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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085287
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】光学積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240619BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240619BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240619BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20240619BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20240619BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240619BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240619BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240619BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240619BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
H10K50/00
H10K50/86
G09F9/00 313
C09J201/00
C09J7/38
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199741
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 陽
(72)【発明者】
【氏名】南川 善則
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4J004
4J040
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB11
2H149AB13
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149DA18
2H149DA27
2H149EA02
2H149EA03
2H149EA12
2H149EA19
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA08Z
2H149FA12Z
2H149FA13Y
2H149FA24Y
2H149FA58Y
2H149FA66
2H149FD01
2H149FD05
2H149FD22
2H149FD30
2H149FD35
2H149FD47
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC32
3K107EE26
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA08
4J040DF001
4J040JB09
4J040NA17
5G435AA08
5G435AA12
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF05
5G435HH01
5G435HH18
(57)【要約】
【課題】特定の樹脂層が偏光子に隣接して配置されており、かつ、高温環境下において偏光子のクラックが抑制されている光学積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学積層体は、偏光子と偏光子の一方の側に配置された保護層とを含む偏光板と、偏光子に隣接して配置された樹脂層と、樹脂層側の最外層として配置された第1の粘着剤層と、を有する。偏光子の吸収軸方向の収縮率は2.5%以下であり、第1の粘着剤層の厚みは17μm以下であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率は0.10MPa以上である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と該偏光子の一方の側に配置された保護層とを含む偏光板と、該偏光子に隣接して配置された樹脂層と、樹脂層側の最外層として配置された第1の粘着剤層と、を有し、
該偏光子の吸収軸方向の収縮率が2.5%以下であり、
該第1の粘着剤層の厚みが17μm以下であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率が0.10MPa以上である、
光学積層体。
【請求項2】
前記樹脂層の偏光子と反対側に、第2の粘着剤層を介して積層された位相差層をさらに含み、
該位相差層が円偏光機能または楕円偏光機能を有し、
該第2の粘着剤層の厚みが7μm以下であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa以上である、
請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記偏光子および前記保護層の合計厚みをA(μm)とし、前記樹脂層、前記第2の粘着剤層、前記位相差層および前記第1の粘着剤層の合計厚みをB(μm)としたとき、A<Bの関係を満足する、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記位相差層が樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されており、そのRe(550)が100nm~200nmであり、Re(450)<Re(550)の関係を満足し、該位相差層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°である、請求項3に記載の光学積層体:
ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内位相差である。
【請求項5】
前記位相差層の樹脂層と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記樹脂層が、ガラス転移温度が85℃以上で重量平均分子量Mwが25000以上の樹脂を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記樹脂層の押し込み弾性率が8GPa以上である、請求項6に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記樹脂層の厚みが1μm以下である、請求項7に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記偏光子の厚みが8μm以下であり、押し込み弾性率が9.5GPa以下であり、かつ、押し込み硬さが0.65GPa以上である、請求項8に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記偏光子の配向関数が0.30以上である、請求項9に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記偏光子の吸収軸方向の収縮率が2.0%以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項12】
画像表示パネルと、該画像表示パネルに前記第1の粘着剤層を介して貼り合わせられた請求項1から11のいずれかに記載の光学積層体と、を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置(例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、量子ドット表示装置)には、その画像形成方式に起因して、多くの場合、表示パネルの少なくとも一方の側に偏光板が配置されている。さらに、薄型化および高機能化を目的として、偏光板において偏光子の一方の側のみに保護層を設け、保護層が設けられていない側に特定の樹脂層を設ける場合がある。このような保護層/偏光子/樹脂層の構成を有する偏光板においては、高温環境下で偏光子にクラックが発生する場合が多い。さらに、偏光板は位相差層(位相差フィルム)と一体化されて用いられる場合が多いところ、上記のような偏光板に位相差層を設けると、高温環境下において偏光子のクラックがさらに顕著なものとなる場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-072951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、特定の樹脂層が偏光子に隣接して配置されており、かつ、高温環境下において偏光子のクラックが抑制されている光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による光学積層体は、偏光子と該偏光子の一方の側に配置された保護層とを含む偏光板と、該偏光子に隣接して配置された樹脂層と、樹脂層側の最外層として配置された第1の粘着剤層と、を有する。該偏光子の吸収軸方向の収縮率は2.5%以下であり、該第1の粘着剤層の厚みは17μm以下であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率は0.10MPa以上である。
[2]上記[1]において、上記光学積層体は、上記樹脂層の偏光子と反対側に、第2の粘着剤層を介して積層された位相差層をさらに含む。該位相差層は円偏光機能または楕円偏光機能を有する。該第2の粘着剤層の厚みは7μm以下であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率は0.12MPa以上である。
[3]上記[1]または[2]において、上記光学積層体は、上記偏光子および上記保護層の合計厚みをA(μm)とし、上記樹脂層、上記第2の粘着剤層、上記位相差層および上記第1の粘着剤層の合計厚みをB(μm)としたとき、A<Bの関係を満足する。
[4]上記[2]または[3]において、上記位相差層は樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されており、そのRe(550)は100nm~200nmであり、Re(450)<Re(550)の関係を満足し、該位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度は40°~50°である。
[5]上記[2]から[4]のいずれかにおいて、上記光学積層体は、上記位相差層の樹脂層と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する。
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、上記樹脂層は、ガラス転移温度が85℃以上で重量平均分子量Mwが25000以上の樹脂を含む。
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、上記樹脂層の押し込み弾性率は8GPa以上である。
[8]上記[1]から[7]のいずれかにおいて、上記樹脂層の厚みは1μm以下である。
[9]上記[1]から[8]のいずれかにおいて、上記偏光子の厚みは8μm以下であり、押し込み弾性率は9.5GPa以下であり、かつ、押し込み硬さは0.65GPa以上である。
[10]上記[1]から[9]のいずれかにおいて、上記偏光子の配向関数は0.30以上である。
[11]上記[1]から[10]のいずれかにおいて、上記偏光子の吸収軸方向の収縮率は2.0%以下である。
[12]本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、画像表示パネルと、該画像表示パネルに上記第1の粘着剤層を介して貼り合わせられた上記[1]から[11]のいずれかの光学積層体と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、特定の樹脂層が偏光子に隣接して配置されており、かつ、高温環境下において偏光子のクラックが抑制されている光学積層体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.光学積層体
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100は、偏光板10と樹脂層20と第1の粘着剤層50とを図面の上側からこの順に有する。図面の上側は、光学積層体を画像表示装置に適用した場合の視認側に対応し得;図面の下側は、画像表示パネル側に対応し得る。偏光板10は、偏光子11と偏光子11の一方の側(視認側)に配置された保護層12とを含む。すなわち、本発明の実施形態においては、偏光板は、いわゆる片保護偏光板である。必要に応じて、保護層12は、偏光子11と反対側にハードコート層(図示せず)を含んでいてもよい。樹脂層20は、偏光子11に隣接して配置されている。なお、本明細書において「偏光子に隣接して配置されている」とは、樹脂層が偏光子に直接形成されていること、または、樹脂層が接着層(代表的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層されていることを意味する。言い換えれば、偏光子と樹脂層との間に光学機能層が介在しないことを意味する。第1の粘着剤層50は、樹脂層20側の最外層として配置されている。第1の粘着剤層50により、光学積層体は画像表示パネルに貼り付け可能とされている。
【0011】
樹脂層20は、代表的には、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または硬化物である。樹脂層20に含まれる樹脂は、代表的には、ガラス転移温度が85℃以上であり、かつ、重量平均分子量Mwが25000以上である。樹脂層20は、バリア機能を有し得る。樹脂層20は、高温高湿環境下における水分の移動を抑制し得、偏光子の端部脱色を抑制し得る。また、樹脂層20は、偏光子に含まれ得るヨウ素の移動を抑制し得、偏光子が他の部材に与え得る影響を低減し得る。例えば、光学積層体を画像表示装置(例えば、有機EL表示装置)に搭載した場合に、画像表示装置の金属部材の腐食を抑制し得る。このような樹脂層を本発明の実施形態による偏光子に隣接して設けることにより、高温高湿環境下における端部脱色をさらに良好に抑制することができる。また、このような樹脂層を偏光子に隣接して設けることにより、保護層を省略することができる。樹脂層は保護層に比べて格段に薄いので、偏光子を良好に保護する機能を維持しつつ、光学積層体の薄型化に貢献し得る。樹脂層の詳細については、後述のC項で説明する。このような特定の樹脂層が偏光子に隣接して配置されている光学積層体において、本発明の実施形態による効果が顕著なものとなる。
【0012】
本発明の実施形態においては、偏光子11の吸収軸方向の収縮率は2.5%以下であり、第1の粘着剤層50の厚みは17μm以下であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率は0.10MPa以上である。このような構成であれば、上記のような特定の樹脂層が偏光子に隣接して配置されている光学積層体において、高温環境下における偏光子のクラックを顕著に抑制することができる。詳細については、以下のとおりである。上記のような樹脂層は、その特性に関連して非常に硬く(後述するように、押し込み弾性率が例えば8GPa以上であり)、その結果、非常に割れやすくなっている。偏光子もまた、光学特性を高め、かつ、端部脱色を抑制するよう構成した結果、非常に硬く(後述するように、押し込み硬さが例えば0.65GPa以上であり)、割れやすくなっている。本発明者らは、このような光学積層体においては、外力等に起因して樹脂層が割れ、当該樹脂層の割れに追随して偏光子にクラックが発生し、高温環境下でクラックが進展することを見出した。本発明者らは解決策について鋭意検討した結果、まず、樹脂層の割れの原因となる変形を抑制することが有用であり、樹脂層に隣接する第1の粘着剤層の厚みと貯蔵弾性率とを組み合わせて最適化することにより樹脂層の変形を良好に抑制できることを見出した。具体的には、第1の粘着剤層の厚みを17μm以下とすることにより、外力等に起因する樹脂層の変形を抑制することができる。さらに、第1の粘着剤層の貯蔵弾性率を0.10MPa以上とすることにより(ある程度硬くすることにより)、樹脂層の変形を抑制できることがわかった。外力等の衝撃に対する対策としては、粘着剤層を柔らかくすることにより外力等を吸収して衝撃を緩和するということが技術常識であるところ、本発明の実施形態によれば、上記のような特定の構成の光学積層体において、粘着剤層の厚みと貯蔵弾性率とを組み合わせて最適化し、かつ、貯蔵弾性率をある程度硬くすることにより、樹脂層の変形を抑制し、結果として、偏光子のクラックを抑制することができる。このように、本発明の実施形態による効果は、技術常識とは逆方向の手段により達成されるものであり、予期せぬ優れた効果である。加えて、本発明の実施形態によれば、偏光子の吸収軸方向の収縮率を2.5%以下とすることにより、仮に樹脂層が変形または割れたとしたとしても、そのような変形または割れに追随しにくくすることができ、結果として、クラックを抑制することができる。なお、上記のようなメカニズムはあくまで推定であり、本発明を限定的に解釈するものではなく、本発明を当該メカニズムにより拘束するものでもない。
【0013】
1つの実施形態においては、図2に示す光学積層体101のように、樹脂層10の偏光子11と反対側に、第2の粘着剤層60を介して積層された位相差層30がさらに設けられていてもよい。位相差層30は、代表的には円偏光機能または楕円偏光機能を有する。このような構成であれば、優れた反射防止特性を有する光学積層体を得ることができる。この場合、光学積層体101は、図示例のように、位相差層30の樹脂層20と反対側(例えば、位相差層30と第1の粘着剤層50との間)に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層40をさらに有していてもよい。このような別の位相差層を設けることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。この場合、該第2の粘着剤層の厚みは7μm以下であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率は0.12MPa以上である。位相差層を設けることにより、外力等に起因する樹脂層の割れが促進され得ることが分かった。これに対し、上記と同様に、樹脂層に隣接する第2の粘着剤層の厚みと貯蔵弾性率とを組み合わせて最適化することにより、樹脂層の変形(結果として、割れ)を良好に抑制することができる。ここで、第2の粘着剤層の厚みは7μm以下であり、上記の第1の粘着剤層の厚みより薄く、かつ、貯蔵弾性率は0.12MPa以上であり、上記の第1の粘着剤層の貯蔵弾性率より大きい。これにより、位相差層に起因して樹脂層の変形(結果として、割れ)が促進され得る場合であっても、そのような変形および割れを良好に抑制することができる。加えて、第1の粘着剤層の厚みおよび貯蔵弾性率を上記のようにすることにより、第2の粘着剤層の厚みと貯蔵弾性率とを組み合わせて最適化することの効果との相乗的な効果が得られ得る。
【0014】
1つの実施形態においては、光学積層体は、上記偏光子および上記保護層の合計厚みをA(μm)とし、上記樹脂層、上記第2の粘着剤層、上記位相差層および上記第1の粘着剤層の合計厚みをB(μm)としたとき、A<Bの関係を満足する。光学積層体において樹脂層の視認側と反対側の厚みが大きい場合に樹脂層の割れが促進されることが分かった。本発明の実施形態によれば、このような場合であっても、樹脂層の変形(結果として、割れ)を抑制し、偏光子のクラックを抑制することができる。厚みAと厚みBとの差の絶対値は、好ましくは10μm~50μmであり、より好ましくは20μm~40μmである。さらに、厚みAと厚みBとの比(B/A)は、好ましくは1.1~3.0であり、より好ましくは1.2~2.5である。なお、別の位相差層が設けられる場合には、合計厚みBは別の位相差層の厚みを含む。
【0015】
実用的には、第1の粘着剤層50の表面には、光学積層体が使用に供されるまで、はく離ライナー(図示せず)が仮着されていることが好ましい。はく離ライナーを仮着することにより、第1の粘着剤層を保護するとともに、光学積層体のロール形成が可能となる。
【0016】
以下、光学積層体の構成要素について説明する。なお、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層については、まとめて粘着剤層として説明する。第1の粘着剤層と第2の粘着剤層とを区別する必要がある場合には、「第1の」または「第2の」を明記する。
【0017】
B.偏光板
B-1.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含むポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムで構成されている。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体系部分ケン化物が挙げられる。
【0018】
PVA系樹脂は、好ましくはアセトアセチル変性されたPVA系樹脂を含む。このような構成であれば、所望の機械的強度を有する偏光子が得られ得る。アセトアセチル変性されたPVA系樹脂の配合量は、PVA系樹脂全体を100重量%としたときに、好ましくは5重量%~20重量%であり、より好ましくは8重量%~12重量%である。配合量がこのような範囲であれば、より優れた機械的強度を有する偏光子が得られ得る。
【0019】
偏光子は、好ましくは、ヨウ化物または塩化ナトリウム(まとめてハロゲン化物と称する場合がある)を含む。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。偏光子におけるハロゲン化物の含有量は、PVA系樹脂100重量部に対して、好ましくは5重量部~20重量部であり、より好ましくは10重量部~15重量部である。ハロゲン化物は、後述の製造方法において、偏光子の前駆体であるPVA系樹脂層を形成する塗布液に配合され、最終的に偏光子に導入され得る。偏光子にハロゲン化物を導入することにより、偏光子におけるPVA分子の配向性を高めることができるので、優れた光学特性(代表的には、高い偏光度と高い単体透過率との両立)を有する偏光子を実現することができる。
【0020】
偏光子の厚みは、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは2μm~7μmであり、さらに好ましくは3μm~6μmである。このように非常に薄くかつ配向性が高い偏光子において吸収軸方向の収縮率を制御することにより、本発明の実施形態による効果が顕著なものとなる。さらに、偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0021】
偏光子の吸収軸方向の収縮率は、上記のとおり2.5%以下であり、好ましくは2.2%以下であり、より好ましくは2.0%以下であり、さらに好ましくは1.8%以下である。収縮率は小さければ小さいほど好ましく、例えば0.5%以上であり得、また例えば0.8%以上であり得る。収縮率は、例えば熱機械分析(TMA)により測定され得る。より詳細には、収縮率は、下記の条件でTMAにより測定した際の95℃における収縮率を意味する。
温度範囲:-50℃~120℃
昇温速度:2℃/分
変調 :±5℃を300秒/サイクル
引張荷重:0.0196N
【0022】
偏光子の押し込み弾性率は、好ましくは7.5GPa~9.4GPaであり、より好ましくは8.0GPa~9.3GPaであり、さらに好ましくは8.2GPa~9.2GPaであり、特に好ましくは8.5GPa~9.2GPaである。偏光子の押し込み硬さは、好ましくは0.65GPa~0.80GPaであり、より好ましくは0.66GPa~0.76GPaであり、さらに好ましくは0.67GPa~0.74GPaであり、特に好ましくは0.68GPa~0.72GPaである。本発明の実施形態に用いられる偏光子は、押し込み弾性率が比較的低いにもかかわらず、押し込み硬さが非常に大きいという特徴を有する。その結果、本発明の実施形態による偏光子は、非常に薄型でありながら、端部脱色(特に、高温高湿環境下における端部脱色)を顕著に抑制することができる。このような偏光子はクラックが発生しやすい傾向があるところ、本発明の実施形態によれば、クラックの発生を抑制することができる。なお、押し込み硬さおよび押し込み弾性率は、代表的には、押し込み試験機(代表的には、ナノインデンター)を用いたナノインデンテーション法により測定され得る。より具体的には、押し込み硬さは、測定対象とされる偏光子の表面に探針(圧子)を押し当てて得られる変位-荷重ヒステリシス曲線から得られる最大荷重Pmax、および、圧子と偏光子との間の接触射影面積Aから、以下の式により算出される。
押し込み硬さ(GPa)=Pmax/A
また、押し込み弾性率は、上記接触射影面積A、変位-荷重ヒステリシス曲線の除荷曲線の接線の傾き(接触剛性)S、および、円周率πから、以下の式により算出される。
押し込み弾性率(GPa)=(√π/2)×(S/√A)
【0023】
偏光子の配向関数は、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは0.35以上であり、さらに好ましくは0.37以上であり、特に好ましくは0.40以上である。偏光子の配向関数がこのような範囲であれば、押し込み弾性率および押し込み硬さを上記所望の範囲とすることが容易である。偏光子の配向関数の上限は、例えば0.70であり得る。配向関数(y)は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用い、偏光を測定光として、全反射減衰分光(ATR:attenuated total reflection)測定により求められる。具体的には、測定光の偏光方向に対し、偏光子の延伸方向を平行および垂直にした状態で測定を実施し、得られた吸光度スペクトルの2941cm-1の強度を用いて、下記式に従って算出される。ここで、強度Iは、3330cm-1を参照ピークとして、2941cm-1/3330cm-1の値である。なお、y=1のとき完全配向、y=0のときランダムとなる。また、2941cm-1のピークは、偏光子中のPVAの主鎖(-CH-)の振動に起因する吸収であると考えられている。
y=(3<cosθ>-1)/2
=(1-D)/[c(2D+1)]
=-2×(1-D)/(2D+1)
ただし、
c=(3cosβ-1)/2で、2941cm-1の振動の場合は、β=90°である。
θ:延伸方向に対する分子鎖の角度
β:分子鎖軸に対する遷移双極子モーメントの角度
D=(I)/(I//) (この場合、PVA分子が配向するほどDが大きくなる)
:測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が垂直の場合の吸収強度
// :測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が平行の場合の吸収強度
【0024】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは41.5%~43.5%であり、より好ましくは42.0%~43.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。本発明の実施形態によれば、単体透過率が上記のような範囲であっても、偏光度をこのような範囲に維持することができる。
【0025】
偏光子は、代表的には、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を用いて得られ得る。積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0026】
本発明の実施形態においては、空中補助延伸処理における延伸温度は140℃以上であり、かつ、延伸倍率は2.5倍以上である。延伸温度は、好ましくは145℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは155℃以上である。延伸温度の上限は、例えば170℃であり得る。延伸倍率は、好ましくは2.5倍~3.2倍であり、より好ましくは2.6倍~3.1倍であり、さらに好ましくは2.7倍~3.0倍である。従来の薄型偏光子の製造方法においては、代表的には、熱可塑性樹脂基材(代表的には、ポリエチレンテレフタレート(PET))のガラス転移温度(Tg)+15℃以上であり、かつ、PVA系樹脂の急速な結晶化を抑制し得る温度で空中補助延伸処理が行われている。このような延伸温度は、具体的には130℃近傍である。また、従来の薄型偏光子の製造方法における空中補助延伸処理の延伸倍率は、通常2.0倍~2.4倍に設定されている。空中補助延伸処理と水中延伸処理との延伸総倍率は一定(例えば、5.5倍~6.0倍)であることが好ましいことから、130℃近傍で延伸する場合、2.5倍を超える延伸倍率では、水中延伸処理の延伸倍率を下げる必要があり、ヨウ素の配向が低下することによって光学特性が低下する場合があるからである。また、130℃を超える温度では、上記のとおりPVA系樹脂の急速な結晶化の抑制が困難であり、さらに、延伸性の制御が困難である。本発明者らは、従来実施されていなかった高温かつ高延伸倍率で空中補助延伸処理を行うことにより、所望の光学特性(高い単体透過率と高い偏光度との両立)を維持しつつ、硬い薄型偏光子を実現できることを見出した。
【0027】
乾燥収縮処理は、代表的には、ゾーン全体を加熱して行うゾーン加熱と搬送ロールを加熱する(いわゆる加熱ロールを用いる)ことにより行うと加熱ロール乾燥方式とを組み合わせて行われる。本発明の実施形態においては、加熱ゾーンの温度、加熱ロールの温度、ゾーン加熱を開始してから加熱ロールに接触するまでの時間、および積層体の搬送張力を制御することにより、偏光子の収縮率を2.5%以下とすることができる。加熱ゾーンの温度は、好ましくは80℃~110℃である。加熱ロールの温度は、好ましくは60℃~90℃である。積層体の搬送張力は、好ましくは4N/cm~6N/cmである。ゾーン加熱を開始してから加熱ロールに接触するまでの時間は、好ましくは1秒~10秒である。
【0028】
B-2.保護層
保護層12は、偏光子の保護フィルムとして用いられ得る任意の適切な樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムを構成する材料としては、代表的には、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂の代表例としては、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報に記載されている。これらの公報は、本明細書に参考として援用されている。異形加工の容易性等の観点から、セルロース系樹脂が好ましく、TACがより好ましい。透湿度が低く、耐久性に優れた偏光板が得られるという観点からは、シクロオレフィン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0029】
光学積層体は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理が挙げられる。本発明の実施形態においては、ハードコート処理(ハードコート層の形成)が好ましい。ハードコート層については後述する。ハードコート処理と他の表面処理とが組み合わせて施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、光学積層体は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0030】
保護層12の厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは12μm~40μmであり、さらに好ましくは15μm~35μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0031】
ハードコート層は、代表的には、任意の適切な活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光線、電子線)硬化型樹脂の硬化層である。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。当該添加剤の代表例としては、無機系微粒子および/または有機系微粒子が挙げられる。ハードコート層の厚みは、例えば1μm~10μmであり得、また例えば3μm~7μmであり得る。ハードコート層は、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上の鉛筆硬度を有する。一方、ハードコート層の鉛筆硬度は、好ましくは6H以下であり、より好ましくは5H以下である。
【0032】
C.樹脂層
樹脂層20は、上記のとおりバリア機能を有し得る。これに関連して、樹脂層は代表的には硬い。具体的には、樹脂層の押し込み弾性率は、好ましくは8GPa以上であり、より好ましくは10GPa~20GPaであり、さらに好ましくは11GPa~15GPaである。本発明の実施形態によれば、樹脂層がこのように硬く割れやすいにもかかわらず、樹脂層に隣接する偏光子のクラックを抑制することができる。
【0033】
樹脂層は、代表的には、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または硬化物である。このような構成によれば、偏光子との密着性に優れ得る。具体的には、樹脂層は、接着層を介することなく、偏光子に直接形成され得る。また、樹脂層の厚みを非常に薄くすることができる。樹脂層の厚みは、例えば10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.7μm以下である。樹脂層の厚みは、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは0.08μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上であり、特に好ましくは0.2μm以上である。
【0034】
1つの実施形態においては、樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は85℃以上であり、かつ、重量平均分子量(Mw)は25000以上である。樹脂層を構成する樹脂のTgは、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。Tgは、例えば200℃以下であり得る。また、樹脂層を構成する樹脂のMwは、好ましくは30000以上であり、より好ましくは35000以上であり、さらに好ましくは40000以上である。樹脂層を構成する樹脂のTgおよびMwがこのような範囲であることにより、厚みが非常に薄いにもかかわらず、優れたバリア機能を実現することができる。
【0035】
樹脂層を構成する樹脂としては、有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または硬化物(例えば、熱硬化物)を形成し得る、任意の適切な樹脂を用いることができる。樹脂層を構成する樹脂として、好ましくは、上記のようなTgおよびMwを有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられ、より好ましくは、熱可塑性樹脂が用いられる。樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂とを組み合わせて用いてもよい。
【0037】
アクリル系樹脂は、代表的には、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位を主成分として含有する。アクリル系樹脂は、目的に応じた任意の適切な共重合単量体由来の繰り返し単位を含有し得る。共重合単量体(共重合モノマー)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。モノマー単位の種類、数、組み合わせおよび共重合比等を適切に設定することにより、上記所定のMwを有するアクリル系樹脂が得られ得る。アクリル系樹脂の具体例としては、特開2021-117484号公報の[0034]~[0056]に記載のホウ素含有アクリル系樹脂、ラクトン環等含有アクリル系樹脂が挙げられる。
【0038】
エポキシ樹脂としては、好ましくは芳香族環を有するエポキシ樹脂が用いられる。芳香族環を有するエポキシ樹脂をエポキシ樹脂として用いることにより、樹脂層と偏光子との密着性が向上し得る。さらに、樹脂層に隣接して粘着剤層を配置した場合に、粘着剤層の投錨力が向上し得る。芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
樹脂層は、代表的には、上記樹脂の有機溶媒溶液を塗布して塗布膜を形成し、得られた塗布膜を固化または熱硬化させることにより形成され得る。有機溶媒としては、上記樹脂を溶解または均一に分散し得る任意の適切な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。溶液の樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部~20重量部である。このような樹脂濃度であれば、均一な塗布膜を形成することができる。
【0040】
溶液は、別途準備した基材に塗布してもよいが、偏光板(偏光子)に塗布することが好ましい。溶液を基材に塗布する場合には、基材上に形成された塗布膜の固化または硬化物(樹脂層)を、偏光板(偏光子)に転写する。転写は、代表的には、接着層を介して行われることから、溶液を偏光板(偏光子)に塗布することにより、樹脂層を直接形成し、接着層を省略することができる。溶液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)が挙げられる。
【0041】
上記塗布膜の固化または熱硬化の加熱温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50℃~70℃である。加熱温度がこのような範囲であれば、偏光子に対する悪影響を防止することができる。加熱時間は、例えば1分~10分であり得る。
【0042】
樹脂層(実質的には、上記樹脂の有機溶媒溶液)は、目的に応じて任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、紫外線吸収剤;レベリング剤;ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーまたは無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;難燃剤等が挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0043】
D.位相差層
位相差層40は、上記のとおり、代表的には円偏光機能または楕円偏光機能を有する。位相差層は、単一層であってもよく、二層以上の積層構造を有していてもよい。位相差層が単一層で構成される場合、当該位相差層はλ/4板であり得る。位相差層が積層構造を有する場合、当該位相差層はλ/2板とλ/4板との積層体であり得る。位相差層は、任意の適切な材料で構成され得る。具体的には、位相差層は、液晶化合物の配向固化層であってもよく、樹脂フィルム(代表的には、延伸フィルム)であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。本発明の実施形態においては、位相差層は、代表的には、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成され得る。この場合、位相差層は、代表的には単一層(λ/4板)であり得る。以下、単一層である樹脂フィルムの延伸フィルムについて簡単に説明する。
【0044】
位相差層は、上記のとおりλ/4板として機能し得る。この場合、位相差層の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、好ましくは110nm~170nmであり、より好ましくは130nm~160nmである。この場合、位相差層は、好ましくは屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の実施形態による効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。
【0045】
位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。このような関係を満たすことにより、得られる光学積層体を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0046】
位相差層は、代表的には上記のとおりnx>nyの関係を示すので、遅相軸を有する。1つの実施形態においては、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度θは、例えば40°~50°であり、好ましくは42°~48°であり、より好ましくは約45°である。角度θがこのような範囲であれば、位相差層をλ/4板とすることにより、非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する光学積層体が得られ得る。
【0047】
位相差層の厚みは、代表的には、λ/4板として適切に機能し得る厚みに設定され得る。位相差層の厚みは、例えば10μm~60μmであり得る。位相差層の厚みがこのような範囲であれば、樹脂層、第2の粘着剤層、位相差層および第1の粘着剤層の合計厚みBが大きくなる。すなわち、光学積層体において樹脂層の視認側と反対側の厚みが大きくなり、外力等に起因する樹脂層の割れが促進され得る。本発明の実施形態によれば、このような厚みを有する位相差層を設けた場合であっても、樹脂層の変形(結果として、割れ)を抑制し、偏光子のクラックを抑制することができる。
【0048】
位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。1つの実施形態においては、位相差層は、逆分散波長特性を示す。この場合、位相差層のRe(450)/Re(550)は、例えば0.8以上1未満であり、好ましくは0.8以上0.95以下である。このような構成であれば、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
【0049】
位相差層(樹脂フィルム)を構成する樹脂の代表例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて(例えば、ブレンド、共重合)用いてもよい。位相差層が逆分散波長特性を示す樹脂フィルムで構成される場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)が好適に用いられ得る。
【0050】
ポリカーボネート系樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位および/または下記一般式(2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を含む。これらの構造単位は、2価のオリゴフルオレンに由来する構造単位であり、以下、オリゴフルオレン構造単位と称する場合がある。このようなポリカーボネート系樹脂は、正の屈折率異方性を有する。
【化1】
【化2】
【0051】
位相差層は、代表的には、アクリル系樹脂をさらに含有する。アクリル系樹脂の含有量は0.5質量%~1.5質量%である。
【0052】
位相差層に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および位相差層の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報、国際公開第2015/159928号、特開2021-67762号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0053】
E.別の位相差層
別の位相差層40は、上記のとおり、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。別の位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。この場合、別の位相差層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、別の位相差層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
【0054】
別の位相差層は、任意の適切な材料で形成され得る。別の位相差層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、別の位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0055】
F.粘着剤層
第1の粘着剤層50は、23℃における貯蔵弾性率が上記のとおり0.10MPa以上であり、好ましくは0.10MPa~0.20MPaであり、より好ましくは0.11MPa~0.17MPaであり、さらに好ましくは0.11MPa~0.15MPaである。第2の粘着剤層60は、23℃における貯蔵弾性率が上記のとおり0.12MPa以上であり、好ましくは0.12MPa~0.25MPaであり、より好ましくは0.13MPa~0.20MPaであり、さらに好ましくは0.13MPa~0.18MPaである。第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、上記の本発明の実施形態による効果がさらに顕著なものとなり得る。なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により得られ得る。
【0056】
第1の粘着剤層50は、厚みが上記のとおり17μm以下であり、好ましくは5μm~17μmであり、より好ましくは8μm~16μmであり、さらに好ましくは10μm~15μmである。第2の粘着剤層60は、厚みが上記のとおり7μm以下であり、好ましくは2μm~7μmであり、より好ましくは3μm~6μmであり、さらに好ましくは4μm~5μmである。第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の厚みがこのような範囲であれば、上記の本発明の実施形態による効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0057】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、任意の適切な構成が採用され得る。粘着剤層を構成する粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。透明性、加工性および耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)が好ましい。アクリル系粘着剤組成物は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の固形分中、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で粘着剤組成物に含有され得る。(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分中、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で含有され得る。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個であり、より好ましくは3個~6個である。好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレートである。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー(共重合モノマー)としては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマー等が挙げられる。共重合モノマーの代表例としては、アクリル酸、4-ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N-ビニル-2-ピロリドンが挙げられる。アクリル系粘着剤組成物は、好ましくは、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有し得る。シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。さらに、アクリル系粘着剤組成物は、酸化防止剤および/または導電剤を含有してもよい。粘着剤層またはアクリル系粘着剤組成物の詳細は、例えば、特開2006-183022号公報、特開2015-199942号公報、特開2018-053114号公報、特開2016-190996号公報、国際公開第2018/008712号に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0058】
G.画像表示装置
上記A項~F項に記載の光学積層体は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような光学積層体を用いた画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、画像表示パネルと、該画像表示パネルに第1の粘着剤層を介して貼り合わせられた上記A項~F項に記載の光学積層体と、を備える。光学積層体は、代表的には、偏光板が視認側となるようにして画像表示パネルの視認側に配置される。
【実施例0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法および評価方法は以下のとおりである。
【0060】
(1)偏光子の収縮率
実施例および比較例で用いた偏光子とトリアセチルセルロース(TAC)フィルムとの積層体を作製した。この積層体を4mm×16mmサイズに切り出し、試験サンプルとした。試験サンプルは、長辺方向が偏光子の吸収軸方向となるようにした。この試験サンプルをTMA装置(TAインスツルメント社製、製品名「Discovery TMA450EM」)に取り付け、下記の条件で測定した際の95℃における収縮率を偏光子の収縮率とした。
温度範囲:-50℃~120℃
昇温速度:2℃/分
変調 :±5℃を300秒/サイクル
引張荷重:0.0196N
【0061】
(2)押し込み弾性率および押し込み硬さ
ナノインデンター(Hysitron Inc社製、「Triboindenter」)を用いて、以下の測定条件の下、ナノインデンテーション法により測定した。具体的には、偏光板の偏光子の面にナノインデンターの探針(圧子)を押し込み、変位-荷重ヒステリシス曲線から以下の式により算出した。
押し込み硬さ(GPa)=Pmax/A
押し込み弾性率(GPa)=(√π/2)×(S/√A)
ここで、Pmaxは変位-荷重ヒステリシス曲線から得られる最大荷重であり、Aは圧子と偏光子との間の接触射影面積であり、Sは変位-荷重ヒステリシス曲線の除荷曲線の接線の傾き(接触剛性)であり、πは円周率である。
(測定条件)
・測定方法:単一押し込み法
・測定温度:25℃
・押し込み速度:約2nm/sec
・押し込み深さ:約300nm
・使用圧子:ダイヤモンド製、Berkovich型(三角錐型)
なお、樹脂層の押し込み弾性率についても同様に測定した。
【0062】
(3)クラック
実施例および比較例で得られた光学積層体を80mm×150mmに切り出した。このとき、偏光子の吸収軸方向が短辺方向となるようにして切り出した。切り出し片を、第1の粘着剤層を介してガラス板に貼り合わせ、長辺方向に沿って等間隔の10か所に、短辺方向(偏光子の吸収軸方向)に延びガラス板まで貫通する切れ目(長さ2mm)を入れた。これを試験サンプルとした。この試験サンプルを95℃のオーブンに8時間置いた後、切れ目から延びるクラックの長さを測定した。10か所のクラックの長さの平均をクラック進展度として、以下の基準で評価した。
A(優良) :クラック進展度が20mm未満
B(良好) :クラック進展度が20mm以上40mm未満
C(中程度):クラック進展度が40mm以上60mm未満
D(不良) :クラック進展度が60mm以上
なお、上記の「A」~「D」は相対的な評価基準であり、実用的には、クラックの進展度が30mm以下であれば良好であり、クラックの進展度が45mm以下であれば許容可能である。
【0063】
[製造例1:偏光子の作製]
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、140℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に3.0倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温64℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。ここで、積層体の搬送張力は6N/cmに設定し、オーブン入り口から積層体が加熱ロールに接触するまでの時間を5秒に設定した。
このようにして、樹脂基材上に厚み5.5μmの偏光子P1を形成し、樹脂基材/偏光子P1の構成を有する偏光板を得た。偏光子P1の吸収軸方向の収縮率は2.5%であった。さらに、偏光子P1の単体透過率Tsは43.0%であり、押し込み弾性率は8.77GPaであり、押し込み硬さは0.688GPaであった。
【0064】
[製造例2:偏光子の作製]
加熱収縮処理において積層体の搬送張力を5N/cmに設定したこと、および、オーブン入り口から積層体が加熱ロールに接触するまでの時間を3.5秒に設定したこと以外は製造例1と同様にして、樹脂基材/偏光子P2の構成を有する偏光板を得た。偏光子P2の吸収軸方向の収縮率は1.5%であった。偏光子P2の単体透過率、押し込み弾性率および押し込み硬さは、製造例1の偏光子P1と同様であった。
【0065】
[製造例3:偏光子の作製]
加熱収縮処理において積層体の搬送張力を7N/cmに設定したこと以外は製造例1と同様にして、樹脂基材/偏光子P3の構成を有する偏光板を得た。偏光子P3の吸収軸方向の収縮率は3.0%であった。偏光子P3の単体透過率、押し込み弾性率および押し込み硬さは、製造例1の偏光子P1と同様であった。
【0066】
[製造例4:樹脂層形成用塗布液の調製]
メタクリル酸メチル(MMA、富士フイルム和光純薬社製、商品名「メタクリル酸メチルモノマー」)97.0部、下記式(1e)で表される共重合単量体3.0部、重合開始剤(富士フイルム和光純薬社製、商品名「2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル)」)0.2部をトルエン200部に溶解させた。次いで、窒素雰囲気下で70℃に加熱しながら5.5時間重合反応を行い、ホウ素含有アクリル系樹脂溶液(固形分濃度:33%)を得た。得られたホウ素含有アクリル系重合体(樹脂)のTgは110℃、Mwは80000であった。得られたホウ素含有アクリル系樹脂20部をメチルエチルケトン80部に溶解し、樹脂層形成用塗布液(20%の樹脂溶液)を得た。
【化3】
【0067】
[製造例5:位相差層/別の位相差層の積層体の作製]
1.位相差層を構成する位相差フィルムの作製
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置に、ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60重量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21重量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28重量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77重量部(0.298mol)、および、触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2重量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂100重量部に対してPMMAを0.7質量部溶融混錬した後、水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥した後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み105μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、所定の位相差が得られるように調整しながら138℃で、幅方向に2.8倍延伸し、厚み38μmの位相差フィルム(λ/4板)を得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は144nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であった。
【0068】
2.位相差層/別の位相差層の積層体の作製
下記化学式(3)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、nz>nx=nyの屈折率特性を示すポジティブCプレート(厚み3μm)を基材上に形成した。得られたポジティブCプレートを、接着剤層を介して上記位相差フィルムに転写し、λ/4板とポジティブCプレートとの積層体を得た。
【化4】
【0069】
[製造例6:第1の粘着剤層の作製]
(アクリル系ポリマーA1の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート94.9部、ヒドロキシエチルアクリレート0.1部およびアクリル酸5部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)220万、Mw/Mn=3.9のアクリル系ポリマーA1の溶液を調製した。
【0070】
(粘着剤PSA1の調製)
アクリル系ポリマーA1溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)0.6部、過酸化物架橋剤(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.3部およびエポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.2部を配合して、粘着剤PSA1を得た。
【0071】
[製造例7:第1の粘着剤層の作製]
(アクリル系ポリマーA2の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート87.9部、2-エチルへキシルアクリレート10部、ヒドロキシエチルアクリレート0.1部およびアクリル酸2部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル90部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)220万、Mw/Mn=4.0のアクリル系ポリマーA2の溶液を調製した。
【0072】
(粘着剤PSA2の調製)
アクリル系ポリマーA2溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)0.6部、過酸化物架橋剤(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.3部およびエポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.2部を配合して、粘着剤PSA2を得た。
【0073】
[製造例8:第2の粘着剤層の作製]
(アクリル系ポリマーA3の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート91部、アクリロイルモルホリン6部、アクリル酸2.7部および4-ヒドロキシブチルアクリレート0.3部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)270万、Mw/Mn=3.8のアクリル系ポリマーA3の溶液を調製した。
【0074】
(粘着剤PSA3の調製)
アクリル系ポリマーA3溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)0.1部、過酸化物架橋剤(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.3部およびエポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.2部を配合して、粘着剤PSA3を得た。
【0075】
[製造例9:第2の粘着剤層の作製]
(アクリル系ポリマーA4の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート82.7部、2-エチルへキシルアクリレート10部、アクリロイルモルホリン6部、アクリル酸1部および4-ヒドロキシブチルアクリレート0.3部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル90部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)260万、Mw/Mn=3.9のアクリル系ポリマーA4の溶液を調製した。
【0076】
(粘着剤PSA4の調製)
アクリル系ポリマーA4溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)0.1部、過酸化物架橋剤(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.3部およびエポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.2部を配合して、粘着剤PSA4を得た。
【0077】
[実施例1]
製造例1で得られた偏光板の偏光子P1の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、紫外線硬化型接着剤を介して、HC-TACフィルムを貼り合わせた。なお、HC-TACフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)にHC層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。次いで、樹脂基材を剥離してHC層/TACフィルム(保護層)/偏光子P1の構成を有する偏光板を得た。次いで、偏光子P1の表面に、ワイヤーバーを用いて製造例4の樹脂層形成用塗布液を塗布した後、塗布膜を60℃で5分間乾燥して、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物として構成される樹脂層(厚み400nm)を形成した。次いで、樹脂層の表面に、製造例6で得られた第1の粘着剤層PSA1(厚み15μm)を配置し、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子P1/樹脂層/第1の粘着剤層PSA1の構成を有する光学積層体を得た。得られた光学積層体を上記の「(3)クラック」の評価に供した。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例2~7、比較例1~7および参考例1~2]
偏光子、樹脂層、位相差層、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を表1に示すように組み合わせたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を得た。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。なお、表の「樹脂層」欄における参考例1および2の「保護層」は、樹脂層ではなくTACフィルムを用いたことを示す。
【0079】
【表1】
【0080】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、特定の樹脂層が偏光子に隣接して配置されている光学積層体において、同一構成(位相差層を含まない構成どうし、または、位相差層を含む構成どうし)で比較すると、高温環境下における偏光子のクラックを抑制することができる。さらに、位相差層を設けることにより、クラックが顕著になることがわかる。加えて、参考例1および2から明らかなように、特定の樹脂層が偏光子に隣接して配置されている光学積層体においてクラックが顕著になることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の実施形態による光学積層体は、画像表示装置(代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置)に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0082】
10 偏光板
11 偏光子
12 保護層
20 樹脂層
30 位相差層
40 別の位相差層
50 第1の粘着剤層
60 第2の粘着剤層
100 光学積層体
101 光学積層体
図1
図2