(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085234
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】クライオポンプ、クライオポンプの製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
F04B 37/08 20060101AFI20240619BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
F04B37/08
F04B39/00 102Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199652
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】中西 嵩裕
【テーマコード(参考)】
3H003
3H076
【Fターム(参考)】
3H003AA01
3H003BB06
3H003CD01
3H003CE02
3H003CF00
3H076AA26
3H076BB01
3H076BB26
3H076CC39
3H076CC47
3H076CC51
(57)【要約】
【課題】防振構造を採用したクライオポンプを保護する。
【解決手段】クライオポンプ10は、クライオポンプ真空容器12と、極低温冷凍機14と、極低温冷凍機14をクライオポンプ真空容器12に接続する防振構造16と、防振構造16と並列に極低温冷凍機14をクライオポンプ真空容器12に接続し、極低温冷凍機14とクライオポンプ真空容器12の間での防振構造16の伸長および収縮の両方を拘束する取り外し可能な拘束具70と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷凍機と、
クライオポンプ真空容器と、
前記極低温冷凍機を前記クライオポンプ真空容器に接続する防振構造と、
前記防振構造と並列に前記極低温冷凍機を前記クライオポンプ真空容器に接続し、前記極低温冷凍機と前記クライオポンプ真空容器の間での前記防振構造の伸長および収縮の両方を拘束する取り外し可能な拘束具と、を備えることを特徴とするクライオポンプ。
【請求項2】
第1取付部が、前記クライオポンプ真空容器に、または前記クライオポンプ真空容器側の前記防振構造の端部に形成され、
第2取付部が、前記極低温冷凍機に、または前記極低温冷凍機側の前記防振構造の端部に形成されており、
前記取り外し可能な拘束具は、一端で前記第1取付部に取り付けられ、他端で前記第2取付部に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記クライオポンプ真空容器は、真空容器フランジを備え、
前記極低温冷凍機は、冷凍機フランジを備え、
前記防振構造は、前記真空容器フランジに固定された第1フランジと、前記冷凍機フランジに固定された第2フランジと、を備え、
前記第1取付部は、前記真空容器フランジまたは前記第1フランジの外周面に形成され、前記第2取付部は、前記冷凍機フランジまたは前記第2フランジの外周面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記クライオポンプ真空容器は、真空容器フランジを備え、
前記極低温冷凍機は、冷凍機フランジを備え、
前記防振構造は、前記真空容器フランジに固定された第1フランジと、前記冷凍機フランジに固定された第2フランジと、を備え、
前記第1取付部は、前記真空容器フランジまたは前記第1フランジに形成され、前記第2取付部は、前記冷凍機フランジまたは前記第2フランジに形成されており、
前記取り外し可能な拘束具は、
一端で前記第1取付部に、かつ他端で前記第2取付部に取り付けられ、前記防振構造の伸長を拘束する第1拘束部材と、
前記第1取付部と前記第2取付部の間で前記第1拘束部材に沿って配置され、前記防振構造の収縮を拘束する第2拘束部材と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記第1取付部は、前記真空容器フランジまたは前記第1フランジに形成された第1耳部を備え、前記第2取付部は、前記冷凍機フランジまたは前記第2フランジに形成された第2耳部を備えることを特徴とする請求項4に記載のクライオポンプ。
【請求項6】
前記防振構造は、
前記クライオポンプ真空容器に固定された第1フランジと、
前記極低温冷凍機に固定され、前記第1フランジと気密に接続された第2フランジと、
前記第1フランジから前記第2フランジに向かって、第1環状防振材料、第1環状支持部材、中間環状防振材料、第2環状支持部材、第2環状防振材料がこの記載の順に配置された環状積層防振体と、を備え、
前記第1フランジおよび前記第2環状支持部材が前記第2フランジおよび前記第1環状支持部材から振動絶縁されるように、前記第2環状支持部材が前記第1フランジに固定されるとともに前記第1環状支持部材が前記第2フランジに固定されていることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項7】
極低温冷凍機と、
クライオポンプ真空容器と、
前記極低温冷凍機を前記クライオポンプ真空容器に接続する防振構造と、
前記極低温冷凍機と前記クライオポンプ真空容器の間での前記防振構造の伸長および収縮の両方を拘束する取り外し可能な拘束具が取り付けられる第1取付部および第2取付部と、を備え、
前記第1取付部が、前記クライオポンプ真空容器に、または前記クライオポンプ真空容器側の前記防振構造の端部に形成され、
前記第2取付部が、前記極低温冷凍機に、または前記極低温冷凍機側の前記防振構造の端部に形成されていることを特徴とするクライオポンプ。
【請求項8】
クライオポンプを用意することと、
取り外し可能な拘束具を前記クライオポンプに取り付けることと、を備え、
前記クライオポンプは、極低温冷凍機と、クライオポンプ真空容器と、前記極低温冷凍機を前記クライオポンプ真空容器に接続する防振構造と、を備え、
前記取り外し可能な拘束具は、前記防振構造と並列に前記極低温冷凍機を前記クライオポンプ真空容器に接続し、前記極低温冷凍機と前記クライオポンプ真空容器の間での前記防振構造の伸長および収縮の両方を拘束することを特徴とするクライオポンプの製造方法。
【請求項9】
取り外し可能な拘束具が取り付けられたクライオポンプを用意することと、
前記取り外し可能な拘束具を前記クライオポンプから取り外すことと、を備え、
前記クライオポンプは、極低温冷凍機と、クライオポンプ真空容器と、前記極低温冷凍機を前記クライオポンプ真空容器に接続する防振構造と、を備え、
前記取り外し可能な拘束具は、前記防振構造と並列に前記極低温冷凍機を前記クライオポンプ真空容器に接続し、前記極低温冷凍機と前記クライオポンプ真空容器の間での前記防振構造の伸長および収縮の両方を拘束することを特徴とするクライオポンプの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプ、クライオポンプの製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプは、極低温に冷却されたクライオパネルに気体分子を凝縮または吸着により捕捉して排気する真空ポンプである。クライオポンプは、例えば、半導体回路製造プロセスなどの真空プロセスを行う真空プロセス装置に設置され、真空環境を提供する。
【0003】
クライオポンプは、極低温冷凍機と、真空プロセス装置に取り付けられ、極低温冷凍機を支持するクライオポンプ真空容器とを備える。クライオパネルは、クライオポンプ真空容器に収容され、極低温冷凍機によって冷却される。極低温冷凍機は、内部で冷媒ガスの圧力を周期的に変動させるように構成され、このような圧力変動は極低温冷凍機を振動させうる。また、例えばギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機のように、ディスプレーサなど可動部材とその駆動源が組み込まれていれば、これらも極低温冷凍機を振動させる。極低温冷凍機から生じる振動は、クライオポンプ真空容器を介して真空プロセス装置に伝わりうる。振動は、真空プロセスの品質に影響を与えうるひとつの因子となるかもしれない。そこで、極低温冷凍機が発する振動の伝達を抑制するために、防振構造を介して極低温冷凍機をクライオポンプ真空容器に接続することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
提案される防振構造付きのクライオポンプは、振動の伝達抑制のために例えばゴム等の防振材料を有する。そのため、この防振構造を含む極低温冷凍機とクライオポンプ真空容器との接続部の剛性は、防振構造を持たない従来のクライオポンプに比べて低下しうる。例えばクライオポンプの製造工場から実際に使用される現場への搬送など、クライオポンプの輸送中には、さまざまな荷重や衝撃がクライオポンプに作用しうる。こうした荷重により防振構造が変形したとすると、それに伴いクライオポンプ内で部品どうしが接触したり、場合によっては損傷したりするリスクが想定される。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、防振構造を採用したクライオポンプの保護にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によると、クライオポンプは、極低温冷凍機と、クライオポンプ真空容器と、極低温冷凍機をクライオポンプ真空容器に接続する防振構造と、防振構造と並列に極低温冷凍機をクライオポンプ真空容器に接続し、極低温冷凍機とクライオポンプ真空容器の間での防振構造の伸長および収縮の両方を拘束する取り外し可能な拘束具と、を備える。
【0008】
本発明のある態様によると、クライオポンプは、極低温冷凍機と、クライオポンプ真空容器と、極低温冷凍機をクライオポンプ真空容器に接続する防振構造と、極低温冷凍機とクライオポンプ真空容器の間での防振構造の伸長および収縮の両方を拘束する取り外し可能な拘束具が取り付けられる第1取付部および第2取付部と、を備える。第1取付部が、クライオポンプ真空容器に、またはクライオポンプ真空容器側の防振構造の端部に形成されている。第2取付部が、極低温冷凍機に、または極低温冷凍機側の防振構造の端部に形成されている。
【0009】
本発明のある態様によると、クライオポンプの製造方法は、クライオポンプを用意することと、取り外し可能な拘束具をクライオポンプに取り付けることと、を備える。クライオポンプは、極低温冷凍機と、クライオポンプ真空容器と、極低温冷凍機をクライオポンプ真空容器に接続する防振構造と、を備える。取り外し可能な拘束具は、防振構造と並列に極低温冷凍機をクライオポンプ真空容器に接続し、極低温冷凍機とクライオポンプ真空容器の間での防振構造の伸長および収縮の両方を拘束する。
【0010】
本発明のある態様によると、クライオポンプの使用方法は、取り外し可能な拘束具が取り付けられたクライオポンプを用意することと、取り外し可能な拘束具をクライオポンプから取り外すことと、を備える。クライオポンプは、極低温冷凍機と、クライオポンプ真空容器と、極低温冷凍機をクライオポンプ真空容器に接続する防振構造と、を備える。取り外し可能な拘束具は、防振構造と並列に極低温冷凍機をクライオポンプ真空容器に接続し、極低温冷凍機とクライオポンプ真空容器の間での防振構造の伸長および収縮の両方を拘束する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防振構造を採用したクライオポンプを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係るクライオポンプを概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る防振構造を概略的に示す分解図である。
【
図3】
図3(a)は、実施の形態に係る防振構造を第1フランジ側から見た概略平面図であり、
図3(b)は、実施の形態に係る防振構造を第2フランジ側から見た概略平面図である。
【
図4】
図4(a)は、
図3(b)のA-A断面を概略的に示し、
図4(b)は、
図3(b)のB-B断面を概略的に示す。
【
図5】
図5(a)は、実施の形態に係る第1環状支持部材の概略斜視図であり、
図5(b)は、実施の形態に係る第2環状支持部材の概略斜視図である。
【
図6】実施の形態に係るクライオポンプの一部を概略的に示す図である。
【
図7】実施の形態に係るクライオポンプの一部を概略的に示す図である。
【
図8】実施の形態に係るクライオポンプの一部を概略的に示す図である。
【
図9】
図9(a)は、実施の形態に係るクライオポンプ製造方法の一例を示すフローチャートであり、
図9(b)は、実施の形態に係るクライオポンプ使用方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、実施の形態に係るクライオポンプ10を概略的に示す図である。クライオポンプ10は、例えばイオン注入装置、スパッタリング装置、蒸着装置、またはその他の真空プロセス装置の真空チャンバに取り付けられて、真空チャンバ内部の真空度を所望の真空プロセスに要求されるレベルまで高めるために使用される。
【0015】
クライオポンプ10は、クライオポンプ真空容器12、極低温冷凍機14、防振構造16、第1段クライオパネル18、第2段クライオパネル20を備える。
【0016】
詳細は後述するが、極低温冷凍機14は、防振構造16を介してクライオポンプ真空容器12に装着され、それにより、クライオポンプ真空容器12は、極低温冷凍機14から振動絶縁されている。
【0017】
クライオポンプ真空容器12は、吸気口フランジ22を有する真空容器本体12aと、真空容器フランジ24を有する冷凍機収容筒12bとを備える。真空容器本体12aは、一端がクライオポンプ吸気口10aとして開放され、他端が閉塞された筒(例えば円筒)であり、吸気口フランジ22は、クライオポンプ吸気口10aを囲むように真空容器本体12aに設けられている。通例、吸気口フランジ22はゲートバルブに装着される。真空プロセス装置の真空チャンバのガスは、ゲートバルブおよびクライオポンプ吸気口10aを通じてクライオポンプ10内に進入する。図示されるクライオポンプ10は、いわゆる横型のクライオポンプであるから、冷凍機収容筒12bは、両端が開放された筒(例えば円筒)であり、一端が真空容器本体12aの側面に形成された冷凍機挿通孔に接合され、他端に真空容器フランジ24が設けられている。
【0018】
なお、クライオポンプ10は、いわゆる縦型であってもよく、その場合、真空容器本体12aは、冷凍機挿通孔を側面ではなく底面に有し、冷凍機収容筒12bは、真空容器本体12aの底面で冷凍機挿通孔に接合される。
【0019】
極低温冷凍機14は、室温部14a、第1冷却ステージ14b、および第2冷却ステージ14cを備え、防振構造16および冷凍機収容筒12bを挿通して真空容器本体12a内へと挿入されている。室温部14aは、クライオポンプ真空容器12の外に位置する。一方、第1冷却ステージ14bおよび第2冷却ステージ14cは、クライオポンプ真空容器12の中に位置する。例えば、第1冷却ステージ14bは、冷凍機収容筒12bの内部スペースに位置し、第2冷却ステージ14cは、真空容器本体12aの内部スペースに位置する。第1冷却ステージ14bは、冷凍機収容筒12bと真空容器本体12aの接合部付近に位置してもよい。極低温冷凍機14は、一例として、二段式のGM冷凍機であるが、パルス管冷凍機などそのほかの極低温冷凍機であってもよい。
【0020】
第1段クライオパネル18は、第1冷却ステージ14bに熱的に結合され、真空容器本体12a内に配置されている。第1段クライオパネル18は、クライオポンプ真空容器12とは非接触となるように、第1冷却ステージ14bによって構造的に支持されている。第1段クライオパネル18は、放射シールドとも称され、多くの場合、真空容器本体12aに比べて若干小径の筒型形状を有する。第1段クライオパネル18は、放射シールドに熱的に結合され、クライオポンプ吸気口10aまたはその近傍に配置された例えば板状(例えば円板状)またはルーバ状の吸気口クライオパネルを有してもよい。
【0021】
第2段クライオパネル20は、第2冷却ステージ14cに熱的に結合され、真空容器本体12a内に配置されている。第2段クライオパネル20は、第1段クライオパネル18とは非接触となるように、第2冷却ステージ14cによって構造的に支持されている。第2冷却ステージ14cおよび第2段クライオパネル20は、第1段クライオパネル18に包囲されている。
【0022】
第1段クライオパネル18および第2段クライオパネル20の配置や形状は、図示される特定のものには限られず、種々の公知の構成を適宜採用することができる。
【0023】
第1段クライオパネル18は、第1冷却ステージ14bによって第1冷却温度に冷却され、第2段クライオパネル20は、第2冷却ステージ14cによって第2冷却温度に冷却される。第2冷却温度は、第1冷却温度より低い。第1冷却温度は、例えば約65~120K、または約80~100Kの範囲にあってもよい。第2冷却温度は、約10~20Kの範囲にあってもよい。
【0024】
よって、第1段クライオパネル18には、例えば水蒸気など、第1冷却温度で蒸気圧が(例えば10-8Pa以下など)充分に低い気体(タイプ1ガスとも称される)が凝縮される。第2段クライオパネル20には、例えばアルゴン、窒素、酸素など、第2冷却温度で蒸気圧が充分に低い気体(タイプ2ガスとも称される)が凝縮される。第2段クライオパネル20には活性炭などの吸着材が設けられていてもよく、その場合、吸着材には、例えば水素など、第2冷却温度でも蒸気圧が充分に低くない気体(タイプ3ガスとも称される)が吸着される。このようにして、クライオポンプ10は、種々の気体を凝縮または吸着により排気し、所望される真空環境を提供することができる。
【0025】
極低温冷凍機14の室温部14aは、冷凍機フランジ26を有する。典型的なクライオポンプにおいては、冷凍機フランジ26が真空容器フランジ24に締結され、それにより極低温冷凍機14がクライオポンプ真空容器12に取り付けられうる。しかし、この実施の形態に係るクライオポンプ10においては、防振構造16が、冷凍機フランジ26を真空容器フランジ24に接続する。極低温冷凍機14は、防振構造16を介してクライオポンプ真空容器12に装着されている。よって、極低温冷凍機14は、クライオポンプ真空容器12に直接取り付けられていない。
【0026】
防振構造16は、第1フランジ28と、第2フランジ30と、第1フランジ28と第2フランジ30との間に配置された環状積層防振体32とを備える。環状積層防振体32は、第1環状防振材料38、第1環状支持部材40、中間環状防振材料42、第2環状支持部材44、第2環状防振材料46を備える。
【0027】
第1フランジ28は、真空容器フランジ24に装着され、クライオポンプ真空容器12に固定されている。例えば、第1フランジ28は、複数本の第1締結ボルト34により真空容器フランジ24と締結されている。第2フランジ30は、冷凍機フランジ26に装着され、極低温冷凍機14の室温部14aに固定されている。例えば、第2フランジ30は、複数本の第2締結ボルト36により冷凍機フランジ26と締結されている。
【0028】
図示される例においては、真空容器フランジ24および冷凍機フランジ26がともに円環形状を有するので、防振構造16も円環形状を有する。ただし、防振構造16が装着されるフランジが例えば矩形など他の形状を有する場合には、防振構造16も例えば角筒形状など他の形状を有してもよい。
【0029】
図2は、実施の形態に係る防振構造16を概略的に示す分解図である。
図3(a)は、実施の形態に係る防振構造16を第1フランジ28側から見た概略平面図であり、
図3(b)は、実施の形態に係る防振構造16を第2フランジ30側から見た概略平面図である。
図4(a)は、
図3(b)のA-A断面を概略的に示し、
図4(b)は、
図3(b)のB-B断面を概略的に示す。また、
図5(a)は、実施の形態に係る第1環状支持部材40の概略斜視図であり、
図5(b)は、実施の形態に係る第2環状支持部材44の概略斜視図である。
【0030】
第1フランジ28から第2フランジ30に向かって、第1環状防振材料38、第1環状支持部材40、中間環状防振材料42、第2環状支持部材44、第2環状防振材料46がこの記載の順に配置され、環状積層防振体32が構成される。
【0031】
環状積層防振体32のこれら構成要素はそれぞれリング形状を有し、環状積層防振体32の中心軸方向に沿って互いに隣接して同軸に配置されている。各構成要素のリング形状は、共通の内径および外径を有してもよい。防振構造16の外径は第1フランジ28および第2フランジ30の外径により定まるが、環状積層防振体32の外径はそれより小さく、環状積層防振体32は、第1フランジ28と第2フランジ30に挟まれたスペースに収められている。
【0032】
第1環状支持部材40、第2環状支持部材44は、第1フランジ28、第2フランジ30と同様に、例えばステンレス鋼などの金属材料、またはその他の適する構造材料で形成されている。第1環状防振材料38、中間環状防振材料42、第2環状防振材料46は、例えばゴムで形成されている。あるいは、第1環状防振材料38、中間環状防振材料42、第2環状防振材料46は、ゲル、フッ素樹脂などの合成樹脂、または、例えばアルミニウムなどの軟質金属、またはその他の防振材料で形成されていてもよい。第1環状防振材料38、中間環状防振材料42、第2環状防振材料46は、同じ材料で形成されてもよいし、あるいは、異なる材料で形成されてもよい。
【0033】
これら環状防振材料(38,42,46)の材料を選択することによって、防振構造16の振動絶縁特性(例えば、振動の周波数と振動伝達率との関係)が調節されてもよい。環状防振材料の寸法(例えば、環状積層防振体32の中心軸方向の厚さ、隣接する環状支持部材との接触面積など)を選択することによって、防振構造16の振動絶縁特性が調節されてもよい。また、環状支持部材(40,44)の寸法及び/または材料を選択することによって、防振構造16の振動絶縁特性が調節されてもよい。
【0034】
実施の形態に係る防振構造16においては、第1フランジ28および第2環状支持部材44が第2フランジ30および第1環状支持部材40から振動絶縁されるように、第2環状支持部材44が第1フランジ28に固定されるとともに第1環状支持部材40が第2フランジ30に固定されている。防振構造16は、第1フランジ28、第2フランジ30、および環状積層防振体32を互いに固定するために、第1締結部材48および第2締結部材50を備える。
【0035】
第1締結部材48は、第1フランジ28と第2環状支持部材44との間に第1環状防振材料38、第1環状支持部材40、中間環状防振材料42を挟み込んで保持するように第2環状支持部材44を第1フランジ28に固定する。
【0036】
防振構造16は、第2環状支持部材44、中間環状防振材料42、第1環状支持部材40、および第1環状防振材料38を貫通して、第1フランジ28に達する第1締結穴49を有する。第1締結部材48が第1締結穴49に挿入され、第1締結部材48により第2環状支持部材44が第1フランジ28と締結される。第1フランジ28と第2環状支持部材44との間に挟み込まれた第1環状防振材料38、第1環状支持部材40、中間環状防振材料42には、第1締結部材48による締結力が働く。
【0037】
図示される例では、第1締結部材48は皿ボルトであり、第1締結穴49は第2環状支持部材44でザグリ穴とされ、第1締結部材48の頭部は第2環状支持部材44に収められている。また、第1締結穴49は、第1フランジ28でボルト穴となっており、それにより、第1締結部材48は、第2環状支持部材44を第1フランジ28と締結する。第1締結穴49は、第1フランジ28を貫通していない。第1締結部材48および第1締結穴49は、周方向に等角度間隔に複数箇所(例えば8箇所)に設けられている。
【0038】
第1締結部材48は、第1環状支持部材40とは非接触に配置される。第1環状支持部材40は、第1締結部材48よりも大径の第1挿通孔52を有する。第1挿通孔52は、第1環状支持部材40に形成されたいわゆるバカ穴であり、第1締結穴49の一部となっている。第1締結部材48は、第1環状支持部材40との間にいくらかの遊びをもって第1挿通孔52を挿通する。したがって、第1締結部材48と第1環状支持部材40の間に振動伝達経路が形成されない。第1環状支持部材40の第1挿通孔52と同様に、第1環状防振材料38および中間環状防振材料42にも、第1締結部材48が挿通する挿通孔が形成されている。これら挿通孔は例えば円形の貫通孔であるが、矩形など他の形状の貫通孔であってもよい。
【0039】
また、第1締結部材48は、第2フランジ30とは非接触に配置される。第1締結部材48の頭部が第2環状支持部材44に支持され、第2フランジ30と第2環状支持部材44の間には第2環状防振材料46が挿入されているので、第1締結部材48は、第2フランジ30と接触しない。
【0040】
第2締結部材50は、第2フランジ30と第1環状支持部材40との間に中間環状防振材料42、第2環状支持部材44、第2環状防振材料46を挟み込んで保持するように第1環状支持部材40を第2フランジ30に固定する。
【0041】
防振構造16は、第2フランジ30、第2環状防振材料46、第2環状支持部材44、および中間環状防振材料42を貫通して、第1環状支持部材40に達する第2締結穴51を有する。第2締結部材50が第2締結穴51に挿入され、第2締結部材50により第2フランジ30が第1環状支持部材40と締結される。第2フランジ30と第1環状支持部材40との間に挟み込まれた中間環状防振材料42、第2環状支持部材44、第2環状防振材料46には、第2締結部材50による締結力が働く。
【0042】
図示される例では、第2締結部材50はボルトであり、第2締結穴51は第2フランジ30で深ザグリ穴とされ、第2締結部材50の頭部は第2フランジ30に収められている。また、第2締結穴51は、第1環状支持部材40でボルト穴となっており、それにより、第2締結部材50は、第2フランジ30を第1環状支持部材40と締結する。第2締結穴51は、第1環状支持部材40を貫通している。第2締結部材50および第2締結穴51は、周方向に等角度間隔に複数箇所(例えば8箇所)に設けられている。
【0043】
第2締結部材50は、第2環状支持部材44とは非接触に配置される。第2環状支持部材44は、第2締結部材50よりも大径の第2挿通孔54を有する。第2挿通孔54は、第2環状支持部材44に形成されたいわゆるバカ穴であり、第2締結穴51の一部となっている。第2締結部材50は、第2環状支持部材44との間にいくらかの遊びをもって第2挿通孔54を挿通する。したがって、第2締結部材50と第2環状支持部材44の間に振動伝達経路が形成されない。第2環状支持部材44の第2挿通孔54と同様に、中間環状防振材料42および第2環状防振材料46にも、第2締結部材50が挿通する挿通孔が形成されている。これら挿通孔は例えば円形の貫通孔であるが、矩形など他の形状の貫通孔であってもよい。
【0044】
また、第2締結部材50は、第1フランジ28とは非接触に配置される。第1フランジ28と第1環状支持部材40の間には第1環状防振材料38が挿入されているため、第2締結部材50の先端部は、第1フランジ28に達していない。
【0045】
中間環状防振材料42には、第1環状防振材料38に比べて大きな軸方向圧縮力が作用する。なぜなら、第1環状防振材料38は第1締結部材48の締結力によって圧縮されるにすぎないのに対して、中間環状防振材料42は、第1締結部材48と第2締結部材50の両方の締結力によって圧縮されているからである。
【0046】
そこで、中間環状防振材料42は、環状積層防振体32の中心軸方向において第1環状防振材料38に比べて厚くなっている。これにより、中間環状防振材料42の強度を高めることができる。中間環状防振材料42の厚さCは、例えば、第1環状防振材料38の厚さDの約1.5~3倍、例えば2倍程度であってもよい。中間環状防振材料42は、この厚さCをもつ一枚の材料層で形成されてもよい。あるいは、中間環状防振材料42は、複数枚(例えば2枚)の材料層を重ね合わせたものであってもよい(例えば、第1環状防振材料38として使用されている材料層と同一のものを2枚重ねてもよい)。同様に、中間環状防振材料42には、第2環状防振材料46に比べて大きな軸方向圧縮力が作用するから、中間環状防振材料42は、環状積層防振体32の中心軸方向において第2環状防振材料46に比べて厚くなっている。
【0047】
環状防振材料の挿通孔は、円形の貫通孔に代えて、環状防振材料の外周(または内周)につながっている(例えば、平面視でU字状の)切り欠き部であってもよい。環状防振材料はゴムなどの軟らかい材料で形成されているので、こうした切り欠きのほうが、貫通孔に比べて、加工が容易でありうる。同様に、環状支持部材の挿通孔も、環状支持部材の外周(または内周)につながった切り欠き部であってもよい。
【0048】
第1締結部材48と第2締結部材50(すなわち第1締結穴49と第2締結穴51)は、環状積層防振体32の径方向に同じ位置で周方向に互いに異なる位置に配置されている。ただし、例えば第1締結部材48と第2締結部材50を径方向に異なる位置に配置することにより、第1締結部材48と第2締結部材50が、環状積層防振体32の周方向に同じ位置に配置されることも可能である。
【0049】
第2フランジ30は、第1フランジ28と気密に接続されている。第1フランジ28と第2フランジ30の間には真空シール部56が形成されている。第1フランジ28はその開口部から第2フランジ30に向かって延長された第1フランジ筒部28aを有し、第2フランジ30はその開口部から第1フランジ28に向かって延長された第2フランジ筒部30aを有する。
【0050】
第2フランジ筒部30aの外径は、第1フランジ筒部28aの内径よりもわずかに小さく、第2フランジ筒部30aは第1フランジ筒部28aに挿入されている。第1フランジ筒部28aの内周面と第2フランジ筒部30aの外周面との間に例えばOリングなどのシール部材56aが配置され、それにより真空シール部56が形成されている。シール部材56aは、第2フランジ筒部30aの外周面に装着されている。
【0051】
真空シール部56においては、第1フランジ筒部28aと第2フランジ筒部30aは、シール部材56aのみを介して互いに接触するように両者の寸法公差が定められている。よって、第1フランジ筒部28aの内周面と第2フランジ筒部30aの外周面との間には、例えば、約0.05~0.3mm、例えば約0.1mmの隙間が形成され、第1フランジ28と第2フランジ30は、互いに接触していない。
【0052】
なお、第1フランジ筒部28aと第2フランジ筒部30aの径方向の位置関係は逆にすることも可能であり、第1フランジ筒部28aが第2フランジ筒部30aに挿入され、真空シール部56が第1フランジ筒部28aの外周面と第2フランジ筒部30aの内周面との間に形成されてもよい。
【0053】
第1フランジ28は、真空容器フランジ24と気密接続される真空フランジであり、フランジ端面にはOリングなどのシール部材を収める第1リング溝58が形成されている。第1リング溝58は、第1締結ボルト34用の第1ボルト孔34aより径方向内側で、第1締結部材48より径方向外側に位置する。また、第2フランジ30は、冷凍機フランジ26と気密接続される真空フランジであり、フランジ端面にはOリングなどのシール部材を収める第2リング溝60が形成されている。第2リング溝60は、第2締結部材50より径方向内側に位置する。第2締結ボルト36用の第2ボルト孔36aは、第2締結部材50より径方向外側に形成されている。
【0054】
環状積層防振体32は、真空シール部56の径方向外側に配置されている。環状積層防振体32は、第1フランジ筒部28aおよび第2フランジ筒部30aを囲むようにして、真空環境の外に配置されている。すなわち、環状積層防振体32は、極低温冷凍機14の室温部14aと同様に周囲環境に配置されている。これにより、環状積層防振体32を真空環境に配置する場合に比べて、真空シール部56並びに真空フランジの径を小さく設計することが容易となる。また、環状積層防振体32の径を大きく設計することが容易となる。その場合、環状防振材料の面積の増加により、防振構造16のばね定数を小さくし、高周波数の振動伝達率を低減させやすくなる。
【0055】
防振構造16の組立手順の一例を述べる。まず、第1フランジ28が、第1フランジ筒部28aを上向きとするように載置される。第1環状防振材料38、第1環状支持部材40、中間環状防振材料42、および第2環状支持部材44がこの順番で第1フランジ28に積層される。これらの部材は、各部材の貫通孔の位置を合わせるようにして第1フランジ28に積み重ねられ、それにより、第1締結穴49が形成される。第1締結部材48が第1締結穴49に挿入され、第2環状支持部材44が第1フランジ28と締結される。
【0056】
次に、第2環状支持部材44の上に第2環状防振材料46を重ね合わせ、さらにその上から、第2フランジ30が取り付けられる。このとき、第2フランジ筒部30aが第1フランジ筒部28aに挿入される。また、各部材の貫通孔の位置を合わせることにより、第2締結穴51が形成される。第2締結部材50が第2締結穴51に挿入され、第2フランジ30が第1環状支持部材40と締結される。こうして、防振構造16は組み立てられる。
【0057】
このようにして、第1環状支持部材40は、第1環状防振材料38と中間環状防振材料42に挟持されるとともに、第1フランジ28、第2環状支持部材44、第1締結部材48とは非接触に配置される。第2環状支持部材44は、第2環状防振材料46と中間環状防振材料42に挟持されるとともに、第2フランジ30、第1環状支持部材40、第2締結部材50とは非接触に配置される。また、上述のように、第1フランジ28と第2フランジ30は互いに直接触れていない。
【0058】
よって、防振構造16は、第1フランジ28と第2環状支持部材44と第1締結部材48を有する第1支持構造と、第2フランジ30と第1環状支持部材40と第2締結部材50を有する第2支持構造とを備え、第1支持構造と第2支持構造とは第1環状防振材料38、中間環状防振材料42、および第2環状防振材料46によって互いに振動絶縁されている。第1支持構造はクライオポンプ真空容器12に固定され、第2支持構造は極低温冷凍機14に固定されている。
【0059】
既存のクライオポンプにおいては、多くの場合、極低温冷凍機がクライオポンプ真空容器に直接固定されている。極低温冷凍機は、内部での周期的な圧力変動およびディスプレーサなど可動部材の動きに起因して、振動源となりうる。極低温冷凍機の振動は、クライオポンプ真空容器に伝わり、さらには、クライオポンプが装着された真空プロセス装置へと伝わりうる。
【0060】
これに対して、実施の形態に係るクライオポンプ10によれば、極低温冷凍機14は、防振構造16を介してクライオポンプ真空容器12に装着されている。防振構造16は、クライオポンプ真空容器12に固定された第1フランジ28と、極低温冷凍機14に固定された第2フランジ30と、第1フランジ28から第2フランジ30に向かって、第1環状防振材料38、第1環状支持部材40、中間環状防振材料42、第2環状支持部材44、第2環状防振材料46がこの記載の順に配置された環状積層防振体32と、を備える。第1フランジ28および第2環状支持部材44が第2フランジ30および第1環状支持部材40から振動絶縁されるように、第2環状支持部材44が第1フランジ28に固定されるとともに第1環状支持部材40が第2フランジ30に固定されている。
【0061】
これにより、クライオポンプ真空容器12は、極低温冷凍機14から振動絶縁されている。したがって、極低温冷凍機14から他の機器に伝わる振動を低減することができる。極低温冷凍機14の振動が真空プロセス装置に与えうるリスクも低減される。
【0062】
上述の実施の形態では、防振構造16の内部に真空環境を保持するために真空シール部56が設けられている。真空シール部56は、第1フランジ28と第2フランジ30との嵌め合い構造(いわゆるインロー構造)と、これら2つのフランジ間に装着されたシール部材56aとにより形成されている。しかし、防振構造16の気密性を確保する他の構造を用いることも可能である。たとえば、第1フランジ28と第2フランジ30がベローズ接続により一体構造として製作されてもよい。この場合、第1フランジ28と第2フランジ30の間に設置される環状積層防振体32は、複数の部分を組み合わせて構成される分割構造を有してもよい。環状積層防振体32は、例えば、複数の円弧状(例えば2つの半円状)の積層防振体に分割されてもよく、これらの分割された積層防振体が互いに円環状に結合され、または円環状に並べられて、環状積層防振体32が形成されてもよい。
【0063】
ところで、防振構造16はゴム等の防振材料を有するため、剛性が比較的低くなりうる。防振構造16を含む極低温冷凍機14とクライオポンプ真空容器12との接続部の剛性は、防振構造16を持たない従来のクライオポンプに比べて低下しうる。そのため、クライオポンプ10に不測の荷重や衝撃が作用したとき防振構造16が変形し、クライオポンプ10内で近接した部品どうし(例えば、クライオポンプ真空容器12と第1段クライオパネル18など)が接触したり、場合によっては損傷したりするリスクが想定される。こうしたリスクは、例えばクライオポンプ10の製造工場から実際に使用される現場への搬送など、クライオポンプ10の輸送中に顕在化することが懸念される。
【0064】
輸送前にクライオポンプ10は例えば発泡スチロールなどの梱包材で梱包されうる。しかし、安価に利用可能な梱包材は、クライオポンプ10との間にいくらかの隙間を有する。そのため、輸送中の衝撃荷重などにより、梱包材のなかで防振構造16が変形してクライオポンプ真空容器12に対して極低温冷凍機14が移動しうる。その結果、上述のようにクライオポンプ10内に損傷が発生する可能性がある。本発明者の考察によれば、既存の梱包材は、防振構造16が伸長する場合に比べて、収縮したときの極低温冷凍機14の動きを効果的に抑えることが難しい。梱包材の寸法公差を厳しくすれば、梱包材とクライオポンプ10との隙間を小さくしうるが、それは梱包材の製造コスト増加を招きうるため、望ましくない。
【0065】
そこで、この実施の形態では、以下に説明するように、クライオポンプ10には、防振構造16の変形を防ぐための拘束具70を取り付け可能である。クライオポンプ10の輸送時、保管時など、クライオポンプ10が使用されないときには、拘束具70がクライオポンプ10に取り付けられる。拘束具70が防振構造16と組み合わされることによって、防振構造16の変形およびそれによるクライオポンプ真空容器12に対する極低温冷凍機14の動きが防止される。拘束具70は、クライオポンプ10から取り外し可能である。クライオポンプ10が使用されるとき、つまり真空プロセス装置に設置され当該装置を真空排気するときには、拘束具70は、防振構造16が防振機能を提供できるように、クライオポンプ10から取り外される。
【0066】
図6は、実施の形態に係るクライオポンプ10の一部を概略的に示す図である。
図6には、取り外し可能な拘束具70がクライオポンプ10に取り付けられた状態が示されている。この拘束具70は、防振構造16と並列に極低温冷凍機14をクライオポンプ真空容器12に接続し、極低温冷凍機14とクライオポンプ真空容器12の間での防振構造16の伸長および収縮の両方を拘束する。
【0067】
図1には、拘束具70が取り付けられていない状態のクライオポンプ10が示されている。
図1に示されるように、クライオポンプ10には、クライオポンプ真空容器12に形成された第1取付部72と、極低温冷凍機14に形成された第2取付部74とが設けられている。この実施の形態では、第1取付部72は、真空容器フランジ24の外周面に形成され、第2取付部74は、冷凍機フランジ26の外周面に形成されている。
【0068】
第1取付部72は、真空容器フランジ24の外周面上に周方向に複数箇所(例えば少なくとも3箇所)に形成されている。同様に、第2取付部74は、冷凍機フランジ26の外周面上に周方向に複数箇所(例えば少なくとも3箇所)に形成されている。この例では、4つの第1取付部72が真空容器フランジ24の外周面上に周方向に等間隔に形成され、4つの第2取付部74が冷凍機フランジ26の外周面上に周方向に等間隔に形成されている。第2取付部74は、第1取付部72に対応する配置で(つまり第1取付部72と同じ周方向位置に)、冷凍機フランジ26の外周面に形成されている。
【0069】
第1取付部72は、真空容器フランジ24の外周面に形成された第1座面72aと、第1座面72aに形成された第1ねじ穴72b(例えばボルト穴)とを備える。第1座面72aは、拘束具70の形状に合わせた形状を有する。真空容器フランジ24と隣接する防振構造16の第1フランジ28の外周面にも、第1座面72aから連続する拘束具70の形状に合わせた座面が形成される。例えば、後述のように拘束具70が平坦なプレートである場合には、第1座面72aも平坦面とされる。第1フランジ28に形成された座面も、第1座面72aと面一の平坦面とされる。
【0070】
第1取付部72と同様に、第2取付部74は、拘束具70の形状に合わせて冷凍機フランジ26の外周面に形成された第2座面74aと、第2座面74aに形成された第2ねじ穴74b(例えばボルト穴)とを備える。冷凍機フランジ26と隣接する防振構造16の第2フランジ30の外周面にも、第2座面74aから連続する拘束具70の形状に合わせた座面が形成される。
【0071】
拘束具70は、板材または棒材であり、一例として、細長い平坦なプレートである。あるいは、拘束具70は、フランジ外周面に沿った形状をもつ円弧状のプレートなど、他の適宜の形状を有してもよい。拘束具70は、金属材料(例えばステンレス鋼)など、剛性の高い材料で形成される。このような高剛性材料は、防振構造16の防振材料(例えば
図1に示される、第1環状防振材料38、中間環状防振材料42、第2環状防振材料46)よりも大きなヤング率を有する。よって、拘束具70は、防振構造16の伸縮の方向におけるヤング率が防振構造16に比べて大きい。なお、拘束具70は、防振材料よりも高い剛性を有する合成樹脂材料またはその他の適切な材料で形成されてもよい。
【0072】
図6に示されるように、取り外し可能な拘束具70は、一端で第1取付部72に取り付けられ、他端で第2取付部74に取り付けられる。拘束具70を第1取付部72および第2取付部74に取り付けるために、第1取付部材76aおよび第2取付部材76bが用いられる。例えば、第1取付部材76aは、第1ねじ穴72bに螺合するねじ(例えばボルト)であってもよく、第2取付部材76bは、第2ねじ穴74bに螺合するねじ(例えばボルト)であってもよい。拘束具70の両端にはこれら取付部材に対応する通し穴が形成されている。
【0073】
拘束具70の一端を第1座面72aに接触させ、第1取付部材76aを拘束具70の一端の穴に挿し込んで第1ねじ穴72bに取り付けることで、拘束具70の一端が第1取付部72に固定される。同様に、拘束具70の他端を第2座面74aに接触させ、第2取付部材76bを拘束具70の他端の穴に挿し込んで第2ねじ穴74bに取り付けることで、拘束具70の他端が第2取付部74に固定される。
【0074】
こうしてクライオポンプ10に取り付けられた拘束具70は、防振構造16の両端を架橋するように、第1取付部72から第2取付部74へと防振構造16に沿って延在する。第1取付部材76aと第2取付部材76bの締結力により拘束具70が防振構造16に固定される。これにより、拘束具70は、防振構造16の伸長および収縮の両方を拘束し、クライオポンプ真空容器12に対する極低温冷凍機14の動きを拘束することができる。したがって、クライオポンプ10の輸送中に作用しうる不測の荷重や衝撃による防振構造16の変形およびこれに起因するクライオポンプ10内部での損傷の発生のリスクを低減し、クライオポンプ10を保護することができる。
【0075】
なお、第1取付部72および第2取付部74は、他の配置も可能である。例えば、第1取付部72がクライオポンプ真空容器12側の防振構造16の端部に形成され、第2取付部74が極低温冷凍機14側の防振構造16の端部に形成されてもよい。上述の実施の形態では、真空容器フランジ24に防振構造16の第1フランジ28が固定され、冷凍機フランジ26に防振構造16の第2フランジ30が固定されている。そこで、第1取付部72は、防振構造16の第1フランジ28の外周面に形成されてもよい。同様に、第2取付部74は、防振構造16の第2フランジ30の外周面に形成されてもよい。
【0076】
また、第1取付部72および第2取付部74は、他の形状も可能である。例えば、これら取付部は、ねじ穴の代わりに、突起を有してもよい。この突起は、その外周面にねじを形成した雄ねじ(ボルト)であってもよい。この場合、第1取付部材76aおよび第2取付部材76bは、対応するナットであってもよい。取付部(突起)を拘束具70の端部の穴に挿し込んで拘束具70を取付部の座面に接触させ、取付部に取付部材を取り付けることで、拘束具70が取付部に固定されてもよい。あるいは、第1取付部72および第2取付部74は、拘束具70と係合してこれを固定するその他の形状を有してもよい。拘束具70についても、取付部に取り付け可能な任意の形状を有してもよい。
【0077】
図7は、実施の形態に係るクライオポンプ10の一部を概略的に示す図である。
図7には、取り外し可能な拘束具70がクライオポンプ10に取り付けられた状態が示されている。上述の実施の形態と同様に、拘束具70は、防振構造16と並列に極低温冷凍機14をクライオポンプ真空容器12に接続し、極低温冷凍機14とクライオポンプ真空容器12の間での防振構造16の伸長および収縮の両方を拘束する。
【0078】
クライオポンプ10には、クライオポンプ真空容器12に形成された第1取付部72と、極低温冷凍機14に形成された第2取付部74とが設けられている。この実施の形態では、第1取付部72は、真空容器フランジ24に形成され、第2取付部74は、冷凍機フランジ26の外周面に形成されている。
【0079】
拘束具70は、第1拘束部材81と第2拘束部材82を備える。第1拘束部材81は、一端で第1取付部72に、かつ他端で第2取付部74に取り付けられ、防振構造16の伸長を拘束する。第1拘束部材81は、例えば棒状であり、例えばボルトであってもよい。第2拘束部材82は、第1取付部72と第2取付部74の間で第1拘束部材81に沿って配置され、防振構造16の収縮を拘束する。例えば、第2拘束部材82は、第1拘束部材81が挿通可能な筒であってもよい。上述の実施の形態と同様に、第1拘束部材81および第2拘束部材82は、例えば、金属材料(例えばステンレス鋼)などの高剛性材料で形成される。
【0080】
第1取付部72は、真空容器フランジ24に形成された第1耳部83を備え、第2取付部74は、冷凍機フランジ26に形成された第2耳部84を備えてもよい。第1耳部83は、真空容器フランジ24の外周から径方向外側に突き出した凸部であり、第1拘束部材81を受け入れる穴(例えばボルト通し穴)を有する。同様に、第2耳部84は、冷凍機フランジ26の外周から径方向外側に突き出した凸部であり、第1拘束部材81を受け入れる穴(例えばボルト通し穴)を有する。
【0081】
第1耳部83は、真空容器フランジ24の外周面上に周方向に複数箇所(例えば少なくとも3箇所)に形成されている。同様に、第2耳部84は、冷凍機フランジ26の外周面上に周方向に複数箇所(例えば少なくとも3箇所)に形成されている。この例では、4つの第1耳部83が真空容器フランジ24の外周面上に周方向に等間隔に形成され、4つの第2耳部84が冷凍機フランジ26の外周面上に周方向に等間隔に形成されている。第2耳部84は、第1耳部83に対応する配置で(つまり第1耳部83と同じ周方向位置に)、冷凍機フランジ26の外周面に形成されている。
【0082】
なお、第1取付部72がクライオポンプ真空容器12側の防振構造16の端部に形成され、第2取付部74が極低温冷凍機14側の防振構造16の端部に形成されてもよい。上述の実施の形態では、真空容器フランジ24に防振構造16の第1フランジ28が固定され、冷凍機フランジ26に防振構造16の第2フランジ30が固定されている。そこで、第1耳部83は、防振構造16の第1フランジ28に形成されてもよい。同様に、第2耳部84は、防振構造16の第2フランジ30に形成されてもよい。
【0083】
拘束具70は、一端で第1取付部72に取り付けられ、他端で第2取付部74に取り付けられる。例えば、第1拘束部材81がボルトである場合、まず第1拘束部材81は、第1耳部83のボルト通し穴、および第2拘束部材82に挿し込まれる。このとき、第2拘束部材82は、第1耳部83と第2耳部84との間、つまり、第1耳部83に対して第1拘束部材81のボルト頭部とは反対側に配置される。続いて、第1拘束部材81の先端部が第2耳部84のボルト通し穴に挿し込まれ、ナット85を用いて第1拘束部材81が第2耳部84に固定される。なお、第2耳部84には第1拘束部材81が螺合するボルト穴が形成されていてもよく、この場合第1拘束部材81の先端部が第2耳部84に直接固定されるので、ナット85を用いる必要はない。
【0084】
こうしてクライオポンプ10に取り付けられた拘束具70は、防振構造16の両端を架橋するように、第1取付部72から第2取付部74へと防振構造16に沿って延在する。第1拘束部材81は、第1耳部83および第2耳部84の両外側でこれらと係合し、防振構造16の伸長を拘束することができる。また、第2拘束部材82の軸方向長さは第1耳部83と第2耳部84との間隔に等しくなっている。第2拘束部材82は、第1拘束部材81に挿通されて第1耳部83と第2耳部84とに挟み込まれているため、防振構造16の収縮を拘束することができる。
【0085】
このようにして、拘束具70は、防振構造16の伸長および収縮の両方を拘束し、クライオポンプ真空容器12に対する極低温冷凍機14の動きを拘束することができる。クライオポンプ10の輸送中に作用しうる不測の荷重や衝撃による防振構造16の変形およびこれに起因するクライオポンプ10内部での損傷の発生のリスクを低減し、クライオポンプ10を保護することができる。
【0086】
なお、第1取付部72および第2取付部74を設けるスペースが真空容器フランジ24および冷凍機フランジ26上に確保される場合には、第1耳部83および第2耳部84は設けられなくてもよい。この場合、第1拘束部材81が挿し通される穴が真空容器フランジ24および冷凍機フランジ26に設けられてもよい。
【0087】
図8は、実施の形態に係るクライオポンプ10の一部を概略的に示す図である。第1取付部72は、上述の第1耳部83の代わりに、第1取付ブロック86を備えてもよい。第2取付部74は、第2耳部84の代わりに、第2取付ブロック87を備えてもよい。第1取付ブロック86は、例えばボルトなどの取付部材によって真空容器フランジ24に取り付けられる。このとき、真空容器フランジ24上にある既存のボルト穴が使われてもよい。第1取付ブロック86には、第1耳部83のように、第1拘束部材81の通し穴が形成されている。同様に、第2取付ブロック87は、例えばボルトなどの取付部材によって冷凍機フランジ26に取り付けられる。このとき、冷凍機フランジ26上にある既存のボルト穴が使われてもよい。第2取付ブロック87には、第2耳部84のように、第1拘束部材81の通し穴が形成されている。
【0088】
第1拘束部材81は、第1取付ブロック86の通し穴、および第2拘束部材82に挿し込まれる。このとき、第2拘束部材82は、第1取付ブロック86と第2取付ブロック87との間に配置される。続いて、第1拘束部材81の先端部が第2取付ブロック87の通し穴に挿し込まれ、ナット85を用いて第1拘束部材81が第2取付ブロック87に固定される。なお、第2取付ブロック87には第1拘束部材81が螺合するボルト穴が形成されていてもよく、この場合第1拘束部材81の先端部が第2取付ブロック87に直接固定されるので、ナット85を用いる必要はない。
【0089】
図8の実施の形態においても、
図7の実施の形態と同様に、拘束具70は、防振構造16の伸長および収縮の両方を拘束し、クライオポンプ真空容器12に対する極低温冷凍機14の動きを拘束することができる。クライオポンプ10の輸送中に作用しうる不測の荷重や衝撃による防振構造16の変形およびこれに起因するクライオポンプ10内部での損傷の発生のリスクを低減し、クライオポンプ10を保護することができる。
【0090】
図9(a)は、実施の形態に係るクライオポンプ製造方法の一例を示すフローチャートであり、
図9(b)は、実施の形態に係るクライオポンプ使用方法の一例を示すフローチャートである。
【0091】
図9(a)に示されるように、クライオポンプ製造方法は、クライオポンプ10を用意することと(S10)、取り外し可能な拘束具70をクライオポンプ10に取り付けることと(S20)、を備える。例えば
図1を参照して説明したような拘束具70が取り付けられていないクライオポンプ10が用意される。取り外し可能な拘束具70は、例えば
図6から
図8を参照して例示したように、防振構造16と並列に極低温冷凍機14をクライオポンプ真空容器12に接続し、極低温冷凍機14とクライオポンプ真空容器12の間での防振構造16の伸長および収縮の両方を拘束する。拘束具70の取り付け(S20)は、クライオポンプ10の製造における最終段階の工程の一つとして、例えばクライオポンプ10の出荷前に行われてもよい。この方法は、拘束具70が取り付けられたクライオポンプ10を梱包材で梱包することをさらに備えてもよい。
【0092】
このようにすれば、拘束具70によってクライオポンプ真空容器12に対する極低温冷凍機14の動きを拘束し、不測の荷重や衝撃による防振構造16の変形およびこれに起因するクライオポンプ10内部での損傷の発生のリスクを低減し、クライオポンプ10を保護することができる。
【0093】
図9(b)に示されるように、クライオポンプ使用方法は、取り外し可能な拘束具70が取り付けられたクライオポンプ10を用意することと(S30)、取り外し可能な拘束具70をクライオポンプ10から取り外すことと(S40)、を備える。例えば、
図6の実施の形態では、第1取付部材76aおよび第2取付部材76bをそれぞれ第1取付部72および第2取付部74から取り外すことによって、拘束具70をクライオポンプ10から取り外すことができる。
図7および
図8の実施の形態では、ナット85を取り外すことによって、拘束具70をクライオポンプ10から取り外すことができる。こうして拘束具70を取り外すことにより、防振構造16が拘束具70から解放される。防振構造16は、クライオポンプ10が現場で使用されるとき、つまり真空プロセス装置に設置され当該装置を真空排気するときには、防振機能を提供することができる。
【0094】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0095】
上述の実施の形態では、防振構造16が特定の形態を有する場合、すなわち、第1フランジ28から第2フランジ30に向かって、第1環状防振材料38、第1環状支持部材40、中間環状防振材料42、第2環状支持部材44、第2環状防振材料46がこの記載の順に配置され、環状積層防振体32が構成される場合を例として説明しているが、実施の形態に係る拘束具70は、クライオポンプ10に搭載されうる他の防振構造にも適用可能である。拘束具70と組み合わされるクライオポンプ10の防振構造は、より単純な形態を有してもよく、例えば、クライオポンプ真空容器12の真空容器フランジ24と極低温冷凍機14の第1フランジ28との間に防振ゴムなどの防振材料を挟み込むようにしてこれら2つのフランジを互いに固定したものであってもよい。
【0096】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0097】
10 クライオポンプ、 12 クライオポンプ真空容器、 14 極低温冷凍機、 16 防振構造、 24 真空容器フランジ、 26 冷凍機フランジ、 28 第1フランジ、 30 第2フランジ、 32 環状積層防振体、 38 第1環状防振材料、 40 第1環状支持部材、 42 中間環状防振材料、 44 第2環状支持部材、 46 第2環状防振材料、 70 拘束具、 72 第1取付部、 74 第2取付部、 81 第1拘束部材、 82 第2拘束部材、 83 第1耳部、 84 第2耳部。