストP1,P2の上面T及びカバー絶縁膜21の表面と同一又は略同一の平面を構成する。これにより、導体ポストP1,P2の側面Sがポスト保護膜15によって確実に保護される。また、磁性素体Mの上面5については、カバー絶縁膜22で覆われていることから、製品の信頼性が高められるとともに、上面5に方向性マークなどを設けることが可能となる。
【0019】
図3~
図6は、それぞれ導体層C0~C3のパターン形状を説明するための略平面図である。
【0020】
図3に示すように、導体層C0にはコイルパターン100が設けられる。コイルパターン100は約1ターン周回するパターンであり、その両端は、層間絶縁膜11に設けられたビア11a,11bを介して導体層C1に接続される。
【0021】
図4に示すように、導体層C1にはコイルパターン110及び接続パターン111が設けられる。コイルパターン110は約1ターン周回するパターンであり、その一端は、層間絶縁膜11に設けられたビア11bを介して導体層C0のコイルパターン100の他端に接続されるとともに、その他端は、層間絶縁膜12に設けられたビア12bを介して導体層C2に接続される。接続パターン111は、導体層C0に設けられたコイルパターン100の一端と重なる位置に設けられており、層間絶縁膜11に設けられたビア11aを介して導体層C0のコイルパターン100の一端に接続されるとともに、層間絶縁膜12に設けられたビア12aを介して導体層C2に接続される。
【0022】
図5に示すように、導体層C2にはコイルパターン120及び接続パターン121が設けられる。コイルパターン120は約1ターン周回するパターンであり、その一端は、層間絶縁膜12に設けられたビア12bを介して導体層C1のコイルパターン110の他端に接続されるとともに、その他端は、層間絶縁膜13に設けられたビア13bを介して導体層C3に接続される。接続パターン121は、導体層C1に設けられた接続パターン111と重なる位置に設けられており、層間絶縁膜12に設けられたビア12aを介して導体層C1の接続パターン111に接続されるとともに、層間絶縁膜13に設けられたビア13aを介して導体層C3に接続される。
【0023】
図6に示すように、導体層C3にはコイルパターン130及び接続パターン131が設けられる。コイルパターン130は約0.5ターン周回するパターンであり、その一端は、層間絶縁膜13に設けられたビア13bを介して導体層C2のコイルパターン120の他端に接続されるとともに、その他端は、層間絶縁膜14に設けられたビア14bを介して導体ポストP2に接続される。接続パターン131は、導体層C2に設けられた接続パターン121と重なる位置に設けられており、層間絶縁膜13に設けられたビア13aを介して導体層C2の接続パターン121に接続されるとともに、層間絶縁膜14に設けられたビア14aを介して導体ポストP1に接続される。
【0024】
これにより、端子電極E1,E2間には、コイルパターン100,110,120,130が直列に接続され、合計で約3.5ターンのコイルが形成される。本実施形態によるコイル部品1は、層間絶縁膜10~14と導体層C0~C3が交互に積層されてなるコイル部3が磁性素体Mに埋め込まれた構造を有する埋め込み型のコイル部品であり、セラミックなどからなる磁性シートとコイルパターンが交互に積層されてなる積層型のコイル部品とは構造が異なる。例えば、積層型のコイル部品においては、積層方向に隣接するコイルパターン間に磁性シートが介在するが、本実施形態によるコイル部品1は、積層方向に隣接するコイルパターンが層間絶縁膜によって絶縁されており、両者間に磁性素体Mは介在しない。また、プリント基板上にコイルパターンを形成したタイプのシートコイルとも構造が異なる。
【0025】
そして、本実施形態においては、コイル部3を構成するコイルパターン100,110,120,130や接続パターン111,121,131については層間絶縁膜10~14によって磁性素体Mから絶縁され、導体ポストP1,P2についてはポスト保護膜15によって磁性素体Mから絶縁され、端子電極E1,E2についてはカバー絶縁膜21によって磁性素体Mから絶縁される。これにより、全ての導体パターンが磁性素体Mから絶縁されることから、高い絶縁特性を得ることが可能となる。
【0026】
ここで、層間絶縁膜10~14、ポスト保護膜15及びカバー絶縁膜21,22を構成する具体的な材料については特に限定されないが、ポスト保護膜15とカバー絶縁膜21,22が互いに異なる絶縁材料からなるものであっても構わない。これは、ポスト保護膜15については、磁性素体Mに埋め込まれるとともに、導体ポストP1,P2と接触するのに対し、カバー絶縁膜21,22については、コイル部品1の最表層を構成することから、製品の信頼性を高めるために求められる諸特性が異なるからである。
【0027】
具体的には、ポスト保護膜15については、シリカなどの無機材料からなるフィラーを含有する熱膨張係数の低い絶縁材料を選択することにより、導体ポストP1,P2の材料であるCuとの熱膨張係数差を低減することができる。これに対し、カバー絶縁膜21,22については、ヤング率の低い樹脂材料を用いることにより、実装面4及び上面5における磁性素体Mの物理的な保護特性が高められる。したがって、ポスト保護膜15としては、カバー絶縁膜21,22よりも熱膨張係数の低い絶縁材料を選択し、カバー絶縁膜21,22については、ポスト保護膜15よりもヤング率よりも低い絶縁材料を選択すればよい。また、求められる特性に応じ、カバー絶縁膜21,22を構成する絶縁材料にフィラーを添加しても構わない。例えば、カバー絶縁膜21,22を構成する絶縁材料に磁性フィラーを添加すれば、インダクタンスをより高めることも可能である。
【0028】
層間絶縁膜10~14については、磁性素体Mに埋め込まれるとともに、コイルパターン100,110,120,130や接続パターン111,121,131と接触することから、ポスト保護膜15と同じ絶縁材料を用いても構わない。層間絶縁膜10~14とポスト保護膜15に同じ絶縁材料を用いれば、材料コストを低減することが可能となる。
【0029】
次に、本実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0030】
図7~
図16は、本実施形態によるコイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図7~
図16には、1個のコイル部品1に相当する部分のみが示されているが、実際には、集合基板を用いて複数のコイル部品1が同時に作製される。
【0031】
まず、支持基板40を用意し(
図7)、その表面に層間絶縁膜10~14と導体層C0~C3を交互に形成することによりコイル部3を形成した後、層間絶縁膜14にビア14a,14bを形成し、さらに導体ポストP1,P2を形成する(
図8)。導体層C0~C3及び導体ポストP1,P2の形成は、電解メッキによって行うことができる。また、導体層C0~C3は、コイル部3の内径領域及びコイル部3の外側領域に位置する犠牲パターン41を含んでいる。
【0032】
次に、導体ポストP1,P2の露出面の全面を覆うポスト保護膜15を形成する(
図9)。導体ポストP1,P2の露出面の全面とは、Z方向に沿った側面S及びXY面を構成する上面Tである。次に、この状態でウェットエッチングを行うことにより、犠牲パターン41を除去する(
図10)。コイル部3を構成する導体パターンについては、層間絶縁膜10~14で覆われているため、エッチングされることはない。導体ポストP1,P2についても、ポスト保護膜15で覆われているため、エッチングされることはない。これにより、コイル部3の内径領域及び外側領域には、空間42が形成される。
【0033】
次に、犠牲パターン41の除去によって形成された空間42を磁性樹脂層M1で埋め込む(
図11)。次に、導体ポストP1,P2が露出するまで、磁性樹脂層M1の表面を研磨する(
図12)。この工程により、磁性樹脂層M1の実装面4と導体ポストP1,P2の上面Tが同一又は略同一の平面となる。また、研磨前と比べ、磁性樹脂層M1の実装面4側における平坦性が大幅に高められる。次に、支持基板40を除去した後、層間絶縁膜10を覆うよう、磁性樹脂層M1の下面側に磁性樹脂層M2を形成する(
図13)。その後、磁性樹脂層M2の表面を研磨することにより、上面5を平滑化しても構わない。
【0034】
次に、磁性素体Mの実装面4及び上面5にそれぞれカバー絶縁膜21,22を形成する(
図14)。これにより、導体ポストP1,P2の上面Tは、カバー絶縁膜21で覆われる。カバー絶縁膜21の膜厚は、カバー絶縁膜22の膜厚よりも大きくても構わない。この状態で、水圧等を用いて磁性素体Mをプレスすると、仮硬化状態にある磁性素体Mが硬化及び収縮する。その結果、実装面4の高さ位置が若干低くなり、導体ポストP1,P2及びポスト保護膜15が実装面4からやや突出した状態となる(
図15)。導体ポストP1,P2及びポスト保護膜15の突出部分は、カバー絶縁膜21に埋め込まれた状態となる。また、導体ポストP1,P2及びポスト保護膜15の突出量は、プレス時の圧力や時間等によって調整することができる。
【0035】
次に、導体ポストP1,P2の上面Tが露出するまで、カバー絶縁膜21の表面を研磨する(
図16)。この時、導体ポストP1,P2をストッパーとして研磨を行うことにより、実装面4を覆うカバー絶縁膜21は残存し、カバー絶縁膜21に開口21a,21bが形成される。かかる工程により、カバー絶縁膜21の表面、導体ポストP1,P2の上面T及びポスト保護膜15の端面は、互いに同一又は略同一の平面となる。また、開口21a,21bを研磨によって形成していることから、開口21a,21bの位置は導体ポストP1,P2に対して自己整合的となり、両者間に位置ずれが生じない。さらに、カバー絶縁膜21にフィラーが含まれている場合、研磨によってフィラーが露出することから、露出したフィラーの一部がカバー絶縁膜21から脱落し、
図17に示すように、脱落痕からなる複数の凹部21Aが形成される。
【0036】
次に、それぞれ導体ポストP1,P2の上面Tにそれぞれ端子電極E1,E2を形成した後、ダイシングによって個片化すれば、本実施形態によるコイル部品1が完成する。ここで、導体層31はスクリーン印刷などの厚膜工法によって形成することができ、導体層32はバレルメッキ法などによって形成することができる。端子電極E1,E2の形成においては、端子電極E1,E2の上面Tがカバー絶縁膜21で覆われることなく、その全面が実装面4から露出していることから、端子電極E1,E2の形成位置ずれに起因する接続不良が生じにくくなる。
【0037】
このように、本実施形態においては、カバー絶縁膜21を形成した後、磁性素体Mをプレスすることによって導体ポストP1,P2を実装面4から突出させ、この状態でカバー絶縁膜21を研磨していることから、導体ポストP1,P2に対して自己整合的に開口21a,21bを形成することができる。しかも、カバー絶縁膜21にフィラーが含まれている場合、フィラーの脱落痕からなる複数の凹部21Aがカバー絶縁膜21の表面に形成されることから、スクリーン印刷などの厚膜工法によって導体層31を形成する場合であっても、導体層31の流動が複数の凹部21Aによって抑制される。これにより、導体層31の流動に起因する端子電極E1,E2間のショート不良などが生じにくくなる。また上記説明した実施形態によれば、例えば、導体ポストP1,P2の位置を特定してカバー絶縁膜21に開口部を形成するような高い位置精度が求められる工程を経ずに、信頼性が高い部品を構成することもできる。
【0038】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上記実施形態では、コイル部3が4層の導体層C0~C3によって構成されているが、コイル部に含まれる導体層の層数については特に限定されない。また、上記実施形態では、各導体層C0~C2に設けられたコイルパターン100,110,120のターン数が約1ターンであるが、各導体層に設けられるコイルパターンのターン数については特に限定されない。
【0040】
また、導体ポストP1,P2のXY面における面積及び形状は特に限定されない。例えば、Z方向から見た平面視で、導体ポストP1,P2の全体がコイルパターン130又は接続パターン131と重なっても構わないし、導体ポストP1,P2の一部がコイルパターン130又は接続パターン131からはみ出すサイズであっても構わない。
【0041】
さらに、上記実施形態においては、カバー絶縁膜21を形成した後、磁性素体Mをプレスすることによって導体ポストP1,P2を実装面4から突出させているが、他の方法によって導体ポストP1,P2を実装面4から突出させてもよい。例えば、
図12又は
図13に示す段階でドライデスミア処理等を行うことによって、実装面4から所定の深さだけ磁性樹脂層M1を除去することによって、導体ポストP1,P2を実装面4から突出させてもよい。この場合、導体ポストP1,P2を実装面4から突出させ後、カバー絶縁膜21の形成を行う。
【0042】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本開示の一側面によるコイル部品は、実装面を有する磁性素体と、磁性素体に埋め込まれたコイルパターンと、磁性素体に埋め込まれ、一端がコイルパターンに接続された導体ポストと、磁性素体の実装面を覆うカバー絶縁膜と、カバー絶縁膜に設けられた開口を介して導体ポストの他端に接続された端子電極とを備え、導体ポストの前記他端は、カバー絶縁膜の表面と同一平面を構成する。これによれば、導体ポストと端子電極の接触面積が増大することから、両者間における接続抵抗が低減される。
【0044】
上記のコイル部品において、導体ポストと磁性素体の間に設けられたポスト保護膜をさらに備えていても構わない。これによれば、導体ポストと磁性素体の接触を防止することが可能となる。
【0045】
上記のコイル部品において、ポスト保護膜の端面は、導体ポストの他端及びカバー絶縁膜の表面と同一平面を構成しても構わない。これによれば、導体ポストをポスト保護膜によってより確実に保護することが可能となる。
【0046】
上記のコイル部品において、カバー絶縁膜とポスト保護膜が互いに接触しても構わない。これによれば、導体ポストの側面がポスト保護膜によって確実に保護される。
【0047】
上記のコイル部品において、カバー絶縁膜はフィラーを含み、カバー絶縁膜の表面には、フィラーの脱落痕によって形成される複数の凹部が形成されていても構わない。これによれば、端子電極の位置精度を高めることが可能となる。
【0048】
本開示の一側面によるコイル部品の製造方法は、コイルパターンと、一端がコイルパターンに接続され、他端が磁性素体の実装面から露出する導体ポストを磁性素体で埋め込む第1の工程と、導体ポストの他端及び磁性素体の実装面にカバー絶縁膜を形成する処理と、導体ポストの他端を磁性素体の実装面から突出させる処理とを含む第2の工程と、実装面を覆うカバー絶縁膜が残存するよう、導体ポストの他端が露出するまでカバー絶縁膜の表面を研磨する第3の工程と、導体ポストの他端に端子電極を形成する第4の工程とを備える。これによれば、カバー絶縁膜に形成する開口を導体ポストに対して自己整合的に形成することが可能となる。
【0049】
上記の第2の工程は、実装面から所定の深さだけ磁性素体を除去することによって、導体ポストの他端を磁性素体の実装面から突出させた後、カバー絶縁膜を形成することにより行っても構わない。これによれば、導体ポストの突出量の制御が容易となる。
【0050】
上記の第2の工程は、カバー絶縁膜を形成した後、磁性素体を加圧することによって、導体ポストの他端を磁性素体の実装面から突出させることにより行っても構わない。これによれば、プレス時の圧力や時間によって、最終的に残存するカバー絶縁膜の膜厚を調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 コイル部品
3 コイル部
4 実装面
5 上面
10~14 層間絶縁膜
11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b ビア
15 ポスト保護膜
21,22 カバー絶縁膜
21A 凹部
21a,21b 開口
31,32 導体層
40 支持基板
41 犠牲パターン
42 空間
100,110,120,130 コイルパターン
111,121,131 接続パターン
B 導体ポストの下面
C0~C3 導体層
E1,E2 端子電極
M 磁性素体
M1,M2 磁性樹脂層
P1,P2 導体ポスト
S 導体ポストの側面
T 導体ポストの上面