(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085274
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/41 20060101AFI20240619BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20240619BHJP
B41M 5/40 20060101ALI20240619BHJP
B41M 5/333 20060101ALI20240619BHJP
B41M 5/337 20060101ALI20240619BHJP
B41M 5/44 20060101ALI20240619BHJP
B41M 5/46 20060101ALI20240619BHJP
B41M 5/28 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B41M5/41 200
B41M5/42 220
B41M5/40 220
B41M5/333 220
B41M5/337 230
B41M5/44 220
B41M5/46 210
B41M5/28 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199718
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 卓史
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026AA24
2H026BB02
2H026BB24
2H026DD48
2H026EE03
2H026EE05
2H026FF11
(57)【要約】
【課題】環境負荷低減、プラスティックの使用量の削減を目的に、紙基材を用いて、透明性が高い感熱記録体を提供する。
【解決手段】原紙、前記原紙の少なくとも一方の面に原紙から近い側から樹脂層、並びにロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体であって、JIS K7136で測定されるHAZE値が80%以下であり、前記樹脂層が溶融押出法により積層されてなるか、又は原紙と樹脂層とが接着剤を用いて貼り合わされてなる感熱記録体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙、前記原紙の少なくとも一方の面に原紙から近い側から樹脂層、並びにロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体であって、
JIS K7136で測定されるHAZE値が80%以下であり、
前記樹脂層が溶融押出法により積層されてなるか、又は原紙と樹脂層とが接着剤を用いて貼り合わされてなる
感熱記録体。
【請求項2】
前記樹脂層とは反対側の感熱記録層上に、主に接着剤を含有する保護層を有する、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
JIS K7126で測定される23℃、50%RHでの酸素透過度が10mL/(m2・24h・atm)以下である、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
JIS Z 0208で測定される40℃、90%RH条件下での水蒸気透過度が50g/(m2・24h)以下である、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記原紙がグラシン紙であって、坪量が50g/m2以下である、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項6】
前記樹脂層を構成する樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び生分解性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項7】
前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、及び3-ヒドロキシブタン酸・3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の感熱記録体。
【請求項8】
前記感熱記録層とは反対側の原紙上に樹脂層を有する、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項9】
前記樹脂層の坪量が10g/m2以上である、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項10】
前記原紙以外の層の合計坪量が、前記原紙の坪量以下である、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項11】
前記顕色剤として、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、5-(N-3-メチルフェニル-スルフォニルアミド)-(N’,N’’-ビス-(3-メチルフェニル)-イソフタル酸ジアミド、3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルフォネート、及びN,N’-ジ[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル尿素からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項12】
前記感熱記録層が、SP(溶解度パラメーター)値が7.5~9.5(cal/cm3)0.5である接着剤を含有する、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項13】
前記保護層中の接着剤の含有割合が全固形分量中の80質量%以上である、請求項2に記載の感熱記録体。
【請求項14】
前記樹脂層上に部分的に感熱記録層を有する、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項15】
印刷層を更に有する、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の感熱記録体にレーザー光を照射して画像記録を行う画像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と顕色剤との発色反応を利用した感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロイコ染料と顕色剤との発色反応を利用した感熱記録体は比較的安価であり、記録機器がコンパクトで、且つその保守も容易であるため、ファクシミリ、各種計算機、CAD用プロッター等の記録媒体としてのみならず、生鮮食品、弁当、惣菜等の食品用途や、薬品管理用ラベル等の医療用途、工程管理用途でのラベル等としても広く使用されている。
【0003】
食品用途で、サラダや総菜などを入れる透明な容器でのラベル、トップシール材、帯などとして使用される場合には、内容物がよく見えるように、透明性の高い媒体が必要とされるケースも多く、その際は、紙基材ではなく、透明なPETフィルムを基材にした透明感熱フィルムが使用されることが一般的である。
【0004】
近年の環境負荷低減の要請により、プラスティックの使用量を削減する目的から、一部の表示ラベル等ではPETフィルム基材から紙基材に戻す動きなども見られているが、高い透明性により内容物の視認性を高めるニーズは依然として高い。
【0005】
このような感熱記録体としは、特許文献1では、グラシン紙の片面または両面に、樹脂が溶解された有機溶剤塗液を塗布乾燥した後、少なくとも一方の面上に、ロイコ染料と呈色剤とを含有する感熱記録層を設け、且つ有機溶剤塗液中に、該樹脂の全固形量に対して顔料を3~35重量%含有させたことを特徴とする感熱記録紙が報告されている。
【0006】
また、特許文献2では、支持体上に記録層を設けた記録材料について、該支持体が原紙の少なくとも記録層を設ける側の面に溶融押出法によりプラスチックフィルム層を設けた支持体であることが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3では、樹脂層と、紙基材層とを積層してなるガスバリア用積層体であって、前記紙基材層が紙基材を有し、前記紙基材の坪量が20g/m2以上40g/m2以下であり、かつ、紙基材の全光線透過率が70%以上であり、前記紙基材層の坪量に対する前記樹脂層の坪量の比(樹脂層/紙基材層)が1.00以下であり、ヒートシール剤を含むヒートシール層、樹脂層および紙基材層がこの順に積層してなり、前記樹脂層を構成する樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、および生分解性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記紙基材層と前記樹脂層とが押出ラミネートにより積層されてなるか、または、前記紙基材層と前記樹脂層とが接着剤を用いて貼り合わされてなる、ガスバリア用積層体が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-142509号公報
【特許文献2】特開平10-010675号公報
【特許文献3】特許第7095792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、環境負荷低減、プラスティックの使用量の削減を目的に、紙基材を用いて、透明性が高い感熱記録体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、原紙に、透明性の高いグラシン紙を使用し、グラシン紙の少なくとも一方の面に樹脂層を、溶融押出法、あるいは原紙と樹脂層を接着剤を用いて貼り合わせて形成し、その樹脂層上に、感熱記録層、保護層を順に設けることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すわなち、本発明は、下記の感熱記録体に係る。
【0011】
項1.原紙、前記原紙の少なくとも一方の面に原紙から近い側から樹脂層、並びにロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体であって、
JIS K7136で測定されるHAZE値が80%以下であり、
前記樹脂層が溶融押出法により積層されてなるか、又は原紙と樹脂層とが接着剤を用いて貼り合わされてなる
感熱記録体。
項2.前記樹脂層とは反対側の感熱記録層上に、主に接着剤を含有する保護層を有する、項1に記載の感熱記録体。
項3.JIS K7126で測定される23℃、50%RHでの酸素透過度が10mL/(m2・24h・atm)以下である、項1又は2に記載の感熱記録体。
項4.JIS Z 0208で測定される40℃、90%RH条件下での水蒸気透過度が50g/(m2・24h)以下である、項1~3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項5.前記原紙がグラシン紙であって、坪量が50g/m2以下である、項1~4のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項6.前記樹脂層を構成する樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び生分解性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、項1~5のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項7.前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、及び3-ヒドロキシブタン酸・3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)からなる群から選択される少なくとも1種である、項6に記載の感熱記録体。
項8.前記感熱記録層とは反対側の原紙上に樹脂層を有する、項1~7のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項9.前記樹脂層の坪量が10g/m2以上である、項1~8のいずれか一項に記載の感熱記録体
項10.前記原紙以外の層の合計坪量が、前記原紙の坪量以下である、項1~9のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項11.前記顕色剤として、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、5-(N-3-メチルフェニル-スルフォニルアミド)-(N’,N’’-ビス-(3-メチルフェニル)-イソフタル酸ジアミド、3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルフォネート、及びN,N’-ジ[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル尿素からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、項1~10のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項12.前記感熱記録層が、SP(溶解度パラメーター)値が7.5~9.5(cal/cm3)0.5である接着剤を含有する、項1~11のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項13.前記保護層中の接着剤の含有割合が全固形分量中の80質量%以上である、項2~12のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項14.前記樹脂層上に部分的に感熱記録層を有する、項1~13のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項15.印刷層を更に有する、項1~14のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項16.項1~15のいずれか一項に記載の感熱記録体にレーザー光を照射して画像記録を行う画像記録方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感熱記録体は、環境負荷低減、プラスティックの使用量の削減が可能な紙基材を用いたものであって、透明性が高い。また、感熱記録層の原紙への密着性、ガスバリア性、耐光性及び耐熱性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中において、「含む」なる表現については、「含む」、「実質のみからなる」、及び「のみからなる」旨の概念を含む。
【0014】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
本発明におけるラテックスは、分散媒体を乾燥させることにより形成されるゲル又は乾燥皮膜の状態を含む。
【0016】
本発明の感熱記録体は、原紙、前記原紙の少なくとも一方の面に原紙から近い側から樹脂層、並びにロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体であって、
JIS K7136で測定されるHAZE値が80%以下であり、
前記樹脂層が溶融押出法により積層されてなるか、又は原紙と樹脂層とが接着剤を用いて貼りあわされてなることを特徴とする。
【0017】
本発明において、ガスバリア性とは、主に酸素及び水蒸気に対するバリア性を意味し、他のガスに対してもバリア性を有していてもよい。
【0018】
また、原紙は、紙基材からなり、原紙と紙基材とを同義に使用する場合がある。
【0019】
[原紙]
本発明における原紙は、紙基材からなるものである。
【0020】
原紙の坪量は、製造や加工の容易性及び強度や寸法安定性の観点、並びにガスバリア性の観点から、好ましくは20g/m2以上であり、より好ましくは25g/m2以上、さらに好ましくは28g/m2以上であり、そして、好ましくは50g/m2以下、より好ましくは40g/m2以下、さらに好ましくは36g/m2以下、特に好ましくは32g/m2以下である。なお、原紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0021】
また、原紙の厚さは、製造や加工の容易性及び強度や寸法安定性の観点、並びにガスバリア性の観点から、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上、よりさらに好ましくは28μm以上であり、そして、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下、よりさらに好ましくは35μm以下である。
【0022】
原紙の密度(緊度ともいう)は、ガスバリア性及び製造容易性の観点から、好ましくは0.80g/cm3以上、より好ましくは0.90g/cm3以上、さらに好ましくは0.95g/cm3以上であり、そして、好ましくは1.40g/cm3以下、より好ましくは1.30g/cm3以下、さらに好ましくは1.20g/cm3以下である。原紙の密度は、上述した測定方法により得られた、原紙の坪量及び厚さから算出される。
【0023】
原紙の全光線透過率は、優れたガスバリア性を得る観点から、70%以上であり、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上であり、そして、100%であってもよく、入手容易性の観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。原紙の全光線透過率は、JIS K 7375:2008に準拠して測定される。
【0024】
本発明における原紙は、透明性を向上させる観点から、原紙を構成するパルプの変則フリーネスが100mL以上600mL以下であることが好ましい。ここで、変則フリーネスとは、JIS P 8121:2012に規定のカナダ標準ろ水度法において、パルプ採取量を3gから0.3gに変更し、JIS規格スクリーンプレートを80メッシュワイヤーに変更して測定したフリーネス(濾水度)である。原紙を構成するパルプの変則フリーネスが前記下限値以上であると、原紙の寸法安定性が高くなり、ボコツキが生じにくく、前記上限値以下であると、原紙の透明性を維持できるので好ましい。原紙を構成するパルプ繊維の変則フリーネスは、150mL以上500mL以下であることがより好ましく、200mL以上400mL以下であることがさらに好ましい。変則フリーネスを調製するために、パルプを叩解する方法については、公知の方法を使用することができる。原紙を構成するパルプの変則フリーネスは、JIS P 8220-1:2012に準拠して離解したパルプを試料として、上述の方法により測定すればよい。
【0025】
原紙の透気度は、ガスバリア性を向上させる観点から、好ましくは30,000秒以上、より好ましくは50,000秒以上、さらに好ましくは99,999秒以上である。原紙の透気度は、JIS P 8117:2009に準じて、王研式により測定された値である。
【0026】
原紙としては、種類、形状、寸法等に格別の限定はなく、グラシン紙が好ましい。なお、グラシン紙の中で、特に高叩解で高い全光線透過率を示すグラシン紙は、グラファン紙とも呼ばれており、グラファン紙を使用することがより好ましい。一般にグラシン紙は、パルプ原料として針葉樹ケミカルパルプを主成分として有し、高叩解して酸性乃至中性にて抄紙し、スーパーカレンダー等により圧縮処理して仕上げられる。
【0027】
パルプの具体例としては、例えば、スプルースやヘムロック等の針葉樹材からなるケミカルパルプが最適であるが、それ以外に広葉樹材からなるケミカルパルプや、メカニカルパルプ、古紙、合成パルプ等を混合配合してもよい。
【0028】
[樹脂層]
本発明における樹脂層としては、単一の樹脂で構成された単層フィルム、複数の樹脂を用いた単層又は積層フィルム等が挙げられる。また、上記の樹脂を他の基材(金属、木材、紙、セラミックス等)に積層した積層樹脂層を用いてもよい。
【0029】
樹脂層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(特に、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリスチレン樹脂、ポリエステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂)、ポリアミド系樹脂(特に、ナイロン)、生分解性樹脂等が好ましく例示される。
【0030】
樹脂層を構成する樹脂は、水蒸気バリア性に優れる観点から、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリエチレン及びポリプロピレンであることがさらに好ましく、ポリプロピレンであることがより好ましい。
【0031】
なお、ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)でもよく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)でもよく、中密度ポリエチレン(MDPE)でもよく、高密度ポリエチレン(HDPE)でもよい。
【0032】
また、樹脂層は、未延伸であってもよく、一軸又は二軸延伸されていてもよい。
【0033】
また、樹脂層を構成する樹脂は、環境負荷低減の観点から、生分解性樹脂であることも好ましい、生分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、3-ヒドロキシブタン酸・3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)等が挙げられる。
【0034】
本発明の感熱記録体は、ヒートシール層として、感熱記録層とは反対側の原紙上にも樹脂層を有していてもよい。
【0035】
原紙の坪量に対する樹脂層の坪量の比(樹脂層/原紙)は、感熱記録体としての適度な強度(剛性)を得る観点、水蒸気バリア性の観点、製造容易性の観点から、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.60以上、さらに好ましくは0.70以上である。
【0036】
樹脂層の坪量は、特に限定されず、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは15g/m2以上、よりさらに好ましくは20g/m2以上であり、そして、好ましくは30g/m2以下である。樹脂層の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。感熱記録層とは反対側の原紙上にも樹脂層を有する場合、ここでの坪量は各樹脂層の合計の坪量を意味する。
【0037】
樹脂層の厚さは、樹脂層を構成する樹脂の密度、感熱記録体としての適度な強度(剛性)を得る観点、水蒸気バリア性の観点、樹脂層形成容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは18μm以上であり、そして、好ましくは30μm以下である。樹脂層の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。感熱記録層とは反対側の原紙上にも樹脂層を有する場合、ここでの厚さは各樹脂層の合計の厚さを意味する。
【0038】
樹脂層の密度は、適度な強度(剛性)を得る観点、水蒸気バリア性の観点、及び入手容易性の観点から、好ましくは0.70g/cm3以上、より好ましくは0.80g/cm3以上、さらに好ましくは0.85g/cm3以上、よりさらに好ましくは0.90g/cm3以上であり、そして、好ましくは1.80g/cm3以下、より好ましくは1.50g/cm3以下、さらに好ましくは1.30g/cm3以下である。樹脂層の密度は、上述した測定方法により得られた、樹脂層の坪量及び厚さから算出される。
【0039】
樹脂層は、フィラー、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、可塑剤、可塑剤、酸化剤等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
樹脂層は、原紙に樹脂を押出ラミネートしてもよく、また、原紙と樹脂層(例えば、樹脂フィルム等)とを接着剤を用いて貼り合わせてもよい。
【0041】
接着剤を用いて貼り合わせる場合、使用する接着剤としては特に限定されず、無溶剤型、有機溶剤型、水系型などのいずれでもよいが、原紙の形状安定性を確保する観点から、有機溶剤型の接着剤、又は無溶剤型の接着剤を使用することが好ましい。
【0042】
接着剤を構成する主成分としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、カゼイン、澱粉等が例示される。これらの中でも、入手容易性及び良好な接着性が得られる観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0043】
なお、樹脂層に接着剤を塗布後に、樹脂層と原紙とを積層してもよく、原紙に接着剤を塗布後に、原紙と樹脂層とを積層してもよく、また、樹脂層と原紙との両方に接着剤を塗布後に、樹脂と原紙とを積層してもよく、特に限定されないが、形状安定性の観点から、樹脂層に接着剤を塗布後に、原紙を積層することが好ましい。
【0044】
接着剤の塗布方法としては、従来公知の方法の中から適宜選択すればよく、特に限定されないが、ロールコーター、ダイコーター、スプレーコーターなどが例示される。
【0045】
接着剤の付与量は特に限定されないが、乾燥後の付与量(塗布量)は、樹脂層と原紙との密着性を高める観点から、好ましくは1g/m2以上、より好ましくは2g/m2以上、さらに好ましくは4g/m2以上であり、そして、好ましくは40g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下、さらに好ましくは10g/m2以下である。
【0046】
[感熱記録層]
本発明の感熱記録体における感熱記録層には、無色又は淡色の各種公知のロイコ染料を含有させることができる。そのようなロイコ染料の具体例を以下に挙げる。
【0047】
ロイコ染料の具体例としては、例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、フルオラン等の青発色性染料、3-(N-エチル-N-p-トリル)アミノ-7-N-メチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、ローダミンB-アニリノラクタム等の緑発色性染料、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-アニリノラクタム、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン等の赤発色性染料、3-(N-エチル-N-イソアミル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アリニノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-(N-イソアミル-N-エチルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-2-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ〕-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ〕-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジ(n-ブチルアミノ)-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、4,4’-ビス-ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン、3-ジエチルアミノ-7-ブチルアミノフルオラン、3-エチル-トリルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-シクロヘキシル-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-(β-エトキシエチル)アミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-(γ-クロロプロピル)アミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソアミル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-クロロアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-(p-トルイジノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2,2-ビス{4-〔6’-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-3’-メチルスピロ〔フタリド-3,9’-キサンテン〕-2’-イルアミノ〕フェニル}プロパン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-トリフルオロメチルフェニル)アミノフルオラン等の黒発色性染料、3,3-ビス〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-p-(p-ジメチルアミノアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-p-(p-クロロアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等の近赤外領域に吸収波長を有する染料等が挙げられる。もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0048】
かかるロイコ染料の含有割合は、特に制限されず、感熱記録層の全固形分量中、3~30質量%程度が好ましく、5~25質量%程度がより好ましく、7~25質量%程度が更に好ましい。3質量%以上とすることにより発色能力を高めて、印字濃度を向上できる。30質量%以下とすることにより、耐熱性を向上できる。
【0049】
顕色剤の具体例としては、例えば、4-tert-ブチルフェノール、4-アセチルフェノール、4-tert-オクチルフェノール、4,4’-sec-ブチリデンジフェノール、4-フェニルフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4,4’-シクロヘキシリデンジフェニル、4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、4,4’-ビス(p-トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス〔4-(4-ヒドロキシフェニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン、3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシ-4’-メチルジフェニルスルホン、4-アリルオキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン、3,4-ジヒドロキシフェニル-4’-メチルフェニルスルホン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシフタル酸ジメチル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、4-ヒドロキシ安息香酸-sec-ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェニル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸トリル、4-ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール性化合物、又は安息香酸、p-クロロ安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3-tert-ブチルサリチル酸、3-イソプロピルサリチル酸、3-ベンジルサリチル酸、3-(α-メチルベンジル)サリチル酸、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸、4-〔2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸、4-〔3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸、5-〔p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸、4-〔3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛等の芳香族カルボン酸、及びこれらフェノール性化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属との塩、更にはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等の有機酸性物質、N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、N-p-トルエンスルホニル-N’-p-ブトキシカルボニルフェニルウレア、N-p-トリルスルホニル-N’-フェニルウレア、4,4’-ビス(p-トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン等のウレア化合物、N,N’-ジ-m-クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、N-(p-トルエンスルホニル)カルバモイル酸p-クミルフェニルエステル、N-(p-トルエンスルホニル)カルバモイル酸p-ベンジルオキシフェニルエステル、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、N-(o-トルオイル)-p-トルエンスルホアミド等の分子内に-SO2NH-結合を有する有機化合物、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム等の無機酸性物質等が挙げられる。
【0050】
さらに、下記一般式(1)で表される4,4’-ビス〔(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4,4’-ビス〔(2-メチル-5-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4-(2-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド-4’-(4-メチル-5-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイドジフェニルスルホン等のウレアウレタン誘導体、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン誘導体、5-(N-3-メチルフェニル-スルフォニルアミド)-(N’,N’’-ビス-(3-メチルフェニル)-イソフタル酸ジアミド、3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルフォネート、N,N’-ジ[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル尿素等が挙げられる。もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0051】
【0052】
【0053】
顕色剤としては、これらの中でも1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、5-(N-3-メチルフェニル-スルフォニルアミド)-(N’,N’’-ビス-(3-メチルフェニル)-イソフタル酸ジアミド、3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルフォネート、N,N’-ジ[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル尿素等が好ましく、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、及びN,N’-ジ[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル尿素がより好ましい。
【0054】
かかる顕色剤の含有量は、特に制限されず、使用されるロイコ染料に応じて調整すればよく、一般にロイコ染料1質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましく、1.2質量部以上がより一層好ましく、1.4質量部以上が特に好ましい。また、顕色剤の含有量はロイコ染料1質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下が更に好ましく、3.5質量部以下が特に好ましい。0.5質量部以上とすることにより、記録性能を高めることができる。一方、10質量部以下とすることにより、高温環境下での地肌カブリを効果的に抑えることができる。
【0055】
本発明では、感熱記録層中に、主に発色像の保存性をより一層高めるために、保存性改良剤を更に含有させることができる。このような保存性改良剤としては、例えば、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-〔1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール、4,4’-〔1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール等のフェノール化合物;4-ベンジルオキシフェニル-4’-(2-メチル-2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4-(2-メチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4-(2-エチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物;並びに1,3,5-トリス(2,6-ジメチルベンジル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0056】
保存性改良剤を使用する場合、その使用量は、保存性改良のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形分量中、1~30質量%程度が好ましく、5~20質量%程度がより好ましい。
【0057】
本発明における感熱記録層中には増感剤を含有させることもできる。これにより、記録感度を高めることができる。増感剤としては、例えば、ステアリン酸アミド、メトキシカルボニル-N-ステアリン酸ベンズアミルド、N-ベンゾイルステアリン酸アミド、N-エイコサン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N-メチロールステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジオクチル、ジフェニルスルホン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニル、2-ナフチルベンジルエーテル、m-ターフェニル、p-ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ-p-クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル、p-トリルビフェニルエーテル、ジ(p-メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-クロロフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、1-(4-メトキシフェノキシ)-2-(3-メチルフェノキシ)エタン、p-メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4-ジ(フェニルチオ)ブタン、p-アセトトルイジド、p-アセトフェネチジド、N-アセトアセチル-p-トルイジン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、ジ(β-ビフェニルエトキシ)ベンゼン、p-ジ(ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1-イソプロピルフェニル-2-フェニルエタン、アジピン酸ジ-o-クロルベンジル、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、1,3-ビス(2-ナフトキシ)プロパン、ジフェニル、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは支障のない範囲で併用できる。増感剤の含有割合は、増感のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形分量中、2~40質量%程度が好ましく、5~25質量%程度がより好ましい。
【0058】
感熱記録層を構成する他の成分材料としては接着剤を用い、更に必要により、架橋剤、ワックス類、金属石鹸、耐水化剤、顔料、分散剤、有色染料、蛍光染料等を用いることができる。
【0059】
感熱記録層用塗液に使用される接着剤としては、例えば、水溶性接着剤及び水分散性接着剤のいずれの水性接着剤を使用できる。水溶性接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体塩、スチレン-アクリル酸共重合体塩、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩、エチレン-無水マレイン酸共重合体塩、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム等が挙げられる。水分散性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン、又はスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル系共重合体等の水不溶性重合体のラテックス等が挙げられる。接着剤としては、中でもSP(溶解度パラメーター)値が7.5~9.5(cal/cm3)0.5である接着剤が好ましい。SPがこのような範囲にある接着剤を使用することで、感熱記録層と樹脂層との密着性を向上させることができる。SP値が7.5~9.5(cal/cm3)0.5である接着剤としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸変性ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。溶解度パラメーターは、Hildebrand法による溶解度パラメーター計算法に準拠して計算される。接着剤は、1種単独又は2種以上を併用して使用することができる。接着剤の少なくとも1種を、感熱記録層の全固形分量中、好ましくは5~50質量%程度、より好ましくは10~40質量%程度の範囲で配合される。
【0060】
感熱記録層又はその他の層の接着剤を硬化させる架橋剤を感熱記録層中に含有させることができる。これにより、感熱記録層の耐水性を向上させることができる。架橋剤としては、例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グリオキシル酸塩、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物;過硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物;硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー、ヒドラジド化合物、グリオキシル酸塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。架橋剤の使用量は、感熱記録層の全固形分量100質量部に対し、1~10質量部程度の範囲が好ましい。これにより、感熱記録層の耐水性を向上させることができる。
【0061】
ワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類;例えば、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及びその誘導体等を挙げることができる。
【0062】
金属石鹸としては、高級脂肪酸多価金属塩、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、及びオレイン酸亜鉛等を挙げることができる。また、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱記録層中に、更に撥油剤、消泡剤、粘度調節剤等の各種助剤を添加することができる。
【0063】
感熱記録層は、一般に水を分散媒体とし、ロイコ染料と顕色剤、必要により増感剤と保存性改良剤を一緒に、又は別々にボールミル、コボールミル、アトライター、縦型及び横型のサンドミル等の各種撹拌・湿式粉砕機によりポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩等のような水溶性合成高分子化合物、その他界面活性剤と共に分散して分散液とした後、平均粒子径が2μm以下となるように分散して得た分散液を用いて、必要により接着剤、助剤等を混合することにより調製された感熱記録層用塗液を塗布した後、原紙上に形成される。感熱記録層の塗布量は、特に制限されず、乾燥質量で1~12g/m2程度が好ましく、2~10g/m2がより好ましく、2.5~8g/m2が更に好ましく、3~5.5g/m2が特に好ましい。なお、感熱記録層は必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗布量は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0064】
[保護層]
感熱記録体では、樹脂層とは反対側の感熱記録層上に必要に応じて保護層を備えることもできる。保護層は、主に接着剤を含有することが好ましい。さらに保護層には、サーマルヘッドに対するスティッキングを防止する目的で、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸亜鉛のような滑剤を含有させることが好ましく、紫外線吸収剤及び顔料を含有させることもできる。また、光沢を有する保護層を設けることにより、製品の付加価値を高めることもできる。
【0065】
保護層に含有される顔料としては、特に限定されず、例えば無定形シリカ、カオリン、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、合成層状雲母等の無機顔料、尿素-ホルマリン樹脂フィラー等のプラスティックピグメント等が挙げられる。顔料の含有割合は、保護層の全固形分量中の、1~20質量%程度が好ましく、1~10質量%程度がより好ましく、1~5質量%程度がさらに好ましい。
【0066】
保護層に含有される接着剤としては、特に制限されず、水溶性又は水分散性の水性接着剤を使用できる。接着剤は、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。これらの接着剤のうち、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等の各種変性ポリビニルアルコールがより好ましく用いられる。接着剤の含有割合は、保護層の全固形分量中の、80質量%以上が好ましく、90~100質量%程度が好ましく、より好ましくは95~100質量%程度である。80質量%以上とすることにより、酸素透過度を抑制でき、耐光性を向上させることができる。
【0067】
保護層は、例えば、水を分散媒体とし、顔料と接着剤、必要により助剤等を混合することにより調製された保護層用塗料を塗布した後、乾燥されて感熱記録層上に形成される。保護層用塗料の塗布量は、特に制限されず、乾燥質量で0.3~15g/m2程度が好ましく、0.3~10g/m2程度がより好ましく、0.5~8g/m2程度がさらに好ましく、1~8g/m2程度が特に好ましく、1~5g/m2程度がより一層好ましい。なお、保護層は、必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗布量とは、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0068】
[印刷層]
本発明では、前記保護層上、前記感熱記録層と前記保護層の間、前記感熱記録層上、前記樹脂層と前記感熱記録層の間、前記原紙と前記樹脂層の間、及び前記原紙の前記感熱記録層とは反対側の面の少なくともいずれかに印刷層を備えることができる。印刷層の形成に使用される印刷インキとしては、印刷版による分類からすれば凸版、平版、凹版、孔版などに供するインキがある。また、乾燥の形態から分類すれば浸透乾燥、蒸発乾燥、酸化重合乾燥、光重合乾燥(紫外線硬化型)インキなどが挙げられる。印刷層の形成には、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷方式を用いることができる。無版であるオンデマンド印刷、ダイレクト印刷等のデジタル印刷方式を用いることもできる。印刷インキの色調としては特に限定されないが、特に印刷層の部分に感熱記録がなされる場合は、印刷層の光学濃度としては感熱記録層の記録部の光学濃度より低いことが好ましい。印刷パターンとしては、光学濃度が0.1~0.6程度の地紋的なもの、感熱記録と重ならない固定情報的なものが好ましい。
【0069】
[その他の層]
本発明では、原紙の少なくとも一方面に粘着層を有することが好ましい。これにより、感熱記録体の付加価値を高めることができる。粘着層としては、例えば、一方面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等による塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙等とすることができる。また、原紙の感熱記録層とは逆側の面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット記録用紙、ノーカーボン用紙、静電記録用紙、ゼオグラフィー用紙等としての機能を付与し、両面記録が可能な記録紙とすることもできる。もちろん、両面感熱記録体とすることもできる。また、感熱記録体裏面からの油及び可塑剤の浸透を抑制したり、カールコントロールしたり、帯電防止したりするためにバック層を設けることもできる。保護層上にシリコーンを含有した剥離層を塗布加工し、一方面に粘着剤を塗布加工することにより、剥離紙を必要としないライナーレスラベルとすることも可能である。
【0070】
[感熱記録体]
感熱記録体は、原紙の樹脂層上に上記各層を形成することにより製造することができる。樹脂層上に上記各層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、カーテン法、スロットダイ法、スライドダイ法、エクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。また、各塗料は1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成してもよく、同一の塗料を2層以上に分けて塗布してもよい。さらに、2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行ってもよい。また、各層を形成し終えた後、又は全ての層を形成し終えた後の任意の過程で、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等の既知の方法を用いて平滑化処理することができる。また、樹脂層上に感熱記録層(及び保護層)を先に形成した後に、原紙と樹脂層とを接着剤を用いて貼り合わせてもよい。
【0071】
本発明の感熱記録体のHAZE値は、低いほど透明性が高いことから好ましい。HAZE値は、80%以下であり、好ましくは75%以下であり、より好ましくは70%以下である。HAZE値は、JIS K7136に準拠して測定される。
【0072】
本発明の感熱記録体の酸素透過度は、低いほど酸素が透過しないことから好ましい。23℃50%RH(相対湿度)における酸素透過度は、好ましくは10mL/(m2・24h・atm)以下、より好ましくは5mL/(m2・24h・atm)以下、さらに好ましくは2mL/(m2・24h・atm)以下である。感熱記録体の酸素透過度は、JIS K7126に準拠し、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を使用し、上記の条件にて測定される。
【0073】
本発明の感熱記録体の水蒸気透過度は、低いほど水蒸気が透過しないことから好ましく、具体的には、好ましくは50g/(m2・24h)以下、より好ましくは30g/(m2・24h)以下、さらに好ましくは20g/(m2・24h)以下、よりさらに好ましくは10g/(m2・24h)以下である。水蒸気透過度は、JIS Z 0208:1976に準拠し、感熱記録層が外側となるように、透湿カップを作製して測定される(条件B:温度40±0.5℃、相対湿度90±2%)。
【0074】
本発明の感熱記録体において、原紙以外の層(樹脂層、感熱記録層、保護層など)の合計坪量は、前記原紙の坪量以下であることが好ましい。このように、原紙の坪量が他の層の坪量の合計より大きいことにより、プラスティックの使用量を削減でき、環境負荷を低減できる。
【0075】
本発明の感熱記録体において、樹脂層上に全面に感熱記録層(及び保護層)を有していてもよく、樹脂層上に部分的に感熱記録層(及び保護層)を有していてもよい。
【0076】
本発明の感熱記録体に画像記録する方法としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。画像記録方法としては、例えば、サーマルヘッドプリンタ、レーザー光(例えば、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、半導体レーザー光、YAGレーザー光、ファイバーレーザー光、固体レーザー光、色素レーザー光など)等を用いることができる。レーザー光を用いる場合のレーザー光の波長としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0077】
本発明の感熱記録体は、透明性が高く、感熱記録層の原紙への密着性、ガスバリア性、耐光性及び耐熱性に優れるので、例えば、食品用途で、サラダや総菜などを入れる透明な容器でのラベル、トップシール材、帯などとして好適に用いられる。
【実施例0078】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0079】
実施例1
・A液(ロイコ染料分散液)の調製
3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセネックスL-3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤(商品名:ノプコ1407H、サンノプコ社製)の5%エマルジョン10部、及び水90部からなる組成物を、サンドミルによりレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.5μmとなるまで粉砕してA液を得た。
【0080】
・B液(呈色剤分散液)の調製
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセネックスL-3266、日本合成化学社製)の20%水溶液40部、天然油脂系消泡剤(商品名:ノプコ1407H、サンノプコ社製)の5%エマルジョン1部、及び水80部からなる組成物を、ウルトラビスコミルにより動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500(堀場製作所製)によるメジアン径が0.2μmとなるまで粉砕してB液を得た。
【0081】
・感熱記録層用塗液の調製
A液36部、B液47.8部、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスN、平均粒子径10~15nm、日産化学社製、固形分濃度20%)33.5部、スチレン-ブタジエン系ラテックス(商品名:スマーテックスPA9281、日本A&L社製、固形分濃度48%、SP値8.4)28.5部、ジアセトン変性ポリビニルアルコール(商品名:DF-17、日本酢ビ・ポバール社製)の10%水溶液38部、メチルセルロース(商品名:メトローズ60SH-03、信越化学社製)の10%水溶液10部、ポリエチレンワックスエマルジョン(商品名:ノプコートPEM17、サンノプコ社製、固形分濃度40%)1部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(商品名:SNウェットOT-70、サンノプコ社製)の10%水溶液6部、及び水18部からなる組成物を混合撹拌して感熱記録層用塗液を調製した。
【0082】
・保護層用塗液の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(ゴーセネックスZ-200、日本合成化学社製、完全ケン化、重合度1100)の14%水溶液428.6部、芳香族ポリエステル系ポリウレタン樹脂(商品名:ハイドランAP-30F、DIC社製、固形分濃度20%)200.0部、及び水100.0部からなる組成物を混合撹拌して保護層用塗液を調製した。
【0083】
・支持体1の作製
原紙にグラシン紙(製品名:グラファン、王子エフテックス株式会社製、坪量35g/m2、厚さ35μm、HAZE72%、離解パルプの変則フリーネス250mL)を使用し、原紙の上に、低密度ポリエチレンLC607K(日本ポリエチレン社製)を坪量12g/m2(厚さ13μm)になるように押出ラミネートし、片面ラミネート品の支持体1を作製した。
【0084】
・感熱記録体の作製
支持体1のラミネート面上に、乾燥後の塗布量が4.0g/m2となるように感熱記録層用塗液を塗布及び乾燥して感熱記録層を形成した。更に感熱記録層上に乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように保護層用塗液を塗布及び乾燥し、保護層を形成し、感熱記録体を得た。
【0085】
実施例2
・支持体2の作製
支持体1の非ラミネート面(原紙面)に、低密度ポリエチレンLC607K(日本ポリエチレン社製)を坪量12g/m2(厚さ13μm)になるように押出ラミネートし、両面ラミネート品の支持体2を作製した。
【0086】
・感熱記録体の作製
支持体2の片面上に、乾燥後の塗布量が4.0g/m2となるように実施例1で調製した感熱記録層用塗液を塗布及び乾燥して感熱記録層を形成した。更に感熱記録層上に乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように実施例1で調製した保護層用塗液を塗布及び乾燥し、保護層を形成し、感熱記録体を得た。
【0087】
実施例3
・支持体3の作製
原紙にグラシン紙(製品名:グラファン、王子エフテックス株式会社製、坪量35g/m2、厚さ35μm、HAZE72%、離解パルプの変則フリーネス250mL)を使用し、前記原紙の上に、ポリプロピレン樹脂PHA03A(サンアロマー社製)を片面12g/m2(厚さ13μm)になるように、両面に押出ラミネートし、両面ラミネート品の支持体3を作製した。
【0088】
・感熱記録体の作製
支持体3のポリプロピレンラミネート面上に、乾燥後の塗布量が4.0g/m2となるように実施例1で調製した感熱記録層用塗液を塗布及び乾燥して感熱記録層を形成した。更に感熱記録層上に乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように実施例1で調製した保護層用塗液を塗布及び乾燥し、保護層を形成し、感熱記録体を得た。
【0089】
実施例4
・支持体4の作製
透明PETフィルム12g/m2(FUWEI社製、12μm)に、DICドライLX-500(DIC社製)10部及びDICドライKW-75(DIC社製)1部を混合した接着剤を、5g/m2(厚さ5μm)になるように塗布した後に、支持体1の非ラミネート面(原紙面)とドライラミネートし、支持体4を作製した。
【0090】
・感熱記録体の作製
支持体4のPETフィルムの面側に、乾燥後の塗布量が4.0g/m2となるように実施例1で調製した感熱記録層用塗液を塗布及び乾燥して感熱記録層を形成した。更に感熱記録層上に乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように実施例1で調製した保護層用塗液を塗布及び乾燥し、保護層を形成し、感熱記録体を得た。
【0091】
実施例5
実施例2の保護層用塗液の調製において、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(ゴーセネックスZ-200、日本合成化学社製、完全ケン化、重合度1100)の14%水溶液の量を428.6部に代えて342.9部にし、芳香族ポリエステル系ポリウレタン樹脂(商品名:ハイドランAP-30F、DIC社製、固形分濃度20%)の量を200部に代えて160.0部にし、更にコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO、平均粒子径10~15nm、日産化学社製、固形分濃度20%)を100部添加した以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0092】
実施例6
実施例2の保護層用塗液の調製において、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(ゴーセネックスZ-200、日本合成化学社製、完全ケン化、重合度1100)の14%水溶液の量を428.6部に代えて278.6部とし、芳香族ポリエステル系ポリウレタン樹脂(商品名:ハイドランAP-30F、DIC社製、固形分濃度20%)の量を200部に代えて130.0部とし、更にコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO、平均粒子径10~15nm、日産化学社製、固形分濃度20%)を175部添加した以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0093】
実施例7
実施例2のB液調製において、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン100部に代えて、N,N’-ジ[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル尿素100部とした以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0094】
実施例8
実施例2のB液調製の調製において、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン100部に代えて、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド100部とした以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0095】
実施例9
実施例2のB液調製において、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン100部に代えて、5-(N-3-メチルフェニル-スルフォニルアミド)-(N’,N’ ’-ビス-(3-メチルフェニル)-イソフタル酸ジアミド100部とした以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0096】
実施例10
実施例2のB液調製において、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン100部に代えて、3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルフォネート100部とした以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0097】
実施例11
実施例4において、支持体4のPETフィルムの面側に、乾燥後の塗工層厚みが、全面塗工時の塗布量4.0g/m2と同じなるように、実施例1で調製した感熱記録層用塗液を部分的に塗布及び乾燥して感熱記録層を形成し、更に感熱記録層上に、乾燥後の塗工層厚みが全面塗工時の塗布量2.0g/m2と同じになるように、保護層用塗液を部分的に塗布及び乾燥して保護層を形成し、感熱記録体を得た。
【0098】
比較例1
原紙にグラシン紙(製品名:グラファン、王子エフテックス社製、坪量35g/m2、厚さ35μm、HAZE72%、離解パルプの変則フリーネス250mL)を使用し、原紙面上に、乾燥後の塗布量が4.0g/m2となるように実施例1で調製した感熱記録層用塗液を塗布及び乾燥して感熱記録層を形成した。更に感熱記録層上に乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように実施例1で調製した保護層用塗液を塗布及び乾燥し、保護層を形成し、感熱記録体を得た。
【0099】
比較例2
・支持体5の作製
原紙にグラシン紙(製品名:ハイメノウ、王子エフテックス社製、坪量75g/m2、厚さ73μm、HAZE98%)を使用し、前記紙基材の上に、低密度ポリエチレンLC607K(日本ポリエチレン社製)を片面、坪量12g/m2(厚さ13μm)になるように、両面に押出ラミネートし、支持体5を作製した。
【0100】
・感熱記録体の作製
支持体5の片面に、乾燥後の塗布量が4.0g/m2となるように感熱記録層用塗液を塗布及び乾燥して感熱記録層を形成した。更に感熱記録層上に乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように保護層用塗液を塗布及び乾燥し、保護層を形成し、感熱記録体を得た。
【0101】
比較例3
・樹脂層用塗液の調製
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(商品名:カネビラックL-CN、重量比:塩化ビニル:酢酸ビニル=1:1、固形濃度37%、カネカ社製)70部をトルエン80部に撹拌機で溶解した。
【0102】
・支持体6の作製
原紙にグラシン紙(製品名:グラファン、王子エフテックス株式会社製、坪量35g/m2、厚さ35μm、HAZE72%、離解パルプの変則フリーネス250mL)を使用し、前記紙基材の上に、樹脂層用塗液を、乾燥後の塗布量が4.0g/m2になるように塗布及び乾燥し、支持体6を作製した。
【0103】
・感熱記録体の作製
支持体6の片面に、乾燥後の塗布量が4.0g/m2となるように実施例1で調製した感熱記録層用塗液を塗布及び乾燥して感熱記録層を形成した。更に感熱記録層上に乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように実施例1で調製した保護層用塗液を塗布及び乾燥し、保護層を形成し、感熱記録体を得た。
【0104】
以上の実施例1~11及び比較例1~3で作製した感熱記録体を下記の評価に供し、その結果を表1に示す。
【0105】
〔画像形成〕
・実施例1~11、比較例1~3
感熱評価機(商品名:TH-TMD,大倉電機社製)を用い、各感熱記録体について、印加エネルギー;0.24mJ/dot、印字速度4ipsにて、10mm四方の正方形のベタ印字を行い、感熱記録体印字物を得た。
【0106】
・実施例12
UVレーザーマーカ(商品名:UVレーザーマーカ MD-U1000C キーエンス社製)を用い、実施例2の感熱記録体に、波長355nm、出力1.2W、スキャンスピード3,000mm/SEC、レーザースポット径14μmで、感熱記録/保護層塗工面からレーザーを照射し、10mm四方の正方形のベタ印字を行い、感熱記録体印字物を得た。
【0107】
〔透明性評価〕
各感熱記録体の非印字部の透明性をHAZEメーター(日本電色社製 NDH-7000)で測定した(JIS K7136)。
HAZE値 80%超:食品容器等で使用する場合、内容物が視認できず不可
HAZE値 80%以下:食品容器等で使用する場合、内容物が視認できる
【0108】
〔塗工層のラミネート層への密着性評価〕
保護層上に粘着セロハンテープを100g/cm2の圧力で貼り付け、30m/分の速度で剥がし、感熱記録層の支持体からの剥がれの程度を目視により下記の基準で評価した。
〇:感熱記録層が剥がれない
×:感熱記録層に剥がれが見られる
【0109】
〔酸素透過度]
感熱記録体の酸素透過度は、JIK K7126に準拠し、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を使用し、23℃、かつ50%RHの条件にて測定した。
酸素透過度 2mL/(m2・24h・atm)以下:ガスバリア材として非常に優れている
酸素透過度 2mL/(m2・24h・atm)超10mL/(m2・24h・atm)以下:ガスバリア材として優れている
酸素透過度 10mL/(m2・24h・atm)超:ガスバリア材として用いられず不可
【0110】
〔水蒸気透過度〕
感熱記録体の水蒸気透過度は、JIS Z0208:1976に準拠し、感熱記録層が外側になるように、透湿カップを作製して測定した(条件B:温度40±0.5℃、相対湿度90±2%)。
水蒸気透過度 30g/(m2・24h)以下:ガスバリア材として非常に優れている
水蒸気透過度 30g/(m2・24h)超50g/(m2・24h)以下:ガスバリア材として優れている
水蒸気透過度 50g/(m2・24h)超:ガスバリア材として用いられず不可
【0111】
〔耐光性評価〕
各感熱記録体印字物の印字面を、キセノンウェザーメーター(スガ試験機社製)を用いて15時間照射(ブラックパネル温度63℃、湿度40%RH、波長域300~700nmにおける照射照度390W/m2)した後、記録部をX-rite分光濃度計(商品名:X-rite530、X-rite社製)のビジュアルモードで測定した。そして、下記式により、記録部の印字残存率を求めた。
残存率(%)=(処理後の記録濃度/処理前の記録濃度)×100
残存率80%以上:印字が非常に鮮明で優れている
残存率80%未満65%以上:印字が鮮明で良好
残存率65%未満:印字に欠けなどが生じ、実用上不可
【0112】
〔耐熱性評価〕
各感熱記録体印字物を、90℃の乾燥機で1時間処理した後、非記録部をX-rite分光濃度計(商品名:X-rite530、X-rite社製)のビジュアルモードで測定した。
非記録部の濃度 0.15以下:着色が非常に少なく優れている
非記録部の濃度 0.15超0.20以下:着色が少なく良好
非記録部の濃度 0.20超:着色が強く、実用上不可
【0113】
〔サーマルヘッドの摩耗性評価〕
直径0.3175cmの真鍮球に900gの荷重をかけ、実施例1~11及び比較例1~3の感熱記録体の保護層表面を375m走行させたときの真鍮球の磨耗深さをキーエンス社製形状測定装置Profle Measurement unit VHX-S15を用いて測定した。磨耗深さが小さいほど、ヘッド磨耗性が良好であるといえる。
〇:摩耗深さ 10μm未満
×:摩耗深さ 10μm以上
【0114】