IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井住友建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-管理方法 図1
  • 特開-管理方法 図2
  • 特開-管理方法 図3
  • 特開-管理方法 図4
  • 特開-管理方法 図5
  • 特開-管理方法 図6
  • 特開-管理方法 図7
  • 特開-管理方法 図8A
  • 特開-管理方法 図8B
  • 特開-管理方法 図9
  • 特開-管理方法 図10
  • 特開-管理方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085186
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/93 20060101AFI20240619BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G01N21/93
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199575
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】藤原 保久
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏一朗
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 友一郎
(72)【発明者】
【氏名】大津 愼一
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB03
2G051AC16
2G051BA20
2G051BB03
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
(57)【要約】
【課題】
構造物の管理において、十分な損傷の度合いの精度を向上させる構造物の方法を提供する。管理
【解決手段】
構造物を点検する所定の面に、定規Rと複数のマークMkとを設置し(S1)、所定の面から所定の距離、離れて設置されたレール5を移動して構造物を点検する点検装置20により、所定の面を撮影し(S2)、撮影した、定規RおよびマークMkの画像を含む画像データから、構造物の損傷の度合いを評価する(S5)。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を点検する所定の面に、定規と複数のマークとを設置する設置ステップと、
前記所定の面から所定の距離、離れて設置されたレールを移動して前記構造物を点検する点検装置により、前記所定の面を撮影する撮影ステップと、
前記撮影した、前記定規および前記マークの画像を含む画像データから、前記構造物の損傷の度合いを評価する評価ステップと、
を含む構造物の管理方法。
【請求項2】
前記設置ステップにおいて、前記構造物を点検する前記所定の面において高さが同じと見なせる場所に、前記定規と複数の前記マークとを設置することを特徴とする請求項1に記載の構造物の管理方法。
【請求項3】
前記構造物の損傷の度合いが、ひび割れの長さ、ひび割れの幅、ひびの密度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構造物の管理方法。
【請求項4】
前記構造物の損傷の度合いに基づき、前記構造物を補強するための補強材を設置する位置および使用する前記補強材の量を計算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構造物の管理方法。
【請求項5】
前記点検装置により、前記補強材が設置された前記所定の面を撮影する補強後撮影ステップと、
前記補強材が設置された前記所定の面を撮影した補強後の画像データから、前記補強材の設置を評価する補強材評価ステップと、
を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の構造物の管理方法。
【請求項6】
前記構造物に対する作業を行うための仮想現実用のデータを、前記画像データに基づき生成する仮想現実データ生成ステップを更に含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構造物の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の損傷状態を管理する管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設橋梁等の構造物の老朽化に伴い、コンクリート等の検査方法や診断方法が開発されている。例えば、特許文献1には、撮像対象に関する情報を基に、撮像対象物の概況図を表示部に表示することと、表示部に表示された撮像対象物の対象領域の指定に応じて、飛行情報に基づいて飛行して撮影を行う飛行撮像装置が対象領域を撮影するための対象領域を撮像する飛行経路を含む飛行情報を生成することと、を含む飛行情報生成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-106904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンクリート床版等の裏側等に対して、飛行体による単なる撮影では、ひび割れの長さ、ひび割れの幅、ひび割れの密度といった損傷の度合いの精度が、構造物の管理において、十分でないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、構造物の管理において、十分な損傷の度合いの精度を向上させる構造物の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、構造物を点検する所定の面に、定規と複数のマークとを設置する設置ステップと、前記所定の面から所定の距離、離れて設置されたレールを移動して前記構造物を点検する点検装置により、前記所定の面を撮影する撮影ステップと、前記撮影した、前記定規および前記マークの画像を含む画像データから、前記構造物の損傷の度合いを評価する評価ステップと、を含む。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記設置ステップにおいて、前記構造物を点検する前記所定の面において高さが同じと見なせる場所に、前記定規と複数の前記マークとを設置することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、前記構造物の損傷の度合いが、ひび割れの長さ、ひび割れの幅、ひびの密度であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記構造物の損傷の度合いに基づき、前記構造物を補強するための補強材を設置する位置および使用する前記補強材の量を計算することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、前記点検装置により、前記補強材が設置された前記所定の面を撮影する補強後撮影ステップと、前記補強材が設置された前記所定の面を撮影した補強後の画像データから、前記補強材の設置を評価する補強材評価ステップと、を更に含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、前記構造物に対する作業を行うための仮想現実用のデータを、前記画像データに基づき生成する仮想現実データ生成ステップを更に含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造物を点検する所定の面から所定の距離、離れて移動しながら撮影した画像において、所定の面に設置された定規と複数のマークに基づき奥行きの精度が向上し、損傷の寸法等を精度良く計算でき、構造物の損傷の度合いを評価するので、構造物の管理において、十分な損傷の度合いの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る管理システムの概略構成の一例を示す模式図である。
図2図1の床版の角間の一例を示す模式図である。
図3図1の点検装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
図4図1の点検装置の制御ボックスの概要構成の一例を示すブロック図である。
図5図1の管理装置の概要構成の一例を示すブロック図である。
図6】評価動作の一例を示すフローチャートである。
図7】マーク設置の一例を示す模式図である。
図8A】画像処理結果の一例を示す模式図である。
図8B】画像処理結果の一例を示す模式図である。
図9】補強作業の動作の一例を示すフローチャートである。
図10】補強材の設置の一例を示す模式図である。
図11】補強後の評価動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、管理システム等に対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0015】
[1.管理システムおよび各装置の構成および機能概要]
(1.1 管理システムの構成および機能概要)
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係る管理システムの構成および概要機能について、図1を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る管理システムの概略構成の一例を示す模式図である。図2は、床版の角間の一例を示す模式図である。図3は、の点検装置の概略構成の一例を示す斜視図である。図4は、点検装置の制御ボックスの概要構成の一例を示すブロック図である。図5は、管理装置の概要構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る管理システムSは、点検対象の高架、橋梁等の構造物のコンクリート床版1の下に組み立てられた足場3に設置されたレール5と、高架、橋梁等の構造物のコンクリート床版1の裏面等を撮影する点検装置20と、点検装置20が撮影した画像に基づき、建設物のメンテナンスに関する評価をする管理装置30と、を備える。
【0019】
図2に示すように、コンクリート床版1の裏は、主桁1aと横桁1bにより、複数の角間10に区切られている。角間10は、床版面11とハンチ12とを有する。床版面11はほぼ平面である。ハンチ12は、勾配を有し、根付けのところをなだらかに厚くするようになっている。
【0020】
足場3は、点検対象の構造物に沿って、所定の面から所定距離、離れて組み立てられる。組み立てられた足場3の上に、レール5が設置される。なお、壁の場合、壁に沿って所定距離、離れてレールが設置される。レール5が、点検対象の構造物に沿って、コンクリート床版1の裏から所定距離、離れて設置されたレールの一例である。作業者Wが、足場3の上で、構造物の点検作業や、補強材の設置等の所定の作業を行う。作業者Wは、仮想現実用のゴーグルや眼鏡、ヘッドマウントディスプレイを身につけて作業をしてもよい。仮想現実として、VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実)、MR(Mixed Reality;複合現実)、または、SR(Substitutional Reality:代替現実)等が挙げられる。
【0021】
点検装置20が、レール5の上を自走して、コンクリート床版1を撮影する。管理装置30が、撮影した画像データからコンクリート床版1等の状態を評価する。なお、構造物として、既設のRC(Reinforced Concrete)床版、鋼桁、PC(Prestressed Concrete)合成桁等が挙げられる。
【0022】
図3に示すように、レール5は、レール本体5bと、足場3に設置する脚部5fと、を有する。
【0023】
レール本体5bは、金属製の1本のレールである。レール本体5bの断面形状は、例えば、高さ方向が長い長方形である。レール本体5bの材質は、アルミニウム等の軽量の金属が好ましい。脚部5fは、高さ調整の部材を有し、レール本体5bを安定して、足場3上に設置させる。
【0024】
レール本体5bの上面には、ベルトBtが設置される。ベルトBtは、例えば、歯を有する歯付きベルトである。ベルトBtの材質は、例えば、ポリウレタン等のプラスチック製である。ベルトBtは、ガラス繊維やアラミド繊維の心線を有してもよい。
【0025】
ベルトBtの裏面の歯がレール本体5bの上面に向くように、レール本体5bの端部に、ベルトBtの端が、固定部材により固定される。なお、ベルトBtの代わりに、可撓性部材の一例として、伸び縮みしにくいロープ、ワイヤ、テープでもよい。
【0026】
図4および図5に示すように、点検装置20は、撮影カメラ21と、照明器具22と、制御ボックス23と、走行台車24と、レール5に設置されるベルトBtを収納するベルト収納部25と、を有する。
【0027】
撮影カメラ21は、例えば、オートフォーカス機能を有するカメラである。撮影カメラ21は、カメラレンズから光を取り込み、カラーの静止画を撮影する。撮影カメラ21は、ステレオ撮影するカメラである。撮影カメラ21は、レール5を移動して、構造物を撮影する撮影手段の一例である。
【0028】
照明器具22は、LED素子(図示せず)と、LED素子に電力を供給するバッテリー(図示せず)と、LED素子からの光を絞るレンズと、内部で発生する熱を逃がす通気口と、を有する。照明器具22は、例えば、撮影カメラ21の両脇に2台設置される。
【0029】
制御ボックス23は、上面に電源スイッチと、画面と、を有する。制御ボックス23は、内部に、駆動モータ(図示せず)と、バッテリー(図示せず)と、電子制御基板(図示せず)と、を有する。駆動モータは、例えば、ステッピングモータ、サーボモータ等である。なお、駆動モータは、制御ボックス23の外側の下部でもよい。
【0030】
制御ボックス23が、点検装置20の走行と、撮影カメラ21の撮影および画像の記憶、照明器具22の照明を制御する。
【0031】
制御ボックス23は、点検装置20において、例えば、撮影カメラ21を挟んで、ベルト収納部25と反対が側に設置される。
【0032】
走行台車24は、点検装置20がレール本体5bから転倒、または、外れないように、レール本体5bを両側方から挟むように、複数の車輪24aを有する。走行台車24の上に、撮影カメラ21、照明器具22、制御ボックス23等が固定される。
【0033】
ベルト収納部25は、レール5上に張って利用されるベルトBtを巻き取って収納する。
【0034】
点検装置20は、コンピュータ機能により設定した撮影カメラ21の撮影条件、走行台車24の移動距離と移動回数を制御し、自動撮影を行う。撮影条件として、撮影カメラ21のシャッタースピード、絞り、焦点等が挙げられる。
【0035】
図4に示すように、点検装置20は、撮影部20aと、照明部20bと、駆動部20cと、記憶部20dと、表示部20eと、操作部20fと、制御部20gと、を有する。
【0036】
撮影部20aは、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、または、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子を有する。撮影部20aは、撮影カメラ21に対応する。
【0037】
照明部20bは、照明器具22に対応する。
【0038】
駆動部20cは、駆動モータおよび駆動ローラ等の点検装置20の駆動系に対応する。
【0039】
記憶部20dは、例えば、シリコンディスクドライブやハードディスクドライブ等からなる。記憶部20dは、制御ボックス23内に設置される。記憶部20dは、点検装置20を制御するための各種プログラム等を記憶したりする。各種プログラムは、オペレーティングシステム等が挙げられる。なお、各種プログラムは、例えば、無線通信網等のネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしてもよい。
【0040】
なお、撮影部20aが撮影した画像データは、撮影カメラ21のSDカード等のメモリカードに記憶してもよいし、記憶部20dに記憶してもよい。
【0041】
表示部20eは、液晶表示素子または有機EL素子等を有する。表示部20eは、制御ボックス23の上面の画面23bに対応する。
【0042】
操作部20fは、例えば、電源スイッチ23a等の操作ボタン等によって構成されている。なお、表示部20eがタッチパネルのようなタッチスイッチ方式の表示パネルの場合、操作部20fは、ユーザが接触または近接した表示部20eの位置情報を取得する。
【0043】
制御部20gは、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有する。制御部20gは、制御ボックス23内に設置される。制御部20gは、CPUが、ROMや、RAMや、記憶部20dに記憶された各種プログラムを読み出して実行する。制御ボックス23の電子制御基板が、制御部20gに対応する。
【0044】
制御部20gは、撮影部20aの撮影のタイミングを制御する。制御部20gは、照明部20bの照明を制御する。制御部20gは、駆動部20cを制御して、駆動モータを作動させて点検装置20を、所定の距離、移動させる。なお、制御部20gは、撮影カメラ21の制御部を有してもよい。
【0045】
なお、点検装置20は、管理装置30と無縁通信または有線通信を行う通信部を備えてもよい。点検装置20は、通信部を介して、管理装置30に撮影した画像データを送信する。
【0046】
図5に示すように、コンピュータとして機能する管理装置30は、通信部31と、表示部32と、記憶部33と、操作部34と、入出力インターフェース部35と、制御部36とを有する。そして、制御部36と入出力インターフェース部35とは、システムバス37を介して接続されている。例えば、管理装置30は、サーバ、パーソナルコンピュータやスマートフォンを含む携帯型無線電話機やPDA等の携帯端末である。
【0047】
通信部31は、無線通信機能または有線通信機能を有する。通信部31は、点検装置20等との通信状態を制御する。
【0048】
表示部32は、例えば、液晶表示素子または有機EL素子等によって構成されている。表示部32には、評価結果の情報を表示される。表示部32は、仮想現実用のゴーグルや眼鏡、ヘッドマウントディスプレイでもよい。作業者Wが身につけるヘッドマウントディスプレイ等は、作業者Wの作業を撮影するカメラを備えてもよい。
【0049】
記憶部33は、例えば、シリコンディスクドライブやハードディスクドライブ等からなる。記憶部33は、管理装置30を制御するための各種プログラム等を記憶したりする。各種プログラムは、オペレーティングシステム、画像認識等を行う人工知能(AI:Artificial Intelligence)のプログラム等が挙げられる。なお、各種プログラムは、例えば、無線通信網等のネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、CD、DVD等の記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしてもよい。
【0050】
記憶部33は、点検装置20が撮影した画像データを、撮影番号等に関連付けて記憶する。記憶部33には、ひびの密度と損傷度とを紐付けたデータベース、損傷度と補強方法とを紐付けたデータベース等が構築されている。補強方法として、ひびの密度と損傷度等に関連付けた補強材の幅、間隔が挙げられる。アラミド繊維等の補強材の材質と、補強材の幅、間隔とが関連付けられていてもよい。記憶部33には、作業者Wの作業者IDと共に、作業情報が記憶される。作業情報として、作業の日時、作業場所、作業対象の角間10、使用した補強材、作業の状況の画像等が挙げられる。
【0051】
操作部34は、例えば、キーボードおよびマウス等によって構成されている。操作部34は、表示部32がタッチパネルのようなタッチスイッチ方式の表示パネルでもよい。
【0052】
入出力インターフェース部35は、通信部31等と制御部36とのインターフェースである。
【0053】
制御部36は、例えば、CPUと、ROMと、RAMと、を有する。制御部36は、CPUが、ROMや、RAMや、記憶部33に記憶された各種プログラムを読み出して実行する。
【0054】
[2.点検装置20の動作例]
(2.1 評価の動作)
次に、管理システムSにおける評価の動作例について、図を用いて説明する。
【0055】
図6は、評価の動作の一例を示すフローチャートである。図7は、マーク設置の一例を示す模式図である。図8Aおよび図8Bは、画像処理結果の一例を示す模式図である。
【0056】
図6に示すように、構造物を点検する所定の面に複数のマークMkが設置される(ステップS1)。具体的には、図7に示すように、足場3の上の作業者Wが設置作業を行い、構造物を点検する所定の面において高さが同じと見なせる場所に、定規RとマークMkとが設置される。例えば、主桁1aの上に、定規RおよびマークMkが設置される。特に、主桁1aおよび横桁1bの上において、床版面11の縁に対応したところの4隅に、マークMkが設置される。さらに、定規Rの上に、マークMkがされる。図7に示すように、定規Rの2箇所、特に両側付近にマークMkを設置することにより、定規Rの視点と終点が画像認識で自動判別できるようになる。床版面11において、ハンチ12との境界に、マークMkが設置される。特に、床版面11において、長方形の頂点になるように、マークMkが設置されることが好ましい。ここで、コンクリート床版1の裏は、点検対象の一例である。構造物を点検する所定の面の一例として、主桁1a、横桁1b、角間10、床版面11等が挙げられる。構造物を点検する所定の面は、高さが同じと見なせる場所として、主桁1a、横桁1b、床版面11とハンチ12との境界等の高さが揃ったところが好ましい。定規RおよびマークMkは、両面テープ等で付けられる。定規RおよびマークMkは、筆記具等で描かれてもよい。定規Rは、一定間隔の目盛りを有すればよい。なお、使用するマークMkの画像データは、記憶部33等に予め登録しておく。また、マークMkは、自由に登録可能で、撮影対象に適したマークを用意して使用することが可能である。
【0057】
次に、管理システムSは、所定の面を撮影する(ステップS2)。具体的には、点検装置20が、所定距離、レール5上を移動する毎に、点検装置20が、コンクリート床版1の裏面を撮影する。より具体的には、点検装置20の制御部20gからの制御により、2台の照明器具22が点灯してコンクリート床版1の角間10を照明して、定規RおよびマークMkの画像を含む画像データを取得するため、撮影カメラ21が角間10を撮影する。ここで、所定距離は、撮影カメラ21の撮影画角と被写体のコンクリート床版1の裏面との距離とに基づき決定される。そして、撮影カメラ21が、メモリに撮影した画像データを記憶する。撮影カメラ21が、所定距離の移動毎の撮影毎に、画像データのファイルを生成する。画像データのファイル名は、撮影順等によりナンバリングされる。
【0058】
点検装置20の撮影動作の終了後、例えば、撮影カメラ21からメモリカードを取り出され、評価装置30に接続して、制御部36は、撮影した画像データを記憶部33に記憶される。
【0059】
評価装置30の制御部36は、各所定距離の移動毎に撮影された各画像データのファイルを、記憶部33から読み出す。制御部36は、各所定距離の移動毎に撮影された各画像を、マークMkに基づき、つなぎ合わせて、角間10毎の画像を合成する。
【0060】
次に、管理システムSは、欠陥箇所を抽出した画像を生成する(ステップS3)。具体的には、評価装置30の制御部36は、撮影画像におけるマークMkの画像に基づき、撮影画像から床版形状を認識し、AI機能等により画像処理を行い、図8Aに示すように、角間10毎に亀裂等の欠陥箇所を抽出した画像を生成する。
【0061】
次に、管理システムSは、マークMkと定規Rに基づき欠陥箇所を定量化する(ステップS4)。具体的には、評価装置30の制御部36は、画像処理を行い、図8Bに示すように、所定の面において高さが同じと見なせる場所にある定規Rの画像およびマークMkの画像に基づき、床版寸法、ひび割れの長さ、ひび割れの幅、ひび割れの密度、損傷(浮き)等を計算する。特に、床版面11においてハンチ12との境界に設置されたマークMkを基準にして、制御部36は、欠陥箇所を定量化する。また、制御部36は、主桁1aの上に設置された定規RおよびマークMkを基準にしたり、床版面11においてハンチ12との境界に設置されたマークMkと、主桁1aの上に設置された定規RおよびマークMkとを基準にしたりして、欠陥箇所を定量化してもよい。なお、制御部36は、ハンチ12の部分のマークMkと定規Rの両端のマークMkを、画像処理で自動判別して、縮尺と角間10の寸法を算出する。画像処理は、AI機能等により実行される。
【0062】
次に、管理システムSは、構造物の損傷の度合いを評価する(ステップS5)。具体的には、制御部36は、計算されたひび割れの長さ、ひび割れの幅、ひびの密度等の定量化された欠陥箇所に基づき、記憶部33のデータベースを参照して、コンクリートの損傷度合いを角間10毎に評価する。制御部36は、例えば、ひびの密度から、損傷度合いを判定したり、損傷度より、最適な補強方法を選定したりする。制御部36は、補修・補強設計、補修・補強図面を作成してもよい。
【0063】
なお、管理装置30は、AI機能により、角間10毎の合成画像から、コンクリートの状態を評価してもよい。
【0064】
次に、管理システムSは、評価結果を表示する(ステップS6)。具体的には、評価装置30の制御部36は、寸法、ひびの密度、損傷度合い、選択された補強方法等の評価結果を表示部32に表示する。なお、評価装置30は、作業者Wが身につけるヘッドマウントディスプレイに表示するため、ひび等を強調した画像や、評価結果を重畳させる仮想現実用のデータを生成してもよい。
【0065】
(2.2 補強作業の動作)
次に、管理システムSにおける補強作業の動作例について、図を用いて説明する。図9は、補強作業の動作の一例を示すフローチャートである。図10は、補強材の設置の一例を示す模式図である。
【0066】
図9に示すように、管理システムSは、構造物の損傷の度合いに基づき、補強材を設置する位置および使用する補強材の量を計算する(ステップS10)。具体的には、管理装置30の制御部36は、記憶部33のデータベースを参照して、撮影された画像、マークMkの位置、抽出された欠陥箇所、構造物の損傷の度合い等に基づき、図10に示すように、主桁1a方向の補強材15の幅および間隔、並びに、横桁1b方向の補強材16の幅および間隔等の補強材の最適配置を算出する。なお、制御部36は、補強材15および補強材16のそれぞれの材質を算出してもよい。
【0067】
次に、管理システムSは、補強材の設置するための仮想現実データを生成する(ステップS11)。具体的には、管理装置30の制御部36は、作業者Wが身につけるヘッドマウントディスプレイに表示するため、設置する補強材の画像や手順等の情報を重畳させる仮想現実用のデータを生成する。
【0068】
次に、管理システムSは、仮想実現データを表示する(ステップS12)。具体的には、管理装置30の制御部36は、表示部33の一例である作業者Wが身につけるヘッドマウントディスプレイに、生成した仮想実現データを表示する
【0069】
次に、管理システムSは、作業情報の記録する(ステップS13)。管理装置30の制御部36は、作業者Wが身につけたカメラからの画像を作業情報として記憶部33のデータベースに記憶する。これらの作業情報は、管理用に使用される。
【0070】
なお、管理装置30は、撮影した画像、撮影された画像、マークMkの位置、抽出された欠陥箇所等に基づき、CAD図を作成してもよい。
【0071】
(2.3 補強後の評価の動作)
次に、管理システムSにおける補強後の評価の動作例について、図を用いて説明する。図11は、補強後の評価の動作の一例を示すフローチャートである。
【0072】
図11に示すように、管理システムSは、補強材が設置された所定の面を撮影する(ステップS15)。具体的には、点検装置20が、ステップS2のように、補強材が設置された所定の面を撮影する。
【0073】
なお、撮影する前に、ステップS1のように、マークMkおよび定規Rが設置されてもよい。また、マークMkおよび定規Rの残っている場合、マークMkおよび定規Rの設置作業は、省略されてもよい。
【0074】
次に、管理システムSは、補強材を抽出した画像を生成する(ステップS16)。具体的には、評価装置30の制御部36が、ステップS3のように、撮影画像におけるマークMkの画像に基づき、撮影画像から床版形状を認識し、AI機能等により画像処理を行い、角間10毎に補強材を抽出した画像を生成する。
【0075】
次に、管理システムSは、補強材の設置状態を定量化する(ステップS17)。具体的には、評価装置30の制御部36は、ステップS10において計算された補強材15および補強材16の幅および間隔等と、抽出した補強材の画像とを比較して、マークMkおよび定規Rの画像に基づき、各補強材の位置のずれ、間隔のずれ、補強材の数の違い等により、補強材の設置状態を定量化する。
【0076】
次に、管理システムSは、補強材の設置を評価する(ステップS18)。具体的には、制御部36は、定量化された各補強材の設置状態に基づき、記憶部33のデータベースを参照して、補強材の設置を角間10毎に評価する。なお、作業者Wの作業を撮影した作業情報に基づき、作業手順、作業時間を加味して、補強材の設置を評価してもよい。
【0077】
次に、管理システムSは、評価結果を表示する(ステップS19)。具体的には、評価装置30の制御部36は、補強材等の評価結果を表示部32に表示する。なお、評価装置30は、作業者Wが身につけるヘッドマウントディスプレイに表示するため、補強材のずれを強調した画像や、評価結果を重畳させる仮想現実用のデータを生成して、表示してもよい。
【0078】
実施形態に係る管理システムSによれば、構造物を点検する所定の面から所定の距離、離れて、レール5上を移動しながら撮影した画像において、所定の面に設置された定規Rと複数のマークMkに基づき奥行きの精度が向上し、損傷の寸法等を精度良く計算でき、構造物の損傷の度合いを評価するので、構造物の管理において、十分な損傷の度合いの精度を向上させることができる。
【0079】
また、構造物を点検する所定の面において高さが同じと見なせる場所に、定規Rと複数のマークMkとを設置する場合、奥行きが揃っているので、奥行きの精度がより向上し、損傷の寸法等を精度良く計算でき、構造物の損傷の度合いを評価するので、構造物の管理において、十分な損傷の度合いの精度を向上させることができる。
【0080】
また、床版面11にターゲットである定規RとマークMkを貼り付け、撮影画像から床版形状を自動で認識できる。床版面に規定の定規RおよびマークMkを、所定の面において高さが同じと見なせる場所に貼り付けて、床版寸法認識精度が向上した。
【0081】
構造物の損傷の度合いが、ひび割れの長さ、ひび割れの幅、ひびの密度である場合、所定の面において高さが同じと見なせる場所に設置された定規Rと複数のマークMkに基づき、ひび割れの長さ、ひび割れの幅、ひびの密度を精度良く計算し、ひび割れの長さ等から構造物の損傷の度合いを評価するので、構造物の管理において、十分な損傷の度合いの精度を向上させることができる。
【0082】
構造物の損傷の度合いに基づき、構造物を補強するための補強材15、16を設置する位置および使用する補強材15、16の量を計算する場合、損傷の度合いに基づいた補強材15、16の位置、補強材15、16の量が、適切になる。
【0083】
点検装置20により、補強材15、16が設置された所定の面を撮影し、補強材15、16が設置された所定の面を撮影した補強後の画像データから、補強材の設置を評価する場合、繊維補強後の撮影画像から、補強材等のシート貼り付けの出来形管理ができ、補強後の管理がしやすくなる。また、シート貼り付け後のひび割れ状況の確認を将来にわたって管理できる。
【0084】
構造物に対する作業を行うための仮想現実用のデータを、画像データに基づき生成する場合、ヘッドマウントディスプレイを身につけた作業者Wが、仮想現実の画像に従い、作業するので、作業しやすくなる。例えば、MR技術を用いて、補強材等のシート貼り付けのCADデータを取り込み、シート貼り付けの墨だし作業を支援できる。
【符号の説明】
【0085】
1:コンクリート床版(構造物)
10:角間(所定の面)
11:床版面(所定の面)
12:ハンチ(所定の面)
5:レール
20:点検装置
30:評価装置
Mk:マーク
S:管理システム
R:定規
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11