(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085136
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】施工支援装置、施工支援方法、及び、転圧時期管理システム
(51)【国際特許分類】
E01C 19/48 20060101AFI20240619BHJP
E01C 19/26 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
E01C19/48 A
E01C19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199505
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 覚
(72)【発明者】
【氏名】門田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】相田 尚
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AC01
2D052BB00
2D052BD11
2D052CA09
(57)【要約】
【課題】アスファルト混合物層の転圧時期を適切に判断することを可能とする施工支援装置、施工支援方法、及び、転圧時期管理システムを提供する。
【解決手段】敷き均し後のアスファルト混合物層を転圧するアスファルト舗装における施工支援装置において、気象条件、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを取得する取得部312と、取得部312により取得されたパラメータに基づいて、アスファルト混合物層の内部の温度を推定する温度推定部40と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷き均し後のアスファルト混合物層を転圧するアスファルト舗装における施工支援装置において、
気象条件、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、前記アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記パラメータに基づいて、前記アスファルト混合物層の内部の温度を推定する温度推定部と、を備える、
施工支援装置。
【請求項2】
前記温度推定部により推定した温度に基づく報知を行う報知部を備える、
請求項1に記載の施工支援装置。
【請求項3】
前記報知部は、前記温度推定部により推定した温度と、前記アスファルト舗装の施工範囲における位置とを対応付けたヒートマップとして表示する、
請求項2に記載の施工支援装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記アスファルト混合物の種類を特定し、特定した前記アスファルト混合物の種類に対応する空隙率を取得する、
請求項3に記載の施工支援装置。
【請求項5】
前記パラメータは、前記アスファルト混合物層の厚さを含み、
前記取得部は、前記アスファルト舗装の施工時の気象条件として気温及び風速の少なくともいずれかを取得し、アスファルトフィニッシャに設置された温度センサによって検出された前記アスファルト混合物の敷き均し前の温度を取得し、前記アスファルトフィニッシャにおいて検出された前記アスファルト混合物層の厚さを取得する、
請求項1に記載の施工支援装置。
【請求項6】
敷き均し後のアスファルト混合物層を転圧するアスファルト舗装における施工支援方法において、
気象条件、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、前記アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを取得し、
取得した前記パラメータに基づいて、前記アスファルト混合物層の内部の温度を推定する、
施工支援方法。
【請求項7】
敷き均し後のアスファルト混合物層を転圧するアスファルト舗装における転圧時期管理システムにおいて、
気象条件、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、前記アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記パラメータに基づいて、前記アスファルト混合物層の内部の温度を推定する温度推定部と、
前記温度推定部により推定した温度と、前記アスファルト舗装の施工範囲における位置とを対応付けたヒートマップを表示する表示部と、
を備える、
転圧時期管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、施工支援装置、施工支援方法、及び、転圧時期管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装の舗設においては、アスファルトフィニッシャによりアスファルト混合物が敷き均され、敷き均し後のアスファルト混合物層が転圧機械により転圧される。アスファルト混合物層の転圧時期は、アスファルト混合物層の温度が転圧に適した温度となっているタイミングに合わせることが望ましい。このため、従来、敷き均し後のアスファルト混合物層の温度を測定し、測定された温度に基づき転圧が行われていたが、温度を測定する作業者の負担軽減や施工の効率向上を図るため、アスファルト混合物層の温度を管理する技術が提案された。例えば、特許文献1には、アスファルトフィニッシャに赤外線カメラを配置し、敷き均した後のアスファルト混合物層の表面温度を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アスファルト混合物層の表面温度は気温などの外的要因の影響を受けて変化するため、アスファルト混合物層の内部の温度を正確に反映しないことがある。このため、アスファルト混合物層の表面温度に基づいて転圧時期を管理する手法では、転圧時期を適切に判断することが難しいという課題があった。
本開示は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、アスファルト混合物層の転圧時期を適切に判断することを可能とする施工支援装置、施工支援方法、及び、転圧時期管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、敷き均し後のアスファルト混合物層を転圧するアスファルト舗装における施工支援装置において、気象条件、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、前記アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記パラメータに基づいて、前記アスファルト混合物層の内部の温度を推定する温度推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、敷き均し後のアスファルト混合物層の内部の温度を高精度で推定できる。このため、アスファルト混合物層の転圧時期を、容易に、適切に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】検出制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】温度管理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】変形例としての温度管理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.アスファルト舗装の施工]
図1は、本実施形態を適用する一例としてアスファルト舗装の舗設の概要を示す説明図である。
図1の例では、アスファルト舗装を舗設する建設機械として、運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200、及び、転圧機械500が使用される。運搬車両100は、例えばダンプトラックである。アスファルトフィニッシャ200は、運搬車両100の荷台110に積載されたアスファルト混合物を路盤RB上に敷き均すことにより、路盤RBの上に、所定厚さのアスファルト混合物層ACを形成する。転圧機械500は、例えば、マカダム式ロードローラー、或いは、タンデム式ロードローラーであり、鉄製の前輪510及び後輪520によってアスファルト混合物層ACを転圧する。転圧機械500の後に、タイヤ式ロードローラーによってアスファルト混合物層ACに対し二次転圧を行ってもよい。
【0009】
図1に、運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200及び転圧機械500の進行方向を符号Fで示す。進行方向Fはアスファルト舗装の舗設が行われる方向を示しており、進行方向Fを運搬車両100、アスファルトフィニッシャ200、及び転圧機械500の前方とする。アスファルト舗装が舗設される範囲を施工範囲と呼ぶ。進行方向Fに沿った方向における施工範囲の大きさを施工範囲の長さと呼び、進行方向Fと交差する方向における施工範囲の大きさを、施工範囲の幅と呼ぶ。
【0010】
アスファルトフィニッシャ200の前部にはホッパ210が設けられる。ホッパ210には荷台110からアスファルト混合物が投入される。アスファルトフィニッシャ200は、ホッパ210に投入されたアスファルト混合物を、不図示のバーフィーダーによりアスファルトフィニッシャ200の後部に設けられるスクリード220に向けて搬送する。アスファルト混合物は、スクリュ225によって施工範囲の幅に合わせて左右に敷き広げられ、スクリード220に送られる。スクリード220は、アスファルト混合物を予め設定された厚さに舗設することによりアスファルト混合物層ACを形成する。アスファルト混合物層ACの厚さを、以下の説明では舗装厚と呼ぶ。
【0011】
アスファルトフィニッシャ200の車体には、レベリングアーム221がピボット部223を支点として回動可能に連結される。レベリングアーム221は、スクリード220を、アスファルトフィニッシャ200の車体に対して上下に変位可能に連結する。ピボット部223はピボットシリンダ224の伸縮により上下に変位可能であり、ピボット部223の変位に伴い、路盤RBに対するスクリード220の高さが変化する。従って、ピボットシリンダ224を変位させることにより、アスファルト混合物層ACの厚さ、すなわち舗装厚さを決定可能である。レベリングアーム221にはリフトシリンダ222が連結される。リフトシリンダ222は、アスファルトフィニッシャ200がアスファルト混合物を敷き均す際には自由伸縮状態とされる。リフトシリンダ222は、例えばアスファルトフィニッシャ200の移動中に、レベリングアーム221を持ち上げて、スクリード220を路盤RBから離れた位置で保持する。
【0012】
アスファルトフィニッシャ200には、アスファルトフィニッシャ200を操縦するオペレータの座席240が設けられ、座席240の上方には屋根245が設置される。
【0013】
アスファルトフィニッシャ200には、後述する検出部20を構成する各種の検出器が設置される。アスファルトフィニッシャ200の車体には、アスファルト舗装を舗設する前の路盤RBの表面の温度を検出する界面温度センサ21が配置される。
屋根245の上には、位置検出装置22、及び、気象測定装置23が配置される。位置検出装置22は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して、アスファルトフィニッシャ200の位置を検出する。気象測定装置23は、
図2を参照して後述するように、風速を測定する風速センサ231、及び、温度を測定する温度センサ232を有する。アスファルトフィニッシャ200が屋根245を備えていない場合、位置検出装置22および気象測定装置23は、アスファルトフィニッシャ200のホッパ210と座席240との間や、座席240の近傍に設置されてもよい。また、アスファルトフィニッシャ200は、位置検出装置22および気象測定装置23が載置される台座を備えてもよい。
アスファルトフィニッシャ200は、アスファルト混合物の温度を測定する合材温度センサ24を有する。合材温度センサ24は、スクリュ225により広げられるアスファルト混合物の温度、スクリュ225からスクリード220に送られるアスファルト混合物の温度、及び、スクリード220により敷き均されたアスファルト混合物の温度の少なくともいずれかを測定する。この測定を実現するため、合材温度センサ24は、例えば、スクリード220の前方に設けられる。
【0014】
加熱アスファルト混合物を積載した運搬車両100は、アスファルトフィニッシャ200の前方から、進行方向Fとは反対方向に移動して荷台110をダンプアップし、加熱アスファルト混合物をアスファルトフィニッシャ200に供給し始める。運搬車両100及びアスファルトフィニッシャ200は、運搬車両100からアスファルトフィニッシャ200に加熱アスファルト混合物を連続して供給可能な間隔を隔てたまま、同速度で一体となって進行方向Fに前進する。この前進に伴い、アスファルトフィニッシャ200は、スクリード220により路盤RBの左右方向にアスファルト混合物層ACを形成する。
【0015】
運搬車両100及びアスファルトフィニッシャ200が一体となって前進を開始すると、転圧機械500がアスファルトフィニッシャ200の後方から進行方向Fに進行し、アスファルト混合物層ACを転圧して締め固める。また、転圧機械500は、前進と後進とを繰り返すことにより、前輪510の幅を超えるアスファルト混合物層ACを転圧できる。
【0016】
転圧機械500がアスファルト混合物層ACを転圧するタイミング、すなわち転圧時期は、アスファルトフィニッシャ200がアスファルト混合物層ACを形成した直後とは限らない。転圧時期は、アスファルト混合物層ACの温度が転圧に適した温度となったときであることが望ましい。荷台110に積載された加熱アスファルト混合物は高温であり、アスファルト混合物がホッパ210からスクリード220に搬送され、路盤RB上に敷き均される過程で温度が下がる。路盤RB上に敷き均されたアスファルト混合物層ACの温度は、時間の経過とともに低下する。転圧機械500のオペレータは、アスファルト混合物層ACの温度に基づいて判断される転圧時期の指示を受けて、転圧を行う。
【0017】
アスファルト混合物の温度の低下は、施工範囲の外気温度等の気象条件、路盤RBの温度、及び、その他の要因に影響を受ける。このため、従来、路盤RB上に敷き均されたアスファルト混合物の温度を予測することは困難であった。このため、転圧時期を適切に判断するために、作業者が温度センサを使ってアスファルト混合物層ACの内部の温度を測定することも行われていた。本実施形態の温度管理システム1は、アスファルト混合物層ACの内部温度を高精度で予測することにより、予測した温度に基づく転圧時期の判断を可能とし、作業員が温度測定を行う場合に比べて作業員の負荷軽減、及び、アスファルト舗装の舗設作業の効率向上を実現するものである。
【0018】
[2.温度管理システムの構成]
図2は、温度管理システム1のブロック図である。
本実施形態の温度管理システム1は、検出制御装置10、及び温度管理装置30を含む。
検出制御装置10は、検出部20を利用して、アスファルト混合物層ACの温度変化に影響する検出値、及び、ユーザが入力する情報を収集する。温度管理装置30は、検出制御装置10が収集した情報に基づいて、アスファルト混合物層ACの温度を推定し、推定した温度に関する情報を出力する。温度管理システム1は、転圧時期管理システムの一例に対応する。温度管理装置30は、施工支援装置の一例に対応する。
【0019】
検出制御装置10を操作するユーザ、及び、温度管理装置30を操作するユーザは制限されない。例えば、検出制御装置10を操作するユーザはアスファルトフィニッシャ200を操作するオペレータであり、温度管理装置30を操作するユーザは転圧機械500を操作するオペレータである。また、検出制御装置10を、温度管理システム1を管理する管理者が操作してもよい。以下の説明では、検出制御装置10を操作するユーザ及び作業者と、温度管理装置30を操作するユーザ及び作業者とを総称して、オペレータと呼ぶ。オペレータは、検出制御装置10や温度管理装置30を直接、操作する人に限られず、これらを操作するオペレータを監督する人物を含んでもよい。
【0020】
検出制御装置10及び温度管理装置30の具体的な態様は制限されない。本実施形態では一例として、検出制御装置10、及び温度管理装置30が小型の電子機器で構成され、検出制御装置10がアスファルトフィニッシャ200に搭載され、温度管理装置30が転圧機械500に搭載される例を説明する。
図1に示すように、検出制御装置10は、アスファルトフィニッシャ200の座席240の近傍に設置される。これにより、アスファルトフィニッシャ200のオペレータが検出制御装置10の操作、及び、検出制御装置10の表示を視認できる。温度管理装置30は、転圧機械500の座席530の近傍に設置される。これにより、転圧機械500のオペレータが、温度管理装置30の操作、及び、温度管理装置30の表示を視認できる。検出制御装置10及び温度管理装置30は、それぞれ、アスファルトフィニッシャ200及び転圧機械500から着脱可能であってもよい。
【0021】
検出制御装置10には、界面温度センサ21、位置検出装置22、気象測定装置23、合材温度センサ24、及び、舗装厚検出部25が接続される。これらのセンサや検出装置をまとめて検出部20と呼ぶ。検出部20を構成する各センサ及び各装置は、それぞれ、検出制御装置10に接続されてもよい。また、検出部20を構成する各センサ及び各装置と、検出制御装置10とを接続する不図示の接続装置を、アスファルトフィニッシャ200に設けてもよい。
【0022】
界面温度センサ21は、例えば赤外線温度センサであり、アスファルト混合物層ACが舗設される前の路盤RBの表面温度の測定あるいは検出を行う。位置検出装置22は、アスファルトフィニッシャ200の位置を示す位置情報を出力する。気象測定装置23は、アスファルト舗装の舗設を行う環境に関する測定を行う。
図2に示す構成例では、気象測定装置23は、風速を測定する風速センサ231、及び、温度を測定する温度センサ232を備える。気象測定装置23は、日照量、雨量、気圧、或いはその他の測定を行う装置を含んでもよい。合材温度センサ24は、上述のようにスクリード220の前方に設置され、アスファルト混合物の温度を測定する。アスファルトフィニッシャ200が、路盤RB上に敷き均される前のアスファルト混合物を加熱する加熱機構を備えている場合、合材温度センサ24は、加熱後のアスファルト混合物の温度を測定可能な位置に配置されてもよい。
【0023】
舗装厚検出部25は、アスファルトフィニッシャ200が敷き均すアスファルト混合物層ACの厚さを検出する。舗装厚検出部25は、アスファルト混合物層ACの厚さを直接、検出する機構を備えてもよい。本実施形態の舗装厚検出部25は、アスファルトフィニッシャ200に設定される舗装厚を検出する。例えば、舗装厚検出部25は、ピボットシリンダ224およびリフトシリンダ222の伸縮量と、スクリード220後端との位置関係に基づいて、舗装厚を求める。舗装厚検出部25は、複数のセンサや、複数の機構を備え、これら複数のセンサ等の検出値に基づいて舗装厚を算出する装置であってもよい。
【0024】
検出制御装置10は、プロセッサ11、メモリ12、タッチパネル13、及び、通信部15を備える。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、或いはその他の演算処理装置である。メモリ12は、プログラム、及び、データを記憶する不揮発性記憶装置である。メモリ12は、プロセッサ11が実行するプログラムや処理されるデータを一時的に記憶する揮発性記憶装置を含んでもよい。プロセッサ11は、メモリ12が記憶する制御プログラム121を実行することにより、検出制御装置10の各部を制御する。プロセッサ11は、不図示の揮発性記憶装置、及び、メモリ12と統合されたSoC(System on Chip)であってもよい。メモリ12は、制御プログラム121、及び、検出データ122を記憶する。検出データ122は、後述するようにプロセッサ11が生成するデータである。
【0025】
タッチパネル13は、タッチセンサ131、及び、ディスプレイパネル(表示パネル)132を備える。ディスプレイパネル132は、プロセッサ11の制御に従って画像あるいは映像を表示する表示パネルである。ディスプレイパネル132は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、或いは、有機EL(Electro-Luminescence)表示パネルである。タッチセンサ131は、ディスプレイパネル132の表面に重ねて実装される。タッチセンサ131は、ディスプレイパネル132の表面にオペレータがタッチ操作を行った場合に、タッチ操作を検出し、タッチ操作された位置を特定する。タッチセンサ131は、例えば、感圧式センサ、或いは、静電容量式センサで構成される。タッチセンサ131はオペレータによる入力を受け付ける入力部の一例であり、表示パネル132は表示部の一例である。
【0026】
通信部15は、温度管理装置30が備える通信部35との間で、通信を実行する。通信部15と通信部35とは、通信ケーブルで構成される有線通信回線、或いは、無線通信回線を通じてデータや信号を送受信する。例えば、通信部15と通信部35とは、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、或いは、その他の無線通信規格に準拠する無線通信回線により接続される。或いは、通信部15と通信部35とは、USB(Universal Serial Bus)ケーブル、或いはその他のデータ通信ケーブルにより接続されてもよい。
【0027】
プロセッサ11は、通信制御部111、センサ制御部112、及び、表示制御部113を有する。これらはソフトウェアにより構成される機能部であり、プロセッサ11が制御プログラム121を実行することによって構成される。
【0028】
通信制御部111は、通信部15を利用して温度管理装置30との間で通信を実行する。表示制御部113は、表示パネル132に画像や文字を表示させる。
【0029】
センサ制御部112は、検出部20により検出された検出値または測定値を取得する。検出部20を構成する各部の検出値および測定値を総称して検出値と呼ぶ。センサ制御部112は、少なくとも、位置検出装置22から位置情報を取得する。センサ制御部112は、界面温度センサ21、気象測定装置23、合材温度センサ24及び舗装厚検出部25のいずれか1以上の検出値を取得し、取得した検出値と位置情報とを対応付ける。検出値は、パラメータと呼ぶことができる。
【0030】
センサ制御部112は、タッチセンサ131が検出した操作に基づき、アスファルトフィニッシャ200のオペレータ、或いは、温度管理システム1のオペレータが入力した情報を取得する。タッチセンサ131により入力された情報を、以下では入力値と呼ぶ。
【0031】
センサ制御部112は、検出部20から取得した検出値に、検出時刻を付加して検出データ122を生成し、メモリ12に記憶させる。ここで、検出時刻は、検出部20が検出を行った時刻であってもよいし、検出部20からセンサ制御部112が検出値を取得した時刻であってもよいし、センサ制御部112が検出データ122を生成する時刻であってもよい。検出時刻は日付を含んでもよい。センサ制御部112は、検出データ122に、タッチセンサ131の操作により入力された入力値を含めることができる。
【0032】
図2に、検出データ122に含まれる情報の例を拡大して示す。
図2の例では、検出データ122は、位置情報、検出時刻、界面温度、風速、気温、合材温度、舗装厚、合材種類、及び、天候を含む。界面温度、風速、気温、合材温度、及び、舗装厚は、それぞれ、界面温度センサ21、風速センサ231、温度センサ232、合材温度センサ24、及び、舗装厚検出部25の検出値である。合材種類はタッチセンサ131により入力される情報であり、ホッパ210に投入されたアスファルト混合物の種類である。検出データ122に含まれる天候とは、施工範囲の天候を示す情報であり、予め用意された天候区分から選択される。
【0033】
アスファルト混合物の種類は、アスファルト混合物層ACの空隙率を特定するための情報として用いられる。アスファルト混合物の種類とは、例えば、規格により定められたアスファルト混合物の名称や骨材粒径である。具体的には、密粒度アスファルト混合物(20、13)、細粒度アスファルト混合物(13)、密粒度ギャップアスファルト混合物(13)、密粒度アスファルト混合物(20F、13F)、細粒度ギャップアスファルト混合物(13F)、細粒度アスファルト混合物(13F)、密粒度ギャップアスファルト混合物(13F)、開粒度アスファルト混合物(13)、ポーラスアスファルト混合物(20、13)等が挙げられる。アスファルト混合物の種類は、製造事業者、品番、製品名、製品コード等であってもよい。
【0034】
アスファルト混合物は、その種類によってアスファルト混合物の組成物である骨材の種類及び/またはサイズ、フィラーの種類及び/または粒度、組成割合等が異なる。この相違により、アスファルトフィニッシャ200により敷き均されたアスファルト混合物層ACの空隙率が異なる。アスファルト混合物層ACの空隙率は、アスファルト混合物層ACの温度変化に影響する。以下の説明では、アスファルト混合物層ACの空隙率を、単に空隙率と呼ぶ。検出データ122は、アスファルト混合物の種類に代えて空隙率を示す情報を含んでもよい。
【0035】
表示制御部113は、表示パネル132を制御して文字や画像を表示させる。例えば、表示制御部113は、オペレータが情報を入力するためのソフトウェアキーボードを表示パネル132に表示させる。また、表示制御部113は、センサ制御部112が検出部20から取得した検出値を表示パネル132に表示させてもよい。
【0036】
温度管理装置30は、プロセッサ31、メモリ32、タッチパネル33、通信部35、及び、位置検出部36を備える。プロセッサ31は、CPU、或いはその他の演算処理装置である。メモリ32は、プログラム、及び、データを記憶する不揮発性記憶装置である。メモリ32は、プロセッサ31が実行するプログラムや処理されるデータを一時的に記憶する揮発性記憶装置を含んでもよい。プロセッサ31は、メモリ32が記憶する制御プログラム321を実行することにより、温度管理装置30の各部を制御する。プロセッサ31は、不図示の揮発性記憶装置、及び、メモリ32と統合されたSoCであってもよい。
【0037】
メモリ32は、制御プログラム321、温度推定アプリ322、推定結果データ323、及び、空隙率データ324を記憶する。制御プログラム321は、プロセッサ31により実行されるプログラムである。プロセッサ31は、制御プログラム321を実行することにより、温度管理装置30の各部を制御する。また、プロセッサ31は、制御プログラム321を実行することにより、アプリケーションプログラムを実行するためのプラットフォームを構成する。
【0038】
温度推定アプリ322は、プロセッサ31により実行されるプログラムであり、アスファルト混合物層ACの温度を推定するためのアプリケーションプログラムである。温度推定アプリ322は、後述するように、学習済みのAI(Artificial Intelligence)を含む。
【0039】
推定結果データ323は、プロセッサ31がアスファルト混合物層ACの温度を推定した結果を含み、推定済みの温度のデータと呼ぶことができる。推定結果データ323は、推定処理の結果である推定温度と、推定処理の対象となった位置の位置情報と、推定処理を行った時刻または推定処理に用いた検出値の検出時刻と、を対応付けて含む。
【0040】
空隙率データ324は、アスファルト混合物の種類と空隙率とを対応付けるデータである。空隙率データ324を参照することにより、プロセッサ31は、アスファルト混合物の種類に対応する空隙率を取得できる。
【0041】
タッチパネル33は、タッチセンサ331、及び、ディスプレイパネル(表示パネル)332を備える。ディスプレイパネル332は、プロセッサ31の制御に従って画像あるいは映像を表示する表示パネルである。ディスプレイパネル332は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、或いは、有機EL(Electro-Luminescence)表示パネルである。ディスプレイパネル332、及び、ディスプレイパネル332を有するタッチパネル33は、報知部の一例に対応する。
【0042】
タッチセンサ331は、ディスプレイパネル332の表面に重ねて実装される。タッチセンサ331は、ディスプレイパネル332の表面にオペレータがタッチ操作を行った場合に、タッチ操作を検出し、タッチ操作された位置を特定する。タッチセンサ331は、例えば、感圧式センサ、或いは、静電容量式センサで構成される。タッチセンサ331はオペレータによる入力を受け付ける入力部の一例であり、ディスプレイパネル332は表示部の一例である。
通信部35は、検出制御装置10が備える通信部15との間で通信を実行する。
【0043】
位置検出部36は、例えば、GNSSを利用して温度管理装置30の位置を検出する。位置検出部36は、温度管理装置30の位置情報をプロセッサ31に出力する。
【0044】
プロセッサ31は、通信制御部311、取得部312、及び、表示制御部313を有する。これらはソフトウェアにより構成される機能部であり、プロセッサ31が制御プログラム321を実行することによって構成される。
【0045】
通信制御部311は、通信部35を利用して検出制御装置10との間で通信を実行する。
取得部312は、検出制御装置10から検出データ122を取得する。取得部312は、検出データ122にアスファルト混合物の種類が含まれる場合、空隙率データ324を参照して、アスファルト混合物の種類に対応する空隙率を取得する。
表示制御部313は、ディスプレイパネル332に画像や文字を表示させる。例えば、表示制御部313は、後述する温度表示画面400を表示させる。
【0046】
プロセッサ31は、温度推定部40を有する。温度推定部40はソフトウェアにより構成される機能部であり、プロセッサ31が温度推定アプリ322を実行することによって構成される。
【0047】
温度推定部40は、推定モデル41を有する。推定モデル41は、学習済みのAIモデルである。推定モデル41は、取得部312から、推定用のパラメータが入力された場合に、入力されたパラメータに基づいて、アスファルト混合物層ACの温度を推定するための推定処理を実行する。推定モデル41は、例えば、プロセッサ31が有するRTC(Real Time Clock)機能により現在時刻を取得できる。
【0048】
例えば、推定モデル41は、検出データ122に基づいて、アスファルト混合物層ACがアスファルトフィニッシャ200により舗設された時刻と、現在すなわち推定処理実行時の時刻とをもとに、アスファルト混合物層ACが舗設されてからの経過時間を算出する。推定モデル41は、検出データ122に含まれるパラメータと、経過時間とに基づいて、推定処理実行時におけるアスファルト混合物層ACの温度を推定する。
【0049】
推定モデル41は、アスファルト混合物層ACの温度変化についての教師データを利用して機械学習を行った、学習済みモデルである。教師データは、例えば、検出データ122に含まれるパラメータのうち少なくとも合材温度及び空隙率と、アスファルト混合物層ACの舗設からの経過時間と、アスファルト混合物層ACの温度との相関を示すデータが挙げられる。推定モデル41は、検出データ122に含まれるパラメータ及び経過時間が入力された場合に、アスファルト混合物層ACの温度を推定し、推定結果としてアスファルト混合物層ACの温度を出力する。推定モデル41の推定結果である温度を、以下では推定温度と呼ぶ。
【0050】
アスファルト混合物層ACの温度とは、アスファルト混合物層ACの表面の温度であってもよいが、好ましくはアスファルト混合物層ACの内部の温度である。ここで、アスファルト混合物層ACの内部とは、表面から所定以上の深さの部分をいう。例えば、アスファルト混合物層ACの表面から、舗装厚の30%以上の深さの部分を、アスファルト混合物層ACの内部ということができる。また、アスファルト混合物層ACの表面と路盤RBの表面との中間、すなわち、アスファルト混合物層ACの厚み方向における中央における温度を、アスファルト混合物層ACの内部の温度としてもよい。
【0051】
推定モデル41が推定処理に用いるパラメータは、少なくとも、合材温度及び空隙率を含む。また、界面温度と、風速及び/または気温とを含んでもよい。また、界面温度、舗装厚、合材種類、及び、天候のいずれか1以上を含んでもよい。
【0052】
推定モデル41は、位置情報毎に推定処理を実行する。このため、アスファルト舗装の施工範囲における位置毎に、アスファルト混合物層ACの温度が推定される。温度推定部40は、推定温度と位置情報と時刻情報とを対応付けて、推定結果データ323としてメモリ32に記憶させる。推定結果データ323は、複数の推定温度を含んでもよい。この場合、温度推定部40は、推定モデル41の推定温度と位置情報と時刻情報とが対応付けられたデータセットを含み、複数のデータセットが推定結果データ323に含まれる。
【0053】
表示制御部313は、推定モデル41が推定したアスファルト混合物層ACの温度を、施工範囲における位置に対応付けたヒートマップのデータを生成し、ヒートマップを含む温度表示画面400をディスプレイパネル332に表示させる。
【0054】
[3.温度の表示]
図3は、温度管理装置30の表示例を示す図であり、推定モデル41による推定温度を表示する温度表示画面400の表示例を示す。温度表示画面400は、推定温度および検出データ122をもとに表示制御部313が生成する。
【0055】
温度表示画面400は、表示制御部313の制御により、タッチパネル33の表示領域の全体に表示される。温度表示画面400は、温度マップ表示部410を含む。温度マップ表示部410は、例えば温度表示画面400の上部に配置される。
【0056】
温度マップ表示部410には、温度マップ411が表示される。温度マップ411は、アスファルト舗装の舗設を行う施工範囲の全体、或いは、施工範囲において温度管理装置30の現在位置に近い領域に対応する。温度マップ411は、施工範囲におけるアスファルト混合物層ACの温度分布を、施工範囲にマッピングして平面的に示すヒートマップである。例えば、温度マップ411は、推定モデル41が推定した温度を、施工範囲における位置に対応付けてマッピングし、温度帯画像412により温度域を示すグラフである。温度帯画像412は、温度域を模式的に示す円形、矩形、或いはその他の形状の画像である。
【0057】
温度マップ411には温度域ごとに温度帯画像412が配置される。温度帯画像412の数に制限はない。各々の温度帯画像412は異なる色あるいは模様で表示される。これにより、温度域の違いを、転圧機械500のオペレータが容易に視認できる。
図3に例示するように、温度帯画像412には、温度帯画像412が示す温度域を数値により表示してもよい。各々の温度帯画像412には中心温度が設定され、中心温度を含む所定温度範囲の位置に重なるように温度帯画像412が表示される。各々の温度帯画像412に対応する温度域の大きさに制限はない。例えば、
図3において「146℃」と表示された温度帯画像412は、推定温度が、146℃を中心とする2℃の温度範囲に含まれる位置に重なる画像である。つまり、この温度帯画像412は146℃±1℃となっている位置を示す。温度帯画像412の温度域の広さは、温度マップ411において5℃刻み、或いは10℃刻みで温度帯画像412が表示されるように設定されてもよいし、より狭い温度域が設定されてもよい。温度帯画像412に対応する温度域の広さは表示制御部313に予め設定される。
【0058】
図3には、互いに独立する複数の温度帯画像412を温度マップ411に配置した例を示すが、これは一例である。温度管理装置30は、例えば、温度マップ411に、温度分布をグラデーション表示してもよい。
【0059】
温度表示画面400には、温度マップ411に並べて、施工範囲における温度管理装置30の位置を示す位置アイコン413、アスファルトフィニッシャ200の位置を示す位置アイコン414、及び、進行方向Fを示す進行方向表示415が表示される。また、温度マップ411に並べて、温度マップ411と実際の距離との対応を示すスケール416が表示される。これらの表示により、転圧機械500のオペレータは、実際の施工範囲における温度分布を容易に理解できる。
【0060】
温度表示画面400には、温度マップ411のほか、各種の情報を表示してもよい。例えば、
図3の温度表示画面400には、時刻表示部421及び測定値表示部422が配置されている。時刻表示部421には、推定モデル41が推定温度を推定した時刻と、現在時刻とが表示される。測定値表示部422には、検出データ122に含まれる情報の一部が表示される。
【0061】
このように、温度管理システム1は、転圧機械500に搭載される温度管理装置30により、推定モデル41の推定温度をマップ化した温度マップ411を表示する。これにより、転圧機械500のオペレータに、アスファルト混合物層ACの温度の分布を知らせることができる。転圧機械500のオペレータは、温度マップ411を参照することにより、施工範囲における位置ごとのアスファルト混合物層ACの温度を容易に知ることができる。このため、転圧機械500がアスファルト混合物層ACを転圧する転圧時期を、オペレータが適切に判断できる。
【0062】
温度表示画面400を表示する表示装置は、転圧機械500に搭載されたタッチパネル33に限定されない。例えば、アスファルトフィニッシャ200に搭載される表示デバイスにより温度表示画面400を表示してもよい。また、アスファルトフィニッシャ200及び転圧機械500とは異なる場所に設置された表示デバイスにより、温度表示画面400を表示してもよい。この場合、転圧機械500のオペレータとは異なる、施工管理を行う管理者が温度表示画面400を見て、転圧機械500による転圧時期を判断できる。
【0063】
[4.温度管理システムの動作]
図4及び
図5を参照して温度管理システム1の動作を説明する。
図4及び
図5の動作は施工支援方法の一例に対応する。
【0064】
図4は、検出制御装置10の動作を示すフローチャートである。
図4において、ステップS11-S14はセンサ制御部112により実行され、ステップS15は通信制御部111により実行される。ステップS16はプロセッサ11により実行される。
【0065】
検出制御装置10は、検出部20から検出値を取得し(ステップS11)、タッチパネル13に対する操作により入力された入力値を取得する(ステップS12)。検出制御装置10は、位置検出装置22が出力する位置情報、及び、検出時刻に対応付けて、ステップS11で取得した検出値及びステップS12で取得した入力値を含む検出データ122を生成し、メモリ12に記憶させる(ステップS13)。
【0066】
検出制御装置10は、温度管理装置30から検出データ要求を受信したか否かを判定する(ステップS14)。検出データ要求を受信した場合(ステップS14;YES)、検出制御装置10は、検出データ122を温度管理装置30に送信し(ステップS15)、ステップS16に移行する。検出データ要求を受信していない場合(ステップS14;NO)、検出制御装置10は、ステップS15をスキップしてステップS16に移行する。
【0067】
ステップS16で、検出制御装置10は、動作を終了するか否かを判定する(ステップS16)。検出制御装置10は、検出制御装置10の電源をオフにする操作が行われた場合や、検出制御装置10の動作終了を指示する入力が行われた場合等に(ステップS16;YES)、
図4の動作を終了する。動作を終了しない場合(ステップS16;NO)、検出制御装置10はステップS11に戻り、所定時間周期で検出値および入力値の取得を繰り返し実行する。
【0068】
図5は、温度管理装置30の動作を示すフローチャートである。
ステップS21-S22は通信制御部311及び取得部312により実行され、ステップS23-S24は取得部312により実行され、ステップS25-S28は温度推定部40により実行される。ステップS29-S31は表示制御部313により実行される。ステップS30はプロセッサ31により実行される。
【0069】
温度管理装置30は、検出制御装置10に対して検出データ要求を送信し(ステップS21)、検出データ要求への応答として検出制御装置10が送信する検出データ122を受信する(ステップS22)。
【0070】
温度管理装置30は、受信した検出データ122に含まれるアスファルト混合物の種類を特定する(ステップS23)。温度管理装置30は、特定したアスファルト混合物の種類に対応する空隙率を空隙率データ324から取得する(ステップS24)。
【0071】
温度管理装置30は、ステップS22及びS24で取得した検出データ122及び空隙率データ324に基づいてアスファルト混合物層ACの温度を推定する(ステップS25)。温度管理装置30は、推定温度を位置情報と時刻情報に対応づけてメモリ32に記憶させる(ステップS26)。推定温度は、推定結果データ323に含まれる。温度管理装置30は、推定温度を、位置情報及び時刻情報と、推定処理に用いた検出データ122とに対応づけて推定結果データ323に含ませてもよい。
【0072】
温度管理装置30は、推定結果データ323を参照し、過去に推定された推定温度について推定処理を実行し(ステップS27)、新たな推定温度により推定結果データ323を更新する(ステップS28)。これにより、アスファルトフィニッシャ200が敷き均してから時間が経過したアスファルト混合物層ACの推定温度が更新される。
【0073】
温度管理装置30は、推定結果データ323に含まれる位置情報に基づき推定温度を平面に配置するマッピング処理を行い(ステップS29)、マッピング処理の結果を画像化することにより表示用のマップデータを生成する(ステップS30)。ステップS30で生成されるマップデータは、例えば、温度マップ411を表示するためのデータであり、施工範囲における位置毎の推定温度の分布を可視化した画像を含む。
【0074】
温度管理装置30は、ステップS30で生成したマップデータを用いてタッチパネル33の表示を更新する(ステップS31)。
温度管理装置30は、動作を終了するか否かを判定する(ステップS32)。温度管理装置30は、温度管理装置30の電源をオフにする操作が行われた場合や、温度管理装置30の動作終了を指示する入力が行われた場合等に(ステップS32;YES)、
図5の動作を終了する。動作を終了しない場合(ステップS32;NO)、温度管理装置30はステップS21に戻り、所定時間周期で
図5の動作を繰り返し実行する。
【0075】
[5.他の実施形態]
上記実施形態は本発明を適用した一具体例を示すものであり、発明が適用される形態を限定するものではない。
上記実施形態では、温度推定部40が、学習済みのAIである推定モデル41を用いて、アスファルト混合物層ACの温度を推定する例を説明したが、これは一例である。例えば、温度推定部40は、アスファルト混合物層ACの温度低下をモデル化した演算式を利用して、アスファルト混合物層ACの温度を推定してもよい。この演算式は、アスファルト混合物が路盤RB上に敷き均されてからの時間の経過に伴うアスファルト混合物層ACの温度変化を求めるための式であり、温度低下式と呼ぶことができる。具体的には、メモリ32に温度低下式を記憶し、温度推定部40は、検出データ122を温度低下式に適用することにより、推定温度を求める。この場合、メモリ32に複数の温度低下式を記憶させてもよく、温度推定部40は、検出データ122に含まれる1または複数の検出値に基づき温度低下式を選択し、選択した温度低下式に検出データ122を入力することによって推定温度を算出してもよい。
【0076】
また、例えば、温度推定部40は、アスファルト混合物が路盤RB上に敷き均されてからの時間の経過に伴うアスファルト混合物層ACの温度変化をシミュレーションするプログラムにより、推定温度を求めてもよい。このプログラムは、例えば、温度推定アプリ322の一部として構成できる。
【0077】
温度管理システム1の構成は
図2に示した例に限定されない。例えば、温度推定部40を、検出制御装置10及び温度管理装置30とは異なるコンピュータとして構成してもよい。この構成例を
図6に示す。
【0078】
図6は、上述した実施形態の変形例としての温度管理システム1Aの概略構成図である。温度管理システム1Aは、検出制御装置10、温度管理装置30A、および、管理サーバ50を備え、これらの各部は通信ネットワークNを介して相互にデータ通信可能に構成される。温度管理装置30Aは、温度管理装置30において温度推定部40に関する機能を実行しない構成に相当する。管理サーバ50は、温度推定部40の機能に相当するサーバコンピュータである。管理サーバ50は、温度推定アプリ322を実行することにより、推定結果データ323および空隙率データ324を利用して、温度推定部40の機能を実現する。管理サーバ50は、例えば、
図5のステップS22-S30の処理を実行する。
【0079】
通信ネットワークNは、専用回線、公衆回線網、インターネット等を含んで構成される通信回線である。通信ネットワークNは、Wi-Fiルータ、スイッチ、ルータ、ゲートウェイ、各種のサーバ装置等の不図示のネットワーク装置を含んでもよい。また、通信ネットワークNは、通信事業者が設置する無線基地局を含んでもよい。また、検出制御装置10が備える通信部15、温度管理装置30Aが備える通信部35、および、管理サーバ50が備える不図示の通信部は、上述したWi-Fi、Bluetooth等により通信ネットワークNに接続されてもよい。或いは、第4世代移動通信システム(通称4G)、第5世代移動通信システム(通称5G)、LTE(Long Term Evolution)等により通信ネットワークNに接続されてもよい。或いは、有線の通信回線を介して通信ネットワークNに接続されてもよい。
管理サーバ50は、複数のコンピュータであってもよいし、クラウドサーバであってもよい。
【0080】
図6の構成によれば、検出制御装置10および温度管理装置30Aの位置にかかわらず、アスファルト混合物層ACの温度の分布を位置情報に対応付けて、タッチパネル33に表示することが可能となる。
また、管理サーバ50が
図5の処理により生成する情報を、温度管理システム1Aに含まれない装置により共有することが可能となる。例えば、アスファルト舗装の舗設現場とは異なる遠隔地から、施工範囲におけるアスファルト混合物層ACの温度の分布を、ノート型コンピュータやタブレット型コンピュータを利用して閲覧できる。
【0081】
上記実施形態では、タッチパネル33を報知部として用い、推定温度を表示することによって報知を行う構成を説明したが、これは一例である。例えば、温度管理装置30は、スピーカを備え、音を出力することによる報知を行ってもよい。例えば、施工範囲において温度管理装置30の位置に近い領域の推定温度が、転圧に適した温度帯である場合に、ブザーや音声によって報知を行ってもよい。
【0082】
上記実施形態では、検出部20を構成する界面温度センサ21、位置検出装置22、気象測定装置23、合材温度センサ24、及び舗装厚検出部25がアスファルトフィニッシャ200に設置される構成を説明したが、これは一例である。例えば、気象測定装置23を、施工範囲内またはその近傍に設置してもよい。また、舗装厚検出部25に代えて、オペレータが舗装厚を検出制御装置10に入力する構成であってもよい。また、界面温度センサ21は、アスファルトフィニッシャ200の車体の直下における路盤RBの温度を検出する構成に限定されず、界面温度センサ21が屋根245に設置され、より広い範囲の界面温度を検出するものであってもよい。
また、上記実施形態では、温度管理装置30を搭載する機械の一例として、鉄製の前輪510及び後輪520によってアスファルト混合物層ACを転圧する転圧機械500を説明したが、これは一例である。温度管理装置30を搭載する装置は、アスファルト混合物の転圧を行う装置であれば限定されない。例えば、鉄輪とゴム製のタイヤとを備えるコンバインドローラーに温度管理装置30を搭載してもよいし、その他の転圧機械に適用することも可能である。
【0083】
なお、
図2は、本願発明の理解を容易にするために、温度管理システム1の機能構成を主な処理内容により区分して示した概略図であり、温度管理システム1の構成を限定するものではない。例えば、プロセッサ11やプロセッサ31が備える構成要素の処理を、1つのハードウェアユニットにより実行してもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行してもよい。
図4及び
図5のフローチャートに示した各処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。また、これらのフローチャートに示した各ステップを、図に示した順序とは異なる順序で実行してもよい。
【0084】
制御プログラム121、321は、コンピュータにより読み取り可能に、非一時的情報記録媒体に記録された状態で実現することも可能である。具体的には、ハードディスク等の磁気的記録媒体、CD等の光学的記録媒体、USBメモリやSSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイス、或いは、その他の情報記録媒体に記録してもよい。
【0085】
[6.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0086】
(構成1)敷き均し後のアスファルト混合物層を転圧するアスファルト舗装における施工支援装置において、気象条件、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、前記アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記パラメータに基づいて、前記アスファルト混合物層の内部の温度を推定する温度推定部と、を備える、施工支援装置。
構成1の施工支援装置によれば、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを利用することにより、敷き均し後のアスファルト混合物層の内部の温度を高精度で推定できる。このため、アスファルト混合物層の転圧時期を、容易に、適切に判断することが可能となる。
【0087】
(構成2)前記温度推定部により推定した温度に基づく報知を行う報知部を備える、構成1に記載の施工支援装置。
構成2の施工支援装置によれば、敷き均し後のアスファルト混合物層の内部の温度に関する推定結果を報知するので、転圧時期を容易に判断できる。
【0088】
(構成3)前記報知部は、前記温度推定部により推定した温度と、前記アスファルト舗装の施工範囲における位置とを対応付けたヒートマップとして表示する、構成2に記載の施工支援装置。
構成3の施工支援装置によれば、敷き均し後のアスファルト混合物層の内部の温度に関する推定結果をヒートマップにより表示する。これにより、アスファルト混合物層の温度が転圧に適しているか否かを、作業者が容易に知ることができる。このため、アスファルト混合物層の転圧時期を容易に判断できる。
【0089】
(構成4)前記取得部は、前記アスファルト混合物の種類を特定し、特定した前記アスファルト混合物の種類に対応する空隙率を取得する、構成1から構成3のいずれかに記載の施工支援装置。
構成4の施工支援装置によれば、アスファルト混合物の種類に基づいて空隙率を取得し、この空隙率に基づいて、アスファルト混合物層の温度を高精度で推定できる。また、空隙率を作業者が入力する作業負担を軽減できる。
【0090】
(構成5)前記パラメータは、前記アスファルト混合物層の厚さを含み、前記取得部は、前記アスファルト舗装の施工時の気象条件として気温及び風速の少なくともいずれかを取得し、アスファルトフィニッシャに設置された温度センサによって検出された前記アスファルト混合物の敷き均し前の温度を取得し、前記アスファルトフィニッシャにおいて検出された前記アスファルト混合物層の厚さを取得する、構成1から構成4のいずれかに記載の施工支援装置。
構成5の施工支援装置によれば、アスファルト混合物層の厚さ、気象条件、アスファルト混合物の敷き均し前の温度を用いることにより、高精度でアスファルト混合物層の温度を推定できる。また、これらのパラメータを取得する機能を有するので、作業者が測定を行う作業負担を軽減し、アスファルト舗装の舗設の効率を、より一層向上させることができる。
【0091】
(構成6)敷き均し後のアスファルト混合物層を転圧するアスファルト舗装における施工支援方法において、気象条件、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、前記アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを取得し、取得した前記パラメータに基づいて、前記アスファルト混合物層の内部の温度を推定する、施工支援方法。
構成6の施工支援方法によれば、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを利用することにより、敷き均し後のアスファルト混合物層の内部の温度を高精度で推定できる。このため、アスファルト混合物層の転圧時期を、容易に、適切に判断することが可能となる。
【0092】
(構成7)敷き均し後のアスファルト混合物層を転圧するアスファルト舗装における転圧時期管理システムにおいて、気象条件、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、前記アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記パラメータに基づいて、前記アスファルト混合物層の内部の温度を推定する温度推定部と、前記温度推定部により推定した温度と、前記アスファルト舗装の施工範囲における位置とを対応付けたヒートマップを表示する表示部と、を備える、転圧時期管理システム。
構成7の転圧時期管理システムによれば、アスファルト混合物の敷き均し前の温度、及び、アスファルト混合物の敷き均し後の空隙率を含む複数のパラメータを利用することにより、敷き均し後のアスファルト混合物層の内部の温度を高精度で推定し、推定した温度をヒートマップにより表示できる。このため、アスファルト混合物層の転圧時期を、容易に、適切に判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0093】
1 温度管理システム(転圧時期管理システム)
10 検出制御装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 タッチパネル
15 通信部
20 検出部
21 界面温度センサ
22 位置検出装置
23 気象測定装置
24 合材温度センサ
25 舗装厚検出部
30 温度管理装置(施工支援装置)
31 プロセッサ
32 メモリ
33 タッチパネル(報知部)
35 通信部
36 位置検出部
40 温度推定部
41 推定モデル
111 通信制御部
112 センサ制御部
121 制御プログラム
122 検出データ
131 タッチセンサ
132 ディスプレイパネル(表示パネル)
231 風速センサ
232 温度センサ
311 通信制御部
312 取得部
321 制御プログラム
322 温度推定アプリ
323 推定結果データ
324 空隙率データ
331 タッチセンサ
332 ディスプレイパネル(表示パネル、報知部)
400 温度表示画面
410 温度マップ表示部
411 温度マップ(ヒートマップ)
100 運搬車両
200 アスファルトフィニッシャ
500 転圧機械