(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085165
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199547
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】箭内 善宇
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB18
2H033BB19
2H033BB21
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】現像剤の定着率が低くなるのを抑制することができ、画像品位を向上させることができるようにする。
【解決手段】環状ベルトと、該環状ベルトの内周面と第1の面を対向させて配設され、長手方向に並べて形成された複数の発熱部を備えた加熱部材と、第1の面と反対側の第2の面側において加熱部材を支持する支持部材と、加熱部材と支持部材との間における、各発熱部間の境界部に対応する位置に設けられた中間部材とを有する。境界部に対応する位置に中間部材が設けられるので、境界部は発熱部が受ける圧力より高い圧力を受ける。境界部におけるニップ部の幅が広くなるので、現像剤の定着率が低くなるのを抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)環状ベルトと、
(b)該環状ベルトの内周面と第1の面を対向させて配設され、長手方向に並べて形成された複数の発熱部を備えた加熱部材と、
(c)前記長手方向に延在させて配設され、前記第1の面と反対側の第2の面側において前記加熱部材を支持する支持部材と、
(d)前記加熱部材と前記支持部材との間における、前記各発熱部間の境界部に対応する位置に設けられた中間部材とを有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
(a)前記加熱部材及び支持部材を前記環状ベルトによって包囲することにより形成された定着部材と、
(b)前記長手方向に延在させて、前記長手方向に対して直交する方向において前記定着部材と対向させて配設され、前記環状ベルトとの間にニップ部を形成する加圧部材とを有するとともに、
(c)前記中間部材は、前記各境界部のうちの第1の境界部に対応する位置に設けられた第1の中間部材、及び前記第1の境界部より前記定着部材の前記長手方向における端部側の第2の境界部に対応する位置に設けられた第2の中間部材を備え、
(d)前記第1の中間部材の厚みは、前記長手方向に対して直交する方向において前記第2の中間部材の厚みより大きくされる請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記長手方向における前記加圧部材の端部の外径は、前記加圧部材の中央部の外径より大きくされる請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記中間部材は、前記加熱部材の短手方向における両端まで延在させて設けられる請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
(a)前記加熱部材及び支持部材を前記環状ベルトによって包囲することにより形成された定着部材と、
(b)前記長手方向に延在させて、前記長手方向に対して直交する方向において前記定着部材と対向させて配設され、前記環状ベルトとの間にニップ部を形成する加圧部材とを有するとともに、
(c)前記中間部材は、前記加熱部材及び前記支持部材のいずれか一方と一体に形成され、前記長手方向に対して直交する方向に突出させられた突出部である請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記中間部材は、前記各発熱部間の境界部に対応する位置に配設され、前記加熱部材と対向させて形成された面、及び前記支持部材と対向させて形成された面を備える請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
(a)前記加熱部材及び支持部材を前記環状ベルトによって包囲することにより形成された定着部材と、
(b)前記長手方向に延在させて、前記長手方向に対して直交する方向において前記定着部材と対向させて配設され、前記環状ベルトとの間にニップ部を形成する加圧部材とを有するとともに、
(c)前記中間部材は、前記各発熱部間の境界部に対応する位置に配設され、前記長手方向に対して直交する方向における厚みが0.3〔mm〕以上にされる請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
前記中間部材は、前記各発熱部間の境界部に対応する位置に配設され、前記長手方向における幅は、前記長手方向において前記境界部が延在する幅より大きくされる請求項1に記載の定着装置。
【請求項9】
(a)前記中間部材は、前記各発熱部間の境界部に対応する位置に配設され、
(b)前記長手方向における前記境界部が延在する領域は、前記中間部材が延在する領域に含まれる請求項1に記載の定着装置。
【請求項10】
(a)前記加熱部材及び支持部材を前記環状ベルトによって包囲することにより形成された定着部材を有するとともに、
(b)前記中間部材は、前記各発熱部間の第1の境界部に対応する位置に設けられた第1の中間部材、及び前記第1の境界部より前記定着部材の前記長手方向における端部側の第2の境界部に対応する位置に設けられた第2の中間部材を備え、
(c)前記第1、第2の中間部材は付勢部材であり、前記第1の中間部材の付勢力が前記第2の中間部材の付勢力より大きくされる請求項1に記載の定着装置。
【請求項11】
前記長手方向に延在して設けられ、前記加熱部材の第1の面に対向させて配設された熱拡散部材を有する請求項1に記載の定着装置。
【請求項12】
前記請求項1~11に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置等の画像形成装置、例えば、プリンタにおいては、帯電ローラによって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面が露光されて静電潜像が形成され、該静電潜像に、現像ローラによって現像剤としてのトナーが付着させられて、現像剤像としてのトナー像が形成される。そして、用紙カセットから給紙され、前記感光体ドラムと転写ローラとの間に供給された用紙に前記トナー像が転写ローラによって転写される。トナー像が転写された用紙は定着装置としての定着器に送られ、該定着器において、トナー像が加熱され、加圧されることによって用紙に定着させられて画像が形成され、印刷が行われる。
【0003】
ところで、トナー像を加熱するために、複数の発熱部が長手方向に並べて形成された加熱部材としてのヒータを備えた定着器が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の定着器においては、トナーの定着率が低くなることがあり、画像品位が低下することがある。
【0006】
本発明は、前記従来の定着器の問題点を解決して、現像剤の定着率が低くなるのを抑制することができ、画像品位を向上させることができる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の定着装置においては、環状ベルトと、該環状ベルトの内周面と第1の面を対向させて配設され、長手方向に並べて形成された複数の発熱部を備えた加熱部材と、前記長手方向に延在させて配設され、前記第1の面と反対側の第2の面側において前記加熱部材を支持する支持部材と、前記加熱部材と前記支持部材との間における、前記各発熱部間の境界部に対応する位置に設けられた中間部材とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定着装置においては、環状ベルトと、該環状ベルトの内周面と第1の面を対向させて配設され、長手方向に並べて形成された複数の発熱部を備えた加熱部材と、前記長手方向に延在させて配設され、前記第1の面と反対側の第2の面側において前記加熱部材を支持する支持部材と、前記加熱部材と前記支持部材との間における、前記各発熱部間の境界部に対応する位置に設けられた中間部材とを有する。
【0009】
この場合、加熱部材と支持部材との間における、各発熱部間の境界部に対応する位置に中間部材が設けられるので、境界部は発熱部が受ける圧力より高い圧力を受ける。
【0010】
その結果、境界部におけるニップ部の幅が広くなるので、現像剤の定着率が低くなるのを抑制することができ、画像品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における加熱ユニットの要部拡大図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態における定着器の断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態における定着ベルトユニットの要部断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態におけるヒータの平面図である。
【
図6】ヒータが受ける圧力の分布を説明するための図である。
【
図7】境界部にシムが配設されている場合及び境界部にシムが配設されていない場合における定着率の分布を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態における熱量調整部材の斜視図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態における加熱ユニットの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0013】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【0014】
図において、10はプリンタ、Csは該プリンタ10の外装である筐体、Bdはプリンタ10の本体、すなわち、装置本体である。
【0015】
該装置本体Bdの下部には媒体収容部としての用紙カセット11が配設され、該用紙カセット11に、媒体としての用紙Pが積載された状態で収容される。また、前記用紙カセット11の前端に隣接させて繰出装置としてのホッピングローラ13が配設され、該ホッピングローラ13に媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1が接続される。
【0016】
該用紙搬送路Rt1に、ホッピングローラ13によって繰り出された用紙Pを搬送する第1の搬送部材としての搬送ローラ対m1が配設され、該搬送ローラ対m1より下流側に第2の搬送部材としてのレジストローラ対m2が配設され、該レジストローラ対m2より下流側に画像形成部Q1が配設される。
【0017】
該画像形成部Q1は、複数の色、本実施の形態においては、ブラック、イエロー、マゼンダ及びシアンの4色の画像形成ユニット16i(i=Bk、Y、M、C)、露光装置としてのLEDヘッド23、転写ユニットu1等から成り、各画像形成ユニット16iは、現像剤としてのトナーが収容される現像剤収容部としてのトナーカートリッジCt、導電性支持体及び光導電層から成り、回転自在に配設された像担持体としての感光体ドラム21、該感光体ドラム21に当接させて回転自在に配設された帯電装置としての帯電ローラ22、前記トナーカートリッジCtの下方の現像剤貯蔵部としてのトナー貯蔵部38において前記感光体ドラム21に当接させて回転自在に配設された現像剤担持体としての図示されない現像ローラ等を備える。
【0018】
また、前記転写ユニットu1は、第1のローラとしての駆動ローラr1、第2のローラとしての従動ローラr2、駆動ローラr1と従動ローラr2との間に走行自在に張設され、搬送される用紙Pを保持するベルト部材としての転写ベルト26、該転写ベルト26を介して前記各感光体ドラム21と対向させて回転自在に配設された転写部材としての転写ローラ28等を備える。前記転写ベルト26は、転写用の駆動源としての図示されないベルトモータが駆動され、駆動ローラr1が回転させられるのに伴って走行させられる。
【0019】
前記用紙搬送路Rt1における画像形成部Q1より下流側には、定着装置としての定着器31が配設される。該定着器31は、第1の定着部材としての定着ベルトユニット32、及び該定着ベルトユニット32と対向させて配設された加圧部材としての、かつ、第2の定着部材としての加圧ローラ33を備える。
【0020】
そして、定着器31より下流側に第3の搬送部材としての搬送ローラ対m3が配設され、該搬送ローラ対m3より下流側に第4の搬送部材としての排出ローラ対m4が配設される。
【0021】
次に、前記プリンタ10の動作について説明する。
【0022】
プリンタ10に、外部装置としての、かつ、上位装置としての図示されないホストコンピュータから印刷データ及び印刷指示が送られると、用紙Pが、前記ホッピングローラ13によって用紙搬送路Rt1に繰り出され、搬送ローラ対m1によって用紙搬送路Rt1上を搬送され、レジストローラ対m2によって斜行を矯正されて画像形成部Q1に送られる。
【0023】
該画像形成部Q1においては、帯電ローラ22によって一様に帯電させられた感光体ドラム21の表面がLEDヘッド23によって露光されて、感光体ドラム21の表面に潜像としての静電潜像が形成され、トナーカートリッジCtから供給されたトナーが現像ローラによって付着させられて静電潜像が現像されることにより、各感光体ドラム21の表面に現像剤像としての各色のトナー像が形成される。
【0024】
そして、画像形成部Q1に送られてきた用紙Pが、転写ベルト26の走行に伴って、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの感光体ドラム21と転写ローラ28との間の転写部を搬送される間に、前記各色のトナー像が転写ローラ28によって用紙Pに順次重ねて転写され、用紙P上にカラーのトナー像が形成される。
【0025】
なお、各色のトナー像が用紙Pに転写された後に感光体ドラム21上に残留したトナーは、図示されないクリーニングブレードによって掻き取られ、除去される。
【0026】
カラーのトナー像が形成された用紙Pは定着器31に送られ、該定着器31において、用紙Pが、定着ベルトユニット32の、環状ベルトとしての後述される定着ベルト36(
図3)と加圧ローラ33との間の定着部としてのニップ部Npを通過する(搬送される)間に、用紙P上のカラーのトナー像が、定着ベルトユニット32によって加熱され、溶融させられ、加圧ローラ33によって加圧されて、用紙Pに定着させられる。
【0027】
このようにして、カラーのトナー像が定着させられた用紙Pが、搬送ローラ対m3によって搬送され、排出ローラ対m4によって装置本体Bd外に排出され、筐体Csの頂壁Wtに形成されたスタッカskに積載される。
【0028】
次に、前記定着器31について説明する。
【0029】
図3は本発明の第1の実施の形態における定着器の断面図、
図4は本発明の第1の実施の形態における定着ベルトユニットの要部断面図である。
【0030】
図において、31は定着器、FRは該定着器31の外装体を構成するフレーム、32は、該フレームFR内において揺動自在に配設されたレバーLv間に架設され、該レバーLvと共に揺動自在に配設された前記定着ベルトユニット、33は、該定着ベルトユニット32の下方においてフレームFRによって回転自在に支持された前記加圧ローラである。
【0031】
前記定着ベルトユニット32は、加熱源を構成する後述される加熱ユニット35、及び環状体から成り、加熱ユニット35を包囲し、加圧ローラ33の回転に伴って走行させられる定着ベルト36を備える。
【0032】
前記加熱ユニット35は、用紙P(
図2)上のトナー像を加熱するために、用紙Pの幅方向である長手方向に延在させられ、両端がレバーLvに固定され、レバーLv間に架設されたステー41、及び該ステー41に沿って長手方向に延在させられ、ステー41に取り付けられた保持部材としてのホルダ43を備える。そして、該ホルダ43によって、いずれも、長手方向(用紙Pの幅方向)に延在させられ、帯状の形状を有する、支持部材としての熱量調整部材45、加熱部材としてのヒータ46及び熱拡散部材47が、長手方向に対して直交する方向において積層され、前記加圧ローラ33と対向させて保持される。
【0033】
定着器31において定着が行われる際、レバーLvが、第1の付勢部材としての図示されないスプリングの付勢力によって、
図3における時計回り方向に回動させられ、これにより、ステー41及びホルダ43が加圧ローラ33に向けて付勢され、定着ベルトユニット32が加圧ローラ33に押し付けられ、定着ベルト36と加圧ローラ33との間にニップ部Npが形成される。
【0034】
用紙Pは、ニップ部Npにおいて、定着ベルトユニット32及び加圧ローラ33によって挟持され、加圧ローラ33の回転に伴って搬送される。
【0035】
前記ヒータ46は、面状ヒータから成り、定着ベルト36の内周面Saと対向させて形成された第1の面S1、及び該第1の面S1と反対側の第2の面S2を備え、熱を発生させ、定着ベルト36を介して用紙P上のトナー像を加熱する。
【0036】
前記熱拡散部材47は、ヒータ46と定着ベルト36との間において、定着ベルト36の内周面Saに摺動自在に当接させて、かつ、ヒータ46の第1の面S1と対向させて配設され、ヒータ46が発生させた熱を定着ベルト36に伝達する。
【0037】
前記熱量調整部材45は、金属材料、本実施の形態においては、アルミニウムによって形成され、ホルダ43とヒータ46との間に配設され、前記第2の面S2側において前記ヒータ46を支持するとともに、ヒータ46によって発生させられ、定着ベルト36に伝達される熱の熱量を調整する。
【0038】
なお、本実施の形態においては、定着ベルト36の表面の温度を検出するために、フレームFRの所定の箇所に、定着ベルト36と対向させて、非接触式の温度検出部としてのサーモパイルTHが配設される。該サーモパイルTHは、定着ベルト36の表面から放射される赤外線を受光し、受光した赤外線の光量を温度に変換することによって定着ベルト36の表面の温度を検出する。また、サーモパイルTHによって検出された温度、すなわち、ベルト表面温度と、定着ベルト36を加熱するための目標温度との差分に基づいてヒータ46の制御が行われる。
【0039】
次に、前記ヒータ46について説明する。
【0040】
図5は本発明の第1の実施の形態におけるヒータの平面図である。
【0041】
図において、46はヒータ、55は該ヒータ46の一方の端部に配設されたコネクタ、56はヒータ46の基材、Arj(j=1、2、…、7)は、前記第2の面S2において前記基材56の長手方向に印刷又は埋込みによって並べて、かつ、互いに離間させて形成された複数の、本実施の形態においては7個の発熱部、57は、該各発熱部Arjにおいて蛇行させて配設され、通電されることによって熱を発生させる通電発熱体、58は、該各通電発熱体57の両端とコネクタ55との間に配設され、発熱部Arjに電力を供給するための導線、Bsk(k=1、2、…、6)は各発熱部Arjの離間した部分、すなわち、各発熱部Arj間に形成された、通電発熱体57のない、複数の、本実施の形態においては6個の境界部である。なお、矢印Aは用紙Pの搬送方向である。
【0042】
ところで、プリンタ10の電源がオンにされると、コネクタ55を介してヒータ46に電力が供給され、サーモパイルTHによって検出されたベルト表面温度に基づいてヒータ46のオン・オフ制御が開始され、定着器31のウォームアップが行われる。
【0043】
このとき、通電発熱体57のない各境界部Bskにおいては、十分な熱が発生させられないので、静電潜像に付着させられるトナーの割合を表す定着率が低くなりやすく、画像品位が低下してしまう。
【0044】
そこで、本実施の形態においては、ヒータ46と熱量調整部材47との間における、前記各境界部Bskに対応する位置に、圧力調整部材としての、かつ、中間部材としてのシム61(
図1)が設けられるようになっている。
【0045】
図1は本発明の第1の実施の形態における加熱ユニットの要部拡大図、
図6はヒータが受ける圧力の分布を説明するための図である。なお、
図6(a)は、ヒータ46における発熱部Arj及び境界部Bskの位置を説明するための図、
図6(b)は、ヒータ46が受ける圧力の分布を説明するための第1の図、
図6(c)は、ヒータ46が受ける圧力の分布を説明するための第2の図である。また、
図1は、
図6(c)における領域Xaを示す図である。
【0046】
図において、35は加熱ユニット、43はホルダ、45は熱量調整部材、46はヒータ、55はコネクタ、61はシム、Arjは発熱部、Bskは境界部である。
【0047】
本実施の形態において、前記シム61は、耐熱性を有する樹脂、又はアルミニウムによって形成され、前記境界部Bskに対応する位置で熱量調整部材45に貼付される。
【0048】
また、前記シム61は、ヒータ46の短手方向における両端まで延在する長さ、境界部Bskの全体を覆う、10〔mm〕程度の幅、及び0.3〔mm〕以上の厚みを有する矩形の板状体から成り、熱量調整部材45と対向させて形成された面及びヒータ46と対向させて形成された面を備える。したがって、ヒータ46の長手方向において前記境界部Bskが延在する領域は、前記シム61が延在する領域に含まれる。
【0049】
前記レバーLv(
図3)の回動に伴ってホルダ43が加圧ローラ33に向けて移動させられると、熱量調整部材45、ヒータ46及び熱拡散部材47(
図4)が定着ベルト36を介して加圧ローラ33に押し付けられる。
【0050】
前記境界部Bskにシム61が配設されていない場合、
図6(b)に示されるように、ヒータ46が一様の圧力FLを受けるのに対して、境界部Bskにシム61が配設されている場合、
図6(c)に示されるように、発熱部Arjが前記一様の圧力FLを受け、境界部Bskが前記圧力FLより高い圧力FHを受ける。
【0051】
図7は境界部にシムが配設されている場合及び境界部にシムが配設されていない場合における定着率の分布を示す図である。
【0052】
図において、L1は、境界部Bsk(
図5)にシム61(
図1)が配設されていない場合のトナーの定着率の分布を示す線、L2は、境界部Bskにシム61が配設されている場合のトナーの定着率の分布を示す線である。
【0053】
図からわかるように、境界部Bskにシム61が配設されている場合、各境界部Bskにおける平均的なトナーの定着率が改善されるとともに、ヒータ46全体の定着率のばらつきが小さくなる。
【0054】
このように、本実施の形態においては、前記ヒータ46と前記熱量調整部材45との間における、前記複数の発熱部Arj間の境界部Bskに対応する位置にシム61が設けられるので、境界部Bskは発熱部Arjが受ける圧力FLより高い圧力FHを受ける。
【0055】
したがって、境界部Bskにおけるニップ部Npの幅が広くなるので、トナーの定着率が低くなるのを抑制することができ、トナー像を安定させて用紙Pに定着させることができる。その結果、画像品位を向上させることができる。
【0056】
ところで、前記加圧ローラ33が逆クラウン形状を有し、加圧ローラ33の端部における外径が中央部における外径より大きい場合において、各境界部Bskが受ける圧力FHが等しいと、トナーの定着率が、加圧ローラ33の端部において高くなり、中央部において低くなる。この場合、トナー像を安定させて用紙Pに定着させることができない。
【0057】
そこで、前記加圧ローラ33が逆クラウン形状を有する場合においては、前記ヒータ46の各境界部Bskのうちの中央部の境界部(第1の境界部)に対応する位置に設けられたシム61を第1の中間部材とし、前記中央部の境界部より端部側の境界部(第2の境界部)に対応する位置に設けられたシム61を第2の中間部材としたとき、前記第1の中間部材の厚みは前記第2の中間部材の厚みより大きくされるのが好ましい。
【0058】
その場合、加圧ローラ33の長手方向におけるトナーの定着率を一定にすることができ、画像品位を一層向上させることができる。
【0059】
次に、前記ヒータ46における各境界部Bskに対応する位置に、圧力調整部材としての、かつ、中間部材としての後述される突出部81(
図8)が設けられるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0060】
図8は本発明の第2の実施の形態における熱量調整部材の斜視図である。
【0061】
図において、145は、アルミニウムによって形成され、媒体としての用紙P(
図2)の幅方向に延在させて配設された支持部材としての熱量調整部材であり、該熱量調整部材145は、一方の面S3を加熱部材としてのヒータ46(
図5)と対向させて配設される。
【0062】
前記熱量調整部材145には、用紙Pの幅方向における複数箇所、本実施の形態においては、ヒータ46における境界部Bskと対向する6箇所に、矩形の形状を有する突出部81がヒータ46に向けて突出させて形成される。
【0063】
前記各突出部81は、熱量調整部材145の幅と同じ長さ、境界部Bskを10〔mm〕程度覆うだけの幅、及び0.3〔mm〕以上の高さを有する。
【0064】
したがって、
図6(c)に示されるように、発熱部Arjが前記圧力FLを受けるのに対して、境界部Bskは前記圧力FLより高い圧力FHを受ける。
【0065】
このように、本実施の形態においては、境界部Bskにおいて、ニップ部Npの幅が広くなるので、現像剤としてのトナーの定着率が低くなるのを抑制することができる。その結果、現像剤像としてのトナー像を安定させて用紙Pに定着させることができ、画像品位を向上させることができる。
【0066】
また、熱量調整部材145に突出部81が一体に形成されるので、シム61(
図1)を熱量調整部材145に貼付する必要がなく、加熱ユニット35を容易に形成することができる。
【0067】
なお、本実施の形態においては、突出部81が熱量調整部材145と一体に形成されるようになっているが、突出部81を、ヒータ46と一体に熱量調整部材45に向けて突出させて形成することもできる。
【0068】
ところで、加圧部材としての、かつ、第2の定着部材としての前記加圧ローラ33が逆クラウン形状を有し、加圧ローラ33の端部における外径が中央部における外径より大きい場合において、各境界部Bskが受ける圧力FHが等しい場合、トナーの定着率が、加圧ローラ33の端部において高くなり、中央部において低くなる。この場合、トナー像を安定させて用紙Pに定着させることができない。そこで、前記加圧ローラ33が逆クラウン形状を有する場合においては、前記各境界部Bskのうちの中央部の境界部(第1の境界部)に対応する位置に形成された突出部81を第1の中間部材とし、前記中央部の境界部より端部側の境界部(第2の境界部)に対応する位置に形成された突出部81を第2の中間部材としたとき、前記第1の中間部材の厚みは前記第2の中間部材の厚みより大きくされるのが好ましい。
【0069】
その場合、加圧ローラ33の長手方向におけるトナーの定着率を一定にすることができ、画像品位を一層向上させることができる。
【0070】
なお、加圧ローラ33の撓み等により前記中央部の定着率が低下する場合には、逆クラウン形状を有しない形態においても、前記第1の中間部材の厚みを前記第2の中間部材の厚みより大きくするとよい。
【0071】
次に、前記ヒータ46における各境界部Bskに対応する位置に、付勢部材としての、圧力調整部材としての、かつ、中間部材としての後述されるスプリングSp(
図9)が設けられるようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0072】
図9は本発明の第3の実施の形態における加熱ユニットの要部拡大図である。
【0073】
図において、35は加熱ユニット、43は保持部材としてのホルダ、45は支持部材としての熱量調整部材、46は加熱部材としてのヒータ、Arj(j=1、2、3)は発熱部、Bsk(k=1、2)は境界部である。
【0074】
この場合、前記ホルダ43における各境界部Bskに対応する部分に付勢部材座部としてのスプリング座83が形成され、ヒータ46における各境界部Bskに、耐熱性を有する樹脂から成る押圧部材84が貼付され、スプリング座83と押圧部材84との間にスプリングSpが配設される。該スプリングSpは押圧部材84を介して境界部Bskを押す。これにより、境界部Bskにおいてニップ圧力が高くなる。
【0075】
したがって、ニップ部Np(
図3)の幅が広くなるので、現像剤としてのトナーの定着率が低くなるのを抑制することができ、現像剤像としてのトナー像を安定させて媒体としての用紙Pに定着させることができる。その結果、画像品位を向上させることができる。
【0076】
ところで、加圧部材としての、かつ、第2の定着部材としての前記加圧ローラ33が逆クラウン形状を有し、加圧ローラ33の端部における外径が中央部における外径より大きい場合において、各境界部Bskが受ける圧力FHが等しい場合、トナーの定着率が、加圧ローラ33の端部において高くなり、中央部において低くなる。その場合、トナー像を安定させて媒体としての用紙Pに定着させることができない。
【0077】
そこで、前記加圧ローラ33が逆クラウン形状を有する場合においては、前記各境界部Bskのうちの中央部の境界部(第1の境界部)に対応する位置に配設されたスプリングSpを第1の中間部材とし、前記中央部の境界部より端部側の境界部(第2の境界部)に対応する位置に配設されたスプリングSpを第2の中間部材としたとき、各スプリングSpのばね定数を変更することによって、前記第1の中間部材による付勢力は前記第2の中間部材による付勢力より大きくされるのが好ましい。
【0078】
その場合、加圧ローラ33の長手方向におけるトナーの定着率を一定にすることができ、画像品位を一層向上させることができる。
【0079】
前記各実施の形態においては、プリンタ10について説明したが、本発明を複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
【0080】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0081】
31 定着器
36 定着ベルト
45 熱量調整部材
46 ヒータ
61 シム
Arj 発熱部
Bsk 境界部
S1 第1の面
S2 第2の面
Sa 内周面