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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085142
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】巻線切替装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/18 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
H02P25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199517
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明上 周平
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB06
5H505CC04
5H505DD03
5H505EE23
5H505EE30
5H505EE35
5H505EE41
5H505EE43
5H505EE49
5H505EE55
5H505HA06
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505LL01
5H505LL24
5H505MM03
5H505MM06
5H505MM07
(57)【要約】
【課題】多相モータが高速回転している場合においても多相モータのフェールセーフを良好に行い得る巻線切替装置を提供する。
【解決手段】巻線切替装置10は、複数相のコイル32A,32B,32Cを有し、各コイル32A,32B,32Cがコイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wを含むモータ100に用いられる。巻線切替装置10は、コイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wの接続状態を切り替える切替部11と、制御部13と、を備えている。切替部11は、電力の供給を許容する許容状態と、遮断する遮断状態と、に切り替わる構成である。モータ100の回転数が高トルク特性の最高回転数Rm1よりも大きい又は高回転特性の最高回転数Rm2よりも大きい場合、又はバッテリ91の出力電圧が高回転特性の第1電圧閾値Thf又は高トルク特性の第2電圧閾値Ths以下となる場合、制御部13は、切替部11を許容状態から遮断状態に切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相のコイルを有し、各前記コイルが複数のコイル部を含む多相モータに用いられる巻線切替装置であって、
各前記コイルにおける複数の前記コイル部の接続状態を切り替える切替部と、
前記切替部を制御する制御部と、
を備え、
前記切替部は、電源部から前記多相モータへの電力の供給を許容する許容状態と、前記電源部から前記多相モータへの電力の供給を遮断する遮断状態と、に切り替わる構成であり、
前記多相モータの回転数が回転閾値よりも大きい場合、又は前記電源部の出力電圧が電圧閾値以下となる場合、前記制御部は、前記切替部を前記許容状態から前記遮断状態に切り替える、巻線切替装置。
【請求項2】
複数のスイッチング素子を含み、前記電源部からの電力を変換して前記多相モータに供給する変換部を更に備え、
前記変換部は、前記電源部の正極電圧が印加された高電位側電力路に接続する高電位側スイッチング素子と、前記電源部の負極電圧が印加された低電位側電力路に接続する低電位側スイッチング素子と、が接続して構成されたスイッチ対を複数有し、
各前記スイッチ対は、各前記コイルに対応しており、前記高電位側スイッチング素子と前記低電位側スイッチング素子との接続点から各前記コイルに電力を供給し、
前記制御部は、前記切替部を前記遮断状態に切り替えるとともに、前記高電位側スイッチング素子及び前記低電位側スイッチング素子のいずれか一方をオン状態にし、且ついずれか他方をオフ状態にする、請求項1に記載の巻線切替装置。
【請求項3】
前記切替部が前記遮断状態に切り替わるよりも先に前記高電位側スイッチング素子及び前記低電位側スイッチング素子のいずれか一方がオン状態になり、且ついずれか他方がオフ状態になる、請求項2に記載の巻線切替装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電源部の出力電圧が前記電圧閾値以下となり、前記多相モータの回転数が前記回転閾値よりも小さく、且つ弱め界磁領域における判定回転数以下の場合、複数の前記スイッチング素子の全てをオフ状態に制御し、
前記電源部の出力電圧が前記電圧閾値以下となり、前記多相モータの回転数が前記判定回転数よりも大きい場合、前記高電位側スイッチング素子及び前記低電位側スイッチング素子のいずれか一方をオン状態にし、且ついずれか他方をオフ状態にして、前記切替部を前記遮断状態に切り替える、請求項2又は請求項3に記載の巻線切替装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記判定回転数以下であるか否かに関わらず、前記電源部の出力電圧が前記電圧閾値以下となり、前記電源部の出力電圧が遮断された電圧遮断状態である場合、前記高電位側スイッチング素子及び前記低電位側スイッチング素子のいずれか一方をオン状態にし、且ついずれか他方をオフ状態にして、前記切替部を前記遮断状態に切り替える、請求項4に記載の巻線切替装置。
【請求項6】
前記回転閾値は、弱め界磁領域における前記多相モータの最高回転数である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の巻線切替装置。
【請求項7】
前記制御部は、複数の前記コイル部の接続状態に応じて、前記回転閾値、及び前記電圧閾値を設定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の巻線切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻線切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インバータを介して回転電機を制御するインバータ制御装置について開示されている。インバータにはコンタクタを介して高圧バッテリから電力が供給される構成である。このインバータ制御装置は、コンタクタがオフに切り替わり高圧バッテリからの電力が供給されなくなると、フェールセーフ制御として、インバータの一部のスイッチング素子をオン状態にし、他部のスイッチング素子をオフ状態にするアクティブショートサーキット制御を行う。以下、アクティブショートサーキット制御を単にASC制御ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/076429号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータが高速回転している場合にASC制御を行うと、回転電機とインバータとの間で電流が流れることになり、ロータの回転による回生トルクが発生したり、モータのコイルエンドが焼き付いたりするおそれがある。
【0005】
本開示は、多相モータのロータが高速回転している場合において多相モータのフェールセーフを良好に行い得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の巻線切替装置は、
複数相のコイルを有し、各前記コイルが複数のコイル部を含む多相モータに用いられる巻線切替装置であって、
各前記コイルにおける複数の前記コイル部の接続状態を切り替える切替部と、
前記切替部を制御する制御部と、
を備え、
前記切替部は、電源部から前記多相モータへの電力の供給を許容する許容状態と、前記電源部から前記多相モータへの電力の供給を遮断する遮断状態と、に切り替わる構成であり、
前記多相モータの回転数が回転閾値よりも大きい場合、又は前記電源部の出力電圧が電圧閾値以下となる場合、前記制御部は、前記切替部を前記許容状態から前記遮断状態に切り替える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、多相モータのロータが高速回転している場合においても多相モータのフェールセーフを良好に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1の切替制御装置を含む車載システムを概略的に示す回路図である。
図2図2は、モータの構成を示す回路図であって、切替部の第1リレースイッチがオン状態であり、第2リレースイッチがオフ状態に維持された状態を示す。
図3図3は、モータの構成を示す回路図であって、切替部の第1リレースイッチがオフ状態であり、第2リレースイッチがオン状態に維持された状態を示す。
図4図4は、モータの構成を示す回路図であって、切替部の第1リレースイッチ、及び第2リレースイッチがオフ状態に維持された状態を示す。
図5図5は、高回転特性、及び高トルク特性の各々におけるトルクと回転数との関係を概略的に示すグラフである。
図6図6は、バッテリの電圧に基づいて制御部が切替部及び変換部を制御するフローチャートである。
図7図7は、ロータの回転数に基づいて制御部が切替部及び変換部を制御するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
本開示の巻線切替装置は、
〔1〕複数相のコイルを有し、各コイルが複数のコイル部を含む多相モータに用いられる。本開示の巻線切替装置は、各コイルにおける複数のコイル部の接続状態を切り替える切替部と、切替部を制御する制御部と、を備えている。切替部は、電源部から多相モータへの電力の供給を許容する許容状態と、電源部から多相モータへの電力の供給を遮断する遮断状態と、に切り替わる構成である。多相モータの回転数が回転閾値よりも大きい場合、又は電源部の出力電圧が電圧閾値以下となる場合、制御部は、切替部を許容状態から遮断状態に切り替える。
【0011】
上記〔1〕によれば、モータの回転数が想定し得る範囲を超えるような場合や、電源部の出力電圧が想定し得る範囲を下回るような場合に生じ得るモータにおける逆起電力の発生によるモータのコイルエンドの焼き付き等を防ぐことができる。
【0012】
〔2〕上記〔1〕において、複数のスイッチング素子を含み、電源部からの電力を変換して多相モータに供給する変換部を更に備え得る。変換部は、電源部の正極電圧が印加された高電位側電力路に接続する高電位側スイッチング素子と、電源部の負極電圧が印加された低電位側電力路に接続する低電位側スイッチング素子と、が接続して構成されたスイッチ対を複数有し得る。各スイッチ対は、各コイルに対応しており、高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子との接続点から各コイルに電力を供給し得る。制御部は、切替部を遮断状態に切り替えるとともに、高電位側スイッチング素子及び低電位側スイッチング素子のいずれか一方をオン状態にし、且ついずれか他方をオフ状態にし得る。
【0013】
上記〔2〕によれば、高電位側電力路と低電位側電力路とを短絡させることなく、多相モータと変換部とで閉ループを構成し、多相モータで生じた電流を閉ループ内に留めつつ、切替部を遮断することによって、閉ループにおける電流の流れを遮断することができる。
【0014】
〔3〕上記〔2〕において、切替部が遮断状態に切り替わるよりも先に高電位側スイッチング素子及び低電位側スイッチング素子のいずれか一方がオン状態になり、且ついずれか他方がオフ状態になり得る。
【0015】
上記〔3〕によれば、多相モータと変換部とで閉ループを早期に構成することによって、多相モータで生じた逆起電力が電源部側に影響を及ぼすことを防止することができる。そして、切替部が遮断状態に切り替わることによって、多相モータで生じた逆起電力が変換部の各スイッチング素子に影響を及ぼすことを防止できる。
【0016】
〔4〕上記〔2〕又は〔3〕において、制御部は、電源部の出力電圧が電圧閾値以下となり、多相モータの回転数が回転閾値よりも小さく、且つ弱め界磁領域における判定回転数以下の場合、複数のスイッチング素子の全てをオフ状態に制御し得る。制御部は、電源部の出力電圧が電圧閾値以下となり、多相モータの回転数が判定回転数よりも大きい場合、高電位側スイッチング素子及び低電位側スイッチング素子のいずれか一方をオン状態にし、且ついずれか他方をオフ状態にして、切替部を前記遮断状態に切り替え得る。
【0017】
上記〔4〕によれば、多相モータの回転数に応じてスイッチング素子の制御を異ならせることによって、多相モータや変換部のフェールセーフを緻密に行うことができる。
【0018】
〔5〕上記〔4〕において、制御部は、判定回転数以下であるか否かに関わらず、電源部の出力電圧が電圧閾値以下となり、電源部の出力電圧が遮断された電圧遮断状態である場合、高電位側スイッチング素子及び低電位側スイッチング素子のいずれか一方をオン状態にし、且ついずれか他方をオフ状態にして、切替部を遮断状態に切り替え得る。
【0019】
上記〔5〕によれば、電源部の出力電圧が電圧遮断状態となり、電源部から多相モータに十分な電力を供給できなくなり、多相モータで生じる逆起電力に対抗できない事態に陥る懸念が生じても多相モータや変換部のフェールセーフを確実に行うことができる。
【0020】
〔6〕上記〔1〕から〔3〕のいずれかにおいて、回転閾値は、弱め界磁領域における多相モータの最高回転数であり得る。
【0021】
上記〔6〕によれば、多相モータにおいて過剰な逆起電力が生じた場合、多相モータや変換部等に逆起電力の影響が及ぶことを抑えることができる。
【0022】
〔7〕上記〔1〕から〔3〕のいずれかにおいて、制御部は、複数のコイル部の接続状態に応じて、回転閾値、及び電圧閾値を設定し得る。
【0023】
上記〔7〕によれば、コイル部の接続状態が変化することによって多相モータの特性が変化する。このため、コイル部の接続状態に応じて、回転閾値、及び電圧閾値を設定することによって多相モータの特性に緻密に対応するように切替部を遮断状態に切り替え得る。
【0024】
<実施形態1>
図1に示すように、実施形態1の巻線切替装置10は、車載システム1に設けられた多相交流電源を利用する多相モータであるモータ100に用いられる。車載システム1は、電源部であるバッテリ91から変換部12を介してモータ100に電力を供給するシステムである。モータ100は、例えば、図示しない車両の車輪に対して回転力を与える。巻線切替装置10は、切替部11、変換部12、及び制御部13を備えている。
【0025】
[モータの構成]
モータ100は、図示しないステータに巻き付けられた複数相のコイル32A,32B,32Cを有している。コイル32A,32B,32Cは、三相のセグメントコイルとして構成されている。コイル32Aは、第1相(U相)に相当し、コイル32Bは、第2相(V相)に相当し、コイル32Cは、第3相(W相)に相当する。第1相(U相)のコイル32Aは、コイル部1U,2Uを含んでいる。第2相(V相)のコイル32Bは、コイル部1V,2Vを含んでいる。第3相(V相)のコイル32Cは、コイル部1W,2Wを含んでいる。
【0026】
コイル32A,32B,32Cは、中性点となり得る短絡部90において電気的に接続されている。コイル32A,32B,32Cは、いわゆるY結線された三相コイルである。コイル32Aと短絡部90との間、コイル32Bと短絡部90との間、及びコイル32Cと短絡部90との間には、電流検知部32D,32E,32Fが介在して設けられている。コイル32A,32B,32Cの各々において、コイル部1U,2U、コイル部1V,2V、及びコイル部1W,2Wは、電気的に直列に接続されている。モータ100には、図示しないロータがステータに収容された形態で設けられている。ロータは、モータ100に三相交流電力が供給されることによって回転する。ロータの一部は、モータ100から突出しており、車両の車輪に回転力を付与し得る構成で車輪に連結されている。
【0027】
本開示において、「電気的に接続される」とは、接続対象の両方の電位が等しくなるように互いに導通した状態(電流を流せる状態)で接続される構成であることが望ましい。ただし、この構成に限定されない。例えば、「電気的に接続される」とは、両接続対象の間に電気部品が介在しつつ両接続対象が導通し得る状態で接続された構成であってもよい。
【0028】
[切替部の構成]
切替部11は、第1切替部11Aと、第2切替部11Bと、第3切替部11Cと、を有している。第1切替部11Aは、第1相(U相)のコイル32Aを構成するコイル部1U,2Uにおいて直列接続数(接続状態)を切り替える機能を有している。第2切替部11Bは、第2相(V相)のコイル32Bを構成するコイル部1V,2Vにおいて直列接続数(接続状態)を切り替える機能を有している。第3切替部11Cは、第3相(W相)のコイル32Cを構成するコイル部1W,2Wにおいて直列接続数(接続状態)を切り替える機能を有している。ここで、直列接続数とは、直列に接続され、且つ通電可能とされたコイル部の数を意味する。
【0029】
第1切替部11Aは、第1リレースイッチ11D、及び第2リレースイッチ11Eを有している。第1リレースイッチ11D、及び第2リレースイッチ11Eは、半導体リレーとして構成されている。半導体リレーは、例えば、MOSFET、GaNFET、IGBT、バイポーラトランジスタ等によって構成され得る。第1リレースイッチ11D、及び第2リレースイッチ11Eは、後述する制御部13からのオンオフ信号C1によるオン指示又はオフ指示によってオン状態とオフ状態とに切り替えられる。第1リレースイッチ11D、及び第2リレースイッチ11Eは、制御部13からのオン指示によって、自身を介した通電を許容するオン状態となり、制御部13からのオフ指示によって、自身を介した通電を遮断するオフ状態となる。
【0030】
第2切替部11Bは、第1リレースイッチ11F、及び第2リレースイッチ11Gを有している。第1リレースイッチ11F、及び第2リレースイッチ11Gは、第1リレースイッチ11D、及び第2リレースイッチ11Eと同様の構成である。
【0031】
第3切替部11Cは、第1リレースイッチ11H、及び第2リレースイッチ11Jを有している。第1リレースイッチ11H、及び第2リレースイッチ11Jは、第1リレースイッチ11D、及び第2リレースイッチ11Eと同様の構成である。
【0032】
[変換部の構成]
変換部12は、U相、V相、W相の三相交流電力を出力する、所謂、インバータ回路として構成されている。変換部12から出力される三相交流電力は、3つの導電路(U相の導電路61、V相の導電路62、W相の導電路63)を介してモータ100に供給され、モータ100の回転駆動に用いられる。変換部12は、高電位側スイッチング素子であるスイッチング素子6A,6C,6Eと、低電位側スイッチング素子であるスイッチング素子6B,6D,6Fと、を含んでいる。スイッチング素子6A,6C,6Eは、上アーム素子として機能する。スイッチング素子6B,6D,6Fは、下アーム素子として機能する。スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの各々は、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)及び還流ダイオードD1,D2,D3,D4,D5,D6により構成されている。
【0033】
スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fがオン状態からオフ状態に切り替わる際に要する時間は、切替部11の各リレースイッチ(11D,11E,11F,11G,11H,11J)がオン状態からオフ状態に切り替わる際に要する時間よりも短い。よって、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6F、及び各リレースイッチ(11D,11E,11F,11G,11H,11J)を同じタイミングでオン状態からオフ状態に切り替えた場合、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの方が早期にオフ状態になる。
【0034】
変換部12では、例えば、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fが制御部13からのオンオフ信号C2(例えば、PWM信号)に基づいてオン動作及びオフ動作を繰り返し、バッテリ91からの出力電圧に基づいて三相交流電力を発生させる。言い換えると、変換部12は、バッテリ91からの電力を変換している。制御部13が変換部12を制御する方式は、例えば、PWM信号を用いた三相変調方式である。なお、制御部13が変換部12を制御する方式は、モータ100を駆動可能な方式であればよく、例えば、公知のV/f制御や公知のベクトル制御などの様々な方式が採用され得る。
【0035】
上アーム素子であり高電位側スイッチング素子であるスイッチング素子6Aと、下アーム素子であり低電位側スイッチング素子であるスイッチング素子6Bと、が接続してU相のスイッチ対6Gが構成される。上アーム素子であり高電位側スイッチング素子であるスイッチング素子6Cと、下アーム素子であり低電位側スイッチング素子であるスイッチング素子6Dと、が接続してV相のスイッチ対6Hが構成される。上アーム素子であり高電位側スイッチング素子であるスイッチング素子6Eと、下アーム素子であり低電位側スイッチング素子であるスイッチング素子6Fと、が接続してW相のスイッチ対6Jが構成される。
【0036】
これらスイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fは、バッテリ91の高電位側端子に電気的に接続された高電位側電力路81と、バッテリ91の負極に電気的に接続された低電位側電力路82との間に介在して設けられている。バッテリ91には、例えば、鉛バッテリや、リチウムイオンバッテリ等が用いられる。高電位側電力路81には、バッテリ91の正極電圧が印加される。低電位側電力路82には、バッテリ91の負極電圧が印加される。スイッチング素子6A,6Bは、電気的に直列に接続されている。スイッチング素子6Aの一端は、高電位側電力路81に電気的に接続され、スイッチング素子6Bの他端は、低電位側電力路82に電気的に接続されている。
【0037】
スイッチング素子6C,6Dは、電気的に直列に接続されている。スイッチング素子6Cの一端は、高電位側電力路81に電気的に接続され、スイッチング素子6Dの他端は、低電位側電力路82に電気的に接続されている。スイッチング素子6E,6Fは、電気的に直列に接続されている。スイッチング素子6Eの一端は、高電位側電力路81に電気的に接続され、スイッチング素子6Fの他端は、低電位側電力路82に電気的に接続されている。
【0038】
U相の導電路61は、スイッチング素子6A,6Bと、U相のコイル部1Uとの間の導電路である。導電路61の一端は、スイッチング素子6A,6Bの両素子間の接続点Lに電気的に接続される。導電路61の他端は、U相のコイル部1Uの一端に電気的に接続される。
【0039】
V相の導電路62は、スイッチング素子6C,6Dと、V相のコイル部1Vとの間の導電路である。導電路62の一端は、スイッチング素子6C,6Dの両素子間の接続点Lに電気的に接続される。導電路62の他端は、V相のコイル部1Vの一端に電気的に接続される。
【0040】
W相の導電路63は、スイッチング素子6E,6Fと、W相のコイル部1Wとの間の導電路である。導電路63の一端は、スイッチング素子6E,6Fの両素子間の接続点Lに電気的に接続される。導電路63の他端は、W相のコイル部1Wの一端に電気的に接続される。各スイッチ対6G,6H,6Jは、接続点L及び導電路61,62,63を介して各コイル32A,32B,32Cに電力を供給する。つまり、変換部12が有する各スイッチ対6G,6H,6Jは、各コイル32A,32B,32Cに対応している。
【0041】
[制御部の構成]
制御部13は、切替部11及び変換部12を制御する装置である。制御部13は、例えば、車載ECU等の電子制御装置であってもよく、MPU(Micro-Processing Unit)等を有する情報処理装置であってもよい。制御部13は、切替部11を構成する各リレースイッチ(11D,11E,11F,11G,11H,11J)、及び変換部12を構成する各スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fのオンオフを制御する。具体的には、制御部13は、各リレースイッチ(11D,11E,11F,11G,11H,11J)に対してオンオフ信号C1を出力し、各スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fに対してオンオフ信号C2を出力し得る。制御部13には、バッテリ91の出力電圧に対応する信号Vがバッテリ91から入力され得る構成とされている。制御部13には、ロータの回転数に対応する信号Rがモータ100から入力され得る構成とされている。
【0042】
[切替部の動作について]
図2に示すように、切替部11のうち、第1リレースイッチ11D,11F,11Hをオン状態にし、第2リレースイッチ11E,11G,11Jをオフ状態にする。すると、コイル部1U,1V,1Wを介して導電路61,62,63と短絡部90とが電気的に接続される構成となる。この場合、コイル部1U,1V,1Wに電流が流れ、コイル部2U,2V,2Wに電流が流れない。このときの各コイル32A,32B,32Cにおける直列接続数は、1である。この場合のモータ100におけるトルクと回転数との関係は、図5に示す実線の特性に沿って変化する。
【0043】
図3に示すように、切替部11のうち、第1リレースイッチ11D,11F,11Hをオフ状態にし、第2リレースイッチ11E,11G,11Jをオン状態にする。すると、電気的に直列に接続されたコイル部1U,2U、コイル部1V,2V、及びコイル部1W,2Wを介して導電路61,62,63と短絡部90とが電気的に接続される構成となる。この場合、コイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wの全てに電流が流れる。このときの各コイル32A,32B,32Cにおける直列接続数は、2である。この場合のモータ100におけるトルクと回転数との関係は、図5に示す点線の特性に沿って変化する。直列接続数が1又は2の場合、切替部11は、バッテリ91からモータ100への電力の供給を許容する許容状態になる。
【0044】
図5に示すように、実線の特性、及び点線の特性の両方において、回転数が所定の回転数Th1,Th2以下の領域では、トルクが一定の値を示す。点線の特性においては所定の回転数Th1を超えるとトルクが徐々に減少し、実線の特性においては所定の回転数Th2を超えるとトルクが徐々に減少する。点線の特性における所定の回転数Th1は、実線の特性における所定の回転数Th2よりも小さい。点線の特性において、所定の回転数Th1以上の領域は、弱め界磁領域Wr1である。弱め界磁領域Wr1における最高回転数は、Rm1である。実線の特性において、所定の回転数Th2以上の領域は、弱め界磁領域Wr2である。弱め界磁領域Wr2における最高回転数は、Rm2である。ここで、最高回転数Rm1,Rm2は、弱め界磁領域Wr1,Wr2における実質的な最高回転数も含み、実質的な最高回転数の±10%の範囲内の値も含む。所定の回転数Th2は、弱め界磁領域Wr2における判定回転数であり、所定の回転数Th1は、弱め界磁領域Wr1における判定回転数である。ここで、判定回転数とは、各弱め界磁領域Wr1,Wr2における最低回転数に基づいて予め設定された値である。各弱め界磁領域Wr1,Wr2では、モータ100で生じる逆起電力を弱めるために、各コイル32A,32B,32Cに流すべき電流を図示しないバイパス経路に流し、各コイル32A,32B,32Cに流れる電流の量を抑える制御が行われる。つまり、弱め界磁領域とは、モータ100で生じる逆起電力を弱めることによって、モータ100の回転数を高めた領域である。
【0045】
トルクが一定の値を示す領域(所定の回転数Th1,Th2以下の領域)におけるトルクの大きさは、点線の特性の方が大きい。そして、実線の特性における回転数は、点線の特性よりも広く、範囲が高回転側に延びている。つまり、点線の特性は、実線の特性に比べて大きいトルクを出力することができる特性である。そして、実線の特性は、点線の特性に比べて大きい回転数で回転することができる特性である。以下、点線の特性を高トルク特性ともいい、実線の特性を高回転特性ともいう。
【0046】
例えば、制御部13は、外部ECU等からの指令信号に応じて高トルク特性又は高回転特性のいずれかを選択した制御を行い得る。高トルク特性において切替部11は、第1リレースイッチ11D,11F,11Hがオフ状態になり、第2リレースイッチ11E,11G,11Jがオン状態になる。高回転特性において切替部11は、第1リレースイッチ11D,11F,11Hがオン状態になり、第2リレースイッチ11E,11G,11Jがオフ状態になる。
【0047】
図4に示すように、切替部11の第1リレースイッチ11D,11F,11H、及び第2リレースイッチ11E,11G,11Jをオフ状態にすると、導電路61,62,63と、短絡部90との間が電気的に遮断される。この場合、コイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wの全てに電流が流れない。言い換えると、第1リレースイッチ11D,11F,11H、及び第2リレースイッチ11E,11G,11Jをオフ状態にすることによって、切替部11は、モータ100への電力の供給を遮断する遮断状態に切り替わる。このときの各コイル32A,32B,32Cにおける直列接続数は、0である。こうして、切替部11は、許容状態と、遮断状態と、に切り替わる構成である。
【0048】
[巻線切替装置の動作について]
次に、巻線切替装置10の動作について説明する。先ず、車両に設けられた図示しないイグニッションスイッチをオフ状態からオン状態に切り替える。すると、切替部11は、バッテリ91からモータ100への電力の供給を許容する許容状態になる。例えば、制御部13は、外部ECU等からの指令信号に応じて第1リレースイッチ11D,11F,11Hをオフ状態とし、第2リレースイッチ11E,11G,11Jをオン状態にして高トルク特性を選択する。又は制御部13は、外部ECU等からの指令信号に応じて第1リレースイッチ11D,11F,11Hをオン状態とし、第2リレースイッチ11E,11G,11Jをオフ状態にして高回転特性を選択する。そして、図示しないアクセルを踏むことによってモータ100には、バッテリ91から変換部12を介して三相交流電力が供給される。これにより、モータ100のロータは、回転を開始する。以下、モータ100のロータが回転することを、単にモータ100が回転するともいう。
【0049】
モータ100が回転を開始した後、制御部13は、図6、7に示す制御を実行する。図6、7に示す制御は、制御部13において、順番に実行される。先ず、図6に示すステップS1において、制御部13は、モータ100が高回転特性に沿って制御されているか否かを判定する。例えば、制御部13は、外部ECU等からの指令信号に基づいて、高回転特性であるか高トルク特性であるかを判定し得る。
【0050】
ステップS1においてモータ100が高回転特性に沿って制御されている(ステップS1におけるYes)と制御部13が判定すると、ステップS2に移行して、バッテリ91の出力電圧を測定する。具体的には、制御部13は、信号Vに基づいてバッテリ91の出力電圧を把握する。次に、ステップS3に移行すると、制御部13は、信号Vに基づいて把握したバッテリ91の出力電圧が電圧閾値である第1電圧閾値Thfよりも低いか否かを判定する。第1電圧閾値Thfは、例えば、制御部13が有するROM等の記憶領域に記憶されている。第1電圧閾値Thfは、例えば、モータ100を高回転特性に沿って回転させるために必要な最小の電圧値の大きさに設定されている。ステップS3において、制御部13がバッテリ91の出力電圧が第1電圧閾値Thfよりも高い(ステップS3におけるNo)と判定すると、ステップS2に移行して、ステップS2を再び実行する。
【0051】
ステップS3において、バッテリ91の出力電圧が第1電圧閾値Thfよりも低い(ステップS3におけるYes)と制御部13が判定すると、ステップS4に移行する。ステップS4に移行すると、制御部13は、モータ100が高回転特性における弱め界磁領域Wr2に沿って回転しているか否かを判定する。ステップS4において、モータ100が高回転特性における弱め界磁領域Wr2に沿って回転している(ステップS4におけるYes)と制御部13が判定すると、ステップS5に移行して、ASC制御を実行する。
【0052】
例えば、ステップS4において制御部13は、ロータの回転数に対応する信号Rと、弱め界磁領域Wr2の判定回転数Th2と、を比較する。そして、信号Rが判定回転数Th2よりも大きく、且つ弱め界磁領域Wr2の最高回転数Rm2以下の場合、制御部13は、弱め界磁領域Wr2に沿ってモータ100が回転していると判定する。ASC制御では、制御部13は、上アーム素子として機能するスイッチング素子6A,6C,6E、及び下アーム素子として機能するスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態に維持し、いずれか他方をオフ状態に維持する制御を行う。
【0053】
なお、ステップS4において、弱め界磁領域Wr2に沿ってモータ100が回転しているか否かを判定することに加え、バッテリ91の失陥等によりバッテリ91の出力電圧が遮断され所定の短時間で急激に低下する電圧遮断状態であるか否かを判定する構成としてもよい。具体的には、ステップS4において制御部13は、弱め界磁領域Wr2に沿って回転しているか否か、又はバッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態であるか否かを判定する。
【0054】
バッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態であるか否かを判別する方法として、制御部13が所定周期毎に信号Vを取得して、所定周期毎に得られた最新の信号Vから1つ前に得られた信号Vを減じた差分値を得る構成が考えられる。例えば、バッテリ91の出力電圧が低下する場合の差分値は、マイナスの値となり、低下する度合いが大きい(すなわち、出力電圧が急激に低下する)ほど、0から遠ざかる。また、バッテリ91の出力電圧が上昇する場合の差分値は、プラスの値となり、上昇する度合いが大きい(すなわち、出力電圧が急激に上昇する)ほど、0から遠ざかる。また、制御部13のROM等には、電圧遮断閾値が記憶されている。例えば、電圧遮断閾値は、マイナスの値として設定されている。そして、この差分値と、電圧遮断閾値と、を比較して、差分値が電圧遮断閾値よりも小さい(差分値が電圧遮断閾値よりも負の方向に大きい)場合、バッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態であると判定する。
【0055】
そして、ステップS4において、弱め界磁領域Wr2に沿って回転している、又はバッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態である、のいずれかが成立した場合、ステップS5に移行する。電圧遮断状態の他の定義として、信号Vがグラウンド電圧、又はグラウンド電圧と見なせる大きさであること等も考えられる。また、電圧遮断状態として、差分値が電圧遮断閾値よりも小さいこと、及び信号Vがグラウンド電圧、又はグラウンド電圧と見なせる大きさであることの両方が成立した状態を定義してもよい。
【0056】
次に、ステップS6に移行すると、制御部13は、切替部11の第1リレースイッチ11D,11F,11H、及び第2リレースイッチ11E,11G,11Jを全てオフ状態に維持する制御を行う。これにより、切替部11は、許容状態から遮断状態に切り替わりモータ100への電力の供給が停止し、ステップS7に移行してモータ100の回転数が0になる(すなわち、ロータの回転が停止する)。こうして、制御部13は、バッテリ91の出力電圧が第1電圧閾値Thf以下となり、モータ100の回転数が判定回転数Th2よりも大きい場合、スイッチング素子6A,6C,6E、及びスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態に維持し、且ついずれか他方をオフ状態に維持し、切替部11を許容状態から遮断状態に切り替える制御を実行する。また、制御部13は、判定回転数Th2以下であるか否かに関わらず、バッテリ91の出力電圧が第1電圧閾値Thf以下となり、バッテリ91の出力電圧が遮断された電圧遮断状態である場合、ASC制御を実行するとともに切替部11を許容状態から遮断状態に切り替える。
【0057】
制御部13は、切替部11がステップS6において許容状態から遮断状態に切り替わるよりも先に、ステップS5においてスイッチング素子6A,6C,6E、及びスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態に維持し、いずれか他方をオフ状態に維持する。
【0058】
ステップS4において、モータ100が高回転特性における弱め界磁領域Wr2に沿って回転していない(ステップS4におけるNo)と制御部13が判定すると、ステップS8に移行する。ステップS4においてNoの場合、ロータの回転数に対応する信号Rは、判定回転数Th2以下である。なお、ステップS4において、バッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態であるか否かも判定する場合、モータ100が高回転特性における弱め界磁領域Wr2に沿って回転していない、且つバッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態でないことでステップS4におけるNoとなる。
【0059】
ステップS8に移行すると、変換部12の全てのスイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fをオフ状態に維持するシャットダウン制御を実行して、ステップS7に移行する。こうして、制御部13は、モータ100の回転数が最高回転数Rm2よりも小さく、且つ弱め界磁領域Wr2における判定回転数Th2以下の場合、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの全てをオフ状態に維持する制御を実行する。
【0060】
ステップS1においてモータ100が高回転特性に沿って制御されていない(ステップS1におけるNo)と制御部13が判定すると、ステップS9に移行して、制御部13は、信号Vに基づいてバッテリ91の出力電圧を把握する。ステップS1におけるNoは、外部ECUからの指令信号に基づいて、高トルク特性であると制御部13が判定することに相当する。
【0061】
次に、ステップS10に移行すると、制御部13は、信号Vに基づいて把握したバッテリ91の出力電圧が電圧閾値である第2電圧閾値Thsよりも低いか否かを判定する。第2電圧閾値Thsは、例えば、制御部13が有するROM等の記憶領域に記憶されている。第2電圧閾値Thsは、例えば、モータ100を高トルク特性に沿って回転させるために必要な最小の電圧値の大きさに設定されている。ステップS10において、バッテリ91の出力電圧が第2電圧閾値Thsよりも高い(ステップS10におけるNo)と制御部13が判定すると、ステップS9に移行して、ステップS9を再び実行する。
【0062】
ステップS10において、バッテリ91の出力電圧が第2電圧閾値Thsよりも低い(ステップS10におけるYes)と制御部13が判定すると、ステップS11に移行する。ステップS11に移行すると、制御部13は、モータ100が高トルク特性における弱め界磁領域Wr1に沿って回転しているか否かを判定する。ステップS11において、モータ100が高トルク特性における弱め界磁領域Wr1に沿って回転している(ステップS11におけるYes)と制御部13が判定すると、ステップS12に移行する。
【0063】
例えば、ステップS11において制御部13は、ロータの回転数に対応する信号Rと、弱め界磁領域Wr1の判定回転数Th1と、を比較する。そして、信号Rが判定回転数Th1よりも大きく、且つ弱め界磁領域Wr1の最高回転数Rm1以下の場合、制御部13は、弱め界磁領域Wr1に沿って回転していると判定する。ステップS12に移行すると制御部13は、上アーム素子として機能するスイッチング素子6A,6C,6E、及び下アーム素子として機能するスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態に維持し、いずれか他方をオフ状態に維持する。
【0064】
なお、ステップS11において、弱め界磁領域Wr1に沿って回転しているか否かを判定することに加え、バッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態であるか否かを判定する構成としてもよい。この場合、ステップS11において制御部13は、弱め界磁領域Wr1に沿って回転しているか否か、又はバッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態であるか否かを判定する。そして、ステップS11において、弱め界磁領域Wr1に沿って回転しているか、又はバッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態であるかのいずれかが成立した場合、ステップS12に移行する。
【0065】
次に、ステップS13に移行すると、制御部13は、切替部11の第1リレースイッチ11D,11F,11H、及び第2リレースイッチ11E,11G,11Jを全てオフ状態に維持する。これにより、切替部11は、許容状態から遮断状態に切り替わりモータ100への電力の供給が停止し、ステップS14に移行してモータ100の回転数が0になる(すなわち、ロータの回転が停止する)。バッテリ91の出力電圧が第2電圧閾値Ths以下となり、モータ100の回転数が判定回転数Th1よりも大きい場合、制御部13は、スイッチング素子6A,6C,6E、及びスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態に維持し、且ついずれか他方をオフ状態に維持し、切替部11を許容状態から遮断状態に切り替える制御を実行する。また、制御部13は、判定回転数Th1以下であるか否かに関わらず、バッテリ91の出力電圧が第2電圧閾値Ths以下となり、バッテリ91の出力電圧が遮断された電圧遮断状態である場合、ASC制御を実行するとともに切替部11を許容状態から遮断状態に切り替える。
【0066】
ステップS11において、モータ100が高トルク特性における弱め界磁領域Wr1に沿って回転していない(ステップS11におけるNo)と制御部13が判定すると、ステップS15に移行する。ステップS11におけるNoの場合、ロータの回転数に対応する信号Rは、判定回転数Th1以下である。なお、ステップS11においてバッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態であるか否かも判定する場合、モータ100が高回転特性における弱め界磁領域Wr1に沿って回転していない、且つバッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態でないことでステップS11におけるNoとなる。
【0067】
ステップS15に移行すると制御部13は、変換部12の全てのスイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fをオフ状態に維持するシャットダウン制御を実行して、ステップS14に移行する。こうして、制御部13は、モータ100の回転数が最高回転数Rm1よりも小さく、且つ弱め界磁領域Wr1における判定回転数Th1以下の場合、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの全てをオフ状態に維持する制御を実行する。図6のフローチャートにおいて制御部13は、コイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wの接続状態に応じて、信号Vとの比較に用いる電圧閾値を第1電圧閾値Thf又は第2電圧閾値Thsのいずれかに設定している。
【0068】
次に、制御部13が実行する図7に示す制御について説明する。先ず、図7に示すステップS20において、制御部13は、外部ECU等からの指令信号に基づいて、モータ100が高回転特性に沿って制御されているか否かを判定する。ステップS20においてモータ100が高回転特性に沿って制御されている(ステップS20におけるYes)と制御部13が判定すると、ステップS21に移行して、ロータの回転数を測定する。具体的には、制御部13は、信号Rに基づいて、モータ100の回転数を把握する。
【0069】
次に、ステップS22に移行すると、制御部13は、信号Rに基づいて把握したロータの回転数が高回転特性における最高回転数Rm2よりも大きいか否かを判定する。最高回転数Rm2は、回転閾値である。ステップS22において、信号Rに基づいて把握したロータの回転数が高回転特性における最高回転数Rm2以下であると制御部13が判定すると、ステップS21に移行して、ステップS21を再び実行する。
【0070】
ステップS22において、信号Rに基づいて把握したロータの回転数が高回転特性における最高回転数Rm2よりも大きい(ステップS22におけるYes)と制御部13が判定すると、ステップS23に移行する。ロータの回転数が高回転特性における最高回転数Rm2よりも大きい場合、ロータが外力によって回転しており大きな逆起電力が生じていることが想定される。ステップS23に移行すると制御部13は、ASC制御を実行する。ASC制御は、上アーム素子として機能するスイッチング素子6A,6C,6E、及び下アーム素子として機能するスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態に維持し、いずれか他方をオフ状態に維持する制御である。
【0071】
次に、ステップS24に移行すると、制御部13は、切替部11の第1リレースイッチ11D,11F,11H、及び第2リレースイッチ11E,11G,11Jを全てオフ状態に維持する。これにより、切替部11は、許容状態から遮断状態に切り替わりモータ100への電力の供給が停止し、ステップS25に移行してモータ100の回転数が0になる(すなわち、ロータの回転が停止する)。こうして、制御部13は、モータ100の回転数が弱め界磁領域Wr2における最高回転数Rm2(回転閾値)よりも大きい場合、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの全てをオフ状態に維持する制御を実行する。
【0072】
ステップS20においてモータ100が高回転特性に沿って制御されていない(ステップS20におけるNo)と制御部13が判定すると、ステップS26に移行する。ステップS20におけるNoは、外部ECU等からの指令信号に基づいて、高トルク特性に沿って制御されていると制御部13が判定することに相当する。ステップS26に移行すると制御部13は、信号Rに基づいて、ロータの回転数を把握する。次に、ステップS27に移行すると、制御部13は、信号Rに基づいて把握したロータの回転数が高トルク特性における最高回転数Rm1(図5参照)よりも大きいか否かを判定する。ステップS27において、制御部13が信号Rに基づいて把握したロータの回転数が高トルク特性における最高回転数Rm1よりも小さいと判定すると、ステップS26に移行して、ステップS26を再び実行する。
【0073】
ステップS27において、制御部13が信号Rに基づいて把握したロータの回転数が高トルク特性における最高回転数Rm1よりも大きい(ステップS27におけるYes)と判定すると、ステップS28に移行する。最高回転数Rm1は、回転閾値である。ステップS28に移行すると制御部13は、ASC制御を実行し、スイッチング素子6A,6C,6E、及びスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態に維持し、いずれか他方をオフ状態に維持する。
【0074】
次に、ステップS29に移行すると、制御部13は、切替部11の第1リレースイッチ11D,11F,11H、及び第2リレースイッチ11E,11G,11Jを全てオフ状態に維持する。これにより、切替部11は、許容状態から遮断状態に切り替わりモータ100への電力の供給が停止し、ステップS30に移行してモータ100の回転数が0になる(すなわち、ロータの回転が停止する)。こうして、制御部13は、モータ100の回転数が弱め界磁領域Wr1における最高回転数Rm1(回転閾値)よりも大きい場合、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの全てをオフ状態に維持する制御を実行する。図7のフローチャートにおいて制御部13は、コイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wの接続状態に応じて、信号Rとの比較に用いる回転閾値を最高回転数Rm1又は最高回転数Rm2のいずれかに設定している。
【0075】
次に、本構成の効果を例示する。
巻線切替装置10は、モータ100に用いられる。モータ100は、複数相のコイル32A,32B,32Cを有している。各コイル32A,32B,32Cは、複数のコイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wを含む。巻線切替装置10は、各コイル32A,32B,32Cにおける複数のコイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wの接続状態を切り替える切替部11と、切替部11を制御する制御部13と、を備えている。切替部11は、バッテリ91からモータ100への電力の供給を許容する許容状態と、バッテリ91からモータ100への電力の供給を遮断する遮断状態と、に切り替わる構成である。モータ100の回転数が高トルク特性における最高回転数Rm1よりも大きい又は高回転特性における最高回転数Rm2よりも大きい、又はバッテリ91の出力電圧が高回転特性における第1電圧閾値Thf又は高トルク特性における第2電圧閾値Ths以下となる場合、制御部13は、切替部11を許容状態から遮断状態に切り替える。
【0076】
この構成によれば、モータ100の回転数が想定し得る範囲を超えるような場合や、バッテリ91の出力電圧が想定し得る範囲を下回るような場合に生じ得るモータ100における逆起電力の発生によるモータ100のコイルエンドの焼き付き等を防ぐことができる。
【0077】
巻線切替装置10は、複数のスイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fを含み、バッテリ91からの電力を変換してモータ100に供給する変換部12を更に備えている。変換部12は、スイッチ対6G,6H,6Jを有している。スイッチ対6G,6H,6Jは、バッテリ91の正極電圧が印加された高電位側電力路81に接続するスイッチング素子6A,6C,6Eと、バッテリ91の負極電圧が印加された低電位側電力路82に接続するスイッチング素子6B,6D,6Fと、が接続して構成されている。各スイッチ対6G,6H,6Jは、各コイル32A,32B,32Cに対応しており、スイッチング素子6A,6C,6Eとスイッチング素子6B,6D,6Fとの接続点Lからコイル32A,32B,32Cに電力を供給する。制御部13は、切替部11を許容状態から遮断状態に切り替えるとともに、スイッチング素子6A,6C,6E及びスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態にし、且ついずれか他方をオフ状態にする。
【0078】
この構成によれば、高電位側電力路81と低電位側電力路82とを短絡させることなく、モータ100と変換部12とで閉ループを構成できる。これにより、モータ100で生じた電流を閉ループ内に留めつつ、切替部11を遮断することによって、閉ループにおける電流の流れを遮断することができる。
【0079】
巻線切替装置10において切替部11は、許容状態から遮断状態に切り替わるよりも先にスイッチング素子6A,6C,6E及びスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方がオン状態になり、且ついずれか他方がオフ状態になる。この構成によれば、モータ100と変換部12とで閉ループを早期に構成することによって、モータ100で生じた逆起電力がバッテリ91側に影響を及ぼすことを防止することができる。そして、切替部11が許容状態から遮断状態に切り替わることによって、モータ100で生じた逆起電力が変換部12の各スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fに影響を及ぼすことを防止できる。
【0080】
制御部13は、バッテリ91の出力電圧が第1電圧閾値Thf、第2電圧閾値Ths以下となり、モータ100の回転数が最高回転数Rm1又は最高回転数Rm2よりも小さく、且つ弱め界磁領域Wr1,Wr2における判定回転数Th1,Th2以下の場合、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの全てをオフ状態に制御する。制御部13は、バッテリ91の出力電圧が第1電圧閾値Thf、第2電圧閾値Ths以下となり、モータ100の回転数が弱め界磁領域Wr1,Wr2の判定回転数Th1,Th2よりも大きい場合、スイッチング素子6A,6C,6E及びスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態にし、且ついずれか他方をオフ状態にして、切替部11を許容状態から遮断状態に切り替える。この構成によれば、モータ100の回転数に応じてスイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの制御を異ならせることによって、モータ100や変換部12のフェールセーフを緻密に行うことができる。
【0081】
制御部13は、判定回転数Th1,Th2以下であるか否かに関わらず、バッテリ91の出力電圧が第1電圧閾値Thf、第2電圧閾値Ths以下となり、バッテリ91の出力電圧が遮断された電圧遮断状態である場合、スイッチング素子6A,6C,6E及びスイッチング素子6B,6D,6Fのいずれか一方をオン状態にし、且ついずれか他方をオフ状態にして、切替部11を許容状態から遮断状態に切り替える。このため、バッテリ91の出力電圧が電圧遮断状態となり、バッテリ91からモータ100に十分な電力を供給できなくなり、モータ100で生じる逆起電力に対抗できない事態に陥る懸念が生じてもモータ100や変換部12のフェールセーフを確実に行い得る。
【0082】
高トルク特性における最高回転数Rm1(回転閾値)及び高回転特性における最高回転数Rm2(回転閾値)は、弱め界磁領域Wr1,Wr2におけるモータ100の最高回転数である。この構成によれば、モータ100において過剰な逆起電力が生じた場合、モータ100や変換部12等に逆起電力の影響が及ぶことを抑えることができる。
【0083】
制御部13は、複数のコイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wの接続状態に応じて、高トルク特性における最高回転数Rm1及び高回転特性における最高回転数Rm2(回転閾値)のいずれかに設定する。そして、制御部13は、高回転特性における第1電圧閾値Thf及び高トルク特性における第2電圧閾値Ths(電圧閾値)のいずれかに設定する。このため、コイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wの接続状態が変化することによってモータ100の特性が変化する。よって、コイル部1U,2U,1V,2V,1W,2Wの接続状態に応じて、回転閾値、及び電圧閾値を設定することによって、モータ100の特性に緻密に対応するように切替部11を許容状態から遮断状態に切り替え得る。
【0084】
<他の実施形態>
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0085】
実施形態1とは異なり、各コイルにおけるコイル部の数は、3つ以上でもよい。また、各コイルの巻き数は、互いに異なっていてもよい。
【0086】
実施形態1とは異なり、ASC制御、及び切替部を許容状態から遮断状態に切り替える制御の順番を入れ替えてもよい。また、切替部を許容状態から遮断状態に切り替えるとともに、ASC制御を行う構成としてもよい。
【0087】
切替部のリレースイッチの切り替え速度が変換部のスイッチング素子の切り替え速度と同等であれば、ASC制御を実行せず、切替部のリレースイッチ及び変換部のスイッチング素子をオフ状態にしてもよい。
【0088】
実施形態1とは異なり、図6のフローチャート、又は図7のフローチャートのいずれかのみを実行する構成としてもよい。
【0089】
実施形態1とは異なり、シャットダウン制御を実行した後に切替部のリレースイッチを全てオフ状態にしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1U,1V,1W,2U,2V,2W…コイル部
6A,6C,6E…スイッチング素子(高電位側スイッチング素子)
6B,6D,6F…スイッチング素子(低電位側スイッチング素子)
6G,6H,6J…スイッチ対
10…巻線切替装置
11…切替部
11A…第1切替部
11B…第2切替部
11C…第3切替部
11D,11F,11H…第1リレースイッチ
11E,11G,11J…第2リレースイッチ
12…変換部
13…制御部
32A,32B,32C…コイル
32D,32E,32F…電流検知部
61,62,63…導電路
81…高電位側電力路
82…低電位側電力路
90…短絡部
91…バッテリ(電源部)
100…モータ(多相モータ)
C1,C2…オンオフ信号
D1,D2,D3,D4,D5,D6…還流ダイオード
L…接続点
R…信号
Rm1…高トルク特性における最高回転数(回転閾値)
Rm2…高回転特性における最高回転数(回転閾値)
Th1…高トルク特性における所定の回転数(弱め界磁領域における判定回転数)
Th2…高回転特性における所定の回転数(弱め界磁領域における判定回転数)
Thf…高回転特性における第1電圧閾値(電圧閾値)
Ths…高トルク特性における第2電圧閾値(電圧閾値)
V…信号
Wr1…高トルク特性における弱め界磁領域
Wr2…高回転特性における弱め界磁領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7