(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085148
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】車両用空調装置のカバー構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240619BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20240619BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20240619BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B60H1/00 102R
B60H1/00 102Z
B60H1/32 614Z
B60R13/08
B62D25/08 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199523
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】320014857
【氏名又は名称】ハイリマレリジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佃 隆治
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴士
【テーマコード(参考)】
3D023
3D203
3L211
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BA03
3D023BB21
3D023BB29
3D023BC01
3D023BD12
3D023BD27
3D023BE04
3D023BE06
3D203AA02
3D203BB35
3D203CB24
3D203DA18
3L211BA14
3L211DA91
3L211DA96
3L211DA99
(57)【要約】
【課題】車室の内外を隔てる隔壁に形成された車両用空調装置用の開口部から車室内への車室外騒音の侵入を、単一の材質からなる樹脂製のカバーで当該開口部を覆う場合と比べて、抑制する。
【解決手段】乗員が乗車する車室16の内外を隔てるとともに、車室16の内外に渡って設けられた車両用空調装置20が配置された開口部30を有した、隔壁18と、車室の外に設けられた車両用空調装置20の少なくとも一部と開口部30とを覆うカバー部材22と、を備える車両用空調装置20のカバー構造10は、カバー部材22の内側に設けられ、音を減衰する減衰部材を備え、減衰部材は、互いに接触して組み合た状態で減衰部材を形成する複数の構成部材150、200、320、500で構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が乗車する車室の内外を隔てるとともに、前記車室の内外に渡って設けられた車両用空調装置が配置された開口部を有した、隔壁と、
前記車室の外に設けられた前記車両用空調装置の少なくとも一部と前記開口部とを覆うカバー部材と、
を備える車両用空調装置のカバー構造であって、
前記カバー部材の内側に設けられ、音を減衰する減衰部材を備え、
前記減衰部材は、互いに接触して組み合た状態で前記減衰部材を形成する複数の構成部材で構成される、
車両用空調装置のカバー構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置のカバー構造であって、
前記構成部材は、隣り合う他の前記構成部材と接する縁部が直線状に形成される、
車両用空調装置のカバー構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置のカバー構造であって、
前記組み合た状態において隣り合う一方の前記構成部材と他方の前記構成部材とは、互いに端部が重なり合う、
車両用空調装置のカバー構造。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用空調装置のカバー構造であって、
前記カバー部材は、前記車両用空調装置の少なくとも一部と前記開口部とを覆った状態で上方が開口した収容空間を形成するカバー本体と、前記カバー本体の上部の開口を閉鎖する蓋部とを有し、
前記上部の開口の一部を包囲する前記カバー本体の端部には、前記構成部材の端部を前記カバー本体の側壁面に沿うように支持する支持部材が設けられている、
車両用空調装置のカバー構造。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用空調装置のカバー構造であって、
前記車室の外に配置される前記車両用空調装置の一部は送風機のモータであって、
前記カバー部材に設けられる前記減衰部材は、前記モータの近くに配置される部位の厚みが他の部分よりも厚い、
車両用空調装置のカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置のカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内空間を拡げるために車両用空調装置の一部をエンジンルーム内に配置し、当該構成部品をカバー部材で覆う車両用空調装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両用空調装置にあっては、車室内の空気を取り込む又は車室内へ空調された空気を供給するため、車両用空調装置の一部を車室内に配置する必要がある。このため、エンジンルームと車室内との間に配置されるファイアーウォール又はダッシュロア等の隔壁に所定の大きさ開口部を形成する必要がある。
【0005】
一方、車室の外には、駆動源室を構成するエンジンルーム等が設けられる。このエンジンルームには、エンジン、トランスミッション、モータ、インバータ、あるいはDCコンバータ等のノイズ発生源がある。この例のような、車室の外の車両の各種部品が発生するノイズ、およびロードノイズ等のような車両の外から車両の内に伝わるノイズからなる車室外騒音は、隔壁に形成された開口部を通じて車室内へ侵入するおそれがある。
【0006】
本発明は、車室の内外を隔てる隔壁に形成された車両用空調装置用の開口部から車室内への車室外騒音の侵入を、単一の材質からなる樹脂製のカバーで当該開口部を覆う場合と比べて、抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様によれば、乗員が乗車する車室の内外を隔てるとともに、前記車室の内外に渡って設けられた車両用空調装置が配置された開口部を有した、隔壁と、前記車室の外に設けられた前記車両用空調装置の少なくとも一部と前記開口部とを覆うカバー部材と、を備える車両用空調装置のカバー構造は、前記カバー部材の内側に設けられ、音を減衰する減衰部材を備え、前記減衰部材は、互いに接触して組み合た状態で前記減衰部材を形成する複数の構成部材で構成される。
【発明の効果】
【0008】
上記態様では、車室の外に設けられた車両用空調装置の少なくとも一部と開口部とを覆うカバー部材の内側には、音を減衰する減衰部材が設けられ、減衰部材は、互いに接触して組み合た状態で減衰部材を形成する複数の構成部材で構成される。そのため、カバー部材の内側が、曲面や高低面などを備えた面形状に形成された場合であっても、カバー部材の内側の面形状に応じて、複数の構成部材を対応する箇所で互いに接触して配置することが可能となる。
【0009】
したがって、車室の内外を隔てる隔壁に形成された車両用空調装置用の開口部から車室内への車室外騒音の侵入を、単一の材質からなる樹脂製のカバーで当該開口部を覆う場合と比べて、抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るカバー構造が適用される車両の要部の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、カバー部材の蓋部を示す底面図である。
【
図4】
図4は、カバー部材のカバー本体を示す背面図である。
【
図6】
図6は、カバー本体の左側壁面を内側から見た状態を示す説明図である。
【
図7】
図7は、左側壁構成部材の上端部を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、カバー部材に配管が挿通された部位を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る車両用空調装置20(以下、単に「空調装置20」と称するときがある。)のカバー構造10(以下、単に「カバー構造10」と称する。)が適用される車両12について説明する。
【0012】
まず、
図1を参照して、車両12の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るカバー構造10が適用される車両12の要部の分解斜視図である。
図1において、X軸は、車両長さ方向(前後方向)であり、Y軸は、車幅方向(左右方向)であり、Z軸は、車両高さ方向(上下方向)である。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。
【0013】
図1に示すように、車両12は、駆動源室としてのエンジンルーム14(電気自動車の場合にはモータルーム)と、車室16と、隔壁18と、車両用空調装置20(以下、単に「空調装置20」と称する。)と、カバー部材22と、を有する。
【0014】
エンジンルーム14は、車両12の前部に設けられる。エンジンルーム14には、車両12の駆動輪(図示省略)を駆動するための駆動源としてのエンジン(図示省略)や電動モータ(図示省略)などが収容される。
【0015】
車室16は、エンジンルーム14の車両後方に設けられる。即ち、エンジンルーム14と車室16とは、車両12の前後方向に並ぶように設けられる。車室16には、乗員が乗車する。
【0016】
隔壁18は、エンジンルーム14と車室16とを隔てる。すなわち、隔壁18は、車室16の内外を隔てる。隔壁18は、エンジンルーム14内の騒音や車両12の外部の騒音が車室16内に侵入することを防止する。隔壁18には、開口部30が設けられる。
【0017】
空調装置20は、HVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット40と、冷凍サイクル回路(図示省略)とを有する。
【0018】
HVACユニット40は、空調に用いられる空気が通過するものである。HVACユニット40は、ケース42と、空調装置本体44と、内外気切替装置46と、モータとしてのブロワモータBMを備えた送風機48と、を有する。
【0019】
一般的な空調装置では、HVACユニット40は、すべての構成部品が車室16内の前部(隔壁18の後部)に配置されており、インストルメントパネル(図示省略)によって上から覆われることで、車室16内の乗員から見えないように隠されている。
【0020】
これに対して、本発明の実施形態に係る空調装置20では、HVACユニット40は、エンジンルーム14と車室16とに分割して配置され、隔壁18の開口部30を通じて連結されている。
【0021】
具体的に説明すると、この空調装置20は、送風機48と冷凍サイクル回路の蒸発器や、暖房用の加熱機器等(図示省略)とがエンジンルーム14内に設けられ、内外気切替装置46などの他の構成部品が車室16内に設けられている。
【0022】
これにより、車室16内に配置された空調装置20は、その一部が隔壁18の開口部30を介してエンジンルーム14へ突出しており、当該空調装置20は、構成部品の一部をエンジンルーム14内に配置することで、車室16内の空間を広くしている。
【0023】
ケース42は、送風機48と、蒸発器等(図示省略)と、を収容する。ケース42は、空調に用いられる空気が通過する内部空間を画成する。
【0024】
エンジンルーム14に配置される送風機48は、ブロワモータBMによって回転駆動される。送風機48は、車室16内の空気と外気とをHVACユニット40内に取り込む。
【0025】
空調装置本体44は、前側部分44aと、後側部分44bと、を有する。前側部分44aは、エンジンルーム14内に配置される。前側部分44aには、蒸発器(図示省略)が収容される。後側部分44bは、車室16内に収容される。後側部分44bには、車室16内のどこの吹出口から空気を吹き出すかを切り換える吹出口切替装置(図示省略)が設けられる。
【0026】
内外気切替装置46は、内気取込口46aと、外気取込口46bと、フィルタ46cと、を有する。内気取込口46aからは、車室16内の空気が取り込まれる。外気取込口46bからは、車両12の外の空気(外気)が取り込まれる。内外気切替装置46は、内気取込口46aと外気取込口46bとのどちらから空気を取り込むかを切り換える。
【0027】
フィルタ46cは、内外気切替装置46内に着脱可能に取り付けられている。フィルタ46cは、送風機48がHVACユニット40内に取り込んだ空気から微物を除去し、空気を浄化するものである。
【0028】
この空調装置20で行われる熱交換について簡単に説明する。
【0029】
前述した冷凍サイクル回路(図示省略)は、圧縮機(図示省略)と、凝縮器(図示省略)と、膨張弁(図示省略)と、蒸発器(図示省略)と、加熱器(図示省略)等を有する。冷凍サイクル回路では、圧縮機にて気相冷媒を圧縮して高温高圧にし、凝縮器にて外気との熱交換によって冷媒を凝縮して液化させ、膨張弁にて液相冷媒を減圧膨張させ、蒸発器にて空調に用いられる空気との熱交換によって冷媒を蒸発させる。
【0030】
蒸発器(図示省略)は、HVACユニット40内に設けられ、車室16内に供給される空気を冷媒との熱交換によって冷却及び除湿する。
【0031】
(カバー部材)
カバー部材22は、エンジンルーム14内に設けられて隔壁18に取り付けられる。カバー部材22は、車室16よりも車両前方から車両後方に向かって取り付けられる。
【0032】
カバー部材22には、減衰部材の一例である防音部材70(
図3及び
図4参照)が内面に沿って設けられる。防音部材70は、音を遮断する遮断機能と、音を吸収する吸音機能との少なくとも一方を有する。ここでは、防音部材70は、遮断機能と吸音機能とを共に有し音を減衰する。防音部材70は、例えば、発泡ウレタン、発泡ゴムなどで構成される。また、防音部材70は、内部に空気層を有する構成であってもよい。また、表面が凹凸に形成される構成であってもよい。防音部材70は、車室外騒音の侵入を抑制したい程度、および他に求められる仕様を考慮して、上記で例示した材質、構造、形状、およびその他を、適宜選択して構成される。減衰部材の他の例としは、振動を抑える制振部材をカバー部材22の内面に沿って設けてもよい。この際、振動を抑える制振機能に加えて、上述した遮断機能や吸音機能の少なくとも一方を持たせてもよい。
【0033】
防音部材70は、複数に分割された複数の構成部材72、150、200、320、500(
図3及び
図4参照)で構成される。各構成部材150、200、320、500を互いに接触して組み合わせた組合状態600において、カバー部材22のカバー本体50の内面に沿って設けられた防音部材70が各構成部材150、200、320、500によって形成される。また、カバー部材22の蓋部52の内面に沿って設けられた防音部材70が構成部材72によって形成される。
【0034】
カバー部材22は、送風機48や蒸発器(図示省略)などのエンジンルーム14内に突出した空調装置20の一部の構成部品と隔壁18の開口部30とを隠すように覆う。カバー部材22は、エンジンルーム14内の騒音や車両12の外部の騒音が開口部30を通じて車室16内に侵入することを防止する。
【0035】
カバー部材22は、上述した通り、カバー本体50と、蓋部52と、を有する。カバー本体50は、隔壁18に取り付けられた状態で隔壁18と共に上方開口状の収容空間54を形成する。蓋部52は、カバー本体50に脱着可能に取付けられ、カバー本体50の上部開口部50aを閉鎖する。隔壁18には開口部30が開口しているが、カバー部材22に蓋部52が取り付けられた状態では、隔壁18とカバー本体50と蓋部52とによって、エンジンルーム14と車室16とが完全に隔離される。尚、カバー本体50は、隔壁18に直接取り付ける形態であっても、他の部材を介在させて隔壁18に取付ける形態であっても、エンジンルーム14と車室16とが完全に隔離されれば何れの形態も可能である。
【0036】
隔壁18に取付けられたカバー本体50から蓋部52を取り外せば、カバー本体50の上部開口部50aから送風機48にアクセスできるので、送風機48のメンテナンスを容易にできる。
【0037】
次に、
図2から
図8を参照して、カバー部材22について具体的に説明する。
図2は、カバー部材22を示す斜視図である。なお、
図2には、防音部材70が除かれた状態が示されている。
図3は、カバー部材22の蓋部52を示す底面図である。
図4は、カバー部材22のカバー本体50を示す背面図である。
図5は、
図4におけるV-V断面図である。
図6は、カバー本体50の左側壁面82を内側から見た状態を示す説明図である。
図7は、左側壁構成部材200の上端部を示す斜視図である。
図8は、カバー部材22に配管が挿通された部位を示す要部の断面図である。
【0038】
(蓋部)
図2及び
図3に示すように、蓋部52は、例えば、合成樹脂の板材によって形成されている。蓋部52は、横長形状に形成されている。蓋部52は、車両前方に向かって低くなるように傾斜する傾斜部52aを有する(
図1参照)。また、蓋部52は、エンジンルーム14に配置された構造物との干渉を回避するための形状に形成されている。
【0039】
図3に示すように、蓋部52の周縁には、内面から蓋部52の厚み方向に延出する起立壁60が形成されている。起立壁60の先端からは、平坦面62が内方へ向けて延出している。起立壁60における端部には、外面から複数の舌片64が延出している。各舌片64には、貫通穴66が形成されている。
【0040】
(蓋側構成部材)
この蓋部52には、防音部材70を構成する蓋側構成部材72が設けられている。
【0041】
蓋側構成部材72は、蓋部52の内面に応じた形状を有し、蓋側構成部材72は、蓋部52の内面に密着する。
【0042】
蓋側構成部材72は、所定の厚みを有する。蓋側構成部材72は、蓋部52の起立壁60に沿って延在する壁部74を備える。壁部74は、蓋部52の起立壁60に沿って配置されるとともに、平坦面62の下部に達する。
【0043】
(カバー本体)
図2及び
図4に示すように、カバー本体50は、例えば、合成樹脂によって形成されている。カバー本体50は、横長形状の底面80と、底面80の左縁より上方へ向けて延出する左側壁面82と、を有する。カバー本体50は、底面80の右縁より上方へ向けて延出する右側壁面84と、左側壁面82及び右側壁面84を連設するとともに下縁が底面80に連設された前壁面86と、を有する。
【0044】
カバー本体50の底面80、左側壁面82、右側壁面84、及び前壁面86は、エンジンルーム14に配置された構造物との干渉を回避するための凹凸が形成されている。
【0045】
図4に示すように、カバー本体50の上縁には、外面から延出する蓋固定片88が、蓋部52の舌片64に対応する位置に設けられている。各蓋固定片88には、固定穴90が形成されている。
【0046】
これにより、カバー本体50の上部を蓋部52で覆った状態で、蓋部52における舌片64の貫通穴66及び蓋固定片88の固定穴90を挿通したボルトとナットとを締結することで、蓋部52をカバー本体50に固定できるように構成されている。
【0047】
カバー本体50の後縁には、外面から延出する本体固定片100が複数箇所に設けられている。各本体固定片100には、挿通穴102が形成されている。これにより、各本体固定片100の挿通穴102に挿通されたネジによって、カバー本体50を隔壁18に固定できるように構成されている。
【0048】
(前壁面)
図2に示すように、前壁面86には、エンジンルーム14に配置された構造物との干渉を回避するために内側に突出した第一前壁凸部110及び第二前壁凸部112が形成されている。第一前壁凸部110及び第二前壁凸部112の端面は平坦である。第二前壁凸部112は、第一前壁凸部110よりも内側に突出する。
【0049】
前壁面86の一般面114(第一前壁凸部110及び第二前壁凸部112以外の部分)と第一前壁凸部110の第一凸面110aとの間には、平坦な第一傾斜面116が形成されている。第一凸面110aと第二前壁凸部112の第二凸面112aとの間には、平坦な第二傾斜面118が形成されている。
【0050】
図3に示すように、前壁面86における上縁の中央部には、送風機48のブロワモータBMの配線を通過させる配線穴120が形成されている。前壁面86の内面は、配線穴120の開口縁部から延出する配線穴フランジ122が形成されている。
【0051】
前壁面86における配線穴120の側部には、冷媒を通流させる為の冷媒パイプが挿通される縦長穴124及び横長穴126が形成されている。前壁面86の内面には、縦長穴124の開口縁部から延出する縦長穴フランジ128が形成されている。また、前壁面86の内面には、横長穴126の開口縁部から延出する横長穴フランジ130が形成されている。
【0052】
前壁面86において左側壁面82に近い箇所に形成された第二前壁凸部112(
図2参照)には、ヒータ管が挿通するヒータ穴132が形成されている。前壁面86の内面には、ヒータ穴132の開口縁部から延出するヒータ穴フランジ134が形成されている。
【0053】
前壁面86において底面80に近い箇所に形成された第一前壁凸部110(
図2参照)には、排水管が挿通する排水穴136、138が形成されている。前壁面86の内面には、各排水穴136、138の開口縁部から延出する排水穴フランジ140、142が形成されている。
【0054】
そして、前壁面86の上縁には、内面から延出する前壁フランジ部144が形成されている。
【0055】
(前壁構成部材)
前壁面86には、防音部材70を構成する前壁構成部材150が設けられている。
【0056】
前壁構成部材150は、前壁面86の内面の凹凸に応じた形状を有し、前壁面86の内面に密着する。
【0057】
具体的に説明すると、前壁構成部材150は、前壁面86の一般面114(
図2参照)に密着する平坦な一般部162と、前壁面86の第一傾斜面116(
図2参照)に密着する平坦な第一傾斜部164と、を有する。また、前壁構成部材150は、前壁面86の第一前壁凸部110の第一凸面110a(
図2参照)に密着する平坦な第一凸部166と、前壁面86の第二傾斜面118(
図2参照)に密着する平坦な第二傾斜部168と、を有する。さらに、前壁構成部材150は、前壁面86の第二前壁凸部112の第二凸面112a(
図2参照)に密着する平坦な第二凸部169を有する。
【0058】
前壁構成部材150の上縁は、前壁フランジ部144に沿った形状を有する。前壁構成部材150の下縁は、底面80に沿った形状を有する。これにより、前壁構成部材150は、前壁フランジ部144及び底面80によって上下方向の移動が規制される。
【0059】
前壁構成部材150の左縁は、左側壁面82に沿った形状を有する。前壁構成部材150の右縁は、右側壁面84に沿った形状を有する。これにより、前壁構成部材150は、左側壁面82及び右側壁面84によって左右方向の移動が規制される。
【0060】
前壁構成部材150は、所定の厚みを有するとともに、蓋部52が取り付けられる上端部の厚み寸法が他の部分よりも肉厚になるように形成されている。
【0061】
前壁構成部材150は、配線穴120に対応する部位に配線用開口部152が形成されている。配線用開口部152の開口縁部は、前壁面86の配線穴フランジ122を包囲する。
【0062】
前壁構成部材150は、縦長穴124及び横長穴126に対応する部位に冷媒用開口部154が形成されている。冷媒用開口部154の開口縁部は、縦長穴フランジ128及び横長穴フランジ130を包囲する。
【0063】
また、前壁構成部材150は、ヒータ穴132に対応する部位にヒータ用開口部156が形成されている。ヒータ用開口部156の開口縁部は、ヒータ穴フランジ134を包囲する。
【0064】
前壁構成部材150は、各排水穴136、138に対応する部位に排水用開口部158、160が形成されている。排水用開口部158、160は、各排水穴フランジ140、142を包囲する。
【0065】
そして、前壁構成部材150は、カバー本体50を隔壁18に取り付けた状態において、空調装置20における送風機48のモータとしてのブロワモータBMの近くに配置される近接部位KBの厚み寸法が、他の部分よりも肉厚に形成されている。
【0066】
前壁構成部材150の右縁は、上縁側から直線状に延在する第一前面直線部170と、第一前面直線部170より直線状に斜め方向へ延出する第二前面直線部172と、第二前面直線部172より下方へ直線状に延出する第三前面直線部174と、を有する。
【0067】
前壁構成部材150において左側壁面82側に配置される左縁は、左側壁面82に沿った直線状に形成されている(図示省略)。前壁構成部材150において前壁フランジ部144側に配置される上縁は、前壁フランジ部144に沿った直線状に形成されている(図示省略)。
【0068】
(左側壁面)
左側壁面82の上縁には、内面から延出する左壁フランジ部190が形成されている。左壁フランジ部190は、前壁フランジ部144と連続する。左側壁面82の後縁には、内面から延出する左壁後フランジ部192が形成されている。
【0069】
左壁後フランジ部192の上端部には、矩形状の左シール材194が設けられている。左シール材194は、スポンジ状の部品であり、例えば、発泡EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)で形成されている。この左シール材194は、カバー本体50に取り付けられる蓋部52と、カバー本体50が固定される隔壁18とに密着する。
【0070】
(左側壁構成部材)
左側壁面82には、防音部材70を構成する左側壁構成部材200が設けられている。
【0071】
左側壁構成部材200は、左側壁面82の内面に応じた形状を有し、左側壁面82の内面に密着する。
【0072】
左側壁構成部材200の上縁は、左壁フランジ部190に沿った直性状に形成されている。左側壁構成部材200の下縁は、底面80に沿った直線状に形成されている。これにより、左側壁構成部材200は、左壁フランジ部190及び底面80によって上下方向の移動が規制される。
【0073】
左側壁構成部材200の前縁は、前壁構成部材150の表面に沿った形状に形成されている。左側壁構成部材200の前縁は、前壁構成部材150の表面形状に合致する直線状に形成された複数の直線部(図示省略)で構成される。
【0074】
左側壁構成部材200の後縁は、左壁後フランジ部192に沿った直線状に形成されている。これにより、左側壁構成部材200は、前壁構成部材150及び左壁後フランジ部192によって前後方向への移動が規制される。
【0075】
左側壁構成部材200は、所定の厚みを有する。左側壁構成部材200は、蓋部52が取り付けられる上端部の厚み寸法が他の部分よりも肉厚になるように形成されている。
【0076】
(右側壁面)
右側壁面84の上縁には、内面から延出する右壁フランジ部300が形成されている。右壁フランジ部300は、前壁フランジ部144と連続する。これにより、カバー本体50の上縁には、前壁フランジ部144、左壁フランジ部190、及び右壁フランジ部300が連続して形成されている。
【0077】
また、右側壁面84の後縁には、内面から延出する右壁後フランジ部302が形成されている。
【0078】
右壁後フランジ部302の上端部には、矩形状の右シール材304が設けられている。右シール材304は、スポンジ状の部品であり、例えば、発泡EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)で形成されている。この右シール材304は、カバー本体50に取り付けられる蓋部52と、カバー本体50が固定される隔壁18とに密着する。
【0079】
図2に示すように、右側壁面84の下部には、底面80へ向かうに従って緩やかに下方へ傾斜する底側傾斜面310と、底側傾斜面310から前壁面86へ向かうに従って緩やかに上方へ傾斜した前側傾斜面312と、が形成されている。
【0080】
(右側壁構成部材)
図4に示すように、この右側壁面84には、防音部材70を構成する右側壁構成部材320が設けられている。
【0081】
右側壁構成部材320は、右側壁面84の内面に応じた形状を有し、右側壁面84の内面に密着する。
【0082】
具体的に説明すると、右側壁構成部材320の下部は、右側壁面84の底側傾斜面310(
図2参照)に沿った形状に形成され、底側傾斜面310に密着する底側傾斜部322を有する。底側傾斜部322の縁部322aは、直線状に形成される。また、右側壁構成部材320の下部は、右側壁面84の前側傾斜面312(
図2参照)に沿った形状に形成され、前側傾斜面312に密着する前側傾斜部324を有する。
【0083】
右側壁構成部材320は、所定の厚みを有する。右側壁構成部材320は、蓋部52が取り付けられる上端部の厚み寸法が他の部分よりも肉厚になるように形成されている。
【0084】
このように、前壁構成部材150、左側壁構成部材200、及び右側壁構成部材320は、エンジン音が侵入し易くかつ車室16内の乗員に近い上端部が肉厚に形成されており、防音効果が高められている。
【0085】
右側壁構成部材320の上縁は、右壁フランジ部300に沿った直線状に形成されている。右側壁構成部材320の上縁は、右壁フランジ部300と重ねる。右側壁構成部材320の下部は、底側傾斜部322が底側傾斜面310(
図2参照)に密着する。
【0086】
また、右側壁構成部材320の下部は、前側傾斜部324が前側傾斜面312(
図2参照)に密着する。これにより、右側壁構成部材320は、右壁フランジ部300及び底側傾斜面310によって上下方向の移動が規制される。
【0087】
右側壁構成部材320の前縁は、上縁側から直線状に延在する第一左壁面直線部330と、第一左壁面直線部330より直線状に斜め方向へ延出する第二左壁面直線部332と、第二左壁面直線部332より直線状に下方へ延出する第三左壁面直線部334と、を有する。
【0088】
第一左壁面直線部330は、前壁構成部材150の第一前面直線部170に対応する位置に設けられ、第一左壁面直線部330は第一前面直線部170に沿って重ねられる。第二左壁面直線部332は、前壁構成部材150の第二前面直線部172に対応する位置に設けられ、第二左壁面直線部332は、第二前面直線部172に沿って重ねられる。第三左壁面直線部334は、前壁構成部材150の第三前面直線部174に対応する位置に設けられ、第三左壁面直線部334は、第三前面直線部174に沿って重ねられる。
【0089】
右側壁構成部材320の後縁は、右壁後フランジ部302に沿った直線状に形成されている。右側壁構成部材320の後縁は、右壁後フランジ部302と重なる。
【0090】
これにより、右側壁構成部材320は、前壁構成部材150の各前面直線部170、172、174及び右壁後フランジ部302によって前後方向への移動が規制される。
【0091】
(底面)
底面80には、エンジンルーム14に配置された構造物との干渉を回避するために内側に突出した第一底面凸部400及び第二底面凸部402が形成されている(
図2参照)。
【0092】
底面80の後縁には、内面から延出する底面後フランジ部404が形成されている。底面後フランジ部404は、左壁後フランジ部192及び右壁後フランジ部302と連続する。これにより、カバー本体50の後縁には、左壁後フランジ部192、底面後フランジ部404、及び右壁後フランジ部302が連続して形成されている。
【0093】
(底面構成部材)
底面80には、防音部材70を構成する底面構成部材500が設けられている。
【0094】
底面構成部材500は、凹凸を有する底面80に応じた形状を有し、底面80の内面に密着する。底面構成部材500は、所定の厚みを有する。
【0095】
底面構成部材500の左縁は、左側壁構成部材200の表面に沿った直線状に形成されている。底面構成部材500の左縁は、左側壁構成部材200と重なる。
【0096】
底面構成部材500の右縁500aは、右側壁構成部材320の底側傾斜部322の縁部322aに沿った直線状に形成されている。底面構成部材500の右縁500aは、右側壁構成部材320の底側傾斜部322の縁部322aと重なる。
【0097】
これにより、底面構成部材500は、左側壁構成部材200及び右側壁構成部材320の底側傾斜部322の縁部322aによって左右方向の移動が規制される。
【0098】
底面構成部材500の前縁は、前壁構成部材150の一般部162に対応する部位と、前壁構成部材150の第一凸部166に対応する部位と、前壁構成部材150の第二凸部169に対応する部位とを有する。
【0099】
底面構成部材500の前縁は、前壁構成部材150の一般部162に対応する第一底面直線部502が直線状に形成され、第一底面直線部502が前壁構成部材150の一般部162と重なる。底面構成部材500の前縁は、前壁構成部材150の第一傾斜部164に対応する第二底面直線部504が直線状に形成され、第二底面直線部504が前壁構成部材150の第一傾斜部164と重なる。
【0100】
底面構成部材500の前縁は、前壁構成部材150の第一凸部166に対応する第三底面直線部506が直線状に形成され、第三底面直線部506が前壁構成部材150の第一凸部166と重なる。底面構成部材500の前縁は、前壁構成部材150の第二傾斜部168に対応する第四底面直線部508が直線状に形成され、第四底面直線部508が前壁構成部材150の第二傾斜部168と重なる(図示省略)。
【0101】
底面構成部材500の前縁は、前壁構成部材150の第二凸部169に対応する第五底面直線部509が直線状に形成され、第五底面直線部509が前壁構成部材150の第二凸部169と重なる。
【0102】
底面構成部材500の後縁は、底面後フランジ部404に沿った直線状に形成されている。底面構成部材500の後縁は、底面後フランジ部404と重なる。これにより、底面構成部材500は、前壁構成部材150及び底面後フランジ部404によって前後方向の移動が規制される。
【0103】
このように、各構成部材150、200、320、500は、隣り合う他の構成部材(150、200、320、500)と接する縁部が直線状に形成されている。また、各構成部材150、200、320、500を組み合わせた組合状態600において、隣り合う一方の構成部材(150、200、320、500)と他方の構成部材(150、200、320、500)とは、互いに端部が重なり合うように構成されている。
【0104】
(ウェザーストリップ)
カバー本体50の上縁には、蓋部52の平坦面62と密着するウェザーストリップ610(
図5参照)が、前壁フランジ部144、左壁フランジ部190、及び右壁フランジ部300に渡って設けられる(図示省略)。また、カバー本体50の後縁には、隔壁18に密着されるウェザーストリップ610が、左壁後フランジ部192、底面後フランジ部404、及び右壁後フランジ部302に渡って設けられる(図示省略)。
【0105】
これにより、カバー本体50に蓋部52を取り付けた状態において、カバー本体50の内部に形成される収容空間54への音の侵入が抑制されるとともに、収容空間54の気密性及び水密性が確保される。
【0106】
図5に示すように、ウェザーストリップ610がカバー本体50の左壁フランジ部190に設けられた状態を例に挙げて具体的に説明する。なお、他の箇所も以下の説明と同様にウェザーストリップ610が設けられているものとする。
【0107】
図5に示すように、カバー本体50の左壁フランジ部190には、クリップ挿入穴620が複数箇所に設けられている。各クリップ挿入穴620には、ウェザーストリップ610に設けられたクリップ622の先端部のフック622aが挿入され係止されている。
【0108】
ウェザーストリップ610は、例えばゴム材で構成される。ウェザーストリップ610は、断面が中空の三角形状に形成されている。ウェザーストリップ610の一方の斜面には、斜面に対して略垂直の延出する延出片624が形成されている。
【0109】
ウェザーストリップ610は、固定状態において、頂部626が上方へ向けて突出する。この固定状態において、延出片624は、頂部626の突出方向へ向かうに従って斜め外側へ向けて延出する。
【0110】
図5及び
図7に示すように、左壁フランジ部190の下部に配置されるとともに肉厚に形成された左側壁構成部材200の端面200aには、クリップ622の先端部が配置される溝部628が形成されている。また、左側壁構成部材200の端面200aには、溝部628よりも左側壁面82側に、溝部628よりも高い高部630が設けられている(
図5及び
図7参照)。
【0111】
図5に示すように、この高部630は、左側壁構成部材200を左側壁面82の内面に沿って配置した状態で、クリップ622の先端と左側壁面82との間に配置される。これにより、クリップ622の先端が高部630に当接することで、左側壁面82に沿って配置された左側壁構成部材200の倒れが抑制される。
【0112】
これにより、上部開口部50aの一部を包囲するカバー本体50の端部である左側壁面82の上端部には、左側壁構成部材200の端部をカバー本体50の左側壁面82に沿うように支持する支持部材としてのクリップ622が設けられる。
【0113】
(取付け手順)
カバー本体50に防音部材70を設ける際には、先ず、防音部材70を構成する前壁構成部材150を前壁面86の内面に装着する。これにより、前壁構成部材150を前壁フランジ部144と底面80とによって上下方向の移動を規制するとともに、左側壁面82と右側壁面84とによって左右方向の移動を規制する。また、前壁構成部材150の倒れをクリップ622によって抑制する。
【0114】
そして、防音部材70を構成する左側壁構成部材200を左側壁面82の内面に装着し、左側壁構成部材200を、左壁フランジ部190と底面80とによって上下方向の移動を規制する。また、左側壁構成部材200の倒れをクリップ622によって抑制する。
【0115】
このとき、左側壁構成部材200の前縁の端面を、前壁構成部材150の表面に重ねて圧接することで、前壁構成部材150の左縁部の倒れを抑制する。
【0116】
次に、防音部材70を構成する右側壁構成部材320を右側壁面84の内面に装着し、右側壁構成部材320を、右壁フランジ部300及び底側傾斜面310によって上下方向の移動を規制する。また、右側壁構成部材320の倒れをクリップ622によって抑制する。
【0117】
このとき、右側壁構成部材320の前縁の端面を、前壁構成部材150の表面に重ねて圧接することで、前壁構成部材150の右縁部の倒れを抑制する。
【0118】
そして、防音部材70を構成する底面構成部材500を底面80の内面に装着する。
【0119】
このとき、底面構成部材500の左縁の端面を、左側壁構成部材200の表面に重ねて圧接することで、左側壁構成部材200の下端部の移動を規制する。また、底面構成部材500の右縁500aの端面を、右側壁構成部材320の表面に重ねて圧接することで、右側壁構成部材320の下端部の移動を規制する。さらに、底面構成部材500の前縁の端面を、前壁構成部材150の表面に重ねて圧接することで、前壁構成部材150の下端部の移動を規制する。
【0120】
そして、このカバー本体50を隔壁18に取り付ける際には、カバー本体50に形成された各穴120、124,126、132、136、138に、空調装置20に接続される配線、冷媒パイプ、ヒータ管、排水管等を挿通する。
【0121】
図8に示すように、前壁面86の縦長穴124に冷媒パイプ700を挿通する場合を例に挙げて説明する。
【0122】
縦長穴124に挿通する冷媒パイプ700の外周部には、シール部材702が設けられる。このシール部材702は、縦長穴124の開口縁部から延出する縦長穴フランジ128と、縦長穴フランジ128を包囲する前壁構成部材150の部位とに密着する。
【0123】
このシール部材702は、発泡PE(ポリエチレン)及び発泡EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)で形成されており、シール部材702が縦長穴フランジ128と前壁構成部材150とに密着することで、遮音性、水密性、及び気密性が確保される。
【0124】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0125】
乗員が乗車する車室16と車室16の外を隔てるとともに車室16の内外に渡って設けられた車両用空調装置20が配置された開口部30を有した隔壁18と、車室16の外に設けられた車両用空調装置20の少なくとも一部と開口部30とを覆うカバー部材22と、を備える車両用空調装置20のカバー構造10は、カバー部材22の内側に設けられ、音を減衰する減衰部材を備え、減衰部材は、互いに接触して組み合た状態で減衰部材を形成する複数の構成部材150、200、320、500で構成される。
【0126】
この構成において、車室16の外に設けられた車両用空調装置20の少なくとも一部と開口部30とを覆うカバー部材22の内側には、音を減衰する減衰部材が設けられている。この減衰部材は、複数に分割された各構成部材150、200、320、500で構成される。そのため、カバー部材22の内側が、曲面や高低面などを備えた面形状に形成された場合であっても、カバー部材の内側の面形状に応じて、複数の構成部材150、200、320、500を対応する箇所で互いに接触して配置することができる。
【0127】
したがって、車室の内外を隔てる隔壁18に形成された車両用空調装置20用の開口部30から車室16内への車室外騒音の侵入を、単一の材質からなる樹脂製のカバーで当該開口部を覆う場合と比べて、抑制する可能となる。
【0128】
これにより、例えばエンジンルーム14に配置されるエンジン、トランスミッション、又は電気自動車のモータ、インバータ、DCコンバータ等、車室の外の車両の各種部品が発生するノイズ、及びロードノイズ等のような車両の外から車両の内に伝わるノイズからなる車室外騒音が、車室16内へ侵入を、単一の材質からなる樹脂製のカバーで当該開口部を覆う場合と比べて、抑制することが可能となる。
【0129】
そして、本実施形態において、減衰部材の一例である防音部材70は、音を遮断する遮断機能と、音を吸収する吸音機能とを有する。このため、車室外騒音は、防音部材70の遮断機能によって車室16内への侵入を抑制し、かつカバー部材22内のモータ等で発生する音は、吸音機能によって吸音することで車室16内への侵入を抑制することが可能となる。
【0130】
さらに、本実施形態では、カバー部材22の内面に減衰部材の一例である防音部材70を構成する各構成部材72、150、200、320、500を隙間なく密着して配置することができる。このため、軽量化のためにカバー部材22を薄肉化した場合であっても、カバー部材22によって、車室16内へのノイズの侵入抑制効果を得ることが可能となる。
【0131】
また、各構成部材150、200、320、500は、隣り合う他の構成部材(70、150、200、320、500で)と接する縁部が直線状に形成される。
【0132】
この構成では、隣り合う構成部材(150、200、320、500)が接する縁部が複雑な曲線で形成される場合と比較して、各構成部材150、200、320、500の構造を簡素化することが可能となる。また、隣り合う構成部材(150、200、320、500)同士の組み合わせ作業が容易となる。
【0133】
また、組合状態600において隣り合う一方の構成部材(150、200、320、500)と他方の構成部材(150、200、320、500)とは、互いに端部が重なり合う。
【0134】
この構成では、隣り合う構成部材(150、200、320、500)の端部が互いに重なり合うので、隣り合う構成部材(150、200、320、500)の端部の間に隙間が生ずる場合と比較して、音漏れを抑制することが可能となる。
【0135】
また、カバー部材22は、車両用空調装置20の少なくとも一部と開口部30とを覆った状態で上方が開口した収容空間54を形成するカバー本体50と、カバー本体50の上部開口部50aを閉鎖する蓋部52とを有し、上部開口部50aの一部を包囲するカバー本体50の端部には、各構成部材150、200、320の端部をカバー本体50の側壁面(82、84、86)に沿うように支持する支持部材としてのクリップ622が設けられている。
【0136】
この構成では、カバー本体50の端部には、各構成部材150、200、320の端部をカバー本体50の側壁面(82、84、86)に沿うように支持するクリップ622が設けられている。このため、側壁面(82、84、86)に沿って配置された各構成部材150、200、320の倒れをクリップ622によって抑制することが可能となる。
【0137】
ここで、エンジンルーム14内の場合には、カバー部材22の配置の関係上、カバー部材22の上部側からの音の侵入が大きくなりがちであり、防音部材70の各構成部材150、200、320は、上部側が肉厚に形成される。
【0138】
そして、各構成部材150、200、320の端部を支持するクリップ622は、上部開口部50aの一部を包囲するカバー本体50の端部に設けられている。このため、クリップ622による支持位置を、肉厚に形成された各構成部材150、200、320の端部に設定することができる。よって、薄肉に形成された構成部材の端部をクリップ622で支持する場合と比較して、支持構造の構成が容易となる。
【0139】
また、カバー部材22は、隔壁18と共に上方開口状の収容空間54を形成するカバー本体50と、カバー本体50の上部開口部50aを閉鎖する蓋部52と、を有する。このため、蓋部52を開放して上部開口部50aを開放すれば、車両用空調装置20のメンテナンスが可能となる。
【0140】
また、車室16の外に配置される車両用空調装置20の一部は送風機48のモータであるブロワモータBMを備え、カバー部材22に設けられる防音部材70は、ブロワモータBMの近くに配置される部位(KB)の厚み寸法が他の部分よりも厚い。
【0141】
この構成において、送風機48のモータであるブロワモータBMは、作動時にノイズを発生し、発生ノイズが車室16内に侵入する恐れがある。そこで、ブロワモータBMの近くに配置される防音部材70の部位(KB)の厚み寸法を他の部分よりも厚くすることで、ブロワモータBMで発生するノイズの車室16内への侵入の低減が可能となる。
【0142】
特に、吸音機能を有する防音部材70にあっては、ブロワモータBMで発生するノイズの吸収力を高めることが可能となる。
【0143】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0144】
10 カバー構造
12 車両
14 エンジンルーム(駆動源室)
16 車室
18 隔壁
20 車両用空調装置
22 カバー部材
30 開口部
48 送風機
50 カバー本体
50a 上部開口部
52 蓋部
54 収容空間
72 蓋側構成部材
82 左側壁面
84 右側壁面
86 前壁面
150 前壁構成部材
170 第一前面直線部
172 第二前面直線部
174 第三前面直線部
200 左側壁構成部材
320 右側壁構成部材
330 第一左壁面直線部
332 第二左壁面直線部
334 第三左壁面直線部
500 底面構成部材
502 第一底面直線部
504 第二底面直線部
506 第三底面直線部
508 第四底面直線部
509 第五底面直線部
600 組合状態
622 クリップ(支持部材)
BM ブロワモータ
KB 近接部位