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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085181
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】引戸移動装置および引戸移動システム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/635 20150101AFI20240619BHJP
   E05F 1/04 20060101ALI20240619BHJP
   E05F 15/79 20150101ALI20240619BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20240619BHJP
   E05F 1/00 20060101ALI20240619BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20240619BHJP
【FI】
E05F15/635
E05F1/04 A
E05F15/79
E05B47/00 Z
E05F1/00 Z
E05B49/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199566
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】322006191
【氏名又は名称】株式会社オベリスク
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大原 孝教
(72)【発明者】
【氏名】蓑島 浩
(72)【発明者】
【氏名】大原 卓也
【テーマコード(参考)】
2E052
2E250
【Fターム(参考)】
2E052AA01
2E052AA02
2E052BA01
2E052BA04
2E052CA06
2E052DA08
2E052DB02
2E052EA15
2E052EB06
2E052EC01
2E052KA23
2E250AA01
2E250CC06
2E250FF28
2E250FF36
(57)【要約】
【課題】引戸の移動のための駆動力と、駆動力の伝達状態の切り換えのための動力と、を単数の動力源で供給する引戸移動装置および引戸移動システムを提供する。
【解決手段】引戸に固定されるように構成された引戸移動装置は、モータと、駆動力伝達部と、を備える。モータは、駆動力を発生することで第1ギヤを回転させる。駆動力伝達部は、第1ギヤから駆動力を受けない場合には、第1状態となり、第1ギヤから駆動力を受けている場合には、第2状態となるように構成されている。第1状態は、駆動力伝達部が構造体に設けられたレールから離れた状態であり、第2状態は、駆動力伝達部がレールに当接して、引戸が開方向に移動するための移動力をレールに対して作用させる状態である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉方向および開方向の2方向に移動するように構造体に支持された引戸に固定されるように構成された引戸移動装置であって、
駆動力を発生することで第1ギヤを回転させるように構成されたモータと、
前記引戸に固定される駆動力伝達部であって、前記第1ギヤから前記駆動力を受けない場合には、第1状態となり、前記第1ギヤから前記駆動力を受けている場合には、第2状態となるように構成されており、前記第1状態は、前記構造体に設けられたレールから前記駆動力伝達部が離れた状態であり、前記第2状態は、前記駆動力伝達部が前記レールに当接して、前記駆動力伝達部が移動力を前記レールに対して作用させる状態であり、前記移動力は前記引戸が前記開方向に移動するための力である、駆動力伝達部と、
を備える引戸移動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の引戸移動装置であって、
前記駆動力伝達部は、
第1端面と第2端面とを有する円柱形状の第2ギヤであって、前記円柱形状の中心軸を回転軸として、前記第1ギヤから前記駆動力を受けて回転するように構成された第2ギヤと、
第3端面と第4端面とを有する円柱形状の第3ギヤであって、前記円柱形状の中心軸を回転軸として、前記第3端面が前記第2端面に対向する状態で前記第2ギヤの前記中心軸と同一の軸線上で回転するとともに、前記回転軸の軸線方向に移動するように構成された第3ギヤと、
前記第3ギヤを前記回転軸の前記軸線方向に移動させるように構成された第1移動部であって、前記第3ギヤを前記レールから離れた第1位置に移動させるように構成された第1移動部と、
前記第3ギヤを前記回転軸の前記軸線方向に移動させるように構成された第2移動部であって、前記第3ギヤを前記レールに当接する第2位置に移動させるとともに、前記第2位置に配置された前記第3ギヤに前記第2ギヤの回転力を伝達するように構成された第2移動部と、
を備える、引戸移動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の引戸移動装置であって、
前記第1移動部は、弾性変形することで、前記第3ギヤに対して前記第2ギヤに向かう方向の付勢力を与えるように構成された弾性付勢部を備え、
前記第2移動部は、
前記第2ギヤと一体に形成された第1カムであって、前記第3ギヤに対向し、かつ、前記第2ギヤの前記中心軸を中心とする周方向に沿って前記第3ギヤとの距離が変化するように傾斜して形成された第1カムと、
前記第2ギヤと一体に形成された第1当接部であって、前記第1カムの端部のうち前記第2端面に近い端部に繋がっており、前記第2ギヤの前記中心軸を中心とする周方向に対して対向する面を備える第1当接部と、
前記第3ギヤと一体に形成された第2カムであって、前記第1カムに対向し、かつ、前記第3ギヤの前記中心軸を中心とする周方向に沿って前記第2ギヤとの距離が変化するように傾斜して形成された第2カムと、
前記第3ギヤと一体に形成された第2当接部であって、前記第2カムの端部のうち前記第3端面に近い端部に繋がっており、前記第3ギヤの前記中心軸を中心とする周方向に対して対向する面を備えるとともに、前記第3ギヤが前記第2位置に配置されている場合に、前記第1当接部と当接するように形成された第2当接部と、
前記第1位置における前記第3ギヤの回転を制限しつつ、前記第3ギヤの前記軸線方向の移動を許容するように構成された第1制限部と、
前記軸線方向において前記第3ギヤが前記第2ギヤから最も離れる位置が、前記第2位置となるように、前記軸線方向における前記第3ギヤの移動範囲を制限するように構成された第2制限部と、
を備え、
前記第1カムは、前記第1ギヤからの前記駆動力を受けて前記第2ギヤが回転した場合に、前記第1カムに当接している前記第2カムを前記第2ギヤから遠ざける方向に移動させる形状である、
引戸移動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の引戸移動装置であって、
前記第2移動部は、
前記第2ギヤの内部空間に接するように前記第2ギヤと一体に形成された空間形成部であって、前記内部空間は前記第2ギヤの外部に繋がる開口を有し、前記開口は前記第2ギヤの前記第2端面において前記回転軸を中心とする円弧状に形成されている、空間形成部と、
前記第3端面から前記第2ギヤに向けて突出する形態で前記第3ギヤと一体に形成された突出部であって、前記第2ギヤの前記内部空間において前記周方向に移動できる形状に構成された突出部と、
を備え、
前記第1カムは、前記空間形成部に形成されており、
前記第1当接部は、前記空間形成部に形成されており、
前記第2カムは、前記突出部に形成されており、
前記第2当接部は、前記突出部に形成されている、
引戸移動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の引戸移動装置であって、
前記引戸を移動させるため引戸移動条件が成立することに応じて、予め定められた駆動時間にわたり前記第1ギヤを回転させるように前記モータを駆動させ、前記駆動時間が経過すると前記モータを停止するように構成されたモータ制御部を備える、
引戸移動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の引戸移動装置であって、
前記引戸は、施錠操作が行われると前記引戸を施錠し、解錠操作が行われると前記引戸を解錠するように構成された施錠装置を備え、
前記引戸移動条件は、前記施錠装置で解錠操作が行われることで成立するように予め定められている、
引戸移動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の引戸移動装置であって、
前記施錠装置は電源を備えており、
前記モータは、前記施錠装置の前記電源から供給される電力により駆動するように構成されている、
引戸移動装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の引戸移動装置と、
前記引戸に固定された施錠装置であって、施錠操作が行われると前記引戸を施錠し、解錠操作が行われると前記引戸を解錠するように構成された施錠装置と、
を備える引戸移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、引戸移動装置および引戸移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
閉方向および開方向の2方向に移動する引戸であって、引戸を閉方向に移動させる機構を備える半自動式の引戸がある。半自動式の引戸を、モータの動力を用いて開方向に移動させるように構成された引戸移動装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6695080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の引戸移動装置は、引戸を移動させる駆動力を発生するモータと、駆動力を伝達するギヤを変位操作するアクチュエータと、を備えている。アクチュエータは、ギヤが駆動力を伝達する状態と、ギヤが駆動力を伝達しない状態と、のいずれかに切り換えるように、ギヤを変位操作するように構成されている。
【0005】
つまり、上記の引戸移動装置は、動力源として、モータに加えてアクチュエータを備えており、複数の動力源を備えるため構造が複雑である。
そこで、本開示の一局面は、引戸の移動のための駆動力と、駆動力の伝達状態の切り換えのための動力と、を単数の動力源で供給する引戸移動装置を提供できること、およびそのような引戸移動装置を備える引戸移動システムを提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、引戸移動装置であって、モータと、駆動力伝達部と、を備える。引戸移動装置は、引戸に固定されるように構成されている。引戸は、閉方向および開方向の2方向に移動するように構造体に支持されている。
【0007】
モータは、駆動力を発生することで第1ギヤを回転させるように構成されている。
駆動力伝達部は、引戸に固定される。駆動力伝達部は、第1ギヤから駆動力を受けない場合には、第1状態となり、第1ギヤから駆動力を受けている場合には、第2状態となるように構成されている。第1状態は、構造体に設けられたレールから駆動力伝達部が離れた状態である。第2状態は、駆動力伝達部がレールに当接して、駆動力伝達部が移動力をレールに対して作用させる状態である。移動力は、引戸が開方向に移動するための力である。
【0008】
この引戸移動装置において、駆動力伝達部は、第1ギヤを介してモータから駆動力を受けているか否かに応じて、第1状態または第2状態に切り替わるように構成されている。つまり、引戸移動装置は、モータの駆動力を用いて駆動力伝達部の状態を切り換えるように構成されている。また、引戸移動装置は、駆動力伝達部が第2状態となることで、モータの駆動力を用いて引戸を開方向に移動させるように構成されている。
【0009】
よって、引戸移動装置は、単数のモータで、引戸の移動のための駆動力と、駆動力の伝達状態の切り換えのための動力と、を供給することができる。
また、引戸移動装置は、駆動力伝達部が第1状態となることで、引戸の閉方向への移動を駆動力伝達部が阻害することを抑制できる。つまり、駆動力伝達部が第1状態となることで、人や他の機器による動力によって引戸を閉方向に移動させることができる。
【0010】
本開示の一態様では、駆動力伝達部は、第2ギヤと、第3ギヤと、第1移動部と、第2移動部と、を備えてもよい。
第2ギヤは、第1端面と第2端面とを有する円柱形状のギヤであってもよい。第2ギヤは、円柱形状の中心軸を回転軸として、第1ギヤから駆動力を受けて回転するように構成されてもよい。第3ギヤは、第3端面と第4端面とを有する円柱形状のギヤであってもよい。第3ギヤは、円柱形状の中心軸を回転軸として、第3端面が第2端面に対向する状態で第2ギヤの中心軸と同一の軸線上で回転するとともに、回転軸の軸線方向に移動するように構成されてもよい。第1移動部は、第3ギヤを回転軸の軸線方向に移動させるように構成されてもよい。第1移動部は、第3ギヤをレールから離れた第1位置に移動させるように構成されてもよい。第2移動部は、第3ギヤを回転軸の軸線方向に移動させるように構成されてもよい。第2移動部は、第3ギヤをレールに当接する第2位置に移動させるとともに、第2位置に配置された第3ギヤに第2ギヤの回転力を伝達するように構成されてもよい。
【0011】
このような駆動力伝達部によれば、第3ギヤの位置を第1位置または第2位置に移動させることで、駆動力伝達部を第1状態または第2状態に変更できる。
本開示の一態様では、第1移動部は、弾性付勢部を備えてもよい。弾性付勢部は、弾性変形することで、第3ギヤに対して第2ギヤに向かう方向の付勢力を与えるように構成されてもよい。
【0012】
第2移動部は、第1カムと、第1当接部と、第2カムと、第2当接部と、第1制限部と、第2制限部と、を備えてもよい。第1カムは、第2ギヤと一体に形成されてもよい。第1カムは、第3ギヤに対向し、かつ、第2ギヤの中心軸を中心とする周方向に沿って第3ギヤとの距離が変化するように傾斜して形成されてもよい。第1当接部は、第2ギヤと一体に形成されてもよい。第1当接部は、第1カムの端部のうち第2端面に近い端部に繋がってもよい。第1当接部は、第2ギヤの中心軸を中心とする周方向に対して対向する面を備えてもよい。
【0013】
第2カムは、第3ギヤと一体に形成されてもよい。第2カムは、第1カムに対向し、かつ、第3ギヤの中心軸を中心とする周方向に沿って第2ギヤとの距離が変化するように傾斜して形成されてもよい。第2当接部は、第3ギヤと一体に形成されてもよい。第2当接部は、第2カムの端部のうち第3端面に近い端部に繋がってもよい。第2当接部は、第3ギヤの中心軸を中心とする周方向に対して対向する面を備えてもよい。第2当接部は、第3ギヤが第2位置に配置されている場合に、第1当接部と当接するように形成されてもよい。
【0014】
第1制限部は、第1位置における第3ギヤの回転を制限しつつ、第3ギヤの軸線方向の移動を許容するように構成されてもよい。また、第1制限部は、第2位置における第3ギヤの回転を許容して、第3ギヤの回転力をレール90に伝達できるように構成されてもよい。第2制限部は、軸線方向において第3ギヤが第2ギヤから最も離れる位置が、第2位置となるように、軸線方向における第3ギヤの移動範囲を制限するように構成されてもよい。
【0015】
第1カムは、第1ギヤからの駆動力を受けて第2ギヤが回転した場合に、第1カムに当接している第2カムを第2ギヤから遠ざける方向に移動させる形状であってもよい。
このような駆動力伝達部は、第1位置に配置されている第3ギヤが、第1制限部により回転が制限されつつ、モータの駆動力による第2ギヤの回転によって、第1カムと第2カムとの相対位置を変化させることができる。この駆動力伝達部によれば、第2カムとの相対位置が変化することで、第2ギヤから離れる方向に第3ギヤを移動させることができ、第3ギヤを第2位置に向けて移動させることができる。
【0016】
そして、第3ギヤは、第2制限部により軸線方向の移動が制限されることで、第2位置に配置される。第2位置に配置された第3ギヤは、第1当接部と第2当接部とが互いに当接して第2ギヤから回転力が伝達されることで、第1制限部による回転の制限に抗って回転する。この第3ギヤの回転がレールに伝達されることで、引戸移動装置は、引戸を移動させることができる。
【0017】
なお、この駆動力伝達部は、モータの駆動力が第2ギヤに伝達されるか否かによって、第1状態または第2状態に切替わるように構成されている。
本開示の一態様では、第2移動部は、空間形成部と、突出部と、を備えてもよい。空間形成部は、第2ギヤの内部空間に接するように第2ギヤと一体に形成されてもよい。内部空間は、第2ギヤの外部に繋がる開口を有してもよい。開口は、第2ギヤの第2端面において回転軸を中心とする円弧状に形成されてもよい。突出部は、第3端面から第2ギヤに向けて突出する形態で第3ギヤと一体に形成されてもよい。突出部は、第2ギヤの内部空間において周方向に移動できる形状に構成されてもよい。第1カムは、空間形成部に形成されていてもよい。第1当接部は、空間形成部に形成されていてもよい。第2カムは、突出部に形成されていてもよい。第2当接部は、突出部に形成されていてもよい。
【0018】
このように構成された第2移動部を備えることで、駆動力伝達部は、第3ギヤを回転軸の前記軸線方向に移動させることができる。
本開示の一態様では、引戸移動装置は、モータ制御部を備えてもよい。モータ制御部は、引戸を移動させるため引戸移動条件が成立することに応じて、予め定められた駆動時間にわたり第1ギヤを回転させるようにモータを駆動させてもよい。モータ制御部は、駆動時間が経過するとモータを停止するように構成されてもよい。
【0019】
このようなモータ制御部を備えることで、引戸移動装置は、引戸移動条件が成立することに応じて、引戸を移動させることができる。引戸移動条件は、例えば、利用者から移動指令を受け取ることで成立するように予め定めてもよい。駆動時間は、駆動時間に対応する引戸の移動距離が、引戸の全閉状態から全開状態までの移動距離を超えない範囲で、任意の値を予め設定してもよい。これにより、引戸移動装置は、引戸が移動可能最大距離を超えて移動することを抑制でき、モータの破損を抑制できる。
【0020】
本開示の一態様では、引戸は、施錠装置を備えてもよい。施錠装置は、施錠操作が行われると引戸を施錠し、解錠操作が行われると引戸を解錠するように構成されてもよい。引戸移動条件は、施錠装置で解錠操作が行われることで成立するように予め定められていてもよい。
【0021】
このような引戸移動装置は、施錠装置が解錠されたことに応じて、引戸を移動させることができる。これにより、解錠動作と引戸移動動作とを連係することができ、引戸の利用者の利便性が向上する。例えば、病院や高齢者住宅などでの引戸の利便性が高まる。施錠装置は、電子キーを用いて施錠・解錠するように構成されてもよいし、物理的なキーを用いて施錠・解錠するように構成されてもよい。
【0022】
本開示の一態様では、施錠装置は電源を備えていてもよい。モータは、施錠装置の電源から供給される電力により駆動するように構成されていてもよい。このような引戸移動装置は、電池などの電源を備えることなく、施錠装置から供給される電力を用いて、引戸を移動させることができる。
【0023】
本開示の別の一態様は、引戸移動システムであって、上述した引戸移動装置と、施錠装置と、を備える。施錠装置は、引戸に固定されて、施錠操作が行われると引戸を施錠し、解錠操作が行われると引戸を解錠するように構成される。このような引戸移動システムは、上述の引戸移動装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】引戸移動システムが取り付けられた引戸の室内側の概要を表した説明図である。
図2】引戸移動システムが取り付けられた引戸の室外側の概要を表した説明図である。
図3】引戸移動システムの構成を表したシステム構成図である。
図4】引戸移動装置の斜視図である。
図5】引戸移動装置の分解斜視図である。
図6図6Aは第2ギヤの平面図であり、図6Bは第2ギヤの正面図であり、図6Cは第2ギヤの底面図である。
図7】第2端面における第2ギヤの斜視図である。
図8図7における第2ギヤのVIII-VIII線での断面を表した斜視図である。
図9】第1端面における第2ギヤの斜視図である。
図10図10Aは第3ギヤの平面図であり、図10Bは第3ギヤの正面図であり、図10Cは第3ギヤの右側面図であり、図10Dは第3ギヤの底面図である。
図11図10Aにおける第3ギヤのXI-XI線での断面を表した断面図である。
図12】第4端面における第3ギヤの斜視図である。
図13図12における第3ギヤのXIII-XIII線での断面を表した斜視図である。
図14】第3端面における第3ギヤの斜視図である。
図15】引戸移動装置において第3ギヤが第4ギヤに噛み合っている状態を表した説明図である。
図16】引戸移動装置において第3ギヤがラックギヤ部に向けて移動する状態を表した説明図である。
図17】引戸移動装置において第3ギヤがラックギヤ部に噛み合っている状態を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
尚、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0026】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
第1実施形態として、引戸移動システム1について説明する。
【0027】
図1および図2に示すように、引戸移動システム1は、引戸11に取り付けられている。引戸移動システム1は、電子施錠装置21と、引戸移動装置31と、を備える。
引戸11は、第1縦柱13と、第2縦柱15と、第3縦柱16と、壁17と、開口部18と、を備える構造体に備えられている。構造体は、例えば、一般住宅、オフィスビル、病院、工場などの建築物の一部を構成している。引戸11は、閉方向および開方向の2方向に移動するように構造体に支持されている。換言すれば、引戸11は、第1縦柱13と第2縦柱15との間を往復移動するように構成されている。引戸11の移動方向のうち、引戸11が第1縦柱13に近づく方向が閉方向であり、引戸11が第2縦柱15に近づく方向が開方向である。
【0028】
壁17は、第1壁17aと、第2壁17bと、を備える。第1壁17aは、第1縦柱13と第2縦柱15との間に設けられている。第2壁17bは、第2縦柱15と第3縦柱16との間に設けられている。第1壁17aは、第2壁17bよりも上側の領域に設けられている。
【0029】
開口部18は、第1縦柱13と、第3縦柱16と、第1壁17aと、で囲まれた部分である。引戸11が第1縦柱13に当接する状態が、引戸11の全閉状態である。引戸11は、全閉状態になることで、開口部18を塞ぐように構成されている。引戸11が第2縦柱15に最も近づいた状態が、引戸11の全開状態である。引戸11は、全開状態になることで、開口部18を開放するように構成されている。
【0030】
第1壁17aの室内側には、レール19が設けられている。レール19は、レール19の長手方向が引戸11の往復移動方向に沿うように配置されている。レール19は、第1縦柱13に近い側の端部が、第2縦柱15に近い側の端部よりも低くなるように、勾配を有する状態(換言すれば、傾斜した状態)で配置されている。レール19は、ストッパ19aと、ラックギヤ部19bと、を備える。ストッパ19aは、全開状態の引戸11の一部に係合することで、引戸11を固定するように構成されている。ラックギヤ部19bは、レール19の長手方向に沿って設けられている。
【0031】
引戸11は、ハンドル11aと、第1滑車11bと、第2滑車11cと、を備える。ハンドル11aは、引戸11の室内側に設けられた第1ハンドル11a1と、引戸11の室外側に設けられた第2ハンドル11a2と、を備える。第1滑車11bおよび第2滑車11cは、それぞれ、引戸11の上部に備えられている。第1滑車11bおよび第2滑車11cは、それぞれ、レール19に吊り下げられた状態で、レール19に沿って移動するように構成されている。上述のように、レール19は、傾斜した状態で配置されているため、引戸11は、外力によって移動が制限されていない自由状態の場合には、引力によって自動的に第1縦柱13に近づく閉方向に移動する。つまり、引戸11は、いわゆる半自動式の引戸である。
【0032】
第2滑車11cは、係合部11c1を備える。係合部11c1は、ストッパ19aと係合することで、レール19での第2滑車11cの位置を固定する。つまり、係合部11c1がストッパ19aと係合することで、引戸11の位置が固定される。このときの引戸11は、全開状態である。なお、係合部11c1およびストッパ19aは、利用者が引戸11に閉方向の外力を与えることで、係合部11c1とストッパ19aとの係合が解消されるように構成されている。このため、利用者は、全開状態の引戸11を容易に閉方向へ移動させることができる。
【0033】
[1-2.引戸移動システム]
図1図3に示すように、引戸移動システム1は、電子施錠装置21と、引戸移動装置31と、を備える。電子施錠装置21は、引戸11における第1縦柱13に近接する部位に取り付けられている。引戸移動装置31は、引戸11における上部に取り付けられている。電子施錠装置21および引戸移動装置31は、互いに有線ケーブル32を介して電気的に接続されている。
【0034】
有線ケーブル32は、電力供給するための電力ケーブルを備えている。有線ケーブル32は、電子施錠装置21と引戸移動装置31とを電気的に接続して、電子施錠装置21から引戸移動装置31へ電力供給するように構成されている。有線ケーブル32は、引戸11の内部に埋め込まれた状態で、電子施錠装置21と引戸移動装置31とを繋ぐように配置されている。なお、有線ケーブル32は、引戸11の内部に埋め込み配置される形態に限られることはなく、引戸11の室内側において露出した状態で配置されてもよい。
【0035】
[1-3.電子施錠装置]
図1図3に示すように、電子施錠装置21は、室内ユニット22と、サムターン23と、室外マルチリーダ24と、キーシリンダ25と、全閉検出部26と、被検出部27と、を備える。
【0036】
室内ユニット22は、引戸11の室内側に取り付けられる。室内ユニット22は、制御部22aと、バッテリ22bと、を備える。制御部22aは、図示しない演算部と、図示しない記憶部(例えば、フラッシュメモリなど)と、図示しない通信部と、を備える。演算部は、図示しない中央演算処理装置(CPU)を中心に構成されている。記憶部は、各種のプログラムおよびデータを記憶するように構成されている。演算部は、記憶部から各種のプログラムおよびデータを読み出して、プログラムおよびデータに基づいて各種の処理を実行する。これにより、制御部22aは、各種処理を実行するように構成されている。各種処理は、モータ33を制御するためのモータ制御処理を含んでいる。通信部は、室外マルチリーダ24との間で通信を行うように構成されている。
【0037】
バッテリ22bは、電子施錠装置21のうち室内ユニット22および室外マルチリーダ24を含む各部に対して、電力供給するように構成されている。バッテリ22bは、例えば、乾電池でもよいし、二次電池でもよい。さらに、バッテリ22bは、有線ケーブル32を介して引戸移動装置31に対して、電力供給するように構成されている。
【0038】
サムターン23は、利用者によって右回転操作または左回転操作されることで、引戸11を施錠状態または解錠状態に切り換えるように構成されている。電子施錠装置21は、図示しない引戸錠を備えている。引戸11は、引戸錠が第1縦柱13と係合することで施錠状態となり、引戸錠が第1縦柱13から離れることで解錠状態となる。サムターン23は、引戸錠と連動するように構成されている。
【0039】
室外マルチリーダ24は、図示しない電子カードキーが近接することに応じて、室内ユニット22に対して解錠信号S1を送信する。室外マルチリーダ24は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)により電子カードキーが近接したことを検出するように構成されている。室内ユニット22は、引戸錠を操作するためのアクチュエータ(図示省略)を備えている。室内ユニット22は、解錠信号S1を受信すると、アクチュエータを制御して引戸錠を操作することで、引戸11を解錠状態に切り換える。
【0040】
キーシリンダ25は、利用者によって物理的なキーが挿入されて右回転操作または左回転操作されることで、引戸11を施錠状態または解錠状態に切り換えるように構成されている。キーシリンダ25は、引戸錠と連動するように構成されている。
【0041】
全閉検出部26は、引戸11に取り付けられている。被検出部27は、第1縦柱13のうち、引戸11が全閉状態であるときに全閉検出部26に近接する位置に取り付けられている。全閉検出部26は、被検出部27が近接することに応じて、室内ユニット22に対して全閉検出信号S2を送信する。室内ユニット22は、全閉検出信号S2を受信することで、引戸11が全閉状態であると判定できる。
【0042】
電子施錠装置21は、サムターン23、室外マルチリーダ24、キーシリンダ25のいずれかにより引戸11の施錠操作が行われることに応じて、引戸11を施錠状態に切り換えるように構成されている。また、電子施錠装置21は、サムターン23、室外マルチリーダ24、キーシリンダ25のいずれかにより引戸11の解錠操作が行われることに応じて、引戸11を解錠状態に切り換えるように構成されている。
【0043】
室内ユニット22は、引戸11が全閉状態の状況下で、サムターン23、室外マルチリーダ24、キーシリンダ25のいずれかにより引戸11の解錠操作が行われることに応じて、引戸移動条件が成立したと判定する。室内ユニット22は、引戸移動条件が成立したと判定することに応じて、予め定められた駆動時間T1にわたり引戸移動装置31に対してモータ駆動用電力を供給する。このあと、室内ユニット22は、駆動時間T1が経過すると、引戸移動装置31へのモータ駆動用電力の供給を停止する。
【0044】
駆動時間T1は、駆動時間T1に対応する引戸11の移動距離が、引戸11の全閉状態から全開状態までの移動距離(以下、移動可能最大距離ともいう)を超えない範囲で、任意の値を予め設定してもよい。これにより、引戸移動装置31は、引戸11が移動可能最大距離を超えて移動することを抑制でき、モータ33の破損を抑制できる。
【0045】
なお、室内ユニット22における、引戸移動条件が成立したか否かの判定処理や、駆動時間T1の計測処理や、モータ33の制御処理などの各種演算処理は、制御部22aで実行される。
【0046】
[1-4.引戸移動装置]
図1図3に示すように、引戸移動装置31は、引戸11の上部に固定されている。引戸移動装置31は、レール19に隣接するように配置されている。引戸移動装置31は、電子施錠装置21から有線ケーブル32を介して電力供給を受けることに応じて、その電力を用いて駆動力を発生して、引戸11を移動するように構成されている。
【0047】
図3図5に示すように、引戸移動装置31は、モータ33と、駆動力伝達部34と、を備えている。
モータ33は、有線ケーブル32を介して電子施錠装置21と電気的に接続されている。モータ33は、有線ケーブル32を介して電子施錠装置21から電力供給を受けることに応じて、出力軸が回転することで駆動力を発生するように構成されている。
【0048】
駆動力伝達部34は、第1板35と、第2板37と、複数の支柱39と、第1ギヤ41と、第2ギヤ45と、第1円筒部47と、第1止め輪49と、第3ギヤ53と、第1回転軸55と、第1移動部57と、第2移動部58と、を備える。
【0049】
図4図17に示すように、第2移動部58は、2つの空間形成部58aと、2つの突出部58bと、第1制限部60と、を備える。第1制限部60は、第4ギヤ61と、第2回転軸63と、回転抑制部65と、第2円筒部67と、第2止め輪69と、を備える。
【0050】
第1板35は、モータ33を配置するための開口部35aを備える板状の部材である。 第2板37は、第1板35よりも小さい板状の部材である。第1板35および第2板37は、4本の支柱39と、第1回転軸55と、第2回転軸63とを介して、互いに組み付けできるように構成されている。支柱39は、断面が六角形の多角柱に形成されている。第1回転軸55は、断面が円形の円柱に形成されている。第1回転軸55は、第1板35に近い領域に、周方向に形成された溝55aを備える。第2回転軸63は、断面が円形の円柱に形成されている。第2回転軸63は、第1板35に近い領域に、周方向に形成された溝63aを備える。
【0051】
駆動力伝達部34は、図示しない固定部材を用いて引戸11に固定されるように構成されている。引戸11への駆動力伝達部34の固定方法としては、例えば、固定部材を用いて第1板35が引戸11に固定される方法などを採用できる。固定部材は、例えば、木ネジ、両面テープ、接着剤などが挙げられる。駆動力伝達部34が引戸11に固定されることにより、引戸移動装置31が引戸11に固定された状態となる。
【0052】
第1ギヤ41は、モータ33の出力軸(図示省略)に固定されている。モータ33は、駆動力を発生することで、出力軸を回転させると共に第1ギヤ41を回転させるように構成されている。
【0053】
図4図9図15図17に示すように、第2ギヤ45は、第1ギヤ41と当接する状態で、第1回転軸55を中心に回転するように、第1回転軸55により軸支される。詳細には、第2ギヤ45は、第1端面45aと第2端面45bとを有する円柱形状に形成されている。第2ギヤ45は、円柱形状の側面のうち、軸線方向における第1端面45aに近い領域に、複数の歯を有する歯形成部45cを備える。第2ギヤ45は、円柱形状のうち、軸線方向における第2端面45bに近い領域に、円柱部45dを備える。円柱部45dは、直径寸法が歯形成部45cよりも小さく形成されている。
【0054】
第2ギヤ45は、内部空間としての空間部45eを備える。空間部45eは、第2ギヤ45の外部に繋がる開口45e1を有する。開口45e1は、第2ギヤ45の第2端面45bにおいて、第2ギヤ45の回転軸を中心とする円弧状に形成されている。第2ギヤ45は、2つの空間部45eを備える。
【0055】
第2ギヤ45は、円柱形状の中心軸に沿って貫通する第1貫通穴45fを備える。第2ギヤ45は、第1回転軸55が挿通された第1貫通穴45fを回転軸として回転するように、第1回転軸55によって軸支される。第2ギヤ45は、第1ギヤ41と噛み合って第1ギヤ41から駆動力を受けることで回転する。
【0056】
第1円筒部47は、第1回転軸55を挿通可能な円筒形状の部材である。第1円筒部47は、第1板35と第2ギヤ45との距離を調整するための部材である。第1円筒部47として軸線方向の寸法が異なる円筒部材を採用することで、第1板35と第2ギヤ45との距離を変更できる。第1円筒部47は、第2ギヤ45が第1ギヤ41と噛み合う位置に配置されるように、軸線方向の寸法が決定されている。
【0057】
第1止め輪49は、第1回転軸55の溝55aに嵌め合い可能に構成されている。第2止め輪69は、第2回転軸63の溝63aに嵌め合い可能に構成されている。第1止め輪49および第2止め輪69は、それぞれ、いわゆるEリングであってもよい。第1止め輪49および第2止め輪69は、それぞれ、第1回転軸55および第2回転軸63が第1板35に挿通された後に、溝55aおよび溝63aに嵌め合わされる。これにより、第1板35から、第1回転軸55および第2回転軸63が脱落することを抑制できる。
【0058】
図4図5図10図17に示すように、第3ギヤ53は、第2ギヤ45の中心軸と同一の軸線上に配置されて第1回転軸55を中心に回転するように、第1回転軸55により軸支される。詳細には、第3ギヤ53は、第3端面53aと第4端面53bとを有する円柱形状に形成されている。第3ギヤ53は、円柱形状の側面に、複数の歯を有する歯形成部53cを備える。第3ギヤ53は、歯形成部53cのうち第4端面53bに隣接した領域に、傾斜部53dを備える(図10A図10B図10C図11図12図13参照)。傾斜部53dは、第4端面53bに対して所定角度だけ傾いた斜面として形成されている。傾斜部53dは、歯形成部53cの角部分を面取り加工することで形成できる。
【0059】
第3ギヤ53は、円柱形状の中心軸に沿って貫通する第2貫通穴53eを備える。第3ギヤ53は、第1回転軸55が挿通された第2貫通穴53eを回転軸として回転するように、第1回転軸55によって軸支される。第3ギヤ53は、第2板37と第2ギヤ45との間を第1回転軸55に沿って移動できる状態で、第1回転軸55によって軸支される。第3ギヤ53は、第2ギヤ45から第2移動部58を介して駆動力を受けることで回転する。第3ギヤ53は、第1回転軸55に沿った移動方向に関して、第1位置P1と、第2位置P2と、を含む範囲を移動可能に構成されている。第3ギヤ53の第1位置P1とは、第3ギヤ53がレール19とは離れた位置を意味する(図15参照)。第3ギヤ53の第2位置P2とは、第3ギヤ53がレール19に当接している位置を意味する(図17参照)。
【0060】
第1移動部57は、コイルバネ57aを用いて構成されている。第1移動部57は、第1回転軸55がコイルバネ57aの内部に挿通された状態で、第2板37と第3ギヤ53との間に配置される。第1移動部57は、弾性変形することで、第3ギヤ53に対して第2ギヤ45に向かう方向の付勢力を与えるように構成されている。
【0061】
図5図17に示すように、第2移動部58は、第3ギヤ53を回転軸の軸線方向に移動させるように構成されている。上述したように、第2移動部58は、2つの空間形成部58aと、2つの突出部58bと、第1制限部60と、を備える。
【0062】
空間形成部58aは、空間部45eに接するように第2ギヤ45と一体に形成されている。空間形成部58aは、第1カム58a1と、第1当接部58a2と、第1端部58a3と、を備える。
【0063】
第1カム58a1は、第2ギヤ45と一体に形成された斜面である。第1カム58a1は、第3ギヤ53に対向するように形成されている。第1カム58a1は、第2ギヤ45の第1貫通穴45f(換言すれば、第2ギヤ45の中心軸)を中心とする周方向に沿って第3ギヤ53との距離が変化するように傾斜して形成されている。第1カム58a1は、2つの空間部45eのそれぞれに形成されている。
【0064】
第1当接部58a2は、第2ギヤ45と一体に形成されている。第1当接部58a2は、第1カム58a1における第2端面45bに近い端部に繋がっている。第1当接部58a2は、第2ギヤ45の第1貫通穴45f(換言すれば、第2ギヤ45の中心軸)を中心とする周方向に対して対向する面を備える。第1当接部58a2は、2つの空間部45eのそれぞれに形成されている。
【0065】
第1端部58a3は、第1カム58a1のうち第1端面45aに接する端部である。
突出部58bは、第3ギヤ53と一体に形成されている。突出部58bは、第3ギヤ53の第3端面53aから第2ギヤ45に向けて突出するように形成されている(図10B図10C図10D図11図14参照)。突出部58bは、第2ギヤ45の空間部45eにおいて周方向に移動できる形状に構成されている。突出部58bは、第2カム58b1と、第2当接部58b2と、を備える。
【0066】
第2カム58b1は、突出部58bとともに、第3ギヤ53と一体に形成されている。第2カム58b1は、突出部58bにおいて、第1カム58a1に対向するように形成された斜面である。第2カム58b1は、第3ギヤ53の第2貫通穴53e(換言すれば、第3ギヤ53の中心軸)を中心とする周方向に沿って第2ギヤ45との距離が変化するように傾斜して形成されている。第2カム58b1は、2つの突出部58bのそれぞれに形成されている。
【0067】
第2当接部58b2は、突出部58bとともに、第3ギヤ53と一体に形成されている。第2当接部58b2は、第2カム58b1における第3端面53aに近い端部に繋がっている。第2当接部58b2は、第3ギヤ53の中心軸を中心とする周方向に対して対向する面を備える。第2当接部58b2は、第1ギヤ41からの駆動力を受けて第2ギヤ45が回転した場合に、第1当接部58a2と当接するように形成されている。
【0068】
なお、第2移動部58において、第1カム58a1は、第1ギヤ41からの駆動力を受けて第2ギヤ45が回転した場合に、第1カム58a1に当接している第2カム58b1を第2ギヤ45から遠ざける方向に移動させる形状である。第2ギヤ45は、第1ギヤ41からの駆動力を受けると、第2端面45bから見た場合において左回りに回転する(図7図8など参照)。第1カム58a1は、第2ギヤ45において、第1端面45aから第2端面45bに向けて(換言すれば、第1端部58a3から第1当接部58a2に向けて)右回りに回りながら傾斜する形状に形成されている。
【0069】
図4図5図15図17に示すように、第1制限部60は、第1位置P1における第3ギヤ53の回転を制限するように構成されている。上述したように、第1制限部60は、第4ギヤ61と、第2回転軸63と、回転抑制部65と、第2円筒部67と、第2止め輪69と、を備える。
【0070】
第4ギヤ61は、第2回転軸63を中心に回転するように配置される。詳細には、第4ギヤ61は、円柱形状に形成されている。第4ギヤ61は、円柱形状の側面に、複数の歯を有する歯形成部61aを備える。第4ギヤ61は、歯形成部61aに隣接する円柱部61bを備える。
【0071】
回転抑制部65は、所定の大きさに設定された付勢力を発生するように構成されている。付勢力の大きさは、第2ギヤ45および第3ギヤ53が第3状態である場合に、第2ギヤ45が回転しても第3ギヤ53が回転しない大きさであり、かつ、第2ギヤ45および第3ギヤ53が第4状態である場合に、第2ギヤ45から回転力が伝達されることで第3ギヤ53が回転できる大きさに設定されている。第3状態は、第2ギヤ45および第3ギヤ53に関して、第1カム58a1と第2カム58b1とが互いに当接し、第1当接部58a2と第2当接部58b2とが互いに当接していない状態を意味している。第4状態は、第2ギヤ45および第3ギヤ53に関して、第1カム58a1と第2カム58b1とが互いに当接した状態を意味している。本実施形態では、回転抑制部65は、コイルバネを用いて構成されている。回転抑制部65は、第2回転軸63がコイルバネの内部に挿通された状態で、第2板37と第4ギヤ61との間に配置される。回転抑制部65は、弾性変形することで、第4ギヤ61に対して回転を抑制するための付勢力を与えるように構成されている。回転抑制部65は、第3ギヤ53に対して第1板35に向かう付勢力を与えて、第3ギヤ53,第2円筒部67,第1板35のそれぞれの間に摩擦力を生じさせることで、第3ギヤ53の回転を抑制する。
【0072】
第2円筒部67は、第2回転軸63を挿通可能な円筒形状の部材である。第2円筒部67は、第1板35と第4ギヤ61との距離を調整するための部材である。第2円筒部67として軸線方向の寸法が異なる円筒部材を採用することで、第1板35と第4ギヤ61との距離を変更できる。第2円筒部67は、第1位置に配置されている第3ギヤ53に対して第4ギヤ61が噛み合う位置に配置されるように、軸線方向の寸法が決定されている。第1位置に配置されている第3ギヤ53は、レール19から離れている。
【0073】
このように構成された第1制限部60は、第1位置P1における第3ギヤ53の回転を制限しつつ、第3ギヤ53の軸線方向の移動を許容するように構成されている(図15図17参照)。また、第1制限部60は、第2位置P2における第3ギヤ53の回転を許容して、第3ギヤ53の回転力をレール90に伝達できるように構成されている(図17参照)。
【0074】
[1-5.引戸移動装置の状態変化]
引戸移動装置31の状態変化について説明する。
引戸移動装置31は、第1状態または第2状態に切り替わるように構成される。第1状態は、引戸移動装置31がレール19から離れた状態である。第2状態は、引戸移動装置31がレール19に当接して移動力をレール19に対して作用させる状態である。移動力は、引戸11が開方向に移動するための力である。
【0075】
このような引戸移動装置31における状態変化は、駆動力伝達部34の状態変化と言い換えることができる。引戸移動装置31における第1状態および第2状態は、駆動力伝達部34の第1状態および第2状態にも相当する。
【0076】
図15に示すように、駆動力伝達部34は、モータ33が停止している場合には、第1移動部57からの付勢力によって第3ギヤ53が第2ギヤ45に向けて押されて、第3ギヤ53が第1位置P1に配置される。なお、第3ギヤ53は、第1位置P1および第2位置P2のいずれにおいても、第4ギヤ61(換言すれば、第1制限部60)と噛み合った状態である。
【0077】
次に、図16に示すように、駆動力伝達部34は、モータ33が駆動力を発生することに応じて、第1ギヤ41から駆動力を受けて第2ギヤ45が回転し、第2移動部58を介して第2ギヤ45から第3ギヤ53に駆動力が伝達される。このとき、第1当接部58a2と第2当接部58b2とが互いに当接していない場合には、第3ギヤ53は第1制限部60(換言すれば、第4ギヤ61)により回転が制限されているため、第3ギヤ53は回転することができない。このとき、第2ギヤ45から伝達された駆動力は、第2移動部58が第3ギヤ53を軸線方向に移動させるための動力として利用される。
【0078】
詳細には、第2移動部58においては、第2ギヤ45の回転に伴い第1カム58a1(図6図9参照)は回転するが、突出部58b(詳細には、第2カム58b1)は第1制限部60により回転が制限されるため回転しない。その代わりに、突出部58bが第1カム58a1の表面に沿って移動して、第1カム58a1と突出部58bとの相対位置が変化することで、第1カム58a1が突出部58bを第2板37に向けて押し出す状態となる。この結果、第3ギヤ53は、回転することなく、突出部58bとともに第2板37に向けて押し出される。換言すれば、第3ギヤ53は、第1回転軸55に沿って第2板37に向けて移動する(図16参照)。
【0079】
このような第3ギヤ53の移動に伴い、第3ギヤ53はレール19(詳細には、ラックギヤ部19b)と噛み合う第2位置P2まで移動する(図17参照)。第3ギヤ53は、歯形成部53cに傾斜部53dを備えているため、軸線方向に移動する際にスムーズにレール19と噛み合うことができる。
【0080】
第3ギヤ53は、軸線方向のうち第2ギヤ45から離れる方向に移動する際には、第2当接部58b2と第1当接部58a2とが互いに当接する位置(換言すれば、第2位置P2)まで移動する。第2当接部58b2と第1当接部58a2とが互いに当接することにより、第3ギヤ53は、第2ギヤ45から伝達される回転力によって回転する。なお、第2板37は、軸線方向において第3ギヤ53が第2ギヤ45から最も離れる位置が、第2位置P2となるように、軸線方向における第3ギヤ53の移動範囲を制限するように構成されている。これにより、第2板37は、第3ギヤ53が第2位置から逸脱して、第3ギヤ53とレール19とが互いに離れてしまい第3ギヤ53が空転することを抑制できる。第2板37は、本開示における第2制限部の一例に相当する。
【0081】
第2当接部58b2と第1当接部58a2とが互いに当接していない場合には、第2ギヤが回転しても第3ギヤ53は回転しない。このため、第2当接部58b2と第1当接部58a2とが互いに当接していない場合には、第3ギヤ53がレール19と噛み合う位置まで移動しても、第3ギヤ53は、レール19に対して移動力を作用させることはない。
【0082】
次に、図17に示すように、第2当接部58b2と第1当接部58a2とが互いに当接する位置まで第3ギヤ53が移動した場合には、第3ギヤ53が第1制限部60(換言すれば、第4ギヤ61)と当接している場合であっても、第3ギヤ53に第2ギヤ45の回転力が伝達されることにより、第3ギヤ53は、第1制限部60による制限に抗って回転する。そして、第3ギヤ53は、回転するとともにレール19に対して移動力を作用させる。つまり、第3ギヤ53の回転により、引戸移動装置31とレール19との相対位置が変化する。図17では、引戸移動装置31を基準とした場合には、レール19が図における右から左に向けて相対的に移動する。これにより、引戸11とレール19との相対位置が変化するとともに、引戸11は、図1における開方向に移動する。
【0083】
このように構成された引戸移動装置31は、モータ33が停止している場合には、レール19から離れた第1状態となる(図15参照)。このとき、引戸移動装置31が引戸11の移動を制限することはないため、引戸11は、勾配を有するレール19に沿って、自重により閉方向に移動する。
【0084】
また、引戸移動装置31は、モータ33が駆動力を発生している場合には、レール19に当接した(噛み合った)第2状態となる(図17参照)。このとき、引戸移動装置31がレール19に対して移動力を作用させる状態となるため、引戸11は、引戸移動装置31の移動力によりレール19に沿って、開方向に移動する。
【0085】
[1-6.効果]
以上説明したように、引戸移動システム1は、モータ33が駆動力を発生しているか否かに応じて、引戸移動装置31がレール19から離れた第1状態と、引戸移動装置31がレール19に対して移動力を作用させる第2状態と、を切替可能に構成されている。第2状態の引戸移動装置31は、モータ33の駆動力を用いて引戸11を移動させることができる。
【0086】
よって、引戸移動システム1は、単数のモータ33で、引戸11の移動のための駆動力と、駆動力伝達部34の状態の切り替え(換言すれば、駆動力の伝達状態の切り換え)のための動力と、を供給することができる。
【0087】
また、室内ユニット22(詳細には、制御部22a)は、引戸移動条件が成立することに応じて、駆動時間T1にわたり、モータ33へ電力供給を行うことで、引戸11を移動させる。このように、モータ33への電力供給時間を制限することで、引戸11が移動可能最大距離を超えて移動することを抑制でき、モータ33の破損を抑制できる。
【0088】
[1-7.文言の対応関係]
ここで、文言の対応関係について説明する。
電子施錠装置21が本開示における施錠装置の一例に相当し、第2板37が本開示における第2制限部の一例に相当する。室内ユニット22(詳細には、制御部22a)が本開示におけるモータ制御部の一例に相当し、バッテリ22bが本開示における電源の一例に相当する。
【0089】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0090】
(a)上記実施形態では、電子施錠装置21を備える引戸移動システム1について説明したが、本開示の引戸移動システムは、電子施錠装置21に代えて室外マルチリーダ24を備えない施錠装置を備えてもよい。この施錠装置は、サムターン23またはキーシリンダ25によって引戸11が施錠状態から解錠状態に切り換わることに応じて、室内ユニット22がモータ33に電力供給する構成であってもよい。このような施錠装置を備える引戸移動システムは、サムターン23またはキーシリンダ25を用いた引戸11の解錠操作が利用者によって実行されることに応じて、引戸11を開方向に移動できる。
【0091】
(b)上記実施形態では、電子施錠装置21が、サムターン23、キーシリンダ25、室外マルチリーダ24のいずれかにより引戸11の解錠操作を行う構成について説明したが、さらに、無線通信部を備えてもよい。無線通信部は、近距離無線通信よりも遠い距離での無線通信により解錠指令信号・施錠指令信号を受け付けるように構成されてもよい。室内ユニット22は、この無線通信部が解錠指令信号を受け付けることに応じて、引戸移動条件が成立したと判定してもよい。これにより、解除指令信号・施錠指令信号を出力するように構成された指令送信機を用いることで、利用者は、離れた距離から引戸の解錠操作・施錠操作を実施できる。とりわけ、解錠指令信号を受信した場合には、引戸移動システムは、引戸を開方向に移動してもよい。指令送信機は、例えば、リモコン、携帯端末装置、スマートフォン、携帯電話などで構成してもよい。
【0092】
(c)上記実施形態では、本開示のモータ制御部が、電子施錠装置21の室内ユニット22として備えられる構成について説明したが、本開示のモータ制御部は、施錠装置とは別に設けられてもよい。例えば、施錠装置とは別に、引戸に固定されたモータ制御装置を備えて、このモータ制御装置がモータ33を制御する構成であってもよい。モータ制御装置は、利用者からの引戸移動指令を受け付ける操作部(例えば、押しボタンなど)を備えてもよい。モータ制御装置は、操作部で利用者からの引戸移動指令を受け付けることに応じて、引戸移動条件が成立したと判定して、モータに電力を供給する構成であってもよい。この場合、既存の引戸に対して、施錠装置の取り替えや改造を行うことなく、モータ制御装置と引戸移動装置とを追加設置することで、モータの駆動力によって引戸を開方向に移動することが可能となる。このような引戸移動システムは、既存の引戸に対する設置作業の負担を軽減できる。
【0093】
(d)本開示の引戸移動装置および引戸移動システムは、モータ制御部が、施錠装置に加えて、施錠装置とは別に設けられたモータ制御装置にも備えられる構成であってもよい。このように複数箇所にモータ制御部を備えることで、より多くの方法で引戸の移動操作を実行できるため、利用者にとって利用しやすくなり、使い勝手を向上できる。
【0094】
(e)本開示の引戸移動装置および引戸移動システムは、利用者による解錠動作によって開扉動作を行う移動可能状態と、解錠動作されても開扉動作を行わない移動禁止状態とを切り換えるための切替操作部(例えば、切替スイッチなど)を備えてもよい。このような切替操作部を備えることで、引戸が移動することに支障がある状況下では、移動禁止状態に切り換えることで、引戸移動装置によって引戸が移動することを抑制できる。
【0095】
(f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0096】
1…引戸移動システム、11…引戸、19…レール、21…電子施錠装置、22…室内ユニット、22a…制御部、22b…バッテリ、23…サムターン、24…室外マルチリーダ、25…キーシリンダ、31…引戸移動装置、32…有線ケーブル、33…モータ、34…駆動力伝達部、35…第1板、37…第2板、41…第1ギヤ、45…第2ギヤ、45a…第1端面、45b…第2端面、45e…空間部、45e1…開口、53…第3ギヤ、53a…第3端面、53b…第4端面、53e…第2貫通穴、55…第1回転軸、57…第1移動部、57a…コイルバネ、58…第2移動部、58a…空間形成部、58a1…第1カム、58a2…第1当接部、58a3…第1端部、58b…突出部、58b1…第2カム、58b2…第2当接部、60…第1制限部、61…第4ギヤ、63…第2回転軸、65…回転抑制部。
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