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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085183
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】挟持工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 7/22 20060101AFI20240619BHJP
   B25B 7/02 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B25B7/22
B25B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199571
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000181480
【氏名又は名称】室本鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 保寛
【テーマコード(参考)】
3C020
【Fターム(参考)】
3C020PP01
3C020QQ05
(57)【要約】
【課題】先端に磁石を具備し、実用的で、製造が容易な挟持工具を提供する。
【解決手段】第1凹凸面を有する第1くわえ部と第1くわえ部に隣接する第1刃部と第1刃部に隣接する第1回転摺動部と第1回転摺動部に隣接する第1柄部を有する第1アームと、第2凹凸面を有する第2くわえ部と第2くわえ部に隣接する第2刃部と第2刃部に隣接する第2回転摺動部と第2回転摺動部に隣接する第2柄部を有する第2アームと、少なくとも1つの磁石を具備し、第1回転摺動部と第2回転摺動部とが同軸で互いに係合しており、第1柄部と第2柄部とを近接させる動作により第1凹凸面と第2凹凸面とが圧接されるとともに第1刃部と第2刃部とが当接し、第1くわえ部の第1凹凸面の背面および第2くわえ部の第2凹凸面の背面の少なくとも一方に凹部が設けられ、凹部に磁石の少なくとも一部が収容されている挟持工具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹凸面を有する第1くわえ部と、前記第1くわえ部に隣接する第1刃部と、前記第1刃部に隣接する第1回転摺動部と、前記第1回転摺動部に隣接する第1柄部と、を有する第1アームと、
第2凹凸面を有する第2くわえ部と、前記第2くわえ部に隣接する第2刃部と、前記第2刃部に隣接する第2回転摺動部と、前記第2回転摺動部に隣接する第2柄部と、を有する第2アームと、
少なくとも1つの磁石と、
を具備し、
前記第1回転摺動部と前記第2回転摺動部とが、同軸で互いに係合しており、
前記第1柄部と前記第2柄部とを近接させる動作により、前記第1凹凸面と前記第2凹凸面とが圧接されるとともに、前記第1刃部と前記第2刃部とが当接し、
前記第1くわえ部の前記第1凹凸面の背面および前記第2くわえ部の前記第2凹凸面の背面の少なくとも一方に凹部が設けられ、前記凹部に前記磁石の少なくとも一部が収容されている、挟持工具。
【請求項2】
前記第1くわえ部の前記第1凹凸面の背面および前記第2くわえ部の前記第2凹凸面の背面の両方に、前記凹部が設けられている、請求項1に記載の挟持工具。
【請求項3】
前記磁石が磁力によって一方の前記凹部に着脱可能に固定されている、請求項2に記載の挟持工具。
【請求項4】
前記磁石が固定されている前記凹部の底部の厚さは、0.5mm以上5mm以下である、請求項1に記載の挟持工具。
【請求項5】
前記磁石がネオジウム磁石である、請求項1に記載の挟持工具。
【請求項6】
前記磁石の中心の磁束密度が、4000G~6000G(ガウス)である、請求項1に記載の挟持工具。
【請求項7】
前記第1凹凸面または前記第2凹凸面における、最大の表面磁束密度が、100G(ガウス)以上である、請求項6に記載の挟持工具。
【請求項8】
前記磁石が、平面形状が円形のボタン形である、請求項1に記載の挟持工具。
【請求項9】
前記磁石の厚さが、7mm以下であり、直径が12mm以下である、請求項6に記載の挟持工具。
【請求項10】
第1凹凸面を有する第1くわえ部と、前記第1くわえ部に隣接する第1刃部と、前記第1刃部に隣接する第1回転摺動部と、前記第1回転摺動部に隣接する第1柄部と、を有する第1アームと、
第2凹凸面を有する第2くわえ部と、前記第2くわえ部に隣接する第2刃部と、前記第2刃部に隣接する第2回転摺動部と、前記第2回転摺動部に隣接する第2柄部と、を有する第2アームと、
を具備し、
前記第1回転摺動部と前記第2回転摺動部とが、同軸で互いに係合しており、
前記第1柄部と前記第2柄部とを近接させる動作により、前記第1凹凸面と前記第2凹凸面とが圧接されるとともに、前記第1刃部と前記第2刃部とが当接し、
前記第1くわえ部の前記第1凹凸面の背面および前記第2くわえ部の前記第2凹凸面の背面の少なくとも一方に、磁石の少なくとも一部を収容するための凹部が設けられている、挟持工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばペンチ、プライアなどの挟持工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、「ペンチの先に永久磁石を設けたペンチ」を提案している。
【0003】
特許文献2は、「ペンチに代表される先端で物を挟むなどの構造の工具において、先端の開閉に連動する2本のハンドルの各々の内側へ1個ずつの永久磁石を引き付けあうように取り付けて、ハンドルが引き付けられる工具で、先端を閉じたまま保持できる工具」を提案している。
【0004】
また、特許文献2は、「ペンチに代表される先端で物を挟むなどの構造の工具において、先端の開閉に連動する2本のハンドルの各々の内側へ1個ずつの永久磁石を弾け合うように取り付けて、ハンドルが弾かれる工具で、先端を開いたまま保持できる工具」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3126542号
【特許文献2】登録実用新案第3213287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の提案によれば、ペンチの先端に金属部品を引き付けることができるため、金属部品の把持作業が容易になるとともに、金属部品の落下を防止することが可能である。
【0007】
しかしながら、特許文献1には、ペンチの先に永久磁石を設けるための手法が記載されておらず、ペンチ本体2の先に永久磁石1が一体化形成された具体的態様しか提案されていない。このような一体化は極めて困難であり、実用的ではない。
【0008】
一方、特許文献2は、ペンチの先端が開いた状態または閉じた状態を保持させるために2本のハンドル(持ち手)2の内側に永久磁石4を互いに作用するように取り付けられており、永久磁石は従来のスプリング類の代替部品に過ぎない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面は、挟持工具に関する。その挟持工具は、第1アームと、第2アームと、少なくとも1つの磁石を具備する。第1アームは、第1凹凸面を有する第1くわえ部と、前記第1くわえ部に隣接する第1刃部と、前記第1刃部に隣接する第1回転摺動部と、前記第1回転摺動部に隣接する第1柄部と、を有する。第2アームは、第2凹凸面を有する第2くわえ部と、前記第2くわえ部に隣接する第2刃部と、前記第2刃部に隣接する第2回転摺動部と、前記第2回転摺動部に隣接する第2柄部と、を有する。前記第1回転摺動部と前記第2回転摺動部は、同軸で互いに係合している。前記第1柄部と前記第2柄部とを近接させる動作により、前記第1凹凸面と前記第2凹凸面とが圧接されるとともに、前記第1刃部と前記第2刃部とが当接する。前記第1くわえ部の前記第1凹凸面の背面および前記第2くわえ部の前記第2凹凸面の背面の少なくとも一方には凹部が設けられている。前記凹部には前記磁石の少なくとも一部が収容されている。
【0010】
本開示の別の側面は、挟持工具に関する。その挟持工具は、第1アームと、第2アームとを具備する。第1アームは、第1凹凸面を有する第1くわえ部と、前記第1くわえ部に隣接する第1刃部と、前記第1刃部に隣接する第1回転摺動部と、前記第1回転摺動部に隣接する第1柄部と、を有する。第2アームは、第2凹凸面を有する第2くわえ部と、前記第2くわえ部に隣接する第2刃部と、前記第2刃部に隣接する第2回転摺動部と、前記第2回転摺動部に隣接する第2柄部と、を有する。前記第1回転摺動部と前記第2回転摺動部は、同軸で互いに係合している。前記第1柄部と前記第2柄部とを近接させる動作により、前記第1凹凸面と前記第2凹凸面とが圧接されるとともに、前記第1刃部と前記第2刃部とが当接する。前記第1くわえ部の前記第1凹凸面の背面および前記第2くわえ部の前記第2凹凸面の背面の少なくとも一方には、磁石の少なくとも一部を収容するための凹部が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、先端に磁石を具備し、実用的で、製造が容易な挟持工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る挟持工具の構造を示す四面図とA矢視図である。
図2】第2実施形態に係る挟持工具の構造を示す四面図とB矢視図であるである。
図3】第3実施形態に係る挟持工具の構造を示す四面図とC矢視図であるである。
図4】第4実施形態に係る挟持工具の構造を示す四面図とA矢視図である。
図5】第5実施形態に係る挟持工具の構造を示す四面図とB矢視図であるである。
図6】第6実施形態に係る挟持工具の構造を示す四面図とC矢視図であるである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0014】
本開示に係る挟持工具(以下、「挟持工具(P)」とも称する。)は、第1アームと、第2アームと、少なくとも1つの磁石を備える。ただし、磁石が挟持工具(P)に着脱可能である場合、挟持工具(P)は、常には、磁石を具備しなくてもよい。
【0015】
第1アームと第2アームは、それぞれ長尺形状であり、一方側の端部の外側に力点があり、他方側の端部の内側に作用点がある。
【0016】
第1アームと第2アームを備える挟持工具(P)は、「てこ(梃子(Leverage))」の原理を利用した工具の一種である。挟持工具(P)の典型例として、ペンチ、プライアなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。挟持工具(P)は、「てこ」の原理を利用した挟持部材を広く包含する概念である。
【0017】
第1アームは、第1凹凸面を有する第1くわえ部と、第1くわえ部に隣接する第1刃部と、第1刃部に隣接する第1回転摺動部と、第1回転摺動部に隣接する第1柄部と、を有する。
【0018】
第2アームは、第2凹凸面を有する第2くわえ部と、第2くわえ部に隣接する第2刃部と、第2刃部に隣接する第2回転摺動部と、第2回転摺動部に隣接する第2柄部と、を有する。
【0019】
第1回転摺動部と第2回転摺動部は、同軸で互いに係合している。第1回転摺動部と第2回転摺動部は、同軸の回転軸を有する。第1アームと第2アームは、概ね対称な形状を有し、回転軸で交差している。第1アームと第2アームの第1くわえ部と第2くわえ部および第1柄部と第2柄部は、第1回転摺動部と第2回転摺動部の回転摺動に伴って開閉する。
【0020】
すなわち、挟持の対象物(金属部品など)を挟持しない状態では、第1柄部と第2柄部とを近接させる動作により、第1凹凸面と第2凹凸面とが圧接されるとともに、第1刃部と第2刃部とが当接する。
【0021】
第1くわえ部および第2くわえ部は、それぞれ第1アームおよび第2アームの先端部を構成している。第1くわえ部の第1凹凸面と第2くわえ部の第2凹凸面との間に挟持の対象物(金属部品など)が挟持もしくは把持される。第1凹凸面と第2凹凸面の凹凸のパターンは特に限定されず、挟持の対象物の形状に合わせて設計してよい。第1凹凸面と第2凹凸面は、挟持の対象物の保持を補助するとともに滑りを防止する役割を有する。
【0022】
第1くわえ部の第1凹凸面の背面および第2くわえ部の第2凹凸面の背面の少なくとも一方には凹部が設けられている。本開示の一態様では、第1くわえ部の第1凹凸面の背面または第2くわえ部の第2凹凸面の背面に凹部が設けられている。本開示の別の一態様では、第1くわえ部の第1凹凸面の背面および第2くわえ部の第2凹凸面の背面の両方に凹部が設けられている。
【0023】
凹部には磁石を収容することができる。凹部は、磁石の全体を収容してもよいが、磁石の少なくとも一部(例えば、磁石の40%以上の体積)を収容できればよい。第1くわえ部の第1凹凸面の背面および第2くわえ部の第2凹凸面の背面の両方に凹部が設けられている場合、両方の凹部に磁石を収容してもよいが、通常は、いずれか一方の凹部に磁石を収容すれば十分である。
【0024】
磁石が凹部に着脱可能に固定されている場合、挟持工具の使用者が任意にどちらか一方の凹部を選択して磁石を収容すればよい。磁石は磁力によって凹部に着脱可能に固定してもよい。この場合、挟持工具の使用者は任意のタイミングで容易にどちらか一方の凹部を選択して磁石を収容することができる。
【0025】
以上のように、挟持工具は、その作用点を有する先端に磁石を保持している。よって、先端に金属部品を引き付けることができるため、金属部品の把持作業が容易になるとともに、金属部品の落下を防止することが可能である。しかも、第1くわえ部および第2くわえ部の少なくとも一方に、例えば溝状の凹部を設け、その凹部に別体の磁石を固定する構成は、設計および製造が容易であり、実用性が高い。
【0026】
磁石を凹部に固定する方法は、磁力によって凹部に着脱可能に固定する場合に限定されない。例えば、溝状の凹部を構成する一対の壁部で磁石を挟み込み、壁部を内側に僅かに変形させ、壁部を磁石にかしめて固定してもよい。磁石を凹部の内壁に接着剤などを用いて接着してもよい。磁石を壁部に溶接してもよい。
【0027】
磁石が固定されている凹部の底部の厚さは、例えば、0.5mm以上5mm以下であり、1mm以上3mm以下でもよく、1.5mm以上3mm以下でもよい。磁石の磁力にもよるが、底部がこのような範囲の厚さであれば、磁力を挟持の対象の金属部品に十分に及ばせることができる。
【0028】
磁石の種類は、特に限定されず、いわゆる永久磁石であればよい。例えば、ネオジウム磁石が、安価かつ磁力が適度で好適である。
【0029】
磁石の中心の磁束密度は、例えば4000G~6000G(ガウス)であってもよい。
【0030】
第1凹凸面または第2凹凸面における、最大の表面磁束密度は、例えば100G(ガウス)以上であり、230G以上が望ましく、400G以上がより望ましい。
【0031】
磁石の形状は、特に限定されないが、例えば、平面形状が円形のボタン形であってもよい。このような形状の磁石は、磁力線の方向が均一であり、磁力が偏りにくく、金属部品の把持を容易にすると考えられる。
【0032】
ボタン形の磁石のサイズは、磁力が十分であれば小さいほど望ましい。磁石の厚さは、例えば、7mm以下でもよく、6mm以下でもよく、5mm以下でもよい。磁石の直径は、例えば、12mm以下でもよく、11mm以下でもよく、10mm以下でもよい。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、挟持工具(P)の具体的な第1実施形態に係る「ペンチ10」の正面図(a)、部分上面図(b)、下面図(c)、部分正面図(d)、および、くわえ部のA矢視図である。
【0034】
ペンチ10は、第1アーム100と、第2アーム200と、永久磁石400を備える。第1アーム100と第2アーム200は、それぞれ僅かにS字状に湾曲した長尺形状である。第1アーム100と第2アーム200は、それぞれの回転摺動部で交差し、角度θの回動領域を有する。各アームの全長は、例えば180mm~220mmである。
【0035】
具体的には、第1アーム100は、第1凹凸面111sを有する第1くわえ部110と、第1くわえ部110に隣接する第1刃部120と、第1刃部120に隣接する第1回転摺動部130と、第1回転摺動部130に隣接する第1柄部140を有する。
【0036】
同様に、第2アーム200は、第2凹凸面211sを有する第2くわえ部210と、第2くわえ部210に隣接する第2刃部220と、第2刃部220に隣接する第2回転摺動部(図示せず)と、第2回転摺動部に隣接する第2柄部240を有する。
【0037】
第1くわえ部110の先端から第1回転摺動部130の回転軸までの距離は、例えば、40mm~50mmであり、第1回転摺動部130の回転軸から第1柄部140の基端までの距離よりも十分に短い。同様に、第2くわえ部210の先端から第2回転摺動部の回転軸までの距離も同様であり、第2回転摺動部の回転軸から第1柄部240の基端までの距離よりも十分に短い。よって、第1柄部140と第2柄部240の外側が力点となり、第1くわえ部110と第2くわえ部210の内側が作用点となって梃子の原理を利用したペンチ10を構成している。
【0038】
第1回転摺動部130と第2回転摺動部は、互いに係合して同じ回転軸Caを有する回転摺動部330を形成している。回転摺動部330の直径は、例えば、20mm~25mmである。第1くわえ部110と第2くわえ部210は、第1柄部140と第2柄部240への外力の付与により、回転摺動部330を支点として角度θを限界として開閉する。各くわえ部の回転軸Caと平行な方向の厚さは、例えば、13mm~17mmであり、各凹凸面のペンチ10の長手方向に沿った長さは、例えば、11mm~15mmである。
【0039】
第1くわえ部110の第1凹凸面111sと第2くわえ部210の第2凹凸面211sとの間に挟持の対象物(金属部品など)が挟持もしくは把持される。第1凹凸面111sと第2凹凸面211sの凹凸のパターンは互いに対称である。
【0040】
パターンの一部は、釘、ワイヤなどの細長い部品を把持するのに適する第1溝部350hと第2溝部360hを形成している。第1溝部350hは、回転摺動部330の回転軸と細長い部品の長手方向を平行にして部品を把持する場合に部品の周面を固定する。第2溝部360hは、回転摺動部330の回転軸と細長い部品の長手方向を垂直にして部品を把持する場合に部品の周面を固定する。
【0041】
ここでは、第2くわえ部210の第2凹凸面211sの背面に、凹部270が設けられている。凹部270には小型の永久磁石400が収容されている。凹部の形状は、第2くわえ部210の先端から第2刃部220に進行する溝形状であり、溝の進行方向に垂直な断面形状は上部が開口した矩形である。
【0042】
磁石400の平面形状は、円形のボタン形であり、磁石400の厚さは、例えば、4mm~6mmであり、磁石の直径は、例えば、8mm~12mmである。このような永久磁石には、既存の安価な市販品を使用してもよい。
【0043】
磁石400の底面は凹部270の底部上面に当接している。第2くわえ部の先端側において、凹部270の底部の幅は、磁石の直径と概ね同じであり、第2くわえ部の基端側における凹部270の形状は、磁石400の形状に沿った半円形である。第2凹凸面211sから凹部270の底面に至るまでの底部の肉厚は平均的に均一である。
【0044】
凹部270は、第2くわえ部210の先端部の上部を部分的に切削で除去して形成してもよい。上記のような溝形状の凹部270は、例えば、既存のペンチのくわえ部の一部を切削加工するだけで得ることができるので、製造コストの増大の懸念は小さい。ただし、凹部270の形成方法は切削に限定されない。
【0045】
凹部270は、磁石400の全体を完全に収容できるほどの空間を有する必要はない。凹部270は、磁石400の磁力を作用点に十分に発現させるとともに、磁石が挟持の対象物を挟持する際に物理的障壁とならないように、磁石400の全体の概ね60%以上を収容できれば十分である。ペンチ10は、その作用点の外側の作用点に近接する位置に磁石400を過度に邪魔にならない程度に保持できればよい。
【0046】
上記構成によれば、第2くわえ部210の内側は作用点であるので、磁石400の磁力により作用点に金属部品を引き付けることができる。そのため、金属部品の把持作業が容易になるとともに、金属部品の落下を防止することが可能である。磁石400は、溝形状の凹部270に磁力で固定されている。あるいは、溝形状の凹部270を構成する一対の壁部271を内側に僅かに変形させ、壁部271を磁石400に押し付けることで凹部270に固定してもよい。あるいは、磁石400は、溝形状の凹部270の底部もしくは壁部271の内側に接着剤により接着してもよく、樹脂で磁石400を凹部270の内側に封止してもよい。
【0047】
磁石400が固定されている凹部270の底部の厚さは、磁石400の磁力にもよるが、例えば、1.5mm以上3mm以下でもよく、1.5mm以上2.5mm以下あってもよい。この場合、磁石400は、例えば、ネオジウム磁石が安価かつ磁力が適度で好適である。磁石400の表面磁束密度は、例えば4000G~6000G(ガウス)であることが望ましい。これにより、第1凹凸面または第2凹凸面における最大の表面磁束密度を、例えば230G以上、もしくは400G以上に制御しやすくなる。
【0048】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1および第2くわえ部110、210の形態が異なる点以外、第1実施形態と同様である。本実施形態では、第1くわえ部110の第1凹凸面111sと第2くわえ部210の第2凹凸面211sが、よりシンプルなジグザグの凹凸形状を有する。磁石400が固定されている凹部270の底部の厚さは、例えば、1.2mm以上1.8mm以下であってもよい。
【0049】
(第3実施形態)
本実施形態は、第1および第2くわえ部110、210の形態および各部位の外形が異なる点以外、第1実施形態と同様である。本実施形態では、第1くわえ部110の第1凹凸面111sと第2くわえ部210の第2凹凸面211sが、よりシンプルなジグザグの凹凸形状を有する。磁石400が固定されている凹部270の底部の厚さは、例えば、1.2mm以上1.8mm以下であってもよい。
【0050】
(第4実施形態)
本実施形態は、第1くわえ部110の第1凹凸面111sと第2くわえ部210の第2凹凸面211sの両方の背面に、それぞれ第1凹部170および凹部(第2凹部)270が設けられている点以外、第1実施形態と同様である。第1凹部170の構造は、第2凹部270と同様の溝形状であり、一対の壁部171と底部で構成されている。図示例では磁石400は磁力によって第2凹部に着脱可能に固定されており、第1凹部170に自在に付け替え可能である。
【0051】
(第5実施形態)
本実施形態は、第1くわえ部110の第1凹凸面111sと第2くわえ部210の第2凹凸面211sの両方の背面に、それぞれ第1凹部170および凹部(第2凹部)270が設けられている点以外、第2実施形態と同様である。第1凹部170の構造は、第2凹部270と同様の溝形状であり、一対の壁部171と底部で構成されている。図示例では磁石400は磁力によって第2凹部に着脱可能に固定されており、第1凹部170に自在に付け替え可能である。
【0052】
(第6実施形態)
本実施形態は、第1くわえ部110の第1凹凸面111sと第2くわえ部210の第2凹凸面211sの両方の背面に、それぞれ第1凹部170および凹部(第2凹部)270が設けられている点以外、第3実施形態と同様である。第1凹部170の構造は、第2凹部270と同様の溝形状であり、一対の壁部171と底部で構成されている。図示例では磁石400は磁力によって第2凹部に着脱可能に固定されており、第1凹部170に自在に付け替え可能である。
【0053】
(付記)
上記記載によって以下の技術が開示される。
(技術1)
第1凹凸面を有する第1くわえ部と、前記第1くわえ部に隣接する第1刃部と、前記第1刃部に隣接する第1回転摺動部と、前記第1回転摺動部に隣接する第1柄部と、を有する第1アームと、
第2凹凸面を有する第2くわえ部と、前記第2くわえ部に隣接する第2刃部と、前記第2刃部に隣接する第2回転摺動部と、前記第2回転摺動部に隣接する第2柄部と、を有する第2アームと、
少なくとも1つの磁石と、
を具備し、
前記第1回転摺動部と前記第2回転摺動部とが、同軸で互いに係合しており、
前記第1柄部と前記第2柄部とを近接させる動作により、前記第1凹凸面と前記第2凹凸面とが圧接されるとともに、前記第1刃部と前記第2刃部とが当接し、
前記第1くわえ部の前記第1凹凸面の背面および前記第2くわえ部の前記第2凹凸面の背面の少なくとも一方に凹部が設けられ、前記凹部に前記磁石の少なくとも一部が収容されている、挟持工具。
(技術2)
前記第1くわえ部の前記第1凹凸面の背面および前記第2くわえ部の前記第2凹凸面の背面の両方に、前記凹部が設けられている、技術1に記載の挟持工具。
(技術3)
前記磁石が磁力によって一方の前記凹部に着脱可能に固定されている、技術1または2に記載の挟持工具。
(技術4)
前記磁石が固定されている前記凹部の底部の厚さは、0.5mm以上5mm以下である、技術1~3のいずれか1つに記載の挟持工具。
(技術5)
前記磁石がネオジウム磁石である、技術1~4のいずれか1つに記載の挟持工具。
(技術6)
前記磁石の中心の磁束密度が、4000G~6000G(ガウス)である、技術1~5のいずれか1つに記載の挟持工具。
(技術7)
前記第1凹凸面または前記第2凹凸面における、最大の表面磁束密度が、100G(ガウス)以上である、技術1~6のいずれか1つに記載の挟持工具。
(技術8)
前記磁石が、平面形状が円形のボタン形である、技術1~7のいずれか1つに記載の挟持工具。
(技術9)
前記磁石の厚さが、7mm以下であり、直径が12mm以下である、技術1~8のいずれか1つに記載の挟持工具。
(技術10)
第1凹凸面を有する第1くわえ部と、前記第1くわえ部に隣接する第1刃部と、前記第1刃部に隣接する第1回転摺動部と、前記第1回転摺動部に隣接する第1柄部と、を有する第1アームと、
第2凹凸面を有する第2くわえ部と、前記第2くわえ部に隣接する第2刃部と、前記第2刃部に隣接する第2回転摺動部と、前記第2回転摺動部に隣接する第2柄部と、を有する第2アームと、
を具備し、
前記第1回転摺動部と前記第2回転摺動部とが、同軸で互いに係合しており、
前記第1柄部と前記第2柄部とを近接させる動作により、前記第1凹凸面と前記第2凹凸面とが圧接されるとともに、前記第1刃部と前記第2刃部とが当接し、
前記第1くわえ部の前記第1凹凸面の背面および前記第2くわえ部の前記第2凹凸面の背面の少なくとも一方に、磁石の少なくとも一部を収容するための凹部が設けられている、挟持工具。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、様々な形態のペンチ、プライアなどの挟持工具に適用し得る。
【符号の説明】
【0055】
10:ペンチ
100:第1アーム、
110:第1くわえ部
111s:第1凹凸面
120:第1刃部
130:第1回転摺動部
140:第1柄部
170:第1凹部
171:壁部
200:第2アーム
210:第2くわえ部
211s:第2凹凸面
220:第2刃部
240:第2柄部
270:凹部(第2凹部)
271:壁部
330:回転摺動部
350h:第1溝部
360h:第2溝部
400:磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6