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特開2024-85206セルロース樹脂複合組成物の製造方法及びセルロース樹脂複合組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085206
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】セルロース樹脂複合組成物の製造方法及びセルロース樹脂複合組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20240619BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240619BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240619BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEP
C08J3/20 CER
C08J3/20 CEZ
C08L1/00
C08L101/00
C08L23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199608
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 博之
(72)【発明者】
【氏名】村上 賀一
(72)【発明者】
【氏名】作田 新吾
(72)【発明者】
【氏名】菊田 郁夫
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA12
4F070AC72
4F070AD02
4F070FA05
4F070FB06
4F070FC01
4J002AA011
4J002AB012
4J002BB201
4J002GG00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】セルロースナノファイバーの前駆体であるセルロース繊維を分散媒体である熱可塑性樹脂中に十分に分散させて、セルロース繊維の補強効果を十分に発揮させ、引張弾性率及び引張強度が向上した成型体の成型材料として有用なセルロース樹脂複合組成物を簡易に製造する方法を提供する。
【解決手段】セルロース類及び熱可塑性樹脂を含有するセルロース樹脂複合組成物の製造方法であり、下記工程(1)及び(2)を有する。
[工程(1)]:
セルロース繊維を含むセルロース類と、水とを含有する混合物を高速撹拌して、セルロース類の濃度が0.5~10質量%である分散液を得、
得られた分散液をろ過して、含水率4~80質量%の水ペーストを得る工程。
[工程(2)]:
水ペースト及び熱可塑性樹脂を混合した後、100℃以上の温度条件下で混錬しながら水を除去して、セルロース樹脂複合組成物を得る工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース類5~40質量%及び熱可塑性樹脂60~95質量%を含有するセルロース樹脂複合組成物の製造方法であって、
下記工程(1)及び(2)を有するセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
[工程(1)]:
平均繊維径0.5~50μm、平均繊維長5~2,000μm、平均アスペクト比2~100、及び不揮発分90質量%以上である粒子状又は綿状のセルロース繊維を含むセルロース類と、水とを含有する混合物を高速撹拌して、前記セルロース類の濃度が0.5~10質量%である分散液を得、
得られた前記分散液をろ過して、含水率4~80質量%の水ペーストを得る工程。
[工程(2)]:
前記水ペースト及び前記熱可塑性樹脂を混合した後、100℃以上の温度条件下で混錬しながら前記水を除去して、セルロース樹脂複合組成物を得る工程。
【請求項2】
前記工程(1)において、
カルボキシ基を有する酸価5~100mgKOH/gの第1のポリオレフィンをアルカリで中和して得たポリオレフィン水分散液を、前記セルロース類100質量部に対して、前記第1のポリオレフィンの固形分が10~200質量部となるように添加した前記混合物を高速撹拌した後、酸を添加して、析出した前記第1のポリオレフィンを含有する前記分散液を得る請求項1に記載のセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
【請求項3】
前記セルロース類が、平均繊維径0.01μm以上0.5μm未満及び平均繊維長4~200μmであるセルロースナノファイバーをさらに含み、
前記セルロース繊維100質量部に対する、前記セルロースナノファイバーの量が、5~100質量部である請求項2に記載のセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーの表面が化学修飾されている請求項3に記載のセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、第2のポリオレフィンである請求項1~4のいずれか一項に記載のセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたセルロース樹脂複合組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の製造方法によって製造されたセルロース樹脂複合組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース樹脂複合組成物の製造方法、及びセルロース樹脂複合組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースはすべての植物の基本骨格物質であり、地球上に一兆トンを超える蓄積がある。また、セルロースは植樹によって再生可能な資源であることから、有効活用が望まれている。そして、昨今、セルロース繊維をナノサイズの径まで解繊して得られるセルロースナノファイバーが注目されている(特許文献1)。
【0003】
セルロースナノファイバーを熱可塑性樹脂中に分散させることで、鋼鉄の1/5の軽さであるにも関わらず、鋼鉄の5倍以上の強度、ガラスの1/50以下の低線熱膨張係数といった複合材料を得ることが可能である。このため、補強効果を有するフィラーとしてセルロースナノファイバーを用いた複合物が検討されている(特許文献2)。
【0004】
しかし、セルロースナノファイバーは、その径がナノサイズであるとともに、その長さがミクロンサイズであることから、一本一本を熱可塑性樹脂中に均一に分散させることは困難である。また、セルロースナノファイバーは、その構成単位であるグルコース単位中に水酸基を多く含むことから、親水性が非常に高い。このため、疎水性の熱可塑性樹脂にセルロースナノファイバーを分散させようとすると、セルロースナノファイバーは凝集してしまい、十分に分散させることは困難である。そして、セルロースナノファイバーの分散性が不十分であると、フィラーとしての補強効果も不十分である。そこで、セルロースナノファイバーを化学変性する(特許文献3)、又は分散剤を使用する(特許文献4)等して、熱可塑性樹脂中へのセルロースナノファイバーの分散性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/111408号
【特許文献2】特開2008-266630号公報
【特許文献3】特開2016-176052号公報
【特許文献4】特開2017-218595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セルロースナノファイバーを様々な手法によって熱可塑性樹脂中に分散させ、熱可塑性樹脂の強度等の物性を向上させることが検討されている。しかし、これまでの手法ではセルロースナノファイバーの分散性を不十分に高めることができず、フィラーとしての補強効果を十分に発揮させることは困難であった。
【0007】
また、セルロース繊維を解繊してセルロースナノファイバーを得るには、化学変性や脱溶剤等の多くの工程を経由する必要があるため、コスト面で不利になるといった課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、セルロースナノファイバーの前駆体であるセルロース繊維を分散媒体である熱可塑性樹脂中に十分に分散させて、セルロース繊維の補強効果を十分に発揮させ、引張弾性率及び引張強度が向上した成型体の成型材料として有用なセルロース樹脂複合組成物を簡易に製造する方法を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、この製造方法によって製造されるセルロース樹脂複合組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示すセルロース樹脂複合組成物の製造方法が提供される。
[1]セルロース類5~40質量%及び熱可塑性樹脂60~95質量%を含有するセルロース樹脂複合組成物の製造方法であって、下記工程(1)及び(2)を有するセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
[工程(1)]:
平均繊維径0.5~50μm、平均繊維長5~2,000μm、平均アスペクト比2~100、及び不揮発分90質量%以上である粒子状又は綿状のセルロース繊維を含むセルロース類と、水とを含有する混合物を高速撹拌して、前記セルロース類の濃度が0.5~10質量%である分散液を得、
得られた前記分散液をろ過して、含水率4~80質量%の水ペーストを得る工程。
[工程(2)]:
前記水ペースト及び前記熱可塑性樹脂を混合した後、100℃以上の温度条件下で混錬しながら前記水を除去して、セルロース樹脂複合組成物を得る工程。
[2]前記工程(1)において、カルボキシ基を有する酸価5~100mgKOH/gの第1のポリオレフィンをアルカリで中和して得たポリオレフィン水分散液を、前記セルロース類100質量部に対して、前記第1のポリオレフィンの固形分が10~200質量部となるように添加した前記混合物を高速撹拌した後、酸を添加して、析出した前記第1のポリオレフィンを含有する前記分散液を得る前記[1]に記載のセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
[3]前記セルロース類が、平均繊維径0.01μm以上0.5μm未満及び平均繊維長4~200μmであるセルロースナノファイバーをさらに含み、前記セルロース繊維100質量部に対する、前記セルロースナノファイバーの量が、5~100質量部である前記[2]に記載のセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
[4]前記セルロースナノファイバーの表面が化学修飾されている前記[3]に記載のセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
[5]前記熱可塑性樹脂が、第2のポリオレフィンである前記[1]~[4]のいずれかに記載のセルロース樹脂複合組成物の製造方法。
【0010】
また、本発明によれば、以下に示すセルロース樹脂複合組成物が提供される。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法によって製造されたセルロース樹脂複合組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セルロースナノファイバーの前駆体であるセルロース繊維を分散媒体である熱可塑性樹脂中に十分に分散させて、セルロース繊維の補強効果を十分に発揮させ、引張弾性率及び引張強度が向上した成型体の成型材料として有用なセルロース樹脂複合組成物を簡易に製造する方法が提供される。また、本発明によれば、この製造方法によって製造されるセルロース樹脂複合組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<セルロース樹脂複合組成物の製造方法>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のセルロース樹脂複合組成物(以下、単に「複合組成物」とも記す)の製造方法の一実施形態は、セルロース類5~40質量%及び熱可塑性樹脂60~95質量%を含有する(但し、セルロース類と熱可塑性樹脂の合計を100質量%とする)セルロース樹脂複合組成物の製造方法である。
【0013】
(セルロース類)
セルロース類は、セルロース繊維を含む。セルロース繊維は、パルプを解繊して得られる紙や不織布等の原料となる材料である。セルロース繊維は、工業的に容易に得られるセルロース類の一種であり、セルロースナノファイバーなどの特殊な解繊工程や処理工程を経ずに得られる安価な材料である。
【0014】
セルロース類の原料となる植物繊維は、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビート、農産物残廃物、及び布等の天然植物原料から得られるパルプの他、レーヨンやセロファン等の再生物を挙げることができる。木材としては、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、及びアカシア等を挙げることができる。紙としては、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌、及びコピー用紙等を挙げることができる。
【0015】
パルプとしては、植物繊維を機械処理又は化学処理して得られるケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TWP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、及びこれらのパルプを主成分とする脱墨古紙パルプ、段ボール古紙パルプ、雑誌古紙パルプ等を挙げることができる。なかでも、繊維の強度が強い針葉樹由来の各種クラフトパルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素晒し未漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP))が好ましい。これらのパルプを使用して、又は植物繊維をそのまま解繊して、セルロース繊維とすることができる。
【0016】
セルロース繊維の平均繊維径は0.5~50μm、好ましくは0.7~40μm、さらに好ましくは1~35μmである。セルロース繊維の平均繊維径が0.5μm未満であると、熱可塑性樹脂中に分散させるのが困難になる。また、平均繊維径が0.5μm未満のセルロース繊維を製造する工程が煩雑であり、コスト等の面で不利である。一方、セルロース繊維の平均繊維径が50μm超であると、製品外観が不良になりやすいとともに、十分な補強効果を得るために添加量を多くする必要がある。さらに、成型時の流動性が低下し、成型性が低下する場合がある。本明細書における「平均繊維径」及び「平均繊維長」は、いずれも、電子顕微鏡の視野内の50本以上のセルロース類について測定した値の平均値である。
【0017】
セルロース繊維の平均繊維長は5~2,000μm、好ましくは5~1,000μmである。セルロース繊維の平均繊維長が5μm未満であると、補強効果が不十分になる。一方、セルロース繊維の平均繊維長が2,000μm超であると、熱可塑性樹脂中に分散させるのが困難になる。
【0018】
セルロース繊維の平均アスペクト比(「繊維長/繊維径」の平均値)は、2~100である。また、セルロース繊維を構成するセルロースの重合度は、天然セルロースの場合は、通常500~10,000程度であり、再生セルロースの場合は、通常200~800程度である。
【0019】
セルロース繊維の形状は、粒子状又は綿状である。綿状のセルロース繊維は、不定形のセルロース繊維がランダムに絡み合ったものである。また、セルロース繊維の不揮発分は90質量%以上である。すなわち、実質的に乾燥したセルロース繊維を用いる。このように実質的に乾燥したセルロース繊維は、市販されている通常のセルロース繊維であり、安価で入手しやすい。
【0020】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、セルロース類を分散させる分散媒体として機能する成分である。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロデカン、ポリシクロペンジエン、ポリメチルテルペン等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド系樹脂;ポリビスフェノールAカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート等のポリカーボネート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリフェニレンスルファイド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース等のセルロース系樹脂;ポリスチレン、ポリアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のポリハロゲン化ビニル系樹脂;等を挙げることができる。
【0021】
セルロース類をフィラーとして用いる点、補強効果を十分に発揮させる点、及び安価である等の点から、熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂(第2のポリオレフィン)であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリアルケン樹脂等を挙げることができる。なかでも、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、バイオポリエチレン等のポリエチレン系樹脂(PE)、ポリプロピレン系樹脂(PP)が好ましい。
【0022】
製造しようとする複合組成物中、セルロース類の含有量は5~40質量%、好ましくは10~30質量%である。また、製造しようとする複合組成物中、熱可塑性樹脂の含有量は60~95質量%である。セルロース類の含有量を5~40質量%とすることで、セルロース類のフィラーとしての補強効果を発揮させることができる。セルロース類の含有量が5質量%未満であると、十分な補強効果を発揮させることができない。一方、セルロース類の含有量が40質量%超であると、複合組成物の流動性が低下する。さらに、得られる成型体が脆くなりやすいとともに、成型体の表面の平滑性が低下する。
【0023】
(工程(1))
本実施形態の複合組成物の製造方法は、下記工程(1)を有する。
[工程(1)]:
平均繊維径0.5~50μm、平均繊維長5~2,000μm、平均アスペクト比2~100、及び不揮発分90質量%以上である粒子状又は綿状のセルロース繊維を含むセルロース類と、水とを含有する混合物を高速撹拌して、セルロース類の濃度が0.5~10質量%である分散液を得、
得られた分散液をろ過して、含水率4~80質量%の水ペーストを得る工程。
【0024】
セルロース繊維は実質的に乾燥状態であることから、そのままの状態で熱可塑性樹脂に練り込むことが困難である。そこで、工程(1)では、まず、セルロース類と、水とを含有する混合物を高速撹拌して分散液を得る。セルロース繊維を水中で高速撹拌することで、セルロース繊維を解すことができる。混合物を高速撹拌するには、ディスパー、高速ミキサー等の従来公知の装置を使用することができる。
【0025】
分散液のセルロース類の濃度は0.5~10質量%、好ましくは1~5質量%である。分散液のセルロース類の濃度が0.5質量%未満であると、セルロース繊維を含むセルロース類を十分に解すことが困難になる。一方、分散液中のセルロース類の濃度が10質量%超であると、粘度が高すぎてしまい、十分に混合及び撹拌することができない。混合物を高速撹拌する際には、混合物を加温してもよい。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価グリコールをはじめとする水溶性有機溶剤を混合物に添加して高速撹拌すると、セルロース類をより速やかに解すことができるために好ましい。
【0026】
次いで、得られた分散液をろ過し、液媒体である水の一部を除去する。これにより、嵩が小さく不定形のセルロース繊維を含有する水ペーストを得ることができる。ろ過は、自然ろ過、吸引ろ過、加圧ろ過、及び遠心分離などのいずれであってもよい。なかでも、吸引濾過及び遠心分離が好ましい。ろ過後に水でよく洗浄してもよい。セルロース繊維を単に水で濡らしても、嵩は小さくなるが、セルロース繊維を熱可塑性樹脂中に十分細かく分散させることが可能な状態にすることができない。上記のように、水中で高速撹拌してセルロース繊維の形状を崩すとともに、嵩を減少させた水ペーストとすることで、熱可塑性樹脂中への混合及び分散が容易な状態のセルロース繊維とすることができる。
【0027】
得られる水ペーストの含水率は4~80質量%、好ましくは5~70質量%とする。水ペーストの含水率が4質量%未満であると、セルロース繊維が凝集しやすくなり、熱可塑性樹脂中に分散させることが困難になる。なお、セルロースは親水性が高いため、含水率が4質量%未満となるまで水ペーストから水を除去することは、そもそも困難である。一方、水ペーストの含水率が80質量%超であると、水が多すぎるために熱可塑性樹脂と混ざりにくくなる。また、熱可塑性樹脂との混練中に水を除去しようとしても、除去しにくくなる場合がある。
【0028】
工程(1)においては、カルボキシ基を有するポリオレフィン(第1のポリオレフィン)をアルカリで中和して得たポリオレフィン水分散液を添加した混合物を高速撹拌した後、酸を添加して、析出した第1のポリオレフィンを含有する分散液を得ることが好ましい。
【0029】
水ペースト中においても、セルロース繊維どうしが直接接触して凝集することもあるため、分散性を高めることがやや困難になる場合もある。そこで、水中で高速撹拌して繊維形状を崩した状態のセルロース繊維を含有する系中に、アルカリで中和した第1のポリオレフィンを添加した後、酸を添加して第1のポリオレフィンを析出させる。第1のポリオレフィンはセルロース繊維の表面に析出するので、第1のポリオレフィンによってセルロース繊維が表面処理されることになる。第1のポリオレフィンで表面処理されたセルロース繊維を含む分散液をろ過しても、表面処理されたセルロース繊維どうしがほとんど接触しないため、セルロース繊維の凝集が抑制され、熱可塑性樹脂中への分散性をさらに向上させることができる。
【0030】
第1のポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ1-ペンテン、ポリ(3-メチル-1-ブテン)、ポリ1-ヘキセン、ポリ(3-メチル-1-ペンテン)、ポリ(4―メチル―1-ペンテン)、ポリ(1-ヘプテン)、ポリ(4-メチル-1-ヘキセン)、ポリ(5-メチル-1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、及びポリ(5-メチル-1-ヘプテン)等の単独重合体やこれらのランダム共重合体の、主鎖酸化変性物、無水マレイン酸付加変性物、及びアクリル酸付加変性物等を挙げることができる。また、第1のポリオレフィンは、上記の重合体を構成するモノマーと、(メタ)アクリル酸やマレイン酸等のカルボキシ基を有するビニル系モノマーとの共重合体であってもよい。
【0031】
ポリオレフィン水分散液は、カルボキシ基をアルカリで中和して第1のポリオレフィンを水に分散させたもの(エマルジョン)である。酸を添加すると脱イオン化し、第1のポリオレフィンは水に不溶となって析出する。第1のポリオレフィンの酸価は、5~100mgKOH/gであることが好ましく、10~50mgKOH/gであることがさらに好ましい。第1のポリオレフィンの酸価が5mgKOH/g未満であると、安定した水分散液とすることが困難になる場合がある。一方、第1のポリオレフィンの酸価が100mgKOH/g超であると、耐水性が低下することがある。ポリオレフィン等の樹脂の酸価は、キシレンやオクタン等の可溶性溶媒に樹脂を熱溶解した後、フェノールフタレイン溶液を指示薬とし、0.1N水酸化カリウムエタノール溶液で滴定して求められる、樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)で表される物性値である。
【0032】
ポリオレフィン水分散液中のエマルジョン粒子の数平均粒子径は、例えば、50~500nm程度であればよい。カルボキシ基を中和するアルカリとしては、アンモニア;トリエチルアミンやジメチルアミノエタノール等の有機アミン;水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;を挙げることができる。
【0033】
ポリオレフィン水分散の量は、セルロース繊維を含むセルロース類100質量部に対して、第1のポリオレフィンの固形分が10~200質量部となる量であることが好ましく、10~100質量部となる量であることがさらに好ましい。第1のポリオレフィンの固形分が、セルロース類100質量部に対して10質量部未満であると、セルロース繊維等のセルロース類の表面処理がやや不十分になる場合がある。一方、第1のポリオレフィンの固形分が、セルロース類100質量部に対して200質量部超であると、第1のポリオレフィンの量が過剰になりやすく、得られる複合組成物中の熱可塑性樹脂の性質に影響が及ぶ場合がある。
【0034】
酸としては、塩酸、硫酸、及び酢酸等を挙げることができる。なかでも、塩酸を用いることが好ましい。具体的には、0.1~10質量%の酸水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の酸濃度が高すぎると、第1のポリオレフィンが局所的に析出しやすくなり、セルロース類が表面処理されずに第1のポリオレフィンのみが析出する場合がある。酸を添加して第1のポリオレフィンを析出させた後、得られた分散液をそのままろ過してもよいが、加熱した分散液をろ過することが好ましい。分散液を加熱することで、表面処理されたセルロース繊維を含むセルロース類を適度に凝集させ、ろ過しやすくすることができる。次いで、乾燥機等を使用して、所定の含水率となるように水分を蒸発させてもよい。
【0035】
以上の操作で、第1のポリオレフィンで表面処理されたセルロース類を含有する水ペーストを得ることができる。分散液中のセルロース繊維を含むセルロース類は、疎水性樹脂である第1のポリオレフィンで表面処理されているため、分散液をろ過する際にろ過物(水ペースト)を絞ることによって、得られる水ペーストの含水率が所望とする値になるように容易に制御することができる。
【0036】
工程(1)において上記の第1のポリオレフィンを用いる場合には、セルロース類が、セルロース繊維に比して繊維径が小さく繊維長が短いセルロースナノファイバーをさらに含むことが好ましい。セルロースナノファイバーのみをセルロース類として用いて水ペーストを調製しても、熱可塑性樹脂中に十分に分散させることは困難である。これに対して、セルロースナノファイバーとセルロース繊維を共存させる(併用する)とともに、これらのセルロース類を第1のポリオレフィンで表面処理することで、セルロースナノファイバーどうしの接近及び接触を抑制し、セルロース繊維とともにセルロースナノファイバーを熱可塑性樹脂中に分散させることができる。これにより、セルロース繊維による補強効果だけでなく、セルロースナノファイバーによる補強効果も発揮された各種成型体を製造しうる複合組成物を製造することができる。
【0037】
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、0.01μm以上0.5μm未満であることが好ましい。また、セルロースナノファイバーの平均繊維長は、4~200μmであることが好ましい。セルロースナノファイバーは、セルロース繊維を含む木材パルプ等の材料を、その繊維をナノサイズレベルまで解繊処理して得ることができる。
【0038】
セルロース繊維を含む材料を解繊処理してセルロースナノファイバーを製造する方法としては、パルプ等のセルロース繊維含有材料を解繊する方法を挙げることができる。より具体的には、セルロース繊維含有材料の水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、混練機、ビーズミル等を使用して機械的に摩砕又は叩解する方法等がある。水性媒体中でセルロース繊維含有材料を解繊することで、セルロースナノファイバーとすることができる。
【0039】
セルロース類中のセルロースナノファイバーの量は、セルロース繊維100質量部に対して、5~100質量部とすることが好ましく、10~50質量部とすることがさらに好ましい。セルロース繊維100質量部に対する、セルロースナノファイバーの量が5質量部未満であると、セルロースナノファイバーを用いた効果が十分に発揮されない場合がある。一方、セルロース繊維100質量部に対する、セルロースナノファイバーの量が100質量部超であると、セルロースナノファイバーの分散性がやや不十分になる場合がある。
【0040】
セルロースナノファイバーの表面は化学修飾されていることが好ましい。このように表面が化学修飾されたセルロースナノファイバーを用いることで、セルロースナノファイバーをさらに水に分散させやすくすることができるとともに、熱可塑性樹脂に親和性を持たせることができる。セルロースナノファイバーの表面に施される化学修飾としては、有機化合物を用いた、エステル化、エーテル化、及びカルボキシ化等を挙げることができる。その表面をエステル化したセルロースナノファイバーとしては、セルロースナノファイバーの水酸基にドデセニルコハク酸無水物等の酸無水物を反応させたエステル化物等を挙げることができる。その表面をエーテル化したセルロースナノファイバーとしては、エーテル結合を介してフルオロセイン基等を結合させたエーテル化物等を挙げることができる。その表面をカルボキシル化したセルロースナノファイバーとしては、セルロースナノファイバーの水酸基をTEMPOで酸化してカルボキシ基としたカルボキシ化物等を挙げることができる。
【0041】
(工程(2))
本実施形態の複合組成物の製造方法は、下記工程(2)を有する。
[工程(2)]:
水ペースト及び熱可塑性樹脂を混合した後、100℃以上の温度条件下で混錬しながら水を除去して、セルロース樹脂複合組成物を得る工程。
【0042】
工程(2)では、工程(1)で得た水ペーストを熱可塑性樹脂と混合した後、100℃以上の温度条件下で混錬しながら水を除去する。これにより、セルロース繊維を含むセルロース類を熱可塑性樹脂中に分散させて、目的とするセルロース樹脂複合組成物を得ることができる。
【0043】
混練には、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ニーダールーダー、単軸押出機、多軸押出機等を用いることができる。混練時の温度は、水を蒸発させて除去する必要があるため、100℃以上とする。また、用いる熱可塑性樹脂の溶融温度や加工温度を考慮して100℃以上の温度に設定すればよい。混錬後、得られる複合組成物をシート状に裁断したり、ペレタイザーを使用してペレット化したりしてもよい。
【0044】
混練時には、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、ポリオレフィン無水マレイン酸付加物等の相溶化剤、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、顔料や染料等の着色剤、金属粉末、可塑剤、香料、紫外線吸収剤、レベリング剤、導電材、及び帯電防止剤等を挙げることができる。
【0045】
複合組成物中のセルロース類の分散状態は、目視や電子顕微鏡でブツや異物の有無を確認することで把握することができる。また、セルロース類は補強材料として機能するため、強度等の物性を測定することによっても、複合組成物中のセルロース類の分散状態を確認することができる。さらには、蛍光物質でセルロース類を染めた後、蛍光顕微鏡等を使用して観察することもできる。
【0046】
(セルロース樹脂複合組成物)
上述の製造方法によって、熱可塑性樹脂にセルロース類が分散したセルロース樹脂複合組成物を得ることできる。すなわち、本発明のセルロース樹脂複合組成物の一実施形態は、前述の製造方法によって製造されたものである。
【0047】
複合組成物をそのまま成型して成型体としてもよいし、他の熱可塑性樹脂で希釈した後に成型して成型体としてもよい。本実施形態の複合組成物を用いることで、セルロース類のフィラーとしての補強効果が有効に発揮され、熱可塑性樹脂の引張強さ、靭性、曲げ強さ、耐衝撃性、圧縮強さ、及び剪断強さ等の機械的性質が向上するとともに、軽量化された成型体を得ることができる。本実施形態の複合組成物は、例えば、自動車、家電、電子部材、ディスプレー材料、建築物、容器、フィルム、及び電池等の様々な分野で用いられる各種成型体の成型材料として有用である。
【0048】
なお、本実施形態の複合組成物中のセルロース類の微視的な分散状態等は、分散媒体である熱可塑性樹脂の組成、混練時の温度、及び撹拌速度等の他の製造条件によって変化する。このため、多種な熱可塑性樹脂を使用し、種々の温度・撹拌速度等の製造条件下で製造し、得られた複合組成物中のセルロース類の分散状態を観察して定量化することは、現実的ではない回数の実験等を行うことを要するとともに、その結果を包括的に表現することも困難である。このため、本実施形態の複合組成物を、その構造又は特性により直接特定することは実質的に不可能又は非実際的である。
【実施例0049】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0050】
<工程1:水ペーストの調製(1)>
(実施例(工程1)1)
セルロース繊維(商品名「ARBOCEL B400」、レッテンマイヤー社製、平均繊維径:20μm、平均繊維長:900μm、平均アスペクト比:45、綿状)(B400)50部、及びイオン交換水4,950部をバットに入れた。高速撹拌機(ディスパー)を使用して3,000rpmで1時間撹拌し、セルロース繊維の濃度が1%である分散液(スラリー)を得た。得られた分散液をヌッチェで減圧ろ過した後、イオン交換水1Lで3回洗浄して、水ペーストCFWP-1を得た。水分計を使用して120℃で測定した水ペーストCFWP-1の固形分は、32.5%であった。
【0051】
(実施例(工程1)2)
B400 50部、及びイオン交換水4,950部をバットに入れた。ディスパーを使用して3,000rpmで1時間撹拌した後、変性ポリプロピレンエマルジョン(POE-1)100部(セルロース繊維100部に対して、固形分50部)を添加した。POE-1は、ポリプロピレンに無水マレイン酸をグラフトした後、溶融し、強力撹拌機を使用して撹拌しつつ水酸化ナトリウム水溶液を添加してエマルジョン化したものであり、変性ポリプロピレンの酸価は26.3mgKOH/gであり、融点は120℃である。また、POE-1のpHは9.5であり、固形分は25%であり、エマルジョン粒子の数平均粒子径は250nmである。
【0052】
3,000rpmで1時間撹拌した後、pHメーターの電極をセットし、3.5%希塩酸を少量ずつ添加した。pH5~6付近で増粘し、pH3以下になるまで希塩酸を添加してポリオレフィンを析出させ、セルロース繊維の濃度が1%である分散液を得た。得られた分散液をヌッチェで減圧ろ過した後、イオン交換水1Lで3回洗浄して、水ペーストCFWP-2を得た。得られた水ペーストCFWP-2の固形分は、30.4%であった。
【0053】
(実施例(工程1)3~5)
表1に示す組成としたこと以外は、前述の実施例2と同様にして、水ペーストCFWP-3~5を得た。表1中の略号の意味を以下に示す。
・B800:セルロース繊維、商品名「ARBOCEL B800」、レッテンマイヤー社製、平均繊維径:20μm、平均繊維長:130μm、平均アスペクト比:6.5、粉状
・BC200:セルロース繊維、商品名「ARBOCEL BC200」、レッテンマイヤー社製、平均繊維径:20μm、平均繊維長:300μm、平均アスペクト比:15、ダマ綿状
・FIF400:セルロース繊維、商品名「ARBOCEL FIF400」、レッテンマイヤー社製、平均繊維径:35μm、平均繊維長:2,000μm、平均アスペクト比:57.1、綿状
・POE-2:変性ポリエチレンエマルジョン、酸価:30.0mgKOH/g、融点:107℃、pH:9.2、数平均粒子径:110nm、固形分:25.0%
【0054】
【0055】
<工程1:水ペーストの調製(2)>
(実施例(工程1)6)
B400 35部、セルロースナノファイバー(商品名「ビンフィスBMa-10010」、スギノマシン社製、平均繊維径:10~50nm、平均繊維長:10μm、固形分10.0%)(BMa)150部(セルロースナノファイバー15部)、及びイオン交換水4,815部をバットに入れた。ディスパーを使用して3,000rpmで1時間撹拌した後、POE-1 100部(セルロース類100部に対して、固形分50部)を添加した。3,000rpmで1時間撹拌した後、pHメーターの電極をセットし、3.5%希塩酸を少量ずつ添加した。pH5~6付近で増粘し、pH3以下になるまで希塩酸を添加してポリオレフィンを析出させ、セルロース類の濃度が1%である分散液を得た。得られた分散液をヌッチェで減圧ろ過した後、イオン交換水1Lで3回洗浄して、水ペーストCFWP-6を得た。得られた水ペーストCFWP-6の固形分は、26.1%であった。
【0056】
(実施例(工程1)7~8)
表2に示す組成としたこと以外は、前述の実施例6と同様にして、水ペーストCFWP-7~8を得た。
【0057】
【0058】
(実施例(工程1)9)
実施例2で得たCFWP-2を70℃の乾燥機に入れ、固形分94.3%となるまで乾燥した。得られたものを「CFWP-2*」とする。
【0059】
<工程1:水ペーストの調製(3)>
(比較例(工程1)1)
BMa500部(純分50部)、及びイオン交換水4,500部をバットに入れた。ディスパーを使用して3,000rpmで1時間撹拌し、セルロースナノファイバーの濃度が1%である分散液を得た。得られた分散液をヌッチェで減圧ろ過した後、イオン交換水1Lで3回洗浄して、水ペーストCFWP-9を得た。得られた水ペーストCFWP-9の固形分は13.5%であった。
【0060】
(比較例(工程1)2)
実施例8で得た水ペーストCFWP-8を80℃の乾燥機で24時間乾燥させて、乾燥物CFP-1を得た。得られた乾燥物CFP-1の不揮発分は、99.1%であった。
【0061】
<複合組成物の製造>
(実施例(工程2)1)
水ペーストCFWP-1 92.3部、及びポリエチレン(PE)樹脂(商品名「フロービーズHE3040」、住友精化社製)(HE3040)70.0部をラボプラストミル(東洋精機社製)に投入し、水蒸気が発生しなくなるまで160℃で溶融混錬した。その後、110℃の乾燥機で乾燥させて、樹脂複合組成物1を得た。熱加熱プレス成型機を使用して得られた複合組成物1をプレス成型し、2mmのダンベル試験片、及び5cm×10cm×2mmのシートを作製した。
【0062】
(実施例(工程2)2~9、比較例(工程2)1及び2、比較例3~6)
表3に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、複合組成物2~9、H1~4を得た。さらに、前述の実施例1と同様にして、ダンベル試験片及びシートを作製した。なお、複合組成物H5及びH6は、セルロース類を含有しない熱可塑性樹脂(PE、PP)そのものである。表3中、「セルロース類/熱可塑性樹脂(質量比)」における「熱可塑性樹脂」の質量は、変性ポリオレフィン(第1のポリオレフィン)を含む値である。表3中の略号の意味を以下に示す。
・MA04A:ポリプロピレン(PP)樹脂、商品名「ノバテックPP MA04A」、日本ポリプロ社製
【0063】
【0064】
<評価>
(応用例1~9、比較応用例1~6)
引張試験機(島津製作所製、万能試験機)を使用し、作製したダンベル試験片について、引張速度10mm/minの条件で引張試験を実施し、引張弾性率及び引張強度を測定した。結果を表4に示す。また、作製したシートを目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって凝集物の有無を評価した。結果を表4に示す。
◎:凝集物なし。
○:ほとんど凝集物なし。1mm以下の数個の小さいブツが5個未満であった。
△:大小の凝集物が見られ、その個数が5~10個であった。
×:大きな凝集物が多く見られ、その個数が10個超であった。
××:分散しておらず、そのままの形で残存したセルロース繊維がある。
【0065】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のセルロース樹脂複合組成物の製造方法によれば、自動車用部材;テレビ、電話、時計等の電化製品の筺体;携帯電話等の移動通信機器等の筺体;印刷機器、複写機、スポーツ用品等の筺体;等の構造材料として有用なセルロース樹脂複合組成物を容易に製造することができる。