(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085297
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/20 20160101AFI20240619BHJP
B60K 6/543 20071001ALI20240619BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20240619BHJP
B60W 10/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B60W20/20
B60K6/543 ZHV
B60K6/485
B60W10/00 900
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199758
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 昇吾
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB53
3D202DD00
3D202DD01
3D202DD05
3D202FF05
(57)【要約】
【課題】スプリットモードの使用領域を拡大することによって、燃費をより一層向上させることが可能なハイブリッド車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動源であるエンジンとモータによる駆動力を、CVT(変速機)を介して駆動輪に伝達するハイブリッド車両の駆動装置は、CVTの無断変速機構を介して、駆動力を駆動輪に伝達する第1経路によって、エンジンの動力を駆動輪に伝達するベルトモード(第1駆動力伝達モード)と、CVTのギア変速機構を介して、駆動力を駆動輪に伝達する第2経路によって、エンジンの動力を駆動輪に伝達するスプリットモード(第2駆動力伝達モード)と、第2経路によって、エンジンとモータの動力を駆動輪に伝達するスプリットモード(第3駆動力伝達モード)と、を有して、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、第1駆動力伝達モードと第2駆動力伝達モードと第3駆動力伝達モードとを切り換える制御部を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモータとを駆動源として備えて、前記駆動源による駆動力を、変速機を介して駆動輪に伝達するハイブリッド車両の駆動装置であって、
前記駆動源の駆動力を、前記変速機が備える無断変速機構を介して前記駆動輪に伝達する第1経路を使用して、前記エンジンの動力を前記駆動輪に伝達する第1駆動力伝達モードと、
前記駆動源の駆動力を、前記変速機が備えるギア変速機構を介して前記駆動輪に伝達する第2経路を使用して、前記エンジンの動力を前記駆動輪に伝達する第2駆動力伝達モードと、
前記第2経路を使用して、前記エンジンの動力と前記モータの動力とを前記駆動輪に伝達する第3駆動力伝達モードと、を有して、
前記ハイブリッド車両の走行状態に応じて、前記第1駆動力伝達モードと前記第2駆動力伝達モードと前記第3駆動力伝達モードとを切り換える制御部を備える、
ハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ハイブリッド車両の走行状態における前記エンジンの効率と、前記モータの効率と、前記変速機の効率とによって決定する駆動効率に基づいて、前記第1駆動力伝達モードと前記第2駆動力伝達モードと前記第3駆動力伝達モードとを切り換える、
請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ハイブリッド車両のアクセル開度と車速に応じた変速モードを記憶した変速マップを参照して、前記第1駆動力伝達モードと前記第2駆動力伝達モードと前記第3駆動力伝達モードとを切り換える、
請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)に遊星歯車機構を加えて、ベルトを経由して動力を伝達するベルトモードと、歯車を経由して動力を伝達するスプリットモードとを備えた動力分割式無段変速機が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された動力分割式無段変速機をスプリットモードで使用する際には、エンジンの出力トルクとスプリットモードのギア比とから駆動力が決まってしまうため、駆動力を確保しようとすると、スプリットモードの使用領域が限定的であった。スプリットモードの使用領域を拡大できれば燃費の向上につながるため、スプリットモードの使用領域をより一層拡大することが望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、スプリットモードの使用領域を拡大することによって、燃費をより一層向上させることが可能なハイブリッド車両の駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、エンジンとモータとを駆動源として備えて、駆動源による駆動力を、変速機を介して駆動輪に伝達するハイブリッド車両の駆動装置であって、駆動源の駆動力を、変速機が備える無断変速機構を介して駆動輪に伝達する第1経路を使用して、エンジンの動力を駆動輪に伝達する第1駆動力伝達モードと、駆動源の駆動力を、変速機が備えるギア変速機構を介して駆動輪に伝達する第2経路を使用して、エンジンの動力を前記駆動輪に伝達する第2駆動力伝達モードと、第2経路を使用して、エンジンの動力とモータの動力とを駆動輪に伝達する第3駆動力伝達モードと、を有して、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、第1駆動力伝達モードと第2駆動力伝達モードと第3駆動力伝達モードとを切り換える制御部を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第2駆動力伝達モード(スプリットモード)の使用領域を拡大することができるため、燃費をより一層向上させることができる。
【0008】
また、本発明に係るハイブリッド車両の駆動装置において、制御部は、ハイブリッド車両の走行状態におけるエンジンの効率と、モータの効率と、変速機の効率とによって決定する駆動効率に基づいて、第1駆動力伝達モードと第2駆動力伝達モードと第3駆動力伝達モードとを切り換える。
【0009】
この構成によれば、車両の走行状態に応じて、適切な駆動力伝達モードを決定することができる。
【0010】
また、本発明に係るハイブリッド車両の駆動装置において、制御部は、車両のアクセル開度と車速に応じた変速モードを記憶した変速マップを用いて、第1駆動力伝達モードと第2駆動力伝達モードと第3駆動力伝達モードとを切り換える。
【0011】
この構成によれば、車両の走行状態に応じた駆動力伝達モードを、より一層効率的に決定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スプリットモードの使用領域を拡大することによって、燃費をより一層向上させることが可能なハイブリッド車両の駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態の駆動装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態の駆動装置が備える無段変速機の概略構造の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の駆動装置が行う変速モードの切り替え制御の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、
図3の各領域に対応する変速モードを示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の駆動装置が備えるECUの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態の駆動装置のECUが行う、変速モードの切り替え処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態の変形例で使用する変速マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
(駆動装置の概略構成)
図1を用いて、実施形態の駆動装置10の概略構成を説明する。
図1は、実施形態の駆動装置の概略構成を示すブロック図である。
【0016】
駆動装置10は、車両1に搭載されて、エンジン12と、モータ13と、クラッチ14と、CVT15とECU16と、デファレンシャルギア17と、駆動輪18とを備える。
【0017】
車両1は、エンジン12と、モータ13とを駆動源として備える。車両1は、本開示におけるハイブリッド車両の一例である。車両1は、エンジン12とモータ13の双方の駆動力を同時に利用して走行することが可能な、いわゆるパラレルハイブリットシステムやマイルドハイブリッドシステムを搭載した車両である。より具体的には、車両1は、エンジン12に負荷がかかる発進時や加速時等にモータ13を駆動させることによって、燃料の消費を抑えることができる車両である。
【0018】
エンジン12は、車両1を駆動する動力源である。
【0019】
モータ13は、車両1を駆動する動力源である。本実施形態において、モータ13は、エンジン12が動作中に駆動されて、エンジンの駆動力を補助する。なお、
図1において、モータ13は、エンジン12のクランクシャフトとベルト19で接続されており、始動装置(スタータ)と充電装置(オルタネータ)とを統合した、いわゆるISG(Integrated Starter Generator)を構成している。モータ13は、車両1の発進時や加速時に回転することによってエンジン12を補助する。このように、エンジン12とモータ13とは、いわゆるマイクロハイブリッドシステムを構成している。
【0020】
なお、本実施形態におけるモータ13の搭載位置は、
図1の例に限定されるものではない。エンジン12の回転力とモータ13の回転力とが合成されて、CVT15に入力される構成であれば、モータ13の搭載位置は問わない。例えば、モータ13を、エンジン12とクラッチ14との間に設置してもよいし、モータ13を、クラッチ14とCVT15との間に設置してもよい。
【0021】
クラッチ14は、エンジン12およびモータ13の駆動力を、CVT15に伝えたり遮断したりする動力伝達装置である。
【0022】
CVT15は、エンジン12およびモータ13の回転数を減速させて、車両1を走行させるのに必要な駆動トルクを発生させる。CVT15は、複数の駆動力伝達経路(第1経路と第2経路)を備える。なお、CVT15は、本開示における変速機の一例である。
【0023】
第1経路は、駆動源の動力を、CVT15が備える無断変速機構を経由して駆動輪18に伝達する駆動力伝達経路である。第2経路は、駆動源の動力を、CVT15が備えるギア変速機構との順に経由して駆動輪18に伝達する駆動力伝達経路である。詳しくは後述する(
図2参照)。
【0024】
ECU16は、車両1の走行状態に応じて、駆動源および駆動力の伝達経路を切り換える。より具体的には、ECU16は、駆動源をエンジン12のみとする状態、または、エンジン12とモータ13とをともに駆動源とする状態との間で切り替える。また、ECU16は、駆動力の伝達経路を、第1経路または第2経路のいずれかに切り替える。なお、ECU16は、本開示における制御部の一例である。
【0025】
また、ECU16は、第1経路を使用して、エンジン12の動力を駆動輪18に伝達するベルトモード(第1駆動力伝達モード)と、第2経路を使用して、エンジン12の動力を駆動輪18に伝達するスプリットモード(第2駆動力伝達モード)と、第2経路を使用して、エンジン12の動力とモータ13の動力とを駆動輪18に伝達するスプリットモード(第3駆動力伝達モード)とを切り換える。
【0026】
デファレンシャルギア17は、CVT15の出力を、車両1の走行状態に応じて、左右の駆動輪18に振り分ける。
【0027】
駆動輪18は、エンジン12とモータ13の回転力を受けて回転する車輪である。駆動輪18は、車両1の左右に設置される。
【0028】
(無段変速機の概略構成)
図2を用いて、駆動装置10が備えるCVT15の概略構造を説明する。
図2は、実施形態の駆動装置が備える無段変速機の概略構造の一例を示す図である。
【0029】
CVT15は、エンジン12の本体の後面に固定されたミッションケース20に格納されており、モータ13が、その回転軸をクランク軸21と並行にした姿勢でミッションケース20に併設されている。
図2では、クランク軸21とモータ13の出力軸とを同軸上に描いているが、同軸上である必要はない。
【0030】
クランク軸21には、非図示の回転ダンパが固定されており、回転ダンパにエンジン出力中継軸が固定されている。そして、ミッションケース20には、エンジン出力中継軸と同心のインプット軸22が回転自在に保持されている。インプット軸22には、主動遊星歯車機構23とその下流側に位置した第1平ギア24とが設けられている。第1平ギア24は、CVT15のプライマリ軸(入力軸)26に固定された第2平ギア25に噛合している。
【0031】
主動遊星歯車機構23は、内部に、遊星歯車(主動キャリア、主動遊星ギア、主動内歯ギア)とクラッチ23cとを備える。主動遊星歯車機構23は、主動キャリアの回転を増速または減速して伝達する。
【0032】
CVT15は、プライマリ軸26と平行なセカンダリ軸(出力軸)27を備えており、プライマリ軸26に設けた主動可変プーリ28とセカンダリ軸27に設けた従動可変プーリ29とに、断面台形のベルト30が巻き掛けられている。
【0033】
ミッションケース20には、セカンダリ軸27と同心のアウトプット軸31が回転自在に保持されており、セカンダリ軸27とアウトプット軸31とに跨がった状態で従動遊星歯車機構32が配置されている。更に、ミッションケース20には、アウトプット軸31と平行なデフ軸33が回転自在に配置されており、アウトプット軸31の回転は、第3平ギア34と第4平ギア35とを介してデフ軸33に動力伝達される。
【0034】
従動遊星歯車機構32は、内部に、遊星歯車(従動キャリア、従動遊星ギア、従動内歯ギア)とクラッチ32cとを備える。従動遊星歯車機構32は、従動キャリアの回転を増速または減速して伝達する。
【0035】
デフ軸33には、デファレンシャルギア17を介して駆動輪18が接続されている。実施形態の車両1は前輪駆動方式であるが、後輪駆動方式の場合は、アウトプット軸31から傘歯車機構を介してドライブシャフトに動力伝達されて、ドライブシャフトから傘歯車機構とデフ軸33とを介して、駆動輪18に動力伝達される。
【0036】
前記したCVT15は、2種類の変速機構、即ち、無段変速機構とギア変速機構とを備える。
【0037】
無段変速機構は、プライマリ軸26に入力された回転駆動力を、無段階で変速してセカンダリ軸27から出力する。前記したプライマリ軸26と、主動可変プーリ28と、セカンダリ軸27と、従動可変プーリ29と、ベルト30とが、無段変速機構を構成する。以降、CVT15が無段変速機構として動作している状態を、ベルトモードと呼ぶ。なお、ベルトモードは、本開示における第1駆動力伝達モードの一例である。
【0038】
ギア変速機構は、インプット軸22に入力された回転駆動力を、固定のギア比で変速してセカンダリ軸27から出力する。前記した、主動遊星歯車機構23と従動遊星歯車機構32とがギア変速機構を構成する。以降、CVT15がギア変速機構として動作している状態を、スプリットモードと呼ぶ。なお、スプリットモードは、本開示における第2駆動力伝達モード、第3駆動力伝達モードの一例である。
【0039】
CVT15がベルトモードで動作している場合、クラッチ23cは解放され、クラッチ32cは係合される。
【0040】
ベルトモードでは、エンジン12の動力は、インプット軸22、プライマリ軸26、ベルト30、セカンダリ軸27、クラッチ32c、アウトプット軸31という順で動力伝達される。セカンダリ軸27の回転は、従動遊星歯車機構32が備える従動遊星ギアの歯数と従動内歯ギアの歯数との比率に応じて減速されてアウトプット軸31に伝達される。
【0041】
一方、CVT15がスプリットモードで動作している場合、クラッチ23cは係合され、クラッチ32cは解放される。
【0042】
スプリットモードでは、エンジン12およびモータ13の動力は、主動遊星歯車機構23、従動遊星歯車機構32、アウトプット軸31の順に伝達される。そして、このとき、アウトプット軸31は従動遊星歯車機構32が備える従動キャリアと同じ回転数で回転する。
【0043】
(駆動装置が行う変速モードの切り替え制御)
図3と
図4を用いて、本実施形態の駆動装置10が行う変速モードの切り替え制御の内容を説明する。
図3は、実施形態の駆動装置が行う変速モードの切り替え制御の一例を示すグラフである。
図4は、
図3の各領域に対応する変速モードを示す図である。
【0044】
ECU16は、駆動効率に基づいて、CVT15の変速モードを、ベルトモードとスプリットモードのいずれかに設定する。
図3の横軸は、変速モードを適用する領域を表し、
図3の縦軸は、駆動効率Eを表す。
【0045】
本実施形態の駆動装置10は、
図3に実線で示す変速モードの切り替えを行う。即ち、
図4に示すように、領域R1では、駆動装置10はベルトモードによる変速を行う。そして、領域R2と領域R3では、駆動装置10はスプリットモードによる変速を行う。領域R1、領域R2、領域R3の境界位置は、駆動効率Eと所定の閾値との関係に応じて、ECU16で決定される。詳しくは後述する(
図6参照)。
【0046】
これに対して、本実施形態による変速モードの切り替えを行わない比較例を、
図3に点線で示す。比較例では、
図4に示すように、領域R1と領域R2では、駆動装置10はベルトモードによる変速を行う。そして、領域R3では、駆動装置10はスプリットモードによる変速を行う。
【0047】
即ち、本実施形態による変速モードの切り替えを行うことによって、領域R2においてスプリットモードを実行するため、比較例に対して駆動効率Eを向上させることができる。これによって、本実施形態による変速モードを適用しない場合と比較して、燃費をより一層向上させることができる。
【0048】
(ECUの機能構成)
図5を用いて、駆動装置10のECU16の機能構成を説明する。
図5は、実施形態の駆動装置が備えるECUの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0049】
ECU16は、ROM(Read Only Memory)等に記憶された制御プログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して動作させることによって、
図5に示す走行状態検出部161と、駆動効率算出部162と、変速モード決定部163と、モータ動作指示部164と、変速モード指示部165とを機能部として実現する。なお、これらの機能部の一部または全ては、専用ハードウエアによって実現されてもよい。
【0050】
走行状態検出部161は、車両1の走行状態を検出する。走行状態は、例えば、車速、アクセル開度等である。
【0051】
駆動効率算出部162は、走行状態検出部161が検出した車両1の状態におけるベルトモードの駆動効率Eaと、スプリットモードの駆動効率Eb,Ecとを算出する。ベルトモードの駆動効率Eaは、ベルトモードにおいて、エンジン12のみを動作させた場合の駆動効率である。スプリットモードの駆動効率Ebは、スプリットモードにおいて、エンジン12とモータ13をともに動作させた場合の駆動効率である。スプリットモードの駆動効率Ecは、スプリットモードにおいて、モータ13を停止させてエンジン12のみを動作させた場合の駆動効率である。
【0052】
より詳しくは、駆動効率Eaは、エンジン12の効率Eeと、CVT15のベルトモードの効率Ecbとの積算値である。
【0053】
エンジン12の効率Eeは、例えば、駆動トルク(エンジン12の回転数と出力トルクの積算値)をエンジン12の燃焼エネルギーで除算することによって算出される。
【0054】
CVT15のベルトモードの効率Ecbは、例えば、ベルトモードにおけるCVT15の出力トルクをCVT15の入力トルクで除算することによって算出される。
【0055】
また、駆動効率Ebは、エンジン12の効率Eeと、CVT15のスプリットモードの効率Ecsと、モータ13の効率Emとの積算値である。
【0056】
モータ13の効率Emは、例えば、モータ13の出力エネルギー(モータ13の回転数と出力トルクの積算値)をモータ13の入力電力で除算することによって算出される。
【0057】
CVT15のスプリットモードの効率Ecsは、例えば、スプリットモードにおけるCVT15の出力トルクをCVT15の入力トルクで除算することによって算出される。
【0058】
また、駆動効率Ecは、エンジン12の効率Eeと、CVT15のスプリットモードの効率Ecsとの積算値である。
【0059】
変速モード決定部163は、駆動効率算出部162が算出した駆動効率Ea,Eb,Ecの大きさに基づいて、CVT15の変速モードを決定する。具体的な変速モードの決定方法は後述する(
図6参照)。
【0060】
モータ動作指示部164は、変速モード決定部163が、モータ13を動作させる必要があると判断した場合に、モータ13に対して動作指示を与える。
【0061】
変速モード指示部165は、変速モード決定部163の決定に基づいて、CVT15に対して、ベルトモードまたはスプリットモードの実行を指示する。
【0062】
(駆動装置が行う変速制御の流れ)
図6を用いて、駆動装置10のECU16が行う変速モードの切り替え処理の流れを説明する。
図6は、実施形態の駆動装置のECUが行う、変速モードの切り替え処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0063】
走行状態検出部161は、車両1の車速が0でないか、即ち、車両1が走行しているかを判定する(ステップS11)。車両1の車速が0でないと判定される(ステップS11:Yes)とステップS12に進む。一方、車両1の車速が0でないと判定されない(ステップS11:No)とステップS11を繰り返す。
【0064】
ステップS11において、車両1の車速が0でないと判定されると、駆動効率算出部162は、CVT15をベルトモードで動作させて、エンジン12のみを動作させた場合の駆動効率Eaを算出する(ステップS12)。
【0065】
続いて、駆動効率算出部162は、CVT15をスプリットモードで動作させて、なおかつモータ13でアシストした場合の駆動効率Ebを算出する(ステップS13)。
【0066】
変速モード決定部163は、駆動効率Eaが駆動効率Ebよりも小さいかを判定する(ステップS14)。駆動効率Eaが駆動効率Ebよりも小さいと判定される(ステップS14:Yes)とステップS15に進む。一方、駆動効率Eaが駆動効率Ebよりも小さいと判定されない(ステップS14:No)とステップS16に進む。
【0067】
ステップS14において、駆動効率Eaが駆動効率Ebよりも小さいと判定されると、駆動効率算出部162は、モータ13を停止させた状態で(即ち、エンジン12のみを動作させて)CVT15をスプリットモードで動作させた場合の駆動効率Ecを算出する(ステップS15)。
【0068】
一方、ステップS14において、駆動効率Eaが駆動効率Ebよりも小さいと判定されないと、変速モード決定部163は、CVT15の変速モードをベルトモードとする(ステップS16)。その後、ステップS20に進む。
【0069】
ステップS15に続いて、変速モード決定部163は、駆動効率Ebが駆動効率Ecよりも小さいかを判定する(ステップS17)。駆動効率Ebが駆動効率Ecよりも小さいと判定される(ステップS17:Yes)とステップS18に進む。一方、駆動効率Ebが駆動効率Ecよりも小さいと判定されない(ステップS17:No)とステップS19に進む。
【0070】
ステップS17において、駆動効率Ebが駆動効率Ecよりも小さいと判定されると、変速モード決定部163は、CVT15の変速モードをスプリットモード(エンジン12のみ動作させて、モータ13を停止)とする(ステップS18)。その後、ステップS20に進む。
【0071】
一方、ステップS17において、駆動効率Ebが駆動効率Ecよりも小さいと判定されないと、変速モード決定部163は、CVT15の変速モードをスプリットモード(エンジン12とモータ13をともに動作)とする(ステップS19)。その後、ステップS20に進む。
【0072】
ステップS16、ステップS18、ステップS19に続いて、走行状態検出部161は、車両1の車速が0であるか、即ち、車両1が停止しているかを判定する(ステップS20)。車両1の車速が0であると判定される(ステップS20:Yes)と、ECU16は、
図6の処理を終了する。一方、車両1の車速が0であると判定されない(ステップS20:No)と、ステップS12に戻って、ECU16は前記した処理を繰り返す。
【0073】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る車両1(ハイブリッド車両)の駆動装置10は、エンジン12とモータ13とを駆動源として備えて、駆動源による駆動力を、CVT15(変速機)を介して駆動輪に伝達するハイブリッド車両の駆動装置であって、駆動源の駆動力を、CVT15が備える無断変速機構を介して駆動輪18に伝達する第1経路を使用して、エンジン12の動力を駆動輪18に伝達するベルトモード(第1駆動力伝達モード)と、駆動源の駆動力を、CVT15が備えるギア変速機構を介して駆動輪18に伝達する第2経路を使用して、エンジン12の動力を駆動輪18に伝達するスプリットモード(第2駆動力伝達モード)と、第2経路を使用して、エンジン12の動力とモータ13の動力とを駆動輪18に伝達するスプリットモード(第3駆動力伝達モード)と、を有して、車両1の走行状態に応じて、第1駆動力伝達モードと第2駆動力伝達モードと第3駆動力伝達モードとを切り換えるECU16(制御部)を備える。したがって、スプリットモードの使用領域を拡大することによって、燃費をより一層向上させることが可能なハイブリッド車両の駆動装置を提供することができる。
【0074】
また、本実施の形態に係る車両1の駆動装置10において、ECU16(制御部)は、車両1の走行状態におけるエンジン12の効率と、モータ13の効率と、CVT15の効率とによって決定する駆動効率Eに基づいて、第1駆動力伝達モードと第2駆動力伝達モードと第3駆動力伝達モードとを切り換える。したがって、車両の走行状態に応じて、適切な駆動力伝達モードを決定することができる。
【0075】
(実施形態の変形例)
図7を用いて、前記した実施形態の変形例を説明する。
図7は、実施形態の変形例で使用する変速マップの一例を示す図である。
【0076】
実施形態で説明した変速モードの切り替え処理は、別の方法で実施してもよい。例えば、ECU16が備える記憶装置に、
図7に示す変速マップMを記憶しておき、ECU16が、車両1の走行状態に対応する駆動力伝達モードを、変速マップMの中から参照して、参照結果に応じた変速モードに変更するようにしてもよい。
【0077】
図7に示す変速マップMは、車両1の車速を縦軸にとって、アクセル開度を横軸にとって、第1駆動力伝達モードを適用する領域R1と、第2駆動力伝達モードを適用する領域R2と、第3駆動力伝達モードを適用する領域R3とを、それぞれマッピングしたものである。ECU16は、車両1の車速とアクセル開度とを取得して、変速マップMを参照することによって、該当する駆動力伝達モードを決定する。
【0078】
(実施形態の変形例の作用効果)
以上説明したように、実施形態の変形例に係る車両1の駆動装置10において、ECU16(制御部)は、車両1のアクセル開度と車速に応じた変速モードを記憶した変速マップMを参照して、第1駆動力伝達モードと第2駆動力伝達モードと第3駆動力伝達モードとを切り換える。したがって、車両1の走行状態に応じた駆動力伝達モードを、より一層効率的に決定することができる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 車両(ハイブリッド車両)
10 駆動装置
12 エンジン
13 モータ
15 CVT(変速機)
16 ECU(制御部)
17 デファレンシャルギア
18 駆動輪
20 ミッションケース
21 クランク軸
22 インプット軸
23 主動遊星歯車機構
23c クラッチ
24 第1平ギア
25 第2平ギア
26 プライマリ軸
27 セカンダリ軸
28 主動可変プーリ
29 従動可変プーリ
30 ベルト
31 アウトプット軸
32 従動遊星歯車機構
32c クラッチ
33 デフ軸
34 第3平ギア
35 第4平ギア
161 走行状態検出部
162 駆動効率算出部
163 変速モード決定部
164 モータ動作指示部
165 変速モード指示部
E,Ea,Eb,Ec 駆動効率
Ee,Em,Ecb,Ecs 効率
M 変速マップ
R1,R2,R3 領域