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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085196
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】研修施設
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/26 20060101AFI20240619BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
E02B7/26
E02B7/26 Z
G09B9/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199592
(22)【出願日】2022-12-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 東京都江戸川区篠崎町5丁目2-13に建設した研修施設「株式会社IHIインフラ建設防災・水門技術研修所」を令和4年4月5日から公開
(71)【出願人】
【識別番号】395013212
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラ建設
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 公雄
(72)【発明者】
【氏名】白川 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 友和
(72)【発明者】
【氏名】山村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】田村 洋満
(72)【発明者】
【氏名】賀谷 丈茂
(72)【発明者】
【氏名】馬場 浩史
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019BA03
2D019BA14
(57)【要約】
【課題】現実の水門設備に出向くことなく市街地等でも研修を実施でき、且つ、効果的な研修を実施できる研修施設を提供する。
【解決手段】機側操作盤110,210と、機側操作盤110,210により制御されるゲート開閉装置120,220と、ゲート開閉装置120,220の駆動により模擬的な開閉動作を行うとともにゲート開閉装置120,220に対して駆動負荷を与える模擬ゲート装置130,230とが同一のフロア1に設置されており、ゲート開閉装置110,210及び模擬ゲート装置130,230は、それぞれ機側操作盤110,210の操作位置から視認可能な位置に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムや河川の水門設備に関する技術を研修するための研修施設であって、
機側操作盤と、前記機側操作盤により制御されるゲート開閉装置と、前記ゲート開閉装置の駆動により模擬的な開閉動作を行うとともに前記ゲート開閉装置に対して駆動負荷を与える模擬ゲート装置とが同一のフロアに設置されており、
前記ゲート開閉装置及び前記模擬ゲート装置は、それぞれ前記機側操作盤の操作位置から視認可能な位置に配置されている
ことを特徴とする研修施設。
【請求項2】
前記模擬ゲート装置は実機よりも小型化された扉体又は前記ゲート開閉装置に対する扉体による駆動負荷を代替する重りを含み、
前記ゲート開閉装置はワイヤロープウィンチ式であり、
前記機側操作盤、前記ゲート開閉装置、及び前記模擬ゲート装置が設置されたフロアよりも高層に位置する他のフロアには、前記ゲート開閉装置のワイヤロープで前記模擬ゲート装置の前記扉体又は前記重りを上下に駆動可能に吊り下げる吊り具が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の研修施設。
【請求項3】
前記模擬ゲート装置は実機よりも小型化された扉体又は前記ゲート開閉装置に対する扉体による駆動負荷を代替する重りを含み、
前記ゲート開閉装置は油圧シリンダを備えた油圧式であり、
前記油圧シリンダは、前記機側操作盤、前記ゲート開閉装置、及び前記模擬ゲート装置が設置されたフロアよりも高層に位置する他のフロアに配置されるとともに、前記ゲート開閉装置の上方に配置され、下端部が前記模擬ゲート装置の前記扉体又は前記重りに連結している
ことを特徴とする請求項1に記載の研修施設。
【請求項4】
前記ゲート開閉装置及び前記模擬ゲート装置は、前記機側操作盤の操作位置から前記ゲート開閉装置及び前記模擬ゲート装置の双方を同時に視認可能な位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の研修施設。
【請求項5】
前記機側操作盤と前記ゲート開閉装置との距離は、前記機側操作盤と前記模擬ゲート装置との距離よりも近い
ことを特徴とする請求項4に記載の研修施設。
【請求項6】
前記機側操作盤と前記ゲート開閉装置と前記模擬ゲート装置の組を少なくとも2つ備え、
一方の組に係る前記模擬ゲート装置は実機よりも小型化された扉体を含み、
他方の組に係る前記模擬ゲート装置は前記ゲート開閉装置に対する扉体による駆動負荷を代替する重りを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の研修施設。
【請求項7】
前記機側操作盤、前記ゲート開閉装置、及び前記模擬ゲート装置が設置されたフロアよりも高層に位置する他のフロアには、水門設備に関連する他の装置が配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の研修施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムや河川の水門設備に関する技術を研修するための研修施設に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、頻発化・甚大化する豪雨による洪水災害等が多発してきている。また、既存の水門設備の老朽化が加速度的に進行している。そこで、防災・減災対策として適切且つ効果的な水門設備の維持管理の必要性が高まっている。一方、水門設備の維持管理や整備を行う技術者の高齢化が進んできており、熟練者の減少が懸念されている。このため、水門設備の技術者の確保を目的とした人材育成の仕組み作りが求められている。
【0003】
技術者の育成を行うための研修方法としては、現実の水門設備にシミュレーション機能を設けるものが知られている(特許文献1,2参照)。特許文献1に記載のものは、現用のダム設備において、現用運転と並行してリアルタイムでのシミュレートを行うダイナミック・シミュレート機能を設けることにより、制御装置等の実証試験や操作訓練を可能にしている。特許文献2に記載のものは、実運用を行うダム管理システムにダム訓練管理装置を設けて実運用と訓練の双方を可能にしたものである。
【0004】
また、他の研修方法としては、全てコンピュータにより研修を行うものや(特許文献3参照)、専用の研修施設を用いるもの(特許文献4参照)が知られている。特許文献3に記載のものは、実設備を用いることなく、ダム操作訓練サーバ及び外部端末を用いて、ダム放流業務の訓練を遠隔でシミュレーション可能なダム放流業務シミュレーションシステムである。特許文献4に記載のものは、トレーナ卓および通話卓などを有するトレーナ設備と、実際のダム管理所に設置される監視操作卓を模擬したもので、ゲート操作を行うトレーニ卓および放流警報装置の操作を行う放流警報操作卓などを備えたトレーニ設備とを備えた施設である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願昭61-11633号(実開昭62-125902号)のマイクロフィルム
【特許文献2】特開2002-032008号公報
【特許文献3】特開2008-040354号公報
【特許文献4】特許2519161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2に記載のものでは研修を行うには、研修生が現実の水門設備にまで出向く必要があるため研修の実施コストが高く利便性も悪いという問題がある。
【0007】
一方、特許文献3,4に記載のものでは、これらの問題については解決可能であると考えられる。しかしながら、特許文献4に記載のものでは、機側操作盤の実機を配置しているもののゲート装置については実機を用いることなくシミュレーションで行っている。また、特許文献3に記載のものは、全ての装置について実機を用いることなくシミュレーションで行っている。近年のシミュレーション技術は現実感が高くなってきているものの、効果的な研修の観点からは実機又はこれと同等の装置が実際に動作している様子を観察できる方が好ましい。
【0008】
他方、特許文献1,2に記載のものは現実の設備を観察できる点では特許文献3,4に記載のものよりも好ましい。ところで、現実の水門設備では、主要な設備である機側操作盤、ゲート開閉装置、扉体や戸当たり等からなるゲート装置がそれぞれ異なる場所に設置されている。したがって、研修を行う際には研修生が機側操作盤を操作するが、当該操作によってゲート開閉装置やゲート装置がどのように動作するかを研修生は直接観察できない。このため、各装置の構造・原理・動作・不具合対応などの理解という観点からは効果的な研修に不向きであるという問題がある。このような観点は水門設備についての初学者にとって特に重要である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、現実の水門設備に出向くことなく市街地等でも研修を実施でき、且つ、効果的な研修を実施できる研修施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明は、ダムや河川の水門設備に関する技術を研修するための研修施設であって、機側操作盤と、前記機側操作盤により制御されるゲート開閉装置と、前記ゲート開閉装置の駆動により模擬的な開閉動作を行うとともに前記ゲート開閉装置に対して駆動負荷を与える模擬ゲート装置とが同一のフロアに設置されており、前記ゲート開閉装置及び前記模擬ゲート装置は、それぞれ前記機側操作盤の操作位置から視認可能な位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機側操作盤・ゲート開閉装置・模擬ゲート装置を1つのフロアに集約して設置しているので、小規模な建屋で研修施設を実現できる。したがって、河川やダムなどの場所に拘束されることなく、例えば市街地等であっても研修を実施することができる。また、本発明によれば、機側操作盤の操作位置からゲート開閉装置及び模擬ゲート装置を視認できるので、各装置の構造・原理・動作・不具合対応などを直感的に理解しやすく、したがって効果的な研修を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】研修施設の概略平面図
図2】ワイヤロープウィンチ式水門設備の配置を説明する概略断面図
図3】油圧式水門設備の配置を説明する概略断面図
図4】研修施設に設置された装置の構成図
図5】ワイヤロープウィンチ式水門設備のゲート開閉装置及び模擬ゲート装置を操作位置から見た図
図6】油圧式水門設備のゲート開閉装置及び模擬ゲート装置を操作位置から見た図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る研修施設について図面を参照して説明する。図1は研修施設の概略平面図、図2はワイヤロープウィンチ式水門設備の配置を説明する概略断面図、図3は油圧式水門設備の配置を説明する概略断面図、図4は研修施設に設置された装置の構成図、図5はワイヤロープウィンチ式水門設備のゲート開閉装置及び模擬ゲート装置を操作位置から見た図、図6は油圧式水門設備のゲート開閉装置及び模擬ゲート装置を操作位置から見た図である。
【0014】
本実施の形態に係る研修施設は、市街地に建造された2階建ての建屋である。研修施設の1階空間にはさらに中二階が形成されている。ここでは、1階を第1フロア1、中二階を第2フロア2と呼ぶものとする。第1フロア1と第2フロア2は階段3を介して相互に行き来可能となっている。研修施設の2階空間には、講義室、遠隔操作研修室等が設けられている。
【0015】
図1に示すように、第1フロア1には、ワイヤロープウィンチ式の水門設備100と油圧式の水門設備200の双方についてそれぞれの主要な構成機器が設置されている。すなわち、第1フロア1には、ワイヤロープウィンチ式の水門設備100として、機側操作盤110と、ゲート開閉装置120と、模擬ゲート装置130とが設置されている。また、第1フロア1には、油圧式の水門設備200として、機側操作盤210と、ゲート開閉装置220と、模擬ゲート装置230とが設置されている。ここで、模擬ゲート装置130,230は、ゲート開閉装置120,220の駆動により模擬的な開閉動作を行うとともに当該ゲート開閉装置120,220に対して駆動負荷を与える装置である。すなわち、模擬ゲート装置130,230は、扉体や戸当たり等を有する実機のゲート装置の機能を模したものである。模擬ゲート装置130,230の構成については後述する。
【0016】
ワイヤロープウィンチ式の機側操作盤110は、背面が第1フロア1の壁面1aと近接して対向した状態で当該壁面1aに近接して配置されている。したがって、機側操作盤110の正面は第1フロア1の内側を向いている。ワイヤロープウィンチ式のゲート開閉装置120は、機側操作盤110の近傍であって、第1フロア1の壁面1aと当該壁面1aと対向する壁面1cとの間であり、且つ、第1フロア1の壁面1bに近接して配置されている。ワイヤロープウィンチ式の模擬ゲート装置130は、第1フロア1の壁面1bと壁面1cが接する角部近傍に配置されている。したがって、模擬ゲート装置130は、機側操作盤110との間の距離が、ゲート開閉装置120と機側操作盤110との距離よりも遠くになるよう配置されている。換言すれば、機側操作盤110とゲート開閉装置120との距離は、機側操作盤110と模擬ゲート装置130との距離よりも近い。このような位置関係により、水門設備の制御や動作の流れをより直感的に認識することができる。
【0017】
ここで、ゲート開閉装置120及び模擬ゲート装置130は、図1及び図5に示すように、それぞれ機側操作盤110の操作位置101から双方を同時に視認可能である。また、ゲート開閉装置120及び模擬ゲート装置130は、それぞれ機側操作盤110の操作位置101から双方の動作音や振動を体感できる位置に配置すると好ましい。なお、機側操作盤110の操作位置101とは、機側操作盤110の正面から約1m程度の範囲内である。また、機側操作盤110の操作位置101から視認可能とは、機側操作盤110のボタン操作中という意図ではない点に留意されたい。すなわち、機側操作盤110を操作位置101から首又は体全体の向きを回転させて、ゲート開閉装置120及び模擬ゲート装置130が視認できればよい。
【0018】
ワイヤロープウィンチ式の機側操作盤110は、現実の河川やダムの水門設備に配備される実機と同様の構成・機能を有しており、そのサイズも実機と同様である。また、図4に示すように、機側操作盤110には、研修用に模擬信号を出力する模擬信号発生装置111が接続されている。この模擬信号発生装置111は、研修段階に応じて指導官が操作するものであり、ゲート装置の全開・全閉や故障の検出を機側操作盤110で容易に発生・復旧を行うことができるように構成されている。また、機側操作盤110は、研修施設2階の遠隔操作研修室に設置した遠隔制御装置300と構内LAN400を介して接続している。
【0019】
ワイヤロープウィンチ式のゲート開閉装置120は、現実の河川やダムの水門設備に配備される1モータ2ドラム型の実機と同様の構成・機能を有している。ただし、本実施の形態に係るゲート開閉装置120は、以下の点で実機と相違する。
【0020】
ゲート開閉装置120は、模擬ゲート装置130の駆動制御時の動作が、実機のゲート開閉装置における動作とほぼ同様となるような範囲で実機よりもやや小型化されている。後述するように、模擬ゲート装置130は実機のゲート装置よりも小型・軽量化されている。したがって、ゲート開閉装置120の駆動能力は実機のゲート開閉装置よりも低くてもよい。
【0021】
一般的に、ゲート開閉装置は電源喪失時を想定して外部駆動源を接続可能になっている。接続可能な外部駆動源としては、エンジンや手動ハンドルが挙げられる。そして、実機のゲート開閉装置には、その規模や重要性に応じて、エンジンや手動ハンドルのうち何れか一方の外部駆動源のみを接続可能に構成されているタイプと、エンジンや手動ハンドルの双方を外部駆動源として接続可能に構成されているタイプがある。本実施の形態に係るゲート開閉装置120は、エンジン及び手動ハンドルの双方を外部駆動源として接続可能に構成されている。
【0022】
また、ゲート開閉装置120は、構成部品の一部について、実機では鉄板で構成されているところをアクリルなどの透明材料により構成されている。本実施の形態に係るゲート開閉装置120では、減速機天板及び開放歯車カバーをアクリル製とした。
【0023】
ワイヤロープウィンチ式の模擬ゲート装置130は、現実の河川やダムの水門設備に配備される常時全開のゲート装置の実機と同様の構成・機能を有している。本実施の形態に係る模擬ゲート装置130はローラゲート構造を有する。具体的には、模擬ゲート装置130は、左右にローラが付設された扉体131と、扉体の上下移動をガイドする戸当たり(図示省略)とを含む。ただし、本実施の形態に係る模擬ゲート装置130は、以下の点で実機と相違する。
【0024】
模擬ゲート装置130は、実機よりも小型化されている。具体的には、模擬ゲート装置130の扉体131は実機と比較して大きさで1/2程度である。また、模擬ゲート装置130の扉体131には、ゲート開閉装置120に対して適切な駆動負荷を与えるために負荷調整重り132が設けられている。
【0025】
本実施の形態に係る模擬ゲート装置130は、扉体131の左右縁部に付設する水密ゴム(図示省略)の形状が左右で異なる種類ものを用いている。これは、研修者に水密ゴムの種類について学習させるためである。
【0026】
図2に示すように、模擬ゲート装置130の上方であって第2フロア2には、ゲート開閉装置120のワイヤロープ129により模擬ゲート装置130の扉体131を上下に駆動可能に吊り下げる吊り具140が設置されている。吊り具140は、ワイヤロープ129をゲート開閉装置120方向すなわち斜め下方向から、模擬ゲート装置130方向すなわち下方向に変えるためのシーブ141を備えている。また、吊り具140は、模擬ゲート装置130のシーブを通ったワイヤロープ129の端末を固定する端末装置142を備えている。
【0027】
第2フロア2の床面2aには、ワイヤロープ129を挿通するための挿通孔2b,2cが形成されている。ワイヤロープ129は、ゲート開閉装置120のワイヤドラムから第2のフロア2の挿通孔2bを通って吊り具140のシーブ141に掛けられ、さらに吊り具140から挿通孔2cを通って模擬ゲート装置130の扉体131を吊り下げ、端末が吊り具140の端末装置142に接続している。
【0028】
図1に示すように、油圧式の機側操作盤210は、背面が第1フロア1の壁面1aと近接して対向した状態で当該壁面1aに近接し、且つ、ワイヤロープウィンチ式の機側操作盤110の側方に配置されている。したがって、機側操作盤210の正面は第1フロア1の内側を向いている。油圧式のゲート開閉装置220は、第1フロア1の壁面1aと壁面1cとの間であって、機側操作盤210の近傍に配置されている。油圧式の模擬ゲート装置230は、第1フロア1の壁面1cの近傍に配置されている。したがって、模擬ゲート装置230は、機側操作盤210との間の距離が、ゲート開閉装置220と機側操作盤210との距離よりも遠くになるよう配置されている。換言すれば、機側操作盤210とゲート開閉装置220との距離は、機側操作盤210と模擬ゲート装置230との距離よりも近い。このような位置関係により、水門設備の制御や動作の流れをより直感的に認識することができる。
【0029】
ここで、ゲート開閉装置220及び模擬ゲート装置230は、図1及び図6に示すように、それぞれ機側操作盤210の操作位置201から双方を同時に視認可能である。また、ゲート開閉装置220及び模擬ゲート装置230は、それぞれ機側操作盤210の操作位置201から双方の動作音や振動を体感できる位置に配置すると好ましい。なお、機側操作盤210の操作位置201とは、機側操作盤210の正面から約1m程度の範囲内である。また、機側操作盤210の操作位置201から視認可能とは、機側操作盤210のボタン操作中という意図ではない点に留意されたい。すなわち、機側操作盤210を操作位置201から首又は体全体の向きを回転させて、ゲート開閉装置220及び模擬ゲート装置230が視認できればよい。
【0030】
油圧式の機側操作盤210は、現実の河川やダムの水門設備に配備される実機と同様の構成・機能を有しており、そのサイズも実機と同様である。また、機側操作盤210には、研修用に模擬信号を出力する模擬信号発生装置211が接続されている。この模擬信号発生装置211は、研修段階に応じて指導官が操作するものであり、ゲート装置の全開・全閉や故障の検出を機側操作盤210で容易に発生・復旧を行うことができるように構成されている。また、機側操作盤210は、研修施設2階の遠隔操作研修室に設置した遠隔制御装置300と構内LAN400を介して接続している。
【0031】
油圧式のゲート開閉装置220は、現実の河川やダムの水門設備に配備される実機と同様の構成・機能を有している。ただし、本実施の形態に係るゲート開閉装置220は、以下の点で実機と相違する。
【0032】
後述するように、模擬ゲート装置230は所定の重量負荷を与える装置であり、当該重量負荷は実機のゲート装置よりも小さくしている。したがって、ゲート開閉装置220の駆動能力は実機のゲート開閉装置よりも低くてもよい。
【0033】
一般的に油圧式のゲート開閉装置は1種類の油圧回路を備えている。一方、本実施の形態に係るゲート開閉装置220は、複数の異なる種類の油圧回路を備えている。これに伴い、本実施の形態に係るゲート開閉装置220は、油圧回路を切り替える切り替え回路を備えている。具体的には、本実施の形態に係るゲート開閉装置220は、油圧回路の流量制御回路として、メータイン・メータアウト回路とカウンターバランス回路とを備え、さらに両回路を切り替える切り替え回路を備えている。
【0034】
また、ゲート開閉装置220は、構成部品の一部について、実機では鉄板で構成されているところをアクリルなどの透明材料により構成されている。本実施の形態に係るゲート開閉装置220では、前面・左右側面・背面をアクリル製とした。
【0035】
図3に示すように、油圧式の模擬ゲート装置230は、ゲート開閉装置220に対して適切な重量負荷を与える重り231と、当該重りの上下方向への移動をガイドするガイド機構232とを備えている。当該重量負荷は実機のゲート装置よりも小さくしている。なお、模擬ゲート装置230は扉体を含んでいない点に留意されたい。すなわち、重り231はゲート開閉装置220に対する駆動負荷を代替する手段として機能する。本実施の形態では、このような構造により模擬ゲート装置230を実機よりも小型化することができるので、低コスト化及び省スペース化を図ることができる。なお、実機のゲート装置の構造・原理・動作・不具合対応については、ワイヤロープウィンチ式水門設備の模擬ゲート装置130を参照することにより研修を行うことができる。
【0036】
模擬ゲート装置230の上方であって第2フロア2には、ゲート開閉装置220を構成する油圧シリンダ221が設けられている。油圧シリンダ221の下端部は、第2フロア2の床2aに形成された貫通孔2dを通って模擬ゲート装置230の重り231の上部に連結している。油圧シリンダ221とゲート開閉装置220本体は油圧パイプ222により接続している。ここで油圧パイプ222は、ゲート開閉装置220本体に対して駆動負荷が適切となるように取り回しされている。本実施の形態では、ゲート開閉装置220本体と油圧シリンダ221とを最短で接続するのではなく、第1フロア1や第2フロア2内の壁際に沿うように取り回しされている。
【0037】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、機側操作盤110,210、ゲート開閉装置120,220、模擬ゲート装置130,230を第1フロア1に集約して設置しているので、小規模な建屋で研修施設を実現できる。したがって、河川やダムなどの場所に拘束されることなく、例えば市街地等であっても研修を実施することができる。
【0038】
また、本実施の形態では、ワイヤロープウィンチ式の水門設備100と油圧式の水門設備200を同一のフロアに設置しており、しかもワイヤロープウィンチ式の機側操作盤110と油圧式の機側操作盤210が隣接して配置されているので、効率的な研修が可能となる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、機側操作盤110,210の操作位置101,201からゲート開閉装置120,220及び模擬ゲート装置130,230を視認できるので、各装置の構造・原理・動作・不具合対応などを直感的に理解しやすく、したがって効果的な研修を行うことができる。また、本実施の形態によれば、機側操作盤110,210の操作位置101,201からゲート開閉装置120,220及び模擬ゲート装置130,230の動作音や振動を体感できるので、各装置の構造・原理・動作・不具合対応などを更に直感的に理解しやすく、したがって効果的な研修を行うことができる。
【0040】
また、本実施の形態では、ワイヤロープ式の水門設備100における模擬ゲート装置130は扉体131を含んだ実機とほぼ同様の構成とする一方、油圧式の水門設備200における模擬ゲート装置230では扉体は含まずに重り231により駆動負荷を与える構成としている。このように2つの水門設備100,200のうち油圧式の水門設備200の模擬ゲート装置230については扉体を含まない構成としているので、研修施設をコンパクトにすることができる。なお、ゲート装置の構造や動作についてはワイヤロープ式の水門設備100の模擬ゲート装置130を用いて研修すれば足りる。
【0041】
以上、本発明の一実施の形態について詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、研修施設にワイヤロープウィンチ式の水門設備100と油圧式の水門設備200を配置したが何れか一方のみを配置するようにしてもよい。この場合、研修施設をよりコンパクトにすることができる。
【0043】
また、上記実施の形態では、ワイヤロープ式の水門設備100における模擬ゲート装置130は扉体131を含んだ実機とほぼ同様の構成とする一方、油圧式の水門設備200における模擬ゲート装置230では扉体は含まずに重り231により駆動負荷を与える構成としているが、油圧式の水門設備200における模擬ゲート装置230は扉体を含んだ実機とほぼ同様の構成とする一方、ワイヤロープ式の水門設備100における模擬ゲート装置130では扉体131は含まずに重りにより駆動負荷を与える構成としてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態では、研修施設にワイヤロープウィンチ式の水門設備100と油圧式の水門設備200を配置したが、他の研修設備をさらに配置するようにしてもよい。特に、上記実施の形態では、第2フロア2には吊り具140及び油圧シリンダ221が設置されているだけであり、広いスペースが余っている。そこで、第2フロア2に他の研修設備を配置すると多彩な研修を行うことができる。換言すれば、研修施設を空間的に効率よく利用できる。他の研修設備は、水門設備に関連する装置であり、例えば、例えば小型水門用の手動の開閉装置や、グリス充填作業をシミュレーションする装置や、水門設備の操作やメンテナンスに用いられる各種工具類などが挙げられる。また、他の研修設備として、第1フロア1に設置した各種設備と関連のあるものを配置すると、効果的な研修の観点から好適である。この場合、第1フロア1から第2のフロア2に円滑に移動できるよう動線を整えておくと、効果的な研修の観点から更に好適である。
【符号の説明】
【0045】
1…第1フロア
2…第2フロア
100…ワイヤロープウィンチ式水門設備
110…機側操作盤
111…模擬信号発生装置
120…ゲート開閉装置
130…模擬ゲート装置
200…油圧式水門設備
210…機側操作盤
211…模擬信号発生装置
220…ゲート開閉装置
230…模擬ゲート装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6