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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085284
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】パラレルリンク式ワーク加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/44 20060101AFI20240619BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALI20240619BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B23Q1/44 A
B23Q1/01 F
B25J11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199736
(22)【出願日】2022-12-14
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000190725
【氏名又は名称】シンクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】兼高 正治
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 範久
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一登
【テーマコード(参考)】
3C048
3C707
【Fターム(参考)】
3C048AA01
3C048BB01
3C048DD00
3C707AS12
3C707BS24
3C707BT16
3C707CU02
3C707CY36
3C707HT12
(57)【要約】
【課題】 複雑になりがちな加工ユニットの設定のためのリンケージ機構等をシンプルな構成としながらも、正確な加工制御が達成できる、パラレルリンク式ワーク加工装置の開発を技術課題とした。
【解決手段】 本発明のワーク加工装置Mは、加工ユニット3を三次元方向に移動させることによりワークテーブル2上のワークWに切削等の加工を施す装置であって、加工ユニット設定機構4のシフト設定機構6は、複数本のシフトシリンダ61が並列状に配設されて成り、このシフトシリンダ61の作用長が伸縮制御されるものであり、またシフトシリンダ61の上端が、ワーク加工装置Mのフレーム1上部に接続されるとともに、シフトシリンダ61の下端が加工ユニット3側に接続され、各シフトシリンダ61の作用長を伸縮制御することにより、加工ユニット3を水平姿勢に維持したまま、三次元方向にシフトするパラレルリンク式であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体枠状のフレームと、
このフレーム下方に支持されるワークテーブルと、
当該ワークテーブル上のワークに所定の加工を行う加工ユニットと、
この加工ユニットを前記フレーム上部から吊持状態に支持する加工ユニット設定機構とを具え、
前記加工ユニットを加工ユニット設定機構により、三次元方向に移動させることによりワークテーブル上のワークに所定の加工を施す装置であって、
前記加工ユニット設定機構は、パラレル設定機構とシフト設定機構とを具え、
当該パラレル設定機構は、
前記フレーム上部に取り付けられ、中心位置と水平姿勢とを維持しながら上下方向にのみ移動する上部ベースプレートと、
この上部ベースプレートに対応して、下方に設けられ水平姿勢を取りながら三次元方向に移動する下部ベースプレートと、
前記上部ベースプレートと下部ベースプレートとに対し自在継手状に上下が支持されるスタビライザコラムと、
当該スタビライザコラムを囲むように上部ベースプレートと下部ベースプレートとの間に配設される少なくとも三本のパラレル制御ロッドとを具えるものであり、
一方、前記シフト設定機構は、複数本のシフトシリンダが並列状に配設され、このシフトシリンダの作用長が伸縮制御されるものであり、またシフトシリンダの上端が前記フレーム上部に接続されるとともに、シフトシリンダの下端が加工ユニット側に接続され、各シフトシリンダの作用長を伸縮制御することにより、加工ユニットを水平姿勢に維持したまま、三次元方向にシフトする構成であることを特徴とするパラレルリンク式ワーク加工装置。
【請求項2】
前記立体枠状のフレームは、
門形のゲートフレームと、
このゲートフレームの下部に接続される平面視で矩形枠状をなす下部フレームと
前記ゲートフレームの上部に接続される平面視で三角枠状をなす上部フレームと、
前記下部フレームにおいてゲートフレームと反対側の隅角部から、前記上部フレームの三点の隅角部に至る間に設けられる四本のブレースフレームとを具えることを特徴とする請求項1または2記載のパラレルリンク式ワーク加工装置。
【請求項3】
前記下部ベースプレートは、前記スタビライザコラムの下部を支持するように設けられ、且つ当該下部ベースプレートの下方にユニットサポートが吊持状態に設けられるものであり、前記加工ユニットは、このユニットサポートに搭載されることを特徴とする請求項1または2記載のパラレルリンク式ワーク加工装置。
【請求項4】
前記シフト設定機構におけるシフトシリンダは、三本で構成され、その上端が前記フレームにおける上部フレームの三カ所の隅角部に自在継手状に接続され、且つシフトシリンダの下端が前記ユニットサポートに対し自在継手状に接続されることを特徴とする請求項3記載のパラレルリンク式ワーク加工装置。
【請求項5】
前記パラレル設定機構におけるパラレル制御ロッドは、上部ベースプレートと下部ベースプレートとの間に設けられるにあたり、上部ベースプレートと下部ベースプレートとに対しボールジョイント接続されるものであり、
且つ当該パラレル制御ロッドは、ロッド保持機構によって、上部ベースプレートと下部ベースプレートとの相互に常時接近傾向が付与される構成であることを特徴とする請求項1または2記載のパラレルリンク式ワーク加工装置。
【請求項6】
前記シフト設定機構におけるシフトシリンダは、ボールネジ機構を具えた電動シリンダが適用されるものであり、
またシフト設定機構におけるアウターシリンダは、フレームとの間においてトルク止め機構を具え、
且つまたアウターシリンダは、シリンダロッドとの間においてもトルク止め機構を具えることを特徴とする請求項1または2記載のパラレルリンク式ワーク加工装置。
【請求項7】
前記フレームにおいてゲートフレームの反対側には、加工ユニットの加工ヘッドに取り付けるツールを複数収納し、加工ヘッドに対し適宜のツールが選択的に取り付けられるようにするツールストッカを具えることを特徴とする請求項1または2記載のパラレルリンク式ワーク加工装置。
【請求項8】
前記上部ベースプレートは、上部フレームに対し、平面から視て等角度間隔で配置された三基の屈曲自在の上部ベースプレート支持リンクによって接続され、この上部ベースプレート支持リンクによって上部ベースプレートは、水平状態を維持しながら上部フレームに対し上下動自在に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のパラレルリンク式ワーク加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木工用ルータとして適用することが好ましい、パラレルリンク式ワーク加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木工用ルータとして工業的に汎用されているものは、例えば幅1m~2m、長さ2m~4m程度の固定されたワークテーブルと、その上方にX、Y、Zの三方向に移動できる加工ユニットとを具え、ワークテーブル上に固定設置したワークに対し、加工ユニットの加工ヘッドたるドリル状の刃物を作用させて適宜のレリーフ状等の装飾加工を施すものである。
【0003】
このような装置は、大寸のワークの加工要請に対応できるように、前記のような寸法を具えたテーブルとなっており、その設置面積も大きく要するほか、加工ユニットの移動範囲も大きく確保しなければならない。
しかしながら、一方でユーザによっては、加工するワーク寸法が比較的小さなサイズのものに限られ、装置としても、よりコンパクトなものが求められる場合が少なくない。
【0004】
このようなコンパクト化の要請に応える一手法として、いわゆるパラレルリンク機構を通用した装置も提案されている(例えば特許文献1・2参照)。
しかしながら、この種のパラレルリンク構造は、例えば直接加工を担う加工ユニットの正確な姿勢保持や、シフト移動の正確な設定等に関し、リンク構造が複雑であったりすることもあり、アイデアとして提案されているものの、実機としては、ほとんど市場には提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-199194号公報
【特許文献2】特開2000-254876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであって、複雑になりがちな加工ユニットの設定のためのリンケージ機構等をシンプルな構成としながらも、正確な加工制御が達成できる、パラレルリンク式ワーク加工装置を開発することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の、パラレルリンク式ワーク加工装置は、
立体枠状のフレームと、
このフレーム下方に支持されるワークテーブルと、
当該ワークテーブル上のワークに所定の加工を行う加工ユニットと、
この加工ユニットを前記フレーム上部から吊持状態に支持する加工ユニット設定機構とを具え、
前記加工ユニットを加工ユニット設定機構により、三次元方向に移動させることによりワークテーブル上のワークに所定の加工を施す装置であって、
前記加工ユニット設定機構は、パラレル設定機構とシフト設定機構とを具え、
当該パラレル設定機構は、
前記フレーム上部に取り付けられ、中心位置と水平姿勢とを維持しながら上下方向にのみ移動する上部ベースプレートと、
この上部ベースプレートに対応して、下方に設けられ水平姿勢を取りながら三次元方向に移動する下部ベースプレートと、
前記上部ベースプレートと下部ベースプレートとに対し自在継手状に上下が支持されるスタビライザコラムと、
当該スタビライザコラムを囲むように上部ベースプレートと下部ベースプレートとの間に配設される少なくとも三本のパラレル制御ロッドとを具えるものであり、
一方、前記シフト設定機構は、複数本のシフトシリンダが並列状に配設され、このシフトシリンダの作用長が伸縮制御されるものであり、またシフトシリンダの上端が前記フレーム上部に接続されるとともに、シフトシリンダの下端が加工ユニット側に接続され、各シフトシリンダの作用長を伸縮制御することにより、加工ユニットを水平姿勢に維持したまま、三次元方向にシフトする構成であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の、パラレルリンク式ワーク加工装置は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記立体枠状のフレームは、
門形のゲートフレームと、
このゲートフレームの下部に接続される平面視で矩形枠状をなす下部フレームと
前記ゲートフレームの上部に接続される平面視で三角枠状をなす上部フレームと、
前記下部フレームにおいてゲートフレームと反対側の隅角部から、前記上部フレームの三点の隅角部に至る間に設けられる四本のブレースフレームとを具えることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載の、パラレルリンク式ワーク加工装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記下部ベースプレートは、前記スタビライザコラムの下部を支持するように設けられ、且つ当該下部ベースプレートの下方にユニットサポートが吊持状態に設けられるものであり、前記加工ユニットは、このユニットサポートに搭載されることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載の、パラレルリンク式ワーク加工装置は、前記請求項3記載の要件に加え、
前記シフト設定機構におけるシフトシリンダは、三本で構成され、その上端が前記フレームにおける上部フレームの三カ所の隅角部に自在継手状に接続され、且つシフトシリンダの下端が前記ユニットサポートに対し自在継手状に接続されることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載の、パラレルリンク式ワーク加工装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記パラレル設定機構におけるパラレル制御ロッドは、上部ベースプレートと下部ベースプレートとの間に設けられるにあたり、上部ベースプレートと下部ベースプレートとに対しボールジョイント接続されるものであり、
且つ当該パラレル制御ロッドは、ロッド保持機構によって、上部ベースプレートと下部ベースプレートとの相互に常時接近傾向が付与される構成であることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6記載の、パラレルリンク式ワーク加工装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記シフト設定機構におけるシフトシリンダは、ボールネジ機構を具えた電動シリンダが適用されるものであり、
またシフト設定機構におけるアウターシリンダは、フレームとの間においてトルク止め機構を具え、
且つまたアウターシリンダは、シリンダロッドとの間においてもトルク止め機構を具えることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項7記載の、パラレルリンク式ワーク加工装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記フレームにおいてゲートフレームの反対側には、加工ユニットの加工ヘッドに取り付けるツールを複数収納し、加工ヘッドに対し適宜のツールが選択的に取り付けられるようにするツールストッカを具えることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項8記載の、パラレルリンク式ワーク加工装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記上部ベースプレートは、上部フレームに対し、平面から視て等角度間隔で配置された三基の屈曲自在の上部ベースプレート支持リンクによって接続され、この上部ベースプレート支持リンクによって上部ベースプレートは、水平状態を維持しながら上部フレームに対し上下動自在に構成されていることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0015】
まず請求項1記載の発明によれば、駆動部となる複数本のシフトシリンダを並列に配置し、これを加工ユニット側に同時に作用(伸縮)させて、加工ユニットの位置を制御する機構である(いわゆるパラレルメカニズム)。このように本発明は、多方向から加工ユニットの位置制御を行うものであるから、XYZの三方向(各々直交する三方向)に加工ユニットを移動させていた従来の機構(いわゆるシリアルメカニズム)に比べ、シフトシリンダ一本あたりの誤差が平均化され、加工ユニットを高い精度で制御することができる。また加工ユニットを動作させる制御が簡素な構造にでき、シフトシリンダ一本あたりの動作出力も少なくて済む。更にコンパクト化・軽量化が図れ、設置にあたっての省スペース化をも達成することができる。
【0016】
また請求項2記載の発明によれば、立体枠状のフレームは、矩形枠状の下部フレームと、三角枠状の上部フレームと、これら両フレームの隅角部を上下で連結する四本のブレースフレームとによって構成されるため、多面体構造のトラスフレームとなり、強固なフレーム剛性を確保することができる。
【0017】
また請求項3記載の発明によれば、加工ユニットの搭載形態を具体的なものとする。
【0018】
また請求項4記載の発明によれば、シフトシリンダの本数や、その上下両端の接続形態を具体的なものとする。
【0019】
また請求項5記載の発明によれば、パラレル制御ロッドは、両端部が上部ベースプレートと下部ベースプレートとに対しボールジョイント接続されるが、加工中、このボールジョイント接続が解除されてしまうことがないものである。すなわち、加工中は、加工ユニットが種々の位置に移動するため、これに伴いパラレル制御ロッドも大きく傾斜(傾倒)することがあるが、本発明ではロッド保持機構を具えるため、上下のボールジョイントの接続状態が常に維持されるものである。
【0020】
また請求項6記載の発明によれば、アウターシリンダは、フレーム及びシリンダロッドとの間においてトルク止め機構を具えるため、シフトシリンダの伸長・収縮制御を確実に且つ正確に行うことができる。
【0021】
また請求項7記載の発明によれば、複数本のツールを収納するツールストッカを具えるため、一つのワークを加工する際、途中でツールを変更しなければならない場合であっても、このようなツールの交換作業が事前のプログラムの設定により自動で行うことができる。
【0022】
また請求項8記載の発明によれば、上部ベースプレートの支持構造を具体的なものとする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のワーク加工装置(パラレルリンク式ワーク加工装置)の一例を示す斜視図である。
図2】同上、他の方向から視た斜視図である。
図3】同上、正面図である。
図4】同上、平面図である。
図5】同上、側面図である。
図6】ツールストッカ周辺におけるワーク加工時(ツール収納時)の様子を示す側面図(a)、並びにツール交換時に切り替えた様子を示す側面図(b)である。
図7】ツールストッカ周辺におけるワーク加工時(ツール収納時)の様子を示す斜視図(a)、並びにツール交換時に切り替えた様子を示す斜視図(b)である。
図8】パラレル設定機構を示す斜視図である。
図9】パラレル設定機構におけるロッド保持機構周辺を示す斜視図(a)、並びに本図(a)を一部破断状態で示す斜視図(b)である。
図10】パラレル制御ロッドがほぼ最大限傾斜しても、上記ロッド保持機構によって下部ベースプレートの保持状態を維持する様子を示す側面図である。
図11】シフト設定機構を示す斜視図である。
図12】シフト設定機構周辺を示す側面図である。
図13】シフト設定機構を他の方向から視た斜視図(a)、並びに本図(a)において一部破断状態で示す斜視図(b)、並びにアウターシリンダとシリンダロッドとのトルク止め機構を示す斜視図(c)である。
図14】上部ベースプレート支持リンクの動作を示す斜視図である。
図15】加工中のツール(加工ヘッド)を取り囲むように設けられる集塵カバーを示す斜視図であり、ワーク加工時とツール交換時との様子を併せ示す斜視図である。
図16】加工ヘッドが描く移動範囲を側面視(正面視)状態で示す説明図(a)、並びに平面視状態で示す説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、以下の実施例に示すとおりであるが、これらの実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0025】
以下、本発明のパラレルリンク式ワーク加工装置M(以下、単にワーク加工装置Mとする)について図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
ワーク加工装置Mは、一例として図1図2に示すように、基本構成部材として立体枠状のフレーム1と、このフレーム1下方に配されるワークテーブル2と、当該ワークテーブル2上のワークWに切削などの所定の加工を行う加工ユニット3と、この加工ユニット3を前記フレーム1の上部から吊持状態に支持する加工ユニット設定機構4とを具え、前記加工ユニット3を加工ユニット設定機構4により三次元方向に移動させて、ワークテーブル2上のワークWに所定の加工を施す装置である。
【0026】
以下、上記各部材について説明する。
まず立体枠状のフレーム1から説明する。フレーム1は、一例として図1図5に示すように、門形に形成されたゲートフレーム11を具え、その下方において当該ゲートフレーム11の後方(水平方向)に張り出す下部フレーム12と、上方において同じく後方に張り出す上部フレーム13とを具える。なお便宜上、本明細書では、このゲートフレーム11に面した側を、ワーク加工装置Mにおける前方または手前側と記すものであり、その反対側すなわち前記下部フレーム12や上部フレーム13が張り出すように設けられる方(ゲートフレーム11の反対側)を後方または奥側とする。
【0027】
下部フレーム12は、一例として上記図1図2図4に示すように、平面から視て矩形枠状をなすように形成される一方、上部フレーム13は、平面から視て三角枠状をなすように形成される。なお三角形状を呈する上部フレーム13は、その三辺の中間位置をそれぞれ結ぶような上部サブフレーム14を具える。
そして、この下部フレーム12と上部フレーム13との間には、斜設されるように柱状のブレースフレーム15が設けられ、実質的に上部フレーム13を支持する形態を採る。
【0028】
すなわちブレースフレーム15は、四本のブレースフレーム15a、15b、15c、15dから成り、ブレースフレーム15aについては、下端部を前記下部フレーム12における奥側隅角部に接続する一方、上端部を上部フレーム13におけるゲートフレーム11寄り、つまり正面側の隅角部に接続している。また、ブレースフレーム15bについては、下端部は同様に下部フレーム12における奥側隅角部に接続する一方、上端部は前記上部フレーム13における奥側頂点隅角部に接続している。
【0029】
またブレースフレーム15cについては、下端部を下部フレーム12のもう一方の隅角部に接続する一方、上端部を上部フレーム13の奥側頂点隅角部に接続している。更にブレースフレーム15dについては、下端部をブレースフレーム15cとほぼ同位置に接続する一方、上端部を上部フレーム13におけるゲートフレーム11側の隅角部に接続している。
このようにフレーム1は、三角枠状の上部フレーム13と、矩形枠状の下部フレーム12とを門形のゲートフレーム11によって上下に接続したような構成を採り(平面から視て三角形及び矩形の一辺が重なるように接続)、更にこのように接続した構造体の各頂点部分を上下方向で四本のブレースフレーム15によって接続するように構成される。このためフレーム1は、結果的に多面体構造のトラスフレームとして形成され、強固な剛性を有するように構成される。因みに、このように構成されたフレーム1全体は、平面視、変形五角形(いわゆるホームベース形)を呈している(図4参照)。
【0030】
なお、下部フレーム12は、装置の最下端(設置面上)に設けられるのではなく、脚部フレーム16により装置設置面から幾らか浮き上がった位置に設けられている。この脚部フレーム16は、実質的に前記ゲートフレーム11の下方部位と、下部フレーム12の後方二カ所の隅角部に設けられた脚部フレーム16とにより構成される。
更にフレーム1には、数種類のツール(切削ツール)を収納するためのツールストッカフレーム17を具えるものであり、これは下部フレーム12の後方外縁部に設けられる(図2参照)。
【0031】
そして、このようなフレーム1には、下部フレーム12上にワークテーブル2が具えられる。このワークテーブル2には、一例として図5に示すように、下部フレーム12に設けられた横行レール21に対し、リニアベアリング22を介して横行架台23が横行自在に取り付けられている。更にこの横行架台23には、装置前後方向に前後レール24が設けられ、この前後レール24上にリニアベアリング25を介して直方体状のテーブル本体26が設けられる。結果的にテーブル本体26は、横行架台23上を前後方向に移動できるように構成されている。
ここで図中符号23hは、横行架台23を横移動つまり左右方向に移動させる際に作業者が保持する把持部である。
また、本実施例では、例えば横行架台23を二基設け、一基の横行架台23上を前後方向に移動するテーブル本体26を二基(計四基)設けているが、これは種々異なるワークWの大きさに対応するためである。すなわちワークWが大きい場合には、横行架台23を大きく離開させ、また一基の横行架台23におけるテーブル本体26の間隔も広く確保するものである。逆にワークWが小さい場合には、必ずしも四基全てのテーブル本体26を使用する必要はないものである。
また、テーブル本体26は、例えばワークWを吸着して保持・固定できるように構成されるものであり、そのための吸引孔がワーク保持面に形成される。また、テーブル本体26を摺動自在に載置する横行架台23にも、このための吸引道が形成される。
なお、ワークテーブル2は、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば平板状の載置台の上にワークWをクランプ固定するような形態も可能であり、種々の形態が採り得る。
【0032】
次に加工ユニット3について説明する。
加工ユニット3は、ワークWに対し切削等の適宜の加工を施すユニットであり、加工ユニット3自体は、例えばルータ等の錐状のツールTを加工ヘッド31とし、その上方に駆動部32を具えるものである。なお、加工ユニット3の支持形態については、加工ユニット設定機構4のところで併せて説明する。因みに、加工ユニット3は、ワークWに対する切削やレリーフ加工等に留まらず、例えば塗装ノズル等を加工ヘッド31として適用し、ワークWに対する塗装等の加工も行い得るものである。
また、本実施例では、ワークWに施す実加工として切削加工を想定しているため、一例として図15に示すように、加工ヘッド31には、このものの周囲を取り囲むような矩形筒状の集塵カバー33を設けるものである。この集塵カバー33は、加工中に発生する切粉を周囲に飛散させないようにし、且つ当該切粉を効率的に回収する作用を担うものである。因みに、加工中に発生した切粉は、集塵カバー33内から加工ヘッド31の上部正面側に向けて開口された集塵口34を通り、ここに適宜接続されるフレキシブルダクト等を経て回収される。
また集塵カバー33自体は、矩形筒状を成すプレート状部材の下端ほぼ全周に、複数列もしくは多層状態で毛を取り付けて形成することができる。更に当該集塵カバー33は、ツール交換時には、ツールの交換作業を妨げないように、奥側つまりツールストッカ7に面した方が開放できるように構成されている。なお、図中符号33Mは、集塵カバー33を開放・閉鎖させるための駆動モータである。
【0033】
次に加工ユニット設定機構4について説明する。
加工ユニット設定機構4は、加工ユニット3の水平姿勢を保ちながら、このものを適宜の三次元位置、すなわちX、Y、Z方向の任意の位置に移動させるものであり、パラレル設定機構5とシフト設定機構6とにより構成される。もちろん本発明のワーク加工装置Mが、パラレルリンク加工を採用する以上、その可動範囲は一定の制約を受けるものである。因みに、図3図5(いわゆる三面図)に付したハッチングが、前記加工ヘッド31の移動範囲を示している。
【0034】
以下、加工ユニット設定機構4を構成するパラレル設定機構5から説明する。
パラレル設定機構5は、加工ユニット3の水平姿勢を保つ作用を担うものであって、フレーム1の上部フレーム13から吊持状態に支持される。パラレル設定機構5は、一例として図8に示すように、上方に上部ベースプレート50を具え、この上部ベースプレート50は、平面から視て変形六角形状と称されるような概形状を有し、その中央が開口したプレート状部材として形成される。そして、この上部ベースプレート50は、一例として図14に示すように、上部ベースプレート支持リンク51によって中心位置が確保されるように、且つ上下方向に移動できるように前記上部サブフレーム14に対し取り付けられている。すなわち上部ベースプレート支持リンク51は、基部リンク片51aが上部サブフレーム14に対しピン接続され、更に基部リンク片51aの他端側にプレート側リンク片51bが同様にピン接続された二接リンク構造を成し、プレート側リンク片51bは、その自由端側で前記上部ベースプレート50に対しピン接続されている。そして上部ベースプレート支持リンク51は、平面視で三カ所、等分配された状態(いわゆる三等配)で設けられている。
【0035】
また一例として上記図8に示すように、当該上部ベースプレート50に対しスタビライザコラム52の上部が支持される。具体的にはスタビライザコラム52は、一例として充分剛性を確保したパイプ状部材であり、その上端がユニバーサルジョイント53の上部ユニバーサルジョイント53aによって前記上部ベースプレート50に対し自在継手状に支持されている。より詳細には、上部ユニバーサルジョイント53aとして上部ベースプレート50とスタビライザコラム52との間に、細長ドーナツ状の中継部材521を設けるものである。そして、この中継部材521は、まず外側の上部ベースプレート50に対して、適宜の方向(例えば左右方向)で回動自在に接続されるものであり、更に内側のスタビライザコラム52に対し、90度異なる方向(例えば前後方向)に回動自在に接続されるものである(図9(b)参照)。かかる構成によりスタビライザコラム52は、上部の中心位置を確保しながらも、上部ユニバーサルジョイント53aによって上下に移動しつつ下方を三次元方向に自在に移動できるように構成されている。
【0036】
一方、スタビライザコラム52の下端は、下部ベースプレート54を支持している。なお特許請求の範囲では、スタビライザコラム52は、上部ベースプレート50と下部ベースプレート54との間に設けられると表現しているが、下部ベースプレート54それ自体は、実質的にスタビライザコラム52の下端に取り付けられている。またスタビライザコラム52の下端と下部ベースプレート54との間も、一例として図8図9に示すように、上部と同様にユニバーサルジョイント53の下部ユニバーサルジョイント53bによって自在継手状に接続されている。すなわち図中符号522が、下部ベースプレート54とスタビライザコラム52との間に設けられた細長ドーナツ状の中継部材であり、これが実質的に下部ユニバーサルジョイント53bを構成している。
【0037】
そして、このような上部ベースプレート50と下部ベースプレート54との間に、パラレル制御ロッド55が、一例としてスタビライザコラム52を囲むように三本、等角度間隔で設けられている。これらパラレル制御ロッド55の上下の端部は、前記上部ベースプレート50と下部ベースプレート54との間において、ボールジョイント接続されている。そしてパラレル制御ロッド55と上部ベースプレート50との接続、及びパラレル制御ロッド55と下部ベースプレート54との接続については、ロッド保持機構56によって維持されており、以下、このロッド保持機構56について説明する。
【0038】
ここで本発明では、パラレルリンク機構によって加工ユニット3を適宜の位置に移動できるようにしており、この自由度を高めるにはパラレル制御ロッド55を大きく傾斜できるようにする必要がある。すなわち加工ユニット3の移動範囲を広く獲得にするには、通常のボールジョイント接続よりも大きな角度でパラレル制御ロッド55を傾倒(傾斜)させる必要がある(図10参照)。
このためには、通常のボールジョイント接続よりも、ボール部と、これを受け入れるボールキャッチ部との係合代(嵌合代)を小さくして、上述した可動範囲を広く獲得することが望ましい。しかしながら、単に、このような構造を採った場合には、嵌合しているボール部がボールキャッチ部から抜け易くなることは否めない。すなわち本実施例で言えば、パラレル制御ロッド55をある程度傾倒させた場合に、ボールジョイント部が抜け易くなってしまうものである。そのため本実施例では、これを防止するための抜け止めを図っており、これがロッド保持機構56である。
【0039】
以下、ロッド保持機構56について更に詳細に説明するが、パラレル制御ロッド55の下部、つまりパラレル制御ロッド55と下部ベースプレート54との接続を維持するロッド保持機構56について、図9に基づいて説明する。
まずスタビライザコラム52を下部ベースプレート54寄りの位置で上下に二分割するものであり、この分割部には各々外周側に張り出すフランジ部f1・f2が形成される。そして、このフランジ部f1・f2の間に、プレート状の介在物を挟み込みながら(これを被挟持体561とする)、更にバネ等の付勢体562を設けたボルト・ナットにより連結固定するものである。このような構成により下部ベースプレート54を上方、つまりパラレル制御ロッド55における下端ボールジョント部のボール部に押しつけるように付勢し、当該ボールジョント部の抜け止めを図るものである。
なおロッド保持機構56は、上述したようにパラレル制御ロッド55の上部、すなわちパラレル制御ロッド55と上部ベースプレート50との間にも設けられ、これによりパラレル制御ロッド55は上下のボールジョント部においても抜け止めが図られている。
このような構造から本実施例では、パラレル制御ロッド55が大きく傾いてもボールジョント部が外れてしまうことがないものである(ボールジョント部の接続が解除されてしまうことがないものである)。
【0040】
更に下部ベースプレート54の下方には、一例として上記図8に示すように、加工ユニット3を支持するユニットサポート57が、吊り下げ状態に設けられるものであり、このユニットサポート57は、駆動部ハウジング57aと、その下方においてプレート状に構成されたヘッドサポート57bとにより構成される。
【0041】
次に、加工ユニット設定機構4を構成するもう一つのシフト設定機構6について説明する。
シフト設定機構6は、前記パラレル設定機構5に支持された加工ユニット3を任意の位置に移動させるシフト作業を行うものであり、駆動ユニットの作用を担うものである。シフト設定機構6は、一例として図4図11に示すように、電動シリンダ等のシフトシリンダ61を三本設けて成り、このシフトシリンダ61は、アウターシリンダ62とシリンダロッド63とを具え、全体として伸長・収縮自在に構成されるものである。
すなわち、シフトシリンダ61は、例えば図12に示すように、アウターシリンダ62の下方に設けたシフトモータ64により駆動リング64Rを回転させるものである。なお、この駆動リング64Rには、ボールネジ状のスパイラルシャフト部位を具えたシリンダロッド63を螺合させてあり、駆動リング64Rの回転によってシリンダロッド63を軸方向(つまり上下方向)に移動させるものであり、最終的にシリンダロッド63の伸長・収縮を図るものである。
もちろん、駆動リング64Rに螺合するシリンダロッド63は、駆動リング64Rが回転しても自身は回転しないように構成されており(そのためシリンダロッド63が上下動する)、その構成については後述する。
【0042】
またシフトシリンダ61におけるアウターシリンダ62の上部は、ボールジョイントを適用した上部ジョイント62Jを介して前記上部フレーム13に接続されている。具体的には三本のシフトシリンダ61におけるアウターシリンダ62は、それぞれ平面視三角枠状を成す上部フレーム13の各頂点近くに接続されている(図4参照)。またシリンダロッド63の下端の下部ジョイント63Jは、同じくボールジョイントを適用して前記ユニットサポート57におけるヘッドサポート57bの周囲、三カ所に接続されている(図5参照)。従って三本のシフトシリンダ61は、上方三点から下方においてあたかも集束するような形態でパラレル設定機構5におけるユニットサポート57に接続されている。後述するとおり、シフトシリンダ61のそれぞれの伸縮状態の設定により、前記加工ヘッド31を任意の位置に移動させるものであり、そのシフト作用時のモーメント等を考慮して、本実施例ではシリンダロッド63の下端はヘッドサポート57bに接続されている。しかしながら、要は加工ヘッド31の位置決めを行うことができればよいため、例えばパラレル設定機構5における下部ベースプレート54にシリンダロッド63の下部ジョイント63Jを接続するような形態であってももとより差し支えない。
【0043】
更にこのような構成において、シフトシリンダ61の上下は、ボールジョイント接続によって自由な動きが確保されることから、このような状態のままではシフトモータ64によってシリンダロッド63を駆動させようとした場合であっても、駆動トルクを受けてアウターシリンダ62が、あたかも空回り状に回転したり、あるいはシリンダロッド63が回転したりして、正確な伸縮がなされないおそれがある。従ってアウターシリンダ62及びシリンダロッド63それぞれにトルク止めの機構を具える。
【0044】
まずアウターシリンダ62とフレーム1との間のトルク止め機構については、一例として図11に示すように、アウターシリンダ62の上部にトルク止め突子65を設ける一方、フレーム1側に突子受け66を設けておき、アウターシリンダ62の回転を阻止するような構成としている。
また、アウターシリンダ62とシリンダロッド63との間のトルク止め機構については、一例として図13(c)に示すように、シリンダロッド63の上端部に円板状の回転止め67を固定しておき、この回転止め67の外周側には矩形状の切欠き671が、直径線上における対向二カ所形成されている。また、アウターシリンダ62の内周側には、内側に突出する突起68が軸方向に二カ所(直径線上の対向二カ所)形成されており、これらシリンダロッド63側の切欠き671と、アウターシリンダ62側の突起68とを係合状態としておくことで、アウターシリンダ62に対するシリンダロッド63の回転止めを図るように構成している。
【0045】
そして、このような構成により、シフトモータ64によって駆動される駆動リング64Rが回転しても、アウターシリンダ62及びシリンダロッド63は、いずれも回転しない状態でシフトシリンダ61全体の伸縮動作が行われるものである。
【0046】
ここで前記加工ヘッド31の移動範囲(図3図5のハッチング)について、図16に基づき補足説明する。
一本のシフトシリンダ61は、上記取付構造から上部ジョイント62Jを頂点とし、シフトシリンダ61(アウターシリンダ62及びシリンダロッド63)を母線とするような円すい(直円すい)状の軌跡を描きながら移動する。
そして当該シフトシリンダ61は、上述したように平面視120度の位相差を有して三本配設されており、このシフトシリンダ61の下方にヘッドサポート57bを介して加工ヘッド31が設けられる。そのため加工ヘッド31は、前記三本のシフトシリンダ61に規制され、実際の加工ヘッド31が描く平面的な軌跡は、一本のシフトシリンダ61が描く円すいを底部付近で斜めに切断したような軌跡となり、これは楕円形状となる。すなわち加工ヘッド31が実際に描く平面的な軌跡は、円すい底部の円形状ではなく、この付近で斜めにカットした楕円形となる。
ここでシフトシリンダ61が三本であることから、この楕円も三つ重なるようになる。すなわち、一例として図16(b)に示すように、三つの楕円は、中心を合致させながら、シフトシリンダ61の平面配設態様と同様に、長軸を120度(つまり60度)ずつずらした状態で重なる。そのため加工ヘッド31は、この三つの楕円の重なった内側部分が移動範囲となり、これは言わば変形六角形のような形状となる。このように加工ヘッド31の平面的な移動範囲は、上記図4図16(b)のハッチング部に示すように、六角形(変形六角形)状となる。
【0047】
次に、側面または正面から視た加工ヘッド31の移動範囲について説明する。
一本のシフトシリンダ61を、このものが設けられた縦断面視状態で描くと、一例として図16(a)に示すように、加工ヘッド31の下端は円形状を描くと考えられる。一方、他のシフトシリンダ61は、当該円形状を描くシフトシリンダ61に対し、平面視で120度の位相差をもって配設されるから、他のシフトシリンダ61が描く円軌道を斜めに見ることになり、側面視状態では楕円軌道となる。
そして側面視(正面視)状態では、この円軌道と楕円軌道、及び加工ヘッド31の水平移動部分(下方)とで囲まれた範囲が、加工ヘッド31が描く移動範囲となる。この形状は、上記図16(a)に示すように、中央部分がやや鋭角状に高くなり、且つ周縁部分が低くなるような山形を呈するものである。このように側面(正面)から視た加工ヘッド31の移動範囲は、一例として図16(a)・図3図5のハッチング部に示すような形状となる。
【0048】
更に本実施例では、一例として図2図6図7に示すように、切削等の実加工に使用する各種のツールTを保持・収納しておくためのツールストッカ7を具えるものであり、ここから取り出された適宜のツールTが加工ユニット3に取り付けられて、加工ヘッド31を構成する。なお、本実施例では三本のツールTがツールストッカ7に収納されるようになっているが、この数は適宜、変更可能である。
ツールストッカ7は、前記フレーム1のツールストッカフレーム17に支持されるものであり、ツールTは実質的にツールホルダ71によって保持されている。もちろん、この保持は、ツールTをツールホルダ71と加工ユニット3との間で受け渡しできるようにする保持である。ここで図中符号73は、収納時のツールTを上方から覆うようにカバーするツールホルダカバーであり、実際には複数本のツールTを保持するツールホルダ71の上方を全体的にカバーするように形成される。
そして上記ツールホルダ71は、ツール交換時には、ここに最接近するようにシフトされた加工ユニット3に対してツールTを供給するように、前方に移動できるように構成される。このためツールホルダ71は、シフター72によって揺動接近するような構成を採る。
【0049】
以下、ツールホルダ71の揺動接近作動について具体的に説明する。なお、説明にあたっては、加工に必要なツールTを何本か収容しているツール収納時からツール交換時にあたりツールホルダ71を前方側に揺動(回動)させる際の動作として説明する。
ツール収納時からツール交換時にあたっては、一例として上記図6図7に示すように、まずシフター72の摺動子を伸長させる。これによりツールTを保持しているツールホルダ71が前方側に突出するように、つまり実加工部に接近するように回動する。また上記シフター72における摺動子の伸長動作に伴い、収納状態のツールTをカバーしていたツールホルダカバー73も開放するように回動し、前方側に突出したツールホルダ71の上方が露出するような状態となる(図6(b)・図7(b)参照)。これにより加工ヘッド31のツールストッカ7側への接近及びツール交換作業が支障なく行えるものである。
なお、ツール交換時には、上述したように加工ヘッド31を取り囲む集塵カバー33が開放され、ツールの交換作業を妨げないように設定される。
【0050】
本発明のワーク加工装置Mは、以上述べたような基本構造を有するものであり、以下、当該装置を適用したワークWの加工態様について説明する。
【0051】
(1)ワークの設置(固定)
まずワークWを載せるテーブル本体26が、下部フレーム12上を直接または間接的に自在に移動できるように構成されているため、テーブル本体26を適宜の位置に移動させる。すなわち、まず作業者が把持部23hを操作して横行架台23を左右方向に適宜移動させた後、横行架台23上の前後レール24に支持されたテーブル本体26を前後方向に適宜移動させる。
また、実際にワークWをテーブル本体26上に設置するには、例えばワークWの直交二辺を基準のピンや衝立状のガイド板等に当てながら設置するものであり、設置基準位置(これが加工の基準位置にもなる)を決めた状態でワークWをセッティングするのが一般的である。
なお、ワークWのセッティング後、テーブル本体26を奥側に移動させて、ワークWが実際に加工を受ける実加工位置に待機させることもあり得る。
【0052】
(2)ツールの供給(取り付け)
このようにしてテーブル本体26上にセットされたワークWに対して加工ユニット3による加工がなされる。加工にあたっては、前述した通りツールストッカ7から適宜のツールTが取り出され、加工ヘッド31として装着される。なお加工ヘッド31は、駆動部32に対し着脱自在に構成された回転刃物等を実質的に指称するものである。このようにして目的に応じた加工ヘッド31が設定された後、適宜のプログラムに従って切削等の適宜の加工が行われる。
また、ツールTの供給時には、一例として図6に示すように、シフター72の摺動子が伸長することによりツールTを保持したツールホルダ71が前方、つまり加工ユニット3に接近するようになり、且つ上記シフター72の伸長動作によってツールホルダ71の上方を覆っていたツールホルダカバー73も外れるようになり、ツールTが露出するような状態となる。もちろん、ツールTを供給した後は、シフター72の摺動子が収縮し、ツールTを保持したツールホルダ71は、後方つまりツールストッカフレーム17側に退去するようになり、且つまたツールホルダカバー73もツールホルダ71の上方を覆うようになるものである。
因みに、実際の加工途中においてツールTを交換することも当然あり、その場合にも、このような動作が行われ、目的の加工に適したツールTが選択される。
【0053】
(3)加工(切削等の実加工)
加工中は、予め設定された加工プログラムにより前記シフト設定機構6におけるシフトモータ64が駆動され、三本のシフトシリンダ61の作用長が適宜、設定されるものである。このとき三本のシフトシリンダ61が適宜の寸法で伸縮移動しても、下部ベースプレート54は、水平姿勢が維持される。すなわち上部ベースプレート支持リンク51(パラレル設定機構5)によって上部ベースプレート50が水平姿勢を維持していることを受けて、下部ベースプレート54の位置自体は、三次元方向に移動するが、パラレル制御ロッド55(パラレル設定機構5)によって、あくまでもパラレル状態に設定され、水平姿勢が維持されるものである。
【0054】
その結果、下部ベースプレート54の下方に設けられているユニットサポート57についても、あくまでヘッドサポート57bは水平状態を保ち、加工ヘッド31自体は当初の加工姿勢(例えばドリル刃の場合は垂直姿勢)を維持したまま移動する。もちろん加工ヘッド31自体あるいは駆動部32を伴って、これらを偏向旋回するような機構を採り入れることも可能である。
また、実際の加工中においては、上述したようにツール交換が行われることがあり、その場合には上述した手順に従い、ツールTの交換作業及び加工ヘッド31による実加工(切削等)が行われる。
このようにして、目的のプログラムに応じた加工ヘッド31による加工が順次進められ、これが終了すると、加工ユニット設定機構4、すなわちパラレル設定機構5とシフト設定機構6との作用により、加工ユニット3がワークWから充分上方に退去し、ワークWの取り出しを許容する。
【0055】
このとき本実施例では、上述したロッド保持機構56によってパラレル制御ロッド55の保持作用(下部ベースプレート54の保持作用)が確実となり、パラレル制御ロッド55が大きく傾いても、下部ベースプレート54の保持が継続できるように考慮されている。すなわちロッド保持機構56は、パラレル制御ロッド55における上下のボールジョント部の抜け止め作用を担っており、このためにロッド保持機構56が大きく傾いても当該ボールジョント部が外れてしまうことがないものである(ボールジョント部の接続が解除されることがないものである)。
また、ワークWの加工が終了した後、ワークテーブル2は、テーブル本体26をゲートフレーム11側(手前側)に移動させて、ワークWの取り出し等の作業が円滑に行えるようにするものである。
【0056】
(4)フレーム形状
なお、このようなパラレル設定機構5とシフト設定機構6とは、特に前記フレーム1において、下部フレーム12が平面視矩形枠状、上部フレーム13が平面視三角枠状に形成され、またその正面については一面が矩形状に開孔された門形のゲートフレーム11により構成されているから、シフトシリンダ61を三本配置するにあたり、上下三点の基準位置が設定し易く、またパラレル設定機構5における上部ベースプレート50の支持等も合理的に行える点で、このフレーム構成は極めて優れている。
なお、フレーム1自体は、上下に位置する上部フレーム13及び下部フレーム12を、ともに平面視矩形枠状に形成し、フレーム1全体を直方体の枠状に形成することも可能であるが、前述したように上部フレーム13を平面視三角枠状にしたことにより、装置全体の軽量化・コンパクト化が図られる一方、下部フレーム12を平面視矩形枠状に構成したことにより、装置自体の極めて高い安定性を充分に確保している。
【符号の説明】
【0057】
M ワーク加工装置(パラレルリンク式ワーク加工装置)
1 フレーム
2 ワークテーブル
3 加工ユニット
4 加工ユニット設定機構
5 パラレル設定機構
6 シフト設定機構
7 ツールストッカ

11 ゲートフレーム
12 下部フレーム
13 上部フレーム
14 上部サブフレーム
15 ブレースフレーム
15a ブレースフレーム
15b ブレースフレーム
15c ブレースフレーム
15d ブレースフレーム
16 脚部フレーム
17 ツールストッカフレーム

21 横行レール
22 リニアベアリング
23 横行架台
23h 把持部
24 前後レール
25 リニアベアリング
26 テーブル本体

31 加工ヘッド
32 駆動部
33 集塵カバー
33M 駆動モータ
34 集塵口

50 上部ベースプレート
51 上部ベースプレート支持リンク
51a 基部リンク片
51b プレート側リンク片
52 スタビライザコラム
53 ユニバーサルジョイント
53a 上部ユニバーサルジョイント
53b 下部ユニバーサルジョイント
54 下部ベースプレート
55 パラレル制御ロッド
56 ロッド保持機構
57 ユニットサポート
57a 駆動部ハウジング
57b ヘッドサポート

61 シフトシリンダ(電動シリンダ)
62 アウターシリンダ
62J 上部ジョイント
63 シリンダロッド
63J 下部ジョイント
64 シフトモータ
64R 駆動リング
65 トルク止め突子
66 突子受け
67 回転止め
68 突起

71 ツールホルダ
72 シフター
73 ツールホルダカバー

521 中継部材(上)
522 中継部材(下)
561 被挟持体
562 付勢体
671 切欠き

f1 フランジ部
f2 フランジ部
T ツール(切削ツール)
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16