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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085200
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】故障診断装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20240619BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20240619BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240619BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240619BHJP
【FI】
H02M1/00 C
H02M1/08 C
H02M3/155 C
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199600
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】浦壁 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】原田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大井 健史
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA12
5H730AS05
5H730BB13
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD06
5H730DD13
5H730FD01
5H730FF09
5H730XX04
5H730XX23
5H730XX33
5H730XX50
5H740AA08
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB01
5H740BB02
5H740BB05
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H770AA29
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA41
5H770GA01
5H770GA07
5H770HA03Y
5H770LB05
5H770LB10
(57)【要約】
【課題】複数個並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置において、電力用半導体素子の故障を短時間で容易に診断できる小型で低コストの故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を実現する。
【解決手段】複数個並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置100における電力用半導体素子の故障を診断する故障診断装置1は、電力用半導体素子の制御端子と電流流出端子との間に、正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを交互に供給するゲート駆動部11と、電力変換装置100が出力する電圧または電流を検出する検出部12と、検出部12が検出した電圧または電流の値に基づき、電力用半導体素子の組の故障の有無を診断する診断部13と、を備え、診断部13による診断時にゲート駆動部11から供給される診断用の正電圧は、電力変換装置100による電力変換動作時にゲート駆動部11から供給される駆動用の正電圧よりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置における前記電力用半導体素子の故障を診断する故障診断装置であって、
前記電力用半導体素子の制御端子と電流流出端子との間に、正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを交互に供給するゲート駆動部と、
前記電力変換装置が出力する電圧または電流を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記電圧または前記電流の値に基づき、前記電力用半導体素子の組の故障の有無を診断する診断部と、
を備え、
前記診断部による診断時に前記ゲート駆動部から供給される診断用の正電圧は、前記電力変換装置による電力変換動作時に前記ゲート駆動部から供給される駆動用の正電圧よりも小さい、故障診断装置。
【請求項2】
前記診断部による診断時に前記ゲート駆動部から供給される診断用の正電圧は、前記電力用半導体素子がオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きい、請求項1に記載の故障診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記ゲート駆動部が診断対象の組の前記電力用半導体素子に対して診断用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを供給して所定の時間経過したときに前記検出部が検出した前記電圧または前記電流の値と、予め規定された基準値と、の差が所定の範囲外である場合、当該診断対象の組の電力用半導体素子に故障が発生していると判定する、請求項2に記載の故障診断装置。
【請求項4】
前記ゲート駆動部が診断対象の組の前記電力用半導体素子に対して診断用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを供給しているときに前記検出部が検出した前記電圧または前記電流の値を入力データセットとして故障診断モデルを学習する機械学習部をさらに備え、
前記診断部は、前記機械学習部による学習済の前記故障診断モデルを用いて、前記ゲート駆動部が診断対象の組の前記電力用半導体素子に対して診断用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを供給しているときに前記検出部が検出した前記電圧または前記電流の値に基づいて、当該診断対象の組の電力用半導体素子の故障の有無を診断する、請求項2に記載の故障診断装置。
【請求項5】
前記ゲート駆動部は、
前記診断部による診断時に、診断対象の組の前記電力用半導体素子の制御端子と電流流出端子との間に、診断用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを交互に供給する診断用ゲート駆動回路と、
前記電力変換装置による電力変換動作時に、前記電力用半導体素子の制御端子と電流流出端子との間に、駆動用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを交互に供給する電力変換動作用ゲート駆動回路と、
を有する、請求項1に記載の故障診断装置。
【請求項6】
前記ゲート駆動部は、
診断用の正電圧を出力する診断用電源と、
駆動用の正電圧を出力する駆動用電源と、
前記電力用半導体素子の制御端子と電流流出端子との間に供給される正電圧の供給元を、前記診断用電源と前記駆動用電源とで選択的に切り替える切替部と、
を有する、請求項1に記載の故障診断装置。
【請求項7】
複数個並列に接続された電力用半導体素子の組を有し、前記電力用半導体素子がオンオフ動作することにより電力変換動作を行う電力変換回路部と、
前記電力変換回路部の出力部に設けられる平滑コンデンサと、
前記電力変換回路部の前記出力部に設けられるリアクトルと、
前記電力変換回路部の前記出力部に設けられ、前記平滑コンデンサに並列に接続される放電回路部と、
前記電力変換回路部の前記出力部と外部負荷との間を接続または遮断する連系スイッチと、
前記電力変換回路部による電力変換動作を制御する電力変換制御部と、
請求項1~6のいずれか一項に記載の故障診断装置と、
を備える、電力変換装置。
【請求項8】
前記連系スイッチは、前記診断部による診断時に、前記電力変換回路部の前記出力部と前記外部負荷との間を遮断する、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記放電回路部は、放電抵抗と前記放電抵抗に直列に接続された電路を開閉する放電スイッチとを有し、
前記放電スイッチは、前記診断部による診断時に、前記電路を閉路する、請求項7に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、故障診断装置及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個並列に接続された電力用半導体素子を有するインバータやDC/DCコンバータなどの電力変換装置が知られている。
【0003】
例えば、環流ダイオードが並列接続された絶縁ゲート形パワー半導体素子が直並列接続されて構成された電力変換器の点検対象の絶縁ゲート形パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間に試験電圧が印加された状態で点検対象の絶縁ゲート形パワー半導体素子のゲートにオンオフ信号を供給する点検用電源と、前記点検用電源から点検対象の絶縁ゲート形パワー半導体素子のゲートにオンオフ信号が入力されたときの点検対象の絶縁ゲート形パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電圧やコレクタ電流に基づいて点検対象の絶縁ゲート形パワー半導体素子の断線故障または短絡故障もしくは環流ダイオードの短絡故障を判定する点検回路とを備え、前記点検回路は、点検対象の絶縁ゲート形パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電圧を増加させたときに点検対象の絶縁ゲート形パワー半導体素子のコレクタ電流が飽和するときは点検対象の絶縁ゲート形パワー半導体素子の部分断線故障であると判定することを特徴とする電力変換器の点検装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4984746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数個並列に接続された電力用半導体素子を有する電力変換装置において、電力用半導体素子の故障を短時間で容易に診断することができる小型で低コストの故障診断装置及びこれを備える電力変換装置の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、複数個並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置における電力用半導体素子の故障を診断する故障診断装置は、電力用半導体素子の制御端子と電流流出端子との間に、正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを交互に供給するゲート駆動部と、電力変換装置が出力する電圧または電流を検出する検出部と、検出部が検出した電圧または電流の値に基づき、電力用半導体素子の組の故障の有無を診断する診断部と、を備え、診断部による診断時にゲート駆動部から供給される診断用の正電圧は、電力変換装置による電力変換動作時にゲート駆動部から供給される駆動用の正電圧よりも小さい。
【0007】
ここで、診断部による診断時にゲート駆動部から供給される診断用の正電圧は、電力用半導体素子がオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きくてもよい。
【0008】
また、診断部は、ゲート駆動部が診断対象の組の電力用半導体素子に対して診断用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを供給して所定の時間経過したときに検出部が検出した電圧または電流の値と、予め規定された基準値と、の差が所定の範囲外である場合、当該診断対象の組の電力用半導体素子に故障が発生していると判定してもよい。
【0009】
また、故障診断装置は、ゲート駆動部が診断対象の組の電力用半導体素子に対して診断用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを供給しているときに検出部が検出した電圧または電流の値を入力データセットとして故障診断モデルを学習する機械学習部をさらに備え、診断部は、機械学習部による学習済の故障診断モデルを用いて、ゲート駆動部が診断対象の組の電力用半導体素子に対して診断用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを供給しているときに検出部が検出した電圧または電流の値に基づいて、当該診断対象の組の電力用半導体素子の故障の有無を診断してもよい。
【0010】
また、ゲート駆動部は、診断部による診断時に、診断対象の組の電力用半導体素子の制御端子と電流流出端子との間に、診断用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを交互に供給する診断用ゲート駆動回路と、電力変換装置による電力変換動作時に、電力用半導体素子の制御端子と電流流出端子との間に、駆動用の正電圧と負電圧またはゼロ電圧とを交互に供給する電力変換動作用ゲート駆動回路と、を有してもよい。
【0011】
また、ゲート駆動部は、診断用の正電圧を出力する診断用電源と、駆動用の正電圧を出力する駆動用電源と、電力用半導体素子の制御端子と電流流出端子との間に供給される正電圧の供給元を、診断用電源と駆動用電源とで選択的に切り替える切替部と、を有してもよい。
【0012】
また、本開示の一態様によれば、電力変換装置は、複数個並列に接続された電力用半導体素子の組を有し、電力用半導体素子がオンオフ動作することにより電力変換動作を行う電力変換回路部と、電力変換回路部の出力部に設けられる平滑コンデンサと、電力変換回路部の出力部に設けられるリアクトルと、電力変換回路部の出力部に設けられ、コンデンサに並列に接続される放電回路部と、電力変換回路部の出力部と外部負荷との間を接続または遮断する連系スイッチと、電力変換回路部による電力変換動作を制御する電力変換制御部と、上記故障診断装置と、を備える。
【0013】
ここで、連系スイッチは、診断部による診断時に、電力変換回路部の出力部と外部負荷との間を遮断してもよい。
【0014】
また、放電回路部は、放電抵抗と放電抵抗に直列に接続された電路を開閉する放電スイッチとを有し、放電スイッチは、診断部による診断時に、電路を閉路してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、複数個並列に接続された電力用半導体素子を有する電力変換装置において、電力用半導体素子の故障を短時間で容易に診断することができる小型で低コストの故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の第1の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
図2】電力用半導体素子のゲート-ソース間電圧とドレイン-ソース間電圧とドレイン電流との関係を例示する図である。
図3】本開示の第1の実施形態による電力変換装置において電力用半導体素子のゲート端子に診断用の正電圧とゼロ電圧とをパルス状に印加した場合の電力変換装置の出力電圧とリアクトル電流のシミュレーション波形を例示する図である。
図4】本開示の第1の実施形態による電力変換装置において電力用半導体素子のゲート端子に駆動用の正電圧とゼロ電圧とをパルス状に印加した場合の電力変換装置の出力電圧とリアクトル電流のシミュレーション波形を例示する図である。
図5】本開示の第1、第3、第4及び第6の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置における故障診断処理を示すフローチャートである。
図6】本開示の第2の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
図7】本開示の第3の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
図8】本開示の第4の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
図9】本開示の第5の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
図10】本開示の第6の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照して、故障診断装置及び電力変換装置について説明する。各図面において、同様または類似の部材には同様の参照符号が付けられている。また、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図示される形態は実施をするための1つの例であり、これらの形態に限定されるものではない。ここで、スイッチの「オン」は、当該スイッチが設けられた電路の閉(クローズ)を意味し、すなわちスイッチがオン動作することで、当該スイッチが設けられた電路が接続され閉(クローズ)状態になる。また、スイッチの「オフ」とは、当該スイッチが設けられた電路の開(オープン)を意味し、すなわちスイッチがオフ動作することで、当該スイッチが設けられた電路が遮断され開(オープン)状態になる。
【0018】
本開示の各実施形態による電力変換装置は、複数個並列に接続された電力用半導体素子をオンオフ駆動することにより、電力変換動作を行う。電力用半導体素子の例としては、MOSFET、IGBT、サイリスタ、GTO、トランジスタなどがある。MOSFETはその端子としてゲート端子、ドレイン端子及びソース端子を有する。IGBTはその端子としてゲート端子、コレクタ端子及びエミッタ端子を有する。トランジスタはその端子としてベース端子、コレクタ端子及びエミッタ端子を有する。サイリスタ及びGTOはその端子としてゲート端子、アノード端子及びカソード端子を有する。電力用半導体素子の「電流流入端子」は、MOSFETの「ドレイン端子」、IGBT及びトランジスタの「コレクタ端子」、サイリスタ及びGTOの「アノード端子」がそれぞれ対応する。電力用半導体素子の「電流流出端子」は、MOSFETの「ソース端子」、IGBT及びトランジスタの「エミッタ端子」、サイリスタ及びGTOの「カソード端子」がそれぞれ対応する。電力用半導体素子の「制御端子」は、MOSFET、IGBT、サイリスタ及びGTOの「ゲート端子」、トランジスタの「ベース端子」がそれぞれ対応する。
【0019】
以下、一例として、電力用半導体素子がMOSFETで構成される場合について説明するが、IGBT、サイリスタ、GTO、あるいはトランジスタであっても本開示の各実施形態は適用可能である。また電力用半導体素子をIGBTで構成する場合は、電流流入端子である「ドレイン」は「コレクタ」に、電流流出端子である「ソース」は「エミッタ」にそれぞれ読み替えられて本開示の各実施形態が適用される。また電力用半導体素子をトランジスタで構成する場合は、制御端子である「ゲート」は「ベース」に、電流流入端子である「ドレイン」は「コレクタ」に、電流流出端子である「ソース」は「エミッタ」にそれぞれ読み替えられて本開示の各実施形態が適用される。また。電力用半導体素子をサイリスタあるいはGTOで構成する場合は、電流流入端子である「ドレイン」は「アノード」に、電流流出端子である「ソース」は「カソード」にそれぞれ読み替えられて本開示の各実施形態が適用される。
【0020】
<第1の実施形態>
【0021】
図1は、本開示の第1の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
【0022】
本開示の第1の実施形態では、複数並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置100が非絶縁降圧型のDC/DCコンバータで構成される例について説明する。
【0023】
電力変換装置100は、ゲート駆動部11と、電圧検出部12と、診断部13と、診断用ゲート信号発生回路14と、電力変換回路部21と、電力変換制御部26とを備える。ゲート駆動部11内の診断用ゲート駆動回路41と電圧検出部12と診断部13と診断用ゲート信号発生回路14とで、故障診断装置1の機能が実現される。
【0024】
電力変換装置100はDC/DCコンバータとして構成されるので、電力変換回路部21は、複数個並列に接続された電力用半導体素子SHa及びSHbの組を1組有する。電力用半導体素子SHaがオン動作するときは電力用半導体素子SHbもオン動作し、電力用半導体素子SHaがオフ動作するときは電力用半導体素子SHbもオフ動作する。電力変換回路部21は、ゲート駆動部11から供給された電圧に応じて電力用半導体素子SHa及びSHbがオンオフ動作することにより電力変換動作を行い、入力された直流入力電圧を降圧して出力する。ここでは、一例として、電力変換回路部21に設けられる1組の電力用半導体素子の並列数を2としたが、電力変換回路部21に設けられる1組の電力用半導体素子の並列数を3以上としてもよい。
【0025】
電力用半導体素子SHa及びSHbからなる並列回路の一端には、複数個並列に接続されたダイオードDa及びDbが接続される。ここでは、一例として、電力変換回路部21に設けられるダイオードの並列数を2としたが、電力変換回路部21に設けられるダイオードの並列数を3以上または1としてもよい。
【0026】
電力用半導体素子SHaのゲート端子にはゲート抵抗Rgaを介してゲート駆動部11が接続される。電力用半導体素子SHbのゲート端子にはゲート抵抗Rgbを介してゲート駆動部11が接続される。
【0027】
ゲート駆動部11は、診断用ゲート駆動回路41と、電力変換動作用ゲート駆動回路42とを有する。
【0028】
電力変換動作用ゲート駆動回路42は、電力変換装置100による電力変換動作時に、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に、駆動用の正電圧とゼロ電圧とを供給する。このため、電力変換動作用ゲート駆動回路42は、駆動用電源32と、駆動用正側スイッチSgHと、駆動用負側スイッチSgLとを有する。駆動用正側スイッチSgH及び駆動用負側スイッチSgLの例としては、MOSFET、IGBT、トランジスタなどがある。駆動用正側スイッチSgH及び駆動用負側スイッチSgLのオンオフ動作は、電力変換制御部26により制御される。電力変換動作用ゲート駆動回路42において、駆動用正側スイッチSgHがオン動作を行いかつ駆動用負側スイッチSgLがオフ動作を行うと、電力変換動作用ゲート駆動回路42からは、駆動用のゲート信号のオン信号に対応する正電圧が出力される。電力変換動作用ゲート駆動回路42において、駆動用正側スイッチSgHがオフ動作を行いかつ駆動用負側スイッチSgLがオン動作を行うと、電力変換動作用ゲート駆動回路42からは、駆動用のゲート信号のオフ信号に対応するゼロ電圧が出力される。
【0029】
診断用ゲート駆動回路41は、診断用電源31と、診断用正側スイッチSsHと、診断用負側スイッチSsLとを有する。診断用正側スイッチSsH及び診断用負側スイッチSsLの例としては、MOSFET、IGBT、トランジスタなどがある。診断部13の診断時には、診断用ゲート信号発生回路14が、診断用正側スイッチSsH及び診断用負側スイッチSsLのオンオフ動作を制御する。診断用ゲート駆動回路41は、診断部13による診断時に、診断対象の組の電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に、診断用の正電圧とゼロ電圧とを交互に供給する。すなわち、診断用ゲート駆動回路41において、診断用正側スイッチSsHがオン動作を行いかつ診断用負側スイッチSsLがオフ動作を行うと、診断用ゲート駆動回路41からは、診断用のゲート信号のオン信号に対応する正電圧が出力される。診断用ゲート駆動回路41において、診断用正側スイッチSsHがオフ動作を行いかつ診断用負側スイッチSsLがオン動作を行うと、診断用ゲート駆動回路41からは、診断用のゲート信号のオフ信号に対応するゼロ電圧が出力される。
【0030】
診断用電源31の正電圧は、駆動用電源32の正電圧よりも小さい値に設定される。すなわち、診断部13による診断時にゲート駆動部11内の診断用ゲート駆動回路41から供給される診断用の正電圧は、電力変換装置100による電力変換動作時にゲート駆動部11内の電力変換動作用ゲート駆動回路42から供給される駆動用の正電圧よりも小さい。
【0031】
また、診断用電源31の正電圧は、電力用半導体素子SHa及びSHbの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きい値に設定される。「正の所定値」とは、例えば閾値電圧の数%~50%程度の値であってもよい。例えば、閾値電圧が2Vであるとき、「正の所定値」を1Vとすると、診断用電源31の正電圧は3Vに設定される。なお、ここで挙げた数値は一例であって、これ以外の数値であってもよい。一方で、駆動用電源32の正電圧については、電力用半導体素子SHa及びSHbの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも十分に大きい値に設定される。
【0032】
電力変換回路部21の出力部20には、平滑コンデンサ22と、リアクトル23と、放電回路部24と、連系スイッチ25とが設けられる。電力用半導体素子SHa及びSHbからなる並列回路とダイオードDa及びDbからなる並列回路との接続点には、リアクトル23の一端が接続される。リアクトル23の他の一端には、平滑コンデンサ22、放電回路部24、及び連系スイッチ25の各々の一端が接続される。平滑コンデンサ22と放電回路部24とは互いに並列に接続される。放電回路部24は、放電抵抗Rdと放電抵抗Rdに直列に接続された電路を開閉する放電スイッチSWとを有する。放電スイッチSWの例としては、MOSFET、IGBT、トランジスタなどがある。
【0033】
電力変換装置100の電力変換動作の停止時においては、連系スイッチ25はオフ動作をして電力変換回路部21の出力部20と外部負荷との間を遮断し、放電スイッチSWはオン動作(閉路動作)をして平滑コンデンサ22と放電抵抗Rdとを電気的に接続することで、平滑コンデンサ22の電荷を放電抵抗Rdで放電させて作業員の安全を確保する。また、電力変換装置100が電力変換動作を行っている時は、連系スイッチ25はオン動作をして電力変換回路部21の出力部20と外部負荷との間を電気的に接続し、放電スイッチSWはオフ動作(開路動作)をして平滑コンデンサ22から放電抵抗Rdを切り離す。
【0034】
診断部13による診断時には、連系スイッチ25はオフ動作をして電力変換回路部21の出力部20と外部負荷との間を遮断し、放電スイッチSWはオン動作をして平滑コンデンサ22と放電抵抗Rdとを電気的に接続する。診断部13による診断時に放電スイッチSWはオン動作を行うことで平滑コンデンサ22と放電抵抗Rdとを電気的に接続するのは、平滑コンデンサ22の電荷を放電抵抗Rdで放電させることで、電圧検出部12により検出される出力電圧の立ち上がりスピードを遅くし、電圧検出部12のサンプリング周波数が遅くても電圧波形を取得できるようにするためである。なお、この変形例として、電圧検出部12のサンプリング周波数を遅くする必要がない場合は、診断部13による診断時において放電スイッチSWをオフ動作させたままにしておいてもよい。
【0035】
電力用半導体素子SHa及びSHbからなる並列回路の両端のうち、ダイオードDa及びDbが接続されない側の一端には、正側入力端子T1Hが設けられる。ダイオードDa及びDbからなる並列回路の両端のうち、電力用半導体素子SHa及びSHbが接続されない側の一端には、負側入力端子T1L及び負側出力端子T2Lが設けられる。連系スイッチ25の両端のうち、リアクトル23が設けられる一端とは反対側の一端には、正側出力端子T2Hが設けられる。電力変換装置100の入力側には入力コンデンサ27が設けられる。電力変換装置100には、正側入力端子T1H及び負側入力端子T1Lを介して直流入力電源33が接続される。電力変換装置100の正側出力端子T2Hと負側出力端子T2Lとの間には、外部負荷(図示せず)が接続される。電力変換回路部21は、電力用半導体素子SHa及びSHbがオンオフ動作することにより電力変換動作を行い、正側入力端子T1Hと負側入力端子T1Lとから入力された直流入力電圧を降圧する。電力変換回路部21で降圧された直流電圧は、正側出力端子T2H及び負側出力端子T2Lから出力される。
【0036】
電圧検出部12は、電力変換装置100(の電力変換回路部21)の出力電圧を検出する。電力変換装置100の出力電圧は、正側出力端子T2Hと負側出力端子T2Lとの間の電位差であり、換言すれば平滑コンデンサ22の正負両極端子に印加される電位差である。電圧検出部12が検出した出力電圧の値は、電力変換制御部26に送られて電力変換回路部21の電力変換動作の制御に用いられるとともに、診断部13に送られて診断部13による故障診断に用いられる。
【0037】
電力変換制御部26は、電力変換動作用ゲート駆動回路42内の駆動用正側スイッチSgH及び駆動用負側スイッチSgLのオンオフ動作を制御することで、電力変換回路部21による電力変換動作を制御する。また、電力変換制御部26は、放電回路部24内の放電スイッチSWのオンオフ動作を制御することで、放電回路部24による平滑コンデンサ22の放電動作を制御する。また、電力変換制御部26は、連系スイッチ25のオンオフ動作を制御することで、電力変換回路部21の出力部20と外部負荷との間の接続及び遮断を制御する。
【0038】
故障診断装置1の一構成要素である診断部13は、診断時に電圧検出部12が検出した出力電圧の値に基づき、電力変換回路部21内の電力用半導体素子SHa及びSHbの組の故障の有無を診断する。診断部13による診断処理の詳細については後述する。
【0039】
電力変換装置100内には、演算処理装置である少なくとも1つのプロセッサが設けられる。演算処理装置としては、例えばIC、LSI、CPU、MPU、DSPなどがある。演算処理装置は、電力変換制御部26、診断部13、診断用ゲート信号発生回路14及びその他の処理回路を有する。演算処理装置が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ上で実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。例えば、電力変換制御部26、診断部13、診断用ゲート信号発生回路14及びその他の処理回路をプログラム形式で構築する場合は、演算処理装置をこのプログラムに従って動作させることで、各部の機能を実現することができる。電力変換制御部26、診断部13、診断用ゲート信号発生回路14及びその他の処理回路の各処理を実行するためのプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形で提供されてもよい。またあるいは、電力変換制御部26、診断部13、診断用ゲート信号発生回路14及びその他の処理回路を、各部の機能を実現するプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。
【0040】
また、電力変換装置100内には、記憶装置である少なくとも1つのメモリが設けられる。メモリとしては、例えばEEPROM(登録商標)などのような電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAMなどのような高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリなどがある。また、記憶装置は、例えばHDDやSSDなどのような構成を有してもよい。メモリには、電力変換制御部26、診断部13、診断用ゲート信号発生回路14及びその他の処理回路を動作させるためのプログラムが格納されてもよい。また、メモリには、電圧検出部12により検出された出力電圧の値に関する情報が格納されてもよい。また、メモリには、診断部13による診断結果が格納されてもよい。また、メモリには、電力変換装置100に関連する各種データが格納されてもよい。
【0041】
続いて、診断部13による診断処理の詳細について説明する。
【0042】
図2は、電力用半導体素子のゲート-ソース間電圧とドレイン-ソース間電圧とドレイン電流との関係を例示する図である。ここでは、電力用半導体素子として600V耐圧/20AのMOSFETを例にとり説明する。図2に示すように、ゲート-ソース間電圧Vgs[V]が小さいほど(すなわち電力用半導体素子のゲート端子に印加される電圧が小さいほど)、ドレイン電流ID[A]が抑制されるので、MOSFETの抵抗値が大きくなる。故障診断装置1内の診断部13の故障診断処理では、ゲート-ソース間電圧Vgs[V]が小さいほど電力用半導体素子の抵抗値が大きくなる特性を利用している。
【0043】
上述したように、診断用電源31の正電圧は、駆動用電源32の正電圧よりも小さい値に設定される。また、駆動用電源32の正電圧は、電力用半導体素子SHa及びSHbがオン動作を開始する閾値電圧よりも十分に大きな値に設定される。一方、診断用電源31の正電圧については、電力用半導体素子SHa及びSHbがオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きな値に設定される。「正の所定値」とは、例えば閾値電圧の数%~50%程度の値であってもよい。例えば、電力用半導体素子SHa及びSHbの閾値電圧が2Vの場合、診断用電源31の正電圧を、2.5V~3V程度の値に設定する。なお、ここで示した数値は一例であってその他の数値であってもよい。
【0044】
図3は、本開示の第1の実施形態による電力変換装置において電力用半導体素子のゲート端子に診断用の正電圧とゼロ電圧とをパルス状に印加した場合の電力変換装置の出力電圧とリアクトル電流のシミュレーション波形を例示する図である。また、図4は、本開示の第1の実施形態による電力変換装置において電力用半導体素子のゲート端子に駆動用の正電圧とゼロ電圧とをパルス状に印加した場合の電力変換装置の出力電圧とリアクトル電流のシミュレーション波形を例示する図である。図3及び図4において、実線は電力用半導体素子SHa及びSHbともに故障がない場合におけるリアクトル23に流れるリアクトル電流及び電圧検出部12により検出される出力電圧を示し、破線は電力用半導体素子SHa及びSHbのいずれか1つに断線故障がある場合におけるリアクトル23に流れるリアクトル電流及び電圧検出部12により検出される出力電圧を示す。
【0045】
シミュレーションで用いた各パラメータは次の通りである。ゲート-ソース間電圧Vgs[V]が十分に大きい場合(図2でいえば例えばVgs=10V)を想定した電力用半導体素子SHa及びSHbのオン動作時の抵抗値を0.2Ωとしている。また、ゲート-ソース間電圧Vgs[V]が閾値電圧2Vよりも若干大きい場合(図2でいえば例えばVgs=3V)を想定した電力用半導体素子SHa及びSHbのオン動作時の抵抗値を10Ωとしている。また、ダイオードDa及びDbはそれぞれ導通時の抵抗値を0.2Ω、リアクトル23の導通時のインダクタンスを800μH、平滑コンデンサ22の容量を4.7μF、放電抵抗Rdの抵抗値を10kΩ、直流入力電源33の電圧を400Vとしている。
【0046】
上述したように、電力変換装置100の診断部13による診断時には、連系スイッチ25はオフ動作を行うことで電力変換回路部21の出力部20と外部負荷との間を遮断し、放電スイッチSWはオン動作を行うことで平滑コンデンサ22と放電抵抗Rdとを電気的に接続する。
【0047】
診断用ゲート信号発生回路14から診断用ゲート駆動回路41に周期25μ秒、オン期間6.25μ秒、16パルスのゲート信号を入力する。これにより、診断用ゲート駆動回路41は、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート-ソース間にパルス状のゲート信号に対応して診断用の正の電圧とゼロ電圧とを交互に印加する。この結果、電力用半導体素子SHa及びSHbはオンオフ動作を行う。図3に示すように、電力用半導体素子SHa及びSHbはオンオフ動作に伴い、平滑コンデンサ22は徐々に充電され電圧が上昇する。図3に示すように、電力用半導体素子SHa及びSHbの断線故障のあり/なしで、リアクトル電流及び出力電圧に差が生じることが分かる。
【0048】
一方で、図3のシミュレーションと同様の条件で、電力変換制御部26から電力変換動作用ゲート駆動回路42にオン期間6.25μ秒、16パルスのゲート信号を入力したときのリアクトル電流及び出力電圧を、図4は示している。図4において、電力変換動作用ゲート駆動回路42は、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート-ソース間にパルス状のゲート信号に対応して駆動用の正の電圧とゼロ電圧とを交互に印加する。この結果、電力用半導体素子SHa及びSHbはオンオフ動作を行う。図4に示すように、電力用半導体素子SHa及びSHbはオンオフ動作に伴い、平滑コンデンサ22は徐々に充電され電圧が上昇する。図4に示すように、電力用半導体素子SHa及びSHbの断線故障のあり/なしで、リアクトル電流及び出力電圧はともに重なりほぼ差が生じないことが分かる。
【0049】
このように、診断用ゲート駆動回路41から供給される診断用の正電圧とゼロ電圧とが交互に電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子に印加されたときには電力用半導体素子SHa及びSHbの断線故障のあり/なしでリアクトル電流及び出力電圧に差が生じ、電力変換動作用ゲート駆動回路42から供給される駆動用の正電圧とゼロ電圧とが交互に電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子に印加されたときには電力用半導体素子SHa及びSHbの断線故障のあり/なしでリアクトル電流及び出力電圧に差が生じない。この差の有無が生じる理由は、診断用ゲート駆動回路41から供給される診断用の正電圧が、電力変換動作用ゲート駆動回路42から供給される駆動用の正電圧よりも小さい値に設定されていることに起因している。これを詳しく説明すると次の通りである。
【0050】
図2を参照して説明したように、電力用半導体素子SHa及びSHbは、ゲート-ソース間電圧Vgs[V]が小さいほどその抵抗値が大きくなる特性がある。診断用ゲート駆動回路41から供給される診断用の正電圧は、電力変換動作用ゲート駆動回路42から供給される駆動用の正電圧よりも小さいので、電力用半導体素子SHa及びSHbのオン動作時の抵抗値は、診断用の正電圧がゲート端子に印加されたときの方が駆動用の正電圧がゲート端子に印加されたときよりも大きくなる。図3のシミュレーションでは、診断用の正電圧としてゲート-ソース間電圧Vgs[V]が3Vのときの電力用半導体素子SHa及びSHbのオン動作時の抵抗値を10Ωとした。このため、電力用半導体素子SHa及びSHbともに断線故障がないときは電力用半導体素子SHa及びSHbの並列回路の合成抵抗が5Ωとなるのに対し、電力用半導体素子SHa及びSHbのうちのいずれか1つに断線故障があるときは電力用半導体素子SHa及びSHbの並列回路の合成抵抗が10Ωとなる。このように、断線故障のあり/なしで並列回路の抵抗値が大きく変わることになることから、図3に示すようにリアクトル電流及び出力電圧に差が生じる。一方、図4のシミュレーションでは、駆動用の正電圧としてゲート-ソース間電圧Vgs[V]が10Vのときの電力用半導体素子SHa及びSHbのオン動作時の抵抗値を0.2Ωとした。このため、電力用半導体素子SHa及びSHbともに断線故障がないときは電力用半導体素子SHa及びSHbの並列回路の合成抵抗が0.1Ωとなるに対し、電力用半導体素子SHa及びSHbのうちのいずれか1つに断線故障があるときは電力用半導体素子SHa及びSHbの並列回路の合成抵抗が0.2Ωとなる。このように、断線故障のあり/なしで並列回路の抵抗値はあまり変わらないことから、図4に示すようにリアクトル電流及び出力電圧に差はほぼ生じない。リアクトル23のインダクタンスと平滑コンデンサ22の容量と電力用半導体素子SHa及びSHbのオン動作時の抵抗値との関係から、リアクトル電流及び出力電圧の差の有り無しが決まる。上記の回路条件において、10Ωと5Ωとの差は大きいが、0.2Ωと0.1Ωとの差は小さいということである。
【0051】
上述の特性を踏まえ、本開示の各実施形態では、駆動用の正電圧よりも小さい診断用の正電圧を、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子に印加したときに、電圧検出部12が検出した出力電圧の値に基づき、電力用半導体素子SHa及びSHbの故障の有無を診断する。なお、診断用の正電圧は、電力用半導体素子SHa及びSHbの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きい値に設定するのは、診断時においても電力用半導体素子SHa及びSHbをオン動作させるためのである。また、診断部13による診断時に、電力用半導体素子のゲート端子に診断用の正電圧とゼロ電圧とをパルス状に印加するのは、電圧検出部12により検出される出力電圧が徐々に上昇して断線故障のあり/なしにより当該出力電圧の差がより明確に現れるようにするためである。
【0052】
なお、平滑コンデンサ22の正負両極端子に印加される電位差である電圧検出部12で検出される出力電圧は、オームの法則により、平滑コンデンサ22と放電回路部24との接続点を流れる電流(以下、「電力変換装置100(の電力変換回路部21)の出力電流」と称することがある。)の値と放電抵抗Rdの抵抗値とを乗算した値となる。よって、平滑コンデンサ22と放電回路部24との接続点を流れる電流についても、出力電圧の場合と同様に、断線故障のあり/なしにより差が生じる。したがって、本開示の各実施形態の変形例として、電圧検出部12が検出した出力電圧の値に代えて、平滑コンデンサ22と放電回路部24との接続点を流れる電流に基づき、電力用半導体素子SHa及びSHbの故障の有無を診断するようにしてもよい。この変形例では、平滑コンデンサ22と放電回路部24との接続点を流れる電流を検出する電流検出部(図示せず)を設けた上で、「電圧検出部12で検出した出力電圧」を「電流検出部で検出した電流」に読み替えて各実施形態の各処理が適用される。
【0053】
また、ここでは電力用半導体素子の並列数を2としたが、電力用半導体素子の並列数が3以上であっても、上記と同様の傾向を示す。また、電力用半導体素子の断線故障について説明したが、電力用半導体素子のオープン故障についても、上記と同様の傾向を示す。
【0054】
上述のような故障のあり/なしで生じる出力電圧の差に基づいて故障診断を行うに際して、予め、故障のない正常な電力用半導体素子SHa及びSHbを選定しておく。そして、正常な電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子に対して、診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給して所定の時間経過(例えば16パルス経過)したときの出力電圧を、電圧検出部12で検出し、これを基準電圧(すなわち基準値)として診断部13内のメモリに記憶しておく。診断部13は、ゲート駆動部11の診断用ゲート駆動回路41が診断対象の組の電力用半導体素子SHa及びSHbに対して診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給して所定の時間経過(例えば16パルス経過)したときに電圧検出部12が検出した出力電圧の値と、予め規定された基準電圧の値とを比較する。比較の結果、電圧検出部12が検出した出力電圧の値と基準電圧の値との差が所定の範囲外である場合、診断部13は、当該診断対象の組の電力用半導体素子に故障が発生していると判定する。なお、故障診断に用いられる上記「所定の範囲」は、例えば基準電圧のプラスマイナス数%~プラスマイナス十数%程度の値に設定してもよい。なお、ここで挙げた数値は一例であって、これ以外の数値であってもよい。なお、基準電圧及び上記「所定の範囲」については、書き換え可能な記憶部(図示せず)に記憶されて外部機器によって書き換え可能であってもよく、基準電圧及び上記「所定の範囲」を一旦設定した後であっても、必要に応じて適切な値に変更することができる。
【0055】
診断部13による診断結果を、例えば表示装置(図示せず)に表示させてもよい。表示装置の例としては、単体のディスプレイ装置、故障診断装置1またはこれを備える電力変換装置100に付属のディスプレイ装置、並びに、パソコン及び携帯端末に付属のディスプレイ装置などがある。例えば、表示装置は、例えば「故障あり」または「故障なし」といった表示を行う。表示装置による上述の表示例は、あくまでも一例であって、これ以外の表現や絵に基づいて「故障あり」または「故障なし」などを表示してもよい。
【0056】
また、診断部13による診断結果を、例えば音声、スピーカ、ブザー、チャイムなどのような音を発する音響装置(図示せず)にて出力させてもよい。例えば故障あり」または「故障なし」の違いが区別できるように、音色、音階、リズム、あるいは曲調などを設定すればよい。また、音響装置は、「故障なし」である場合は無音とし、「故障あり」の場合のみ音を発するようにしてもよい。
【0057】
また、診断部13による診断結果を、通信装置(図示せず)を用いて電力変換装置100の外部の機器や作業者に報知するようにしてもよい。
【0058】
また、診断部13による診断結果を、プリンタを用いて紙面等にプリントアウトして表示させる形態をとってもよい。
【0059】
以上、診断部13による診断結果の作業者に対する報知の例について述べたが、これらを適宜組み合わせて実現してもよい。また、診断部13による診断結果が得られるたびにメモリに記憶して蓄積していき、データベース化することで故障予知や予防保全に役立ててもよい。
【0060】
本開示の第1の実施形態によれば、作業者は、報知された診断部13による診断結果に基づき、数個並列に接続された電力用半導体素子を有する電力変換装置において、電力用半導体素子の故障を短時間で容易に診断することができる。よって、作業者は、診断部13の診断結果により電力用半導体素子が故障していることが確認できた場合は例えば電力用半導体素子の交換または修理をするといった対応をとることができる。
【0061】
また、故障診断装置1の一構成要素である電圧検出部12については、電力変換装置100内の電力変換回路部21の出力部20に一般的に設けられている電力検出部を流用することができる。また、故障診断装置1の一構成要素である診断用ゲート駆動回路41は、電力用半導体素子を駆動するために設けられている電力変換動作用ゲート駆動回路42が設けられたゲート駆動部11内に追加するだけで実現できる。したがって、本開示の第1の実施形態によれば、複数並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置100において、装置全体の大型化及び高コスト化を抑制しながら、電力用半導体素子の診断機能を設けることができる。
【0062】
図5は、本開示の第1、第3、第4及び第6の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置における故障診断処理を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、後述する第3、第4及び第6の実施形態による故障診断処理にも適用可能である。
【0063】
連系スイッチ25はオフ動作を行うことで電力変換回路部21の出力部20と外部負荷との間を遮断し、放電スイッチSWはオン動作を行うことで平滑コンデンサ22と放電抵抗Rdとを電気的に接続している状態において、まずステップS101において、診断用ゲート駆動回路41は、診断対象の組の電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に、診断用の正電圧とゼロ電圧とを交互に印加する。
【0064】
ステップS102において、電圧検出部12は、電力変換装置100の出力電圧を検出する。電圧検出部12による検出結果は診断部13に送られる。
【0065】
ステップS103において、診断部13は、ゲート駆動部11の診断用ゲート駆動回路41が診断対象の組の電力用半導体素子SHa及びSHbに対して診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給して所定の時間経過したときに電圧検出部12が検出した出力電圧の値と、予め規定された基準電圧の値と、の差が所定の範囲外であるか否かを判定する。
【0066】
ステップS103において電圧検出部12が検出した出力電圧の値と基準電圧の値との差が所定の範囲外であると判定された場合は、ステップS104において、診断部13は、当該診断対象の組の電力用半導体素子に故障が発生していると判定する。
【0067】
ステップS103において電圧検出部12が検出した出力電圧の値と基準電圧の値との差が所定の範囲外であると判定されなかった場合は、ステップS105において、診断部13は、当該診断対象の組の電力用半導体素子に故障が発生していないと判定する。
【0068】
なお、後述するように、第3及び第4の実施形態では、電力変換装置100は単相インバータであるので診断対象の電力用半導体素子の組は4組であり、したがって、上述のS101~S105の処理は診断対象の各組ごとに実行される。
【0069】
上述のステップS101~S105の処理は、連系スイッチ25はオフ動作を行うことで電力変換回路部21の出力部20と外部負荷との間を遮断し、放電スイッチSWはオン動作を行うことで平滑コンデンサ22と放電抵抗Rdとを電気的に接続している状態において実行される。連系スイッチ25がオフ動作し放電スイッチSWがオン動作する処理は、電力変換装置100の電力変換動作の停止時においても行われる。したがって、故障診断装置1による故障診断処理は、電力変換装置100の電力変換動作の停止から電力変換動作を開始する前までの間に実行されるのが効率的である。例えば、電力変換装置100の電力変換動作を停止している状態から電力変換装置100の電力変換動作を開始する際における一連の起動シーケンスの1つとして、故障診断装置1による故障診断処理を組み込むのが好ましい。このようにすれば、故障診断処理のために電力変換装置100の電力変換動作を一旦停止させるといったことは不要になり、故障診断処理を必要最小限に確保することができるので、作業効率が上がる。また、電力変換装置100の起動シーケンス中に故障診断装置1による故障診断処理を実行することで、電力変換装置100の電力変換動作を開始する前に電力用半導体素子の故障を検出することができるので、安全性を確保することができる。
【0070】
なお、電力変換装置100の出力側に接続される外部負荷が、電力変換装置100の電圧出力の開始に連動して動作を開始するような負荷である場合は、連系スイッチ25を省略してもよく、この場合は、外部負荷のインピーダンスが平滑コンデンサ22とへ列に接続された状態で診断部13による診断処理が行われることになる。
【0071】
また、電力変換動作用ゲート駆動回路42及び診断用ゲート駆動回路41は、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に、駆動用あるいは診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給するものとしたが、ゼロ電圧に代えてソース電位に対して負電圧を供給するようにしてもよい。
【0072】
<第2の実施形態>
本開示の第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例として、故障診断装置1に機械学習部を設けたものである。
【0073】
図6は、本開示の第2の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
【0074】
本開示の第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、複数並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置100は、非絶縁降圧型のDC/DCコンバータで構成される。DC/DCコンバータである電力変換装置100は、複数並列に接続された電力用半導体素子の組を1組有する。
【0075】
図6に示すように、電力変換装置100は、ゲート駆動部11と、電圧検出部12と、診断部13と、診断用ゲート信号発生回路14と、電力変換回路部21と、電力変換制御部26と、機械学習部15とを備える。ゲート駆動部11内の診断用ゲート駆動回路41と電圧検出部12と診断部13と診断用ゲート信号発生回路14と機械学習部15とで、故障診断装置1の機能が実現される。
【0076】
ゲート駆動部11、電圧検出部12、診断用ゲート信号発生回路14、電力変換回路部21、及び電力変換制御部26については、第1の実施形態において説明した通りである。
【0077】
機械学習部15は、入力されるデータの集合から、その中にある有用な規則や知識表現、判断基準などを解析により抽出し、その判断結果を出力すると共に、知識の学習を行う機能を有する。本開示の第2の実施形態では、機械学習部15は、例えばサポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)を適用したものであり、電力用半導体素子SHa及びSHbの組の故障の有無を診断する故障診断モデルを学習する。サポートベクターマシンでは、2つのクラス(故障ありクラスと故障なしクラス)にクラス分けされたトレーニングデータセットをまず用意し、入力データセットに基づいて2つのクラスをうまく分割する決定境界を学習していく。また、機械学習部15は、サポートベクターマシンに代えて、例えば、ニューラルネットワーク、決定木(Decision Tree)、ロジスティック回帰などのアルゴリズムを用いてもよい。
【0078】
機械学習部15は、ゲート駆動部11が診断対象の電力用半導体素子SHa及びSHbの組に対して診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給しているときに電圧検出部12が検出した出力電圧の値の時系列データをトレーニングデータセットとして、故障診断モデルを学習する。機械学習部15に、GPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)や大規模PCクラスター等を適用すると、より高速な処理を実現することができる。
【0079】
診断部13は、機械学習部15による学習済の故障診断モデルを用いて、ゲート駆動部11が診断対象の電力用半導体素子SHa及びSHbの組に対して診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給しているときに電圧検出部12が検出した出力電圧の値の時系列データである入力データセットに基づいて、当該診断対象の電力用半導体素子SHa及びSHbの故障の有無を診断する。
【0080】
診断部13による診断結果は、第1の実施形態と同様に、例えば、表示装置(図示せず)に表示させてもよく、音響装置(図示せず)にて出力させてもよく、紙面等にプリントアウトして表示してもよく、通信装置(図示せず)を用いて電力変換装置100の外部(の機器や作業者)に報知してもよく、あるいはこれらを組み合わせて作業者に報知してもよい。また、診断部13による診断結果が得られるたびにメモリに記憶して蓄積していき、データベース化することで故障予知や予防保全に役立ててもよい。
【0081】
なお、電力変換動作用ゲート駆動回路42及び診断用ゲート駆動回路41は、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に、駆動用あるいは診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給するものとしたが、ゼロ電圧に代えてソース電位に対して負電圧を供給するようにしてもよい。
【0082】
本開示の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0083】
<第3の実施形態>
本開示の第3の実施形態は、第1の実施形態におけるゲート駆動部11の変形例である。
【0084】
図7は、本開示の第3の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
【0085】
本開示の第3の実施形態は、第1の実施形態と同様に、複数並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置100が非絶縁降圧型のDC/DCコンバータで構成される。DC/DCコンバータである電力変換装置100は、複数並列に接続された電力用半導体素子の組を1組有する。
【0086】
図7に示すように、電力変換装置100は、ゲート駆動部11と、電圧検出部12と、診断部13と、電力変換回路部21と、電力変換制御部26とを備える。ゲート駆動部11内の診断用電源51、正側スイッチSH、負側スイッチSL、切替部53と、電圧検出部12と、診断部13と、電力変換制御部26とで、故障診断装置1の機能が実現される。
【0087】
電圧検出部12、診断部13、電力変換回路部21、及び電力変換制御部26については、第1の実施形態において図1図5を参照して説明した通りである。
【0088】
ゲート駆動部11は、診断用電源51と、駆動用電源52と、切替部53と、正側スイッチSHと、負側スイッチSLとを有する。
【0089】
診断用電源51は、診断用の正電圧を出力する。駆動用電源52は、駆動用の正電圧を出力する。
【0090】
診断用電源51の正電圧は、駆動用電源52の正電圧よりも小さい値に設定される。また、駆動用電源52の正電圧は、電力用半導体素子SHa及びSHbがオン動作を開始する閾値電圧よりも十分に大きな値に設定される。一方、診断用電源51の正電圧については、電力用半導体素子SHa及びSHbがオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きな値に設定される。「正の所定値」とは、例えば閾値電圧の数%~50%程度の値であってもよい。例えば、電力用半導体素子SHa及びSHbの閾値電圧が2Vの場合、診断用電源51の正電圧を、2.5V~3V程度の値に設定する。なお、ここで示した数値は一例であってその他の数値であってもよい。
【0091】
切替部53は、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元を、診断用電源51と駆動用電源52とで選択的に切り替える。切替部53は、診断用電源51につながる電路を開閉する診断用切替スイッチSsと、駆動用電源52につながる電路を開閉する駆動用切替スイッチSgと、を有する。診断用切替スイッチSs及び駆動用切替スイッチSgの例としては、MOSFET、IGBT、トランジスタなどがある。診断用切替スイッチSs及び駆動用切替スイッチSgのオンオフ動作は電力変換制御部26により制御される。
【0092】
診断部13による診断時には、電力変換制御部26が診断用切替スイッチSsがオン動作し駆動用切替スイッチSgがオフ動作するよう制御することで、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元が、診断用電源51に設定される。電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元が診断用電源51に設定されている状態において、電力変換制御部26が正側スイッチSHと負側スイッチSLとを交互にオンオフ動作するよう制御することで、ゲート駆動部11からは診断用の正の電圧とゼロ電圧とが交互に出力される。すなわち、電力変換制御部26が正側スイッチSHをオン動作し負側スイッチSLをオフ動作するよう制御することで、ゲート駆動部11からは診断用の正の電圧が出力される。また、電力変換制御部26が正側スイッチSHをオフ動作し負側スイッチSLをオン動作するよう制御することで、ゲート駆動部11からはゼロ電圧が出力される。
【0093】
電力変換装置100による電力変換動作時には、電力変換制御部26が診断用切替スイッチSsがオフ動作し駆動用切替スイッチSgがオン動作するよう制御することで、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元が、駆動用電源52に設定される。電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元が駆動用電源52に設定されている状態において、電力変換制御部26が正側スイッチSHと負側スイッチSLとを交互にオンオフ動作するよう制御することで、ゲート駆動部11からは駆動用の正の電圧とゼロ電圧とが交互に出力される。すなわち、電力変換制御部26が正側スイッチSHをオン動作し負側スイッチSLをオフ動作するよう制御することで、ゲート駆動部11からは駆動用の正の電圧が出力される。また、電力変換制御部26が正側スイッチSHをオフ動作し負側スイッチSLをオン動作するよう制御することで、ゲート駆動部11からはゼロ電圧が出力される。
【0094】
本開示の第3の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置における故障診断処理については、図5に示したフローチャートが適用される。
【0095】
なお、本開示の第3の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置に、第2の実施形態で説明した機械学習部15を設けてもよい。
【0096】
診断部13による診断結果は、第1の実施形態と同様に、例えば、表示装置(図示せず)に表示させてもよく、音響装置(図示せず)にて出力させてもよく、紙面等にプリントアウトして表示してもよく、通信装置(図示せず)を用いて電力変換装置100の外部(の機器や作業者)に報知してもよく、あるいはこれらを組み合わせて作業者に報知してもよい。また、診断部13による診断結果が得られるたびにメモリに記憶して蓄積していき、データベース化することで故障予知や予防保全に役立ててもよい。
【0097】
なお、ゲート駆動部11は、電力用半導体素子SHa及びSHbのゲート端子とソース端子との間に、駆動用あるいは診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給するものとしたが、ゼロ電圧に代えてソース電位に対して負電圧を供給するようにしてもよい。
【0098】
本開示の第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0099】
<第4の実施形態>
本開示の第4の実施形態では、複数並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置100が単相インバータで構成される例について説明する。
【0100】
図8は、本開示の第4の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
【0101】
電力変換装置100は、第1のゲート駆動部11-1と、第2のゲート駆動部11-2と、第3のゲート駆動部11-3と、第4のゲート駆動部11-4と、電圧検出部12と、診断部13と、診断用ゲート信号発生回路14と、電力変換回路部21と、電力変換制御部26とを備える。ゲート駆動部11内の診断用ゲート駆動回路41と電圧検出部12と診断部13と診断用ゲート信号発生回路14とで、故障診断装置1の機能が実現される。
【0102】
電力変換装置100は単相インバータとして構成されるので、電力変換回路部21は、複数個並列に接続された電力用半導体素子の組を4組有する。すなわち、電力変換回路部21は、電力用半導体素子S1a及びS1bの組と、電力用半導体素子S2a及びS2bの組と、電力用半導体素子S3a及びS3bの組と、電力用半導体素子S4a及びS4bの組とを有する単相ブリッジ回路で構成される。同じ組に属する電力用半導体素子のオン動作及びオフ動作のタイミングは揃えられる。ここでは、一例として、電力変換回路部21に設けられる1組あたりの電力用半導体素子の並列数を2としたが、電力変換回路部21に設けられる1組あたりの電力用半導体素子の並列数を3以上としてもよい。
【0103】
電力変換回路部21は、電力用半導体素子の各組が組ごとにオンオフ動作することにより電力変換動作を行い、入力された直流電圧を単相交流電圧に変換して出力する。すなわち、電力変換回路部21による電力変換動作の際には、電力用半導体素子S1a及びS1bの組と電力用半導体素子S4a及びS4bの組とがオンオフ動作するときは、電力用半導体素子S2a及びS2bの組と電力用半導体素子S3a及びS3bの組とがオフ動作する。また、電力用半導体素子S1a及びS1bの組と電力用半導体素子S4a及びS4bの組とがオフ動作するときは、電力用半導体素子S2a及びS2bの組と電力用半導体素子S3a及びS3bの組とがオンオフ動作する。
【0104】
電力用半導体素子S1aのゲート端子にはゲート抵抗Rg1aを介して第1のゲート駆動部11-1が接続される。電力用半導体素子S1bのゲート端子にはゲート抵抗Rg1bを介して第1のゲート駆動部11-1が接続される。
【0105】
電力用半導体素子S2aのゲート端子にはゲート抵抗Rg2aを介して第2のゲート駆動部11-2が接続される。電力用半導体素子S2bのゲート端子にはゲート抵抗Rg2bを介して第2のゲート駆動部11-2が接続される。
【0106】
電力用半導体素子S3aのゲート端子にはゲート抵抗Rg3aを介して第3のゲート駆動部11-3が接続される。電力用半導体素子S3bのゲート端子にはゲート抵抗Rg3bを介して第3のゲート駆動部11-3が接続される。
【0107】
電力用半導体素子S4aのゲート端子にはゲート抵抗Rg4aを介して第4のゲート駆動部11-4が接続される。電力用半導体素子S4bのゲート端子にはゲート抵抗Rg4bを介して第4のゲート駆動部11-4が接続される。
【0108】
第1のゲート駆動部11-1は、第1の診断用ゲート駆動回路41-1と、第1の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1とを有する。
【0109】
第1の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1は、電力変換装置100による電力変換動作時に、電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間に、駆動用の正電圧とゼロ電圧とを交互に供給する。このため、第1の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1は、第1の駆動用電源32-1と、第1の駆動用正側スイッチSg1Hと、第1の駆動用負側スイッチSg1Lとを有する。第1の駆動用正側スイッチSg1H及び第1の駆動用負側スイッチSg1Lの例としては、MOSFET、IGBT、トランジスタなどがある。第1の駆動用正側スイッチSg1H及び第1の駆動用負側スイッチSg1Lのオンオフ動作は、電力変換制御部26により制御される。第1の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1において、第1の駆動用正側スイッチSg1Hがオン動作を行いかつ第1の駆動用負側スイッチSg1Lがオフ動作を行うと、第1の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1からは、駆動用のゲート信号のオン信号に対応する正電圧が出力される。第1の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1において、第1の駆動用正側スイッチSg1Hがオフ動作を行いかつ第1の駆動用負側スイッチSg1Lがオン動作を行うと、第1の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1からは、駆動用のゲート信号のオフ信号に対応するゼロ電圧が出力される。
【0110】
第1の診断用ゲート駆動回路41-1は、第1の診断用電源31-1と、第1の診断用正側スイッチSs1Hと、第1の診断用負側スイッチSs1Lとを有する。第1の診断用正側スイッチSs1H及び第1の診断用負側スイッチSs1Lの例としては、MOSFET、IGBT、トランジスタなどがある。第1の診断用正側スイッチSs1H及び第1の診断用負側スイッチSs1Lのオンオフ動作は、診断用ゲート信号発生回路14により制御される。第1の診断用ゲート駆動回路41-1において、第1の診断用正側スイッチSs1Hがオン動作を行いかつ第1の診断用負側スイッチSs1Lがオフ動作を行うと、第1の診断用ゲート駆動回路41-1からは、診断用のゲート信号のオン信号に対応する正電圧が出力される。第1の診断用ゲート駆動回路41-1において、第1の診断用正側スイッチSs1Hがオフ動作を行いかつ第1の診断用負側スイッチSs1Lがオン動作を行うと、第1の診断用ゲート駆動回路41-1からは、診断用のゲート信号のオフ信号に対応するゼロ電圧が出力される。
【0111】
第2のゲート駆動部11-2は、第2の診断用ゲート駆動回路41-2と、第2の電力変換動作用ゲート駆動回路42-2とを有する。第2の診断用ゲート駆動回路41-2は、第2の診断用電源31-2と、第2の診断用正側スイッチSs2Hと、第2の診断用負側スイッチSs2Lとを有する。第2の電力変換動作用ゲート駆動回路42-2は、第2の駆動用電源32-2と、第2の駆動用正側スイッチSg2Hと、第2の駆動用負側スイッチSg2Lとを有する。
【0112】
第3のゲート駆動部11-3は、第3の診断用ゲート駆動回路41-3と、第3の電力変換動作用ゲート駆動回路42-3とを有する。第3の診断用ゲート駆動回路41-3は、第3の診断用電源31-3と、第3の診断用正側スイッチSs3Hと、第3の診断用負側スイッチSs3Lとを有する。第3の電力変換動作用ゲート駆動回路42-3は、第3の駆動用電源32-3と、第3の駆動用正側スイッチSg3Hと、第3の駆動用負側スイッチSg3Lとを有する。
【0113】
第4のゲート駆動部11-4は、第4の診断用ゲート駆動回路41-4と、第4の電力変換動作用ゲート駆動回路42-4とを有する。第4の診断用ゲート駆動回路41-4は、第4の診断用電源31-4と、第4の診断用正側スイッチSs4Hと、第4の診断用負側スイッチSs4Lとを有する。第4の電力変換動作用ゲート駆動回路42-4は、第4の駆動用電源32-4と、第4の駆動用正側スイッチSg4Hと、第4の駆動用負側スイッチSg4Lとを有する。
【0114】
第2の診断用ゲート駆動回路41-2、第3の診断用ゲート駆動回路41-3、及び第4の診断用ゲート駆動回路41-4の機能及び動作は、第1の診断用ゲート駆動回路41-1の機能及び動作と同様である。
【0115】
第2の電力変換動作用ゲート駆動回路42-2、第3の電力変換動作用ゲート駆動回路42-3、及び第4の電力変換動作用ゲート駆動回路42-4の機能及び動作は、第1の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1と同様である。
【0116】
第2の診断用電源31-2、第3の診断用電源31-3、及び第4の診断用電源31-4の機能及び電圧等の条件は、第1の診断用電源31-1の機能及び電圧等の条件と同様である。
【0117】
第2の診断用正側スイッチSs2H、第3の診断用正側スイッチSs3H、及び第4の診断用正側スイッチSs4Hの機能及び動作は、第1の診断用正側スイッチSs1Hの機能及び動作と同様である。
【0118】
第2の診断用負側スイッチSs2L、第3の診断用負側スイッチSs3L、第4の診断用負側スイッチSs4Lの機能及び動作は、第1の診断用負側スイッチSs1Lの機能及び動作と同様である。
【0119】
第2の駆動用電源32-2、第3の駆動用電源32-3、及び第4の駆動用電源32-4の機能及び電圧等の条件は、第1の駆動用電源32-1の機能及び電圧等の条件と同様である。
【0120】
第2の駆動用正側スイッチSg2H、第3の駆動用正側スイッチSg3H、及び第4の駆動用正側スイッチSg4Hの機能及び動作は、第1の駆動用正側スイッチSg1Hの機能及び動作と同様である。
【0121】
第2の駆動用負側スイッチSg2L、第3の駆動用負側スイッチSg3L、及び第4の駆動用負側スイッチSg4Lの機能及び動作は、第1の駆動用負側スイッチSg1Lの機能及び動作と同様である。
【0122】
第1の診断用電源31-1の正電圧は、第1の駆動用電源32-1の正電圧よりも小さい値に設定される。第2の診断用電源31-2の正電圧は、第2の駆動用電源32-2の正電圧よりも小さい値に設定される。第3の診断用電源31-3の正電圧は、第3の駆動用電源32-3の正電圧よりも小さい値に設定される。第4の診断用電源31-4の正電圧は、第4の駆動用電源32-4の正電圧よりも小さい値に設定される。
【0123】
第1の診断用電源31-1の正電圧は、電力用半導体素子S1a及びS1bの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きい値に設定される。第2の診断用電源31-2の正電圧は、電力用半導体素子S2a及びS2bの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きい値に設定される。第3の診断用電源31-3の正電圧は、電力用半導体素子S3a及びS3bの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きい値に設定される。第4の診断用電源31-4の正電圧は、電力用半導体素子S4a及びS4bの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きい値に設定される。「正の所定値」とは、例えば閾値電圧の数%~50%程度の値であってもよい。例えば、閾値電圧が2Vであるとき、「正の所定値」を1Vとすると、第1の診断用電源31-1、第2の診断用電源31-2、第3の診断用電源31-3、及び第4の診断用電源31-4の正電圧は3Vに設定される。なお、ここで挙げた数値は一例であって、これ以外の数値であってもよい。一方で、第1の駆動用電源32-1の正電圧は、電力用半導体素子S1a及びS1bの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも十分に大きい値に設定される。第2の駆動用電源32-2の正電圧は、電力用半導体素子S2a及びS2bの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも十分に大きい値に設定される。第3の駆動用電源32-3の正電圧は、電力用半導体素子S3a及びS3bの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも十分に大きい値に設定される。第4の駆動用電源32-4の正電圧は、電力用半導体素子S4a及びS4bの各々がオン動作を開始する閾値電圧よりも十分に大きい値に設定される。
【0124】
電力変換装置100の電力変換動作時には、電力変換制御部26が、第1の駆動用正側スイッチSg1H、第1の駆動用負側スイッチSg1L、第2の駆動用正側スイッチSg2H、第2の駆動用負側スイッチSg2L、第3の駆動用正側スイッチSg3H、第3の駆動用負側スイッチSg3L、第4の駆動用正側スイッチSg4H、及び第4の駆動用負側スイッチSg4Lのオンオフ動作を制御する。
【0125】
診断部13の診断時には、診断用ゲート信号発生回路14が、第1の診断用正側スイッチSs1H、第1の診断用負側スイッチSs1L、第2の診断用正側スイッチSs2H、第2の診断用負側スイッチSs2L、第3の診断用正側スイッチSs3H、第3の診断用負側スイッチSs3L、第4の診断用正側スイッチSs4H、及び第4の診断用負側スイッチSs4Lのオンオフ動作を制御する。
【0126】
電力変換回路部21の出力部20には、平滑コンデンサ22と、リアクトル23と、放電回路部24と、連系スイッチ25とが設けられる。電力用半導体素子S1a及びS1bからなる並列回路と電力用半導体素子S3a及びS3bからなる並列回路との接続点には、リアクトル23の一端が接続される。リアクトル23の他の一端には、平滑コンデンサ22、放電回路部24、及び連系スイッチ25の各々の一端が接続される。平滑コンデンサ22、放電回路部24、及び連系スイッチ25の各々の他の一端は、電力用半導体素子S2a及びS2bからなる並列回路と電力用半導体素子S4a及びS4bからなる並列回路との接続点が接続される。平滑コンデンサ22と放電回路部24とは互いに並列に接続される。放電回路部24は、放電抵抗Rdと放電抵抗Rdに直列に接続された電路を開閉する放電スイッチSWとを有する。
【0127】
電力用半導体素子S1a及びS1bからなる並列回路と電力用半導体素子S2a及びS2bからなる並列回路との接続点には、正側入力端子T1Hが設けられる。電力用半導体素子S3a及びS3bからなる並列回路と電力用半導体素子S4a及びS4bからなる並列回路との接続点には、負側入力端子T1Lが設けられる。連系スイッチ25の両端のうち、リアクトル23が設けられる一端とは反対側の一端には、第1の出力端子T3Hが設けられる。電力用半導体素子S2a及びS2bからなる並列回路と電力用半導体素子S4a及びS4bからなる並列回路と接続点には、第2の出力端子T3Lが設けられる。
【0128】
電力変換装置100の入力側には入力コンデンサ27が設けられる。電力変換装置100には、正側入力端子T1H及び負側入力端子T1Lを介して直流入力電源33が接続される。電力変換装置100の第1の出力端子T3Hと第2の出力端子T3Lとの間には、外部負荷(図示せず)が接続される。
【0129】
電力変換回路部21は、電力変換動作時には、電力用半導体素子の各組が組ごとにオンオフ動作を行い、入力された直流電圧を単相交流電圧に変換して出力する。電力変換動作時において電力用半導体素子S1a及びS1bの組と電力用半導体素子S4a及びS4bの組とがオンオフ動作するときは、電力用半導体素子S2a及びS2bの組と電力用半導体素子S3a及びS3bの組とはオフ動作する。また、電力変換動作時において電力用半導体素子S1a及びS1bの組と電力用半導体素子S4a及びS4bの組とがオフ動作するときは、電力用半導体素子S2a及びS2bの組と電力用半導体素子S3a及びS3bの組とはオンオフ動作する。電力変換動作時において電力変換回路部21で生成された単相交流電圧は、第1の出力端子T3H及び第2の出力端子T3Lから出力される。
【0130】
電圧検出部12は、電力変換装置100の出力電圧を検出する。電力変換装置100の出力電圧は、第1の出力端子T3Hと第2の出力端子T3Lとの間の電位差であり、換言すれば平滑コンデンサ22の正負両極端子に印加される電位差である。電圧検出部12が検出した出力電圧の値は、電力変換制御部26に送られて電力変換回路部21による電力変換動作の制御に用いられるとともに、診断部13に送られて診断部13による故障診断に用いられる。
【0131】
電力変換制御部26は、第1の駆動用正側スイッチSg1H、第1の駆動用負側スイッチSg1L、第2の駆動用正側スイッチSg2H、第2の駆動用負側スイッチSg2L、第3の駆動用正側スイッチSg3H、第3の駆動用負側スイッチSg3L、第4の駆動用正側スイッチSg4H、及び第4の駆動用負側スイッチSg4Lのオンオフ動作を制御することで、電力変換回路部21による電力変換動作を制御する。また、電力変換制御部26は、放電回路部24内の放電スイッチSWのオンオフ動作を制御することで、放電回路部24による平滑コンデンサ22の放電動作を制御する。また、電力変換制御部26は、連系スイッチ25のオンオフ動作を制御することで、電力変換回路部21の出力部20と外部負荷との間の接続及び遮断を制御する。
【0132】
故障診断装置1の一構成要素である診断部13は、診断時に電圧検出部12が検出した出力電圧の値に基づき、電力用半導体素子の各組について、組ごとの電力用半導体素子の故障の有無を診断する。すなわち、図5に示したS101~S105の処理が、電力用半導体素子の各組ごとに実行される。
【0133】
連系スイッチ25はオフ動作を行うことで電力変換回路部21の出力部20と外部負荷との間を遮断し、放電スイッチSWはオン動作を行うことで平滑コンデンサ22と放電抵抗Rdとを電気的に接続している状態において、図5のステップS101では、電力用半導体素子の各組に対して、次のような電圧を印加する。
【0134】
電力用半導体素子S1a及びS1bからなる組を診断対象とする場合は、図5のステップS101では、電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間に、診断用の正電圧とゼロ電圧とを交互に印加する。その際、電力用半導体素子S4a及びS4bのゲート端子とソース端子との間に、駆動用の正電圧を印加する。また、電力用半導体素子S2a及びS2bのゲート端子とソース端子との間並びに電力用半導体素子S3a及びS3bのゲート端子とソース端子との間に、ゼロ電圧を印加する。
【0135】
電力用半導体素子S2a及びS2bからなる組を診断対象とする場合は、図5のステップS101では、電力用半導体素子S2a及びS2bのゲート端子とソース端子との間に、診断用の正電圧とゼロ電圧とを交互に印加する。その際、電力用半導体素子S3a及びS3bのゲート端子とソース端子との間に、駆動用の正電圧を印加する。また、電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間並びに電力用半導体素子S4a及びS4bのゲート端子とソース端子との間に、ゼロ電圧を印加する。
【0136】
電力用半導体素子S3a及びS3bからなる組を診断対象とする場合は、図5のステップS101では、電力用半導体素子S3a及びS3bのゲート端子とソース端子との間に、診断用の正電圧とゼロ電圧とを交互に印加する。その際、電力用半導体素子S2a及びS2bのゲート端子とソース端子との間に、駆動用の正電圧を印加する。また、電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間並びに電力用半導体素子S4a及びS4bのゲート端子とソース端子との間に、ゼロ電圧を印加する。
【0137】
電力用半導体素子S4a及びS4bからなる組を診断対象とする場合は、図5のステップS101では、電力用半導体素子S4a及びS4bのゲート端子とソース端子との間に、診断用の正電圧とゼロ電圧とを交互に印加する。その際、電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間に、駆動用の正電圧を印加する。また、電力用半導体素子S2a及びS2bのゲート端子とソース端子との間並びに電力用半導体素子S3a及びS3bのゲート端子とソース端子との間に、ゼロ電圧を印加する。
【0138】
図2及び図3を参照して説明したように、診断対象の電力用半導体素子の組について、故障のあり/なしでリアクトル電流及び出力電圧に差が生じる。本開示の第4の実施形態においても、図5に示したS101~S105の処理を、電力用半導体素子の4組について組ごとに実行することで、電力用半導体素子の各組の故障の有無を診断する。
【0139】
診断部13による診断結果は、第1の実施形態と同様に、例えば、表示装置(図示せず)に表示させてもよく、音響装置(図示せず)にて出力させてもよく、紙面等にプリントアウトして表示してもよく、通信装置(図示せず)を用いて電力変換装置100の外部(の機器や作業者)に報知してもよく、あるいはこれらを組み合わせて作業者に報知してもよい。また、診断部13による診断結果が得られるたびにメモリに記憶して蓄積していき、データベース化することで故障予知や予防保全に役立ててもよい。
【0140】
電力変換装置100内には、演算処理装置である少なくとも1つのプロセッサが設けられる。演算処理装置が、電力変換制御部26、診断部13、診断用ゲート信号発生回路14及びその他の処理回路を有する点については、第1の実施形態において説明した通りである。また、電力変換装置100内には、記憶装置である少なくとも1つのメモリが設けられる。メモリには、電力変換制御部26、診断部13、診断用ゲート信号発生回路14及びその他の処理回路を動作させるためのプログラムなどが格納される点については、第1の実施形態において説明した通りである。
【0141】
なお、第1~第4の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1~42-4及び第1~第4の診断用ゲート駆動回路41-1~41-4は、電力変換回路部21内の各電力用半導体素子のゲート端子とソース端子との間に、駆動用あるいは診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給するものとしたが、ゼロ電圧に代えてソース電位に対して負電圧を供給するようにしてもよい。
【0142】
本開示の第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0143】
<第5の実施形態>
本開示の第5の実施形態は、第4の実施形態の変形例として、故障診断装置1に機械学習部を設けたものである。
【0144】
図9は、本開示の第5の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
【0145】
本開示の第5の実施形態では、第4の実施形態と同様に、複数並列に接続された電力用半導体素子の組を有する電力変換装置100が単相交流インバータで構成される。
【0146】
図9に示すように、電力変換装置100は、第1のゲート駆動部11-1と、第2のゲート駆動部11-2と、第3のゲート駆動部11-3と、第4のゲート駆動部11-4と、電圧検出部12と、診断部13と、診断用ゲート信号発生回路14と、電力変換回路部21と、電力変換制御部26と、機械学習部15とを備える。第1のゲート駆動部11-1内の第1の診断用ゲート駆動回路41-1と第2のゲート駆動部11-2内の第2の診断用ゲート駆動回路41-2と第3のゲート駆動部11-3内の第3の診断用ゲート駆動回路41-3と第4のゲート駆動部11-4内の第4の診断用ゲート駆動回路41-4と電圧検出部12と診断部13と診断用ゲート信号発生回路14と機械学習部15とで、故障診断装置1の機能が実現される。
【0147】
第1のゲート駆動部11-1、第2のゲート駆動部11-2、第3のゲート駆動部11-3、第4のゲート駆動部11-4、電圧検出部12、診断用ゲート信号発生回路14、電力変換回路部21、及び電力変換制御部26については、第4の実施形態において図8を参照して説明した通りである。
【0148】
機械学習部15は、入力されるデータの集合から、その中にある有用な規則や知識表現、判断基準などを解析により抽出し、その判断結果を出力すると共に、知識の学習を行う機能を有する。本開示の第5の実施形態では、機械学習部15は、例えばサポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)を適用したものであり、電力用半導体素子の各組の組ごとの故障の有無を診断する故障診断モデルを学習する。故障診断モデルは、電力用半導体素子の各組ごとに生成される。サポートベクターマシンでは、2つのクラス(故障ありクラスと故障なしクラス)にクラス分けされたトレーニングデータセットをまず用意し、入力データセットに基づいて2つのクラスをうまく分割する決定境界を学習していく。また、機械学習部15は、サポートベクターマシンに代えて、例えば、ニューラルネットワーク、決定木(Decision Tree)、ロジスティック回帰などのアルゴリズムを用いてもよい。
【0149】
診断部13は、組ごとに機械学習部15により学習済の故障診断モデルを用いて、ゲート駆動部11が診断対象の電力用半導体素子の組に対して診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給しているときに電圧検出部12が検出した出力電圧の値の時系列データである入力データセットに基づいて、当該診断対象の電力用半導体素子の組の故障の有無を診断する。
【0150】
診断部13による診断結果は、第1の実施形態と同様に、例えば、表示装置(図示せず)に表示させてもよく、音響装置(図示せず)にて出力させてもよく、紙面等にプリントアウトして表示してもよく、通信装置(図示せず)を用いて電力変換装置100の外部(の機器や作業者)に報知してもよく、あるいはこれらを組み合わせて作業者に報知してもよい。また、診断部13による診断結果が得られるたびにメモリに記憶して蓄積していき、データベース化することで故障予知や予防保全に役立ててもよい。
【0151】
なお、第1~第4の電力変換動作用ゲート駆動回路42-1~42-4及び第1~第4の診断用ゲート駆動回路41-1~41-4は、電力変換回路部21内の各電力用半導体素子のゲート端子とソース端子との間に、駆動用あるいは診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給するものとしたが、ゼロ電圧に代えてソース電位に対して負電圧を供給するようにしてもよい。
【0152】
本開示の第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0153】
<第6の実施形態>
本開示の第6の実施形態は、第4の実施形態における第1のゲート駆動部11-1、第2のゲート駆動部11-2、第3のゲート駆動部11-3、及び第4のゲート駆動部11-4の変形例である。
【0154】
図10は、本開示の第6の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置を示す回路図である。
【0155】
図10に示すように、電力変換装置100は、第1のゲート駆動部11-1と、第2のゲート駆動部11-2と、第3のゲート駆動部11-3と、第4のゲート駆動部11-4と、電圧検出部12と、診断部13と、診断用ゲート信号発生回路14と、電力変換回路部21と、電力変換制御部26とを備える。第1のゲート駆動部11-1内の第1の診断用電源51-1、正側スイッチS1H、負側スイッチS1L、及び第1の切替部53-1と、第2のゲート駆動部11-2内の第2の診断用電源51-2、正側スイッチS2H、負側スイッチS2L、及び第2の切替部53-2と、第3のゲート駆動部11-3内の第3の診断用電源51-3、正側スイッチS3H、負側スイッチS3L、及び第3の切替部53-3と、第4のゲート駆動部11-4内の第4の診断用電源51-4、正側スイッチS4H、負側スイッチS4L、及び第4の切替部53-4と、電圧検出部12と、診断部13と、電力変換制御部26とで、故障診断装置1の機能が実現される。
【0156】
電圧検出部12、診断部13、電力変換回路部21、及び電力変換制御部26については、第4の実施形態において図8を参照して説明した通りである。
【0157】
第1のゲート駆動部11-1は、第1の診断用電源51-1と、第1の駆動用電源52-1と、第1の切替部53-1と、第1の正側スイッチS1Hと、第1の負側スイッチS1Lとを有する。
【0158】
第1の診断用電源51-1は、診断用の正電圧を出力する。第1の駆動用電源52-1は、駆動用の正電圧を出力する。
【0159】
第1の診断用電源51-1の正電圧は、第1の駆動用電源52-1の正電圧よりも小さい値に設定される。また、第1の駆動用電源52-1の正電圧については、電力用半導体素子S1a及びS1bがオン動作を開始する閾値電圧よりも十分に大きな値に設定される。一方、第1の診断用電源51-1の正電圧については、電力用半導体素子S1a及びS1bがオン動作を開始する閾値電圧よりも正の所定値だけ大きな値に設定される。「正の所定値」とは、例えば閾値電圧の数%~50%程度の値であってもよい。例えば、電力用半導体素子S1a及びS1bの閾値電圧が2Vの場合、第1の診断用電源51-1の正電圧を、2.5V~3V程度の値に設定する。なお、ここで示した数値は一例であってその他の数値であってもよい。
【0160】
第1の切替部53-1は、電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元を、第1の診断用電源51-1と第1の駆動用電源52-1とで選択的に切り替える。第1の切替部53-1は、第1の診断用電源51-1につながる電路を開閉する第1の診断用切替スイッチSs1と、第1の駆動用電源52-1につながる電路を開閉する第1の駆動用切替スイッチSg1と、を有する。第1の診断用切替スイッチSs1及び第1の駆動用切替スイッチSg1のオンオフ動作は電力変換制御部26により制御される。
【0161】
診断部13による診断時には、電力変換制御部26が第1の診断用切替スイッチSs1がオン動作し第1の駆動用切替スイッチSg1がオフ動作するよう制御することで、電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元が、第1の診断用電源51-1に設定される。電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元が第1の診断用電源51-1に設定されている状態において、電力変換制御部26が第1の正側スイッチS1Hと第1の負側スイッチS1Lとを交互にオンオフ動作するよう制御することで、第1のゲート駆動部11-1からは診断用の正の電圧とゼロ電圧とが交互に出力される。すなわち、電力変換制御部26が第1の正側スイッチS1Hをオン動作し第1の負側スイッチS1Lをオフ動作するよう制御することで、第1のゲート駆動部11-1からは診断用の正の電圧が出力される。また、電力変換制御部26が第1の正側スイッチS1Hをオフ動作し第1の負側スイッチS1Lをオン動作するよう制御することで、第1のゲート駆動部11-1からはゼロ電圧が出力される。
【0162】
電力変換装置100による電力変換動作時には、電力変換制御部26が第1の診断用切替スイッチSs1がオフ動作し第1の駆動用切替スイッチSg1がオン動作するよう制御することで、電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元が、第1の駆動用電源52-1に設定される。電力用半導体素子S1a及びS1bのゲート端子とソース端子との間に供給される正電圧の供給元が第1の駆動用電源52-1に設定されている状態において、電力変換制御部26が第1の正側スイッチS1Hと第1の負側スイッチS1Lとを交互にオンオフ動作するよう制御することで、第1のゲート駆動部11-1からは駆動用の正の電圧とゼロ電圧とが交互に出力される。すなわち、電力変換制御部26が第1の正側スイッチS1Hをオン動作し第1の負側スイッチS1Lをオフ動作するよう制御することで、第1のゲート駆動部11-1からは駆動用の正の電圧が出力される。また、電力変換制御部26が第1の正側スイッチS1Hをオフ動作し第1の負側スイッチS1Lをオン動作するよう制御することで、第1のゲート駆動部11-1からはゼロ電圧が出力される。
【0163】
第2のゲート駆動部11-2は、第2の診断用電源51-2と、第2の駆動用電源52-2と、第2の切替部53-2と、第2の正側スイッチS2Hと、第2の負側スイッチS2Lとを有する。第2の切替部53-2は、第2の診断用電源51-2につながる電路を開閉する第2の診断用切替スイッチSs2と、第2の駆動用電源52-2につながる電路を開閉する第2の駆動用切替スイッチSg2と、を有する。
【0164】
第3のゲート駆動部11-3は、第3の診断用電源51-3と、第3の駆動用電源52-3と、第3の切替部53-3と、第3の正側スイッチS3Hと、第3の負側スイッチS3Lとを有する。第3の切替部53-3は、第3の診断用電源51-3につながる電路を開閉する第3の診断用切替スイッチSs3と、第3の駆動用電源52-3につながる電路を開閉する第3の駆動用切替スイッチSg3と、を有する。
【0165】
第4のゲート駆動部11-4は、第4の診断用電源51-4と、第4の駆動用電源52-4と、第4の切替部53-4と、第4の正側スイッチS4Hと、第4の負側スイッチS4Lとを有する。第4の切替部53-4は、第4の診断用電源51-4につながる電路を開閉する第4の診断用切替スイッチSs4と、第4の駆動用電源52-4につながる電路を開閉する第4の駆動用切替スイッチSg4と、を有する。
【0166】
第2の診断用電源51-2、第3の診断用電源51-3、及び第4の診断用電源51-4の機能及び電圧等の条件は、第1の診断用電源51-1の機能及び電圧等の条件と同様である。
【0167】
第2の駆動用電源52-2、第3の駆動用電源52-3、及び第4の駆動用電源52-4の機能及び電圧等の条件は、第1の駆動用電源52-1の機能及び電圧等の条件と同様である。
【0168】
第2の切替部53-2、第3の切替部53-3、及び第4の切替部53-4の機能及び動作は、第1の切替部53-1の機能及び動作と同様である。
【0169】
第2の正側スイッチS2H、第3の正側スイッチS3H、及び第4の正側スイッチS4Hの機能及び動作は、第1の正側スイッチS1Hの機能及び動作と同様である。
【0170】
第2の負側スイッチS2L、第3の負側スイッチS3L、及び第4の負側スイッチS4Lの機能及び動作は、第1の負側スイッチS1Lの機能及び動作と同様である。
【0171】
第2の診断用切替スイッチSs2、第3の診断用切替スイッチSs3、及び第4の診断用切替スイッチSs4の機能及び動作は、第1の診断用切替スイッチSs1の機能及び動作と同様である。
【0172】
第2の駆動用切替スイッチSg2、第3の駆動用切替スイッチSg3、及び第4の駆動用切替スイッチSg4の機能及び動作は、第1の駆動用切替スイッチSg1の機能及び動作と同様である。
【0173】
本開示の第6の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置における故障診断処理については、図5に示したフローチャートが適用される。本開示の第6の実施形態においても、図5に示したS101~S105の処理を、電力用半導体素子の4組について組ごとに実行することで、電力用半導体素子の各組の故障の有無を診断する。
【0174】
診断部13による診断結果は、第1の実施形態と同様に、例えば、表示装置(図示せず)に表示させてもよく、音響装置(図示せず)にて出力させてもよく、紙面等にプリントアウトして表示してもよく、通信装置(図示せず)を用いて電力変換装置100の外部(の機器や作業者)に報知してもよく、あるいはこれらを組み合わせて作業者に報知してもよい。また、診断部13による診断結果が得られるたびにメモリに記憶して蓄積していき、データベース化することで故障予知や予防保全に役立ててもよい。
【0175】
なお、本開示の第6の実施形態による故障診断装置及びこれを備える電力変換装置に、第5の実施形態で説明した機械学習部15を設けてもよい。
【0176】
また、第1~第4のゲート駆動部11-1~11-4は、電力変換回路部21内の各電力用半導体素子のゲート端子とソース端子との間に、駆動用あるいは診断用の正電圧とゼロ電圧とを供給するものとしたが、ゼロ電圧に代えてソース電位に対して負電圧を供給するようにしてもよい。
【0177】
本開示の第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0178】
<電力変換回路部の他の例>
上述の各実施形態では、電力変換回路部21が、非絶縁降圧型のDC/DCコンバータまたは単相インバータで構成される例について説明した。電力変換回路部21が複数並列に接続された電力用半導体素子の組を有するものであれば、上述した以外の構成を有するものであってもよい。例えば、電力変換回路部21は、非絶縁昇圧型のDC/DCコンバータで構成されてもよい。この場合、非絶縁昇圧型のDC/DCコンバータで構成される電力変換回路部21は、複数個並列に接続された電力用半導体素子の組を1組有し、診断部13は、電力用半導体素子の1組の故障を診断する。また、例えば、電力変換回路部21は、三相インバータで構成されてもよい。この場合、三相インバータで構成される電力変換回路部21は、複数個並列に接続された電力用半導体素子の組を6組有し、診断部13は、電力用半導体素子の6組のうちの各組の故障を診断する。
【0179】
以上、本開示について詳述したが、本開示は上述した個々の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、または、特許請求の範囲に記載された内容とその均等物から導き出される本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、置き換え、変更、部分的削除等が可能である。また、これらの実施形態は、組み合わせて実施することもできる。例えば、上述した実施形態において、各動作の順序や各処理の順序は、一例として示したものであり、これらに限定されるものではない。また、上述した実施形態の説明に数値又は数式が用いられている場合も同様である。
【符号の説明】
【0180】
1 故障診断装置
11 ゲート駆動部
11-1 第1のゲート駆動部
11-2 第2のゲート駆動部
11-3 第3のゲート駆動部
11-4 第4のゲート駆動部
12 電圧検出部
13 診断部
14 診断用ゲート信号発生回路
15 機械学習部
20 出力部
21 電力変換回路部
22 平滑コンデンサ
23 リアクトル
24 放電回路部
25 連系スイッチ
26 電力変換制御部
27 入力コンデンサ
31 診断用電源
31-1 第1の診断用電源
31-2 第2の診断用電源
31-3 第3の診断用電源
31-4 第4の診断用電源
32 駆動用電源
32-1 第1の駆動用電源
32-2 第2の駆動用電源
32-3 第3の駆動用電源
32-4 第4の駆動用電源
33 直流入力電源
41 診断用ゲート駆動回路
41-1 第1の診断用ゲート駆動回路
41-2 第2の診断用ゲート駆動回路
41-3 第3の診断用ゲート駆動回路
41-4 第4の診断用ゲート駆動回路
42 電力変換動作用ゲート駆動回路
42-1 第1の電力変換動作用ゲート駆動回路
42-2 第2の電力変換動作用ゲート駆動回路
42-3 第3の電力変換動作用ゲート駆動回路
42-4 第4の電力変換動作用ゲート駆動回路
51 診断用電源
51-1 第1の診断用電源
51-2 第2の診断用電源
51-3 第3の診断用電源
51-4 第4の診断用電源
52 駆動用電源
52-1 第1の駆動用電源
52-2 第2の駆動用電源
52-3 第3の駆動用電源
52-4 第4の駆動用電源
53 切替部
53-1 第1の切替部
53-2 第2の切替部
53-3 第3の切替部
53-4 第4の切替部
Da、Db ダイオード
Rd 放電抵抗
Rg1a、Rg1b、Rg2a、Rg2b、Rg3a、Rg3b、Rg4a、Rg4b、Rga、Rgb ゲート抵抗
Sg 駆動用切替スイッチ
Sg1H 第1の駆動用正側スイッチ
Sg2H 第2の駆動用正側スイッチ
Sg3H 第3の駆動用正側スイッチ
Sg4H 第4の駆動用正側スイッチ
SgH 駆動用正側スイッチ
Sg1 第1の駆動用切替スイッチ
Sg1L 第1の駆動用負側スイッチ
Sg2 第2の駆動用切替スイッチ
Sg2L 第2の駆動用負側スイッチ
Sg3 第3の駆動用切替スイッチ
Sg3L 第3の駆動用負側スイッチ
Sg4 第4の駆動用切替スイッチ
Sg4L 第4の駆動用負側スイッチ
SgL 駆動用負側スイッチ
SH 正側スイッチ
S1a、S1b、S2a、S2b、S3a、S3b、S4a、S4b、SHa、SHb、 電力用半導体素子
S1H 第1の正側スイッチ
S1L 第1の負側スイッチ
S2H 第2の正側スイッチ
S2L 第2の負側スイッチ
S3H 第3の正側スイッチ
S3L 第3の負側スイッチ
S4H 第4の正側スイッチ
S4L 第4の負側スイッチ
SL 負側スイッチ
Ss 診断用切替スイッチ
Ss1 第1の診断用切替スイッチ
Ss1H 第1の診断用正側スイッチ
Ss2 第2の診断用切替スイッチ
Ss2H 第2の診断用正側スイッチ
Ss3 第3の診断用切替スイッチ
Ss3H 第3の診断用正側スイッチ
Ss4 第4の診断用切替スイッチ
Ss4H 第4の診断用正側スイッチ
SsH 診断用正側スイッチ
Ss1L 第1の診断用負側スイッチ
Ss2L 第2の診断用負側スイッチ
Ss3L 第3の診断用負側スイッチ
Ss4L 第4の診断用負側スイッチ
SsL 診断用負側スイッチ
SW 放電スイッチ
T1H 正側入力端子
T1L 負側入力端子
T2H 正側出力端子
T2L 負側出力端子
T3H 第1の出力端子
T3L 第2の出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10