(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085309
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 21/14 20060101AFI20240619BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20240619BHJP
【FI】
H02K21/14 M
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199775
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 高一郎
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621BB07
5H621PP10
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622PP10
(57)【要約】
【課題】回転電機の効率を向上させることを目的とする。
【解決手段】磁石挿入孔22内に永久磁石25を有するロータ20と、ステータ10とを備える回転電機1であって、ロータ20は、永久磁石25よりも内径側に磁束の通過を抑制するフラックスバリア231bを備え、フラックスバリア231b内には、フラックスバリア231bの内壁2311に近接することで永久磁石25の磁束を短絡させる磁束短絡部材100と、ロータ20の回転速度が大きいほど、磁束短絡部材100を内壁へと近接させる可動機構101と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石挿入孔内に永久磁石を有するロータと、ステータとを備える回転電機であって、
前記ロータは、前記永久磁石よりも内径側に、磁束の通過を抑制するフラックスバリアを備え、
前記フラックスバリア内には、前記フラックスバリアの内壁に近接することで前記永久磁石の磁束を短絡させる磁束短絡部材と、前記ロータの回転速度が大きいほど、前記磁束短絡部材を前記内壁へと近接させる可動機構と、を備える、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記可動機構は、前記磁束短絡部材を内径側に付勢する付勢部材を備え、
前記磁束短絡部材は、前記ロータの回転による遠心力により外径側に移動可能に構成される、
回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機であって、
前記付勢部材は、バネにより構成される、
回転電機。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記磁束短絡部材は、前記内壁に対向する箇所に緩衝部材を備える、
回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記磁石挿入孔は、前記フラックスバリアに連通する連通部を有し、
前記磁束短絡部材は、前記連通部を通じて前記永久磁石に対向する凸部を有し、前記凸部は、前記永久磁石との衝突を防止する緩衝部材を備える、
回転電機。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の回転電機であって、
前記緩衝部材は、非磁性体により構成される、
回転電機。
【請求項7】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記永久磁石は矩形形状を有し、前記ロータにおけるq軸上で、その長手方向が径方向となるように配置される、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータに永久磁石を有する回転電機では、回転速度の増加に伴ってステータコイルに誘起電圧が発生する。誘導電圧は回転速度が高くなるに従って増加するので、高速回転時にはステータコイルに弱め界磁電流を流して誘導電圧を抑制することが一般的に行われている。しかしながら、弱め界磁電流を流すことによりステータの銅損が増加するので、回転電機の効率が低下するという問題があった。特許文献1には、ロータの軸方向端面に磁束可変機構を備え、磁束可変機構を軸方向から永久磁石に近づけることで、ステータコイルに向かう磁束を低減させて、誘起電圧が過大になることを防止する回転電機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものでは、磁束可変機構をロータの軸方向端面から軸方向に永久磁石に近づける構成であるので、永久磁石の軸方向端部付近しか磁束を低減することができない。さらに、ロータの軸方向端面に磁束可変機構を設けることにより、ロータの軸方向の大きさが増加するという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、ロータの大きさが増加することなく高回転時の誘起電圧を抑制して、回転電機の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、磁石挿入孔内に永久磁石を有するロータと、ステータとを備える回転電機に適用される。ロータは、永久磁石よりも内径側に、磁束の通過を抑制するフラックスバリアを備える。フラックスバリア内には、フラックスバリアの内壁に近接することで永久磁石の磁束を短絡させる磁束短絡部材と、ロータの回転速度が大きいほど、磁束短絡部材を内壁へと近接させる可動機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロータのフラックスバリア内に磁束短絡部材を備え、ロータの回転速度が大きいほど可動機構によって磁束短絡部材をフラックスバリアの内壁に近接させることで、永久磁石から生じる磁束を短絡させる。これにより、ロータの回転速度が大きいほどステータへの鎖交磁束を減少させて誘起電圧を抑制できるので、回転電機の効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】中回転速度の磁束短絡部材の状態を示す図である。
【
図3】高回転速度の磁束短絡部材の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は本実施形態の回転電機1の説明図であり、回転軸方向から見た場合の回転電機1の要部の断面図を示す。
【0011】
回転電機1は、円環形状のステータ10と、ステータ10と同心円上でステータ10との間にギャップを介して配置され円筒形状のロータ20と備える。回転電機1は、インナーロータ構造の回転電機として構成される。
【0012】
本実施形態の回転電機1は、電動自動車やハイブリッド自動車に搭載され、車輪を駆動する電動モータとして機能する。また、回転電機1は、車輪の回転による駆動力を受けて発電(回生)を行なう発電機としても機能する。なお、回転電機1は、自動車以外の装置、例えば各種電気機器又は産業機械の駆動源として用いられてもよい。
【0013】
ステータ10は、リング状の電磁鋼板が積層されて構成されるステータコア11を備える。ステータコア11は、ステータコア11から内径側に向けて突出する複数のティース12と、隣接するティース12間の空間であるスロット13とを有する。ティース12には、図示しない巻線が巻回される。
【0014】
ロータ20は、円板状の電磁鋼板が積層されて構成されるロータコア21と複数の永久磁石25とを備える。ロータコア21には矩形形状の複数の磁石挿入孔22が回転軸方向に貫通して形成されており、磁石挿入孔22には矩形形状の永久磁石25が埋め込まれる。ロータ20の軸中心部分には回転軸29が固定される。
【0015】
ロータコア21の磁石挿入孔22のうち、第1磁石挿入孔221が、q軸上に沿って長手方向が径方向となるように配置される。第1磁石挿入孔221には、第1永久磁石251が挿入される。
【0016】
ロータコア21は、さらに、第2磁石挿入孔222と第3磁石挿入孔223とがd軸を中心とした位置に横向きに配置される。これら第2磁石挿入孔222及び第3磁石挿入孔223には、それぞれ、第2永久磁石252及び第3永久磁石253が挿入される。
【0017】
このように、ロータ20に複数の永久磁石(第1永久磁石251~第3永久磁石253)が挿入されることで、一つの磁極が構成される。
図1は、ロータ20が有する複数の磁極のうち一つのみを示すが、ロータ20には、このように構成された磁極が周方向に渡って所定の間隔で複数配置される。
【0018】
第1磁石挿入孔221には、その長手方向の端部に連通するフラックスバリア231a、231bが形成される。フラックスバリア231aは、第1磁石挿入孔221の径方向における外側(外径側)に配置される。フラックスバリア231bは、第1磁石挿入孔221の径方向における内側(内径側)に配置される。
【0019】
フラックスバリア231a、231bは、ロータコア21の回転軸方向に貫通して形成される空孔として構成され、空孔に存在する空気が磁束を妨げる。これにより、第1永久磁石251の磁束が第1永久磁石251の長手方向の端部付近で短絡することが抑制されて、磁束がよりステータ10側に向かうように構成される。特に、第1磁石挿入孔221よりも内径側に配置されるフラックスバリア231bは、複数の永久磁石25で構成される磁極全体の磁束がロータ20の内径側へと流れることを抑制してステータ10側に流れるように、他のフラックスバリアと比較して大きな断面積となるように構成されている。
【0020】
第1磁石挿入孔221の内径側の端部では、第1永久磁石251を係止してフラックスバリア231b側に移動しないように位置決めする係止部221aを有する。係止部221aは、第1磁石挿入孔221の短手方向幅が小さくなるように第1磁石挿入孔221の両側から突出形成される。第1磁石挿入孔221とフラックスバリア231bとは、向かい合う係止部221a、221aに挟まれた間隙部分である連通部221bを通じて連通する。
【0021】
なお、フラックスバリア231bの周方向の両側には、同様の型状のフラックスバリア232、233が隣接して配置される。フラックスバリア231bと、フラックスバリア232、233とは、磁束の通過を最小限とし、かつ機械強度を十分に保つように形成された壁部232a、233aを介して隣接する。
【0022】
第2磁石挿入孔222及び第3磁石挿入孔223についても、それぞれ同様にフラックスバリアが備えられる。
【0023】
次に、第1磁石挿入孔221のフラックスバリア231bについて詳細に説明する。
【0024】
フラックスバリア231bは、連通部221bにおいて第1磁石挿入孔221と連通し、第1磁石挿入孔221から内径側に向かうに従って周方向の幅が拡大する第1側部2311と、第1側部2311から内径側に向かうに従って周方向の幅が縮小するように形成される第2側部2312と、外径側に向かう面を有する平面状に形成される底部2313とにより囲まれて形成される概ね五角形の空孔として構成される。
【0025】
第1永久磁石251よりも内径側にこのように構成されたフラックスバリア231bを有することにより、
図1中の曲線矢印で示すように、第1永久磁石251付近の磁束がステータ10側へと向かうように構成される。
【0026】
ここで、ステータに巻線、ロータに永久磁石を有する回転電機における問題点を説明する。このような構成の回転電機では、ロータの回転速度が上昇するに従って永久磁石の磁束による誘起電圧が増加し、誘起電圧によりステータの巻線に発生する逆起電力が増加する。これを抑制するために、ステータにおいて、d軸電流を負方向に印加する弱め界磁制御を行うことが一般的である。しかしながら、弱め界磁制御によりステータの巻線に弱め界磁電流を流すと、ステータの銅損が増加して、回転電機の効率が低下するという問題がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、弱め界磁制御による回転電機1の効率の低下を抑制するため、次に説明するように、フラックスバリア231bに磁束短絡部材100を備えた。
【0028】
図1に示すように、フラックスバリア231bの空孔内には、断面が略台形形状であって、軸方向に柱状に形成される磁束短絡部材100が備えられる。磁束短絡部材100は、フラックスバリア231bの底部2313に可動機構101を介して支持される。可動機構101は、磁束短絡部材100をフラックスバリア231bの底部2313側へと引きつける方向の付勢力を有するコイルバネ(引張りバネ)からなる付勢部材により構成される。可動機構101は、後述するように、ロータ20の回転による遠心力が大きくなるほど磁束短絡部材100を外径側へと移動させる。可動機構101は、磁束短絡部材100を軸方向に渡って均一に付勢力を与えるように、軸方向に複数の付勢部材(例えば3つ)を備える。
【0029】
磁束短絡部材100は、ロータ20が不回転の状態では、可動機構101による付勢力によりフラックスバリア231bの底部2313側に位置する。磁束短絡部材100は、この状態で、フラックスバリア231bが磁束の短絡を抑制する機能を損なわないような位置及び形状とされる。
【0030】
磁束短絡部材100は、q軸を中心として対称の形状に形成され、その先端部分が第1磁石挿入孔221の連通部221bを通じて第1永久磁石251に対向する凸部100aを有する。磁束短絡部材100は、凸部100aから周方向外側に向かうに従って、フラックスバリア231bの第1側部2311に対向するような傾斜面を有し、内径側は、フラックスバリア231bの底部2313に対向する平面状に形成される。
【0031】
磁束短絡部材100は、ロータコア21と同様に電磁鋼板を回転軸方向に積層して構成され、その軸方向長さが、ロータコア21の軸方向長さと同一となるように形成される。
【0032】
次に、このように構成された磁束短絡部材100の作用を説明する。
【0033】
図2は、回転電機1の駆動によりロータ20が回転している状態であって、ロータ20の回転速度が中回転速度(例えば4000rpm)の状態を示す。
【0034】
ロータ20の回転速度が上昇するに従って、磁束短絡部材100は、その質量による遠心力が増加することにより、可動機構101の付勢力に打ち勝って、
図2に示すように、徐々に外径側へと移動する。磁束短絡部材100がフラックスバリア231bの内壁(第1側部2311)に近づくにつれて、第1永久磁石251付近でのフラックスバリア231bの空孔が縮小する。これにより、磁束の一部が磁束短絡部材100内を通過するようになり、フラックスバリア231bにおける磁束を妨げる効果が徐々に減少する。
【0035】
図3は、回転電機1の駆動によりロータ20が回転している状態であって、ロータ20の回転速度が高回転速度(例えば9000rpm)の状態を示す。
【0036】
ロータ20の回転速度がある回転速度(高速回転速度)を超えた場合には、磁束短絡部材100は、遠心力により、フラックスバリア231bの第1側部2311に接触するほど近接する。これにより、第1永久磁石251付近でのフラックスバリア231bの空孔が存在しなくなるほど減少する。
【0037】
この状態では、第1永久磁石251の内径側で、磁束が内径側の磁束短絡部材100を短絡して流れる磁場を形成するようになり、ステータ10に向かう磁束が減少する。この結果、ステータ10における鎖交磁束が減少する。ステータ10における鎖交時速が減少することで、ステータ10の誘起電圧が抑制され、巻線の逆起電力が減少する。
【0038】
このように、誘起電圧が抑制され逆起電力が減少することで、ステータ10の巻線に印加する弱め界磁電流を抑制することができる。この結果、ステータ10における銅損が低減され、回転電機1の効率向上が図れる。
【0039】
その後、ロータ20の回転速度が低下した場合は、可動機構101の付勢力により、磁束短絡部材100が回転速度の低下に伴って、次第に内径側(フラックスバリア231bの底部2313側)に移動する。
【0040】
磁束短絡部材100の凸部100aの表面には、緩衝部材110が備えられる。緩衝部材110は、例えば弾性を有する樹脂や不織布等の非磁性体の部材から構成される。
【0041】
磁束短絡部材100の凸部100aは、第1永久磁石251の端部に対峙する箇所であるので、この箇所に緩衝部材110を備えることによって、磁束短絡部材100が第1永久磁石251の端部に衝撃的に接触しないようにすることができる。これにより、磁束短絡部材100や第1永久磁石251の破損を防止することができる。
【0042】
なお、緩衝部材110は、凸部100aの表面だけでなく、フラックスバリア231bの内壁(第1側部2311)に対向する磁束短絡部材100の面の全てに備えてもよい。これにより、磁束短絡部材100が、係止部221aやフラックスバリア231bの内壁に接触するときの衝撃を緩衝できる。
【0043】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0044】
図4は、本実施形態の変形例の回転電機1の説明図である。
【0045】
図4に示す変形例では、可動機構101が支持軸102を備えるように構成した。その他の構成は、前述した
図1~3と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
支持軸102は、フラックスバリア231bの底部2313から外径側に向かって延設される棒状の部材である。支持軸102は、可動機構101を中心として対称となる位置に一組が備えられる。磁束短絡部材100には、支持軸102が貫通する貫通穴100bが備えられる。
【0047】
このように、磁束短絡部材100が支持軸102を介して支持されることで、磁束短絡部材100が遠心力により移動するとき、回転速度の変化によって磁束短絡部材100が周方向に揺動することが規制される。これにより、磁束短絡部材100が揺動することが防止でき、磁束短絡部材100をより確実にフラックスバリア231bの内壁へと近接させることができる。なお、支持軸102は、磁束短絡部材100を軸方向に渡って均一に可動させるように、軸方向に複数箇所(例えば3つ)備えられる。
【0048】
以上説明したように、本発明の実施形態は、磁石挿入孔22内に永久磁石25を有するロータ20と、ステータ10とを備える回転電機1である。ロータ20は、永久磁石25よりも内径側に、磁束の通過を抑制するフラックスバリア231bを備え、フラックスバリア231b内には、フラックスバリア231bの内壁(第1側部2311)に近接することで永久磁石25の磁束を短絡させる磁束短絡部材100と、ロータ20の回転速度が大きいほど、磁束短絡部材100を内壁へと近接させる可動機構101と、を備える。
【0049】
この構成では、ロータ20の回転速度が大きいほど磁束短絡部材100をフラックスバリア231bの内壁に近接させることで、フラックスバリア231bにより妨げられる磁束を短絡させて、ステータ10に向かう磁束を減少させることができる。これにより、ロータ20の回転速度が大きいほどステータ10への鎖交磁束を減少させて誘起電圧を抑制できるので、回転電機1の効率を向上させることが可能になる。
【0050】
また、本実施形態では、可動機構101は、磁束短絡部材100を内径側に付勢する付勢部材を備え、磁束短絡部材100は、ロータ20の回転による遠心力により外径側に移動可能に構成される。
【0051】
この構成では、遠心力により磁束短絡部材100を外径側に移動させることができるので、簡易な構成により、磁束短絡部材100を移動させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、付勢部材はバネにより構成されるので、より簡易な構成で磁束短絡部材100を移動させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、磁束短絡部材100は、内壁に対向する箇所に緩衝部材110を備えるので、磁束短絡部材100がフラックスバリア231bの第1側部2311に接触するときの衝撃を緩衝できる。
【0054】
また、本実施形態では、第1磁石挿入孔221は、フラックスバリア231bに連通する連通部221bを有し、磁束短絡部材100は、連通部221bを通じて第1永久磁石251に対向する凸部100aを有する。この凸部100aは、第1永久磁石251との衝突を防止する緩衝部材110を備える。
【0055】
この構成では、磁束短絡部材100の凸部100aが第1永久磁石251の端部に衝撃的に接触しないようにすることができ、磁束短絡部材100や第1永久磁石251の破損を防止できる。
【0056】
また、本実施形態では、緩衝部材110は、非磁性体により構成されるので、磁束短絡部材100による磁束の短絡を妨げることなく、磁束短絡部材100の衝撃を緩衝できる。
【0057】
また、本実施形態では、第1永久磁石251は矩形形状を有し、ロータ20におけるq軸上で、その長手方向が径方向となるように配置される。
【0058】
この構成では、ロータ20のq軸の磁束を磁束短絡部材100により変化させることができるので、回転電機1の回転トルクに寄与する鎖交磁束を減少させて誘起電圧を抑制できるので、回転電機1の効率を向上できる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0060】
本実施形態では、可動機構101の付勢部材をコイルバネとして説明したが、これに限られない。可動機構101の付勢部材が、例えば板バネ等の他の形状のバネで構成されてもよいし、弾性力を伴って伸縮するゴムやエラストマ等の材質で構成されてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、可動機構101は、フラックスバリア231bの底部2313と磁束短絡部材100との間に配置されると説明したが、これに限られない。可動機構101が、フラックスバリア231bの第1側部2311と磁束短絡部材100との間に配置される圧縮バネであって、遠心力により縮小することで磁束短絡部材100を第1側部2311側に移動させるように構成してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、q軸上にある第1永久磁石251の内径側にあるフラックスバリア231bに磁束短絡部材100を設けたが、これに限られない。第1永久磁石251の外径側にあるフラックスバリア231aに磁束短絡部材100及び可動機構101を設けてもよい。また、他の永久磁石(第2永久磁石252及び第3永久磁石253)のフラックスバリアに、同様の構成を設けて、回転速度の上昇に伴って、ステータ10の鎖交磁束を変化させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1:回転電機、10:ステータ、20:ロータ、22:磁石挿入孔、25:永久磁石、100:磁束短絡部材、100a:凸部、101:可動機構、102:支持軸、110:緩衝部材、221:第1磁石挿入孔、221b:連通部、231a:フラックスバリア、231b:フラックスバリア、251:第1永久磁石、2311:第1側部、2313:底部