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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008523
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】吸音パーティション
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110463
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA22
5D061BB21
(57)【要約】
【課題】見た目が良好で防音性能を向上させることが可能な吸音パーティションを提供する。
【解決手段】作業領域A1と外部領域A2との間を仕切る成形された吸音パーティション1は、通気性を有し作業領域A1に面する第一意匠面11aを有する第一繊維層10、通気性を有し外部領域A2に面する第二意匠面21aを有する第二繊維層20、及び、遮音機能を有し第一繊維層10と第二繊維層20との間にあるフィルム状遮音層30であって第一繊維層10と第二繊維層20の少なくとも一方と一体化されたフィルム状遮音層30を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業領域と外部領域との間を仕切る成形された吸音パーティションであって、
通気性を有し、前記作業領域に面する第一意匠面を有する第一繊維層と、
通気性を有し、前記外部領域に面する第二意匠面を有する第二繊維層と、
遮音機能を有し、前記第一繊維層と前記第二繊維層との間にあるフィルム状遮音層であって、前記第一繊維層と前記第二繊維層の少なくとも一方と一体化されたフィルム状遮音層と、を含む、吸音パーティション。
【請求項2】
前記第一繊維層は、前記第二繊維層よりも厚い、請求項1に記載の吸音パーティション。
【請求項3】
前記第一繊維層は、前記吸音パーティションにおける厚さ方向へウェブが繰り返し折り返された波形状を含めて前記厚さ方向へ繊維が配向している繊維構造を有する繊維構造層を含み、
前記フィルム状遮音層は、前記繊維構造層と一体化されている、請求項1又は請求項2に記載の吸音パーティション。
【請求項4】
前記繊維構造は、前記フィルム状遮音層に沿った第一積層方向へ前記ウェブが繰り返し重ねられた構造を有し、
前記第一繊維層と前記第二繊維層の一方は、前記厚さ方向へ第二ウェブが繰り返し折り返された波形状を含めて前記厚さ方向へ繊維が配向している第二繊維構造を有する第二繊維構造層を含み、
前記第二繊維構造は、前記第一積層方向とは異なる向きの第二積層方向へ前記第二ウェブが繰り返し重ねられた構造を有する、請求項3に記載の吸音パーティション。
【請求項5】
前記第一繊維層と前記第二繊維層と前記フィルム状遮音層を含む複数のパネル状部位を備え、
前記複数のパネル状部位は、前記作業領域の前側を遮る前側部位、前記作業領域の左側を遮る左側部位、及び、前記作業領域の右側を遮る右側部位を含む、請求項1又は請求項2に記載の吸音パーティション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業領域と外部領域との間を仕切る吸音パーティションに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス、公共施設、等には、卓上の作業領域と外部領域とを仕切るパーティションが設置されている。尚、パーティションは、パーテーションとも呼ばれる。
特許文献1には、上半身を少なくとも用いて所定作業をするユーザのうち上半身の前面の全部及び側面の少なくとも一部を覆う囲繞部を組立や分解が可能な複数のパーツで形成させるオンラインブースが開示されている。オンラインブースの外面は、プラスチックダンボールで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/002438号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オンラインブースを外部から見ると、プラスチックダンボールが目に入る。そこで、見た目と防音性能が良好な吸音パーティションがあると、利用価値が高まる。
【0005】
本発明は、見た目が良好で防音性能を向上させることが可能な吸音パーティションを開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸音パーティションは、作業領域と外部領域との間を仕切る成形された吸音パーティションであって、
通気性を有し、前記作業領域に面する第一意匠面を有する第一繊維層と、
通気性を有し、前記外部領域に面する第二意匠面を有する第二繊維層と、
遮音機能を有し、前記第一繊維層と前記第二繊維層との間にあるフィルム状遮音層であって、前記第一繊維層と前記第二繊維層の少なくとも一方と一体化されたフィルム状遮音層と、を含む、態様を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、見た目が良好で防音性能を向上させることが可能な吸音パーティションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】複数のパネル状部位を含む吸音パーティションの例を模式的に示す斜視図。
図2】パネル状部位の断面の例を模式的に示す図。
図3】繊維構造体の要部を例示する側面図。
図4図4Aは繊維構造体の要部を例示する斜視図、図4Bは折り返し部分が切除された繊維構造体の要部を例示する斜視図。
図5】繊維構造層及び第二繊維構造層のウェブ積層方向の例を模式的に示す図。
図6】作業領域側に第二繊維構造層を有するパネル状部位の断面の例を模式的に示す図。
図7】第二繊維層と同じ厚さの第一繊維層を有するパネル状部位の断面の例を模式的に示す図。
図8】複数のフィルム状遮音層を有するパネル状部位の断面の例を模式的に示す図。
図9】パネル状部位と脚を含む吸音パーティションの例を模式的に示す斜視図。
図10】吸音パーティションの製造方法の例を模式的に示す図。
図11】音圧レベルの測定結果を示す図。
図12】音圧レベルの測定結果を示す図。
図13】音圧レベルの測定結果を示す図。
図14】音圧レベルの測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~14に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0011】
[態様1]
図1,2等に例示するように、本技術の一態様に係る吸音パーティション1は、作業領域A1と外部領域A2との間を仕切る成形された吸音パーティション1であって、第一繊維層10、第二繊維層20、及び、前記第一繊維層10と前記第二繊維層20との間にあるフィルム状遮音層30を含む。前記第一繊維層10は、通気性を有し、前記作業領域A1に面する第一意匠面11aを有する。前記第二繊維層20は、通気性を有し、前記外部領域A2に面する第二意匠面21aを有する。前記フィルム状遮音層30は、前記第一繊維層10と前記第二繊維層20の少なくとも一方と一体化されている。
【0012】
作業領域A1には繊維質の第一意匠面11aが面し、外部領域A2には繊維質の第二意匠面21aが面しているので、本吸音パーティション1は見た目が良好である。また、作業領域A1から外部領域A2の方に向かう音波は通気性の有る第一繊維層10に入って減衰し、外部領域A2から作業領域A1の方に向かう音波は通気性のある第二繊維層20に入って減衰する。試験を行ったところ、第一繊維層10と第二繊維層20との間にある遮音層をフィルム状にして繊維層と一体化させると、予想に反して、遮音層をシート状にする場合と比べて防音性能が向上することが判った。従って、上記態様は、見た目が良好で防音性能を向上させることが可能な吸音パーティションを提供することができる。
【0013】
ここで、吸音パーティションの設置箇所は、卓上、床上、等、様々な箇所が考えられる。
第一繊維層は、第一意匠面の反対側の面がフィルム状遮音層と一体化した単層でもよいし、複数の層でもよい。例えば、第一繊維層は、第一意匠面を有する繊維質意匠層、及び、フィルム状遮音層と一体化した内部繊維層を含んでいてもよい。
第二繊維層は、第二意匠面の反対側の面がフィルム状遮音層と一体化した単層でもよいし、複数の層でもよい。例えば、第二繊維層は、第二意匠面を有する繊維質意匠層、及び、フィルム状遮音層と一体化した内部繊維層を含んでいてもよい。
第一繊維層が通気性を有することは、第一繊維層において一面側から他面側へ空気が流通可能であることを意味する。第二繊維層が通気性を有することは、第二繊維層において一面側から他面側へ空気が流通可能であることを意味する。
フィルムは、膜状の有機高分子材料を主要成分とする膜状材料であって厚さが250μm以下の膜状材料を意味する。フィルムは、異種の有機高分子材料層を複数有する積層フィルムでもよい。積層フィルムの全体の厚さは、250μm以下となる。フィルム状遮音層が汎用の熱可塑性樹脂フィルムである場合、通常、密度が0.9~1.4g/cm3である。そこで、膜状の有機高分子材料を主要成分とする膜状材料であって目付が350g/m2以下の膜状材料をフィルムとして扱うことにする。
フィルム状遮音層は第一繊維層と第二繊維層の少なくとも一方と一体化されていればよいが、フィルム状遮音層が第一繊維層と第二繊維層の一方のみと一体化されている場合でも、図8に例示するようにフィルム状遮音層の両面が繊維層と一体化されていることが好ましい。
本願における「第一」、「第二」、…は、類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0014】
[態様2]
前記第一繊維層10は、前記第二繊維層20よりも厚くてもよい。
試験を行ったところ、作業領域A1側の第一繊維層10が外部領域A2側の第二繊維層20よりも厚いと、作業領域A1側の第一繊維層10が外部領域A2側の第二繊維層20よりも薄い場合と比べて防音性能が向上することが判った。従って、上記態様は、防音性能をさらに向上させる吸音パーティションを提供することができる。
【0015】
[態様3]
図2,3等に例示するように、前記第一繊維層10は、前記吸音パーティション1における厚さ方向D3へウェブ17が繰り返し折り返された波形状を含めて前記厚さ方向D3へ繊維64が配向している繊維構造16を有する繊維構造層15を含んでいてもよい。前記フィルム状遮音層30は、前記繊維構造層15と一体化されていてもよい。
繊維構造層15の繊維構造16は、吸音パーティション1における厚さ方向D3へウェブ17が繰り返し折り返された波形状を含めて厚さ方向D3へ繊維64が配向しているので、第一繊維層10の密度が低くなっても厚さ方向D3における剛性を維持することができる。従って、上記態様は、吸音パーティション1の軽量化と厚み確保を両立させることができる。
【0016】
ここで、繊維構造の繊維が吸音パーティションの厚さ方向へ配向していることは、繊維の配列方向が厚さ方向へ比較的揃っていることを意味し、繊維を厚さ方向へ配向させるための折り返し部分を有することを含む。繊維構造を構成する繊維は屈曲していることがあるので、繊維構造層の繊維の配列方向は、繊維構造層の表面及び裏面に直交する方向からずれていることがある。繊維構造の繊維が厚さ方向へ配向していることは、真っ直ぐな繊維が厚さ方向へ平行に並んでいることを意味する訳ではない。
以上より、厚さ方向へ繊維が配向した繊維構造は、厚さ方向へウェブが繰り返し折り返された波形状の繊維構造、該波形状の繊維構造の折り返し部分を切除した繊維構造、波形状の繊維構造を厚さ方向の途中で二分割して得られる繊維構造、等が含まれる。
繊維構造を構成する繊維は、一種類の繊維でもよいし、主繊維と接着性繊維の組合せ等、二種類以上の繊維の組合せでもよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0017】
[態様4]
図5に例示するように、前記繊維構造16は、前記フィルム状遮音層30に沿った第一積層方向D11へ前記ウェブ17が繰り返し重ねられた構造を有していてもよい。図2,6等に例示するように、前記第一繊維層10と前記第二繊維層20の一方は、前記厚さ方向D3へ第二ウェブ27が繰り返し折り返された波形状を含めて前記厚さ方向D3へ繊維64が配向している第二繊維構造26を有する第二繊維構造層25を含んでいてもよい。図5に例示するように、前記第二繊維構造26は、前記第一積層方向D11とは異なる向きの第二積層方向D12へ前記第二ウェブ27が繰り返し重ねられた構造を有していてもよい。
上記態様は、吸音パーティション1が繊維構造層15とは別に第二繊維構造層25を含んでいるので、厚みをさらに確保することができる。ここで、厚さ方向D3へ繊維64が配向している繊維構造を有する繊維主体の吸音パーティション1は、フィルム状遮音層30に沿った方向において、ウェブの積層方向の方が該積層方向と直交する方向よりも曲がり易い。繊維構造層15とは異なる第二繊維構造層25の第二ウェブ27の積層方向(第二積層方向D12)が前述の繊維構造層15のウェブ17の積層方向(第一積層方向D11)とは異なるので、繊維構造層15の曲がり易い向きにおいて第二繊維構造層25により吸音パーティション1が補強される。従って、上記態様は、曲げに対する剛性を高めることができる。
【0018】
[態様5]
図1に例示するように、本吸音パーティション1は、前記第一繊維層10と前記第二繊維層20と前記フィルム状遮音層30を含む複数のパネル状部位70を備えていてもよい。前記複数のパネル状部位70は、前記作業領域A1の前側を遮る前側部位71、前記作業領域A1の左側を遮る左側部位72、及び、前記作業領域A1の右側を遮る右側部位73を含んでいてもよい。
上記態様は、複数のパネル状部位70に含まれる前側部位71と左側部位72と右側部位73が作業領域A1を囲んでいるので、防音性能をさらに向上させることができる。
【0019】
ここで、複数のパネル状部位は、分離可能なパネルの組合せでもよいし、分離不能な成形体でもよい。また、複数のパネル状部位は、作業領域の上側を遮る上側部位を含んでいてもよく、前側部位とは反対側の部分が開口していてもよい。
【0020】
(2)吸音パーティションの具体例:
図1は、複数のパネル状部位70を含む吸音パーティション1を模式的に例示している。図1中、FRONT、REAR、LEFT、RIGHT、UP、DOWNは、それぞれ、前、後、左、右、上、下を示す。符号D21は前後方向を示し、符号22は左右方向を示し、符号D23は上下方向を示している。図2は、パネル状部位70の断面を模式的に例示している。図2中、符号D3は、吸音パーティション1の厚さ方向を示している。吸音パーティション1の第一意匠面11aが平面でない場合、厚さ方向D3は、第一意匠面11aの向きに応じて異なる向きとなり、第一意匠面11aに直交する方向とする。
吸音パーティション1は、机の上、テーブルの上、床の上、等に設置され、ユーザーが作業を行う作業領域A1と、外部領域A2と、の間を仕切る。ここで、吸音パーティション1が載置される面を設置面90と呼ぶことにする。設置面90は、机の上面でもよいし、テーブルの上面でもよいし、床面でもよいし、他の上面でもよい。
【0021】
図1に示す吸音パーティション1は、ユーザーに対向する開口75を残して作業領域A1を囲むように組み合わされた複数のパネル状部位70を備えている。これらのパネル状部位70は、作業領域A1の前側を遮る前側部位71、作業領域A1の左側を遮る左側部位72、作業領域A1の右側を遮る右側部位73、及び、作業領域A1の上側を遮る上側部位74を含んでいる。従って、吸音パーティション1において、前側部位71とは反対側の部分が開口している。
【0022】
各パネル状部位70において、作業領域A1に第一意匠面11aが面し、外部領域A2に面する第二意匠面21aが面している。設置面90が水平面である場合、前側部位71、左側部位72、及び、右側部位73において、第一意匠面11a及び第二意匠面21aは、鉛直面となる。図1に示す上側部位74において、第一意匠面11a及び第二意匠面21aは、設置面90に沿った面となる。尚、上側部位74における第一意匠面11a及び第二意匠面21aは、設置面90から傾いた向きでもよい。例えば、上側部位74は、ユーザーに向かうにつれて上側となるように傾いていてもよい。設置面90が平面である場合、前側部位71の下部、左側部位72の下部、及び、右側部位73の下部は、設置面90に接する。これにより、作業領域A1から外部領域A2への音漏れ、及び、外部領域A2から作業領域A1の音の侵入が抑制される。
各パネル状部位70は、他のパネル状部位から分離可能であるため、パネル又はパネル部材といえる。尚、複数のパネル状部位70は、分離可能なパネルの組合せに限定されず、分離不能な成形体でもよい。
【0023】
図2に示すように、各パネル状部位70は、作業領域A1に面する第一意匠面11aを有する第一繊維層10、外部領域A2に面する第二意匠面21aを有する第二繊維層20、及び、第一繊維層10と第二繊維層20との間のフィルム状遮音層30を含んでいる。
【0024】
第一繊維層10及び第二繊維層20は、通気性を有する繊維質の層である。尚、通気性があるとは、通気度が0.05cc/cm2/sec以上(より好ましくは1cc/cm2/sec以上、さらに好ましくは3cc/cm2/sec以上)であることを意味する。通気度は、ASTMインターナショナルが発行しているASTM C522-03(2016)(吸音材の通気抵抗の標準試験方法)に規定された通気抵抗測定結果から計算されるcc/cm2/sec単位の数値とする。
【0025】
図2に示す第一繊維層10は、第一意匠面11aを有する繊維質の第一の意匠層11、及び、意匠層11とフィルム状遮音層30との間の第一の繊維構造層15を含んでいる。繊維構造層15は、パネル状部位70の成形により、意匠層11の裏面11bと一体化され、フィルム状遮音層30の作業領域側30aと一体化されている。意匠層11と繊維構造層15は共に通気性を有する繊維質の層であるため、第一繊維層10は全体として、通気性を有し、吸音機能を有する。繊維構造層15は、第一の内部繊維層といえ、詳しくは後述するが吸音パーティション1における厚さ方向D3へ繊維が配向している第一の繊維構造16を有している。
図2に示す第二繊維層20は、第二意匠面21aを有する繊維質の第二の意匠層21、及び、意匠層21とフィルム状遮音層30との間の第二繊維構造層25を含んでいる。第二繊維構造層25は、パネル状部位70の成形により、意匠層21の裏面21bと一体化され、フィルム状遮音層30の外部領域側30bと一体化されている。意匠層21と第二繊維構造層25は共に通気性を有する繊維質の層であるため、第二繊維層20は全体として、通気性を有し、吸音機能を有する。第二繊維構造層25は、第二の内部繊維層といえ、詳しくは後述するが吸音パーティション1における厚さ方向D3へ繊維が配向している第二繊維構造26を有している。
【0026】
以上より、作業領域A1には繊維質の第一意匠面11aが面し、外部領域A2には繊維質の第二意匠面21aが面する。従って、本具体例の吸音パーティション1は、見た目が良好である。
【0027】
フィルム状遮音層30は、第一繊維層10と第二繊維層20との間にある。フィルム状遮音層30は、第一繊維層10及び第二繊維層20よりも通気性が低い。これにより、フィルム状遮音層30は、遮音機能を有する。図2に示すフィルム状遮音層30は、開口を有していないため、通気性を有していない。これにより、フィルム状遮音層30は、良好な遮音機能を発揮する。尚、フィルム状遮音層30が通気性を有しないことは、作業領域側30aから外部領域側30bへ空気が流通せず、外部領域側30bから作業領域側30aへ空気が流通しないことを意味する。
図2に示すフィルム状遮音層30は、パネル状部位70の成形により、第一の繊維構造層15(第一繊維層10)と第二繊維構造層25(第二繊維層20)の両方と一体化されている。フィルム状遮音層30の少なくとも一部は、第一繊維層10の裏面10bに含浸していてもよい。また、フィルム状遮音層30の少なくとも一部は、第二繊維層20の裏面20bに含浸していてもよい。尚、フィルム状遮音層30は第一繊維層10と第二繊維層20の少なくとも一方と一体化されていればよいため、フィルム状遮音層30と第一繊維層10との間に別の層があってもよいし、フィルム状遮音層30と第二繊維層20との間に別の層があってもよい。フィルム状遮音層30が第一繊維層10と一体化されていない場合、フィルム状遮音層30の作業領域側30aは別の層としての繊維層と一体化されていることが好ましい。フィルム状遮音層30が第二繊維層20と一体化されていない場合、フィルム状遮音層30の外部領域側30bは別の層としての繊維層と一体化されていることが好ましい。
【0028】
吸音パーティション1は、第一繊維層10と第二繊維層20との間にシート状遮音層ではなくフィルム状遮音層30を備える特徴を有する。上述したように、フィルムは、膜状の有機高分子材料を主要成分とする膜状材料であり、厚さを基準にすると250μm以下の膜状材料であり、目付を基準にすると350g/m2以下の膜状材料である。シートは、通常、厚さが0.5~5mmの材料であり、フィルムよりも厚く目付が大きいことからフィルムよりも硬質である。言い換えると、フィルムは、シートよりも薄く目付が小さいことからシートよりも軟質である。
【0029】
試験前には、遮音層にシートを用い、シートの目付を大きくした方が防音性能が向上すると予想されていた。これは、シートの重量が大きいほど高い遮音性能を発揮すると考えられたためである。しかし、遮音層にフィルムを用いた場合でも、500~1000Hzの中音域や2000~4000Hzの高音域における音圧レベルについて遮音層にシートを用いた場合と同程度の測定結果が得られた。また、遮音層にシートを用いて官能試験を行ったところ、作業領域A1での話し声が外部領域A2ではっきり聞こえたり、外部領域A2での話し声が作業領域A1ではっきり聞こえたりすることが判った。これに対して、遮音層にフィルムを用いて官能試験を行ったところ、遮音層にシートを用いた場合と比べて、作業領域A1での話し声が外部領域A2で聞き取り難くなり、外部領域A2での話し声が作業領域A1で聞き取り難くなることが判った。従って、第一繊維層10と第二繊維層20との間にフィルム状遮音層30を備える吸音パーティション1は、予想に反して、第一繊維層10と第二繊維層20との間にシート状遮音層を備える吸音パーティションと比べて防音性能が向上することが判った。
【0030】
遮音層にフィルムを用いると防音性能が向上する理由は、推測であるが、以下によると考えられる。
上述したように、フィルム状遮音層30は、第一繊維層10と第二繊維層20の少なくとも一方と一体化されている。フィルム状遮音層30が軟質であるため、フィルム状遮音層30の作業領域側30aや外部領域側30bに音波が当たると、フィルム状遮音層30が大きく振動し、フィルム状遮音層30に一体化されている繊維層(10,20)も大きく振動すると考えられる。これにより、通気性の無いフィルム状遮音層30による遮音機能が発揮されることに加えて、フィルム状遮音層30とともに振動する繊維層(10,20)による吸音機能が発揮され、話し声が聞き取り難くなると推測される。一方、遮音層にシートを用いると、シートが硬質であるため、フィルムのような膜振動による吸音機能が発揮されず、シートの作業領域側や外部領域側に音波が当たった時に音が反響してしまうと考えられる。これにより、話し声がはっきり聞こえると推測される。
【0031】
第一の繊維構造層15及び第二繊維構造層25は、図3等に例示するように厚さ方向D3へ繊維64が配向した繊維構造62を有する繊維構造体60から形成され、一面側から他面側へ空気を流通させる通気性を有し、軽量であり、高い吸音性を有する。繊維構造62は、第一の繊維構造層15における第一の繊維構造16、及び、第二繊維構造層25における第二繊維構造26を総称している。図3,4Aに示す繊維構造体60は、厚さ方向D3へ繰り返しウェブM1が折り返されて積層された波形状の繊維構造62を有している。ウェブM1は、第一の繊維構造層15に含まれる第一のウェブ17、及び、第二繊維構造層25に含まれる第二ウェブ27を総称している。図3,4Aに示す繊維構造体60から形成される繊維構造層(15,25)は、厚さ方向D3へウェブM1が繰り返し折り返された波形状の繊維構造62を有する。尚、繊維構造体60における厚さ方向は、繊維構造体60における表面60a及び裏面60bと直交する方向とする。繊維構造層(15,25)における厚さ方向D3へウェブM1が折り返されるとは、折り返されたウェブM1が比較的厚さ方向D3へ向いていることを意味し、折り返されたウェブM1が厚さ方向D3からずれていることがある。
また、上記波形状の繊維構造62を有する繊維構造層(15,25)は、厚さ方向D3へ繊維64が配向した繊維構造62を有するともいえる。繊維構造62において繊維64が厚さ方向D3へ配向しているので、繊維構造層(15,25)の密度が低くなっても厚さ方向D3における剛性が維持される。
【0032】
繊維構造層(15,25)を形成するための繊維構造体60において、ウェブM1の折返し前の厚さは、例えば、5~10mm程度等、繊維構造体60の厚さの3~30%程度とすることができる。また、ウェブM1の折返し数(折り返した山の数)は例えば1~10回/20mm程度とすることができ、単位長さ当たりの折返し数が少ないほど低密度で成形しやすい一方、単位長さ当たりの折返し数を多くすると剛性が高まる。尚、ウェブM1の折返し数を山の数で定義しているので、ウェブM1の単位長さ当たりの枚数は折返し数の2倍になる。
【0033】
連続したウェブを繰り返し波形に折り返して積層した繊維構造体を製造する装置としては、ストルート(STRUTO)法など公知の製法を適用した各種の繊維構造体製造装置から適宜選択することができる。
上記繊維構造体製造装置としては、例えば、特表2008-538130号公報に記載のテキスタイルラップ装置や、歯車によって連続したウェブを繰り返し波形に折り返す装置が知られている。
【0034】
繊維構造体60は、各ひだM2の折り返し面が繊維構造体60の幅方向D2及び厚さ方向D3を通る面に合わせられ、繊維64が折り返し部分67を除いて厚さ方向D3へ配向している。図3に示す繊維構造体60の繊維64は、主繊維65と接着性繊維66を含む。接着性繊維66は、熱可塑性バインダーの例である。接着性繊維66の少なくとも一部は、溶融され、波形に配向した主繊維65同士を接着している。折り返し部分67が集合した表面60a及び裏面60bは、ひだM2(ウェブM1)の積層方向D1に沿って形成されている。ここで、繊維構造体60の幅方向はウェブM1の幅方向でもあり、ウェブの積層方向D1と、ウェブの幅方向D2と、繊維構造体の厚さ方向D3とは、互いに直交する。ここで、繊維64が厚さ方向D3へ配向していることは、繊維64の配列方向が表面60a及び裏面60bに対して直交する方向へ比較的揃っていることを意味し、繊維の折り返し部分67を有することを含む。
【0035】
繊維構造体60を形成するための繊維64には、合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、植物繊維、無機繊維、反毛繊維、これらの繊維のうち少なくとも一部の組合せ、等を用いることができ、芯鞘構造やサイドバイサイド構造といったコンジュゲート構造の繊維も用いることができる。
【0036】
主繊維65には、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)の繊維、熱可塑性樹脂に添加剤を添加した繊維、植物繊維、無機繊維、リサイクルされた反毛繊維、これらの繊維のうち少なくとも一部の組合せ、等を用いることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維といったポリエステル系繊維、ポリプロピレン(PP)繊維といったポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、レーヨン繊維、ガラス繊維、衣料反毛繊維、再生綿繊維、さらに添加剤を添加した材質の繊維、これらの繊維のうち少なくとも一部の組合せ、等を用いることができる。主繊維の繊維径は例えば5~60μm程度とすることができ、主繊維の太さは例えば10~15デシテックス程度とすることができ、主繊維の繊維長は例えば10~100mm程度とすることができる。主繊維が熱可塑性繊維である場合、この熱可塑性繊維の融点は、例えば180~260℃程度の高融点とすることができる。
【0037】
接着性繊維66には、熱可塑性樹脂の繊維、熱可塑性樹脂に添加剤を添加した繊維、これらの繊維の組合せ、等を用いることができ、PET繊維といったポリエステル系繊維、PP繊維やポリエチレン(PE)繊維といったポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、さらに添加剤を添加した材質の繊維、これらの繊維のうち少なくとも一部の組合せ、等を用いることができる。主繊維が熱可塑性繊維である場合、接着性繊維には主繊維よりも低い融点を持つ熱可塑性の繊維を用いるのが好ましい。例えば、接着性繊維に主繊維と相溶性のある繊維を用いると、主繊維と接着性繊維との接着性が良好になり、繊維構造層(15,25)に十分な形状保持性を付与することができる。接着性繊維の融点は、例えば100~220℃程度(好ましくは120℃程度以下)とすることができる。
また、繊維64は、主繊維65に使用可能な成分の芯部と接着性繊維66に使用可能な成分の鞘部とを含む芯鞘構造といったコンジュゲート構造を有していてもよい。コンジュゲート構造を有する繊維64において接着性繊維66に使用可能な成分の部分が表面に現れていると、当該部分が熱可塑性バインダーとして機能する。
【0038】
接着性繊維66の繊維径は例えば10~45μm程度とすることができ、接着性繊維66の太さは例えば2~4デシテックスとすることができ、接着性繊維66の繊維長は例えば10~100mm程度とすることができる。主繊維65と接着性繊維66の配合比は、主繊維を30~95重量%程度、接着性繊維を5~70重量%程度とすることができる。
尚、接着性繊維の代わりに繊維状でない熱可塑性バインダーを用いて繊維構造体60を形成することも可能である。
【0039】
繊維構造体60の目付は、300~1500g/m2が好ましく、500~1400g/m2がより好ましく、600~1300g/m2がさらに好ましい。繊維構造層(15,25)を形成するための繊維構造体60の厚さは、5~30mmが好ましく、10~20mmがより好ましい。繊維構造層(15,25)を形成するための繊維構造体60の密度は、0.006~0.15g/cm3が好ましく、0.01~0.08g/cm3がさらに好ましい。
【0040】
繊維構造層(15,25)を形成するための繊維構造体60は、厚さ方向D3へ繊維64が配向していればよい。そこで、図4Bに例示するように、図4Aに示す繊維構造体60の表面60a及び裏面60bの折り返し部分67を切除したような繊維構造体61を用いることも可能である。繊維構造体61の概念は、厚さ方向D3へ繊維64が配向した繊維構造62を有する繊維構造体60の概念に含まれる。また、波形状の繊維構造体を厚さ方向の途中で二分割して得られる繊維構造体を繊維構造体60として用いることも可能である。
以上より、第一の繊維構造層15は、厚さ方向D3へ第一のウェブ17が繰り返し折り返された波形状を含めて厚さ方向D3へ繊維64が配向している第一の繊維構造16を有する。第二繊維構造層25は、厚さ方向D3へ第二ウェブ27が繰り返し折り返された波形状を含めて厚さ方向D3へ繊維64が配向している第二繊維構造26を有する。
【0041】
第一の繊維構造層15は、1枚の繊維構造体60から形成されてもよいが、低密度で厚みを増すために厚さ方向D3へ複数重ねられた繊維構造体60から形成されてもよい。第二繊維構造層25も、1枚の繊維構造体60から形成されてもよいが、低密度で厚みを増すために厚さ方向D3へ複数重ねられた繊維構造体60から形成されてもよい。
【0042】
図2に示す意匠層11,21は、繊維構造体60から形成される繊維構造層(15,25)の表面を覆っている。繊維構造体60が図3,4Aに示すようにひだM2を有する場合、繊維構造層(15,25)の表面にひだM2同士の間の境界線68が現れ、吸音パーティション1に意匠層11,21が無ければ境界線68が目立つ。意匠層11,21は、境界線68を隠すことにより吸音パーティション1の美観を向上させる。また、繊維構造層(15,25)がリサイクルされた反毛繊維を含む場合、吸音パーティション1に意匠層11,21が無ければ反毛繊維が現れる。意匠層11,21は、反毛繊維を隠すことにより吸音パーティション1の美観を向上させる。
吸音パーティション1の美観をさらに向上させるため、意匠層11,21は、着色されてもよい。
【0043】
繊維質の意匠層11,21には、不織布、織物、編物、等を用いることができる。前記不織布は、短繊維不織布でもよいし、長繊維不織布でもよい。短繊維不織布には、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、等を用いることができる。長繊維不織布には、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、等を用いることができる。意匠層11,21を形成するための繊維には、熱可塑性樹脂といった合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、植物繊維、着色された植物繊維、これらの繊維のうち少なくとも一部の組合せ、等を用いることができ、PET繊維といったポリエステル系繊維、PP繊維といったポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、レーヨン繊維、木綿、さらに着色剤といった添加剤を添加した材質の繊維、これらの繊維のうち少なくとも一部の組合せ、等を用いることができる。
尚、意匠層11,21と繊維構造層(15,25)との間には、繊維層(10,20)の通気性を確保しながら意匠層11,21を繊維構造層(15,25)に接着するための接着層があってもよい。
【0044】
意匠層11,21の目付は、100~500g/m2が好ましく、200~400g/m2がより好ましく、250~350g/m2がさらに好ましい。意匠層11,21の厚さは、0.3~3mmが好ましく、0.5~2mmがより好ましい。
【0045】
図2に示すフィルム状遮音層30には、熱可塑性樹脂といった合成樹脂を少なくとも含む材料を用いることができる。フィルム状遮音層30のための熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む。)には、ポリエチレン(PE)樹脂やポリプロピレン(PP)樹脂といったポリオレフィン樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、エチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂、これらの樹脂のいずれかにエラストマーを添加した改質樹脂、これらの樹脂のいずれかに着色剤といった添加剤を添加した材料、これらのうち少なくとも一部の組合せ、等を用いることができる。フィルム状遮音層30は、前述の材料の単層でもよいし、前述の材料の層を複数組み合わせた積層フィルムでもよい。
フィルム状遮音層30が熱可塑性を示す場合、フィルム状遮音層30のMFRは、例えば、0.1~30g/10min程度、より好ましくは0.3~20g/10min程度とすることができる。ここで、MFRは、JIS K7210-1:2014(プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方-第1部:標準的試験方法)に規定されたメルトマスフローレイトであるものとする。フィルム状遮音層30が熱可塑性を示す場合、フィルム状遮音層30の表面には接着層が無くてもよい。
【0046】
フィルム状遮音層30の厚さは、10~250μmが好ましく、20~230μmがより好ましく、30~200μmがさらに好ましい。当該厚さは、吸音パーティション1の断面を顕微鏡で見てフィルム状遮音層30の厚さを複数箇所(例えば10箇所)測定したときの測定値の相加平均値とする。フィルム状遮音層30の厚さが前述の下限以上であると、低通気性による好ましい遮音機能がフィルム状遮音層30に付与される。フィルム状遮音層30の厚さが前述の下限以下であると、フィルム状遮音層30に一体化されている繊維層がフィルム状遮音層30とともに振動することにより、ユーザーにとっては周囲の騒音が緩和され、周囲の人にとってはユーザーの声が気にならなくなる。
【0047】
フィルム状遮音層30の目付は、10~350g/m2が好ましく、20~320g/m2がより好ましく、30~280g/m2がさらに好ましい。フィルム状遮音層30の目付が前述の下限以上であると、低通気性による好ましい遮音機能がフィルム状遮音層30に付与される。フィルム状遮音層30の目付が前述の下限以下であると、フィルム状遮音層30に一体化されている繊維層がフィルム状遮音層30とともに振動することによる話し声の聞き取り難さが吸音パーティション1に付与される。
【0048】
成形された吸音パーティション1において、図2に示すように、フィルム状遮音層30の厚さT3は、第一繊維層10の厚さT1よりも薄く、第二繊維層20の厚さT2よりも薄い。尚、図2に示すフィルム状遮音層30は作業領域A1側の第一繊維層10と外部領域A2側の第二繊維層20の両方と一体化されているので、吸音パーティション1全体の厚さT0は、T1+T2+T3である。
第一繊維層10の厚さT1は、第二繊維層20の厚さT2以下でもよいが、図2に示すように厚さT2よりも厚い方が好ましい。試験を行ったところ、作業領域A1側の第一繊維層10が外部領域A2側の第二繊維層20よりも厚いと、第一繊維層10が第二繊維層20よりも薄い場合と比べて防音性能が向上することが判った。その理由は、推測であるが、以下によると考えられる。
【0049】
T1<T2である場合、作業領域A1側においてフィルム状遮音層30の遮音機能が第一繊維層10の吸音機能よりも大きく現れ、作業領域A1側で発生した音が作業領域A1内で反響すると考えられる。T1>T2である場合、作業領域A1側の吸音機能が上がるため、吸音パーティション1内に侵入した音の反響を効率よく抑えることができると考えられる。
以上の理由により、T1>T2である場合にT1<T2である場合と比べて防音性能が向上すると推測される。
【0050】
図3,4A,4Bで示したように積層方向D1へウェブM1が繰り返し重ねられた繊維構造62を繊維構造層(15,25)が有する場合、繊維構造層(15,25)には比較的曲がり易い向きと比較的曲がり難い向きとが生じる。繊維構造層(15,25)の積層方向D1と厚さ方向D3に沿った断面(図3に示す断面に相当)においては、ウェブM1が該ウェブM1の厚さ方向である積層方向D1において伸縮し易く、表面60aが膨らんだり凹んだりする向きに比較的曲がり易い。繊維構造層(15,25)の幅方向D2と厚さ方向D3に沿った断面においては、面60aが膨らんだり凹んだりする向きに比較的曲がり難い。そこで、図5に例示するように、繊維構造層15と第二繊維構造層25とで積層方向D1の向きが異なると、繊維構造層15の曲がり易い向きにおいて第二繊維構造層25により吸音パーティション1が補強される。
【0051】
図5は、第一の繊維構造層15及び第二繊維構造層25のウェブ積層方向を模式的に例示している。
図5に示す繊維構造層15は、フィルム状遮音層30に沿った第一積層方向D11へウェブ17が繰り返し重ねられた第一の繊維構造16を有し、図2に示すようにフィルム状遮音層30の作業領域側30aと一体化されている。図5に示す第二繊維構造層25は、フィルム状遮音層30に沿った第二積層方向D12へ第二ウェブ27が繰り返し重ねられた第二繊維構造26を有し、図2に示すようにフィルム状遮音層30の外部領域側30bと一体化されている。第二積層方向D12は、第一積層方向D11とは異なる向きである。これにより、吸音パーティション1は、曲げに対する剛性が高い。
【0052】
ここで、第一積層方向D11と第二積層方向D12とのなす角度をθとする。図5に示す角度θは、90°であるが、角度θは90°未満でもよい。繊維構造層15の曲がり易い向きにおいて吸音パーティション1を効果的に補強する点から、角度θは、45°以上が好ましく、60°以上がより好ましい。
【0053】
吸音パーティション1を構成する複数のパネル状部位70は、ねじといった締結部材、接着、等により組み合わされる。図1に示す吸音パーティション1は、前側部位71の左縁部に左側部位72の後縁部が固定され、前側部位71の右縁部に右側部位73の後縁部が固定され、前側部位71と左側部位72と右側部位73の上縁部に上側部位74の縁部が固定されている。
【0054】
複数のパネル状部位70の少なくとも一部は、図6~8に例示するパネル状部位70A~70Cでもよい。パネル状部位70A~70Cも、第一繊維層10と第二繊維層20とフィルム状遮音層30を含んでいる。パネル状部位70A~70Cの概念は、パネル状部位70の概念に含まれる。
【0055】
図6は、作業領域A1側に第二繊維構造層25を有するパネル状部位70Aの断面を模式的に例示している。
成形されたパネル状部位70Aの第一繊維層10は、第一意匠面11aを有する繊維質の第一の意匠層11、フィルム状遮音層30の作業領域側30aと一体化された繊維構造層15、及び、意匠層11と繊維構造層15との間の第二繊維構造層25を含んでいる。第二繊維構造層25は、パネル状部位70Aの成形により、意匠層11の裏面11bと一体化され、繊維構造層15の作業領域A1側と一体化されている。第一繊維層10は全体として、繊維質であり、通気性を有し、吸音機能を有する。図5に示すように繊維構造層15が第一積層方向D11へウェブ17が繰り返し重ねられた繊維構造16を有していてもよく、第二繊維構造層25が第一積層方向D11とは異なる第二積層方向D12へ第二ウェブ27が繰り返し重ねられた第二繊維構造26を有していてもよい。
【0056】
成形されたパネル状部位70Aの第二繊維層20は、内部繊維層を有しておらず、第二意匠面21aを有する繊維質の第二の意匠層21である。意匠層21の裏面21bは、フィルム状遮音層30の外部領域側30bと一体化されている。第一繊維層10の厚さT1は、第二繊維層20の厚さT2よりも厚い。これにより、パネル状部位70Aは、高い防音性能を有する。
成形されたパネル状部位70Aのフィルム状遮音層30は、繊維構造層15と意匠層21との間にあり、繊維構造層15と意匠層21の両方と一体化されている。フィルム状遮音層30の厚さT3は、繊維層(10,20)の厚さT1,T2よりも薄い。パネル状部位70A全体の厚さT0は、T1+T2+T3である。
図示していないが、パネル状部位70Aから第二繊維構造層25を除いた構造、言い換えると、パネル状部位70Aにおいて繊維構造層(15,25)を単層に置き換えた構造も考えられる。この構造を有するパネル状部位は、作業領域A1側から外部領域A2側の順に、第一の意匠層11、繊維構造層15、フィルム状遮音層30、及び、第二の意匠層21を含んでいる。従って、第一繊維層10は、意匠層11、及び、意匠層11とフィルム状遮音層30との間の繊維構造層15を含んでいる。第一繊維層10の厚さT1は、第二繊維層20の厚さT2よりも厚い。これにより、前述のパネル状部位も、高い防音性能を有する。
【0057】
図7は、第二繊維層20と同じ厚さの第一繊維層10を有するパネル状部位70Bの断面を模式的に例示している。
成形されたパネル状部位70Bの第一繊維層10は、意匠層11と繊維構造層15を含んでいる。成形されたパネル状部位70Bの第二繊維層20は、意匠層21と第二繊維構造層25を含んでいる。第二繊維層20の厚さT2は、第一繊維層10の厚さT1と同じである。成形されたパネル状部位70Bのフィルム状遮音層30は、繊維構造層15と第二繊維構造層25との間にあり、繊維構造層15と第二繊維構造層25の両方と一体化されている。パネル状部位70B全体の厚さT0は、T1+T2+T3である。
【0058】
T1=T2であるものの、パネル状部位70Bは、フィルム状遮音層30を備えているので、第一繊維層10と第二繊維層20との間にシート状遮音層を備える場合と比べて高い防音性能を有する。
【0059】
図8は、複数のフィルム状遮音層30を有するパネル状部位70Cの断面を模式的に例示している。フィルム状遮音層31,32の概念は、フィルム状遮音層30の概念に含まれる。
パネル状部位70Cは、作業領域A1側から外部領域A2側の順に、第一繊維層10、第一のフィルム状遮音層31、繊維層40、第二のフィルム状遮音層32、及び、第二繊維層20を含んでいる。第一繊維層10は、第一意匠面11aを有する繊維質の意匠層11、及び、意匠層11とフィルム状遮音層31との間の繊維構造層15を含んでいる。繊維構造層15は、パネル状部位70Cの成形により、意匠層11の裏面11bと一体化され、フィルム状遮音層31の作業領域側と一体化されている。フィルム状遮音層31は、第一繊維層10の裏面10bと一体化され、第二繊維層20から離れ、繊維層40と一体化されている。繊維層40は、パネル状部位70Cの成形により、フィルム状遮音層31の外部領域側と一体化され、フィルム状遮音層32の作業領域側と一体化されている。繊維層40は、厚さ方向D3へ繊維が配向している繊維構造を有していてもよい。フィルム状遮音層32は、第二繊維層20の裏面20bと一体化され、第一繊維層10から離れ、繊維層40と一体化されている。第二繊維層20は、第二意匠面21aを有する繊維質の意匠層21、及び、意匠層21とフィルム状遮音層32との間の第二繊維構造層25を含んでいる。第二繊維構造層25は、パネル状部位70Cの成形により、意匠層21の裏面21bと一体化され、フィルム状遮音層32の外部領域側と一体化されている。
【0060】
フィルム状遮音層31,32の厚さT3は、第一繊維層10の厚さT1よりも薄く、第二繊維層20の厚さT2よりも薄く、繊維層40の厚さT4よりも薄い。第一繊維層10の厚さT1は、第二繊維層20の厚さT2よりも厚い。パネル状部位70C全体の厚さT0は、T1+T2+2×T3+T4である。
パネル状部位70Cは、第一繊維層10と一体化されたフィルム状遮音層31、及び、第二繊維層20と一体化されたフィルム状遮音層32を備えているので、第一繊維層10と第二繊維層20との間にシート状遮音層を備える場合と比べて高い防音性能を有する。また、第一繊維層10が第二繊維層20よりも厚いので、パネル状部位70Cは高い防音性能を有する。
【0061】
図9に例示するように、吸音パーティション1Aに含まれるパネル状部位70Dは、1枚でもよい。図9は、パネル状部位70Dと脚80を含む吸音パーティション1Aを模式的に例示している。パネル状部位70Dの概念はパネル状部位70の概念に含まれ、吸音パーティション1Aの概念は吸音パーティション1の概念に含まれる。
パネル状部位70と脚80とは、ねじといった締結部材、接着、等により組み合わされる。
【0062】
パネル状部位70Dは、第一繊維層10、第二繊維層20、及び、フィルム状遮音層30を含んでいる。脚80は、第一意匠面11aを作業領域A1に向け第二意匠面21aを外部領域A2に向けてパネル状部位70Dを立たせている。図9に示すパネル状部位70Dの配置は、図1に示す前側部位71の配置に近い。むろん、パネル状部位70Dの配置は、図1に示す左側部位72の配置に近くてもよいし、図1に示す右側部位73の配置に近くてもよい。むろん、作業領域A1を囲むように複数の吸音パーティション1Aが設置面90に載置されてもよい。設置面90が水平面である場合、第一意匠面11a及び第二意匠面21aは、鉛直面となる。設置面90が平面である場合、パネル状部位70Dの下部は、設置面90に接する。これにより、作業領域A1から外部領域A2への音漏れ、及び、外部領域A2から作業領域A1の音の侵入が少なくなる。
吸音パーティション1Aも、第一繊維層10と第二繊維層20の少なくとも一方と一体化されたフィルム状遮音層30を含んでいるので、第一繊維層10と第二繊維層20との間にシート状遮音層を備える場合と比べて高い防音性能を有する。
【0063】
(3)吸音パーティションの製造方法の具体例:
図10は、吸音パーティション1を製造する方法を模式的に例示している。図10に示す製造方法は、セット工程ST1、及び、該セット工程ST1の後に行われるプレス成形工程ST2を含んでいる。
図10には、図2に示すパネル状部位70となる積層材料50のプレス成形に好適なプレス成形機200が示されている。プレス成形機200には、プレス成形型210を構成する上型212及び下型214が近接及び離隔可能に設けられている。図10において、上型212は第二意匠面21aに合わせられた型面を有する金型であり、下型214は第一意匠面11aに合わせられた型面を有する金型である。むろん、上型212が第一意匠面11aに合わせられた型面を有して下型214が第二意匠面21aに合わせられた型面を有していてもよい。
【0064】
まず、積層材料50をプレス成形型210にセットするセット工程ST1が行われる。図10に示す積層材料50では、第一意匠面11aから第二意匠面21aに向かう順に、意匠層11となる第一の意匠材14、繊維構造層15となる繊維構造体60、フィルム状遮音層30となるフィルム34、第二繊維構造層25となる繊維構造体60、及び、意匠層21となる第二の意匠材24が重ねられている。尚、図6に示すパネル状部位70Aを形成する場合、意匠材14、第二繊維構造層25となる繊維構造体60、繊維構造層15となる繊維構造体60、フィルム34、及び、意匠材24が順に重ねられた積層材料が用いられる。図8に示すパネル状部位70Cを形成する場合、意匠材14、繊維構造層15となる繊維構造体60、フィルム状遮音層31となるフィルム34、繊維層40となる繊維構造体60、フィルム状遮音層32となるフィルム34、第二繊維構造層25となる繊維構造体60、及び、意匠材24が順に重ねられた積層材料が用いられる。
【0065】
意匠材14,24は、不織布等といった繊維質の材料であり、通気性を有する。積層材料50が加熱されてプレス成形される場合、意匠材14,24が熱可塑性樹脂といった熱可塑性バインダーを含んでいると意匠層11,21が他の層に接着しやすいので、好ましい。図3等に示すように、繊維構造体60は、熱可塑性バインダーを含む繊維質の材料であり、厚さ方向D3へ繊維64が配向した繊維構造62を有している。フィルム34は、樹脂フィルム等といった膜状材料であり、通気性を有していない。積層材料50が加熱されてプレス成形される場合、フィルム34が熱可塑性樹脂といった熱可塑性バインダーを含んでいるとフィルム状遮音層30が繊維層(10,20)に接着しやすいので、好ましい。
積層材料50の加熱は、積層材料50をプレス成形型210にセットする前でもよいし、プレス成形型210にヒーターが設けられている場合には積層材料50をプレス成形型210にセットした後でもよい。積層材料50の加熱温度は、積層材料50に含まれる熱可塑性バインダーの融点よりも高い温度であり、例えば、110~200℃程度とすることができる。
【0066】
セット工程ST1の後、下型214と上型212とを近接させることにより積層材料50を厚さ方向D3においてプレス成形するプレス成形工程ST2が行われる。溶融したフィルム34は、両側に形成される繊維構造層(15,25)の繊維64に含浸する。意匠材14からは意匠層11が形成され、意匠材14側の繊維構造体60からは繊維構造層15が形成され、フィルム34からはフィルム状遮音層30が形成され、意匠材24側の繊維構造体60からは第二繊維構造層25が形成され、意匠材24からは意匠層21が形成される。フィルム状遮音層30は繊維構造層15と第二繊維構造層25の両方と一体化され、繊維構造層15は意匠層11と一体化され、第二繊維構造層25は意匠層21と一体化される。その結果、積層材料50からパネル状部位70が成形され、熱可塑性バインダーが固化するとパネル状部位70の形状が保持される。成形されたパネル状部位70は、必要に応じて製品形状に裁断される。パネル状部位70の裁断は、不図示の裁断機で行われてもよい。裁断機には、裁断刃を備える裁断機、ウォータージェットによる裁断を行う裁断機、等を用いることができる。また、パネル状部位70の裁断は、カッターを用いた手裁断等によっても行うことができる。
図6~8に示すパネル状部位70A~70Cも、同様にして形成される。
【0067】
吸音パーティション1が複数のパネル状部位70を備える場合、必要数のパネル状部位70が集められることにより製品としての吸音パーティション1となる。例えば、図1に示す例では、前側部位71、左側部位72、右側部位73、及び、上側部位74が集められることにより製品としての吸音パーティション1となる。むろん、複数のパネル状部位70を所要形状に組み合わせることにより吸音パーティション1が製造されてもよい。
また、図9に示す例では、パネル状部位70Dと脚80が集められることにより製品としての吸音パーティション1Aとなる。むろん、パネル状部位70Dに脚80を固定することにより吸音パーティション1Aが製造されてもよい。
【0068】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、吸音パーティションは、繊維がランダムに配向した繊維構造等といった、繊維の配向が厚さ方向D3とは異なる繊維構造を有する内部繊維層を含んでいてもよい。内部繊維層の繊維構造は厚さ方向D3へ繊維64が配向した構造が好ましいものの、繊維構造層(15,25)の代わりに繊維がランダムに配向した繊維構造等といった、繊維の配向が厚さ方向D3とは異なる繊維構造を有する内部繊維層が採用されてもよい。
【0069】
(5)実施例:
以下、実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0070】
[実施例1,2及び比較例1~3のサンプル]
意匠材14,24には、低融点PET繊維を30重量%含むPET繊維製のニードルパンチ不織布(目付300g/m2)を使用した。繊維構造体60には、主繊維65としてPET繊維と反毛繊維を含み接着性繊維66として低融点PET繊維を30重量%含むウェブM1が厚さ方向D3へ繰り返し折り返された波形状の繊維構造62を有するフェルト(目付800g/m2、厚さ約30mm)を使用した。実施例1のフィルム34には、厚さ100μmの低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂フィルム(目付約90g/m2)を用いた。実施例2のフィルム34には、PE樹脂層、PA樹脂層、及び、PE樹脂層がこの順に重ねられた3層フィルム(目付50g/m2、厚さ50μm)を用いた。比較例2のシートには、目付1700g/m2の樹脂層(厚さ1mm)の両面に目付80g/m2の接着層を有する積層シートを用いた。比較例3のシートには、目付3400g/m2の樹脂層(厚さ2mm)の両面に目付80g/m2の接着層を有する積層シートを用いた。
【0071】
実施例1,2については、意匠材14、繊維構造体60、フィルム34、繊維構造体60、及び、意匠材24をこの順に重ね、図10に示す製造方法に従って、図7に示すようなパネル状部位70Bのサンプル(厚さ20mm)を作製した。第一繊維層10の厚さT1は、第二繊維層20の厚さT2と同じである。比較例1については、意匠材14、繊維構造体60、繊維構造体60、及び、意匠材24をこの順に重ね、実施例1,2と同様の製造方法に従って厚さ20mmのパネル状部位サンプルを作製した。比較例2,3については、意匠材14、繊維構造体60、シート、繊維構造体60、及び、意匠材24をこの順に重ね、実施例1,2と同様の製造方法に従って厚さ20mmのパネル状部位サンプルを作製した。
実施例1,2及び比較例1~3のそれぞれについて、図1に示すような吸音パーティションのサンプルを複数のパネル状部位サンプルから作製した。前側部位71は、幅450mm、及び、高さ250mmである。上側部位74は、幅450mm、及び、奥行き250mmである。左側部位72及び右側部位73は、奥行き350mm、及び、高さ250mmである。
【0072】
[防音性能の評価方法]
70dB相当のホワイトノイズを出力するスピーカーを作業領域A1に配置し、外部領域A2において前側部位71から2m離れた箇所の音圧レベルを測定した。この音圧レベルを「外方向音圧レベル」と呼ぶことにする。また、作業領域A1の話し声を外部領域A2において前側部位71から2m離れた箇所で聞く官能試験を行った。この試験を「音漏れ評価試験」と呼ぶことにする。さらに、70dB相当のホワイトノイズを出力するスピーカーを外部領域A2において前側部位71から2m離れた箇所に配置し、作業領域A1の音圧レベルを測定した。この音圧レベルを「内方向音圧レベル」と呼ぶことにする。加えて、外部領域A2において前側部位71から2m離れた箇所の話し声を作業領域A1で聞く官能試験を行った。この試験を「音侵入評価試験」と呼ぶことにする。
【0073】
[実施例1,2及び比較例1~3の防音性能評価」
図11は、200~6300Hzの1/3オクターブバンド毎の中心周波数(単位:Hz)に対する外方向音圧レベル(単位:dB)の測定結果を示している。図12は、200~6300Hzの1/3オクターブバンド毎の中心周波数(単位:Hz)に対する内方向音圧レベル(単位:dB)の測定結果を示している。表1は、音漏れ評価試験及び音侵入評価試験の評価結果を示している。
【表1】
【0074】
図11に示すように、実施例1,2及び比較例2,3は、比較例1よりも特に2000~4000Hzの高音域の外方向音圧レベルが低い傾向にある。実施例1,2の外方向音圧レベルは、比較例2,3の外方向音圧レベルとほぼ同じ傾向である。ただ、表1に示すように、比較例2,3では作業領域A1での話し声が外部領域A2ではっきり聞こえる一方、実施例1,2では作業領域A1での話し声が外部領域A2で聞き取り難い。
図12に示すように、実施例1,2及び比較例2,3は、比較例1よりも特に2000~4000Hzの高音域の内方向音圧レベルが低い傾向にある。実施例1,2の内方向音圧レベルは、比較例2,3の内方向音圧レベルとほぼ同じ傾向である。ただ、表1に示すように、比較例2,3では外部領域A2での話し声が作業領域A1ではっきり聞こえる一方、実施例1,2では外部領域A2での話し声が作業領域A1で聞き取り難い。
以上より、フィルム状遮音層30を備えるパネル状部位サンプルは、シート状遮音層を備えるパネル状部位サンプルよりも防音性能が高い。従って、第一繊維層10と第二繊維層20との間にある遮音層をフィルム状にして繊維層と一体化させると、予想に反して、遮音層をシート状にする場合と比べて防音性能が向上することが判った。
【0075】
[実施例3,4及び比較例4のサンプル]
意匠材14,24には、実施例1と同じ材質のニードルパンチ不織布(目付300g/m2)を使用した。実施例4及び比較例4の繊維構造体60には、実施例1と同じ材質で波形状の繊維構造62を有するフェルト(目付800g/m2、厚さ約30mm)を使用した。実施例3の繊維構造体60には、実施例1と同じ材質で波形状の繊維構造62を有するフェルトであるが目付を1200g/m2と600g/m2とに変えたフェルトを使用した。実施例3,4のフィルム34には、実施例1と同じ材質のLDPE樹脂フィルム(厚さ100μm、目付約90g/m2)を用いた。比較例4のシートには、目付1700g/m2の樹脂層(厚さ1mm)の両面に目付30g/m2の接着層を有する積層シートを用いた。
【0076】
実施例3については、意匠材14、目付1200g/m2の繊維構造体60、フィルム34、目付600g/m2繊維構造体60、及び、意匠材24をこの順に重ね、図10に示す製造方法に従って、図2に示すようなパネル状部位70のサンプル(厚さ20mm、T1>T2)を作製した。実施例4については、意匠材14、目付800g/m2の繊維構造体60、目付800g/m2の繊維構造体60、フィルム34、及び、意匠材24をこの順に重ね、図10に示す製造方法に従って、図6に示すようなパネル状部位70Aのサンプル(厚さ20mm、T1>>T2)を作製した。尚、実施例4のパネル状部位サンプルは実施例3のパネル状部位サンプルよりもフィルム状遮音層30が外部領域A2の方に寄っているので、厚さT1,T2の差を「>>」で表している。比較例4については、意匠材14、目付800g/m2の繊維構造体60、目付800g/m2の繊維構造体60、シート、及び、意匠材24をこの順に重ね、実施例4と同様の製造方法に従って厚さ20mmのパネル状部位サンプルを作製した。
実施例3,4及び比較例4のそれぞれについて、図1に示すような吸音パーティションのサンプルを複数のパネル状部位サンプルから作製した。前側部位71は、幅450mm、及び、高さ250mmである。上側部位74は、幅450mm、及び、奥行き250mmである。左側部位72及び右側部位73は、奥行き350mm、及び、高さ250mmである。
【0077】
[実施例1,3,4の防音性能評価」
図13は、200~6300Hzの1/3オクターブバンド毎の中心周波数(単位:Hz)に対する外方向音圧レベル(単位:dB)の測定結果を示している。表2は、音漏れ評価試験及び音侵入評価試験の評価結果を示している。
【表2】
【0078】
図13に示すように、実施例3,4は実施例1よりも特に2000~4000Hzの高音域の外方向音圧レベルが低い傾向にある。従って、パネル状部位サンプルの中でフィルム状遮音層30が外部領域寄りに存在すると防音性能が向上する傾向にある。尚、内方向音圧レベルについては、実施例1,3,4でほぼ同じ傾向であった。表2に示すように、実施例1,3,4では、いずれも外部領域A2での話し声が作業領域A1で聞き取り難い。
以上より、第一繊維層10が第二繊維層20よりも厚いと、防音性能が向上することが判った。
【0079】
[実施例4及び比較例4の防音性能評価」
図14は、200~6300Hzの1/3オクターブバンド毎の中心周波数(単位:Hz)に対する外方向音圧レベル(単位:dB)の測定結果を示している。表3は、音漏れ評価試験及び音侵入評価試験の評価結果を示している。
【表3】
【0080】
図14に示すように、実施例4の外方向音圧レベルは、比較例4の外方向音圧レベルとほぼ同じ傾向である。ただ、表3に示すように、比較例4では作業領域A1での話し声が外部領域A2ではっきり聞こえる一方、実施例4では作業領域A1での話し声が外部領域A2で聞き取り難い。
図示していないが、実施例4の内方向音圧レベルは、比較例4の内方向音圧レベルとほぼ同じ傾向である。ただ、表3に示すように、比較例4では外部領域A2での話し声が作業領域A1ではっきり聞こえる一方、実施例4では外部領域A2での話し声が作業領域A1で聞き取り難い。
以上より、フィルム状遮音層30を備えるパネル状部位サンプルは、シート状遮音層を備えるパネル状部位サンプルよりも防音性能が高い。ここでも、第一繊維層10と第二繊維層20との間にある遮音層をフィルム状にして繊維層と一体化させると、遮音層をシート状にする場合と比べて防音性能が向上することが判った。
【0081】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、見た目が良好で防音性能を向上させることが可能な吸音パーティション等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1,1A…吸音パーティション、
10…第一繊維層、10b…裏面、
11…意匠層、11a…第一意匠面、11b…裏面、14…意匠材、
15…繊維構造層、16…繊維構造、17…ウェブ、
20…第二繊維層、20b…裏面、
21…意匠層、21a…第二意匠面、21b…裏面、24…意匠材、
25…第二繊維構造層、26…第二繊維構造、27…第二ウェブ、
30,31,32…フィルム状遮音層、30a…作業領域側、30b…外部領域側、
34…フィルム、
40…繊維層、
50…積層材料、
60,61…繊維構造体、60a…表面、60b…裏面、62…繊維構造、
64…繊維、65…主繊維、66…接着性繊維(熱可塑性バインダーの例)、
67…折り返し部分、68…境界線、
70,70A,70B,70C,70D…パネル状部位、
71…前側部位、72…左側部位、73…右側部位、74…上側部位、75…開口、
90…設置面、
A1…作業領域、A2…外部領域、
D1…積層方向、D2…幅方向、D3…厚さ方向、
D11…第一積層方向、D12…第二積層方向、
M1…ウェブ、M2…ひだ、
T0,T1,T2,T3,T4…厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14