(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008520
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】浮遊シェルター
(51)【国際特許分類】
B63C 9/06 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B63C9/06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110457
(22)【出願日】2022-07-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】516322728
【氏名又は名称】有限会社アグリプロジェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】深代 光治
(57)【要約】
【課題】津波や洪水に水面での安定な浮遊状態を維持し易くかつ中心軸の周りで回転し難い浮遊シェルターを提供する。
【解決手段】避難者を収容して水面に浮遊する浮遊シェルター1であって、上方から下方へと直径が小さくなる円錐形状もしくは円錐台形状、又は円筒状の側面と避難者を収容するための内部空間40とを具備する本体部10と、本体部の上端開口を覆う天蓋部20と、内部空間内に搭載されたバラスト45と、を有し、バラストは、浮遊シェルターの吃水位置が本体部の略上端Aとなるように調整されており、かつ、本体部の上端Aから下端Bまでの鉛直方向の長さHが、上端Aにおける直径Dの1.5倍~2.5倍である、浮遊シェルターにおいて、本体部10が、側面10a上に、その中心軸C周りに等角度間隔で配置されそれぞれ放射方向に延在する複数の回転防止板61を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難者を収容して水面に浮遊する浮遊シェルター(1)であって、
上方から下方へと直径が小さくなる円錐形状もしくは円錐台形状、又は円筒状の側面(10a)と避難者を収容するための内部空間(40)とを具備する本体部(10)と、
前記本体部(10)の上端開口を覆う天蓋部(20)と、
前記内部空間(40)内に搭載されたバラスト(45)と、を有し、
前記バラスト(45)は、前記浮遊シェルター(1)の吃水位置が前記本体部(10)の略上端(A)となるように調整されており、かつ、
前記本体部(10)の上端(A)から下端(B)までの鉛直方向の長さ(H)が、前記本体部(10)の上端(A)における直径(D)の1.5倍~2.5倍である、前記浮遊シェルター(1)において、
前記本体部(10)が、前記側面(10a)上に、その中心軸(C)周りに等角度間隔で配置されそれぞれ放射方向に延在する複数の回転防止板(61)を有することを特徴とする浮遊シェルター。
【請求項2】
前記回転防止板(61)の上端が、前記本体部(10)の略上端(A)に位置し、前記回転防止板(61)の上端から下端までの鉛直方向の長さ(h)が、前記本体部(10)の上端(A)から下端(B)までの鉛直方向の長さ(H)の0.4倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の浮遊シェルター。
【請求項3】
前記回転防止板(61)が、前記本体部(10)に近い方の縁部である近位縁部(61a)により前記本体部(10)に直接固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浮遊シェルター。
【請求項4】
前記回転防止板(61)は、前記近位縁部(61a)を含む1つの半部が剛体からなる不動部(61c)で形成され、もう1つの半部が弾性体からなる可動部(61d)で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の浮遊シェルター。
【請求項5】
前記回転防止板(61)における前記本体部(10)に近い方の縁部である近位縁部(61a)に位置する旋回軸(P)の周りで、前記回転防止板(61)を、前記側面(10a)に対して起立した使用状態と前記側面(10a)上に伏せた非使用状態との間で旋回可能とする折畳み機構をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の浮遊シェルター。
【請求項6】
前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在する旋回軸部材(64)と、
前記旋回軸部材(64)を受容するための軸孔(68)であって、前記旋回軸(P)に垂直な断面が第1軸孔部(68a)と第2軸孔部(68b)とを含む略長円形でありかつ前記旋回軸部材(64)が前記第1軸孔部(68a)と前記第2軸孔部(68b)との間で移動可能である、前記軸孔(68)と、
前記回転防止板(61)の非使用状態において、前記回転防止板(61)の旋回を阻止するべく前記回転防止板(61)の前記近位縁部(61a)を収容するために前記本体部(10)に設けられた旋回阻止部(66)と、
前記回転防止板(61)の使用状態において、前記回転防止板(61)を起立させるべく前記回転防止板(61)の前記近位縁部(61a)を収容するために前記本体部(10)に設けられた起立支持凹部(69)と、を有し、
前記旋回軸部材(64)及び前記軸孔(68)のうちの一方が前記本体部(10)及び前記回転防止板(61)のうちの一方と一体的に設けられ、前記旋回軸部材(64)及び前記軸孔(68)のうちの他方が前記本体部(10)及び前記回転防止板(61)のうちの他方と一体的に設けられることを特徴とする請求項5に記載の浮遊シェルター。
【請求項7】
前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在しかつ前記本体部(10)に固定された旋回軸部材(64)と、
前記旋回軸部材(64)の外周面から前記旋回軸(P)の放射方向内方に延びるピン溝(64a)と、
前記旋回軸部材(64)を受容するために前記回転防止板(61)に設けられた軸孔(68)と、
前記軸孔(68)の内面から前記回転防止板(61)の表面まで前記旋回軸(P)の放射方向にそれぞれ延び、前記旋回軸(P)周りに互いに90°の角度間隔で設けられた2つのピン螺子孔(68c、68d)と、
前記ピン螺子孔(68c、68d)のいずれか一方と螺合して前記ピン溝(64a)内に挿入可能な螺子ピン(70)と、を有し、
前記螺子ピン(70)が、前記回転防止板(61)の非使用状態においては前記2つのピン螺子孔(68c、68d)の一方と螺合し、使用状態においては前記2つのピン螺子孔(68c、68d)の他方と螺合して前記ピン溝(64a)内に挿入されることを特徴とする請求項5に記載の浮遊シェルター。
【請求項8】
前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在するモーター軸(81)を有し前記本体部(10)に固定されたモーター(80)と、
前記モーター軸(81)を受容するために前記回転防止板(61)に設けられた軸孔(68)と、
前記回転防止板(61)が前記モーター軸(81)と一体的に旋回するように設けられたキー(82)と、
前記モーター(80)を操作するための操作手段と、を有することを特徴とする請求項5に記載の浮遊シェルター。
【請求項9】
前記回転防止板(61)を前記本体部(10)に接続するためにこれらの間に配置された自由蝶番(75)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の浮遊シェルター。
【請求項10】
前記回転防止板(61)を前記本体部(10)に接続するためにこれらの間に配置された可動接続部材(77)を有し、前記可動接続部材(77)は、コイルスプリング(77g)と、前記コイルスプリング(77g)の振動を抑制するショックアブソーバー(77c、77e)と、前記ショックアブソーバー(77c、77e)の前記本体部(10)側の固定端部(77d)に設けられ前記本体部(10)により支持された揺動軸部材(77h)と、を有し、
前記回転防止板(61)は、前記コイルスプリング(77g)及び前記ショックアブソーバー(77c、77e)により前記本体部(10)に対し直線運動可能であり、かつ、前記揺動軸部材(77h)を中心軸として揺動運動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の浮遊シェルター。
【請求項11】
前記ショックアブソーバー(77c、77e)の前記本体部(10)側の固定端部(77d)が挿入されるように前記本体部(10)に設けられた凹部(77m)と、前記固定端部(77d)の先端に設けられ前記凹部(77m)内で転動可能なローラー(77a)と、を有することを特徴とする請求項10に記載の浮遊シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波や洪水の際に避難者を収容して浮遊するシェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
津波や洪水の際に避難するための設備又は施設として、避難者を収容して水面に浮遊する浮遊式のシェルター(以下「浮遊シェルター」と称する)が提案されている。特許文献1には、略たまご形状の中空構造体の浮遊シェルターが開示されている。特許文献2には、上部が球形で下部が逆円錐形状の中空体を有し、中空体の外部に補強用の支柱及び斜材とフロートとを取り付けた津波用避難施設が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3541197号公報
【特許文献2】特開2015-54565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大きな津波や洪水では大量の瓦礫等も一緒に流れるため、浮遊シェルターはそれらと衝突して大きな衝撃や損傷を受ける可能性がある。特許文献1の略たまご形状の場合、外面の大部分が上方から下方に向かって外側に傾斜しているため、瓦礫等がその傾斜面の上に衝突するとシェルターを下方に押し下げる力を及ぼし、シェルターが沈みがちになる。また、特許文献2のように中空体の外部に複雑な支柱等を取り付けた場合、瓦礫等がからみついて安定な浮遊状態が妨げられたり、障害物に引っ掛かったりし易くなるため、水中に引きずり込まれるおそれがある。
【0005】
浮遊シェルターの全体形状が回転対称であって表面に凹凸がない場合、浮遊中に中心軸の周りで回転し易い。浮遊シェルターが自転すると、内部にいる人間にとって不快でありかつ危険でもある。また、浮遊中に水のない斜面上に押し上げられた場合も、浮遊シェルターが斜面を転がって高速回転するおそれがある。また、保管時や運搬時にも、浮遊シェルターが転がり易いため取扱い難くなる。
【0006】
以上の現状に鑑み、本発明は、津波や洪水に水面での安定な浮遊状態を維持し易く、浮遊中に自転し難く、保管時や運搬時に転がり難い浮遊シェルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく本発明は、以下の構成を提供する。括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付している。
【0008】
- 本発明の態様は、避難者を収容して水面に浮遊する浮遊シェルター(1)であって、
上方から下方へと直径が小さくなる円錐形状もしくは円錐台形状、又は円筒状の側面(10a)と避難者を収容するための内部空間(40)とを具備する本体部(10)と、
前記本体部(10)の上端開口を覆う天蓋部(20)と、
前記内部空間(40)内に搭載されたバラスト(45)と、を有し、
前記バラスト(45)は、前記浮遊シェルター(1)の吃水位置が前記本体部(10)の略上端(A)となるように調整されており、かつ、
前記本体部(10)の上端(A)から下端(B)までの鉛直方向の長さ(H)が、前記本体部(10)の上端(A)における直径(D)の1.5倍~2.5倍である、前記浮遊シェルター(1)において、
前記本体部(10)が、前記側面(10a)上に、その中心軸(C)周りに等角度間隔で配置されそれぞれ放射方向に延在する複数の回転防止板(61)を有することを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)の上端が、前記本体部(10)の略上端(A)に位置し、前記回転防止板(61)の上端から下端までの鉛直方向の長さ(h)が、前記本体部(10)の上端(A)から下端(B)までの鉛直方向の長さ(H)の0.4倍以下であることを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)が、前記本体部(10)に近い方の縁部である近位縁部(61a)により前記本体部(10)に直接固定されていることを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)は、前記近位縁部(61a)を含む1つの半部が剛体からなる不動部(61c)で形成され、もう1つの半部が弾性体からなる可動部(61d)で形成されていることを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)における前記本体部(10)に近い方の縁部である近位縁部(61a)に位置する旋回軸(P)の周りで、前記回転防止板(61)を、前記側面(10a)に対して起立した使用状態と前記側面(10a)上に伏せた非使用状態との間で旋回可能とする折畳み機構をさらに有することを特徴とする。
- 上記態様において、前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在する旋回軸部材(64)と、
前記旋回軸部材(64)を受容するための軸孔(68)であって、前記旋回軸(P)に垂直な断面が第1軸孔部(68a)と第2軸孔部(68b)とを含む略長円形でありかつ前記旋回軸部材(64)が前記第1軸孔部(68a)と前記第2軸孔部(68b)との間で移動可能である、前記軸孔(68)と、
前記回転防止板(61)の非使用状態において、前記回転防止板(61)の旋回を阻止するべく前記回転防止板(61)の前記近位縁部(61a)を収容するために前記本体部(10)に設けられた旋回阻止部(66)と、
前記回転防止板(61)の使用状態において、前記回転防止板(61)を起立させるべく前記回転防止板(61)の前記近位縁部(61a)を収容するために前記本体部(10)に設けられた起立支持凹部(69)と、を有し、
前記旋回軸部材(64)及び前記軸孔(68)のうちの一方が前記本体部(10)及び前記回転防止板(61)のうちの一方と一体的に設けられ、前記旋回軸部材(64)及び前記軸孔(68)のうちの他方が前記本体部(10)及び前記回転防止板(61)のうちの他方と一体的に設けられることを特徴とする。
- 上記態様において、前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在しかつ前記本体部(10)に固定された旋回軸部材(64)と、
前記旋回軸部材(64)の外周面から前記旋回軸(P)の放射方向内方に延びるピン溝(64a)と、
前記旋回軸部材(64)を受容するために前記回転防止板(61)に設けられた軸孔(68)と、
前記軸孔(68)の内面から前記回転防止板(61)の表面まで前記旋回軸(P)の放射方向にそれぞれ延び、前記旋回軸(P)周りに互いに90°の角度間隔で設けられた2つのピン螺子孔(68c、68d)と、
前記ピン螺子孔(68c、68d)のいずれか一方と螺合して前記ピン溝(64a)内に挿入可能な螺子ピン(70)と、を有し、
前記螺子ピン(70)が、前記回転防止板(61)の非使用状態においては前記2つのピン螺子孔(68c、68d)の一方と螺合し、使用状態においては前記2つのピン螺子孔(68c、68d)の他方と螺合して前記ピン溝(64a)内に挿入されることを特徴とする。
- 上記態様において、前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在するモーター軸(81)を有し前記本体部(10)に固定されたモーター(80)と、
前記モーター軸(81)を受容するために前記回転防止板(61)に設けられた軸孔(68)と、
前記回転防止板(61)が前記モーター軸(81)と一体的に旋回するように設けられたキー(82)と、
前記モーター(80)を操作するための操作手段と、を有することを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)が自由蝶番(75)により前記本体部(10)に接続されていることを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)を前記本体部(10)に接続するためにこれらの間に配置された可動接続部材(77)を有し、前記可動接続部材(77)は、コイルスプリング(77g)と、前記コイルスプリング(77g)の振動を抑制するショックアブソーバー(77c、77e)と、前記ショックアブソーバー(77c、77e)の前記本体部(10)側の固定端部(77d)に設けられ前記本体部(10)により支持された揺動軸部材(77h)と、を有し、
前記回転防止板(61)は、前記コイルスプリング(77g)及び前記ショックアブソーバー(77c、77e)により前記本体部(10)に対し直線運動可能であり、かつ、前記揺動軸部材(77h)を中心軸として揺動運動可能であることを特徴とする。
- 上記態様において、前記ショックアブソーバー(77c、77e)の前記本体部(10)側の固定端部(77d)が挿入されるように前記本体部(10)に設けられた凹部(77m)と、前記固定端部(77d)の先端に設けられ前記凹部(77m)内で転動可能なローラー(77a)と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の浮遊シェルターによれば、吃水線以下に位置する本体部が上方から下方へ直径が小さくなる円錐形状もしくは円錐台形状又は円筒形状の側面を有するので、水面での安定な状態を維持し易い。さらに、本体部が、側面上に、その中心軸周りに等角度間隔で配置されそれぞれ放射方向に延在する複数の回転防止板を有するので、津波や洪水の際に浮遊シェルターが自転することを抑制できる。加えて、回転防止板によって、浮遊シェルターが浮遊中に水のない斜面上に押し上げられたとき、又は保管時や運搬時にも浮遊シェルターが転がることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態の浮遊シェルターを概略的に示した外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した浮遊シェルターの(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のI-Iラインに沿った概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明による浮遊シェルターが水面を浮遊する状態を模式的に示した図である。
【
図4】
図4は、本体部の側面に対して様々な角度で負荷される同じ大きさの力と、その分力を模式的に示している。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態の浮遊シェルターを概略的に示した外観斜視図であり、(a)は非使用状態を、(b)は使用状態を示している。
【
図6】
図6は、
図5(a)に示した非使用状態の回転防止機構とその周囲を拡大して概略的に示した図である。
【
図7】
図7(a)~(d)は
図6のラインII-IIに沿った概略断面であり、第2の実施形態の回転防止機構の操作方法を示している。
【
図8】
図8は、第3の実施形態の
図7と同じ断面を概略的に示しており、(a)は非使用状態を、(b)は使用状態を示している。
【
図10】
図10(a)は、第5の実施形態における1つの回転防止板とその周囲のみを概略的に示す側面図であり、(b)及び(c)は、(a)のラインIII-IIIに沿った概略断面図である。
【
図11】
図11(a)は、第6の実施形態における1つの回転防止板とその周囲のみを概略的に示す側面図であり、(b)~(d)は、(a)のラインIV-IVに沿った概略断面図である。
【
図12】
図12(a)は、第7の実施形態における1つの回転防止板とその周囲のみを概略的に示す側面図であり、(b)は(a)のラインV-Vに沿った概略断面図であり、(c)は(b)のラインVI-VIに沿った概略断面図である。
【
図13】
図13(a)(b)は、第7の実施形態の回転防止機構の動きを示している。
【
図14】
図12は、本発明の浮遊シェルターを車両により搬送する形態の一例を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各実施形態の図面において、同一又は類似の要素については同一又は類似の符号を用いて示している。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態の浮遊シェルター(以下、単に「シェルター」と称する場合がある)を概略的に示した外観斜視図である。浮遊シェルター1は、通常は水のない場所において津波や洪水の際に水かさが増したとき、避難者を収容して水面に浮遊することができる。シェルター1は、主要部として本体部10とその上の天蓋部20とを有する。
【0013】
第1の実施形態の本体部10は、上方から下方へ向かって直径が小さくなる円錐形状の側面10aを有する。別の例として、側面10aは、上方から下方へ向かって直径が小さくなる円錐台形状でもよく、又は円筒形状でもよい。したがって、通常の向きの円錐の底面が本体部10の上端Aに位置し、通常の向きの円錐の頂点が本体部10aの下端Bに位置する。本体部10は、上端が開口した中空体であり、避難者を収容するための内部空間40を有する。側面10aは、所定の厚さをもつ材料で形成された側壁の外面である。側壁には、避難者が出入りするためのハッチ11が適宜の箇所に設けられている。
【0014】
本体部10の側面10aが円錐形状の場合、本体部10の上端Aから下端Bまでの鉛直方向の長さHが、本体部10の上端Aにおける直径Dの1.5倍~2.5倍であることが好ましい。図示の例では、長さHは直径Dの約2倍である。側面10aが、円錐台形状又は円筒形状の場合も同様である。
【0015】
天蓋部20は、本体部10の上端開口を覆うように本体部10の側壁上端に続いている。天蓋部20は、例えば図示のように略ドーム形状とすることが好ましい。天蓋部20の形状はこれに限られず、例えば円筒形状、円錐形状、円錐台形状でもよい。天蓋部20も中空体であり、本体部10の内部空間40に連続した内部空間を有する。好ましくは、天蓋部20の天頂部に予備的な第2のハッチ21が設けられている。
【0016】
なお、浮遊シェルター1の密閉性及び耐久性を確保するための構造については公知技術であるので、本明細書では詳細には説明しない。
【0017】
さらに本体部10の内部空間40内には、錘となるバラスト45が搭載されている。好ましくは、バラスト45は、シェルター1の本体部10の下部に搭載される。これによりシェルター1の重心が低くなり、水中において図示の姿勢を保持しやすくする。
【0018】
シェルター1は、水中において浮力を受ける。浮力は、シェルター1における水中に埋没した体積すなわち吃水位置より下方部分の体積と水の密度の積に比例する。浮力はシェルター1の重量と平衡する。したがってシェルター1の吃水位置は、シェルター1の重量によって変動する。本発明では、シェルター1自体の重量と、それに乗る予定の避難者全員の重量とを加算し、それを考慮してバラスト45の重量が予め調整されている。その場合、シェルター1の吃水位置が、本体部10の上端Aに位置するようにバラスト45を調整する。吃水位置は、厳密に上端Aの位置でなくともよく、ほぼこの位置を目標とする程度でよい。
【0019】
バラスト45は、それぞれ同じ重量又は異なる重量のバラスト個体45aの組合せにより構成されている。バラスト45の重量は、バラスト個体45aの数及び/又は種類で調整することができる。バラスト個体45aは、例えば、水や液体を充填した密封容器又は金属製の錘とすることができる。
【0020】
本体部10の上端Aが喫水位置であるとき、水没する本体部10の側面10aに瓦礫等が衝突することになる。したがって、側面10aにおける逆向きの円錐面は、衝突した瓦礫等の衝撃力を受けて、その衝撃力をシェルター1に対する上向きの力に変換する機能を有する。この作用については、
図4で詳細に説明する。
【0021】
さらに、シェルター1は、浮遊中の中心軸C周りの回転すなわち自転を防止するため、本体部10に回転防止機構60が設けられている。回転防止機構60は、側面10a上から中心軸Cの放射方向にそれぞれ延在する複数の回転防止板61を有する。
図1では1枚の回転防止板61のみが示されているが、中心軸Cについて反対側に、すなわち180°の角度間隔を空けてもう1枚の回転防止板が設けられている。
【0022】
好ましくは、シェルター1には換気口24が設けられている。図示の例では、換気口24が天蓋部20の壁に設けられいる。好ましくは、重機によりシェルター1を吊り下げるために天蓋部20の表面に吊りフック22が取り付けられている。図示の例では、一対の吊りフック22が対角線上に取り付けられている。また好ましくは、天蓋部20の表面に、識別標識23が取り付けられていることが好ましい。これは、シェルター1又はその中の避難者を特定するための標識であり、救助に役立つものである。
【0023】
図2は、
図1に示した浮遊シェルター1の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のI-Iラインに沿った概略断面図である。回転防止板61は周囲の水の流れに対する抵抗体となり、シェルター1の自転に対するブレーキの役割を果たす。回転防止板61の主面の面積、輪郭、及び厚さは、、作用効果と強度と考慮して設定される。回転防止板61の両方の主面はほぼ平坦であることが好ましい。回転防止板61の輪郭は、図示の例では、半楕円形であるが、三角形、四角形、又は多角形でもよい。
【0024】
回転防止機能を中心軸Cの周りで均等に発揮するために、複数の回転防止板61が、中心軸C周りに等角度間隔で配置される。3枚の場合は120°間隔、4枚の場合は90°間隔、等である。
【0025】
回転防止板61の鉛直方向の取付位置は、
図2(b)に示すように、回転防止板61の上端が、本体部10の上端A(上端Aの下方近傍を含む)に位置することが好ましい。回転防止板61の上端(最も高い部分)から下端(最も低い部分)までの鉛直方向の長さhは、本体部10の上端Aから下端Bまでの鉛直方向の長さHの0.4倍以下であることが好ましい。また、回転防止板61における中心軸Cに最も近い点から最も遠い点までの水平方向の長さwは、本体部10の直径Dの0.3倍以下であることが好ましい。回転防止機能に関しては、回転防止板61の主面の面積が大きい方が好ましい。しかしながら、回転防止板61が本体部10に比べて大きすぎると、浮遊中に瓦礫等が引っ掛かり易くなるため、適度な大きさに留める。
【0026】
回転防止板61に、シェルター1の吊り上げ時にフックを掛けることができる吊り孔62を形成してもよい。
【0027】
回転防止板61は、本体部10に近い方の直線状に延びる1つの縁部61aを用いて本体部10に取り付けられる。この取り付けに用いる縁部を「近位縁部」と称する。近位縁部61aは、円錐形状(円錐台形状又は円筒形状の場合も同様)の側面10aの1つの母線に沿って延在する。第1の実施形態では、回転防止板61の近位縁部61aが、本体部10に直接固定されている。
図2(c)に符号63で示すように、好ましくは、近位縁部61aの基端は本体部10に溶接されている。なお、近位縁部61aとは反対側に位置し、本体部10から遠い方の縁部61bを「遠位縁部」と称する。
【0028】
図3は、本発明による浮遊シェルターが水面Sの近傍で浮遊する状態を例示したものである。ここでは、一例として第1の実施形態のシェルター1を示している。シェルター1の吃水位置は、本体部10のほぼ上端Aに設定されている。津波や洪水の発生時には、水中に多量の瓦礫等Rが存在し、それらが浮遊するシェルター1に無作為に衝突する。水中に位置する本体部10の側面10aが逆向き円錐形状の側面10aを有するので、側面にこれらの瓦礫等Rが衝突したときの衝撃力は、シェルター1に対して上向きに作用する傾向がある。さらに、回転防止板61によってシェルター1の回転が抑制される。
【0029】
図4は、本体部10の側面10aを含む部分断面と、側面10aに対して様々な角度でかかる同じ大きさの力F1~F4及びその分力を模式的に示している。力F1~F4は、瓦礫等による衝撃力である。力F1~F4の各々について、側面10aに垂直な方向の分力を符号f1~f4でそれぞれ示している。側面10aに平行な方向の分力はシェルター1に対して作用しないので符号を付していない。側面10aに垂直な方向の分力f1~f4が、シェルター1に対して実質的にかかる力であり、いずれも斜め上向きの力となる。したがって、シェルター1は、瓦礫等60により揉まれながらも常に水面Sの方に向かう力を受けるので、水中への沈み込みが生じ難くなる。また、本体部10の側面10aは、凹凸のない滑らかな曲面であるので、瓦礫等が引っ掛かり難い。
【0030】
このような作用は、逆向きの円錐台形状の側面をもつシェルターでも同様である。また、円筒形状の側面をもつシェルターの場合、シェルターを水平に押す力のみが存在するが、少なくともシェルターに対する下向きの力は生じない。
【0031】
図5は、本発明の第2の実施形態の浮遊シェルターを概略的に示した外観斜視図であり、(a)は非使用状態を、(b)は使用状態を示している。
【0032】
第2の実施形態は、回転防止機構60の回転防止板61を、非使用時に折り畳むことができる折畳み機構を有する。
図5(a)に示す非使用状態では、回転防止板61は本体部10の側面10a上に伏せられている。すなわち、回転防止板61の主面と側面10aとがほぼ平行な状態となっている。
図5(b)に示す使用状態では、回転防止板61が、取り付け位置に設けられた旋回軸Pの周りで旋回することによって、側面10aに対して垂直に起立した状態となる。
【0033】
図6は、
図5(a)に示した非使用状態の回転防止機構60とその周囲を拡大して示した概略図である。ただし、
図6では、回転防止機構60の主要な構成要素を模式的に示しているために、シェルター1全体と回転防止機構6との相対的な大きさ、並びに各構成要素の形状及び厚さ等は、
図5と一致していない。
【0034】
図6には、回転防止板61の幾何学的な旋回軸Pを示している。旋回軸Pを中心として所定の長さ及び半径をもつ円柱状の旋回軸部材64が延在している。旋回軸部材64は、回転防止板61の上部と下部に1つずつ設けられている。別の例として上部と下部の2つの旋回軸部材64を、連続する1つの旋回軸部材に置き換えてもよい。
【0035】
回転防止板61の上部と下部における旋回機構は互いに対称的であるので、上部の旋回機構のみを説明する。旋回軸部材64の上部は、シェルター1の本体部10に固定された軸支持部65により保持されている。したがって、旋回軸部材64は、軸支持部65を介して本体部10と一体的に設けられている。
【0036】
軸支持部65の下面は、回転防止板61の上面、特に近位縁部61aの上面にほぼ隣接している。旋回軸部材64の下部は回転防止板61の近位縁部61a内に挿入されている。このために、回転防止板61の近位縁部61aの上面には、旋回軸部材64を受容するための軸孔68が開口している。軸孔68は、回転防止板61の厚さの範囲内に設けられており、下方に向かって所定の長さを有する。軸孔68の、旋回軸Pに垂直な断面の形状は、円形ではなく略長円形である。これについては
図7を参照して後述する。
【0037】
さらに、回転防止板61の近位縁部61aを収容し、回転防止板61を旋回不能に支持する旋回阻止部66が設けられている。旋回阻止部66は本体部10に固定されている。図示の例では、旋回阻止部66はL形ラグの形態である。旋回阻止部66が、回転防止板61の近位縁部61aの端面と主面とを支持しているので、この状態では回転防止板61は、旋回軸Pの周りで旋回することができない。回転防止板61が、旋回阻止部66から脱出しないように、回転防止板61の遠位縁部61bに適宜の留め具67を設けることが好ましい。留め具67は、一端が本体部10に固定され、他端が回転防止板61に固定される。留め具67の他端は、回転防止板61に対して手動で着脱可能である。
【0038】
図7は、第2の実施形態における回転防止板61の折畳み機構の操作方法を概略的に示した図である。
図7(a)は、
図6のII-II断面を概略的に示した図である。この断面は、旋回軸Pに垂直な断面であり、回転防止板61の近位縁部61aの上面の位置に相当する。
【0039】
図7(a)に示すように、旋回軸部材64を受容するための軸孔68は略長円形であり、第1軸孔部68aと第2軸孔部68bとこれらを繋ぐ部分とを有する。各軸孔部68a、68bは旋回軸部材64をそれぞれ受容可能である。旋回軸部材64は、第1軸孔部68aと第2軸孔部68bとの間で移動可能である。
図7(a)に示す非使用状態では、旋回軸部材64は第1軸孔部68aに位置し、回転防止板61の近位縁部61aは、旋回阻止部66のL形ラグに収容されている。すなわち、L形ラグの第1ウェブ66aが近位縁部61aの端面に当接し、第2ウェブ66bが近位縁部61aの主面に当接している。
【0040】
さらに
図7(a)に示すように、本体部10には、その側面10aから所定の深さで起立支持凹部69が設けられている。起立支持凹部69は、本体部10の母線方向に延在する溝である。起立支持凹部69は、本体部10の周方向において、旋回軸部材64と同じ角度位置にある。起立支持凹部69は、回転防止板61の使用状態において、回転防止板61を本体部10に対して起立させるためのものである。したがって、起立支持凹部69は、本体部10の母線方向において少なくとも回転防止板61の近位縁部61aと同じ長さだけ延在し、本体部10の周方向において少なくとも回転防止板61の厚さと同じ長さだけ延在する。
【0041】
回転防止板61を使用状態とするために、
図7(b)~(d)に示す操作を行う。先ず、
図7(b)において、回転防止板61の遠位縁部61bを固定していた留め具67を取り外す。次に、回転防止板61を本体部10の側面10aに対し略平行に水平方向に移動させる(白矢印参照)。この操作により、回転防止板61は旋回阻止部66から脱出する。これにより回転防止板61の旋回が可能となる。この回転防止板61の移動に伴って軸孔68も移動する。それによって軸孔68内の旋回軸部材64の位置が、第1軸孔部68aから第2軸孔部68bへと移動する。
【0042】
次に、
図7(c)に示すように、回転防止板61を旋回軸部材64を軸として90°旋回させる(白矢印参照)。図示の例では、この旋回操作において回転防止板61と本体部10が干渉しないように、起立支持凹部69の縁に適宜の切欠き部69aを設けている。切欠き部69aは必須ではない。
【0043】
さらに、
図7(d)に示すように、回転防止板61の近位縁部61aを本体部10の起立支持凹部69内に奥まで差し込む(白矢印参照)。これにより、回転防止板61の旋回が阻止され、本体部10の側面10aに対し垂直に起立した状態となる。図示しないが、回転防止板61が起立支持凹部69から脱出しないように固定する適宜の手段を設ける。例えば、本体部10と回転防止板61の近位縁部61aとを連結固定するL形金具等である。このようにして回転防止板61を使用状態とすることができる。旋回防止板61を非使用状態に戻す場合は、この逆の手順を行う。
【0044】
なお、図示した第2の実施形態では、旋回軸部材64が軸支持部65を介して本体部10と一体的に設けられ、そして軸孔68が回転防止板61と一体的に設けられている。別の形態として、旋回軸部材64が回転防止板61と一体的に設けられ、そして軸孔68が本体部10と一体的に設けられてもよい。その場合、回転防止板61の上部の旋回機構では、旋回軸部材64が回転防止板61の近位縁部61aの上面から上方に延在し、軸孔68は軸支持部65の下面に開口するように設けられる。すなわち、軸孔68は軸支持部65を介して本体部10と一体的に設けられることになる。回転防止板61の下部の旋回機構は、上部と対称的な構成となる。この別の形態においても、
図7に示した回転防止板61の動作は全く同じである。
【0045】
図8を参照して、別の折畳み機構を有する第3の実施形態を説明する。
図8は
図7と同じ断面を概略的に示しており、(a)は非使用状態を、(b)は使用状態を示している。この実施形態は、簡易タイプである。本体部10に固定された軸支持部(図示せず)とこれにより支持された円柱状の旋回軸部材64は、
図6に示したものとほぼ同様である。
【0046】
第3の実施形態では、旋回軸部材64が、旋回軸Pに垂直な断面において、旋回軸部材64の外周面から旋回軸Pの放射方向内方に延びるピン溝64aを有する。ピン溝64aは、旋回軸部材64の軸方向に所定の長さを有する溝である。
【0047】
一方、回転防止板61の近位縁部61aには、旋回軸部材64を受容するために円形の軸孔68が設けられている。さらに、回転防止板61には2つのピン螺子孔68c、68dが形成されている。それらのピン螺子孔68c、68dは、軸孔68の内面から回転防止板61の表面まで旋回軸Pの放射方向に延び、旋回軸P周りに互いに90°の角度間隔で設けられている。
【0048】
さらに、ピン螺子孔68c、68dのいずれか一方と螺合する螺子ピン70を有する。
図8(a)に示す非使用状態においては、螺子ピン70が一方のピン螺子孔68cと螺合して貫通し、その先端がピン溝64a内に挿入されている。これにより回転防止板61が非使用状態に保持される。回転防止板61を使用状態とする際には、螺子ピン70を取り外して、回転防止板61を旋回軸部材64の周りで90°旋回させる。これにより回転防止板61は、
図8(b)に示す使用状態の位置となる。その後、螺子ピン70を他方のピン螺子孔68dに螺合させ、その先端をピン溝64a内に挿入する。これにより回転防止板61は、本体部10の側面10aに対して起立した状態で固定される。
【0049】
図9を参照して、さらに別の折畳み機構を有する第4の実施形態を説明する。
図9は、
図6と同様の概略図である。本実施形態では、回転防止板61の旋回動作をモーター72を用いて行う。モーター72の本体は、本体部10に固定された軸支持部65内に設置されている。モータ72から下方に延びるモーター軸72が回転防止板61に形成された軸孔68を貫通している。モーター軸72の下端は下方の軸支持部65により支持されている。モーター軸72と回転防止板61との間にはキー73が設けられている。これにより、モーター軸72と回転防止板61とは一体的に旋回可能となる。
【0050】
モーター72の操作手段、例えばスイッチ等は図示しないが、本体部10の外部及び/又は内部に設けられる。モーター72の操作手段は、少なくとも内部に設けることが好ましい。その場合、モーター72から適宜の電気的リード線を本体部10の側壁を通して内部空間へと誘導する。そのリード線は、内部空間内に設置された操作盤等に接続される。
【0051】
図10を参照して、さらに異なる回転防止機構60を有する第5の実施形態を説明する。
図10(a)は、1つの回転防止板61とその周囲のみを概略的に示す側面図であり、(b)及び(c)は、(a)のラインIII-IIIに沿った概略断面図である。
【0052】
図10(a)に示すように、回転防止板61は、近位縁部61aを含む半部が剛体からなる不動部61cで形成され、遠位縁部61bを含む半部が弾性体からなる可動部61dで形成されている。不動部61cと可動部61dは、適宜の固定具61e用いて接続されている。
【0053】
図10(b)に示すように、不動部61cの基端が例えば溶接等により本体部10に直接固定されている。図示の例では、不動部61cと可動部61dの接続領域において、不動部61cの端面に突条が形成される一方、可動部61dの端面に溝が形成されている。不動部61cの突条を可動部61dの溝に嵌合させ、その嵌合部分に例えばボルトとナットからなる固定具61eを挿通し固定することによって、不動部61cと可動部61dとを一体化させている。
【0054】
可動部61dは、例えばエラストマーである弾性体の板からなる。可動部61dの厚さは、遠位縁部61bに近づくほど薄くなることが好ましい。その場合、可動部61dは、あたかも水かきフィンのような形状である。これにより、可動部61dは、先端に近い程より動きやすくなる。
図10(c)に示すように、回転防止板61に過大な力が加わったとき、可動部61dが曲がることによってその力を受け流すことができる。その結果、回転防止板61の破損を回避できる。また同時に、回転防止板61を介して本体部10に掛かる負荷を軽減することができる。よって、回転防止板61の破損の影響により本体部10までが破損することを回避できる。可動部61dは、力が排除されると、弾性体の復元力によって元の形状に戻る。可動部61dの構成は、本実施形態のみでなく他の実施形態の回転防止板61にも適用することができる。
【0055】
図11を参照して、さらに異なる回転防止機構60を有する第6の実施形態を説明する。
図11(a)は、第6の実施形態における1つの回転防止板61とその周囲のみを概略的に示す側面図であり、(b)~(d)は、(a)のラインIV-IVに沿った概略断面図であり、(e)は、本実施形態で用いる自由蝶番の模式的な斜視図である。
【0056】
図11(a)に示すように、回転防止板61は、近位縁部61aの2箇所においてそれぞれ自由蝶番75により本体部10に接続されている。自由蝶番は周知であるが、
図11(e)を参照して簡単に構成を説明する。自由蝶番75は、2つのヒンジ部75a、75bと、これらの間を連結するする板状の連結部75eと、一方のヒンジ部75aに設けられた取付羽75cと、他方のヒンジ部75bに設けられた取付羽75dとを備えている。ヒンジ部75aは、連結部75eの縁に固定された第1管体75a1と、取付羽75cの縁に固定された第2管体75a2とを備えている。さらに、第1管体75a1及び第2管体75a2からなる円筒体の内部には芯棒75a3及びバネ75a4が内蔵されている。連結部75eと取付羽75cとは芯棒75a3を軸として初期位置から相対的に回転可能である。相対的に回転した連結部75eと取付羽75cとは、内蔵されたバネ75a4により初期位置に復帰する。取付羽75dを設けられたもう一方のヒンジ部75bについても同様に構成されている。
図11(a)に示すように、自由蝶番75の軸方向は、本体部10の側面10aの母線方向と平行である。
【0057】
図11(b)では、回転防止板61と本体部10とを接続する自由蝶番75が初期位置にある。初期位置においては、取付羽75c、75dと連結部75eとが平行である。一方の取付羽75cは、回転防止板61の近位縁部61aの端面に固定されている。他方の取付羽75dは、本体部10に固定されている。自由蝶番75の初期位置では、回転防止板61は、本体部10に対して起立している。
【0058】
図11(c)又は(d)に示すように、回転防止板61に過大な力が掛かると、回転防止板61は、自由蝶番75のヒンジ部75a又は75bを軸として揺動することができる。回転防止板61が揺動し始める力の大きさは、自由蝶番75に内蔵されたバネ75a4の復元力を調整することによって設定できる。過大な力が掛かったときに回転防止板61が揺動可能であることによって、本体部10に対する負荷を軽減できる。これにより本体部10の破損を回避できる。過大な力が排除されると、回転防止板61は、自由蝶番75のバネ75a4の復元力により
図11(a)の起立状態に戻る。
【0059】
図12を参照して、さらに異なる回転防止機構60を有する第7の実施形態を説明する。
図12(a)は、第7の実施形態における1つの回転防止板61とその周囲のみを概略的に示す側面図であり、(b)は(a)のラインV-Vに沿った概略断面図であり、(c)は(b)のラインVI-VIに沿った概略断面図である。
【0060】
図12(a)に示すように、回転防止板61は、近位縁部61aの2箇所においてそれぞれ可動接続部材77により本体部10に接続されている。可動接続部材77は、本体部10の側面10aに対して略垂直に延在する。可動接続部材77によって、回転防止板61は、本体部10に対して揺動運動可能かつ直線運動可能である。
【0061】
図12(b)に示すように、可動接続部材77はショックアブソーバーを基本構成とする。可動接続部材77の軸方向に配置された外筒77cと内筒77eは、例えばオイルダンパーであるダンパーを構成する。内筒77eが外筒77cに対して出入りすることで可動接続部材77の軸方向長さが変化する。図示の例では、内筒77eの固定端部77fは、回転防止板61の近位縁部61aに固定具77iにより固定されている。内筒77eの周囲にはコイルスプリング77gが配置されている。コイルスプリング77gの一端は回転防止板61の近位縁部61aの端面で支持され、コイルスプリング77gの他端は外筒77cの端面で支持されている。コイルスプリング77gの振動は外筒77cと内筒77eにより構成されたダンパーにより抑制される。
【0062】
外筒77cの固定端部77dには、可動接続部材77の軸方向に対して垂直にかつ本体部10の母線方向に平行に揺動軸部材77hが貫通している。
図12(c)に示すように揺動軸部材77hの上下両端は、台座部77jにより支持されている。台座部77jは、本体部10から突出した本体部10の一部である。例えば、円筒体の揺動軸部材77hを固定具77kが貫通し、揺動軸部材77hと台座部77jとを固定している。揺動軸部材77hを本体部10により支持する手段はこれに限られない。可動接続部材77は、揺動軸部材77hを中心軸として揺動可能である。したがって、回転防止板61もまた揺動軸部材77hを中心軸として揺動可能である。
【0063】
さらに、外筒77cの固定端部77dの先端は、本体部10に設けられた凹部77m内に挿入されている。凹部77mは、揺動軸部材77hの軸方向から視て略扇形であり軸方向に所定の長さを有する。固定端部77dの先端には、ローラー軸77bの周りで転動可能なローラー77aが設けられている。ローラー77aは、凹部77mの扇形の壁面に沿って転がることができる。ローラー77aの転動範囲は凹部77mの形状によって設定できる。ローラー77aの転動範囲によって回転防止板61の揺動範囲も決まる。ローラー77aは、ボール体とすることもできる。
【0064】
図13(a)(b)は、第7の実施形態における回転防止機構60の動きを示している。
図13(a)は、回転防止板61に力が掛かることによって回転防止板61が揺動軸部材77hを中心軸として揺動した状態を示している。このときローラー77aは凹部77m内で転がる。このようにして、回転防止板61は揺動軸部材77hを中心軸として揺動運動可能である。凹部77mの端部がストッパーの役割を果たす。
【0065】
図13(b)では、回転防止板61に力が掛かることによって回転防止板61が本体部10から離れる方向に変位した状態を示している。このとき、内筒77eの一部が外筒77cから出てコイルスプリング77gが伸びる。その後、コイルスプリング77gは弾性復元力により縮む。それに続くコイルスプリング77gの振動はショックアブソーバーにより抑制される。このようにして、回転防止板61は、本体部10に対し近づいたり離れたりする直線運動が可能である。
【0066】
回転防止機構60の実際の動きは、
図13(a)と(b)の動きの組合せとなる。第7の実施形態では、外部からの力に対する回転防止板61の多様な動きが可能である。これにより、本体部10に掛かる負荷を軽減でき、本体部10の破損を回避できる。
【0067】
図14は、浮遊シェルター1を車両により搬送する形態の一例を概略的に示した図である。浮遊シェルター1は、トレーラー車両91に搭載して適宜の車両90により牽引することによって容易に搬送することができる。回転防止板61があることによって、地上において運搬する場合や一時的に寝かせて保管する場合に浮遊シェルター1が転がることを防止できるという効果もある。目的地に到達した後、クレーンなどの重機を用いて設置する。
【0068】
図示しないが、浮遊シェルター1は鉛直方向に起立して設置されることが好ましい。これは、避難時に浮遊シェルター1に速やかに乗り込めるようにするためである。その場合、浮遊シェルター1の重心が高い位置にあるので、浮遊シェルター1を適宜の支持台の上に載置することが好ましい。また、第2~第4の実施形態の浮遊シェルター1の場合、回転防止板61を折り畳んだ非使用状態で設置することができる。
【0069】
以上に説明した本発明の浮遊シェルターは、例えば以下のように使用される。津波や洪水等の際、避難者はハッチからシェルターに乗り込む。なお、回転防止板が折り畳まれている場合、避難者が乗り込む前又は後に回転防止板を起立させて使用状態とする。その後、周囲の水かさが増えると浮力によってシェルターが浮遊し始め、水流によって浮遊する。避難者は、周囲の風雨の状況が治まるか水がひくまでシェルター内で待機する。シェルターは、その側面が逆円錐状等であるため、瓦礫等の衝撃力が上向きの力として作用し、水面での浮遊状態を維持し易く、よって発見され易い。浮遊中は、回転防止板によってシェルターの自転が抑制される。さらに、浮遊中に水のない斜面上に押し上げられた場合、回転防止板があることで斜面を転がり落ちることを防止できる。
【0070】
土石流などで家屋が押し潰されそうな状況下であっても、避難者は、2、3分で浮遊シェルターに入って避難することができ、家屋が倒壊したり流出したりしても生存することができる。また、行方不明者を低減することができる。本発明の浮遊シェルターは小型であり、運搬や移動も容易であるので一般家庭でも利用し易い。車での避難ができない人、特に高齢者などに適している。
【0071】
また、ここで図示し、説明した各実施形態は一例であって、本発明はこれらに限定されるものではなく、多様な変形形態が可能である。また、各実施形態について説明した各構成要素が他の実施形態に組み合わせ可能な場合、それらの組合せ形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 浮遊シェルター
10 本体部
10a 本体部側面
11 ハッチ
12 安定板
20 天蓋部
21 第2ハッチ
22 フック
23 識別標識
24 換気バルブ
41 座席
42 床板
43 梯子
44 備品
45 バラスト
45a バラスト個体
46 シートベルト
60 回転防止機構
61 回転防止板
61a 近位縁部
61b 遠位縁部
61c 不動部
61d 可動部
61d1 可動先端
61e 固定具
62 吊り孔
63 溶接部
64 旋回軸部材
64a ピン溝
65 軸支持部
66 旋回阻止部
67 留め具
68 軸孔
68a 第1軸孔部
68b 第2軸孔部
68c、68d ピン螺子孔
69 起立支持凹部
69a 切欠き部
70 螺子ピン
72 モーター
73 モーター軸
74 キー
75 自由蝶番
75a、75b ヒンジ部
75c、75d 取付羽
75e 連結部
77 可動接続部材
77a ローラー
77b ローラー軸
77c 外筒
77d 外筒固定端部
77e 内筒
77f 内筒固定端部
77g コイルスプリング
77h 揺動軸部材
77i 固定具
77j 台座部
77k 固定具
77m 凹部
90 車両
91 トレーラー車両
A 本体部上端
B 本体部下端
C 中心軸
D 本体部上端直径
H 本体部鉛直長さ
h 回転防止板鉛直長さ
w 回転防止板水平長さ
R 浮遊物
P 旋回軸
【手続補正書】
【提出日】2023-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難者を収容して水面に浮遊する浮遊シェルター(1)であって、
上方から下方へと直径が小さくなる円錐形状もしくは円錐台形状、又は円筒状の側面(10a)と避難者を収容するための内部空間(40)とを具備する本体部(10)と、
前記本体部(10)の上端開口を覆う天蓋部(20)と、
前記内部空間(40)内に搭載されたバラスト(45)と、を有し、
前記バラスト(45)は、前記浮遊シェルター(1)の吃水位置が前記本体部(10)の略上端(A)となるように調整されており、かつ、
前記本体部(10)の上端(A)から下端(B)までの鉛直方向の長さ(H)が、前記本体部(10)の上端(A)における直径(D)の1.5倍~2.5倍である、前記浮遊シェルターにおいて、
前記本体部(10)が、前記側面(10a)上に、その中心軸(C)周りに等角度間隔で配置されそれぞれ放射方向に延在する複数の回転防止板(61)を有し、
前記回転防止板(61)の上端が、前記本体部(10)の略上端(A)に位置し、前記回転防止板(61)の上端から下端までの鉛直方向の長さ(h)が、前記本体部(10)の上端(A)から下端(B)までの鉛直方向の長さ(H)の0.4倍以下であることを特徴とする浮遊シェルター。
【請求項2】
前記回転防止板(61)が、前記本体部(10)に近い方の縁部である近位縁部(61a)により前記本体部(10)に直接固定されていることを特徴とする請求項1に記載の浮遊シェルター。
【請求項3】
前記回転防止板(61)は、前記近位縁部(61a)を含む1つの半部が剛体からなる不動部(61c)で形成され、もう1つの半部が弾性体からなる可動部(61d)で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の浮遊シェルター。
【請求項4】
前記回転防止板(61)における前記本体部(10)に近い方の縁部である近位縁部(61a)に位置する旋回軸(P)の周りで、前記回転防止板(61)を、前記側面(10a)に対して起立した使用状態と前記側面(10a)上に伏せた非使用状態との間で旋回可能とする折畳み機構をさらに有することを特徴とする請求項1に浮遊シェルター。
【請求項5】
前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在する旋回軸部材(64)と、
前記旋回軸部材(64)を受容するための軸孔(68)であって、前記旋回軸(P)に垂直な断面が第1軸孔部(68a)と第2軸孔部(68b)とを含む略長円形でありかつ前記旋回軸部材(64)が前記第1軸孔部(68a)と前記第2軸孔部(68b)との間で移動可能である、前記軸孔(68)と、
前記回転防止板(61)の非使用状態において、前記回転防止板(61)の旋回を阻止するべく前記回転防止板(61)の前記近位縁部(61a)を収容するために前記本体部(10)に設けられた旋回阻止部(66)と、
前記回転防止板(61)の使用状態において、前記回転防止板(61)を起立させるべく前記回転防止板(61)の前記近位縁部(61a)を収容するために前記本体部(10)に設けられた起立支持凹部(69)と、を有し、
前記旋回軸部材(64)及び前記軸孔(68)のうちの一方が前記本体部(10)及び前記回転防止板(61)のうちの一方と一体的に設けられ、前記旋回軸部材(64)及び前記軸孔(68)のうちの他方が前記本体部(10)及び前記回転防止板(61)のうちの他方と一体的に設けられることを特徴とする請求項4に記載の浮遊シェルター。
【請求項6】
前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在しかつ前記本体部(10)に固定された旋回軸部材(64)と、
前記旋回軸部材(64)の外周面から前記旋回軸(P)の放射方向内方に延びるピン溝(64a)と、
前記旋回軸部材(64)を受容するために前記回転防止板(61)に設けられた軸孔(68)と、
前記軸孔(68)の内面から前記回転防止板(61)の表面まで前記旋回軸(P)の放射方向にそれぞれ延び、前記旋回軸(P)周りに互いに90°の角度間隔で設けられた2つのピン螺子孔(68c、68d)と、
前記ピン螺子孔(68c、68d)のいずれか一方と螺合して前記ピン溝(64a)内に挿入可能な螺子ピン(70)と、を有し、
前記螺子ピン(70)が、前記回転防止板(61)の非使用状態においては前記2つのピン螺子孔(68c、68d)の一方と螺合し、使用状態においては前記2つのピン螺子孔(68c、68d)の他方と螺合して前記ピン溝(64a)内に挿入されることを特徴とする請求項4に記載の浮遊シェルター。
【請求項7】
前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在するモーター軸(73)を有し前記本体部(10)に固定されたモーター(72)と、
前記モーター軸(73)を受容するために前記回転防止板(61)に設けられた軸孔(68)と、
前記回転防止板(61)が前記モーター軸(73)と一体的に旋回するように設けられたキー(74)と、
前記モーター(72)を操作するための操作手段と、を有することを特徴とする請求項4に記載の浮遊シェルター。
【請求項8】
前記回転防止板(61)を前記本体部(10)に接続するためにこれらの間に配置された自由蝶番(75)を有することを特徴とする請求項1に記載の浮遊シェルター。
【請求項9】
前記回転防止板(61)を前記本体部(10)に接続するためにこれらの間に配置された可動接続部材(77)を有し、前記可動接続部材(77)は、コイルスプリング(77g)と、前記コイルスプリング(77g)の振動を抑制するショックアブソーバー(77c、77e)と、前記ショックアブソーバー(77c、77e)の前記本体部(10)側の固定端部(77d)に設けられ前記本体部(10)により支持された揺動軸部材(77h)と、を有し、
前記回転防止板(61)は、前記コイルスプリング(77g)及び前記ショックアブソーバー(77c、77e)により前記本体部(10)に対し直線運動可能であり、かつ、前記揺動軸部材(77h)を中心軸として揺動運動可能であることを特徴とする請求項1に記載の浮遊シェルター。
【請求項10】
前記ショックアブソーバー(77c、77e)の前記本体部(10)側の固定端部(77d)が挿入されるように前記本体部(10)に設けられた凹部(77m)と、前記固定端部(77d)の先端に設けられ前記凹部(77m)内で転動可能なローラー(77a)と、を有することを特徴とする請求項9に記載の浮遊シェルター。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
- 本発明の態様は、避難者を収容して水面に浮遊する浮遊シェルター(1)であって、
上方から下方へと直径が小さくなる円錐形状もしくは円錐台形状、又は円筒状の側面(10a)と避難者を収容するための内部空間(40)とを具備する本体部(10)と、
前記本体部(10)の上端開口を覆う天蓋部(20)と、
前記内部空間(40)内に搭載されたバラスト(45)と、を有し、
前記バラスト(45)は、前記浮遊シェルター(1)の吃水位置が前記本体部(10)の略上端(A)となるように調整されており、かつ、
前記本体部(10)の上端(A)から下端(B)までの鉛直方向の長さ(H)が、前記本体部(10)の上端(A)における直径(D)の1.5倍~2.5倍である、前記浮遊シェルターにおいて、
前記本体部(10)が、前記側面(10a)上に、その中心軸(C)周りに等角度間隔で配置されそれぞれ放射方向に延在する複数の回転防止板(61)を有し、
前記回転防止板(61)の上端が、前記本体部(10)の略上端(A)に位置し、前記回転防止板(61)の上端から下端までの鉛直方向の長さ(h)が、前記本体部(10)の上端(A)から下端(B)までの鉛直方向の長さ(H)の0.4倍以下であることを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)が、前記本体部(10)に近い方の縁部である近位縁部(61a)により前記本体部(10)に直接固定されていることを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)は、前記近位縁部(61a)を含む1つの半部が剛体からなる不動部(61c)で形成され、もう1つの半部が弾性体からなる可動部(61d)で形成されていることを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)における前記本体部(10)に近い方の縁部である近位縁部(61a)に位置する旋回軸(P)の周りで、前記回転防止板(61)を、前記側面(10a)に対して起立した使用状態と前記側面(10a)上に伏せた非使用状態との間で旋回可能とする折畳み機構をさらに有することを特徴とする。
- 上記態様において、前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在する旋回軸部材(64)と、
前記旋回軸部材(64)を受容するための軸孔(68)であって、前記旋回軸(P)に垂直な断面が第1軸孔部(68a)と第2軸孔部(68b)とを含む略長円形でありかつ前記旋回軸部材(64)が前記第1軸孔部(68a)と前記第2軸孔部(68b)との間で移動可能である、前記軸孔(68)と、
前記回転防止板(61)の非使用状態において、前記回転防止板(61)の旋回を阻止するべく前記回転防止板(61)の前記近位縁部(61a)を収容するために前記本体部(10)に設けられた旋回阻止部(66)と、
前記回転防止板(61)の使用状態において、前記回転防止板(61)を起立させるべく前記回転防止板(61)の前記近位縁部(61a)を収容するために前記本体部(10)に設けられた起立支持凹部(69)と、を有し、
前記旋回軸部材(64)及び前記軸孔(68)のうちの一方が前記本体部(10)及び前記回転防止板(61)のうちの一方と一体的に設けられ、前記旋回軸部材(64)及び前記軸孔(68)のうちの他方が前記本体部(10)及び前記回転防止板(61)のうちの他方と一体的に設けられることを特徴とする。
- 上記態様において、前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在しかつ前記本体部(10)に固定された旋回軸部材(64)と、
前記旋回軸部材(64)の外周面から前記旋回軸(P)の放射方向内方に延びるピン溝(64a)と、
前記旋回軸部材(64)を受容するために前記回転防止板(61)に設けられた軸孔(68)と、
前記軸孔(68)の内面から前記回転防止板(61)の表面まで前記旋回軸(P)の放射方向にそれぞれ延び、前記旋回軸(P)周りに互いに90°の角度間隔で設けられた2つのピン螺子孔(68c、68d)と、
前記ピン螺子孔(68c、68d)のいずれか一方と螺合して前記ピン溝(64a)内に挿入可能な螺子ピン(70)と、を有し、
前記螺子ピン(70)が、前記回転防止板(61)の非使用状態においては前記2つのピン螺子孔(68c、68d)の一方と螺合し、使用状態においては前記2つのピン螺子孔(68c、68d)の他方と螺合して前記ピン溝(64a)内に挿入されることを特徴とする。
- 上記態様において、前記折畳み機構が、
前記旋回軸(P)に沿って延在するモーター軸(73)を有し前記本体部(10)に固定されたモーター(72)と、
前記モーター軸(73)を受容するために前記回転防止板(61)に設けられた軸孔(68)と、
前記回転防止板(61)が前記モーター軸(73)と一体的に旋回するように設けられたキー(74)と、
前記モーター(72)を操作するための操作手段と、を有することを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)を前記本体部(10)に接続するためにこれらの間に配置された自由蝶番(75)を有することを特徴とする。
- 上記態様において、前記回転防止板(61)を前記本体部(10)に接続するためにこれらの間に配置された可動接続部材(77)を有し、前記可動接続部材(77)は、コイルスプリング(77g)と、前記コイルスプリング(77g)の振動を抑制するショックアブソーバー(77c、77e)と、前記ショックアブソーバー(77c、77e)の前記本体部(10)側の固定端部(77d)に設けられ前記本体部(10)により支持された揺動軸部材(77h)と、を有し、
前記回転防止板(61)は、前記コイルスプリング(77g)及び前記ショックアブソーバー(77c、77e)により前記本体部(10)に対し直線運動可能であり、かつ、前記揺動軸部材(77h)を中心軸として揺動運動可能であることを特徴とする。
- 上記態様において、前記ショックアブソーバー(77c、77e)の前記本体部(10)側の固定端部(77d)が挿入されるように前記本体部(10)に設けられた凹部(77m)と、前記固定端部(77d)の先端に設けられ前記凹部(77m)内で転動可能なローラー(77a)と、を有することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
図9を参照して、さらに別の折畳み機構を有する第4の実施形態を説明する。
図9は、
図6と同様の概略図である。本実施形態では、回転防止板61の旋回動作をモーター72を用いて行う。モーター72の本体は、本体部10に固定された軸支持部65内に設置されている。モータ
ー72から下方に延びるモーター軸7
3が回転防止板61に形成された軸孔68を貫通している。モーター軸7
3の下端は下方の軸支持部65により支持されている。モーター軸7
3と回転防止板61との間にはキー7
4が設けられている。これにより、モーター軸7
3と回転防止板61とは一体的に旋回可能となる。