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特開2024-85180味の厚みと複雑さが増強された容器詰め炭酸飲料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085180
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】味の厚みと複雑さが増強された容器詰め炭酸飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20240619BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20240619BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20240619BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20240619BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23L2/02 B
C12G3/06
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199565
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】永井 真希
(72)【発明者】
【氏名】陳 ねいしん
(72)【発明者】
【氏名】熊田 紀子
【テーマコード(参考)】
4B115
4B117
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH01
4B115LH03
4B115LH11
4B115LP02
4B115MA03
4B117LC03
4B117LC14
4B117LE10
4B117LG01
4B117LG02
4B117LG05
4B117LK06
4B117LL01
4B117LL02
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】味の厚みと複雑さが増強された容器詰め炭酸飲料の提供。
【解決手段】以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たす、容器詰め炭酸飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たす、容器詰め炭酸飲料。
【請求項2】
ショ糖換算の甘味度が0重量%を超える、請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項3】
果実フレーバーおよび/または果汁を含有する、請求項1または2に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項4】
前記果実フレーバーまたは果汁が、柑橘の果実フレーバーまたは果汁である、請求項3に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項5】
アルコール濃度が1~9v/v%である、請求項1または2に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項6】
アルコール濃度が7~9v/v%である、請求項5に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項7】
容器詰め炭酸飲料を製造する方法であって、以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たすように、ボルネオールの含有量および/または酢酸テルピニルの含有量を調整することを含んでなる、方法。
【請求項8】
容器詰め炭酸飲料における味の厚みおよび複雑さを増強する方法であって、以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たすように、ボルネオールの含有量および/または酢酸テルピニルの含有量を調整することを含んでなる、方法。
【請求項9】
ショ糖換算の甘味度が0重量%を超える容器詰め炭酸飲料における後味の甘味のべたつきを低減する方法であって、以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たすように、ボルネオールの含有量および/または酢酸テルピニルの含有量を調整することを含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味の厚みと複雑さが増強された容器詰め炭酸飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器詰め炭酸飲料において、味の厚みは消費者の受容性における大きな要因の一つである。容器詰め炭酸飲料の味の厚みを増強する効果的な手段として、糖類や人工甘味料を配合することが挙げられるが、この手段には、後味に甘さが残り、べたつくという問題もある。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、炭酸飲料において、ボルネオールおよび/または酢酸テルピニルの含有量を特定の範囲に調整することにより、味の厚みおよび複雑さを増強できることを見出した。さらに、本発明者らは、炭酸飲料が甘味を有する場合には、ボルネオールおよび/または酢酸テルピニルの含有量の同範囲への調整により、後味の甘味のべたつきが低減されることも見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0004】
従って、本発明は、味の厚みと複雑さが増強された容器詰め炭酸飲料およびその製造方法を提供する。
【0005】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たす、容器詰め炭酸飲料。
(2)ショ糖換算の甘味度が0重量%を超える、前記(1)に記載の容器詰め炭酸飲料。
(3)果実フレーバーおよび/または果汁を含有する、前記(1)または(2)に記載の容器詰め炭酸飲料。
(4)前記果実フレーバーまたは果汁が、柑橘の果実フレーバーまたは果汁である、前記(3)に記載の容器詰め炭酸飲料。
(5)アルコール濃度が1~9v/v%である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の容器詰め炭酸飲料。
(6)アルコール濃度が7~9v/v%である、前記(5)に記載の容器詰め炭酸飲料。
(7)容器詰め炭酸飲料を製造する方法であって、以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たすように、ボルネオールの含有量および/または酢酸テルピニルの含有量を調整することを含んでなる、方法。
(8)容器詰め炭酸飲料における味の厚みおよび複雑さを増強する方法であって、以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たすように、ボルネオールの含有量および/または酢酸テルピニルの含有量を調整することを含んでなる、方法。
(9)ショ糖換算の甘味度が0重量%を超える容器詰め炭酸飲料における後味の甘味のべたつきを低減する方法であって、以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たすように、ボルネオールの含有量および/または酢酸テルピニルの含有量を調整することを含んでなる、方法。
【0006】
本発明によれば、味の厚みと複雑さが増強された容器詰め炭酸飲料が提供される。また、本発明によれば、甘味料を含有する容器詰め炭酸飲料において、後味の甘味のべたつきを低減することも可能である。
【発明の具体的説明】
【0007】
本発明において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義であり、「ppb」という単位は「μg/L」と同義である。
【0008】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、ボルネオールおよび/または酢酸テルピニルをそれぞれの所定の濃度で含有する。このような飲料は、炭酸飲料の製造過程において、ボルネオールおよび/または酢酸テルピニルの濃度調整によって製造することができる。ボルネオールおよび/または酢酸テルピニルの濃度調整は、ボルネオールまたは酢酸テルピニルを添加することにより行ってもよいし、あるいは、これらを含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0009】
本発明の容器詰め炭酸飲料中のボルネオールの濃度は、好ましくは5ppb~10ppmとされ、より好ましくは10ppb~10ppm、さらに好ましくは50ppb~6ppm、さらに好ましくは300ppb~1ppmとされる。
【0010】
本発明の容器詰め炭酸飲料中の酢酸テルピニルの濃度は、好ましくは5ppb~10ppmとされ、より好ましくは10ppb~10ppm、さらに好ましくは50ppb~6ppm、さらに好ましくは60ppb~1ppm、さらに好ましくは60ppb~800ppbとされる。
【0011】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の容器詰め炭酸飲料中のボルネオールの濃度は5ppb~10ppmとされ、酢酸テルピニルの濃度は5ppb~10ppmとされる。本発明のより好ましい実施態様によれば、本発明の容器詰め炭酸飲料中のボルネオールの濃度は10ppb~10ppmとされ、酢酸テルピニルの濃度は10ppb~10ppmとされる。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、本発明の容器詰め炭酸飲料中のボルネオールの濃度は50ppb~6ppmとされ、酢酸テルピニルの濃度は50ppb~6ppmとされる。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、本発明の容器詰め炭酸飲料中のボルネオールの濃度は300ppb~1ppmとされ、酢酸テルピニルの濃度は60ppb~1ppmとされる。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、本発明の容器詰め炭酸飲料中のボルネオールの濃度は300ppb~1ppmとされ、酢酸テルピニルの濃度は60ppb~800ppbとされる。
【0012】
飲料中のボルネオールおよび酢酸テルピニルの濃度は、当技術分野において公知の方法、例えば、GC/MS-MSを用いる方法によって測定することができる。具体的には、飲料をスターラーで攪拌して脱気し、クロロホルムで抽出し、対象成分(ボルネオールおよび酢酸テルピニル)を濃縮した後に、得られた液体についてGC/MS-MS分析を行うことにより、ボルネオールおよび酢酸テルピニルの濃度を測定することができる。GC/MS-MS分析の条件は、以下に示す表1の通りとすることができる。また、この方法では、内部標準物質を用いることが望ましい。さらに、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0013】
【表1】
【0014】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、甘味成分を含んでいなくてもよく、甘味度は0であってもよいが、好ましくは甘味成分を含むものとされる。甘味成分を含む本発明の容器詰め炭酸飲料のショ糖換算の甘味度は、0重量%を超えていればよいが、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上とされる。
【0015】
本発明における「甘味成分」とは、飲食品に甘味を付与し得る成分を意味し、例えば、相対甘味度0.05以上の甘味成分が好適に用いられる。本発明における「甘味成分」には、飲食品の添加物として通常用いられている甘味成分のほか、果汁や果実片や野菜汁や野菜片等に由来する甘味成分(ショ糖、ぶどう糖、果糖等)も包含される。飲食品の添加物として通常用いられている甘味成分としては、例えば、果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖、乳糖、トレハロース、麦芽糖、ショ糖等の二糖、粉末水あめ等の多糖といった結晶性糖類や、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖、水あめ、異性化液糖(例えば果糖ぶどう糖液糖)等の非結晶性糖類を挙げることができる。また、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコールを挙げることができる。また、スクラロース、ステビア、甘草抽出物、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK等の高甘味度甘味成分(高甘味度甘味料)も好適に用いられる。
【0016】
本発明における「ショ糖換算の甘味度(重量%)」とは、以下の数式により算出される数値を意味する:
[甘味度](重量%)=[甘味成分含有量](g/100g)×[その甘味成分の相対甘味度]。
【0017】
上記の「甘味成分含有量」(g/100g)とは、本発明の容器詰め炭酸飲料100g当たりに含まれる甘味成分(g)の濃度(g/100g)を表し、上記の「相対甘味度」とは、20℃でのショ糖の甘さを1とした場合の、ある特定の種類の甘味成分の相対的な甘みの強さを意味する。したがって、本発明における上記「甘味度」は、ショ糖換算した甘味成分の濃度(g/100g)を表しており、本発明の容器詰め炭酸飲料を摂取した者が感じる感覚としての甘味の程度を反映したものである。本発明の容器詰め炭酸飲料に2種類以上の甘味成分が含まれている場合は、甘味成分の種類ごとに「甘味成分含有量(g/100g)×相対甘味度」の値を算出し、算出した各数値の総和をその本発明の容器詰め炭酸飲料の甘味度とする。本発明の容器詰め炭酸飲料における甘味成分の含有量は、例えばHPLC法、GC-MS法、LC-MS法などの公知の方法を適用することにより測定することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の容器詰め炭酸飲料は、果実フレーバーおよび/または果汁を含有するものとされる。本発明の容器詰め炭酸飲料に含まれる果実フレーバーまたは果汁は、いかなる果実の果実フレーバー/果汁であってもよく、その種類は特に制限されるものではないが、好ましくは柑橘またはソフトフルーツの果実フレーバーまたは果汁、より好ましくは柑橘の果実フレーバーまたは果汁とされる。果汁の濃度は特に制限されるものではなく、使用する具体的な果汁の香味の強さ等に応じて適宜調整してよいが、概ね0.1~30w/v%の範囲とすることができ、好ましくは1~15w/v%の範囲、より好ましくは1~5w/v%の範囲とされる。果実フレーバーの濃度は特に制限されるものではなく、使用する具体的な果実フレーバーの香味の強さ等に応じて適宜調整してよいが、概ね0.001~10w/v%の範囲とすることができ、好ましくは0.01~5w/v%の範囲、より好ましくは0.05~2w/v%の範囲とされる。
【0019】
柑橘としては、例えば、柑橘類の例としては、例えば、グレープフルーツ、レモン、オレンジ、マンダリン、シークヮーサー、だいだい、みかん、ウンシュウミカン、なつみかん、はっさく、イヨカン、ブンダン、キンカン、ポンカン、ベルガモット、ライム、ユズ、スダチ、カボス等を挙げることができ、好ましくはグレープフルーツ、レモン、ライム、オレンジ、みかん、ユズ、シークヮーサー、より好ましくはグレープフルーツまたはレモンを用いることができる。柑橘の果実フレーバーや果汁は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明において「ソフトフルーツ」とは、柑橘系以外の果実(非柑橘系果実)を意味する。ソフトフルーツとしては、例えば、ぶどう、いちじく、きいちごなどの漿果類;りんご、なし(例えば、日本なし、西洋なし等)などの仁果類果実;あんず、桃、すもも、梅、サクランボなどの核果類果実;マンゴー、パイナップル、グアバ、バナナ、ライチ(レイシ)、キウイフルーツ、パパイヤ、パッションフルーツ、アセロラなどのトロピカルフルーツ(熱帯性果実);イチゴ、メロン、スイカなどの果実的野菜を挙げることができ、好ましくはぶどう、桃、りんご、なし、梅、マンゴー、パイナップル、ライチ、イチゴ、より好ましくはぶどうまたは桃を用いることができる。ソフトフルーツの果実フレーバーや果汁は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、アルコール飲料であっても、非アルコール飲料であってもよい。本発明において、「アルコール飲料」とは、アルコール(エタノール)の濃度が1v/v%以上の飲料をいう。これに対し、非アルコール飲料は、アルコール飲料ではない飲料、つまり、アルコール(エタノール)の濃度が1v/v%未満の飲料をいう。本発明の容器詰め炭酸飲料のアルコール濃度は特に制限されるものではないが、好ましくは0~9v/v%、より好ましくは1~9v/v%、さらに好ましくは7~9v/v%とされる。アルコール濃度の調整は、食品としての安全性が確認されたエタノール含有材料の添加によって行うことができる。エタノール含有材料としては、原料用アルコールや蒸留酒(スピリッツ)を用いることができ、好ましい蒸留酒の例としては、ウオッカ、焼酎、テキーラ、ラム等が挙げられる。
【0022】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、酸味料(例えば、酒石酸、イタコン酸、フマル酸、アジピン酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、またはそれらの塩類等)、色素、香料、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)等を適宜添加することができる。
【0023】
本発明の容器詰め炭酸飲料の炭酸ガス圧は、好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.1~0.4MPa、より好ましくは0.1~0.3MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0024】
本発明の容器詰め炭酸飲料のpHは、特に制限されるものではないが、2.5~4.5、より好ましくは2.5~4.0とすることができる。
【0025】
本発明の容器詰め炭酸飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0026】
本発明の他の態様によれば、容器詰め炭酸飲料における味の厚みおよび複雑さを増強する方法が提供され、該方法は、以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たすように、ボルネオールの含有量および/または酢酸テルピニルの含有量を調整することを含んでなる。
【0027】
本発明の他の態様によれば、ショ糖換算の甘味度が0重量%を超える容器詰め炭酸飲料における後味の甘味のべたつきを低減する方法が提供され、該方法は、以下の条件:
(a)ボルネオールの含有量が5ppb~10ppmであり、かつ、酢酸テルピニルの含有量が5ppb~10ppmである;
(b)ボルネオールの含有量が10ppb~10ppmである;および
(c)酢酸テルピニルの含有量が10ppb~10ppmである、
のいずれかを満たすように、ボルネオールの含有量および/または酢酸テルピニルの含有量を調整することを含んでなる。
【実施例0028】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
試飲サンプルの官能評価
以下の実施例において、試飲サンプルの官能評価は、訓練された6名のパネラーによって行った。評価項目と評価基準は、以下の通りとした。
味の厚みおよび複雑さ:陰性対照と比較して、複数の味わいが感じられ、飲用中の味の強さが増す効果の強度を、1(陰性対照と同程度)~5(強い)の5段階のスコアで評価した。
後味の甘味のべたつきの低減:陰性対照と比較して、後味の不快な甘さが低減される効果の強度を、1(陰性対照と同程度)~5(強い)の5段階のスコアで評価した。
【0030】
陰性対照は、ボルネオールおよび酢酸テルピニルを含有せず、アルコール濃度が9v/v%、レモン果汁の濃度が2.1w/v%(ストレート果汁換算)、酸味料(クエン酸およびクエン酸ナトリウム)を含有し、甘味料(アセスルファムKおよびスクラロース)をショ糖換算甘味度が2重量%となる濃度で含有する試飲サンプル(試験区1)とし、陰性対照のスコアをいずれも1とした。
【0031】
陽性対照は、ボルネオール濃度が413ppb、酢酸テルピニル濃度が120ppb、アルコール濃度が9v/v%、レモン果汁の濃度が2.1w/v%(ストレート果汁換算)、酸味料(クエン酸およびクエン酸ナトリウム)を含有し、甘味料(アセスルファムKおよびスクラロース)をショ糖換算甘味度が2重量%となる濃度で含有する試飲サンプル(試験区13)とし、陽性対照のスコアをいずれも5とした。
【0032】
各試飲サンプルのスコアは、平均値±標準偏差として示した。
【0033】
実施例1:炭酸飲料の味の厚みおよび複雑さを増強するための条件および後味の甘味のべたつきを低減するための条件の検討
本実施例では、様々な試飲サンプルを用いて、炭酸飲料の味の厚みおよび複雑さを増強するための条件および後味の甘味のべたつきを低減するための条件を検討した。試飲サンプルの組成は、酸味料(クエン酸およびクエン酸ナトリウム)を適量含む以外は、官能評価結果を示す表に記載の通りとした。試飲サンプルのpHは2.5~4.0、炭酸ガス圧(20℃におけるガス圧)は0.1MPa以上であった。
【0034】
(1)ボルネオールおよび酢酸テルピニルの濃度と効果との関係
様々な濃度のボルネオールおよび酢酸テルピニルを含有するサンプルを作製し、官能評価を行った。結果を以下の表に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2から明らかなように、5ppb~10ppmのボルネオールおよび5ppb~10ppmの酢酸テルピニルを含有する試飲サンプルにおいて、炭酸飲料の味の厚みおよび複雑さの増強効果および後味の甘味のべたつきの低減効果が認められた。
【0037】
(2)甘味料の種類と効果との関係
様々な甘味料を含有するサンプルを作製し、官能評価を行った。結果を以下の表に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3から明らかなように、無糖(甘味度0)の試飲サンプルでも効果が認められた。また、無糖の試飲サンプルよりも、糖類を添加した甘味のある試飲サンプルの方が高い効果が認められ、特に、人工甘味料(アセスルファムKおよびスクラロース)を加えた試飲サンプルにおいて高い効果が認められた。
【0040】
(3)果汁の濃度と効果との関係
様々な濃度のレモン果汁を含有するサンプルを作製し、官能評価を行った。結果を以下の表に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
表4から明らかなように、無果汁の場合を含めて、果汁の濃度にかかわらず効果があることが確認された。
【0043】
(4)アルコール濃度と効果との関係
様々なアルコール(エタノール)濃度のサンプルを作製し、官能評価を行った。結果を以下の表に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
表5から明らかなように、アルコール濃度0~9v/v%のいずれの場合でも効果が認められ、特にアルコール濃度7~9v/v%の試飲サンプルにおいて高い効果が認められた。
【0046】
(5)果汁の種類と効果との関係
様々な果汁を含有するサンプルを作製し、官能評価を行った。結果を以下の表に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
表6から明らかなように、レモン果汁、グレープフルーツ果汁、ぶどう果汁、もも果汁のいずれを含有する試飲サンプルにおいても、高い効果が認められた。