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特開2024-85313車両情報処理方法及び車両情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085313
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】車両情報処理方法及び車両情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20240619BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240619BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240619BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240619BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199780
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 武司
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181DD03
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181MB03
5H181MC12
5H181MC22
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】ネットワーク上に記憶する情報量の増加を抑制し、かつ、車両の仕様によらず情報を利用可能にする。
【解決手段】自車両が走行することによって得られる情報のうち、車両の仕様によって異なる情報である第1類情報と、車両の仕様によらず共通な情報である第2類情報と、を取得し、予め設定した仕様の基準車両の情報に変換する第1処理を施した第1類情報と、取得した状態のままの第2類情報と、を位置情報とともに車外のサーバに送信し、サーバに、自車両から送信された第1類情報と既に記憶している第1類情報との平均値及び自車両から送信された第2類情報と既に記憶している第2類情報との平均値を、それぞれ位置情報と関連付けて記憶することを特徴とする、車両情報処理方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行することによって得られる情報のうち、車両の仕様によって異なる情報である第1類情報と、車両の仕様によらず共通な情報である第2類情報と、を取得し、
予め設定した仕様の基準車両の情報に変換する第1処理を施した前記第1類情報と、取得した状態のままの前記第2類情報と、を位置情報とともに車外のサーバに送信し、
前記サーバに、前記自車両から送信された前記第1類情報と既に記憶している前記第1類情報との平均値及び前記自車両から送信された前記第2類情報と既に記憶している前記第2類情報との平均値を、それぞれ位置情報と関連付けて記憶することを特徴とする、
車両情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両情報処理方法において、
前記第1処理は、前記自車両と前記基準車両の仕様の相違点のうち、前記第1類情報に影響を与える前記相違点に基づく重み付けを行うことにより前記第1類情報を補正する処理である、車両情報処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の車両情報処理方法において、
前記サーバから前記自車両に前記第1類情報及び前記第2類情報をダウンロードし、
ダウンロードした前記第1類情報を、前記自車両の仕様に基づいて前記自車両の情報に変換する第2処理を行う、車両情報処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の車両情報処理方法において、
ダウンロードする際には、走行ルート上で前記自車両の現在位置から予め設定した第1距離の範囲である第1範囲の情報のみをダウンロードする、車両情報処理方法。
【請求項5】
請求項3に記載の車両情報処理方法において、
前記自車両で取得した前記第1類情報と前記第2処理後の前記第1類情報との比較の結果に基づいて前記自車両の運転者の運転特性を判定し、
当該判定の結果に基づいて前記第2処理後の前記第1類情報を補正する、車両情報処理方法。
【請求項6】
請求項4に記載の車両情報処理方法において、
前記自車両の走行中に、ダウンロード済みの情報から、前記自車両が通過した範囲の情報を消去し、かつ、情報を消去した範囲と同じ大きさの範囲分の情報を新たにダウンロードすることで、前記自車両に保持する情報量を前記第1範囲の情報量に維持する、車両情報処理方法。
【請求項7】
請求項4に記載の車両情報処理方法において、
前記自車両の走行中に、ダウンロード済みの情報から、前記自車両が通過した範囲の情報を消去し、かつ、ダウンロード済みの情報の残量が、走行ルート上で前記自車両の現在位置からの距離が前記第1距離より短い第2距離の範囲である第2範囲の情報量になったら、新たにダウンロードすることで前記自車両に保持する情報量を前記第1範囲の情報量に戻す、車両情報処理方法。
【請求項8】
請求項4に記載の車両情報処理方法において、
前記自車両が、ダウンロード済みの情報に対応する走行ルートを外れて走行した場合は、ダウンロード済みの情報を消去し、新たに前記第1範囲の情報をダウンロードする、車両情報処理方法。
【請求項9】
請求項1に記載の車両情報処理方法において、
前記サーバに繋がる車両を異なる複数の車種で構成される複数のグループに分類し、グループ毎に前記基準車両を設定し、
前記第1処理として、前記自車両の前記第1類情報を前記自車両が属する前記グループの前記基準車両の情報に変換する、車両情報処理方法。
【請求項10】
自車両が走行することによって得られる情報のうち、車両の仕様によって異なる情報である第1類情報と、車両の仕様によらず共通な情報である第2類情報と、を取得する情報取得部と、
予め設定した仕様の基準車両の情報に変換する第1処理を施した前記第1類情報と、取得した状態のままの前記第2類情報と、を位置情報とともにサーバに送信する送信機と、
車外に設けられ、前記自車両から送信された前記第1類情報と既に記憶している前記第1類情報との平均値及び前記自車両から送信された前記第2類情報と既に記憶している前記第2類情報との平均値を、それぞれ位置情報と関連付けて記憶する前記サーバと、
を備えることを特徴とする車両情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報処理方法及び車両情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行することによって得られる情報をネットワーク上に蓄積し、当該情報を目的地までの経路の選定やエネルギマネージメント等に利用することが検討されている。特許文献1には、勾配のある経路の消費エネルギをより高精度に算出する装置が開示されている。上記文献に記載の装置の構成は以下の通りである。リンクごとの勾配に関する情報を有する第1の道路ネットワークデータと、前記第1の道路ネットワークデータよりも粗い第2の道路ネットワークデータとを記憶する記憶手段を参照し、リンクの識別情報により前記第2の道路ネットワークデータのリンクと対応付けられた前記第1の道路ネットワークデータの各リンクの勾配情報を、複数の勾配区分に区分して、前記第1の道路ネットワークデータの各リンクのリンク長に基づいて前記第1の道路ネットワークデータのリンクの距離情報を該リンクの勾配が対応する各勾配区分に格納することで、前記勾配区分と距離情報を対応付けた勾配テーブルを作成する勾配テーブル作成手段を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-91122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の装置によれば、勾配がある経路の消費エネルギをより高精度に算出できる。しかし、上記文献では、車両重量や制動能力等の仕様が異なる車種について考慮されていない。つまり、記憶手段に情報を提供した車両と第1、第2の道路ネットワークデータを利用する車両の仕様が異なる場合には、第1、第2の道路ネットワークデータをそのまま使用すると消費エネルギを高精度に算出することはできない。また、車種毎に第1、第2の道路ネットワークデータを記憶すると、データ量が膨大になるという問題や、販売台数が少ない車種についての情報取得が困難になるという問題が生じる。
【0005】
そこで本発明は、ネットワーク上に記憶する情報量の増加を抑制し、かつ、車両の仕様によらず情報を利用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、自車両が走行することによって得られる情報のうち、車両の仕様によって異なる情報である第1類情報と、車両の仕様によらず共通な情報である第2類情報と、を取得し、予め設定した仕様の基準車両の情報に変換する第1処理を施した第1類情報と、取得した状態のままの第2類情報と、を位置情報とともに車外のサーバに送信し、サーバに、自車両から送信された第1類情報と既に記憶している第1類情報との平均値及び自車両から送信された第2類情報と既に記憶している第2類情報との平均値を、それぞれ位置情報と関連付けて記憶することを特徴とする、車両情報処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、ネットワーク上に記憶する情報量の増加を抑制し、かつ、車両の仕様によらず情報を利用可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両情報処理システムを備える車両の概略構成図である。
図2図2は、ネットワークの構成を示す図である。
図3図3は、サーバの情報を更新するためのルーチンを示すフローチャートである。
図4図4は、サーバからダウンロードした情報を車両で利用可能にするためのルーチンを示すフローチャートである。
図5図5は、車両で保有する第1類情報及び第2類情報の情報量を制御するためのルーチンを示すフローチャートである。
図6図6は、サーバ上の情報量の時間変化を示す図である。
図7図7は、車両からサーバへのアップロードの手順の一例を示す図である。
図8図8は、サーバから車両へのダウンロードの手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る車両情報処理システムを備える車両Ve1の概略構成図である。自車両(以下、車両Ve1ともいう。)は、駆動輪19と、内燃エンジン2と、第1モータジェネレータ6と、第1インバータ5と、第1モータコントローラ4と、バッテリ10と、バッテリコントローラ11と、第2モータジェネレータ9と、第2インバータ8と、第2モータコントローラ7と、パワートレインコントローラ(PTC)1と、を備える。また、車両Ve1は、情報取得部としてのエレクトロニックコントロールユニット(ECU)14と、送信機15と、受信機16と、EVスイッチ12と、チャージスイッチ13と、ナビゲーションシステム17と、を備える。
【0011】
内燃エンジン2は、ガソリン又は軽油等の燃料を燃焼させることで動力を発生させる。
【0012】
第1モータジェネレータ6は、内燃エンジン2の駆動力によって回転することで発電する。なお、第1モータジェネレータ6は後述するバッテリ10からの電力によって作動して内燃エンジン2のクランクシャフトを回転させることもできる。
【0013】
第1インバータ5は、第1モータコントローラ4からの指令を受けて第1モータジェネレータ6を動作させる。
【0014】
バッテリ10は、第1モータジェネレータ6の発電電力により充電される。なお、車両減速時に第2モータジェネレータ9により生成された回生電力もバッテリ10に蓄えられる。バッテリコントローラ11は、バッテリ10の温度、充電状態等を検知し、これらをPTC1に伝達する。
【0015】
第2モータジェネレータ9は、バッテリ10から供給される電力、第1モータジェネレータ6から供給される電力、又はこれらの両方によって作動して、駆動輪19を駆動する。
【0016】
第2インバータ8は、第2モータコントローラ7からの指令を受けて第2モータジェネレータ9を動作させる。
【0017】
EVスイッチ12は、ドライバがON、OFF操作するスイッチであり、内燃エンジン2が停止しバッテリ10の電力のみによって走行するEV走行を希望する場合に運転者がONにするものである。チャージスイッチ13もドライバがON、OFFするスイッチであり、内燃エンジン2を作動させてバッテリ10の充電を促進したい場合に運転者がONにするものである。
【0018】
PTC1は、ドライバの加減速操作、バッテリ10の状態、及びEVスイッチ12やチャージスイッチ13の状態等に基づいて、内燃エンジン2、第1モータジェネレータ6及び第2モータジェネレータ9の目標動作を決定し、第1モータコントローラ4、第2モータコントローラ7及び図示しないエンジンコントローラへ指令として伝達する。
【0019】
ナビゲーションシステム17は、車両Ve1の位置情報を人工衛星から取得する機能と、車両Ve1の走行ルートを設定する機能を備える。
【0020】
送信機15は、車両Ve1が走行することによって得られる情報、例えば、平均車速、消費エネルギ、アクセル開度の履歴、走行抵抗、路面粗さ等、を位置情報とともに車外に設けたサーバ18へ送信する装置である。なお、ここでいう消費エネルギとは消費電力のことである。
受信機16は、サーバ18から情報を受信する装置である。
【0021】
ECU14は、サーバ18に送信する情報を、必要に応じて処理する機能、及びサーバ18から受信した情報を車両Ve1で使用できるよう処理する機能を有する。これらの処理については後述する。
【0022】
なお、PTC1、ECU14、第1モータコントローラ4、第2モータコントローラ7、及びバッテリコントローラ11といったコントローラ類は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。また、各コントローラ類を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
図2は、ネットワークの構成を示す図である。
【0023】
サーバ18は、車両Ve1だけでなく、他の車両Ve2、Ve3、Ve4・・・(以下、他車両Ve2等ともいう。)とも通信可能になっている。他車両Ve2等は、車両Ve1と同車種である必要はない。なお、本実施形態でいう「車種」とは、道路交通法における大型自動車、普通自動車等や、道路運送車両法における普通自動車、軽自動車等のことではなく、車両メーカによって与えられた車名によって区別するものである。
【0024】
車両Ve1及び他車両Ve2等から送信された情報はサーバ18に蓄積され、また、車両Ve1及び他車両Ve2等はサーバ18に蓄積された情報をダウンロードできる。
【0025】
サーバ18は、送信された情報を地図データと結びつけ、既存の情報との平均値を記憶する。例えば、車両Ve1が地点Aから地点Bまで走行したときの消費エネルギが位置情報と共に送信された場合には、サーバ18は地点A、Bを地図データ上のノードと結びつけ、地点A~地点Bまでの各リンクの消費エネルギテーブルを作成し、既存の各リンクの消費エネルギとの平均値を算出し、算出結果で情報を更新する。
【0026】
上記のようにして記憶されたサーバ18上の情報は、車両Ve1及び他車両Ve2等で利用される。例えば、車両Ve2の目的地までの走行ルートに地点A~地点Bの区間が含まれる場合に、車両Ve2は当該区間の消費エネルギの情報をダウンロードし、当該情報に基づいてバッテリ10のSOCプロファイルを作成することができる。SOCプロファイルの作成方法については後述する。
【0027】
ところで、車両Ve1及び他車両Ve2等がすべて同車種であれば、各車両で得られた情報をそのままサーバ18へ送信し、またサーバ18から受信した情報をそのまま用いることができるが、上記の通り他車両Ve2等は、車両Ve1と同車種とは限らない。車種が異なれば、例えば、車両重量や前面投影面積の違いから走行抵抗が異なり、同じルートを走行しても走行抵抗が小さい車は走行抵抗が大きい車に比べて消費エネルギは小さくなる傾向がある。また例えば、制動力性能に余裕のある小型車やスポーツタイプの車は、車両重量が重かったり車高が高かったりするミニバンタイプの車に比べて加減速度が大きくなり、平均車速が高くなる傾向がある。
【0028】
このため、例えばサーバ18上の情報にミニバンタイプの車からの情報も含まれている場合に、スポーツタイプの車がこの情報をダウンロードしても、そのまま利用することはできない。車種毎(又は車の仕様毎)に情報を分類して記憶すれば上記の問題は生じないが、サーバ18上のデータ量が増大してしまうという問題や、使用されている台数が少ない車種の情報の取得が困難になるという問題が生じる。
【0029】
そこで本実施形態では、いかに説明する処理を行うことにより、サーバ18上の情報を、いずれの車種でも利用可能なものにする。
【0030】
図3は、サーバ18の情報を更新するためのルーチンを示すフローチャートである。図4は、サーバ18からダウンロードした情報を自車両で利用可能にするためのルーチンを示すフローチャートである。以下、フローチャートのステップに従って説明する。
まず、図3のフローチャートについて説明する。
【0031】
ステップS100において、ECU14は車両Ve1の走行に関する情報をセンサ類及びコントローラ類から取得する。車両に関する情報とは、例えば、平均車速、消費エネルギ、アクセル開度の履歴、路面粗さ、路面抵抗等である。平均車速は例えば車速センサ(図示せず)の検出値に基づいて取得する。消費エネルギは、例えばバッテリ10の消費量に基づいて取得する。アクセル開度の履歴は、例えばアクセル開度センサ(図示せず)の検出値に基づいて取得する。路面粗さは、例えば加速度センサ(図示せず)の検出値又は車輪回転速度センサ(図示せず)の検出値等に基づいて取得する。路面抵抗は、例えば走行中の駆動輪19のスリップ率に基づいて取得する。なお、路面抵抗は車載カメラ(図示せず)の映像データからドライ路面、ウエット路面、雪路のいずれであるかを判別し、抵抗の大きさを3段階に区分してもよい。
【0032】
ステップS101において、ECU14は、第1処理が可能かつ必要な情報に第1処理を施す。第1処理が可能かつ必要な情報とは、ステップS100で取得した情報のうち、車両の仕様の違いの影響がある情報、例えば平均車速、消費エネルギ、アクセル開度の履歴等(これらをまとめて第1類情報ともいう。)である。なお、車両の仕様の違いの影響がない情報、例えば路面粗さや路面抵抗は第2類情報ともいう。
【0033】
そして、第1処理とは、第1類情報を車両の仕様の違いに応じた係数を用いて基準車両の情報に変換する処理である。基準車両とは、車両重量、前面投影面積、制動力等の仕様を予め設定した車両のことである。基準車両の仕様は任意に設定可能である。つまり、基準車両は実在しない車種であっても構わない。第1処理で用いる係数については、予めシミュレーション等により設定する。
【0034】
第1処理の一例として、消費エネルギについては、取得した消費エネルギを車両Ve1と基準車両との車両重量の違いに応じた係数と、同じく前面投影面積の違いに応じた係数と、制動力の違いに応じた係数と、を用いて補正する。この場合、車両Ve1が基準車両に比べて車両重量が重いほど、第1処理後の消費エネルギが小さくなるような係数となる。また、車両Ve1が基準車両に比べて前面投影面積が大きいほど、第1処理後の消費エネルギが小さくなるような係数となる。
【0035】
ところで、第1処理として、基準車両との仕様の違いに応じた変換に替えて又は加えて、基準運転者の運転傾向を設定し、基準運転者との運転傾向の違いに応じた変換を行ってもよい。運転傾向は、例えば加減速の仕方等に応じてアグレッシブ、標準、慎重の3パターンに分類し、基準運転者の運転傾向を標準パターンとする。そして、アクセルペダル操作及びブレーキペダル操作の履歴、車速変化の履歴等に基づいて、運転者がどのパターンに属するかを判断し、標準パターンでない場合は、予め設定した係数を用いて標準パターンの情報に変換する。例えば、平均車速に関しては、アグレッシブパターンの方が標準パターンより高くなる傾向があるので、取得した平均車速が低くなるような係数を設定する。消費エネルギについても同様である。また、慎重パターンの場合はアグレッシブパターンとは逆に、平均車速及び消費エネルギが標準パターンより小さくなる傾向があるので、取得した値が大きくなるような係数を設定する。
【0036】
ステップS102において、送信機15は第1処理後の第1類情報と、そのままの状態の第2類情報と、位置情報をサーバ18に送信する。
【0037】
ステップS103において、サーバ18は送信機15から送信された上記の情報を受信する。
【0038】
ステップS104において、サーバ18は、第1類情報及び第2類情報と、位置情報及び走行方向情報とを結び付ける。例えば、位置情報をサーバ18が備える地図データ(例えばオープンソースマップ:OSM)上のノードに結び付けることによって、今回受信した情報が、どこからどこまでの区間をどの方向に走行した場合の情報であるかを確定する。
【0039】
ステップS105において、サーバ18は、今回受信した情報と同じ走行区間及び走行方向の既存情報と、今回受信した情報との平均値を算出し、算出結果でサーバ18の情報を更新する。
上述したルーチンは、他車両Ve2等とサーバ18との間でも同様に行われる。
次に、図4のフローチャートについて説明する。
【0040】
ステップS200において、送信機15は車両Ve1の自車位置及び走行ルートの情報をサーバ18へ送信する。これらの情報はナビゲーションシステム17から取得する。
【0041】
ステップS201において、サーバ18は、走行ルート上における車両Ve1の現在位置からの距離が第1閾値の範囲(第1範囲ともいう。)をサーバ18が備える地図データから検索する。第1閾値は任意に設定可能であり、例えば5km程度とする。
【0042】
ステップS202において、サーバ18は、第1範囲における第1類情報及び第2類情報を車両Ve1へ送信する。
【0043】
ステップS203において、受信機16はステップS202で送信された情報を受信する。
【0044】
ステップS204において、ECU14はステップS203において受信した第1類情報を車両Ve1で使用可能にするための処理(第2処理)を実行する。第2処理は第1処理とは逆の処理である。つまり、基準車両との車両重量、前面投影面積及び制動力等の仕様の違いに応じた係数を用いて、受信した第1類情報を補正する。第1処理において、運転者の運転傾向に基づく処理を行っている場合には、第2処理において、自車の運転者の運転傾向に基づく変換も行う。
【0045】
なお、ステップS204における運転者の運転傾向の判断は、ダウンロード後に車両Ve1が走行することによって取得した第1類情報と、サーバ18からダウンロードし第2処理を施した第1類情報との比較結果に基づいて行ってもよい。例えば、実際に走行した結果としての消費エネルギが、ダウンロードし第2処理を施して得られた消費エネルギより小さい場合には、慎重パターンと判断する。そして、この運転傾向に基づいて、第2処理後の情報を補正する。
【0046】
次に、車両Ve1で保有する第1類情報及び第2類情報の情報量の制御について、図5を参照して説明する。
【0047】
図5は、車両Ve1で保有する第1類情報及び第2類情報の情報量を制御するためのルーチンを示すフローチャートである。当該ルーチンは、図3及び図4のルーチンと並行して実行される。
【0048】
ステップS300において、ECU14は車両Ve1の位置及び走行ルートの情報を取得する。そして、これらの情報に基づいて、ダウンロード済みの情報を通過済みルート情報と未通過ルート情報とに分け、さらに未通過ルート情報については、それがこの先何km分の情報なのかを特定する。
ステップS301において、ECU14は通過済みルートの情報を消去する。
【0049】
ステップS302において、ECU14は、現在保持している情報量が、現在の自車位置からの距離が第2閾値の範囲(第2範囲ともいう。)における情報量未満になったか否かを判定し、なっている場合はステップS303の処理を実行し、なっていない場合はそのまま今回のルーチンを終了する。第2閾値は任意に設定可能である。例えば、図4のステップS202における第1閾値が5kmの場合には、第2閾値は3kmとする。
【0050】
ステップS303において、ECU14は、車両Ve1に保持する情報量が第1範囲分の情報量以上になるように、この先のルートに関する情報をサーバ18からダウンロードする。
【0051】
上記の制御ルーチンにより、車両Ve1には常に第2範囲分以上第1範囲分以下の情報が保持されることとなる。
【0052】
なお、ステップS202及びS203に替えて、ステップS301で消去した情報量と同量の情報をダウンロードするようにしてもよい。
【0053】
また、走行ルートが変更された場合や、車両Ve1が当初の走行ルートから外れたルートを走行し始めた場合には、現在保持している情報を消去し、改めて図3図5のルーチンを実行する。
【0054】
図6は、サーバ18上の情報量の時間変化を示す図である。タイミングT0において、OSMの各リンクについての情報の初期値が入力されている。そして、本実施形態に係るシステムの運用を開始すると、車両Ve1及び他車両Ve2等から情報がアップロードされ、情報が書き換えられる。このとき、アップロードされる情報は基準車両の情報に変換されたものなので、異なる仕様の複数の車種から情報がアップロードされたり、新たに販売された車種から情報がアップロードされたりしたとしても、サーバ18上の情報量が増加することはない。
【0055】
次に、上述した車両Ve1とサーバ18との間における情報の授受及びサーバ18からダウンロードした情報の活用方法の一例として、消費エネルギの情報に基づいてバッテリ10のSOCプロファイルを作成する場合について図7及び図8を参照して説明する。SOCプロファイルとは、充電率(State of charge:SOC)の変化の様子のことである。車両Ve1の現在位置から先の走行ルートにおける消費エネルギが分かっていれば、それに応じてSOCプロファイルを作成することが可能になる。例えば、現在位置から3km先の地点から5km先の地点までの消費エネルギが大きいことが分かっていれば、3km先の地点までにSOCを増加させるようなSOCプロファイルを作成することができる。また例えば、ダウンロードした範囲の消費エネルギが小さく、かつ現在のSOCが満充電状態に近い場合には、車両減速時の回生電力を受け入れ可能にするために積極的に電力を使用するようなSOCプロファイルを作成する。
【0056】
図7は、車両Ve1からサーバ18へのアップロードの手順について示している。図8は、サーバ18から車両Ve1へのダウンロード及びSOCプロファイルの作成の手順について示している。
【0057】
ブロックB10では、PTC1がバッテリコントローラ11及び第1モータコントローラ4からの情報に基づいて車両Ve1の消費エネルギを演算する。
【0058】
ブロックB11では、PTC1が、位置情報及び走行ルート情報に基づいて、区間毎の消費エネルギを算出する。区間は任意に設定可能であり、例えば50m毎でもよいし1秒毎でもよい。
【0059】
ブロックB12では、ECU14がブロックB11で算出された消費エネルギに第1処理を施し、送信機15が当該処理後の消費エネルギを位置情報と共にサーバ18へ送信する。
ブロックB13では、サーバ18が位置情報をOSM上のノードに結び付ける。
【0060】
ブロックB14では、サーバ18がOSM上のリンク毎の消費エネルギテーブルを作成する。そして、ブロックB15では、サーバ18が、今回受信した情報と既存情報との平均値を算出し、算出結果に既存情報を上書きして保存する。
【0061】
一方、ブロックB20では、PTC1がナビゲーションシステム17から目的地及び目的地に至るまでの走行ルートの情報を取得し、送信機15を介してこれらの情報をサーバ18へ送信する。
【0062】
ブロックB21では、PTC1が現在位置の情報をナビゲーションシステム17から取得し、送信機15を介してこの情報をサーバ18へ送信する。また、PTC1は、取得した現在位置の情報を、後述するブロックB26の処理においても使用する。
【0063】
ブロックB22では、サーバ18は受信した目的地及び走行ルートの情報をOSM上のノードの配列に変換する。
【0064】
ブロックB23では、サーバ18は受信した現在位置の情報に基づいて、ブロックB22で作成したOSM上のノード配列から第1範囲を含む所定範囲(例えば現在位置から10km程度先まで)の情報を検索する。そして、ブロックB24では、検索結果を車両Ve1へ送信する。
【0065】
ブロックB25では、受信機16がブロックB24で送信された情報を受信し、ECU14が当該情報に第2処理を施してブロックB26へ送信する。
【0066】
ブロックB26では、PTC1が第2処理後の情報(消費エネルギテーブル)から現在の値を検索し、ブロックB27でECU14が走行ルート上のこの先のSOCプロファイルを作成する。
【0067】
[変形例]
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。本変形例も実施形態と同様に本発明の範囲に属する。
【0068】
上述した実施形態では、1つの基準車両を設定し、すべての車種が第1類情報を当該基準車両の値に変換している。これによればサーバ18が記憶する情報量の増大を抑制することができる。ただし、性能等が異なる車種の情報を1つの基準車両の値として記憶するため、第1処理を行っているとはいえ、記憶している情報の精度に関して検討の余地はある。
【0069】
例えば、電動車両と内燃機関自動車では、駆動源である電動モータと内燃機関のトルク特性に違いがある。電動モータは低回転から大トルクを発生するのに対し、内燃機関は回転上昇とともにトルクが増大する。このため、電動車両は発進してから速やかに加速して定速走行へ移行するのに対し、内燃機関自動車は発進から定速走行への移行までの時間が電動車両より長くなる傾向がある。このような加速の仕方の違いは消費エネルギに影響を与えるので、電動車両と内燃機関自動車とで別々の基準車両を設けた方が、サーバ18に記憶している情報の精度がより高くなる。
【0070】
また例えば、ミニバン/SUVタイプの車両とスポーツタイプの車両とファミリータイプの車両とでは、加速性能や、その車種を選択するドライバの運転特性等が異なる。スポーツタイプの車両は加速性能に優れるうえに、当該車両を選択するドライバは積極的に加速する傾向がみられる。これに対しファミリータイプの車両の加速性能はスポーツタイプの車両ほどではなく、当該車両を選択したドライバは緩やかに加速する傾向がみられる。ミニバン/SUVタイプの車両を選択するドライバはファミリータイプの車両を選択するドライバと似た傾向があるが、ミニバン/SUVタイプの車両はファミリータイプの車両に比べて車両重量が重く、そのため加速時にはアクセルペダルの踏み込み量が大きくなる傾向がある。
【0071】
そこで本変形例では、車種を複数のグループに分類し、グループ毎の基準車両を設定することとする。グループは、例えば加速性能、加速の仕方、当該車種を選択するドライバの運転特性等によって分類する。例えば電動車両と内燃機関自動車の2つに分けてもよいし、ミニバン/SUVタイプ、スポーツタイプ、ファミリータイプの3つに分けてもよいし、これ以外の分け方でもよい。
【0072】
第1処理を行う際には、ECU14は車両Ve1が属するカテゴリの基準車両の値に変換する(図3のステップS101)。そして、第1処理後の第1類情報は第2類情報、位置情報、及び車両Ve1のグループについての情報と共にサーバ18へ送信される(図3のステップS102)。一方、サーバ18は受信した第1類情報等をグループ別に記憶する(図3のステップS104~S105)。また、ダウンロードする際には、車両Ve1が属するグループの情報をダウンロードする(図4のステップS200~S203)。
【0073】
これにより、各グループの基準車両の情報は加速性能等が似ている車種からの情報によって構成されることになるので、サーバ18に記憶している情報の精度が高まる。なお、基準車両の数が増える分、サーバ18上に記憶する情報量は上述した実施形態に比べれば多くなるが、車種毎に記憶することに比べれば十分に少ない。
【0074】
以上の通り本実施形態に係る車両情報処理方法は、車両(自車両)Ve1が走行することによって得られる情報のうち、車両の仕様によって異なる情報である第1類情報と、車両の仕様によらず共通な情報である第2類情報と、を取得し、予め設定した仕様の基準車両の情報に変換する第1処理を施した第1類情報と、取得した状態のままの第2類情報と、を位置情報とともに車外のサーバ18に送信する。そして、サーバ18に、車両Ve1から送信された第1類情報と既に記憶している第1類情報との平均値及び車両Ve1から送信された第2類情報と既に記憶している第2類情報との平均値を、それぞれ位置情報と関連付けて記憶する。これにより、サーバ18が記憶する情報量の増大を抑制しつつ多岐にわたる車種からの情報を蓄積することができ、また、サーバ18上の情報を多岐にわたる車種で利用することができる。
【0075】
本実施形態における第1処理は、車両Ve1と基準車両の仕様の相違点のうち、第1類情報に影響を与える相違点に基づく重み付けを行うことにより第1類情報を補正する処理である。これにより、基準車両とは異なる仕様の車両Ve1で得られた第1類情報を基準車両の第1類情報としてサーバ18に記憶することが可能となる。
【0076】
本実施形態では、サーバ18から車両Ve1に第1類情報及び第2類情報をダウンロードし、ダウンロードした第1類情報を車両Ve1の仕様に基づいて車両Ve1の情報に変換する第2処理を行う。これにより、車両Ve1が走行したことのない走行ルートであっても、当該走行ルートの第1類情報を取得することができる。
【0077】
本実施形態では、ダウンロードする際には、走行ルート上で車両Ve1の現在位置から予め設定した第1距離の範囲である第1範囲の情報のみをダウンロードする。これにより、一度にダウンロードする情報量が制限されるので、例えば目的地までの距離が長い場合でも、ダウンロードする情報量の増大を抑制できる。また、ダウンロードする情報量が制限されることで、通信負荷の増大を抑制できる。
【0078】
本実施形態では、車両Ve1で取得した第1類情報と第2処理後の第1類情報との比較の結果に基づいて自車両の運転者の運転特性を判定し、当該判定の結果に基づいて第2処理後の第1類情報を補正する。これにより、ダウンロードした情報を、車両Ve1により適した情報に変換することができる。
【0079】
本実施形態では、車両Ve1の走行中に、ダウンロード済みの情報から、車両Ve1が通過した範囲の情報を消去し、かつ、情報を消去した範囲と同じ大きさの範囲分の情報を新たにダウンロードすることで、車両Ve1に保持する情報量を第1範囲の情報量に維持する。これにより、車両Ve1に保持する情報量の増大を抑制できる。
【0080】
本実施形態では、車両Ve1の走行中に、ダウンロード済みの情報から、車両Ve1が通過した範囲の情報を消去し、かつ、ダウンロード済みの情報の残量が、走行ルート上で車両Ve1の現在位置からの距離が第1距離より短い第2距離の範囲である第2範囲の情報量になったら、新たにダウンロードすることで車両Ve1に保持する情報量を第1範囲の情報量に戻してもよい。これによっても、車両Ve1に保持する情報量の増大を抑制できる。
【0081】
本実施形態では、車両Ve1が、ダウンロード済みの情報に対応する走行ルートを外れて走行した場合は、ダウンロード済みの情報を消去し、新たに第1範囲の情報をダウンロードする。これにより、走行ルートの変更に対応することができる。
【0082】
なお、上記説明では車両Ve1がシリーズ式のハイブリッド車両の場合について説明したが、本実施形態はいわゆる電気自動車(Battery Electric Vehicle)にも同様に適用可能である。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0084】
1 パワートレインコントローラ(PTC)、 2 内燃エンジン、 5 第1インバータ、 6 第1モータ、 8 第2インバータ、 9 第2モータ、 10 バッテリ、 14 エレクトロニックコントロールユニット(ECU)、 15 送信機、 16 受信機、 18 サーバ
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