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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085310
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20240619BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240619BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H05K1/03 630D
H05K3/46 T
H05K1/03 610R
H05K3/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199776
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 稜
(72)【発明者】
【氏名】黒田 展久
(72)【発明者】
【氏名】福井 省吾
(72)【発明者】
【氏名】市川 晃生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真琴
【テーマコード(参考)】
5E316
5E343
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA13
5E316AA32
5E316AA33
5E316AA43
5E316BB15
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD33
5E316DD47
5E316EE19
5E316FF07
5E316FF10
5E316FF14
5E316FF17
5E316GG27
5E316HH06
5E316HH11
5E343AA17
5E343BB24
5E343BB44
5E343DD25
5E343DD33
5E343DD43
5E343GG02
5E343GG13
(57)【要約】
【課題】配線基板の配線パターン間の絶縁性の向上。
【解決手段】実施形態の配線基板は、第1の無機フィラー5aおよび第1の無機フィラー5aを囲む第1の樹脂部45aを含む第1の層4aと第2の無機フィラー5bおよび第2の無機フィラー5bを囲む第2の樹脂部45bを含む第2の層4bであって、第1の層4aにおける第1の無機フィラー5aの含有率より小さな含有率で第2の無機フィラー5bを含んでいる第2の層4bとを含む絶縁層4ならびに第2の層4bの表面の上に形成されている金属膜31を含んでいて所定の導体パターンを含む導体層を含み、第1の層4aの厚みは、絶縁層の厚みの90%以上であり、第2の層4bは、第2の無機フィラー5bと第2の樹脂部45bとの間に入り込んだ金属膜31の一部および第2の樹脂部45bで構成される複合層45dを含んでおり、複合層45dは、0.1μm以上、0.3μm以下である厚みを有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の無機フィラーおよび前記複数の第1の無機フィラーそれぞれを囲む第1の樹脂部を含む第1の層と、
複数の第2の無機フィラーおよび前記複数の第2の無機フィラーそれぞれを囲む第2の樹脂部を含む第2の層であって、前記第1の層における前記複数の第1の無機フィラーの含有率より小さな含有率で前記複数の第2の無機フィラーを含んでいる第2の層と
を含む絶縁層、ならびに
前記第2の層の表面の上に形成されている金属膜を含んでいて所定の導体パターンを含む導体層
を含む配線基板であって、
前記第1の層の厚みは、前記絶縁層の厚みの90%以上であり、
前記第2の層は、前記第2の無機フィラーと前記第2の樹脂部との間に入り込んだ前記金属膜の一部および前記第2の樹脂部で構成される複合層を含んでおり、
前記複合層は、0.1μm以上、0.3μm以下である厚みを有している。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記複合層における前記金属膜の一部の占有率は、60%以上である。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体層に含まれる配線パターンの最小配線間隔は、5μm以上、12μm以下である。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板であって、前記導体層に含まれる配線パターンの最小配線幅は、5μm以上、9μm以下である。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記金属膜は無電解めっき膜である。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1の層における前記複数の第1の無機フィラーの含有率は、70%以上、95%以下であり、前記第2の層における前記複数の第2の無機フィラーの含有率は、40%以上、65%以下である。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2の層の前記表面は0.05μm以上、0.15μm以下の算術平均粗さ(Ra)を有している。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、前記複数の第1の無機フィラーが中空フィラーを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一方の面の表層Xに存在する無機フィラーの含有量x、および他方の面の表層Yに存在する無機フィラーの含有量yが、x<yの関係を満たす絶縁性接着シートが開示されている。表層Xを有する面上に、金属層が形成される。表層Xには、表面に無機フィラーが露出しない程度以下の無機フィラーが添加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-45388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の絶縁性接着シートでは、絶縁性接着シートと金属層との間の高い密着性と、絶縁性接着シートの低い誘電正接とが十分に両立しないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、複数の第1の無機フィラーおよび前記複数の第1の無機フィラーそれぞれを囲む第1の樹脂部を含む第1の層と、複数の第2の無機フィラーおよび前記複数の第2の無機フィラーそれぞれを囲む第2の樹脂部を含む第2の層であって、前記第1の層における前記複数の第1の無機フィラーの含有率より小さな含有率で前記複数の第2の無機フィラーを含んでいる第2の層とを含む絶縁層、ならびに前記第2の層の表面の上に形成されている金属膜を含んでいて所定の導体パターンを含む導体層を含んでいる。そして、前記第1の層の厚みは、前記絶縁層の厚みの90%以上であり、前記第2の層は、前記第2の無機フィラーと前記第2の樹脂部との間に入り込んだ前記金属膜の一部および前記第2の樹脂部で構成される複合層を含んでおり、前記複合層は、0.1μm以上、0.3μm以下である厚みを有している。
【0006】
本発明の実施形態によれば、絶縁層との密着強度が向上されたファインピッチ配線を実現すること、および低誘電正接を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2図1のII部における絶縁層、および絶縁層と金属膜との界面付近の断面の一例を模式的に示す拡大図。
図3】本発明の一実施例における絶縁層、および絶縁層と金属膜との界面付近の断面の撮影画像。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。なお、以下、参照される図面においては、各構成要素の正確な比率を示すことは意図されておらず、本発明の特徴が理解され易いように描かれている。図1は一実施形態の配線基板の一例である配線基板100の一部を示す断面図であり、図2には、配線基板100における絶縁層4と導体層3(金属膜31)との界面付近(例えば図1のII部)の断面の模式図が拡大して示されている。なお、配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。実施形態の配線基板の積層構造、ならびに、導体層および絶縁層それぞれの数などは、適宜選択され得る。
【0009】
図1に示されるように、配線基板100は、絶縁層4と、絶縁層4の上に形成されている導体層3とを含んでいる。図1の実施形態において、導体層3は2層構造で形成されている。例えば、導体層3は、絶縁層4の表面上に形成されている金属膜31からなる下層と金属膜31上に形成されているめっき膜32からなる上層とで構成されている。絶縁層4は、絶縁層4を貫通し、絶縁層4と導体層3の積層方向において絶縁層4を介して隣接する導体層3同士を接続するビア導体2を含んでいる。
【0010】
なお、本実施形態の配線基板100の説明では、絶縁層4と導体層3との関係において絶縁層4の表面に導体層3が積層されている側すなわち紙面における上側が「上側」または単に「上」と称され、その反対側が「下側」または単に「下」と称される。
【0011】
導体層3は、所定の導体パターンを含んでいる。導体層3は、導電性金属で形成されていればよく、例えば銅またはニッケルなどで形成されている。上述したように、図1の例では、導体層3は、金属膜31とめっき膜32とで構成されている。例えば、金属膜31は、無電解めっき膜またはスパッタリング膜である。めっき膜32は、例えば電解めっき膜である。金属膜31の厚みは、例えば、約0.1μm以上であって、0.5μm以下程度である。導体層3の厚みは、例えば、約3μm以上であって、20μm以下程度である。
【0012】
ビア導体2は、導体層3と一体的に形成されている。従って、ビア導体2は、導体層3と同様に銅またはニッケルなどの任意の金属で形成されていて導体層3と同様に金属膜31およびめっき膜32を含む2層構造を有している。
【0013】
図1に示されるように、実施形態の配線基板100は、比較的小さい配線幅および間隔で配置された互いに隣接する複数の配線パターン30を含む導体層3aを備えている。例えば、複数の配線パターン30は、最小配線幅Lと最小配線間隔Sとの組み合わせ(L/S)によって定義される配線ルールに関して、5μm/5μmの配線ルールで配置され得る。従って導体層3aは、5μm/5μmの最小配線幅L/最小配線間隔Sを有する複数の配線パターン30を含み得る。例えば、配線パターン30に含まれる配線の配線幅の最小値は、約5μm以上、約9μm以下程度である。配線パターン30に含まれる互いに隣接する配線における最小配線間隔は、例えば、約5μm以上、約12μm以下程度である。
【0014】
配線基板100が配線パターン30を有することで、配線基板100の小型化や配線基板100への狭ピッチ多端子部品の実装が可能になる場合がある。また、配線の密度が向上し、配線設計の自由度が向上する場合があると考えられる。配線パターン30は、配線基板100の任意の導体層3に設けられ得る。
【0015】
絶縁層4は任意の絶縁性樹脂を含んでいる。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、またはフェノール樹脂などが例示される。各絶縁層は、ガラス繊維やアラミド繊維からなる芯材(補強材)を含んでいてもよい。各絶縁層は、さらに、シリカ(SiO2)、アルミナ、またはムライトなどの微粒子からなる無機フィラー5(図示せず)を含み得る。絶縁層4の厚みは、例えば、約10μm以上であって、40μm以下程度である。好ましくは、絶縁層4の厚みは、約30μm程度とされ得る。
【0016】
上述したように、実施形態の配線基板100は、配線幅および間隔の小さい複数の配線パターン30すなわち微細配線を含む導体層3aを備えている。各絶縁層4のうち少なくとも、導体層3aがその表面上に形成される絶縁層41は、複数の無機フィラー5を含んでいる。絶縁層41は、図1に示されるように、2層構造(第1の層4a、第2の層4b)を有している。第1の層4aは、下側の絶縁層4の表面上に形成されている導体層3の露出面と、導体層3に覆われていない下側の絶縁層4の表面とを覆っている。第2の層4bは第1の層4aの上に形成されている。第2の層4bの上に、導体層3aの下層を構成する金属膜31が形成されている。
【0017】
例えば、第1の層4aの厚みは、絶縁層41全体の厚みの約90%以上であって、97%以下程度である。好ましくは、第1の層4aの厚みは、絶縁層41全体の厚みの約90%以上とされ得る。第1の層4aの厚みがこの程度であると、後述されるように、絶縁層41全体の低誘電正接が達成されると考えられる。すなわち、絶縁層41の約90%を構成する第1の層4aを低伝送損失材料で形成することにより、絶縁層41の低誘電正接が実現され得ると考えられる。
【0018】
絶縁層41は、複数の無機フィラー5(図3参照)および複数の無機フィラー5それぞれを取り囲む樹脂部45(図3参照)を含んでいる。樹脂部45は、絶縁層4を構成する樹脂として先に例示された、エポキシ樹脂、BT樹脂、またはフェノール樹脂などを主成分として含んでいる。これらの樹脂に、シリカやアルミナなどからなる無機フィラー5を添加することによって、絶縁層41の機械的強度、および/または、熱伝導率を高め得ることがある。また、無機フィラー5の添加量を調整することによって、絶縁層41の熱膨張率を調整し得ることがある。
【0019】
本実施形態の配線基板100では、複数の無機フィラー5は第1の無機フィラー5aおよび第2の無機フィラー5bを含んでいる。第1の無機フィラー5aは、絶縁層41の第1の層4aに含まれる無機フィラーである。第2の無機フィラー5bは、絶縁層41の第2の層4bに含まれる無機フィラーである。すなわち、第1の層4aは、複数の第1の無機フィラー5aおよび複数の第1の無機フィラー5aそれぞれを囲む樹脂部45(第1の樹脂部45a)を含んでいる。第2の層4bは、複数の第2の無機フィラー5bおよび複数の第2の無機フィラー5bそれぞれを囲む樹脂部45(第2の樹脂部45b)を含んでいる。
【0020】
上述したように、第1の層4aの厚みは、絶縁層41全体の厚みの約90%以上であり得る。従って、例えば、絶縁層41の厚みが上述のように約30μmである場合、第1の層4aの厚みは、27μm以上程度であり得る。なお図2において、無機フィラー5(第2の無機フィラー5b)は真球状の形体を有するように描かれているが、各無機フィラー5は任意の形状を有し得る。第1の層4aに含まれる第1の無機フィラー5aの粒径は、例えば、0.3μm~3μm程度である。好ましくは、第1の無機フィラー5aの平均の粒径は、0.3μm程度であり得る。第1の層4aにおける複数の第1の無機フィラー5aの含有率は、例えば、70%以上、95%以下である。上述の粒径を有する第1の無機フィラー5aがこのような含有率で第1の層4a内に存在すると、伝送損失および遅延速度の低減等の機能が適切に発揮されると考えられる。
【0021】
第2の層4bの厚みは、従って、絶縁層41全体の厚みの約10%以下程度であり得る。例えば、第2の層4bの厚みは、約1μm以上、約3μm以下程度であり得る。第2の層4bは、第2の無機フィラー5bを含んでいる。第2の無機フィラー5bの粒径は、例えば、0.1μm~1μm程度である。好ましくは、第2の無機フィラー5bの平均の粒径は、0.1μm程度であり得る。第2の層4bにおける複数の第2の無機フィラー5bの含有率は、第1の層4aにおける複数の第1の無機フィラー5aの含有率よりも小さい。第2の層4bにおける複数の第2の無機フィラー5bの含有率は、例えば、40%以上、65%以下である。
【0022】
図2には、図1に示されるII部に相当する、絶縁層41の第2の層4bおよび絶縁層41の上に形成されている導体層3aの金属膜31の実施形態の拡大図が示されている。第2の層4bは、複数の第2の無機フィラー5bおよび複数の第2の無機フィラー5bそれぞれを囲む第2の樹脂部45bを含んでいる。
【0023】
図2に示されるように、絶縁層41の表面41a(第2の層4bの表面)は、細かな凹凸4uを有している。例えば、過マンガン酸アルカリ溶液などの処理液に晒すといった化学的方法で表面41aに粗化処理が施されることによって、所定の表面粗さを提供する凹凸4uが形成される。絶縁層41の表面41aに露出する複数の無機フィラー5(第2の無機フィラー5b)の一部を粗化処理で剥離することによって、凹凸4uが形成されてもよい。絶縁層41の表面41aがこのような細かな凹凸4uを有することによって、絶縁層41の表面41a上に形成される金属膜31が絶縁層41上にアンカー効果によって係止され得る。金属膜31と絶縁層41との密着強度が向上すると考えられる。
【0024】
絶縁層41の表面41aは、具体的には、本実施形態において、0.05μm以上、0.15μm以下の算術平均粗さ(Ra)を有し得る。絶縁層41の表面41aがこのような小さな表面粗さを有していると、導体層3aの製造工程において表面41a上に形成された金属膜31の不要部分(導体層3aの導体パターンを構成しない部分)が意図通りに除去され易い。すなわち、内部に形成された金属膜31の除去が困難となるほどの深い凹みが表面41aに存在し難いため、金属膜31の不要部分が、例えばエッチングによって短時間で適切に除去され得る。従って導体層3aの導体パターン(例えば配線パターン30など)間の絶縁性が低下し難く、短絡不良が生じ難い。また、エッチング時間が短いため、エッチング量が少なく、微細配線を含む導体層3aが形成される場合でも、エッチングによる配線パターン30の線細りが起こりにくいと考えられる。第1の層4aによる絶縁層41全体の低誘電正接の機能と微細配線形成のための絶縁層41の表面41aの低粗度化の両方の効果が実現され得ると考えられる。
【0025】
第2の層4bに含まれる第2の無機フィラー5bは、絶縁層41の表面41a(第2の層4bの表面)に露出する部分を含んでいてもよく、略全体的に樹脂部45(第2の樹脂部45b)に囲まれていて略全体的に絶縁層41(第2の層4b)内に埋まっていてもよい。絶縁層41の表面41aに露出する第2の無機フィラー5bは、粗化処理の途中などで絶縁層41の表面41aから剥離する可能性があるが、剥離した場合であっても、第2の無機フィラー5bが上述されるような0.1μm程度の粒径であるため、剥離による深い凹みが絶縁層41の表面41aに形成される虞は少ないと考えられる。
【0026】
また、絶縁層41の表面41aの表面粗さが小さいので、導体層3aにおける絶縁層41側の表面粗さも比較的小さいと考えられる。従って、例えば高周波信号の伝送において伝送信号が表皮効果の影響を受けても、実質的なインピーダンスの増加に伴う伝送特性の低下などが生じ難いと考えられる。
【0027】
第1の樹脂部45a、および第2の樹脂部45bを構成する樹脂材料は、同じであってもよく、また異なっていてもよい。第2の層4bの第2の樹脂部45bは、第2の層4bに含まれている複数の第2の無機フィラー5bのそれぞれを囲むように形成されている。ただし、図2に示されるように、第2の層4bの金属膜31がその上に形成されている部分では、第2の樹脂部45bと第2の無機フィラー5bとの間に、第2の層4bの表面(絶縁層41の表面41a)から入り込んだ金属膜31の一部が入り込んでいる。
【0028】
例えば、金属膜31が無電解めっきによって形成される無電解めっき膜である場合、めっき液中で行われる無電解めっきにより、絶縁層41の表面41a上に導体層3aを構成する金属膜31が形成される。この際に、金属膜31の一部が絶縁層41の表面41aから第2の樹脂部45bと第2の無機フィラー5bとの間に入り込むことにより、第2の樹脂部45bと第2の無機フィラー5bとの隙間内へも金属膜31の形成が起こり得る。すなわち、導体層3aの一部(金属膜31の一部)が、絶縁層41の表面41a上だけでなく、第2の樹脂部45bと第2の無機フィラー5bとの間にまで形成されている。このように、第2の樹脂部45bと第2の無機フィラー5bとの隙間内に金属膜31が形成されると、金属膜31(導体層3aの一部)と絶縁層41との実質的な接触面積が増大すると考えられる。金属膜31すなわち導体層3aと絶縁層41との密着強度が向上すると考えられる。
【0029】
すなわち、実施形態の配線基板100では、絶縁層41の第2の層4bは、金属膜31がその上に形成されている部分において、第2の無機フィラー5bおよび第2の樹脂部45bの間に形成されている金属膜31と第2の樹脂部45bとで構成される複合層45dを含んでいる。すなわち、第2の層4bの金属膜31がその上に形成されている部分では、第2の層4bの金属膜31側の表面近傍に位置する複数の第2の無機フィラー5bが複合層45dによってそれぞれ囲まれている。
【0030】
複合層45dにおける、絶縁層41の表面41aから入り込んだ金属膜31の一部の占有率、すなわち複合層45d中の第2の樹脂部45bおよび金属膜31の一部の合計に対する金属膜31の一部の割合は、約50%以上、約75%以下程度である。好ましくは、金属膜31の一部の占有率は、約60%以上であり得る。金属膜31と絶縁層41との良好な密着強度が得られ得ると考えられる。
【0031】
複合層45dの厚みは、絶縁層41の表面41aから入り込んだ金属膜31の最深部の絶縁層41の表面41aからの距離Dである。なお、「最深部」とは、入り込んだ金属膜31において、絶縁層41の表面41aから配線基板100の厚さ方向(積層方向)で最も表面41aから離れている個所を意味している。金属膜31が絶縁層41の表面41aから過剰に入り込み過ぎていると、金属膜31の不要部分が除去される導体層3aのパターニングにおいて、図1に示される配線パターン30のような導体パターンが形成されない領域で金属膜31が除去され難いことがある。例えば、第2の樹脂部45bと第2の無機フィラー5bとの間の隙間が深すぎると金属膜31を溶解するエッチング液が隙間の奥まで流入できず、第2の樹脂部45bと第2の無機フィラー5bとの間に金属膜31が残存することがある。そのように金属膜31が残存すると、導体層3aの導体パターン同士の間、例えば隣接する配線パターン30同士の間の絶縁性が低下して、例えば短絡不良などが生じる虞があると考えられる。
【0032】
例えば、本実施形態において、複合層45dの厚みは、約0.1μm以上、約0.3μm以下程度である。この厚みは、絶縁層41の表面41aから入り込む金属膜31の絶縁層41の表面41aからの距離Dを、例えば金属膜31の形成のためのめっき条件を適宜選択することなどにより調整することによって得られ得る。この程度の複合層45dの厚みであれば、エッチング処理工程における金属膜31の残存が起こり難いと考えられる。本実施形態によれば、導体パターン間の絶縁性の低下を抑制しながら、絶縁層と導体層との密着強度を向上させ得ると考えられる。
【0033】
本実施形態の配線基板における絶縁層4の他の例として、絶縁層41の第1の層4aに含まれる第1の無機フィラー5aとして、シリカやアルミナなどからなる無機フィラー5の代わりに、または、シリカやアルミナなどからなる無機フィラー5に加えて、中空フィラーが使用されてもよい。第1の層4aが中空フィラーのような多孔質材料を含むことにより、絶縁層41のさらなる低誘電率化が達成され得ることがある。第2の層4bに含まれる第2の無機フィラー5bとしては、絶縁層との密着がより強固であると考えられるため、シリカやアルミナなどからなる無機フィラー5を用いることが好ましい場合がある。
【0034】
図3には、実施形態の配線基板の一実施例における絶縁層41、および、導体層3aを構成する金属膜31と絶縁層41の界面付近の断面の撮影画像が示されている。
【0035】
図3に示されるように、絶縁層41は、より大きな粒径を有する第1の無機フィラー5aを含む第1の層4aと、より小さな粒径を有する第2の無機フィラー5bを含む第2の層4bを有している。
【0036】
金属膜31は、第2の無機フィラー5bと第2の樹脂部45bとの間にも形成されている。図3の実施例に示されるように、本実施形態では、第2の無機フィラー5bと絶縁層41の第2の樹脂部45bとの間に金属膜31の一部が入り込んでいる。本実施形態では、第2の層4bは、第2の無機フィラー5bと第2の樹脂部45bの間に入り込んでいる金属膜31および第2の樹脂部45bから構成される複合層45dを含んでいる。複合層45dの厚みは、第2の無機フィラー5bと第2の樹脂部45bの間に入り込んでいる金属膜31の最深部と絶縁層41の表面41aとの距離Dであり、0.1μm以上、0.3μm以下程度である。そのため、導体層3a(金属膜31)と絶縁層41との良好な密着強度と共に、導体層3aに含まれる導体パターン間の良好な絶縁性を得ることができる。
【0037】
実施形態の配線基板は、一般的な配線基板の製造方法によって製造され得る。絶縁層4および絶縁層4上の導体層3は、例えば一般的なビルドアップ基板の製造方法によって、それぞれ形成される。例えば各絶縁層および絶縁層4を構成する各層は、フィルム状の樹脂材料を、先に形成されている各導体層上や各絶縁層上に熱圧着することによって形成され得る。また、各導体層は、例えば、めっきレジストの形成およびパターンめっきなどを含むセミアディティブ法やフルアディティブ法などの導体パターンの任意の形成方法を用いて形成される。
【0038】
絶縁層41の表面41aの粗化処理は一般的な手順および条件で行われ得るが、例えば過マンガン酸アルカリ溶液処理による粗化処理では、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による酸化処理(実質的な粗化処理)、および、中和液による中和処理が行われ得る。膨潤液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、または水酸化カリウム溶液などが用いられ、所定の温度の膨潤液に絶縁層41が所定の時間だけ晒される。酸化剤としては、例えば、所定の濃度で過マンガン酸塩を含むアルカリ性過マンガン酸溶液が用いられ、所定の温度の同溶液に、絶縁層41が所定の時間だけ晒される。中和液としては、酸性の水溶液が用いられ、酸化処理によって粗化された絶縁層41の表面41aが、所定の温度の中和液に所定の時間だけ晒される。例えば、これら一連の粗化処理中の各処理における処理時間、処理液の温度、および/または処理液中の主成分の濃度などの条件が適宜選択される。その結果、絶縁層41の表面41aが前述した所望の算術平均粗さ(Ra)を有するように表面41aが粗化され得る。
【0039】
絶縁層41の表面41aの粗化後、洗浄が行われてもよい。例えば、超音波洗浄によって製造途上の配線基板が洗浄される。超音波洗浄によって、絶縁層41の表面41aの状態が、さらに所望の状態に近づけられてもよい。例えば、表面41aに過剰に存在する第2の無機フィラー5bが、超音波洗浄によって除去され、代わりに凹凸4uが形成されてもよい。
【0040】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、ならびに、本明細書において例示される構造、形状、および材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。実施形態の配線基板は任意の数の導体層および絶縁層を有し得る。導体層3は、電解めっき膜からなるめっき膜32を含まなくてもよく、例えば無電解めっき膜からなる金属膜31だけを含んでいてもよい。導体層3aがその表面上に形成されていない絶縁層4が2層構造を有していてもよいし、絶縁層41が第1および第2の層以外の層を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0041】
100 配線基板
3、3a 導体層
30 配線パターン
31 金属膜
32 めっき膜
4、41 絶縁層
4a 第1の層
4b 第2の層
41a 表面
45 樹脂部
45a 第1の樹脂部
45b 第2の樹脂部
45d 複合層
5 無機フィラー
5a 第1の無機フィラー
5b 第2の無機フィラー
D 金属膜の最深部と絶縁層の表面との距離
図1
図2
図3