(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085189
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240619BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240619BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240619BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240619BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20240619BHJP
B23K 26/324 20140101ALI20240619BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/304 611B
H01L21/304 601Z
H01L21/304 611A
H01L21/78 Q
H01L21/68 N
H01L21/02 C
B23K26/57
B23K26/324
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199580
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000108753
【氏名又は名称】タツモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十川 良則
(72)【発明者】
【氏名】山邊 浩
(72)【発明者】
【氏名】スニル ウィクラマナヤカ
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4E168AE05
4E168BA90
4E168JA13
5F057AA12
5F057AA41
5F057BA12
5F057BA15
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5F057BB05
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5F057CA14
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5F131BA51
5F131BA52
5F131BA53
5F131CA23
5F131CA41
5F131EC43
5F131EC62
5F131EC65
(57)【要約】
【課題】分割層を用いて半導体基板を形成するプロセスを備えた半導体デバイスの製造技術において、半導体基板の形成後における当該半導体基板のハンドリングを容易にする。
【解決手段】半導体デバイスの製造方法は、分割層形成ステップと、固着部形成ステップと、分割ステップと、を備える。分割層形成ステップでは、半導体を主成分とする第1基板の表面から所定深さの位置に、当該所定深さ分の厚さを持った半導体基板を第1基板から分離させることを可能にするための分割層を形成する。分割層形成ステップの後、固着部形成ステップにおいて、第1基板のうちの半導体基板になる部分を第2基板に固着させるための固着部を、所定気圧よりも低気圧の雰囲気下において環状に形成し、それによって当該環状内を密封する。固着部形成ステップの後、分割ステップにおいて、上記所定気圧の雰囲気下で第1基板を分割層にて分割する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体を主成分とする第1基板の表面から所定深さの位置に、当該所定深さ分の厚さを持った半導体基板を前記第1基板から分離させることを可能にするための分割層を形成する分割層形成ステップと、
前記分割層形成ステップの後、前記第1基板のうちの前記半導体基板になる部分を第2基板に固着させるための固着部を、所定気圧よりも低気圧の雰囲気下において環状に形成し、それによって当該環状内を密封する固着部形成ステップと、
前記固着部形成ステップの後、前記所定気圧の雰囲気下において、前記第1基板を前記分割層にて分割する分割ステップと、
を備える、半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記固着部形成ステップでは、前記第1基板のうちの前記半導体基板になる部分の周縁部に、その周縁部の全周に亘って前記固着部を形成する、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記固着部形成ステップは、
前記第1基板の表面のうちの少なくとも前記周縁部上の領域、又は、前記第2基板の表面のうちの少なくとも前記周縁部と対向することになる領域に、金属層を形成する金属層形成ステップと、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記金属層を介在させ、その状態で、当該金属層のうちの前記周縁部上の部分にレーザ光を照射することにより、当該部分を加熱して前記固着部を形成するレーザ光照射ステップと、
を含む、請求項2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記分割ステップの後、前記半導体基板に複数設けられているデバイス領域のそれぞれに、半導体デバイスが備えることになる要素の少なくとも一部を作り込むデバイス形成ステップと、
前記デバイス形成ステップの後、前記半導体基板及び前記第2基板を、保持シートに、その保持シートのほうへ当該半導体基板を向けた姿勢で保持し、その状態で、少なくとも前記第2基板を、前記環状の固着部の内側の位置にて切断する切断ステップと、
を更に備える、請求項2又は3に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記切断ステップの後、前記第2基板のうちの前記環状の固着部の内側の部分を前記半導体基板から剥離する剥離ステップ、
を更に備える、請求項4に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記剥離ステップの後、前記第2基板のうちの剥離後に残った環状部分の内側において、前記保持シートのほうへ向けられた前記半導体基板の表面とは反対側に位置する当該半導体基板の背面上に、その半導体基板に対する補強基板として所定厚さの補強層を形成する補強層形成ステップ、
を更に備える、請求項5に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記分割層形成ステップでは、前記分割層を形成した後、前記第1基板の周縁部を切り落とし、
前記固着部形成ステップでは、前記分割層形成ステップにて前記周縁部が切り落とされた前記第1基板を新たな第1基板として、当該新たな第1基板のうちの前記半導体基板になる部分の周縁部に、その周縁部の全周に亘って前記固着部を形成する、請求項2又は3に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記分割ステップの後、前記所定気圧の雰囲気下又は当該所定気圧よりも高気圧の雰囲気下で、前記半導体基板及び前記第2基板に熱処理を施すことにより、前記半導体基板と前記第2基板とを、前記固着部の内側の領域にて固着させる、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記固着部形成ステップでは、前記第1基板のうちの前記半導体基板になる部分に複数設けられているデバイス領域ごとに、当該デバイス領域の周縁部に、その周縁部の全周に亘って前記固着部を形成する、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記固着部形成ステップは、
前記第1基板の表面又は前記第2基板の表面に金属層を形成する金属層形成ステップと、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記金属層を介在させ、その状態で、当該金属層のうちの前記デバイス領域のそれぞれの周縁部上の部分にレーザ光を照射することにより、当該部分を加熱して前記固着部を形成するレーザ光照射ステップと、
を含む、請求項9に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記分割ステップの後、前記半導体基板に設けられている前記デバイス領域のそれぞれに、半導体デバイスが備えることになる要素の少なくとも一部を作り込むデバイス形成ステップと、
前記デバイス形成ステップの後、前記半導体基板及び前記第2基板を、保持シートに、その保持シートのほうへ当該半導体基板を向けた姿勢で保持し、その状態で、前記半導体基板及び前記第2基板を、隣接する2つの前記デバイス領域にそれぞれ形成されている前記固着部の間の位置にて切断する切断ステップと、
を更に備える、請求項9又は10に記載の半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造技術として、半導体ウェハ(例えば、厚さが300μm程度のウェハ)を研磨することによって所望の厚さ(例えば、150μm以下の厚さ)の半導体基板を形成するプロセスを備えたものが存在する。
【0003】
近年、300℃に達する高温でも半導体デバイスの正常な動作を可能にする半導体材料として、GaAs、SiC、GaN、AlN、BN、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ(WBG)材料が注目されている。WBG材料は、スイッチング速度の高速化を可能にする半導体材料でもあり、その点で、高速通信用の半導体デバイスの材料として期待されている。また、WBG材料は、高電界に対する耐性を備えた半導体材料でもあり、その点で、高電圧用の半導体デバイスの材料としても期待されている。このように、WBG材料は、様々な面で半導体デバイスの材料としての利点を備えている。
【0004】
一方、WBG材料は、高価な材料である。それにも拘わらず半導体ウェハの研磨によってWBG材料の半導体基板を形成した場合には、半導体ウェハのうちの研磨で除去した部分が無駄になり、製造コストの大幅な増大を招いてしまう。
【0005】
そこで、このような無駄を防ぐべく、半導体ウェハの表面から水素イオンを注入することによって当該半導体ウェハ内に分割層を形成し、その分割層にて半導体ウェハを分割することによって半導体基板を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような技術によれば、半導体ウェハを構成する半導体材料を無駄にせずに、厚さの薄い半導体基板を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した水素イオンの注入によって半導体基板を形成する技術では、分割層での半導体ウェハの分割時において、半導体基板になる部分を支持体(ガラス基板など)で保持しておく必要がある。一方、半導体ウェハからの分離後の半導体基板は、当該半導体基板に回路を形成するプロセスなどにおいて、支持体に保持されたままの状態で高温雰囲気に晒される。このため、半導体基板を支持体で保持するために半導体ウェハと支持体とを接合しておく必要があるが、接合手段として接着剤を選択することは難しい。
【0008】
そこで従来は、半導体ウェハと支持体との接合手段として、それらの接合面の両方にCMP(Chemical Mechanical Polishing)を施してから、当該接合面どうしを直接貼り合わせることにより、原子間力又は分子間力によって接合面どうしを全域に亘って結合させる、といった手段(直接接合法)が用いられていた。
【0009】
しかし、CMPを用いた接合においては、(1)CMPのプロセスに要するコストが高くなるといった問題や、(2)半導体ウェハと支持体とが強固に結合するため、当該半導体ウェハからの分離後の半導体基板から支持体を除去したい場合には、支持体を研磨などで削り取るプロセスが必要になるといった問題があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、分割層を用いて半導体基板を形成するプロセスを備えた半導体デバイスの製造技術において、半導体基板の形成後における当該半導体基板のハンドリングを容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体デバイスの製造方法は、分割層形成ステップと、固着部形成ステップと、分割ステップと、を備える。分割層形成ステップでは、半導体を主成分とする第1基板の表面から所定深さの位置に、当該所定深さ分の厚さを持った半導体基板を第1基板から分離させることを可能にするための分割層を形成する。分割層形成ステップの後、固着部形成ステップにおいて、第1基板のうちの半導体基板になる部分を第2基板に固着させるための固着部を、所定気圧よりも低気圧の雰囲気下において環状に形成し、それによって当該環状内を密封する。固着部形成ステップの後、分割ステップにおいて、上記所定気圧の雰囲気下で第1基板を分割層にて分割する。
【0012】
上記製造方法によれば、固着部形成ステップにおいて、所定気圧(例えば大気圧)よりも低気圧の雰囲気下において環状の固着部を形成することにより、所定気圧の雰囲気(分割ステップで用いられる雰囲気)下においては、固着部の環状内の気圧(内気圧)と環状外の気圧(外気圧)とに圧力差を生じさせることができ、その結果として、第1基板と第2基板との間には、圧力差に起因した吸着力を生じさせることができる。従って、所定気圧の雰囲気下においては、固着部による接合力と、内気圧と外気圧との圧力差に起因した吸着力とによって、第1基板と第2基板とを強固に接合することができる。よって、第1基板と第2基板とを従来のように接合面全域に亘って結合させなくても(即ち、CMPを用いた接合を行わずとも)、分割ステップにて第1基板から分離させた半導体基板を第2基板に保持しておくだけの十分な接合力を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分割層を用いて半導体基板を形成するプロセスを備えた半導体デバイスの製造技術において、半導体基板の形成後における当該半導体基板のハンドリングが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る製造方法を処理順に示した概念図である。
【
図2】
図1の続きの処理を処理順に示した概念図である。
【
図3】実施形態にて形成される固着部の形状を示した平面図である。
【
図4】第1変形例に係る製造方法の一部を処理順に示した概念図である。
【
図5】(A)第2変形例に係る製造方法にて実行される分割層形成ステップを示した概念図、及び(B)比較例を示した概念図である。
【
図6】第4変形例に係る製造方法の一部を処理順に示した概念図である。
【
図7】第4変形例にて形成される固着部の形状を示した平面図である。
【
図8】
図6及び
図7の製造方法についての更なる変形例を示した(A)概念図及び(B)平面図である。
【
図9】第5変形例にて形成される固着部Qの形状についての1つ目の例を示した平面図である。
【
図10】第5変形例にて形成される固着部Qの形状についての(A)2つ目の例及び(B)3つ目の例をそれぞれ示した平面図である。
【
図11】(A)第6変形例に係る製造方法にて実行される固着部形成ステップ及び切断ステップを示した概念図、及び(B)第6変形例にて形成される固着部の形状を示した平面図である。
【
図12】第8変形例に係る製造方法にて実行される切断ステップ及び剥離ステップを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る半導体デバイスの製造方法について、その実施形態及び変形例を具体的に説明する。尚、以下に説明する製造方法は、周知の各種装置を用いて実現することができる。
【0016】
[1]実施形態
図1及び
図2は、実施形態に係る製造方法を処理順に示した概念図である。この製造方法では、分割層形成ステップS1、固着部形成ステップS2、分割ステップS3、デバイス形成ステップS4、切断ステップS5、剥離ステップS6、及び個片化ステップS7が、この順に実行される。以下、各ステップについて具体的に説明する。
【0017】
<分割層形成ステップS1>
分割層形成ステップS1(
図1参照)では、半導体を主成分とする第1基板11の表面11aから所定深さDtの位置に分割層111を形成する。ここで、第1基板11は、特に限定されるものではないが、例えば単結晶体の半導体ウェハであり、その主成分(半導体)には、GaAs、SiC、GaN、AlN、BN、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ(WBG)材料を用いることができる。また、分割層111は、所定深さDt分の厚さTdを持った半導体基板Kを第1基板11から分離させることを可能にするための層であり、第1基板11の表面11aからの水素イオンの注入によって形成することができる。水素イオンを注入する方法によれば、表面11aから約10μmの深さの位置又はそれよりも浅い位置に分割層111を形成することができ、その結果として、厚さTdの薄い半導体基板Kを得ることができる。
【0018】
ここで、分割層111の形成には、水素イオンを注入する方法に代えて、表面11aから所定深さDtの位置を焦点としてレーザ光を照射する方法を用いることができる。この方法によれば、深さ方向において焦点の位置を変化させることができるため、所望の深さの位置に分割層111を形成することができる。よって、レーザ光を照射する方法によれば、水素イオンを注入する方法よりも深い位置(例えば、表面11aから約50~150μmの深さの位置)に分割層111を形成することができ、その結果として、厚さTdの大きい半導体基板Kを得ることができる。
【0019】
第1基板11は、後述する分割ステップS3において分割層111にて分割され、その結果として、所定深さDt分の厚さTdを持った半導体基板Kが、第1基板11から分離される。ここで、第1基板11の分割時においては、半導体基板Kになる部分を支持体で保持しておく必要がある。そこで、次の固着部形成ステップS2では、支持体となる第2基板12を第1基板11の表面11aに接合する。
【0020】
<固着部形成ステップS2>
第2基板12は、特に限定されるものではないが、例えば多結晶体の半導体ウェハであり、その主成分(半導体)には、GaAs、SiC、GaN、AlN、BN、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ(WBG)材料を用いることができる。尚、第2基板12には、半導体ウェハに代えて、半導体に限定されない別の材料(Si、サファイア、クォーツなど)で形成された基板を用いてもよい。
【0021】
固着部形成ステップS2では、第1基板11のうちの半導体基板Kになる部分を第2基板12に固着させるための固着部Qを、所定気圧Ptよりも低気圧の雰囲気下において環状に形成し、それによって当該環状内を密封する。ここで、所定気圧Ptは、後述の分割ステップS3で用いられる雰囲気の気圧であり、特に限定されるものではないが、例えば大気圧である。
【0022】
具体的に、固着部形成ステップS2(
図1参照)では、金属層形成ステップS21と、レーザ光照射ステップS22と、がこの順に実行される。
【0023】
金属層形成ステップS21では、第1基板11の表面11a全体に金属層13を形成する。特に限定されるものではないが、金属層13は、蒸着法などの成膜法を用いて1μm以下の厚さで形成される。また、金属層13の主成分には、Cu、Al、Cr、Ti、Ta、Auなどの金属を用いることができる。
【0024】
その後、レーザ光照射ステップS22において、第1基板11と第2基板12とを、それらの間に金属層13が介在した状態となるように対向させる。そして、その状態で、当該金属層13のうちの固着部Qの形成を予定している部分(本実施形態では、第1基板11の周縁部112上の部分。詳細については後述する(
図3参照))にレーザ光を照射することにより、当該部分を加熱する。このとき、第1基板11及び第2基板12は、金属層13のうちの固着部Qの形成を予定している部分との密着度が高まるように、石英板などによって挟圧されてもよい。
【0025】
このような金属層13へのレーザ光の照射によれば、レーザ光の照射箇所(固着部Qの形成を予定している部分)において、金属層13を、第1基板11及び第2基板12と共に溶融させ、又は、金属層13の主成分である金属を第1基板11及び第2基板12内へ拡散させることができる。そして、その結果として、第1基板11及び第2基板12と金属層13とのそれぞれの界面に、第1基板11及び第2基板12の主成分(半導体など)と金属との化合物(金属シリサイドなど)や合金(金属-Si合金など)が形成され、それにより、第1基板11(半導体基板Kになる部分)と第2基板12とを強固に結合する固着部Qが形成されることになる。
【0026】
そして、そのような固着部Qが、所定気圧Ptよりも低気圧の雰囲気下において連続的且つ環状に形成されることにより、当該環状内が、所定気圧Ptよりも低気圧の状態のまま密封されることになる。
【0027】
図3は、本実施形態にて形成される固着部Qの形状を示した平面図である。
図3に示されるように、本実施形態では、第1基板11の周縁部112(具体的には、第1基板11のうちの半導体基板Kになる部分の周縁部。
図1も参照)に、その周縁部112の全周に亘って固着部Qを形成する。
図3の例では、第1基板11は円板状であり、その周縁部112に沿って固着部Qが円環状に形成されている。
【0028】
尚、固着部Qの形状は、円環状に限らず、第1基板11の周縁形状に応じて別の形(多角形など)の環状に適宜変更することができる。また、本実施形態のように第1基板11の周縁部112に固着部Qを形成する場合には、金属層形成ステップS21では、第1基板11の表面11a全体に金属層13を形成する場合に限らず、表面11aのうちの周縁部112上の領域にだけ金属層13を形成してもよいし、表面11aのうちの固着部Qの形成を予定している部分にだけ金属層13を形成してもよい。更に、金属層形成ステップS21では、第1基板11の表面11aに金属層13を形成することに代えて、第2基板12の表面12aに金属層13を形成してもよい。この場合も、金属層形成ステップS21では、第2基板12の表面12a全体に金属層13を形成する場合に限らず、表面12aのうちの周縁部112と対向することになる領域にだけ金属層13を形成してもよいし、表面12aのうちの固着部Qの形成を予定している部分にだけ金属層13を形成してもよい。
【0029】
このような固着部形成ステップS2によれば、所定気圧Pt(例えば大気圧)よりも低気圧の雰囲気下において環状の固着部Qを形成することにより、所定気圧Ptの雰囲気(後述の分割ステップS3で用いられる雰囲気)下においては、固着部Qの環状内の気圧(内気圧)と環状外の気圧(外気圧)とに圧力差を生じさせることができ、その結果として、第1基板11と第2基板12との間には、圧力差に起因した吸着力を生じさせることができる。従って、所定気圧Ptの雰囲気下においては、固着部Qによる接合力と、内気圧と外気圧との圧力差に起因した吸着力とによって、第1基板11と第2基板12とを強固に接合することができる。よって、第1基板11と第2基板12とを従来のように接合面全域に亘って結合させなくても(即ち、CMPを用いた接合を行わずとも)、後述の分割ステップS3にて第1基板11から分離させた半導体基板Kを第2基板12に保持しておくだけの十分な接合力を得ることができる。
【0030】
従って、本実施形態のように固着部Qを周縁部112に沿って環状に形成した場合には、半導体基板Kのうちの周縁部112を、固着部Qによる接合力によって第2基板12で保持しつつ、半導体基板Kのうちの固着部Qの内側の部分(複数のデバイス領域Rdが設けられる部分)については、圧力差に起因した吸着力によって第2基板12で保持することができ、その結果として、半導体基板Kを、十分な接合力を以て第2基板12で保持することができる。
【0031】
<分割ステップS3>
分割ステップS3(
図1参照)では、雰囲気の気圧を所定気圧Pt(例えば大気圧)となるように調整する。これにより、第1基板11のうちの半導体基板Kとなる部分が、十分な接合力(固着部Qによる接合力と、内気圧と外気圧との圧力差に起因した吸着力)を以て第2基板12に保持されることになる。そして、分割ステップS3では、当該所定気圧Ptの雰囲気下において、第1基板11を分割層111にて分割する。
【0032】
これにより、分割層111が形成されいた深さ(所定深さDt)分の厚さTdを持った半導体基板Kが、第2基板12で保持されたままの状態で第1基板11から分離される。そして、この半導体基板Kに対して、以下に説明するデバイス形成ステップS4が実行される。一方、第1基板11のうちの半導体基板K以外の残部11R(分割後の残りの部分)は、新たな半導体基板K及び半導体デバイスの製造のために再利用される。
【0033】
<デバイス形成ステップS4>
デバイス形成ステップS4(
図2参照)では、半導体基板Kに複数設けられているデバイス領域Rd(
図3も参照)のそれぞれに、半導体デバイスが備えることになる要素の少なくとも一部(以下、「要素Gd」と称す)を作り込む。特に限定されるものではないが、デバイス形成ステップS4では、各デバイス領域Rdに、MOSFETやショットキーダイオードなどの要素Gdを形成することができる。尚、半導体基板Kに要素Gdを形成する前に、半導体基板Kの表面Ka(分割層111での分割によって現れた表面)に研磨を施すことにより、当該表面Kaの平滑度(表面粗さ)を、半導体基板Kへの要素Gdの作り込みに必要な平滑度となるように調整してもよい。
【0034】
このようなデバイス形成ステップS4は、1000℃を超える高温で実行されることが多い。ここで、半導体基板Kの膨張係数が第2基板12の膨張係数と異なっている場合を考える。この場合、半導体基板Kと第2基板12とを従来のように接合面全域に亘って結合させていた(即ち、CMPを用いた接合を行っていた)とすると、そのように接合面全域で結合していることが原因となって、デバイス形成ステップS4を高温で実行したときに、半導体基板K及び第2基板12のうちの膨張係数の大きい一方の基板が、他方の基板を引っ張って膨張係数以上に膨張させようとし、逆に、他方の基板は、一方の基板の膨張を妨げようとすることになる。このため、半導体基板K及び第2基板12には応力が発生し、その応力が歪みなどの欠陥となって半導体基板Kや第2基板12に現れるおそれがある。また、半導体基板Kに発生した応力は、当該半導体基板Kに形成されるMOSFETやショットキーダイオードなどの要素Gdに欠陥を発生させる原因にもなり得る。
【0035】
一方、本実施形態では、半導体基板Kと第2基板12とは、固着部Qの内側では互いに結合されていない。このため、デバイス形成ステップS4を高温で実行した場合、固着部Qの内側では、半導体基板K及び第2基板12のうちの膨張係数の大きい一方の基板は、他方の基板から独立して湾曲することができ、その結果として、それらの2つの基板は何れも、自身の膨張係数に応じた膨張量で膨張することができる。よって、半導体基板K及び第2基板12の何れにも応力が発生しにくく、従って、半導体基板Kに形成されるMOSFETやショットキーダイオードなどの要素Gdにも欠陥が発生しにくい。
【0036】
<切断ステップS5>
切断ステップS5(
図2参照)では、半導体基板K及び第2基板12を、保持シート14に、その保持シート14のほうへ当該半導体基板Kを向けた姿勢で保持する。そして、その状態で、第2基板12及び半導体基板Kを、環状の固着部Qの内側の位置にて当該固着部Qに沿って環状に切断する。具体的には、切断線が、半導体基板Kに設けられている全てのデバイス領域Rdを包囲した切断線となるように、第2基板12及び半導体基板Kの切断を実行する。このときの切断方法には、ブレードダイシング法、プラズマエッチング法、レーザアブレーション法などを用いることができる。
【0037】
本実施形態では、半導体基板Kと第2基板12とは、固着部Qの内側では互いに結合されていない。このため、環状の固着部Qの内側での切断により、半導体基板K及び第2基板12のうちの切断箇所より内側の部分が、当該固着部Qから切り離された状態になる。即ち、それらの内側の部分は、固着部Qによる結合から解放されることになる。また、その切断により、固着部Qによる環状内の密封が解除され、その結果として、内気圧と外気圧との圧力差で生じていた吸着力が消滅することになる。従って、第2基板12のうちの切断箇所より内側の部分(以下、「内側部分121」と称す)は、固着部Q及び半導体基板Kの何れからも分離した状態となる。換言すれば、第2基板12の内側部分121は、半導体基板Kからの剥離が容易な状態となる。
【0038】
<剥離ステップS6>
剥離ステップS6(
図2参照)では、第2基板12の内側部分121を、当該第2基板12と金属層13と界面にて半導体基板Kから剥離する。これにより、第2基板12のうちの剥離後(内側部分121の剥離後)に残った環状部分122の内側において、金属層13を露出させることができる。その後、露出した金属層13を、研磨やエッチングなどの方法を用いて金属層13を除去することにより、環状部分122の内側において、半導体基板Kを露出させることができる。
【0039】
尚、上述した固着部形成ステップS2において、第1基板11の表面11aに金属層13を形成することに代えて、第2基板12の表面12aに金属層13に形成した場合には、剥離ステップS6では、第2基板12の内側部分121を、金属層13と半導体基板Kとの界面にて当該半導体基板Kから剥離することができる。この場合、第2基板12の内側部分121を剥離するだけ、半導体基板Kを露出させることができる。また、金属層形成ステップS21において、第1基板11の表面11aのうちの周縁部112上の領域、又は、第2基板12の表面12aのうちの周縁部112と対向することになる領域にだけ金属層13を形成した場合には、周縁部112の内側では、半導体基板Kと第2基板12との間に金属層13が介在しないため、この場合も、第2基板12の内側部分121を剥離するだけ、半導体基板Kを露出させることができる。
【0040】
<個片化ステップS7>
個片化ステップS7(
図2参照)では、保持シート14に半導体基板Kを保持したままの状態で、その半導体基板Kに切断加工を施すことにより、当該半導体基板Kに設けられている複数のデバイス領域Rdをそれぞれ個片化する。具体的には、複数のデバイス領域Rdを区分けする境界線Lb(
図3参照)に沿って半導体基板Kを切断することにより、当該複数のデバイス領域Rdをそれぞれ個片化する。このときの切断方法には、ブレードダイシング法、プラズマエッチング法、レーザアブレーション法などを用いることができる。これにより、MOSFETやショットキーダイオードなどの要素Gdを備えた複数の半導体デバイスが製造される。
【0041】
本実施形態の製造方法によれば、上述したように、環状の固着部Qによる接合力と、環状内の気圧(内気圧)と環状外の気圧(外気圧)との圧力差に起因した吸着力とによって、第1基板11と第2基板12とを強固に接合することができる。従って、第1基板11と第2基板12とを従来のように接合面全域に亘って結合させなくても(即ち、CMPを用いた接合を行わずとも)、分割ステップS3にて第1基板11から分離させた半導体基板Kを第2基板12に保持しておくだけの十分な接合力を得ることができる。また、固着部Qの内側では半導体基板Kと第2基板12とを互いに結合させないため、切断ステップS5における環状の固着部Qの内側での切断により、第2基板12の内側部分121を半導体基板Kから容易に剥離することができ、当該内側部分121の剥離によって半導体基板Kを露出させることができる。
【0042】
このように、本実施形態の製造方法によれば、分割層111を用いて半導体基板Kを形成するプロセスを備えた半導体デバイスの製造技術において、半導体基板Kの形成後(本実施形態では分割ステップS3の実行後)における当該半導体基板Kのハンドリングが容易になる。
【0043】
[2]変形例
[2-1]第1変形例
図4は、第1変形例に係る製造方法の一部を処理順に示した概念図である。上述した製造方法において、剥離ステップS6の後、且つ、個片化ステップS7の前に、補強層形成ステップS8を実行してもよい。具体的には、補強層形成ステップS8において、第2基板12のうちの剥離後(内側部分121の剥離後)に残った環状部分122の内側において、保持シート14のほうへ向けられた半導体基板Kの表面Kaとは反対側に位置する当該半導体基板Kの背面Kb(第1基板11の表面11aであった面)上に、その半導体基板Kに対する補強基板として所定厚さTeの補強層21を形成する。より具体的には、スピンコート法やスプレーコート法などの塗布方法を用いて、補強材料(例えば、熱可塑性材料など)を、第2基板12の環状部分122の内側にて半導体基板Kの背面Kb上に塗布することにより、所定厚さTeの補強層21を形成することができる。尚、補強材料は、電気絶縁材であってもよし、導電材であってもよい。
【0044】
そして、個片化ステップS7では、半導体基板Kを切断するときに、平面視したときの半導体基板Kの切断位置と同じ位置で補強層21をも切断し、それにより、半導体基板Kに設けられている複数のデバイス領域Rdをそれぞれ個片化する。これにより、補強基板21Sで支持された半導体デバイスを製造することができる。
【0045】
[2-2]第2変形例
図5(A)は、第2変形例に係る製造方法にて実行される分割層形成ステップS1を示した概念図である。上述した製造方法において、第1基板11として、
図5(A)に示されるように外周面11dに丸みを帯びている(換言すれば、外周面11dが凸面になっている)基板が用いられてもよい。その一方で、そのような形状の第1基板11を用いた場合には、分割層111の形成後、そのまま分割ステップS3を実行したとすると、
図5(B)に示されるように、分割ステップS3で形成された半導体基板Kの外周縁には、鋭いエッジ11eが形成されてしまう。そして、このような鋭いエッジ11eの部分は、半導体デバイスの製造過程において、他の部材を傷付けたり、欠けて半導体基板Kに欠陥を生じさせたりするおそれがある。
【0046】
そこで、
図5(A)に示されるように、分割層111を形成した後、第1基板11の周縁部112(外周面11dが丸みを帯びた部分)を切り落としてもよい。そして、当該周縁部112が切り落とされた第1基板11を新たな第1基板11として、上述した固着部形成ステップS2からのプロセスを実行してもよい。このように第1基板11の周縁部112(外周面11dが丸みを帯びた部分)を切り落とすことにより、上記のような鋭いエッジ11eが半導体基板Kの外周縁に形成されることを防止することができる。
【0047】
尚、上記のような鋭いエッジ11eが形成されることを防止するという観点からは、分割層111の形成後に第1基板11の周縁部112(外周面11dが丸みを帯びた部分)を切り落とすという方法に代えて、第1基板11の周縁部112(外周面11dが丸みを帯びた部分)を切り落とした後に、分割層111を形成してもよい。
【0048】
[2-3]第3変形例
上述した製造方法において、デバイス形成ステップS4を高温で実行する場合であっても、上述したような基板の膨張が原因となる問題(基板の膨張によって生じた応力を緩和できずに基板や要素Gdの欠陥となって現れる問題)が生じるおそれがない場合(例えば、半導体基板Kの膨張係数と第2基板12の膨張係数とが同じである場合など)には、分割ステップS3の後に以下のようなプロセスを実行してもよい。
【0049】
ここで、固着部形成ステップS2で形成される環状の固着部Qによれば、当該環状内が、所定気圧Ptよりも低気圧の状態のまま密封されるため、所定気圧Ptの雰囲気下又は当該所定気圧Ptよりも高気圧の雰囲気下においては、固着部Qの環状内の気圧(内気圧)と環状外の気圧(外気圧)とに圧力差を生じさせることができ、その結果として、第1基板11と第2基板12との間には、圧力差に起因した吸着力を生じさせることができる。従って、この吸着力により、第1基板11と第2基板12とを密着、或いは、それらの基板の間に金属層13が介在している場合には金属層13に当該基板を密着させることができる。
【0050】
そこで、分割ステップS3の後、上述した密着の状態を維持したまま(即ち、所定気圧Ptの雰囲気下又は当該所定気圧Ptよりも高気圧の雰囲気下で)、半導体基板K及び第2基板12に熱処理を施すことにより、それらの界面に、第1基板11及び第2基板12の主成分(半導体など)と金属層13の主成分である金属との化合物(金属シリサイドなど)や合金(金属-Si合金など)を生じさせ、その結果として、半導体基板Kと第2基板12とを固着部Qの内側の領域においても固着させてもよい。
【0051】
このように圧力差に起因した吸着力を利用して固着部Qの内側の領域をも固着させる方法は、1000℃以下の低温(例えば、400℃)で熱処理を行う場合にも実現し得る(共晶接合など)。この場合、半導体基板Kの膨張係数が第2基板12の膨張係数と異なっている場合であっても、それらの膨張量に大きな差を生じさせずに固着部Qの内側の領域を固着させることができる。換言すれば、膨張係数の異なりに起因した大きな応力を発生させずに、固着部Qの内側の領域を固着させることができる。従って、半導体基板Kと第2基板12とを接合面全域に亘って固着させたい場合であって、且つ、接合面全域の固着がその後のプロセスにて問題とならない場合(例えば、デバイス形成ステップS4を高温で実行しない場合など)には、そのように低温での熱処理で固着部Qの内側の領域をも固着させる方法を用いることができる。
【0052】
[2-4]第4変形例
図6は、第4変形例に係る製造方法の一部を処理順に示した概念図である。また、
図7は、本変形例にて形成される固着部Qの形状を示した平面図である。上述した製造方法において、固着部形成ステップS2では、第1基板11のうちの半導体基板Kになる部分に複数設けられているデバイス領域Rdごとに、当該デバイス領域Rdの周縁部に、その周縁部の全周に亘って固着部Qを環状に形成してもよい。このとき、固着部Qは、所定気圧Ptよりも低気圧の雰囲気下において連続的且つ環状に形成され、それにより、当該環状内が、所定気圧Ptよりも低気圧の状態のまま密封される。
図7の例では、各デバイス領域Rdの形状は四角形であり、その周縁部に沿って固着部Qが四角形の環状に形成されている。尚、固着部Qの形状は、四角形の環状に限らず、各デバイス領域Rdの周縁形状に応じて別の形(円形や多角形など)の環状に適宜変更することができる。
【0053】
このような固着部Qの形成によれば、所定気圧Ptの雰囲気下においては、デバイス領域Rdごとに、固着部Qの環状内の気圧(内気圧)と環状外の気圧(外気圧)とに圧力差を生じさせることができ、その結果として、第1基板11と第2基板12との間には、圧力差に起因した吸着力を複数箇所で生じさせることができる。従って、所定気圧Ptの雰囲気下においては、固着部Qによる接合力と、内気圧と外気圧との圧力差に起因した吸着力とによって、第1基板11と第2基板12とを強固に接合することができる。よって、第1基板11と第2基板12とを従来のように接合面全域に亘って結合させなくても(即ち、CMPを用いた接合を行わずとも)、分割ステップS3にて第1基板11から分離させた半導体基板Kを第2基板12に保持しておくだけの十分な接合力を得ることができる。
【0054】
そして、分割ステップS3及びデバイス形成ステップS4の後、切断ステップS5では、半導体基板K及び第2基板12を、保持シート14に保持した状態で、隣接する2つのデバイス領域Rdにそれぞれ形成されている固着部Qの間の位置にて切断することにより、半導体基板Kに設けられている複数のデバイス領域Rdをそれぞれ個片化することができる。その結果として、支持基板12S(第2基板12の切断によって形成された基板)で支持された半導体デバイスを製造することができる。このとき、各半導体デバイスは、支持基板12Sに対して、環状の固着部Qによる接合力と、当該環状内の気圧(内気圧)と環状外の気圧(外気圧)との圧力差に起因した吸着力と、によって強固に接合された状態で支持されることになる。
【0055】
図8(A)及び
図8(B)は、上述した
図6及び
図7の製造方法についての更なる変形例を示した概念図及び平面図である。
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、各デバイス領域Rdの周縁部に環状の固着部Qを形成することに加えて、第1基板11の周縁部112(具体的には、第1基板11のうちの半導体基板Kになる部分の周縁部)にも、当該周縁部112に沿って環状の固着部Qを形成してもよい。
【0056】
この構成によれば、切断ステップS5での切断実行時における基板端部の剥がれやバタツキを、周縁部112に沿って形成した環状の固着部Qによって抑制することができる。
【0057】
[2-5]第5変形例
上述した製造方法において、固着部形成ステップS2では、環状の固着部Qとして、
図3(実施形態)や
図7(第4変形例)に示した形状のものに限らず、以下のような形状のものを形成してもよい。
【0058】
図9、
図10(A)、及び
図10(B)は、第5変形例にて形成される固着部Qの形状についての3つの例を示した平面図である。これらの図に示されるように、複数のデバイス領域Rdを幾つかのグループに分け、グループごとに、そのグループ内の全てのデバイス領域Rdを包囲するように固着部Qを環状に形成してもよい。
【0059】
ここで、
図9の例では、グループごとに独立した環状となるように固着部Qを形成した場合が示されている。一方、
図10(A)及び
図10(B)では、固着部Qを、グループ間で固着部Qの一部を共有できるように、円形部分と直線部分とを組み合わせて固着部Qを形成した場合が示されている。具体的に、
図10(A)では、周縁部112に沿って環状に形成された円形部分と、当該円形部分の内側を横断する1つの直線部分と、によって固着部Qを形成した場合が示されている。この場合、固着部Qのうちの直線部分がグループ間で共有され、その結果として、固着部Qには、グループごとに当該グループ内の全てのデバイス領域Rdを包囲できる2つの環状部分が形成されることになる。また、
図10(B)では、周縁部112に沿って環状に形成された円形部分と、当該円形部分の内側を横断しつつ互いに交差(
図10(B)の例では直交)する2つの直線部分と、によって固着部Qを形成した場合が示されている。この場合も、固着部Qのうちの直線部分がグループ間で共有され、その結果として、固着部Qには、グループごとに当該グループ内の全てのデバイス領域Rdを包囲できる4つの環状部分が形成されることになる。
【0060】
[2-6]第6変形例
図11(A)は、第6変形例に係る製造方法にて実行される固着部形成ステップS2及び切断ステップS5を示した概念図である。また、
図11(B)は、第6変形例にて形成される固着部Qの形状を示した平面図である。
【0061】
上述した製造方法において、固着部形成ステップS2では、第1基板11に設けられている複数のデバイス領域Rdを区分けする境界線Lb上に固着部Qを形成してもよい。
図10(B)の例では、周縁部112に沿って環状に形成された円形部分と、当該円形部分の内側を、境界線Lbを通って横断することによって格子を形成する複数の直線部分と、によって固着部Qを形成した場合が示されている。このように複数の直線部分で格子を形成することにより、固着部Qには、デバイス領域Rdごとにそれを包囲する環状部分が複数形成されることになる。
【0062】
このようにデバイス領域Rdの境界線Lb上に固着部Qを形成した場合、切断ステップS5(
図11(A)参照)では、当該境界線Lbに沿って第2基板12及び半導体基板Kを切断することにより、第2基板12及び半導体基板Kのうちの切断時に除去される部分と一緒に固着部Qを取り除くことができる。
【0063】
[2-7]第7変形例
上述した製造方法において、固着部形成ステップS2での固着部Qの形成方法は、金属層13へのレーザ光の照射によって固着部Qを形成する方法に限らず、第1基板11と第2基板12とを直接接触させた状態で、それらの界面にレーザ光を照射して固着部Qを形成する方法に適宜変更されてもよい。
【0064】
[2-8]第8変形例
図12は、第8変形例に係る製造方法にて実行される切断ステップS5及び剥離ステップS6を示した概念図である。上述した実施形態に係る製造方法において、切断ステップS5では、第2基板12及び半導体基板Kのうちの第2基板12だけを、環状の固着部Qの内側の位置にて当該固着部Qに沿って環状に切断してもよい。具体的には、切断線が、半導体基板Kに設けられている全てのデバイス領域Rdを包囲した切断線となるように、第2基板12の切断だけを実行する。
【0065】
この切断方法によれば、第2基板12の内側部分121が固着部Qから切り離された状態になる一方で、半導体基板Kは、その全体が固着部Qと繋がった状態が維持されることになる。換言すれば、第2基板12のうちの剥離後(内側部分121の剥離後)に残った環状部分122に、半導体基板Kの全体が固着部Qによって接合された状態になる。
【0066】
従って、剥離ステップS6にて第2基板12の内側部分121を半導体基板Kから剥離することにより、第2基板12の環状部分122を環状の支持体として、その支持体で支持された半導体基板Kを得ることができる。
【0067】
[2-9]他の変形例
上述した製造方法において、固着部Qの環状内の気圧(内気圧)と環状外の気圧(外気圧)とに圧力差に起因した吸着力が必要とされない場合には、固着部Qの形状は、環状に限定されない様々な形状に適宜変更されてもよい。例えば、固着部Qとして、点状又は開いた線状(端がある線状)のものを形成してもよい。
【0068】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0069】
また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、半導体デバイスの製造方法を構成する幾つかのステップが部分的に抽出されてもよいし、各ステップが個々に抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
K 半導体基板
Q 固着部
11 第1基板
11a 表面
11d 外周面
11e エッジ
11R 残部
12 第2基板
12a 表面
12S 支持基板
13 金属層
14 保持シート
21 補強層
21S 補強基板
Dt 所定深さ
Gd 要素
Ka 表面
Kb 背面
Lb 境界線
Pt 所定気圧
Rd デバイス領域
Td 厚さ
Te 所定厚さ
111 分割層
112 周縁部
121 内側部分
122 環状部分
S1 分割層形成ステップ
S2 固着部形成ステップ
S3 分割ステップ
S4 デバイス形成ステップ
S5 切断ステップ
S6 剥離ステップ
S7 個片化ステップ
S8 補強層形成ステップ
S21 金属層形成ステップ
S22 レーザ光照射ステップ