(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085112
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】モビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/18 20060101AFI20240619BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240619BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240619BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A61B5/18
A61B5/11 100
A61B5/0245 C
A61B5/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199463
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】村山 勝
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA09
4C017AA10
4C017AC20
4C017BB12
4C017BC11
4C017BC16
4C017DD14
4C017DD17
4C038PP03
4C038PQ03
4C038PS00
4C038PS01
4C038VA18
4C038VB32
4C038VC20
4C117XA01
4C117XB02
4C117XB15
4C117XB18
4C117XC03
4C117XD31
4C117XE13
4C117XE54
4C117XJ12
4C117XJ48
4C117XR01
4C117XR12
(57)【要約】
【課題】モビリティ利用者から得られたVLFデータに基づいて、モビリティ利用者の健康状態の変化を推定し、推定された健康状態の変化に基づきサービスを提供する、健康情報サービス提供装置を提供する。
【解決手段】モビリティ利用者の生体信号BSを取得するセンサ12と、モビリティ利用者の心拍に関する心拍信号HSを推定する推定部13と、極低周波数成分に関するVLFデータVDを算出する算出部14と、今回におけるモビリティ利用者の今回VLFデータVDAと今回よりも過去の特定期間における過去VLFデータVDBとの違いに基づいて、モビリティ利用者の健康状態の変化を推定する状態推定部17と、モビリティ利用者の健康状態の変化に基づき、モビリティ利用者に特定のサービスを提供するユーザーインターフェース18と、を備えた、モビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モビリティに搭乗したモビリティ利用者の生体信号を取得する取得装置と、
前記生体信号に基づいて、前記モビリティ利用者の心拍に関する心拍信号を推定する推定部と、
前記心拍信号に基づいて、0.0033~0.04Hzの極低周波数成分に関するVLFデータを算出する算出部と、
現在搭乗中である場合には現在搭乗時または現在非搭乗中である場合には直近搭乗時を含む今回における前記モビリティ利用者の前記VLFデータである今回VLFデータを取得する今回VLFデータ取得部と、
前記今回よりも過去の特定期間における前記VLFデータの計数的代表値または位置的代表値である統計代表値である、過去VLFデータを取得する過去VLFデータ取得部と、
前記今回VLFデータと前記過去VLFデータとの違いに基づいて、前記モビリティ利用者の健康状態の変化を推定する状態推定部と、
前記モビリティ利用者の前記健康状態の変化に基づき、前記モビリティ利用者に特定のサービスを提供するサービス提供部と、
を備えた、モビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項2】
前記今回VLFデータは、現在搭乗中であって、現在の搭乗の少なくとも一部を含む期間における前記VLFデータの前記統計代表値である、請求項1に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項3】
前記今回VLFデータは、現在非搭乗中であって、前記直近搭乗時の少なくとも一部を含む期間における前記VLFデータの前記統計代表値である、請求項1に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項4】
前記過去VLFデータは、
前記今回よりも1回以上前の特定期間における前記VLFデータの前記統計代表値である第一過去VLFデータと、
前記第一過去VLFデータの期間よりも1回以上前の特定期間における前記VLFデータの前記統計代表値である第二過去VLFデータと、
を含み、
前記状態推定部は、前記今回VLFデータと前記第一過去VLFデータとを所定の第一比較基準に基づいて比較した結果、および、前記今回VLFデータと前記第二過去VLFデータとを所定の第二比較基準に基づいて比較した結果、に基づいて、前記モビリティ利用者の健康状態の変化を推定する、請求項1に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項5】
前記状態推定部は、
前記第一過去VLFデータから前記今回VLFデータを減じた第一過去差分値が前記第一比較基準の一例である閾値以上である場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定し、
さらに、前記第一過去差分値が前記閾値より小さい場合であって、且つ、前記第二過去VLFデータから前記今回VLFデータを減じた第二過去差分値が前記第二比較基準の一例である前記閾値以上である場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する、請求項4に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項6】
前記状態推定部は、
前記第一過去VLFデータから前記今回VLFデータを減じた第一過去差分値が前記第一比較基準の一例である第一過去閾値以上である場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定し、
さらに、前記第一過去差分値が前記第一過去閾値より小さい場合であって、且つ、前記第二過去VLFデータから前記今回VLFデータを減じた第二過去差分値が前記第一過去閾値より大きな値であって前記第二比較基準の一例である第二過去閾値以上である場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する、請求項4に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項7】
前記今回VLFデータは、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時における前記VLFデータであり、
前記第一過去VLFデータは、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時よりも1回以上前の搭乗時における前記VLFデータの前記統計代表値であり、
前記第二過去VLFデータは、前記第一過去VLFデータの搭乗時よりも1回以上前の搭乗時における前記VLFデータの前記統計代表値である、請求項5または6に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項8】
前記今回VLFデータは、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時における前記VLFデータであり、
前記第一過去VLFデータは、前記今回VLFデータが測定された時刻と同一時刻を含む1日以上前の搭乗時における前記VLFデータの前記統計代表値であり、
前記第二過去VLFデータは、前記今回VLFデータが測定された時刻と同一時刻を含み前記第一過去VLFデータの搭乗時よりも1日以上前の搭乗時における前記VLFデータの前記統計代表値である、請求項5または6に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項9】
前記今回VLFデータは、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時における前記VLFデータであり、
前記第一過去VLFデータは、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時よりも前の所定期間における前記VLFデータの前記統計代表値であり、
前記第二過去VLFデータは、前記第一過去VLFデータよりも前の前記所定期間における前記VLFデータの前記統計代表値である、請求項5または6に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項10】
前記閾値は、通常閾値と、前記通常閾値よりも小さな値である警戒閾値と、を含み、
前記状態推定部は、
前記今回VLFデータが特定閾値を超える場合には前記通常閾値を用い、
前記今回VLFデータが前記特定閾値以下の場合には前記警戒閾値を用いる、請求項5に記載のサービス提供装置。
【請求項11】
前記第一過去閾値は、第一過去通常閾値と、前記第一過去通常閾値よりも小さな値である第一過去警戒閾値と、を含み、
前記第二過去閾値は、第二過去通常閾値と、前記第二過去通常閾値よりも小さな値である第二過去警戒閾値と、を含み、
前記状態推定部は、
前記今回VLFデータが特定閾値を超える場合には前記第一過去通常閾値および前記第二過去通常閾値を用い、
前記今回VLFデータが前記特定閾値以下の場合には前記第一過去警戒閾値および前記第二過去警戒閾値を用いる、請求項6に記載のサービス提供装置。
【請求項12】
前記今回VLFデータは、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時である1回の搭乗分における前記VLFデータであり、
前記過去VLFデータは、過去の所定期間における複数回の搭乗分における前記VLFデータの前記統計代表値であり、
前記状態推定部は、前記過去VLFデータから前記今回VLFデータを減じた差分値が、閾値以上である場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する、請求項1に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項13】
前記今回VLFデータは、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時における前記VLFデータであり、
前記過去VLFデータは、前記今回VLFデータが測定された時刻と同一時刻を含む過去の搭乗時における前記VLFデータの前記統計代表値であり、
前記状態推定部は、前記過去VLFデータから前記今回VLFデータを減じた同時間帯差分値が、同時間帯閾値以上である場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する、請求項1に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項14】
前記今回VLFデータが、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時を含む所定の比較期間における前記VLFデータの前記統計代表値であり、
前記過去VLFデータが、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時よりも前の前記比較期間における前記VLFデータの前記統計代表値であり、
前記状態推定部は、前記過去VLFデータから前記今回VLFデータを減じた期間差分値が、期間閾値以上である場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する、請求項1に記載のサービス提供装置。
【請求項15】
前記状態推定部は、複数の前記過去VLFデータおよび前記今回VLFデータから得られる過去から今回に至る前記VLFデータの傾向に基づいて、前記モビリティ利用者の健康状態の変化を推定する、請求項1に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項16】
前記傾向は、
前記複数の前記過去VLFデータが、前記今回VLFデータに至るまで単調に減少している状態、および
前記複数の前記過去VLFデータが、前記今回VLFデータに至るまで、減少と増加をサイクル状に繰り返している状態、
の双方または一方を含む、請求項15に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項17】
前記今回VLFデータは、前記現在搭乗時または前記直近搭乗時における前記VLFデータであり、
前記過去VLFデータは、
前記現在搭乗時または前記直近搭乗時よりも前の第一期間における前記VLFデータの前記統計代表値である第一過去期間VLFデータと、
前記第一過去期間VLFデータの前記第一期間よりも長い第二期間における前記VLFデータの前記統計代表値である第二過去期間VLFデータと、
を含み
前記状態推定部は、
前記第一過去期間VLFデータと前記今回VLFデータとの比較結果、および、前記第二過去期間VLFデータと前記今回VLFデータとの比較結果、を総合的に勘案することにより、前記モビリティ利用者の健康状態について推定する、請求項1に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項18】
前記状態推定部は、
前記第一過去期間VLFデータから前記今回VLFデータを減じた第一差分値が、第一閾値以上であり、且つ、
前記第二過去期間VLFデータから前記今回VLFデータを減じた第二差分値が、第二閾値以上であるときには、
前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する、請求項17に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項19】
前記状態推定部は、
前記第一過去期間VLFデータから前記今回VLFデータを減じた第一差分値が、第一閾値以上である場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定し、
さらに、前記第一差分値が前記第一閾値より小さく、且つ、前記第二過去期間VLFデータから前記今回VLFデータを減じた第二差分値が、第二閾値以上である場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する、請求項17に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項20】
さらに、前記過去VLFデータにおける過去の前記特定期間よりも長期間において前記VLFデータの最低の値である最低VLFデータを取得する最低VLFデータ取得部を備え、
前記状態推定部は、
前記今回VLFデータと前記過去VLFデータとの違いに基づいて、前記モビリティ利用者の健康状態の変化を推定すると共に、
前記今回VLFデータが前記最低VLFデータよりも小さい場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する、請求項1に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【請求項21】
前記状態推定部は、
前記今回VLFデータと前記過去VLFデータとの違いに基づいて、前記モビリティ利用者の健康状態の変化を推定すると共に、
前記今回VLFデータが緊急閾値以下の場合に、前記モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する、請求項1に記載のモビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の健康状態を示す指標として、人の心拍または脈拍を測定し、この測定値から演算された超低周波成分(VLF:Very Low Frequency)を用いることが行われている。超低周波成分(以下、VLFという。)は、疲労やストレス等、体調の影響を受けるため、短期的に変動しやすい。このため、医療機関においては、VLFに関する正確な情報を得るため、安静状態にある被験者に対して心拍または脈拍の測定が行われていた。換言すると、安静状態にある被験者の心拍または脈拍を測定することにより、外乱の影響が少ない環境下で、被験者の状態を正確に把握してVLFの値を得ていた。
【0003】
また、特許文献1には、VLFに関する安定した情報を得るため、安静状態の一例として、睡眠状態にある被験者に対して心拍または脈拍の測定が行われる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被験者が安静状態にあるときという限られた状態で測定が行われたり、外乱の影響を少なくするための特別な設備において測定が行われたりするのではなく、被験者が普段の生活の中で行う行動の一部において容易にVLFに関する情報を測定することができれば、被験者の健康状態を容易に把握しやすくなるので好ましい。
【0006】
そこで、モビリティに搭乗したモビリティ利用者の体動の変化をセンサにより取得し、この体動の変化から心拍または脈拍を推定し、推定された心拍または脈拍から、安静時に測定されたVLFと相関する値(以下、VLFデータという)を算出することが考えられる。
【0007】
しかしながら、モビリティの運転状況は刻一刻と変化する。例えば、細く曲がりくねった道の多い住宅街を運転しているときや、人通りの多い街中を運転しているときや、高速道路を運転しているときなどでは、モビリティ利用者の心理状態も変化する。これにより、モビリティの運転状況の変化に伴って、モビリティ利用者の心拍または脈拍に関する情報も変化する。このため、モビリティ搭乗者の健康状態を、モビリティ搭乗時の限られた期間のデータのみで推定することが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、モビリティ利用者から得られたVLFデータに基づいて、モビリティ利用者の健康状態の変化を推定し、推定された健康状態の変化に基づきサービスを提供する、モビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
モビリティに搭乗したモビリティ利用者の生体信号を取得する取得装置と、
前記生体信号に基づいて、前記モビリティ利用者の心拍に関する心拍信号を推定する推定部と、
前記心拍信号に基づいて、0.0033~0.04Hzの極低周波数成分に関するVLFデータを算出する算出部と、
現在搭乗中である場合には現在搭乗時または現在非搭乗中である場合には直近搭乗時を含む今回における前記モビリティ利用者の前記VLFデータである今回VLFデータを取得する今回VLFデータ取得部と、
前記今回よりも過去の特定期間における前記VLFデータの計数的代表値または位置的代表値である統計代表値である、過去VLFデータを取得する過去VLFデータ取得部と、
前記今回VLFデータと前記過去VLFデータとの違いに基づいて、前記モビリティ利用者の健康状態の変化を推定する状態推定部と、
前記モビリティ利用者の前記健康状態の変化に基づき、前記モビリティ利用者に特定のサービスを提供するサービス提供部と、
を備えた、モビリティ利用者に対する健康情報サービス提供装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、モビリティに搭乗したモビリティ利用者から得られたVLFデータに基づいて、今回の搭乗時の今回VLFデータと、過去の搭乗時の過去VLFデータと、を相対的に比較することにより、モビリティ利用者の健康状態の変化を推定することができる。このようにして推定された健康状態の変化に基づき、モビリティ利用者に、健康状態に関するサービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1の健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図2】実施形態1に係るセンサが組付けられたシートを示す断面図。
【
図3】センサで測定されたVLFデータと、心電計で測定されたVLFとの相関関係を示すグラフ。
【
図4】種々の期間における統計代表値であるVLFデータを示す図。
【
図5】実施形態1の健康情報サービス提供装置のメインフローを示すフローチャート。
【
図6】実施形態1の状態推定処理1を示すフローチャート。
【
図7】実施形態1の状態推定処理2を示すフローチャート。
【
図8】実施形態1の状態推定処理3を示すフローチャート。
【
図9】実施形態1の状態推定処理4を示すフローチャート。
【
図10】実施形態1の状態推定処理5を示すフローチャート。
【
図11】実施形態2の健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図12】実施形態2の状態推定処理6を示すフローチャート。
【
図13】実施形態2の事前判断処理1を示すフローチャート。
【
図14】実施形態3の健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図15】実施形態3の状態推定処理7を示すフローチャート。
【
図16】実施形態4の状態推定処理8を示すフローチャート。
【
図17】実施形態5の健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図18】実施形態5の状態推定処理9を示すフローチャート。
【
図19】実施形態6の状態推定処理10を示すフローチャート。
【
図20】実施形態7の健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図21】実施形態7の状態推定処理11を示すフローチャート。
【
図22】実施形態8の健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図23】実施形態8の状態推定処理12を示すフローチャート。
【
図24】実施形態9の健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図25】実施形態9の状態推定処理13を示すフローチャート。
【
図26】実施形態9の事前判断処理2を示すフローチャート。
【
図27】他の形態(2)に係るセンサが、シート座面部の上面に取付けられる形態を示す断面図。
【
図28】他の形態(3)に係る健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図29】他の形態(4)に係る健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図30】他の形態(5)に係る健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図31】他の形態(6)に係る健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図32】他の形態(7)に係る健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図33】他の形態(8)に係る健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図34】他の形態(9)に係る健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【
図35】他の形態(10)に係る健康情報サービス提供装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
1.健康情報サービス提供装置10の概要
図1を参照して、実施形態1の健康情報サービス提供装置10の概要について説明する。健康情報サービス提供装置10は、モビリティ11を利用するモビリティ利用者に、モビリティ利用者の健康状態の変化に応じて、健康情報サービスを提供する。
【0013】
本形態のモビリティ11とは、乗用自動車、貨物用自動車、作業用自動車等の車両、電車、船舶、飛行機、ヘリコプター、乗用ドローン等、人が搭乗する移動手段をいう。本形態のモビリティ利用者とは、モビリティ11に搭乗して運転する者、自動運転されるモビリティ11に搭乗する者、または他人に運転されるモビリティ11に搭乗する者を含む。
【0014】
図1に示すように、本形態の健康情報サービス提供装置10は、センサ12と、推定部13と、算出部14と、今回VLFデータ取得部15と、過去VLFデータ取得部16と、状態推定部17と、ユーザーインターフェース18(サービス提供部の一例)と、を備える。
【0015】
モビリティ11は、モビリティ利用者が座るシート21を備える。シート21にはセンサ12が取付けられている。シート21が運転座席に適用される場合には、シート21は、運転時における運転者による着座状態や運転者の生体信号BSを検出するために用いられる。シート21が運転座席と異なる座席に適用される場合には、シート21は、運転者と異なるモビリティ11の搭乗者による着座状態や生体信号BSを検出するために用いられる。
【0016】
シート21は、
図2に示すように、フレーム部28と、クッション部29と、センサ12とを備える。本形態のシート21は、ヘッドレスト22cを備える。ただし、ヘッドレスト22cは省略してもよい。
【0017】
フレーム部28は、座面シートフレーム31と、背面シートフレーム41と、を備える。クッション部29は、座面シートフレーム31に取り付けられる座面シートクッション30と、背面シートフレーム41に取り付けられる背面シートクッション42と、を備える。座面シートクッション30は、第一座面シートクッション32および第二座面シートクッション35と、を備える。
【0018】
座面シートフレーム31は、例えば、金属や硬質樹脂などの硬質材料により形成されており、車両に取り付けられる。座面シートフレーム31は、板状をなす板状部を有する。板状部は、板面が上下方向を向くように車両に取り付けられている。板状部の上面は、第一座面シートクッション32が取り付けられる取り付け座面31aとされる。座面シートフレーム31のうち板状部と異なる部分は棒状、柱状等、任意の形状に形成される。
【0019】
第一座面シートクッション32は、発泡樹脂などの弾性材料により形成される。第一座面シートクッション32は、座面シートフレーム31の上面に形成された取り付け座面31aに載置された状態で取り付けられる。第一座面シートクッション32の上面が、搭乗者の臀部により圧力を受ける受圧面32aとなる。第一座面シートクッション32の下面、すなわち受圧面32aの裏側の面である反受圧面32bは、座面シートフレーム31の取り付け座面31aに対向する。
【0020】
第一座面シートクッション32は、反受圧面32bにおいて座面シートフレーム31側に向けて、下方に開口する収容凹部50を有する。収容凹部50の断面形状は、多角形状、円形状、長円形状等、任意の形状とすることができる。本形態の収容凹部50の断面形状は四角形状とされる。収容凹部50のうち、収容凹部50の開口する方向と反対側に位置する部分は収容凹部50の底部52とされる。
【0021】
収容凹部50内には、第二座面シートクッション35が収容されている。第二座面シートクッション35は、座面シートフレーム31の取り付け座面31aに取り付けられている。第二座面シートクッション35のうち、座面シートフレーム31の取り付け座面31aと対向する面は取り付け面35bとされる。第一座面シートクッション32と、第二座面シートクッション35とが座面シートフレーム31に取り付けられた状態で、第一座面シートクッション32の反受圧面32bと、第二座面シートクッション35の取り付け面35bとは、面一になっている。また、第一座面シートクッション32と、第二座面シートクッション35とが座面シートフレーム31に取り付けられた状態で、収容凹部50の内側面と、第二座面シートクッション35の外側面との間には隙間が形成されている。第二座面シートクッション35の上面(座面シートフレーム31と反対側に位置する面)は、センサ12を下方から押圧する第二押圧面35aとされる。ただし、第一座面シートクッション32の収容凹部50は上方に開口し、この収容凹部50内に第二座面シートクッション35が収容される構成としてもよい。
【0022】
第一座面シートクッション32の表面には、座面表皮部材33が被覆されている。座面表皮部材33は、第一座面シートクッション32の少なくとも受圧面32aを被覆する。座面表皮部材33は、布、革など、第一座面シートクッション32よりも伸縮しにくい材料により形成されている。
【0023】
背面シートフレーム41は、例えば、金属や硬質樹脂などの硬質材料により形成されている。背面シートフレーム41は、板状、棒状などに形成される。例えば、シート本体22にリクライニング機能を設ける場合には、背面シートフレーム41は、座面シートフレーム31に揺動可能に支持される。もちろん、背面シートフレーム41は、座面シートフレーム31に一体的に固定されるようにしても良い。
【0024】
背面シートクッション42は、発泡樹脂などの弾性材料により形成される。背面シートクッション42は、背面シートフレーム41に積層して取り付けられる。背面シートクッション42のうち背面シートフレーム41と反対側の面が、搭乗者の背部により圧力を受ける面となる。つまり、背面シートクッション42のうち背面シートフレーム41に対向する面が、背面シートクッション42の反受圧面42bとなる。
【0025】
背面シートクッション42の表面には、背面表皮部材43が被覆されている。背面表皮部材43は、背面シートクッション42の少なくとも受圧面42aを被覆する。背面表皮部材43は、布、革などの材料により形成されている。
【0026】
ヘッドレスト22cは、シート背面部22bの上端に配置される。ヘッドレスト22cは、クッション45および表皮部材46を備える。ここで、
図2においては、第一座面シートクッション32と背面シートクッション42とを別体としたが、一体としても良い。また、背面シートクッション42とヘッドレスト22cとを別体としたが、一体としても良い。
【0027】
センサ12は、第一座面シートクッション32の収容凹部50内に形成された第一押圧面52bと、第二座面シートクッション35の第二押圧面35aと、の間に配置される。第一押圧面52bは、下方に突出する凸部52aに設けられている。ここで、搭乗者がシート本体22に着座することにより、搭乗者の臀部から第一座面シートクッション32の受圧面32aに圧力が付与され、当該圧力が第一座面シートクッション32を介して第一座面シートクッション32の第一押圧面52bに伝達される。そして、第一座面シートクッション32の第一押圧面52bからセンサ12が圧力を受ける。つまり、センサ12は、搭乗者による着座状態において、第一座面シートクッション32の受圧面32aから第一座面シートクッション32を介して伝達される圧力に応じた物理量を検出する。
【0028】
ここで、センサ12は、シート座面部22aに配置したが、シート背面部22bに配置しても良い。この場合、センサ12は、背面シートフレーム41と背面シートクッション42との間に配置される。そして、センサ12は、搭乗者による着座状態において、背面シートクッション42の受圧面32aから背面シートクッション42を介して伝達される圧力に応じた物理量を検出する。
【0029】
センサ12は、センサ12を制御するための制御回路55と接続されている。制御回路55は、センサ12の動作を制御するとともに、センサ12が検出した物理量をセンサ12から取得する。制御回路55は、センサ12から取得した物理量に基づいて、モビリティ利用者の生体信号BSを検出する。制御回路55は、生体信号BSについて、増幅や、ノイズキャンセル等の加工を施しても良い。
【0030】
センサ12と、制御回路55と、により、モビリティ利用者の生体信号BSをモニターするモニタリングシステム56が(取得装置の一例)構成される。
【0031】
制御回路55は、生体信号BSをECU57(Electronic Control Unit)に送信する。ECU57は、推定部13と、算出部14と、を備える。
【0032】
推定部13は、モニタリングシステム56の制御回路55から取得した生体信号BSを取得する。生体信号BSは、モビリティ利用者の心拍、体動、呼吸などの上位概念であり、また、心拍、体動、呼吸などの信号が混在したものも含む。脈拍は、動脈に生じる拍動を意味する。一方、心拍は、心臓が全身に血液を送り出す拍動を意味する。健常者であれば、通常、心拍と脈拍とは一致するので、以下、心拍と脈拍をまとめて、心拍に関する心拍信号HSと呼称する。推定部13は、生体信号BSから、モビリティ利用者の心拍に関する心拍信号HSを推定する。
【0033】
算出部14は、0.0033~0.04Hzの極低周波数成分に関するVLFデータVDを算出する。上記したように、従来、医療機関では、人の健康状態を示す指標として、VLFが用いられていた。このVLFは、人に装着された心電計によって測定された心電図から算出される。心電図から得られる心電図においては、心拍のピークが明瞭に現れるので、このピークからVLFを算出することができる。
【0034】
しかしながら、本形態のセンサ12は、シート21に着座したモビリティ利用者の臀部の圧力を受けて、この圧力から生体信号BSを検出し、この生体信号BSから心拍信号HSを推定する。このため、本形態の心拍信号HSに基づいて得られた極低周波数成分に関するデータは、心電図から得られたVLFとは、厳密には異なっている。そこで、以下においては、本形態の心拍信号HSに基づいて得られた極低周波数成分に関するデータを、心電図から得られたVLFと区別して、VLFデータVDと呼称する。
【0035】
図3に示すように、本形態に係るVLFデータVDと、心電図から得られたVLFとは、高い相関関係を有することが分かった。このように、シート21に着座したモビリティ利用者から得られたVLFデータVDを、モビリティ利用者の健康状態の変化を推定するために用いることできる。
【0036】
算出部14は、VLFデータVDをユーザーインターフェース18に送信する。ユーザーインターフェース18としては、カーナビゲーションシステム、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ等が例示される。本形態では、モビリティ11に取付けられたカーナビゲーションシステムが採用される。
【0037】
ユーザーインターフェース18は、モビリティ利用者に特定のサービスを提供するための画面表示装置およびスピーカの、双方または一方を備える。ユーザーインターフェース18は、画像または音声によって、モビリティ利用者に特定のサービスを提供する。
【0038】
ユーザーインターフェース18は、図示しない通信装置を備えており、この通信装置によってインターネット等のネットワーク58と接続されている。ユーザーインターフェース18は、ネットワーク58を介してクラウド59とデータの送信および受信を行う。
【0039】
クラウド59は、今回VLFデータ取得部15と、過去VLFデータ取得部16と、状態推定部17と、記憶部60と、を備える。
【0040】
今回VLFデータ取得部15は、ユーザーインターフェース18からネットワーク58を介して今回VLFデータVDAを取得する。今回VLFデータVDAは、モビリティ利用者がモビリティ11に現在搭乗中である場合には現在搭乗時の今回におけるモビリティ利用者のVLFデータVDであり、現在非搭乗時である場合には直近搭乗時を含むモビリティ利用者のVLFデータVDである。
【0041】
モビリティ利用者がモビリティ11に現在搭乗中である場合には、現在の搭乗の少なくとも一部を含む期間におけるVLFデータVDの統計代表値が、今回VLFデータVDAとされる。また、モビリティ利用者がモビリティ11に現在非搭乗中である場合には、直近搭乗時の少なくとも一部を含む期間におけるVLFデータVDの統計代表値が、今回VLFデータVDAとされる。
【0042】
ユーザーインターフェース18からネットワーク58を介してクラウド59に送信されたVLFデータVDは、今回VLFデータ取得部15に取得されるとともに、順次、記憶部60に過去VLFデータVDBとして格納される。
【0043】
過去VLFデータ取得部16は、記憶部60に格納された過去VLFデータVDBを取得する。過去VLFデータVDBは、過去の特定期間におけるVLFデータVDの統計代表値である。統計代表値は、計数的代表値または位置的代表値を含む。
【0044】
統計代表値とは、統計データを求める際、度数分布の中心的傾向を数値で要約的に示す特性値である。統計代表値は、一組のデータに含まれる情報を1つの数値で代表するもので、計数的代表値と、位置的代表値の2種類がある。
【0045】
計数的代表値は、数学的代表値とも言い、算術平均、幾何平均、調和平均、平方平均などに分類される。算術平均は相加平均とも言い、データの総和をデータの個数で割った値である。幾何平均は、相乗平均とも言い、個々のデータの相乗積のN乗根である。調和平均は、各データの逆数の算術平均の逆数をいう。データを二乗した値の算術平均の平方根である。
【0046】
位置的代表値は、中央値、最頻値、分位数などに細分される。これらは、度数分布中の特定位置を占める1つまたは少数のデータを全データの代表値とみなすものである。中央値は、測定値を小さい順に並べたとき、ちょうど真ん中に位置する値である。最頻値は、一組のデータの中で最も多く存在する値、最も頻繁に現れる値をいう。分位数は、中位数と同じ発想から、四分位数、五分位数、十分位数、百分位数など各点でわけたものをいう。例えば、四分位数とは、昇順に配列された全データ列の、1/4、2/4、3/4に位置するデータの値を、それぞれ、第1四分位数、第2四分位数、第3四分位数と呼ぶ。
【0047】
状態推定部17は、今回VLFデータVDAと過去VLFデータVDBとの違いに基づいて、モビリティ利用者の健康状態の変化を推定する。
【0048】
記憶部60は、ユーザーインターフェース18からネットワーク58を介して送信された過去VLFデータVDBを格納する。また、記憶部60は、閾値TVAと、同時間帯閾値TVBと、期間閾値TVCと、を格納する。
【0049】
2.VLFデータVDについて
2-1.統計代表値について
次に、
図4を参照して、VLFデータVDについて説明する。モビリティ11にモビリティ搭乗者が搭乗し、シート21に座ると、モニタリングシステム56(センサ12および制御回路55)は、モビリティ搭乗者の生体信号BSを取得する。生体信号BSに基づいて、推定部13は心拍信号HSを推定し、算出部14はVLFデータVDを算出する。VLFデータVDは、所定の期間内における極低周波数成分に関する統計代表値として算出される。本件においては、VLFデータVDは、所定の期間内における極低周波数成分に関するデータの時間の算術平均値として算出される。
【0050】
図4(a)は、2日間にわたってモビリティ利用者のVLFデータVDを測定した結果を示す。縦軸はVLFデータVDの強度を示す。VLFデータVDが大きいほど、モビリティ利用者の健康状態は良好な状態であると判断できる。一方、VLFデータVDが小さくなると、モビリティ利用者の健康状態は良好ではないと判断できる。横軸は、経過時間を示す。
【0051】
図4(a)に示された各棒グラフの幅は、代表値としてのVLFデータVDを算出するための最短期間を示す。この最短期間は、数分から数10分の範囲で任意に設定可能である。
【0052】
図4(a)において、符号「p」が付された4つの棒グラフは、測定1日目の午前に、モビリティ利用者がモビリティ11に搭乗したときにおけるVLFデータVDである。このとき、モビリティ利用者は、最短期間4個分の時間だけ、モビリティ11に搭乗した。
【0053】
符号「q」が付された2つの棒グラフは、測定1日目の午後に、モビリティ利用者がモビリティ11に搭乗したときにおけるVLFデータVDである。このとき、モビリティ利用者は、最短期間2個分の時間だけ、モビリティ11に搭乗した。
【0054】
符号「r」が付された4つの棒グラフは、測定2日目の午前に、モビリティ利用者がモビリティ11に搭乗したときにおけるVLFデータVDである。このとき、モビリティ利用者は、最短期間4個分の時間だけ、モビリティ11に搭乗した。
【0055】
符号「r」が付された2日目のVLFデータVDが測定された時間帯は、符号「p」が付された1日目のVLFデータVDが測定された時間帯とほぼ同じである。換言すると、符号「r」が付された2日目のVLFデータVDが測定された時間帯は、符号「p」が付された1日目のVLFデータVDが測定された時刻と同一時刻を含む。
【0056】
符号「s」が付された2つの棒グラフは、測定2日目の午後に、モビリティ利用者がモビリティ11に搭乗したときにおけるVLFデータVDである。このとき、モビリティ利用者は、最短期間3個分の時間だけ、モビリティ11に搭乗した。
【0057】
符号「s」が付された2日目のVLFデータVDが測定された時間帯は、符号「q」が付された1日目のVLFデータVDが測定された時間帯とほぼ同じである。換言すると、符号「s」が付された2日目のVLFデータVDが測定された時間帯は、符号「q」が付された1日目のVLFデータVDが測定された時刻と同一時刻を含む。
【0058】
図4(b)においては、1つの棒グラフは、1日間のVLFデータVDの平均値である。
図4(b)における最も左に位置する棒グラフは、
図4(a)の1日目のVLFデータVDの日平均である。
図4(b)における左から2番目の棒グラフは、
図4(a)の2日目のVLFデータVDの日平均である。以下、
図4(b)においては、左から順に、3日目、4日目のVLFの日平均が記載されている。
図4(b)において、破線は、1週間の区分を示す。
図4(b)には、モビリティ利用者の健康状態を測定し始めてから7週目までのVLFデータVDの変化が示されている。
【0059】
図4(c)においては、1つの棒グラフは、一週間のVLFデータVDの平均値である。
図4(c)における最も左に位置する棒グラフは、
図4(b)の1週目のVLFデータVDの週平均である。
図4(c)における左から2番目の棒グラフは、
図4(b)の2週目のVLFデータVDの週平均である。以下、
図4(c)においては、左から順に、3週目、4週目のVLFの日平均が記載されている。
図4(c)には、モビリティ利用者の健康状態を測定し始めてから11月目までのVLFデータVDの変化が示されている。なお、週の区分と、月の区分とは必ずしも一致しないので、
図4(c)には、月の区分は示していない。
【0060】
図4(d)においては、1つの棒グラフは、一か月間のVLFデータVDの平均値である。
図4(d)における最も左に位置する棒グラフは、
図4(c)の1月目のVLFデータVDの月平均である。
図4(d)における左から2番目の棒グラフは、
図4(c)の2月目のVLFデータVDの月平均である。以下、
図4(d)においては、左から順に、3月目、4月目のVLFの月平均が記載されている。
図4(d)において、破線は、1年目と2年目の区分を示す。
図4(d)には、モビリティ利用者の健康状態を測定し始めてから2年目までのVLFデータVDの変化が示されている。
【0061】
2-2.相対比較について
図4(a)に示すように、本形態においては、モビリティ利用者がモビリティ11に搭乗したときに、VLFデータVDを取得する構成となっている。これにより、日常生活の中で、比較的に類似した条件下で、VLFデータVDが取得される。このように比較的に類似した条件下で取得された複数のVLFデータVD同士を相対比較することにより、モビリティ搭乗者の健康状態の変化を推定することができる。
【0062】
例えば、
図4(c)において、符号「x」、「y」および「z」を付した棒グラフについて検討する。上記したように
図4(c)には、週平均のVLFデータVDが記載されている。符号「x」が付されたx週目のVLFデータVDと、符号「y」が付されたy週目のVLFデータVDとを比較すると、x週目のVLFデータVDに比べて、y週目のVLFデータVDは大きくなっている。これにより、モビリティ利用者の健康状態は、x週目に比べてy週目の方が良い方向に変化したと推定される。一方、y週目のVLFデータVDに比べて、z週目のVLFデータVDは小さくなっている。これにより、モビリティ利用者の健康状態は、y週目に比べて、z週目の方が良くない方向に変化したと推定される。
【0063】
3.実施形態の動作
3-1.メインルーチン
次に、
図5を参照して、本形態の健康情報サービス提供装置10の動作について説明する。
図5に、本形態の健康情報サービス提供装置10の動作のフローチャートを示す。健康情報サービス提供装置10が起動すると、生体信号取得処理S1が実行される。生体信号取得処理S1においては、モニタリングシステム56(センサ12および制御回路55)が、モビリティ11のシート21に座ったモビリティ利用者から生体信号BSを取得する。生体信号BSは制御回路55に伝達される。
【0064】
次に、心拍信号推定処理S2が実行される。心拍信号推定処理S2においては、推定部13が、モニタリングシステム56から取得した生体信号BSに基づいて、モビリティ利用者の心拍に関する心拍信号HSを推定する。
【0065】
次に、VLFデータ算出処理S3が実行される。VLFデータ算出処理S3においては、算出部14が、推定部13から取得した心拍信号HSに基づいて、VLFデータVDを算出する。算出されたVLFデータVDは、ユーザーインターフェース18からネットワーク58を介してクラウド59に送信される。
【0066】
次に、状態推定処理S4が実行される。状態推定処理S4においては、状態推定部17が、今回VLFデータVDAと、過去VLFデータVDBとの違いに基づいて、モビリティ利用者の健康状態の変化を推定する。
【0067】
次に、サービス提供処理S5が実行される。サービス提供処理S5においては、サービス提供部が、状態推定部17から取得したモビリティ利用者の健康状態の変化に関する情報に基づいて、モビリティ利用者に特定のサービスを提供する。
【0068】
サービス提供処理S5が終了すると、健康情報サービス提供装置10の動作は終了する。
【0069】
3-2.状態推定処理
次に、
図6~
図10を参照して、状態推定処理S4について説明する。本形態においては、
図6~
図10に示すように、状態推定処理S4は、状態推定処理1(S10)~状態推定処理5(S50)の5つの処理を含む。状態推定処理1(S10)~状態推定処理5(S50)は、すべて実行されても良いし、また、状態推定処理1(S10)~状態推定処理5(S50)から選択された1つまたは複数が実行されても良い。状態推定処理1(S10)~状態推定処理5(S50)から選択される場合は、モビリティ利用者が、5つの処理の中から1つまたは複数を選択しても良いし、また、健康情報サービス提供装置10の仕様または仕向け地等によって、予め選択される構成としてもよい。以下に、状態推定処理1(S10)~状態推定処理5(S50)について説明する。ただし、状態推定処理S4は、1つ~4つ、または6つ以上の状態推定処理を含む構成としても良い。
【0070】
(1)状態推定処理1
図6に、状態推定処理1(S10)のフローチャートを示す。本形態の状態推定処理1は、後に詳述するように、第一過去差分値ΔDVAを、閾値TVAを用いて判断し、第二過去差分値ΔDVBも閾値TVAを用いて判断する。
【0071】
状態推定処理1(S10)が実行されると、今回VLFデータ取得部15は、今回VLFデータVDAを取得する(S11)。
【0072】
次に、過去VLFデータ取得部16は、第一過去VLFデータVDFを記憶部60から取得する。第一過去VLFデータVDFは、今回VLFデータVDAが取得された特定期間よりも1回以上前の特定期間におけるVLFデータVDの統計代表値である。統計代表値としては、1回の搭乗時におけるVLFデータVDの算術平均値、VLFデータVDの日平均値、VLFデータVDの週平均値、VLFデータVDの月平均値等、任意の統計代表値を適宜に選択できる。
【0073】
次に、過去VLFデータ取得部16は、第二過去VLFデータVDGを記憶部60から取得する。第二過去VLFデータVDGは、第一過去VLFデータVDFが取得された期間よりも1回以上前の特定期間におけるVLFデータVDの統計代表値である。第一過去VLFデータVDFと同様に、統計代表値としては、1回の搭乗時におけるVLFデータVDの算術平均値、VLFデータVDの日平均値、VLFデータVDの週平均値、VLFデータVDの月平均値等、任意の統計代表値を適宜に選択できる。本形態においては、第一過去VLFデータVDFの期間と、第二過去VLFデータVDGの期間とは同じに設定される。例えば、第一過去VLFデータVDFが日平均値であれば第二過去VLFデータVDGも日平均値とされる。
【0074】
次に、状態推定部17は、第一過去VLFデータVDFから今回VLFデータVDAを減じた第一過去差分値ΔDVAを算出する(S14)。つまり、状態推定部17は、現在のモビリティ利用者の健康状態が、過去の健康状態と比べてどのように変化したかを調べる。続いて、状態推定部17は、第一過去差分値ΔDVAが、記憶部60に格納された閾値TVA以上であるかを判断する(S15)。ただし、閾値TVAは第一比較基準の一例である。
【0075】
第一過去差分値ΔDVAが閾値TVA以上である場合(S15:Y)、現在のモビリティ利用者の健康状態に係るVLFデータVDが、過去の健康状態に係るVLFデータVDと比べて減少したことを意味する。従って、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと判断する(S16)。これにより状態推定処理1(S10)は終了する。
【0076】
一方、第一過去差分値ΔDVAが閾値TVAよりも小さい場合(S15:N)、状態推定部17は、第二過去VLFデータVDGから今回VLFデータVDAを減じた第二過去差分値ΔDVBを算出する(S17)。つまり、状態推定部17は、現在のモビリティ利用者の健康状態が、第一過去VLFデータVDFが測定された期間よりもさらに過去の健康状態と比べてどのように変化したかを調べる。続いて、状態推定部17は、第二過去差分値ΔDVBが、記憶部60に格納された閾値TVA以上であるかを判断する(S18)。ただし、閾値TVAは第二比較基準の一例である。
【0077】
第二過去差分値ΔDVBが閾値TVA以上である場合(S18:Y)、現在のモビリティ利用者の健康状態に係るVLFデータVDが、第一過去VLFデータVDFが測定された期間よりもさらに過去の健康状態に係るVLFデータVDと比べて減少したことを意味する。従って、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと判断する(S16)。これにより状態推定処理1(S10)は終了する。
【0078】
第二過去差分値ΔDVBが閾値TVAよりも小さい場合(S18:N)、状態推定処理1(S10)は終了する。
【0079】
(2)状態推定処理2
図7に、状態推定処理2(S20)のフローチャートを示す。本形態の状態推定処理2(S20)は、後に詳述するように、1回の搭乗分における今回VLFデータVDAと、過去の複数回の搭乗分における過去VLFデータVDBと、を比較する形態である。状態推定処理2(S20)が実行されると、今回VLFデータ取得部15は、現在搭乗時または直近搭乗時である1回の搭乗分における今回VLFデータVDAを取得する(S21)。
【0080】
次に、過去VLFデータ取得部16は、過去の所定期間における複数回の搭乗分におけるVLFデータVDの統計代表値である過去VLFデータVDBを、記憶部60から取得する。統計代表値としては、複数回の搭乗時におけるVLFデータVDの算術平均値、VLFデータVDの日平均値、VLFデータVDの週平均値、VLFデータVDの月平均値等、複数回の搭乗分における統計代表値を適宜に選択できる。
【0081】
次に、状態推定部17は、過去VLFデータVDBから今回VLFデータVDAを減じた差分値ΔDVCを算出する(S23)。つまり、状態推定部17は、現在のモビリティ利用者の健康状態が、過去の複数回のモビリティ11搭乗時における健康状態と比べてどのように変化したかを調べる。続いて、状態推定部17は、差分値ΔDVCが、記憶部60に格納された閾値TVA以上であるかを判断する(S24)。
【0082】
差分値ΔDVCが閾値TVA以上である場合(S24:Y)、モビリティ利用者の健康状態に係る今回VLFデータVDAが、過去の複数回のモビリティ11搭乗時における健康状態に係る過去VLFデータVDBから減少したことを意味する。従って、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと判断する(S25)。これにより状態推定処理2(S20)は終了する。
【0083】
一方、差分値ΔDVCが閾値TVAよりも小さい場合(S24:N)、状態推定処理2(S20)は終了する。
【0084】
(3)状態推定処理3
図8に、状態推定処理3(S30)のフローチャートを示す。本形態の状態推定処理3(S30)は、後に詳述するように、今回VLFデータVDAと、今回VLFデータVDAが測定された時刻と同一時刻を含む過去VLFデータVDBとを、比較する形態である。状態推定処理3(S30)が実行されると、今回VLFデータ取得部15は、現在搭乗時または直近搭乗時におけるVLFデータVDである今回VLFデータVDAを取得する(S31)。
【0085】
次に、過去VLFデータ取得部16は、今回VLFデータVDAが測定された時刻と同一時刻を含む過去の搭乗時におけるVLFデータVDの統計代表値である過去VLFデータVDBを取得する(S32)。
【0086】
次に、状態推定部17は、過去VLFデータVDBから今回VLFデータVDAを減じた同時間帯差分値ΔDVDを算出する(S33)。つまり、状態推定部17は、現在のモビリティ利用者の健康状態が、同時間帯の搭乗時における過去のモビリティ利用者の健康状態と比べてどのように変化したかを調べる。続いて、状態推定部17は、同時間帯差分値ΔDVDが、記憶部60に格納された同時間帯閾値TVB以上であるかを判断する(S34)。
【0087】
同時間帯差分値ΔDVDが同時間帯閾値TVB以上である場合(S34:Y)、モビリティ利用者の健康状態に係る今回VLFデータVDAが、同時間帯のモビリティ11搭乗時における過去の健康状態に係る過去VLFデータVDBから減少したことを意味する。従って、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと判断する(S35)。これにより状態推定処理3(S30)は終了する。
【0088】
一方、同時間帯差分値ΔDVDが同時間帯閾値TVBよりも小さい場合(S34:N)、状態推定処理3(S30)は終了する。
【0089】
(4)状態推定処理4
図9に、状態推定処理4(S40)のフローチャートを示す。本形態の状態推定処理4(S40)は、モビリティ利用者のモビリティ11への搭乗時を含む所定の比較期間における、今回VLFデータVDAと、過去VLFデータVDBと、を比較する形態である。状態推定処理4(S40)が実行されると、今回VLFデータ取得部15は、現在搭乗時または直近搭乗時を含む所定の比較期間におけるVLFデータVDの統計代表値である今回VLFデータVDAを取得する(S41)。比較期間は、例えば、1回または2回以上の任意の搭乗回数、1日間、1週間、1か月等、任意の期間を適宜に選択できる。
【0090】
次に、過去VLFデータ取得部16は、現在搭乗時または直近搭乗時よりも前の比較期間におけるVLFデータVD取得時の統計代表値である過去VLFデータVDBを取得する。過去VLFデータVDBに係る比較期間は、今回VLFデータVDAに係る比較期間と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0091】
次に、状態推定部17は、過去VLFデータVDBから今回VLFデータVDAを減じた期間差分値ΔDVEを算出する(S43)。つまり、状態推定部17は、現在のモビリティ利用者の比較期間内における健康状態が、過去の比較期間内におけるモビリティ利用者の健康状態と比べてどのように変化したかを調べる。続いて、状態推定部17は、期間差分値ΔDVEが、記憶部60に格納された期間閾値TVC以上であるかを判断する(S44)。
【0092】
期間差分値ΔDVEが期間閾値TVC以上である場合(S44:Y)、比較期間内におけるモビリティ利用者の健康状態に係る今回VLFデータVDAが、過去の比較期間内におけるモビリティ利用者の健康状態に係る過去VLFデータVDBから減少したことを意味する。従って、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと判断する(S45)。これにより状態推定処理4(S40)は終了する。
【0093】
一方、期間差分値ΔDVEが同時間帯閾値TVBよりも小さい場合(S44:N)、状態推定処理4(S40)は終了する。
【0094】
(5)状態推定処理5
図10に、状態推定処理5(S50)のフローチャートを示す。本形態の状態推定処理5(S50)は、後に詳述するが、過去の搭乗時から今回の搭乗時に至るVLFデータVDの傾向から、モビリティ利用者の健康状態の変化を推定する形態である。状態推定処理5(S50)が実行されると、今回VLFデータ取得部15は、今回VLFデータVDAを取得する(S51)。
【0095】
次に、過去VLFデータ取得部16は、複数の過去VLFデータVDBを取得する(S52)。複数の過去VLFデータVDBは、時間の経過の観点から、連続的であってもよいし、離散的であっても良い。
【0096】
連続的な例としては、例えば、今回VLFデータVDAが取得された日から遡って連続した1週間の過去VLFデータVDBとしてよいし、今回VLFデータVDAが取得された日から遡って1か月間の過去VLFデータVDBとしても良く、取得される過去VLFデータVDBの期間は任意である。
【0097】
離散的な例としては、例えば、今回VLFデータVDAが取得された日の曜日と同じ曜日に取得された複数の過去VLFデータVDBとしても良い。例えば、毎週月曜日における今回VLFデータVDAと過去VLFデータVDBとを比較してもよい。また、毎月1日目における今回VLFデータVDAと過去VLFデータVDBとを比較しても良い。取得される過去VLFデータVDBの時間間隔は任意である。
【0098】
次に、状態推定部17は、複数の過去VLFデータVDBと、今回VLFデータVDAと、を組み合わせて傾向データTDを作成する(S53)。傾向データTDは、過去から今回に至るVLFデータVDが1つにまとめられたデータであって、過去から今回に至るVLFデータVDの傾向を判断することが可能になっている。
【0099】
次に、状態推定部17は、傾向データTDについて、今回VLFデータVDAが取得されたときの直近の過去の傾向データTDが、減少傾向であるかについて判断する(S54)。
【0100】
傾向データTDとして、例えば、複数の過去VLFデータVDBが、今回VLFデータVDAに至るまで単調に減少している状態が挙げられる。この場合、今回VLFデータVDAが取得されたときの直近の過去の傾向データTDは、減少傾向にある。従って状態推定部17は、今回VLFデータVDAが取得されたときの直近の過去の傾向データTDが、減少傾向であると判断する(S54:Y)。
【0101】
また、傾向データTDとして、例えば、複数の過去VLFデータVDBが、今回VLFデータVDAに至るまで、減少と増加をサイクル状に繰り返している状態が挙げられる。この場合において、今回VLFデータVDAが取得されたときの直近の過去の傾向データTDは、減少傾向にあるか、増加傾向にあるか、のいずれかである。状態推定部17は、今回VLFデータVDAが取得されたときの直近の過去の傾向データTDが、減少傾向にあるときには、当該傾向データTDが減少傾向にあると判断する(S54:Y)。
【0102】
傾向データTDが減少傾向にある(S54:Y)、全体として、モビリティ利用者の健康状態に係るVLFデータVDが減少傾向にあると判断できる。従って、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと判断する(S55。これにより状態推定処理5(S50)は終了する。
【0103】
一方、傾向データTDが減少傾向にない場合(S54:N)、状態推定処理5(S50)は終了する。
【0104】
なお、上記のVLFデータVDの傾向としては、複数の過去VLFデータVDBが、今回VLFデータVDAに至るまで単調に減少している状態、および、複数の過去VLFデータVDBが、今回VLFデータVDAに至るまで、減少と増加をサイクル状に繰り返している状態の双方または一方を含む。
【0105】
3-3.サービス提供処理S5
モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したとき、ユーザーインターフェース18は、モビリティ利用者に特定のサービスを提供する。
【0106】
特定のサービスとしては、特に限定されず、例えば、以下のようなサービスを提供できる。サービス提供部は、例えば、モビリティ利用者に、健康状態が良くない方向に変化したことを端的に伝えるメッセージを音声で伝えたり、画面に表示したりしてもよい。メッセージは特に限定されず、例えば、「最近、お疲れ気味ですね。」、「休憩してはいかがですか?」等、任意のメッセージを採用できる。
【0107】
また、ユーザーインターフェース18は、モビリティ利用者に、健康状態が良くなる方向に向けて提案するメッセージを音声で伝えたり、画面に表示したりしても良い。メッセージは特に限定されず、例えば、「スポーツをされてはいかがですか?」、「旅行に出かけられてはいかがですか?」等、任意のメッセージを採用できる。
【0108】
また、ユーザーインターフェース18は、モビリティ利用者に、健康状態の回復が期待できる施設と、施設までの道のりを伝達しても良い。サービス提供部は、モビリティ利用者の嗜好に応じて、例えば、スポーツ施設、温泉、レジャーランド、観光地、美術館等について、施設の概要、営業時間、道のり、料金等の情報をモビリティ利用者に、提供しても良い。
【0109】
本形態によれば、モビリティ11に搭乗したモビリティ利用者から得られたVLFデータVDに基づいて、今回の搭乗時の今回VLFデータVDAと、過去の搭乗時の過去VLFデータVDBと、を相対的に比較することにより、モビリティ利用者の健康状態の変化を推定することができる。このようにして推定された健康状態の変化に基づき、モビリティ利用者に、健康状態に関するサービスを提供することができる。
【0110】
(実施形態2)
次に、
図11~
図13を参照して、実施形態2について説明する。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0111】
図11に示すように、本形態の健康情報サービス提供装置10は、記憶部60が、特定閾値TVDを格納する点と、閾値TVAが、通常閾値TVEおよび警戒閾値TVFを含む点で、実施形態1と異なる。警戒閾値TVFは、通常閾値TVEよりも小さな値である。
【0112】
また、本形態は、状態推定処理1(S10)に代えて、状態推定処理6(S60)が実行される点で、実施形態1と異なる(
図12参照)。
【0113】
図12に状態推定処理6(S60)のフローチャートを示す。本形態の状態推定処理6(S60)は、後に詳述するが、今回VLFデータVDAが特定閾値TVDより大きいときは通常閾値TVEを使用し、今回VLFデータVDAが特定閾値TVD以下のときは警戒閾値TVFを使用する形態である。状態推定処理6(S60)が実行されると、今回VLFデータ取得部15は、今回VLFデータVDAを取得する(S11)。
【0114】
次に、状態推定部17は、事前判断処理1(S61)を実行する。
図13に、事前判断処理1(S61)のサブルーチンのフローチャートを示す。
【0115】
事前判断処理1(S61)が実行されると、状態推定部17は、今回VLFデータVDAが、記憶部60に格納された特定閾値TVDを超えるかについて判断する(S62)。つまり、本形態においては、今回VLFデータVDAの値そのものに着目する処理が含まれる。
【0116】
今回VLFデータVDAが特定閾値TVDを超えた場合(S62:Y)、状態推定部17は、閾値TVAとして通常閾値TVEを使用する(S63)。これにより、事前判断処理1(S61)は終了し、状態推定処理6(S60)に戻る。
【0117】
一方、今回VLFデータVDAが特定閾値TVD以下の場合(S62:N)、状態推定部17は、閾値TVAとして警戒閾値TVFを使用する(S64)。これにより、事前判断処理1(S61)は終了し、状態推定処理6(S60)に戻る。
【0118】
状態推定処理6(S60)に戻って以降の処理(S13~S18)は、実施形態1の状態推定処理1(S10)と同じなので、重複する説明を省略する。
【0119】
続いて、本形態の作用効果について説明する。上記したように、警戒閾値TVFは通常閾値TVEよりも小さな値である。従って、閾値TVAとして警戒閾値TVFを用いると、モビリティ利用者の健康状態について、良くない方向に変化したという判断がされやすくなる。
【0120】
今回VLFデータVDAは、現在におけるモビリティ利用者の健康状態に関する情報である。上記したように、今回VLFデータVDAの値が大きいと、モビリティ利用者の健康状態は良いと推定され、今回VLFデータVDAの値が小さいと、モビリティ利用者の健康状態は良くないと推定される。今回VLFデータVDAが特定閾値TVDを超える程度に大きい場合には、モビリティ利用者の健康状態は良い傾向にあると推定されるので、閾値TVAとして通常閾値TVEを使用する。
【0121】
一方、今回VLFデータVDAが特定閾値TVD以下である場合には、そもそもモビリティ利用者の健康状態が良くない状態にあると推定される。そこで、閾値TVAとして、通常閾値TVEよりも小さな値である警戒閾値TVFを使用することにより、モビリティ利用者の健康状態が良くない状態にあると推定される場合には、より一層、モビリティ利用者の健康状態が良くないと推定しやすくするようになる。これにより、モビリティ利用者が、健康状態が良くない状態であるにもかかわらず、無理に活動することを抑制することができる。
【0122】
(実施形態3)
次に、
図14~
図15を参照して、実施形態3について説明する。
図14に示すように、本形態の健康情報サービス提供装置10は、記憶部60が、第一閾値TVGおよび第二閾値TVHを格納する点で、実施形態1と異なる。
【0123】
また、本形態は、状態推定処理1(S10)に代えて、状態推定処理7(S70)が実行される点で、実施形態1と異なる(
図15参照)。
【0124】
図15に状態推定処理7(S70)のフローチャートを示す。本形態の状態推定処理7(S70)は、後に詳述するが、第一過去期間VLFデータVDCから今回VLFデータVDAを減じた第一差分値ΔDVFが、第一閾値TVG以上であり、且つ、第二過去期間VLFデータVDDから今回VLFデータVDAを減じた第二差分値ΔDVGが、第二閾値TVH以上であるときに、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する形態である。状態推定処理7(S70)が実行されると、今回VLFデータ取得部15は、現在搭乗時または直近搭乗時におけるVLFデータVDである今回VLFデータVDAを取得する(S71)。
【0125】
次に、過去VLFデータ取得部16は、現在搭乗時または直近搭乗時よりも前の第一期間におけるVLFデータVDの統計代表値である第一過去期間VLFデータVDCを取得する(S72)。
【0126】
次に、過去VLFデータ取得部16は、第一過去期間VLFデータVDCの第一期間よりも長い第二期間におけるVLFデータVDの統計代表値である第二過去期間VLFデータVDDを取得する(S73)。
【0127】
次に、状態推定部17は、第一過去期間VLFデータVDCから今回VLFデータVDAを減じた第一差分値ΔDVFを算出する(S74)。
【0128】
次に、状態推定部17は、第二過去期間VLFデータVDDから今回VLFデータVDAを減じた第二差分値ΔDVGを算出する(S75)。
【0129】
次に、状態推定部17は、第一差分値ΔDVFが第一閾値TVG以上であるかについて判断し(S76)、さらに、第二差分値ΔDVGが第二閾値TVH以上であるかについて判断する(S77)。
【0130】
状態推定部17は、第一差分値ΔDVFが第一閾値TVG以上であり(S76;Y)、かつ、第二差分値ΔDVGが第二閾値TVH以上であるとき(S77:Y)、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する(S78)。これにより、状態推定処理7(S70)が終了する。
【0131】
一方、状態推定部17は、第一差分値ΔDVFが第一閾値TVGより小さいとき(S76:N)、および第二差分値ΔDVGが第二閾値TVHより小さいとき(S77:N)、状態推定処理7(S70)を終了する。
【0132】
本形態によれば、今回VLFデータVDAとの比較対象として、第一期間における第一過去期間VLFデータVDCと、第一期間よりも長い第二期間における第二過去期間VLFデータVDDと、を用いる。このように異なる期間で比較することにより、モビリティ利用者の健康状態をより多面的に推定することができる。ただし、第一期間と第二期間との組み合わせは特に限定されず、例えば、前回搭乗時と前日搭乗時との組み合わせ、前回搭乗時と直近1週間との組み合わせ、前日搭乗時と直近1週間との組み合わせ等、任意の組み合わせが適宜に選択可能である。
【0133】
(実施形態4)
次に、
図16を参照して、実施形態4について説明する。本形態は、状態推定処理7(S70)に代えて、状態推定処理(S80)が実行される点で、実施形態3と異なる(
図16参照)。
【0134】
図16に示すように、状態推定処理8は、
図15に記載された状態推定処理7(S70)と、S71~S74までは同一であり、S75以降の処理が異なっている。状態推定処理7(S70)と同じ処理については重複する説明を省略する。
【0135】
本形態の状態推定処理8(S80)は、第一過去期間VLFデータVDCから今回VLFデータVDAを減じた第一差分値ΔDVFが、第一閾値TVG以上である場合に、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する。また、第一差分値ΔDVFが第一閾値TVGよりも小さく、且つ、第二過去期間VLFデータVDDから今回VLFデータVDAを減じた第二差分値ΔDVGが、第二閾値TVH以上である場合に、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する。
【0136】
図16に示すように、状態推定部17は、第一差分値ΔDVFを算出した後(S74)、第一差分値ΔDVFが第一閾値TVG以上であるかを判断する(S76)。
【0137】
第一差分値ΔDVFが第一閾値TVG以上であるとき(S76:Y)、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する(S78)。これにより、状態推定処理8(S80)は終了する。
【0138】
一方、第一差分値ΔDVFが第一閾値TVGより小さいとき(S76:N)、状態推定部17は第二差分値ΔDVGを算出する(S75)。
【0139】
次に、状態推定部17は、第二差分値ΔDVGが第二閾値TVH以上であるか判断する(S77)。
【0140】
第二差分値ΔDVGが第二閾値TVH以上であるとき(S77:Y)、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する(S78)。これにより、状態推定処理8(S80)は終了する。
【0141】
一方、第二差分値ΔDVGが第二閾値TVHより小さいとき(S77:N)、状態推定処理8(S80)は終了する。
【0142】
本形態によれば、今回VLFデータVDAとの比較対象として、第一期間における第一過去期間VLFデータVDCと、第一期間よりも長い第二期間における第二過去期間VLFデータVDDと、を用いる。これにより、異なる期間で比較することにより、モビリティ利用者の健康状態をより多面的に推定することができる。
【0143】
(実施形態5)
次に、
図17~
図18を参照して実施形態5について説明する。
図17に示すように、本形態の健康情報サービス提供装置10においては、クラウド59が最低VLFデータ取得部61を備えている点で、実施形態1と異なる。最低VLFデータVDEは、過去VLFデータVDBにおける過去の特定期間よりも長時間においてVLFデータVDの最低の値である。
【0144】
また、本形態は、状態推定処理1(S10)に代えて、状態推定処理9(S90)が実行される点で、実施形態1と異なる(
図18参照)。
【0145】
図18に、状態推定処理9(S90)のフローチャートを示す。本形態の状態推定処理9(S90)は、後に詳述するが、今回VLFデータVDAと過去VLFデータVDBとを比較した後に、今回VLFデータVDAと、過去に測定された最低のVLFデータVDである最低VLFデータVDEと、を比較する形態である。状態推定処理9(S90)は、最低VLFデータ取得部61が最低VLFデータVDEを取得する処理(S91)と、状態推定部17が今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDEより小さいかを判断する処理(S92)と、を実行する点で、
図6の状態推定処理1(S10)と異なっている。そこで、以下の説明では、状態推定処理1(S10)と同一の処理については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0146】
図18に示すように、状態推定処理9(S90)においては、第二過去差分値ΔDVBが閾値TVAより小さいとき(S18:N)、最低VLFデータ取得部61が記憶部60から最低VLFデータVDEを取得する。
【0147】
次に、状態推定部17は、今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDEより小さいかを判断する(S92)。つまり、本形態においては、今回VLFデータVDAの値が、過去に取得されたVLFデータVDの最低の値と比較される。
【0148】
今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDEより小さいとき(S92:Y)、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する(S16)。これにより、状態推定処理9(S90)は終了する。
【0149】
一方、今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDE以上であるとき(S92:N)、状態推定処理9(S90)は終了する。
【0150】
今回VLFデータVDAと、第一過去VLFデータVDFおよび第二過去VLFデータVDGとを相対比較するだけでは、第一過去差分値ΔDVAが閾値TVA以上であり、且つ、第二過去差分値ΔDVBが閾値TVA以上である場合には、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと判断しない。しかし、本形態によれば、第一過去差分値ΔDVAが閾値TVA以上であり、且つ、第二過去差分値ΔDVBが閾値TVA以上であったとしても、今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDEより小さい場合には、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する。これにより、モビリティ利用者の健康状態をより正確に推定することができる。
【0151】
(実施形態6)
次に、
図19を参照して、実施形態6について説明する。本形態は、状態推定処理9(S90)に代えて、状態推定処理10(S100)が実行される点で、実施形態5と異なる。
【0152】
図19に、状態推定処理10(S100)のフローチャートを示す。後に詳述するが、今回VLFデータVDAと過去VLFデータVDBとを比較する前に、今回VLFデータVDAと、過去に測定された最低のVLFデータVDである最低VLFデータVDEと、を比較する形態である。状態推定処理10(S100)は、最低VLFデータ取得部61が最低VLFデータVDEを取得する処理(S91)と、状態推定部17が今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDEより小さいかを判断する処理(S92)が、今回VLFデータ取得部15が今回VLFデータVDAを取得した後(S11)に実行される点で、
図18の状態推定処理9(S90)と異なっている。
【0153】
図19に示すように、今回VLFデータ取得部15が今回VLFデータVDAを取得した後(S11)、最低VLFデータ取得部61が、記憶部60から最低VLFデータVDEを取得する(S91)。
【0154】
次に、状態推定部17が、今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDEより小さいかを判断する(S92)。
【0155】
今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDEより小さいとき(S92:Y)、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する(S16)。これにより、状態推定処理10(S100)は終了する。
【0156】
一方、今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDE以上であるとき(S92:N)、S12以降の処理が実行される。S12~S18の処理は、
図6の状態推定処理1(S10)と同一なので、重複する説明を省略する。
【0157】
本形態によれば、今回VLFデータVDAが最低VLFデータVDEより小さい場合、状態推定部17は、即座に、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する。これにより、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したことを速やかに推定することが可能となる。
【0158】
(実施形態7)
次に、
図20~
図21を参照して、実施形態7について説明する。
図20に示すように、本形態は、記憶部60が緊急閾値TVIを格納する点で、実施形態1と異なる。
【0159】
また、状態推定処理1(S10)に代えて、状態推定処理11(S110)が実行される点で、実施形態1と異なる。
【0160】
図21に、状態推定処理11(S110)のフローチャートを示す。本形態の状態推定処理11(S110)は、後に詳述するが、今回VLFデータVDAと過去VLFデータVDBとを比較する前に、今回VLFデータVDAと緊急閾値TVIとを比較する形態である。状態推定処理11(S110)が実行されると、今回VLFデータ取得部15は、今回VLFデータVDAを取得する(S11)。
【0161】
次に、状態推定部17は、今回VLFデータVDAが緊急閾値TVI以下であるかを判断する(S111)。状態推定部17は、今回VLFデータVDAが緊急閾値TVI以下であるとき(S111:Y)、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する(S16)。これにより状態推定処理11(S110)は終了する。
【0162】
一方、今回VLFデータVDAが緊急閾値TVIより大きいとき(S111:N)、S12~S18の処理が実行される。S12~S18の処理は、実施形態1の状態推定処理1(S10)と同じなので、重複する説明を省略する。
【0163】
本形態によれば、今回VLFデータVDAが緊急閾値TVI以下である場合、状態推定部17は、即座に、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する。これにより、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したことを速やかに推定することが可能となる。
【0164】
ただし、今回VLFデータVDAと過去VLFデータVDBとを比較した後に、今回VLFデータVDAと緊急閾値TVIとを比較する形態としても良い。
【0165】
(実施形態8)
次に、
図22から
図23を参照して、実施形態8について説明する。
図22に示すように、本形態に係る記憶部60は、閾値TVAの代わりに、第一過去閾値TVJ(第一比較基準の一例)と、第二過去閾値TVK(第二比較基準の一例)とを、を備える点で実施形態1と異なる。本形態は、第一過去閾値TVJと、第二過去閾値TVKを使用して、モビリティ利用者の健康状態を推定する。
【0166】
また、本形態は、状態推定処理1(S10)に代えて、状態推定処理12(S120)が実行される点で、実施形態1と異なる(
図23参照)。
【0167】
図23に示すように、状態推定処理12(S120)は、
図6と比較して、S15の代わりにS121が実行され、S18の代わりにS122が実行される点で、状態推定処理1(S10)と異なる。状態推定処理1(S10)と同じ処理は、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0168】
本形態の状態推定処理12(S120)は、後に詳述する多、第一過去差分値ΔDVAについては第一過去閾値TVJを用いて判断し、第二過去差分値ΔDVBについては第二過去閾値TVKを用いて判断する形態である。
【0169】
状態推定部17は、第一過去差分値ΔDVAを算出した後(S14)、第一過去差分値ΔDVAが第一過去閾値TVJ以上であるかを判断する(S121)。
【0170】
第一過去差分値ΔDVAが第一過去閾値TVJ以上であるとき(S121:Y)、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する(S16)。これにより、状態推定処理12(S120)は終了する。
【0171】
一方、第一過去差分値ΔDVAが第一過去閾値TVJより小さいとき(S121:N)、状態推定部17は、第二過去差分値ΔDVBを算出する(S17)。次に、状態推定部17は、第二過去差分値ΔDVBが第二過去閾値TVK以上であるかを判断する(S122)。
【0172】
第二過去差分値ΔDVBが第二過去閾値TVK以上であるとき(S122:Y)、状態推定部17は、モビリティ利用者の健康状態が良くない方向に変化したと推定する(S16)。これにより、状態推定処理12(S120)が終了する。
【0173】
一方、第二過去差分値ΔDVBが第二過去閾値TVKより小さいとき(S122:N)、状態推定処理12(S120)は終了する。
【0174】
本形態によれば、第一過去差分値ΔDVAについては第一過去閾値TVJを用いて判断し、第二過去差分値ΔDVBについては第二過去閾値TVKを用いて判断する。これにより、モビリティ利用者の健康状態を精密に判断することができる。
【0175】
(実施形態9)
次に、
図24~
図26を参照して、実施形態9について説明する。
図24に示すように、本形態の記憶部60は、特定閾値TVDを格納する点、第一過去閾値TVJが第一過去通常閾値TVLおよび第一過去警戒閾値TVMを含む点、および第二過去閾値TVKが第二過去通常閾値TVNおよび第二過去警戒閾値TVOを含む点で、実施形態8と異なる。第一過去警戒閾値TVMは第一過去通常閾値TVLよりも小さな値である。第二過去警戒閾値TVOは、第一過去通常閾値TVLよりも小さな値である。
【0176】
また、本形態は、状態推定処理12(S120)に代えて、状態推定処理13(S130)が実行される点で、実施形態8と異なる(
図25)。
【0177】
本形態の状態推定処理13(S130)は、後に詳述するが、今回VLFデータVDAが特定閾値TVDを超える場合には第一過去通常閾値TVLおよび第二過去通常閾値TVNを用いてモビリティ利用者の健康状態を推定し、今回VLFデータVDAが特定閾値TVD以下の場合には第一過去警戒閾値TVMおよび第二過去警戒閾値TVOを用いてモビリティ利用者の健康状態を推定する形態である。
【0178】
図25に示すように、状態推定処理13(S130)は、S11が実行された後に、事前判断処理2(S131)が実行される点で、
図23の状態推定処理12(S120)と異なる。状態推定処理12(S120)と同じ処理については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0179】
図25に示すように、状態推定処理13(S130)が実行されると、今回VLFデータ取得部15は今回VLFデータVDAを取得する(S11)。次に、状態推定部17は、事前判断処理2を実行する(S131)。
【0180】
図26に、事前判断処理2(S131)のサブルーチンのフローチャートを示す。事前判断処理2(S131)が実行されると、状態推定部17は、今回VLFデータVDAが、記憶部60に格納された特定閾値TVDを超えるかを判断する(S132)。
【0181】
今回VLFデータVDAが特定閾値TVDを超えるとき(S132:Y)、状態推定部17は、第一過去閾値TVJとして第一過去通常閾値TVLを使用し(S133)、第二過去閾値TVKとして第二過去通常閾値TVNを使用する(S134)。これにより、事前判断処理2(S131)は終了する。
【0182】
一方、今回VLFデータVDAが特定閾値TVD以下のとき(S132:N)、状態推定部17は、第一過去閾値TVJとして第一過去警戒閾値TVMを使用し(S135)、第二過去閾値TVKとして第二過去警戒閾値TVOを使用する(S136)。これにより、事前判断処理2(S131)は終了する。
【0183】
図25に戻って、S12~S14、S121、S16、S17およびS122の処理は、
図23の状態推定処理12(S120)と同じなので、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0184】
続いて、本形態の作用効果について説明する。上記したように、第一過去警戒閾値TVMは第一過去通常閾値TVLよりも小さな値であり、第二過去警戒閾値TVOは第二過去通常閾値TVNよりも小さな値である。従って、第一過去閾値TVJとして第一過去警戒閾値TVMを用い、第二過去閾値TVKとして第二過去警戒閾値TVOを用いると、モビリティ利用者の健康状態について、良くない方向に変化したと判断しやすくなる。
【0185】
また、今回VLFデータVDAが特定閾値TVD以下である場合には、そもそもモビリティ利用者の健康状態が良くない状態にあると推定される。そこで、今回VLFデータVDAが特定閾値TVD以下である場合には、閾値TVAとして、第一過去閾値TVJとして第一過去警戒閾値TVMを用い、第二過去閾値TVKとして第二過去警戒閾値TVOを用いることにより、モビリティ利用者の健康状態が良くない状態にあると推定される場合には、より一層、モビリティ利用者の健康状態が良くないと推定しやすくするようになる。これにより、モビリティ利用者が、健康状態が良くない状態であるにもかかわらず、無理に活動することを抑制することができる。
【0186】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、下記の形態に適用することが可能である。
【0187】
(1)実施形態1においては、センサ12はシート21に取付けられて、シート21に着座したモビリティ利用者の体動の変化から生体信号BSを取得する構成としたが、これに限られず、センサは、光(赤外線、紫外線、レーザー光、可視光等)や、音などをモビリティ利用者に発射し、モビリティ利用者からの反射を検出するものであってもよい。また、マイクロ波をモビリティ利用者に発射し、発射した周波数と受信した周波数の差からモビリティ利用者の体動の変化を検出するドップラーセンサでもよく、任意のセンサを的意義に選択することができる。
【0188】
(2)実施形態1においては、センサ12はシート座面部22aの内部に取付ける構成としたが、これに限られず、
図27に示すように、センサ12は、シート21とは別体の部品を、シート座面部22aの上面(座面表皮部材33の上面)に載置し、ゴムバンド、ベルト等の公知の取付手段によって、シート座面部22aに取付ける構成としても良い。また、センサ12は、シート背面部22bにゴムバンド、ベルト等の公知の取付手段によって取付ける構成としても良い。
【0189】
(3)実施形態1においては、ユーザーインターフェース18は、モビリティ11に組付けられたカーナビゲーションシステムとしたが、これに限られず、
図28に示すように、モビリティ11とは別体の、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ等としても良い。なお、
図28~
図35においては、記憶部60に格納されたデータについては省略した。本形態によれば、ユーザーインターフェース18は、モビリティ11に搭乗していないモビリティ利用者に特定のサービスを提供することができる。例えば、モビリティ11から降りて自宅内でくつろいでいるモビリティ利用者に対して、画像または音声で、モビリティ利用者の健康状態についてのメッセージを伝達したり、スポーツ施設等の案内や道のりを表示したりしてもよい。
【0190】
(4)実施形態1においては、ユーザーインターフェース18が、ネットワーク58を介してクラウド59との間で情報を送信または受信したが、これに限られず、
図29に示すように、実施形態1のクラウド59に配置された構成を、モビリティ11に制御装置62として組付ける構成としても良い。
【0191】
(5)実施形態1においては、ユーザーインターフェース18が、ネットワーク58を介してクラウド59との間で情報を送信または受信したが、これに限られず、
図30に示すように、ECU57がネットワーク58を介してクラウド59にVLFデータVDを送信し、モビリティ11に組付けられたユーザーインターフェース18(例えば、カーナビゲーションシステム)がモビリティ利用者に情報を提供する構成としても良い。
【0192】
(6)実施形態1においては、ユーザーインターフェース18が、ネットワーク58を介してクラウド59との間で情報を送信または受信したが、これに限られず、
図31に示すように、ECU57がネットワーク58を介してクラウド59にVLFデータVDを送信し、モビリティ11と別体のユーザーインターフェース18(例えば、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ)がモビリティ利用者に情報を提供する構成としても良い。
【0193】
(7)実施形態1のECU57は算出部14を備える構成としたが、これに限られず、
図32に示すように、クラウド59が算出部14を備える構成としても良い。このとき、ECU57がネットワーク58を介してクラウド59に心拍信号HSを送信し、モビリティ11と別体のユーザーインターフェース18(例えば、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ)がモビリティ利用者に情報を提供する構成としても良い。
【0194】
(8)実施形態1のECU57は算出部14を備える構成としたが、これに限られず、
図33に示すように、クラウド59が算出部14を備える構成としても良い。このとき、ECU57がネットワーク58を介してクラウド59に心拍信号HSを送信し、モビリティ11に組付けられたユーザーインターフェース18(例えば、カーナビゲーションシステム)がモビリティ利用者に情報を提供する構成としても良い。
【0195】
(9)実施形態1のモビリティ11は、推定部13および算出部14を備える構成としたが、これに限られず、
図34に示すように、クラウド59が推定部13および算出部14を備える構成としてもよい。
【0196】
(10)実施形態1のモビリティ11は、推定部13および算出部14を備える構成としたが、これに限られず、
図35に示すように、クラウド59が推定部13および算出部14を備え、モビリティ11と別体のユーザーインターフェース18(例えば、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ)が、ネットワーク58を介してクラウド59と情報を送信または受信する構成としても良い。
【符号の説明】
【0197】
10:健康情報サービス提供装置、11:モビリティ、12:センサ、13:推定部、14:算出部、15:今回VLFデータ取得部、16:過去VLFデータ取得部、17:状態推定部、18:ユーザーインターフェース、21:シート、55:制御回路、56:モニタリングシステム、58:ネットワーク、59:クラウド、60:記憶部、61:最低VLFデータ取得部、62:制御装置、BS:生体信号、HS:心拍信号、S1:生体信号取得処理、S2:心拍信号推定処理、S3:VLFデータ算出処理、S4:状態推定処理、S5:サービス提供処理、S10、S20,S30,S40,S50,S60,S70,S80,S90、S100,S110,S120,S130:状態推定処理、TVA:閾値、TVB:同時間帯閾値、TVC:期間閾値、TVD:特定閾値、TVE:通常閾値、TVF:警戒閾値、TVG:第一閾値、TVH:第二閾値、TVI:緊急閾値、TVJ:第一過去閾値、TVK:第二過去閾値、TVL:第一過去通常閾値、TVM:第一過去警戒閾値、TVN:第二過去通常閾値、TVO:第二過去警戒閾値、VD:VLFデータ、VDA:今回VLFデータ、VDB:過去VLFデータ、VDC:第一過去期間VLFデータ、VDD:第二過去期間VLFデータ、VDE:最低VLFデータ、VDF:第一過去VLFデータ、VDG:第二過去VLFデータ、ΔDVA:第一過去差分値、ΔDVB:第二過去差分値、ΔDVC:差分値、ΔDVD:同時間帯差分値、ΔDVE:期間差分値、ΔDVF:第一差分値、ΔDVG:第二差分値