IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

特開2024-85232クライオポンプおよびクライオポンプ再生方法
<>
  • 特開-クライオポンプおよびクライオポンプ再生方法 図1
  • 特開-クライオポンプおよびクライオポンプ再生方法 図2
  • 特開-クライオポンプおよびクライオポンプ再生方法 図3
  • 特開-クライオポンプおよびクライオポンプ再生方法 図4
  • 特開-クライオポンプおよびクライオポンプ再生方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085232
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】クライオポンプおよびクライオポンプ再生方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/08 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
F04B37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199650
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 走
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA26
3H076AA27
3H076BB11
3H076BB28
3H076BB35
3H076BB43
3H076CC41
3H076CC54
(57)【要約】
【課題】クライオポンプの再生中にクライオポンプから排出される危険ガス濃度を抑制する。
【解決手段】クライオポンプ再生方法は、冷却運転の最中にクライオポンプ10に希釈ガスを供給することと、クライオポンプ10内の極低温面に希釈ガスを蓄積することと、極低温面に捕捉されている他のガスを希釈ガスとともに再気化することと、再気化されたガスおよび希釈ガスの混合ガスをクライオポンプ10から排出することと、を備える。希釈ガスは、パージガスであってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオポンプ容器と、
前記クライオポンプ容器内に配置されるクライオパネルと、
前記クライオポンプ容器に設置され、前記クライオパネルと熱的に結合される冷凍機と、
前記クライオポンプ容器にパージガスを供給するボディパージバルブと、
前記クライオパネルを冷却する前記冷凍機の冷却運転の最中に、パージガスが前記クライオポンプ容器に供給されるように前記ボディパージバルブを制御するように構成される再生コントローラと、を備えることを特徴とするクライオポンプ。
【請求項2】
前記再生コントローラは、前記冷凍機の前記冷却運転の最中に、パージガスが間欠的に前記クライオポンプ容器に供給されるように前記ボディパージバルブを制御するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記再生コントローラはさらに、前記冷凍機の前記冷却運転の終了後にも、パージガスが前記クライオポンプ容器に供給されるように前記ボディパージバルブを制御するように構成され、
前記冷却運転の最中に供給されるパージガスの流量が、前記冷却運転の終了後に供給されるパージガスの流量に比べて少ないことを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記再生コントローラは、パージガスが供給されるとき、前記冷凍機の冷凍能力をパージガスの供給前に比べて増加させるように前記冷凍機を制御するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記クライオパネルの温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記再生コントローラは、
前記温度センサによる前記クライオパネルの測定温度を取得し、
前記測定温度を極低温の温度しきい値と比較し、
前記測定温度が前記極低温の温度しきい値を下回るときパージガスが供給されるように前記ボディパージバルブを制御するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項6】
クライオポンプに希釈ガスを、前記クライオポンプの冷凍機の冷却運転の最中に供給することと、
前記クライオポンプ内の極低温面に前記希釈ガスを蓄積することと、
前記極低温面に捕捉されている他のガスを前記希釈ガスとともに再気化することと、
再気化された前記ガスおよび前記希釈ガスの混合ガスを前記クライオポンプから排出することと、を備えることを特徴とするクライオポンプ再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプおよびクライオポンプ再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプは、極低温に冷却されたクライオパネルに気体分子を凝縮または吸着により捕捉して排気する真空ポンプである。クライオポンプは半導体回路製造プロセス等に要求される清浄な真空環境を実現するために一般に利用される。クライオポンプはいわゆる気体溜め込み式の真空ポンプであるから、捕捉した気体を外部に定期的に排出する再生を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-521438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体製造プロセスでは、爆発性、腐食性、有毒性などさまざまな危険性をもつ危険ガスが使用されることがある。クライオポンプ内に溜め込まれた危険ガスは、再生によりクライオポンプから排出される。再生開始直後はクライオポンプの昇温により、溜め込まれた危険ガスが急速に再気化し、クライオポンプ内で危険ガスの濃度が顕著に高まりうる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、クライオポンプの再生中にクライオポンプから排出される危険ガス濃度を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、クライオポンプは、クライオポンプ容器と、クライオポンプ容器内に配置されるクライオパネルと、クライオポンプ容器に設置され、クライオパネルと熱的に結合される冷凍機と、クライオポンプ容器にパージガスを供給するボディパージバルブと、クライオパネルを冷却する冷凍機の冷却運転の最中に、パージガスがクライオポンプ容器に供給されるようにボディパージバルブを制御するように構成される再生コントローラと、を備える。
【0007】
本発明のある態様によると、クライオポンプ再生方法は、クライオポンプに希釈ガスを、前記クライオポンプの冷凍機の冷却運転の最中に供給することと、クライオポンプ内の極低温面に希釈ガスを蓄積することと、極低温面に捕捉されている他のガスを希釈ガスとともに再気化することと、再気化されたガスおよび希釈ガスの混合ガスをクライオポンプから排出することと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クライオポンプの再生中にクライオポンプから排出される危険ガス濃度を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るクライオポンプシステムを模式的に示す。
図2】実施の形態に係るクライオポンプシステムを模式的に示す。
図3】実施の形態に係る例示的なクライオポンプ再生方法を示すフローチャートである。
図4図3に示されるクライオポンプ再生方法の一例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態に係る例示的なクライオポンプ再生方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1および図2は、実施の形態に係るクライオポンプシステムを模式的に示す。図1にはクライオポンプ10の外観が模式的に示され、図2にはクライオポンプ10の内部構造が模式的に示される。クライオポンプ10は、例えばイオン注入装置、スパッタリング装置、蒸着装置、またはその他の真空プロセス装置の真空チャンバ100に取り付けられて、真空チャンバ100内部の真空度を所望の真空プロセスに要求されるレベルまで高めるために使用される。例えば10-5Pa乃至10-8Pa程度の高い真空度が真空チャンバ100に実現される。
【0013】
クライオポンプ10は、圧縮機12と、冷凍機14と、クライオポンプ容器16とを備える。クライオポンプ容器16は、クライオポンプ吸気口17を有する。また、クライオポンプ10は、ラフバルブ18と、ボディパージバルブ20と、排出バルブ22と、排出パージバルブ24とを備え、これらはクライオポンプ容器16に設置されている。
【0014】
圧縮機12は、冷媒ガスを冷凍機14から回収し、回収した冷媒ガスを昇圧して、再び冷媒ガスを冷凍機14に供給するよう構成されている。冷凍機14は、膨張機またはコールドヘッドとも称され、圧縮機12とともに極低温冷凍機を構成する。圧縮機12と冷凍機14との間の冷媒ガスの循環が冷凍機14内での冷媒ガスの適切な圧力変動と容積変動の組み合わせをもって行われることにより、寒冷を発生する熱力学的サイクルが構成され、冷凍機14は極低温冷却を提供することができる。冷媒ガスは、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。理解のために、冷媒ガスの流れる方向を図1に矢印で示す。極低温冷凍機は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機であるが、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。
【0015】
図2に示されるように、冷凍機14は、室温部26、第1シリンダ28、第1冷却ステージ30、第2シリンダ32、および第2冷却ステージ34を備える。冷凍機14は、第1冷却ステージ30を第1冷却温度に冷却し、第2冷却ステージ34を第2冷却温度に冷却するよう構成されている。第2冷却温度は第1冷却温度よりも低温である。例えば、第1冷却ステージ30は65K~120K程度、好ましくは80K~100Kに冷却され、第2冷却ステージ34は10K~20K程度に冷却される。第1冷却ステージ30及び第2冷却ステージ34はそれぞれ、高温冷却ステージ及び低温冷却ステージとも称しうる。このように第1冷却ステージ30と第2冷却ステージ34がそれぞれの目標冷却温度に冷却されることで、クライオポンプ10は真空排気運転をすることができる。
【0016】
第1シリンダ28は第1冷却ステージ30を室温部26に接続し、それにより第1冷却ステージ30は室温部26に構造的に支持される。第2シリンダ32は第2冷却ステージ34を第1冷却ステージ30に接続し、それにより第2冷却ステージ34は第1冷却ステージ30に構造的に支持される。第1シリンダ28と第2シリンダ32は径方向に沿って同軸に延在しており、室温部26、第1シリンダ28、第1冷却ステージ30、第2シリンダ32、及び第2冷却ステージ34は、この順に直線状に一列に並ぶ。
【0017】
冷凍機14が二段式のGM冷凍機の場合、第1シリンダ28及び第2シリンダ32それぞれの内部には第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサ(図示せず)が往復動可能に配設されている。第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサにはそれぞれ第1蓄冷器及び第2蓄冷器(図示せず)が組み込まれている。また、室温部26は、第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサを往復動させるためのモータ26aなど駆動機構(図示せず)を有する。駆動機構は、冷凍機14の内部への作動気体(例えばヘリウム)の供給と排出を周期的に繰り返すよう作動気体の流路を切り替える流路切替機構を含む。
【0018】
また、クライオポンプ10は、放射シールド36とクライオパネル38を備える。放射シールド36は、放射シールド36は、クライオポンプ10の外部またはクライオポンプ容器16からの輻射熱からクライオパネル38を保護するための極低温表面を提供するために、第1冷却ステージ30に熱的に結合され、第1冷却温度に冷却される。
【0019】
放射シールド36は、例えば筒型の形状を有し、クライオパネル38と第2冷却ステージ34を包囲するように配置されている。クライオポンプ吸気口17側の放射シールド36の端部は開放されており、クライオポンプ10の外からクライオポンプ吸気口17を通じて進入する気体を放射シールド36内に受け入れることができる。クライオポンプ吸気口17と反対側の放射シールド36の端部は閉塞され、または開口を有し、または開放されていてもよい。放射シールド36はクライオパネル38との間に隙間を有しており、放射シールド36はクライオパネル38と接触していない。放射シールド36はクライオポンプ容器16とも接触していない。
【0020】
クライオポンプ吸気口17に、またはクライオポンプ吸気口17とクライオパネル38の間には、クライオポンプ10の外部の熱源(例えば、クライオポンプ10が取り付けられる真空チャンバ100内の熱源)からの輻射熱からクライオパネル38を保護するために、入口バッフル37が設けられてもよい。入口バッフル37は、放射シールド36の開放端に固定され、放射シールド36を介して冷凍機14の第1冷却ステージ30に熱的に結合されてもよい。あるいは、入口バッフル37は、第1冷却ステージ30に取り付けられてもよい。入口バッフル37は放射シールド36と同温度に冷却され、その表面にいわゆるタイプ1ガス(水蒸気などの比較的高温で凝縮する気体)を凝縮することができる。
【0021】
クライオパネル38は、タイプ2ガス(例えばアルゴン、窒素などの比較的低温で凝縮する気体)を凝縮する極低温表面を提供するために、第2冷却ステージ34に熱的に結合され、第2冷却温度に冷却される。また、クライオパネル38には、タイプ3ガス(例えば水素などの非凝縮性気体)を吸着するために、少なくとも一部の表面(例えばクライオポンプ吸気口17とは反対側の表面)に例えば活性炭またはその他の吸着材が配置されている。クライオポンプ10の外からクライオポンプ吸気口17を通じて放射シールド36内に進入する気体はクライオパネル38に凝縮または吸着により捕捉される。放射シールド36やクライオパネル38の配置や形状など、これらがとりうる形態は、種々の公知の構成を適宜採用することができるので、ここでは詳述しない。
【0022】
クライオポンプ容器16は、容器胴体16aと冷凍機収容筒16bを有する。クライオポンプ容器16は、クライオポンプ10の真空排気運転中に真空を保持し、周囲環境の圧力(例えば大気圧)に耐えるように設計された真空容器である。容器胴体16aは、その一端にクライオポンプ吸気口17を有し、他端が閉じられた筒型の形状を有する。容器胴体16aには、放射シールド36が収容され、上述のように放射シールド36内にはクライオパネル38が第2冷却ステージ34とともに収容されている。冷凍機収容筒16bは、一端が容器胴体16aに結合され他端が冷凍機14の室温部26に固定されている。冷凍機収容筒16bには、冷凍機14が挿入され、第1シリンダ28が収容されている。
【0023】
この実施の形態では、クライオポンプ10は、冷凍機14が容器胴体16aの側部に設けられたいわゆる横型のクライオポンプである。容器胴体16aの側部には、冷凍機挿入口が設けられ、冷凍機収容筒16bは、この冷凍機挿入口で容器胴体16aの側部に結合されている。同様に、容器胴体16aの冷凍機挿入口に隣接して、放射シールド36の側部にも冷凍機14を通す穴が設けられている。これらの穴を通じて冷凍機14の第2シリンダ32と第2冷却ステージ34が放射シールド36の中に挿入され、放射シールド36はその側部の穴の周囲で第1冷却ステージ30と熱的に結合されている。
【0024】
クライオポンプ10は、使用される現場で様々な姿勢で真空チャンバ100に設置されうる。一例として、クライオポンプ10は、図示される横向きの姿勢、すなわちクライオポンプ吸気口17を上方に向けた姿勢で設置されることができる。このとき、容器胴体16aの底部がクライオポンプ吸気口17に対して下方に位置し、冷凍機14は水平方向に延在する。
【0025】
クライオポンプ10は、第1冷却ステージ30の温度を測定するための第1温度センサ40と、第2冷却ステージ34の温度を測定するための第2温度センサ42と、を備える。第1温度センサ40は、第1冷却ステージ30に取り付けられている。第2温度センサ42は、第2冷却ステージ34に取り付けられている。第1温度センサ40によって測定される第1冷却ステージ30の温度は、放射シールド36の温度とみなすことができ、第2温度センサ42によって測定される第2冷却ステージ34の温度は、クライオパネル38の温度とみなすことができる。よって、第1温度センサ40は、放射シールド36の温度を測定し、放射シールド36の測定温度を示す第1測定温度信号を出力することができる。第2温度センサ42は、クライオパネル38の温度を測定し、クライオパネル38の測定温度を示す第2測定温度信号を出力することができる。また、クライオポンプ容器16の内部に圧力センサ44が設けられている。圧力センサ44は例えば、冷凍機収容筒16bに設置され、クライオポンプ容器16の内圧を測定し、測定圧力を示す測定圧力信号を出力することができる。
【0026】
また、クライオポンプ10は、クライオポンプ10を制御するコントローラ46を備える。コントローラ46は、クライオポンプ10に一体に設けられていてもよいし、クライオポンプ10とは別体の制御装置として構成されていてもよい。
【0027】
コントローラ46は、クライオポンプ10の真空排気運転においては、放射シールド36及び/またはクライオパネル38の冷却温度に基づいて、冷凍機14を制御してもよい。コントローラ46は、第1温度センサ40からの第1測定温度信号を受信するよう第1温度センサ40と接続され、第2温度センサ42からの第2測定温度信号を受信するよう第2温度センサ42と接続されていてもよい。
【0028】
また、コントローラ46は、クライオポンプ10の再生コントローラとして動作可能である。コントローラ46は、クライオポンプ10の再生運転においては、クライオポンプ容器16内の圧力に基づいて(または、必要に応じて、クライオパネル38の温度およびクライオポンプ容器16内の圧力に基づいて)、冷凍機14、ラフバルブ18、ボディパージバルブ20、排出バルブ22、排出パージバルブ24を制御してもよい。コントローラ46は、圧力センサ44からの測定圧力信号を受信するよう圧力センサ44と接続されていてもよい。
【0029】
コントローラ46の内部構成は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0030】
たとえば、コントローラ46は、CPU(Central Processing Unit)、マイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。ソフトウェアプログラムは、クライオポンプ10の再生をコントローラ46に実行させるためのコンピュータプログラムであってもよい。
【0031】
ラフバルブ18は、クライオポンプ容器16、例えば冷凍機収容筒16bに設置されている。ラフバルブ18は、クライオポンプ10の外部に設置されたラフポンプ(図示せず)に接続される。ラフポンプは、クライオポンプ10をその動作開始圧力まで真空引きをするための真空ポンプである。コントローラ46の制御によりラフバルブ18が開放されるときクライオポンプ容器16がラフポンプに連通され、ラフバルブ18が閉鎖されるときクライオポンプ容器16がラフポンプから遮断される。ラフバルブ18を開きかつラフポンプを動作させることにより、クライオポンプ10を減圧することができる。
【0032】
ボディパージバルブ20は、クライオポンプ容器16の容器胴体16aにパージガスを供給する「ボディパージ」を可能とする。例示的な構成として、ボディパージバルブ20は、クライオポンプ容器16、例えば容器胴体16aに設置されている。また、ボディパージバルブ20は、クライオポンプ10の外部に設置されたパージガス源48またはパージガス供給装置に接続される。
【0033】
コントローラ46の制御によりボディパージバルブ20が開放されるときパージガスがパージガス源48からクライオポンプ容器16に供給され、ボディパージバルブ20が閉鎖されるときクライオポンプ容器16へのパージガス供給が遮断される。ボディパージバルブ20を開きパージガスをクライオポンプ容器16に導入することにより、クライオポンプ10を昇圧することができる。また、クライオポンプ10を極低温から室温またはそれより高い温度に昇温することができる。あるいは、後述のように、ボディパージバルブ20によりパージガスの流量を調節することにより、クライオポンプ10内の圧力および温度を維持し、または顕著な上昇を抑えつつ、クライオポンプ10にパージガスを供給することができる。
【0034】
パージガスは例えば窒素ガス、またはその他の乾燥したガスであってもよく、パージガスの温度は、たとえば室温(0℃より高く、例えば15℃~30℃)に調整され、または室温より高温(例えば50℃以下または80℃以下)に加熱されていてもよい。あるいは、パージガスの温度は、室温より低温(例えば、0℃より低い温度)に冷却されていてもよい。パージガスの冷却は、後述のように、冷凍機14の冷却運転の最中にパージガスがクライオポンプ容器16に供給される場合に、クライオパネル38の温度上昇を抑制するうえで好適でありうる。
【0035】
排出バルブ22は、クライオポンプ容器16、例えば冷凍機収容筒16bに設置されている。排出バルブ22は、クライオポンプ10の内部から外部に流体を排出するために、クライオポンプ容器16の出口として設けられている。排出バルブ22は、後述する排出ライン50への入口でもある。コントローラ46の制御により排出バルブ22が開放されるときクライオポンプ容器16から流体が排出され、排出バルブ22が閉鎖されるときクライオポンプ容器16からの流体排出が遮断される。排出バルブ22から排出される流体は基本的にはガスであるが、液体または気液の混合物であってもよい。排出バルブ22は、例えば常閉型の制御弁であってもよい。
【0036】
加えて、排出バルブ22は、ベントバルブまたは安全弁として機能してもよく、所定の差圧が作用したときに機械的に開放されるよう構成されてもよい。その場合、クライオポンプ内部が何らかの理由で高圧となったときに制御を要することなく排出バルブ22は機械的に開放される。それにより内部の高圧を排出ライン50に逃がすことができる。
【0037】
排出パージバルブ24は、排出ライン50にパージガスを供給する「排出パージ」を可能とする。例示的な構成として、排出バルブ22と排出パージバルブ24が別々に設けられ、排出パージバルブ24が排出バルブ22の下流に配管で接続されてもよい。あるいは、排出パージバルブ24は、排出バルブ22またはその下流にパージガスを供給するように排出バルブ22と一体に設けられてもよい。排出パージバルブ24は、クライオポンプ容器16、例えば冷凍機収容筒16bに設置されてもよい。排出パージバルブ24は、パージガス源48または別のパージガス源に接続される。
【0038】
コントローラ46の制御により排出パージバルブ24が開放されるときパージガスがパージガス源48から排出ライン50に供給され、排出パージバルブ24が閉鎖されるとき排出ライン50へのパージガス供給が遮断される。なお、排出パージバルブ24から供給されるパージガスは、通例、ボディパージバルブ20から供給されるパージガスと同種のガス(例えば、窒素ガス)であるが、適する異種のガスが使用されてもよい。
【0039】
排出ライン50は、排出流体をクライオポンプ10から処理装置60に排出するために設けられ、その上流端で排出バルブ22および排出パージバルブ24に接続され、下流端で処理装置60に接続される。
【0040】
処理装置60は例えば、排出流体に含まれる危険ガス(例えば水素ガス、または爆発性をもつ他のガス、または、例えばフッ素系ガスまたはハロゲン系ガスなど腐食性または有毒性をもつ他のガス)を処理して無害なガスを生成する除害装置であってもよく、または、危険ガスを処理してその危険性を低減する処理装置であってもよい。こうした処理装置60としては、公知の除害装置または処理装置を適宜採用することができるので、ここではその詳細は述べない。
【0041】
クライオポンプ10の真空排気運転が継続されることによりクライオポンプ10には気体が蓄積されていく。蓄積した気体を外部に排出するために、クライオポンプ10の再生が行われる。クライオポンプ10の再生は一般に、昇温工程、排出工程、及びクールダウン工程を含む。
【0042】
クライオポンプ10と真空排気される真空チャンバ100との間にはゲートバルブ102が設置されており、クライオポンプ10の再生を開始する際にゲートバルブ102が閉鎖され、クライオポンプ10は真空チャンバ100から切り離される(クライオポンプ10の内部容積は真空チャンバ100から隔離される)。
【0043】
昇温工程は、クライオポンプ10に捕捉されているガスのうち危険ガスの沸点またはそれを超える温度にクライオポンプ10を昇温することと、クライオポンプ10を再生温度までさらに昇温することと、を含む。危険ガスは典型的に、例えばタイプ2ガスまたはタイプ3ガスであり、危険ガスの沸点は、例えば100K以下である。再生温度は、例えば室温またはそれより高い温度である。よって、多くの場合危険ガスは、昇温工程の前半、とくに開始直後に再気化しクライオポンプ10から排出され処理装置60に流入する。危険ガスは昇温工程でクライオポンプ10から除去される。
【0044】
昇温のための熱源は、例えば、冷凍機14である。冷凍機14は、昇温運転(いわゆる逆転昇温)を可能とする。すなわち、冷凍機14は、室温部26に設けられた駆動機構が冷却運転とは逆方向に動作する(つまりモータ26aが逆回転する)とき作動気体に断熱圧縮が生じるよう構成されている。こうして得られる圧縮熱で冷凍機14は第1冷却ステージ30及び第2冷却ステージ34を加熱する。放射シールド36とクライオパネル38はそれぞれ第1冷却ステージ30及び第2冷却ステージ34を熱源として加熱される。また、ボディパージバルブ20からクライオポンプ容器16内に供給されるパージガスもクライオポンプ10の昇温に寄与しうる。あるいは、クライオポンプ10には、例えば電気ヒータなどの加熱装置が設けられてもよい。例えば、冷凍機14の運転から独立して制御可能な電気ヒータが冷凍機14の第1冷却ステージ30及び/または第2冷却ステージ34に装着されていてもよい。
【0045】
排出工程においてはクライオポンプ10に捕捉された気体が再気化または液化され、気体、液体または気液の混合物として、排出ライン50を通じて、またはラフバルブ18を通じて排出される。タイプ2ガスおよびタイプ3ガスは既に昇温工程でクライオポンプ10から容易に排出されうるので、排出工程は主にタイプ1ガスを排出するための工程である。排出工程が完了すれば、クールダウン工程が開始される。クールダウン工程においてはクライオポンプ10が真空排気運転のための極低温に再冷却される。こうして再生が完了すれば、ゲートバルブ102が再び開かれ、クライオポンプ10は再び真空排気運転を始めることができる。
【0046】
ところで、クライオポンプ10の主な用途の1つにイオン注入装置の真空排気がある。この場合、クライオポンプ10には主として水素ガスが溜め込まれる。クライオパネル38に捕捉されていた水素ガスは、再生中、とりわけ再生(昇温工程)の開始直後に一挙に再気化しうる。既存の再生方法では、水素ガスはクライオポンプ容器16内でボディパージによって希釈されるが、それでも、クライオポンプ容器16から排出ライン50を処理装置60へと流れる排出流体は一時的にかなり高い濃度で水素ガスを含有しうる。
【0047】
高濃度の水素ガスには爆発または燃焼のリスクがあるから、クライオポンプ10および排出ライン50の安全管理上、排出流体における水素ガスの濃度ピークをなるべく低く抑えることが望まれる。水素ガスの濃度ピークは、例えば、爆発限界を考慮して4%未満に抑えることが望まれうる。あるいは、安全率を考慮して、水素ガスの濃度ピークは、より低い値、例えば2%未満に抑えることが望まれうる。このような低い濃度までボディパージによってクライオポンプ容器16内を希釈するには、再生開始直後にかなり大きな流量(例えば毎分数百リットル)のパージガスが必要となり得る。他の種類の危険ガスについても同様に、再生開始直後の濃度ピークを抑えるために、一時的に大流量のパージガスが必要となり得る。しかし、このような対処は、必要となるコスト増加を考慮すると、現実的ではないかもしれない。
【0048】
図3は、実施の形態に係る例示的なクライオポンプ再生方法を示すフローチャートである。クライオポンプ再生方法は、クライオポンプ10に希釈ガスを供給することと(S10)、冷却運転の最中にクライオポンプ10内の極低温面に希釈ガスを蓄積することと(S11)、極低温面に捕捉されている他のガスを希釈ガスとともに再気化することと(S12)、再気化されたガスおよび希釈ガスの混合ガスをクライオポンプ10から排出することと(S13)、を備える。ガスの再気化(S12)および混合ガスの排出(S13)は、上述の昇温工程に含まれてもよい。本方法は、さらに、上述の排出工程(S14)およびクールダウン工程(S15)を備えてもよい。
【0049】
このようにすれば、クライオポンプ10内の極低温面に希釈ガスをあらかじめ蓄えることができる。そのため、クライオポンプ10内に危険ガスが吸蔵されていたとしても、再生において危険ガスとともに希釈ガスが再気化することになる。クライオポンプ10内で危険ガスを希釈することができ、クライオポンプ10の再生中にクライオポンプ10から排出される危険ガス濃度を抑制することができる。これにより、クライオポンプ10の再生の安全性を向上することができる。
【0050】
希釈ガスは、パージガスであってもよい。極低温面は、希釈ガスが凝縮する温度に冷却された表面であり、例えば、クライオパネル38または第2冷却ステージ34の表面であってもよい。あるいは、極低温面は、希釈ガスが凝縮する温度に冷却されている限り、クライオポンプ10内の他の表面であってもよく、例えば、放射シールド36、入口バッフル37、または冷凍機14(例えば、第1冷却ステージ30、第2シリンダ32)の表面であってもよい。極低温面に捕捉されている他のガスは、危険ガス(例えば水素ガス)を含んでもよい。
【0051】
図3に示される再生方法のクライオポンプ10への例示的な実装においては、クライオポンプ10の冷却下で、すなわち冷凍機14の冷却運転の最中に、ボディパージが行われる。それによりクライオパネル38など極低温面にパージガスを凝縮させ、クライオポンプ10に吸蔵することができる。このようにして、クライオポンプ10の再生における昇温工程の前に多量のパージガスをクライオポンプ10内にあらかじめ導入し、固体または液体状態でクライオポンプ容器16内に一時的に保存することができる。昇温工程では、クライオポンプ10の真空排気運転によりクライオパネル38に捕捉されていた危険ガスなど他のガスとともに多量のパージガスも再気化される。
【0052】
よって、このようなパージガスの事前導入が無かった既存の再生方法に比べて、実施の形態に係る再生方法は、クライオポンプ10内の危険ガス濃度を低下させることができる。これにより、クライオポンプ10から排出されて排出ライン50を流れるガスにおける危険ガス濃度も低下させることができる。
【0053】
したがって、コントローラ46は、クライオパネル38を冷却する冷凍機14の冷却運転の最中に、パージガスがクライオポンプ容器16に供給されるようにボディパージバルブ20を制御するように構成されてもよい。コントローラ46は、冷凍機14の運転状態を把握するように構成されてもよく、例えば、冷凍機14の運転状態を示す冷凍機状態信号を受信または生成するように構成されてもよい。冷凍機状態信号は、冷凍機14の冷却運転、停止、逆転昇温運転を含む複数の状態のなかから冷凍機14の現在の状態を示すものであってもよい。あるいは、コントローラ46は、第1温度センサ40及び/または第2温度センサ42の測定温度を受信し、この測定温度に基づいて、冷凍機14が冷却運転をしているか否かを判定してもよい。コントローラ46は、冷凍機状態信号に基づいて、または測定温度に基づいて、冷凍機14が冷却運転をしているときボディパージバルブ20を開くように構成されてもよい。
【0054】
一般に、ボディパージバルブ20は、再生の昇温工程および排出工程のために望まれる比較的大きなパージガス流量を可能とするように構成されている。パージガスは上述のように室温付近の温度を有し、冷却下のクライオパネル38に比べてかなり高温であるため、冷凍機14が冷却運転をしているにもかかわらず、ボディパージによってクライオパネル38が昇温されうる。過剰な昇温は、クライオパネル38へのパージガスの凝縮を妨げうる。
【0055】
そこで、コントローラ46はさらに、冷凍機14の冷却運転の終了後にも(すなわち昇温工程及び/または排出工程において)、パージガスがクライオポンプ容器16に供給されるようにボディパージバルブ20を制御するように構成されてもよく、冷却運転の最中に供給されるパージガスの流量が、冷却運転の終了後に供給されるパージガスの流量に比べて少なくてもよい。このようにすれば、望ましいことに、実施の形態に係る希釈のためのパージガス事前導入でのパージガス流量を、通常(すなわち昇温工程及び/または排出工程)のボディパージに比べて抑制することができる。これにより、パージガス事前導入に伴うクライオポンプ10への入熱を抑制することができる。
【0056】
例示的なクライオポンプ10では、低コスト化の観点から、ボディパージバルブ20は、オンオフ弁であってもよく、ボディパージバルブ20のパージガス流量は一定である。この場合、パージガス流量の抑制のために、コントローラ46は、冷凍機14の冷却運転の最中に、パージガスが間欠的にクライオポンプ容器16に供給されるようにボディパージバルブ20を制御するように構成されてもよい。
【0057】
また、コントローラ46は、パージガスが供給されるとき、冷凍機14の冷凍能力をパージガスの供給前に比べて増加させるように冷凍機14を制御するように構成されてもよい。冷凍能力を調整可能な冷凍機14の例示的な構成として、冷凍機14を駆動するモータ26aは、運転周波数を可変とするように構成されてもよく、このモータ26aの運転周波数を制御するインバータが設けられてもよい。この場合、コントローラ46は、パージガスが供給されるとき、モータ26aの運転周波数をパージガスの供給前に比べて増加させるようにインバータを制御してもよい。このようにすれば、パージガスが供給されるとき冷凍機14の冷凍能力を増加することができ、それにより、パージガス事前導入に伴うクライオポンプ10の温度上昇を抑制することができる。
【0058】
図4は、図3に示されるクライオポンプ再生方法の一例を示すフローチャートである。図4に示されるパージガス事前導入処理は、再生開始指令を受けて、コントローラ46によって実行されてもよい。再生開始指令は、クライオポンプ10のユーザーからコントローラ46に入力されてもよいし、あるいは、クライオポンプ10が搭載された真空プロセス装置の制御装置など上位コントローラからコントローラ46に入力されてもよい。
【0059】
図4に示されるように、本処理が開始されるとまず、冷凍機14の冷凍能力が増加される(S20)。例えば、コントローラ46は、冷凍機14を駆動するモータ26aの運転周波数を増加させるようにモータ26aを制御してもよい。一般に、クライオポンプ10の再生開始前においては、冷凍機14は比較的低い(例えば、50Hzまたは60Hzよりも低い)運転周波数で運転されることで、極低温に冷却されたクライオパネル38の温度を安定的に維持することができる。よって、コントローラ46は、このような比較的低い運転周波数を超える運転周波数までモータ26aの運転周波数を増加させてもよい。モータ26aの運転周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzよりも高い運転周波数、または、モータ26aがとりうる最大の運転周波数に増加されてもよい。モータ26aの最大の運転周波数は、例えば、70Hzから100Hzの範囲にあってもよい。
【0060】
そして、ボディパージバルブ20が所定時間開かれる(S22)。コントローラ46は、ボディパージバルブ20を開き、この所定時間にわたり開状態を継続し、所定時間を経過するときボディパージバルブ20を閉じるように、ボディパージバルブ20を制御する。
【0061】
ここで、ボディパージバルブ20を開く所定時間は、その間にボディパージバルブ20を通じてクライオポンプ容器16に供給されるパージガスの量が、標準状態(例えば0℃1気圧)で、例えば、約1リットル以内、または約0.5リットル以内、または約0.2リットル以内となるようにあらかじめ設定されてもよい。これは、ボディパージバルブ20を開く所定時間を例えば0.1秒間から2秒間(または例えば0.5秒間から1秒間)の範囲から選択することにより、実現されうる。この所定時間は、クライオポンプ10の設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき事前に取得され、コントローラ46に予め記憶されてもよい。このようにすれば、ボディパージバルブ20を通じてクライオポンプ容器16に供給されるパージガスがもたらすクライオパネル38の温度上昇を実用上十分に小さくすることができるものと期待される。
【0062】
続いて、コントローラ46は、予め定められたパージガスの供給完了条件が満たされるか否かを判定する(S24)。供給完了条件は、クライオポンプ10内に溜め込まれうる仕様上の最大量の危険ガス(例えば水素ガス)を所望の低濃度に希釈するために必要とされるパージガス量に基づいて設定されうる。例えば、供給完了条件は、この必要パージガス量を供給するためのボディパージバルブ20の開放回数または開放時間が完了したことであってもよい。例えば、必要パージガス量を供給するために上述の所定時間のボディパージバルブ20の開放が10回必要であったとすると、この10回分のボディパージバルブ20の開放が行われたとき、供給完了条件が満たされる。あるいは、必要パージガス量を供給するために上述の所定時間のボディパージバルブ20の開放が合計10秒間必要であったとすると、合計で10秒間のボディパージバルブ20の開放が行われたとき、供給完了条件が満たされる。供給完了条件は、クライオポンプ10の設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき事前に取得され、コントローラ46に予め記憶されてもよい。
【0063】
供給完了条件が満たされない場合(S24のNo)、コントローラ46は、第2温度センサ42によるクライオパネル38の測定温度T2を取得し、測定温度T2を極低温の温度しきい値Tsと比較する(S26)。この温度しきい値Tsは、クライオパネル38がパージガスを凝縮するために十分に低い温度にあることを確認するために、パージガスの沸点よりも低い温度、例えば10Kから30K(または例えば10Kから20K)の範囲から予め設定され、コントローラ46に予め記憶される。
【0064】
コントローラ46は、測定温度T2が極低温の温度しきい値Tsを下回るときパージガスが供給されるようにボディパージバルブ20を制御するように構成される。すなわち、測定温度T2が温度しきい値Ts以上の場合(S26のNo)、コントローラ46は、所定時間待機し、その後再び測定温度T2を取得し、温度しきい値Tsと比較する(S26)。一方、測定温度T2が温度しきい値Tsよりも低い場合(S26のYes)、コントローラ46は、ボディパージバルブ20を再び開く(S22)。
【0065】
このようにして、クライオパネル38の測定温度T2が温度しきい値Tsより低いことを確認したうえで、ボディパージバルブ20を開き、クライオポンプ容器16にパージガスを供給することができる。クライオパネル38の測定温度T2が温度しきい値Tsより高い場合には、ボディパージバルブ20を閉じ、測定温度T2が温度しきい値Tsを下回るまで待機することができる。
【0066】
その後再び、パージガスの供給完了条件が満たされるか否かが判定される(S24)。供給完了条件が満たされない場合には(S24のNo)、上述のように温度測定および比較と、パージガスの間欠的な供給が再び行われる。一方、供給完了条件が満たされる場合には(S24のYes)、本処理は終了する。この場合、冷凍機14の冷却運転は停止され、上述の昇温工程(図3のS12、S13)、排出工程(S14)、およびクールダウン工程(S15)が行われる。
【0067】
上述の実施の形態では、ボディパージバルブ20が固定された一定流量でパージガスを供給するオンオフ弁である場合を例として説明しているが、ある実施の形態では、ボディパージバルブ20は、パージガスの流量を調整可能な流量可変バルブであってもよい。この場合、コントローラ46は、冷凍機14の冷却運転の最中に、パージガスが連続的にクライオポンプ容器16に供給されるようにボディパージバルブ20を制御するように構成されてもよい。コントローラ46は、冷却運転の最中に連続的に供給されるパージガスの流量が、冷却運転の終了後(すなわち昇温工程及び/または排出工程)に供給されるパージガスの流量に比べて少なくなるように、ボディパージバルブ20を制御してもよい。
【0068】
冷却運転の最中に連続的に供給されるパージガスの流量は、冷却運転の終了後に供給されるパージガスの流量の例えば1/2未満、または1/10未満であってもよい。冷却運転の最中に連続的に供給されるパージガスの流量は、標準状態(例えば0℃1気圧)で、例えば、毎分約3リットル以内、または毎分約2リットル以内、または毎分約1リットル以内であってもよい。このようにすれば、ボディパージバルブ20を通じてクライオポンプ容器16に供給されるパージガスがもたらすクライオパネル38の温度上昇を実用上十分に小さくすることができるものと期待される。
【0069】
パージガスが連続的にクライオポンプ容器16に供給される場合においても、図4のS26と同様に、クライオパネル38の測定温度T2がモニタされてもよい。すなわち、コントローラ46は、第2温度センサ42によるクライオパネル38の測定温度T2を取得し、測定温度T2を極低温の温度しきい値Tsと比較してもよい。コントローラ46は、測定温度T2が極低温の温度しきい値Tsを下回るときパージガスが供給されるようにボディパージバルブ20を制御する。一方、測定温度T2が温度しきい値Ts以上の場合、コントローラ46は、パージガスの供給を中断するようにボディパージバルブ20を制御する。このようにして、クライオパネル38の測定温度T2が温度しきい値Tsより低いことを確認したうえで、ボディパージバルブ20を開き、クライオポンプ容器16にパージガスを供給することができる。クライオパネル38の測定温度T2が温度しきい値Tsより高い場合には、ボディパージバルブ20を閉じ、測定温度T2が温度しきい値Tsを下回るまで待機することができる。
【0070】
なお、パージガス源48がパージガス流量の調整機能を有し、それにより、クライオポンプ容器16に供給されるボディパージの流量が調整されてもよい。この場合、ボディパージバルブ20を利用したボディパージ流量の調整に代えて、コントローラ46は、所望のパージガス流量が得られるようにパージガス源48を制御してもよい。
【0071】
図5は、実施の形態に係る例示的なクライオポンプ再生方法を示すフローチャートである。クライオポンプ再生方法は、クライオポンプ10に第1希釈ガスを供給しながら、クライオポンプ10内で再気化されたガスおよび第1希釈ガスの混合ガスをクライオポンプ10から排出することと(S30)、クライオポンプ10から混合ガスを排出しながら、排出された混合ガスを第2希釈ガスで希釈することと(S32)、を備える。両ステップ(S30、S32)は空間的に異なる場所(S30はボディパージバルブ20およびクライオポンプ容器16、S32は排出バルブ22)で行われるが、時間的には同時に起こる。
【0072】
このようにすれば、クライオポンプ10内に危険ガスが吸蔵されていたとしても、まずクライオポンプ10内で第1希釈ガスによって希釈され、それと同時に、クライオポンプ10から排出された危険ガスと第1希釈ガスの混合ガスが第2希釈ガスによって希釈される。二段階の希釈により、クライオポンプ10の再生中にクライオポンプ10から排出される危険ガス濃度を抑制することができる。
【0073】
図5に示される希釈排出処理(S30、S32)は、再生の初期段階で行われる。希釈排出処理(S30、S32)は、冷凍機14の冷却運転の終了後、すなわち例えば昇温工程(図3のS12、S13)に行われてもよい。よって、希釈排出処理(S30、S32)は、上述のパージガス事前導入処理とともに(つまり、パージガス事前導入処理の後に)行われてもよい。希釈排出処理の後、上述の排出工程(図3のS14)、およびクールダウン工程(S15)が行われてもよい。
【0074】
第1希釈ガスは、ボディパージバルブ20からクライオポンプ容器16に供給されるパージガスであってもよく、第2希釈ガスは、排出パージバルブ24から排出ライン50に供給されるパージガスであってもよい。
【0075】
例示的なボディパージバルブ20の動作においては、ボディパージバルブ20は、排出バルブ22が閉じている間、連続して開かれてもよい。排出バルブ22が閉じていればクライオポンプ容器16から排出ライン50への排出は行われないからである。ボディパージバルブ20は、排出バルブ22が開いている間、開閉を繰り返してもよい。ボディパージバルブ20の開閉サイクルにおける開時間の割合は、一定であってもよい。あるいは、ボディパージバルブ20の開閉サイクルにおける開時間の割合は、時間とともに変化されてもよい。例えば、排出により時間の経過とともにクライオポンプ容器16内の危険ガス濃度は下がっていくから、ボディパージバルブ20の開閉サイクルにおける開時間の割合は、時間とともに増加されてもよく、最終的にボディパージバルブ20は連続して開かれてもよい。
【0076】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0077】
上述の実施の形態では、希釈ガス(例えば第1希釈ガス)は、ボディパージバルブ20からクライオポンプ容器16に供給されている。しかし、ある実施の形態においては、他の希釈ガス源を採用しうる。例えば、希釈ガスは、クライオポンプ10が設置された真空プロセス装置の真空チャンバ100からゲートバルブ102およびクライオポンプ吸気口17を通じてクライオポンプ容器16に供給されてもよい。真空プロセス装置は通例、例えばアルゴンガスまたはその他の不活性ガスを真空チャンバ100に供給するガス源を有するから、これを希釈ガスとして利用してもよい。
【0078】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0079】
10 クライオポンプ、 14 冷凍機、 16 クライオポンプ容器、 20 ボディパージバルブ、 24 排出パージバルブ、 38 クライオパネル、 46 コントローラ、 50 排出ライン。
図1
図2
図3
図4
図5