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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085155
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】競艇用ターンブイ
(51)【国際特許分類】
   B63B 22/00 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
B63B22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199533
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】592197669
【氏名又は名称】森 重親
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 重親
(57)【要約】
【課題】空気圧を計測することなく中空フロート部に空気を入れ過ぎることを抑制できる競艇用ターンブイを提供する。
【解決手段】競艇場における水面上の所定位置に設置され、弾性材料からなる上側の中空円錐部1及び下側の中空フロート部4が一体的に組み付けられて少なくとも中空フロート部4内に空気が密封された競艇用ターンブイAであって、中空フロート部4内に設けられ、長さ方向両端部が中空フロート部4に結合された、長尺部材8を備える。中空フロート部4は、内部に空気を入れ過ぎると、中空フロート部4の膨張により長尺部材8が長さ方向に引っ張られ、長尺部材8の長さ方向両端部に結合された2箇所のうち少なくとも1箇所に、外部から視認できるように内側に窪んだ凹部9が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
競艇場における水面上の所定位置に設置され、弾性材料からなる上側の中空円錐部及び下側の中空フロート部が一体的に組み付けられて少なくとも中空フロート部内に空気が密封された競艇用ターンブイであって、
前記中空フロート部内に設けられ、長さ方向両端部が前記中空フロート部に結合された、長尺部材を備え、
前記中空フロート部は、内部に空気を入れ過ぎると、前記中空フロート部の膨張により前記長尺部材が長さ方向に引っ張られ、前記長尺部材の長さ方向両端部に結合された2箇所のうち少なくとも1箇所に、外部から視認できるように内側に窪んだ凹部が形成される、競艇用ターンブイ。
【請求項2】
請求項1に記載の競艇用ターンブイにおいて、
前記中空円錐部及び前記中空フロート部を仕切る、仕切壁部を更に備え、
前記長尺部材の長さ方向一端部は、前記仕切壁部に結合され、
前記長尺部材の長さ方向他端部は、前記中空フロート部の底部に結合された、競艇用ターンブイ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の競艇用ターンブイにおいて、
少なくとも2つの前記長尺部材を備える、競艇用ターンブイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、競艇用ターンブイ(ターンマーク)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、競艇場のコース水面上にはレース時の折返し点を表示するための第1及び第2ターンマークと呼ばれる1対のターンブイが設置されており、この両ターンブイ間を周回するコースをボートが走行するようになっている。
【0003】
この競艇用ターンブイとしては、その上下略中央よりも上側に位置する中空円錐部と、この中空円錐部よりも下側に位置する中空フロート部(中空タイヤ部)とを一体的に組み付けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
競艇用ターンブイの中空フロート部は弾性材料によって形成されている。この中空フロート部が空気を供給されて膨張することにより、競艇用ターンブイを水面上に浮上させるための浮力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-99883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、中空フロート部を膨張させるために適切な空気圧は、外気圧と同じまたは外気圧よりも0.2気圧程度高い、1~1.2気圧程度である。このため、より高い空気圧の測定に適した市販のエアゲージでは、このように比較的低い空気圧を計測することが困難な場合が多い。すると、市販のエアゲージを利用して中空フロート部の空気圧を計測しても、中空フロート部に既に十分な空気が供給されているかどうかは判断しづらい。その結果、既に十分な空気が供給された中空フロート部にさらに空気を供給し、中空フロート部に空気を入れ過ぎることがある。空気を入れ過ぎた中空フロート部は、反発力が大きすぎてしまうので、安全性の観点から、中空フロート部の空気圧が、想定されている空気圧を越えないように、空気の入れ過ぎを抑制したい。
【0007】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアゲージで空気圧を計測しなくても、中空フロート部に空気を入れ過ぎることを抑制できる競艇用ターンブイを提供することにある。
【0008】
なお、本明細書において、「中空フロート部に空気を入れ過ぎる」とは、中空フロート部内部の空気圧が、想定されている所定の空気圧よりも高くなることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、競艇場における水面上の所定位置に設置され、弾性材料からなる上側の中空円錐部及び下側の中空フロート部が一体的に組み付けられて少なくとも中空フロート部内に空気が密封された競艇用ターンブイであって、前記中空フロート部内に設けられ、長さ方向両端部が前記中空フロート部に結合された、長尺部材を備え、前記中空フロート部は、内部に空気を入れ過ぎると、前記中空フロート部の膨張により前記長尺部材が長さ方向に引っ張られ、前記長尺部材の長さ方向両端部に結合された2箇所のうち少なくとも1箇所に、外部から視認できるように内側に窪んだ凹部が形成される。
【0010】
この構成によると、まず競艇用ターンブイの中空フロート部には空気が供給されると、弾性材料からなる中空フロート部は、この空気が密封されて膨張する。この膨張に伴い、中空フロート部内の長尺部材の両端部が結合された箇所が、長尺部材の張力により中空フロート部の内側へ引張られる。このため、所望以上に膨張した中空フロート部は、長尺部材の両端部が結合された箇所が内側に窪む。中空フロート部が部分的に内側に窪むことで、中空フロート部には凹部が形成される。
【0011】
この凹部は外部から視認できる箇所に形成されるようになっている。このため、中空フロート部に空気を入れながら凹部が形成されたことを視認することが容易である。凹部が視認された段階で中空フロート部への空気の供給を停止することにより、中空フロート部が所望以上に膨張することを抑制できる。換言すれば、中空フロート部に空気を入れ過ぎることを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空気圧を計測することなく中空フロート部に空気を入れ過ぎることを抑制できる競艇用ターンブイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る競艇用ターンブイの断面図及び正面図である。
図2】実施形態に係る競艇用ターンブイの設置状態を示す正面図である。
図3】実施形態に係る競艇用ターンブイを示す平面図である。
図4】実施形態に係る競艇用ターンブイの底面図である。
図5】中空フロート部及び中空円錐部の接合部を拡大して示す断面図である。
図6】中空フロート部の底壁部のエアバルブを拡大して示す断面図である。
図7】中空フロート部の断面図である。
図8図7における要部を拡大して示す断面図である。
図9】空気を入れ過ぎた中空フロート部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0015】
図1~4は本発明の実施形態に係る競艇用ターンブイAを示し、このターンブイAは、競艇場のコース水面上の所定位置(例えば「第1ターンマーク」もしくは「第2ターンマーク」と称される位置、又はその両方の位置)に設置されるもので、上下略中央よりも上側に位置する所定のテーパ角を有する略円錐形状(詳しくは円錐台形状)の中空円錐部1と、この中空円錐部1の下側に位置し、上下2段のフロート部2,3(タイヤ部)を有する中空フロート部4(中空タイヤ部)とが一体的に組み付けられてなり、前記中空フロート部4内に空気が密封されており、この中空フロート部4内の空気によりターンブイAが水面上に浮くようになっている。
【0016】
前記中空円錐部1及び中空フロート部4はいずれも弾性材料としてのゴムからなり、例えば図5に示すように、各々の壁部は、内部に補強布5が埋設されるようにゴム製シート材を貼り合わせてなる。また、後述する図6に示すように、中空フロート部4における上下2段のフロート部2,3間の側壁部には補強心材6が埋め込まれている。そして、図2及び図3に示すように、ターンブイAの外表面は中空円錐部1の上端(頂点)を中心とする円弧状の赤色部分及び白色部分との2色に交互に塗り分けられており、競技者が容易に認識できるようになっている。
【0017】
前記ターンブイAにおける中空円錐部1の円形状上壁部1aの中心部には1つのアイボルト10が取り付けられている。一方、図4に示すように、中空フロート部4の底面にも4つのアイボルト41,41,…が周方向に等間隔をあけて取り付けられている。
【0018】
そして、図2に示すように、前記中空フロート部4底面の4つのアイボルト41,41,…は水底面に植設したアンカBにチェーンC及び戻り止めDを介して連結されており、この連結構造によりターンブイAが水面上に浮くように係留されて設置される。
【0019】
ターンブイAは、中空円錐部1及び中空フロート部4を仕切る、仕切壁部を更に備える。具体的に、仕切り壁部は、図5に示す前記中空フロート部4の上壁部42によって構成されている。この中空フロート部4の上壁部42上面の周縁部にはリング状の係合突起44が全周に亘り連続して一体に形成されている。この係合突起44は、中空フロート部4の上壁部42の上面周縁部から上方に突出する縦部44aと、この縦部44aの上端から半径方向外側に水平に延びる横部44bと、この横部44bの先端から下方に向かう先端部44cとからなる。
【0020】
一方、中空円錐部1の側壁部1b内面の下端部には、前記係合突起44を嵌合可能な係合凹溝11が全周に亘り連続して形成されている。この係合凹溝11の奥部(半径方向外側部)は係合突起44の先端部44cに対応して下側に湾曲している。そして、この係合凹溝11に係合突起44を、係合突起44の先端部44cが係合凹溝11の奥部と側方から見てオーバーラップするように嵌合し、係合凹溝11の内面と、係合突起44において係合凹溝11に嵌合される横部44b及び先端部44cの各外面との間、係合突起44の縦部44a外側面とこれに対向する中空円錐部1の側壁部1b内面(係合凹溝11よりも下側部分)との間、中空円錐部1の側壁部1b下端面とこれに対向する中空フロート部4上面との間にそれぞれ低温熱硬化性の接着剤が介在されて、この接着剤により中空円錐部1と中空フロート部4とが一体的に接合されている。
【0021】
図4及び図6に示すように、前記中空フロート部4の下壁部43の下面中心部には、中空フロート部4に空気を供給するためのエアバルブ7が配設されている。エアバルブ7は、バルブ金具71に形成されている凹陥部分72にバルブ部材73が配設されて成っている。バルブ部材73は、虫ゴム式のバルブである。バルブ部材73は、中空フロート部4の内部空間と外部とを連通させるノズル74開口部分にゴム管75等が取り付けられている。ノズル74から中空フロート部4の内部に注入された空気は、ゴム管75がノズル74の開口部分を閉塞することにより外部へ漏れ出ないようになっている。
【0022】
図7に示すように、中空フロート部4の内部には複数(本実施形態では2つ)の長尺部材8が設けられている。長尺部材8は、布製であり、上壁部42から下壁部43に延びる帯状に形成されている。長尺部材8の長さ方向一端部(図7中で上側端部)は仕切壁部としての上壁部42の第1結合部45に結合されている。図7は、長尺部材8を、長尺部材8の幅方向に垂直な方向から見て、すなわち、長尺部材8の厚さ方向に沿って、示している。また、長尺部材8の長さ方向他端部(図7中で下側端部)は、中空フロート部4の底部としての下壁部43の第2結合部46に結合されている。このように、長尺部材8は長さ方向両端部が中空フロート部4の内部に結合されている。
【0023】
図8に示すように、長尺部材8は長さ方向両端部がそれぞれL字状に折り曲げられて、第1折曲部81及び第2折曲部82が形成されている。図8は、長尺部材8を、長尺部材8の幅方向に沿って示している。長尺部材8の長さ方向一端部の第1折曲部81は、上壁部42の第1結合部45に結合されている。また、長尺部材8の長さ方向他端部の第2折曲部82は、下壁部43の第2結合部46に結合されている。第1折曲部81の上面及び第2屈曲部82の下面は、接着剤によりそれぞれ第1結合部45及び第2結合部46に固定されている。
【0024】
中空フロート部4は、エアバルブ7から供給されることにつれて膨張する。図7~8に示すような、中空フロート部4内部に必要十分な空気が入った状態では、中空フロート部4内部の空気圧が想定されている所定の空気圧(例えば1気圧以上0.2気圧以下)となる。この時点における、長尺部材8の第1折曲部81及び第2折曲部82を除く長さは、中空フロート部4の第1結合部45から第2結合部46までの距離に等しくなる。
【0025】
図7~8の状態から、中空フロート部4内部に更に空気を入れてしまうと、中空フロート部4は更に膨張する。この膨張に伴い、中空フロート部4の上壁部42の第1結合部45及び下壁部43の第2結合部46は、図9に示すように、長尺部材8の張力によって中空フロート部4の内側に引張られる。このため、膨張した中空フロート部4は、上壁部42の第1結合部45と下壁部43の第2結合部46とが中空フロート部4の内側へ窪む。中空フロート部4の複数個所が部分的に内側に窪むことで、中空フロート部4には凹部9が形成される。
【0026】
この凹部9は外部から視認できる箇所に形成されるので、中空フロート部4に空気を入れながら凹部9が形成されたことを視認することが容易である。凹部9が視認された段階で中空フロート部4への空気の供給を停止することにより、中空フロート部4が所望以上に膨張することを抑制できる。換言すれば、中空フロート部4に空気を入れ過ぎることを抑制できる。
【0027】
長尺部材8の長さ方向他端部は、中空フロート部4の下壁部43に結合されている。このため、下壁部43の2箇所に凹部9が形成される。下壁部43に形成された凹部9は、競艇用ターンブイAを下壁部43側から見ることによって外部から視認できる。従って、中空フロート部4に空気を入れながら、競艇用ターンブイAを下壁部43側から確認するだけで、凹部9が形成されつつあること及び凹部9が形成されたことを容易に視認でき、中空フロート部4に十分な空気が入ったこと又は空気を入れ過ぎたことを容易に知ることができ。
【0028】
前記凹部9が形成された段階で中空フロート部4への空気の供給を停止することにより、中空フロート部4が所望以上に膨張することを抑制できる。換言すれば、中空フロート部4に空気を入れ過ぎることを抑制できる。
【0029】
また、本実施形態では2つの長尺部材8が設けられている。このため、中空フロート部4が必要以上に膨張すると下壁部43の2カ所に凹部9が形成される。このように、凹部9が複数形成されることにより、凹部9の目視確認が容易になる。従って、中空フロート部4に空気を入れ過ぎることを抑制できる。
【0030】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、長尺部材8が2つ設けられていたがこれに限定されない。長尺部材8は1つ又は3つ以上設けられていてもよい。
【0031】
前記実施形態では、長尺部材8の長さ方向他端部が下壁部43に結合されていることにより、凹部9が下壁部43に形成されるようになっている。しかし、凹部9が形成される箇所は下壁部43でなくても構わない。例えば、中空フロート部4の側部等の外部から視認できる箇所に凹部9が形成されればよい。さらに、これら以外の構成であっても、長尺部材8の長さ方向一端部及び長さ方向他端部のうち少なくとも一方が、中空フロート部4において外部から視認できる箇所に凹部9が形成されるような部位に結合されている構成であればよい。
【符号の説明】
【0032】
A 競艇用ターンブイ
1 空円錐部
4 中空フロート部
42 中空フロート部の上壁部(仕切壁部)
43 下壁部(底部)
7 エアバルブ
8 長尺部材
9 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9