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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085315
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/04 20060101AFI20240619BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240619BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240619BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C08G59/04
C08L63/00 A
C08L63/00 C
C08L101/00
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199782
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 嘉生
(72)【発明者】
【氏名】大石 凌平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002CC031
4J002CC141
4J002CD052
4J002CD053
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE146
4J002DE166
4J002DE236
4J002DE286
4J002DF016
4J002DG046
4J002DJ016
4J002DK006
4J002DL006
4J002FD016
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ05
4J036AD01
4J036AD07
4J036AD08
4J036DB05
4J036DB09
4J036FA01
4J036FA04
4J036FA05
4J036FA06
4J036FB08
4J036JA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる、新規の樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び、活性エステル樹脂を含む、樹脂組成物。

(式(1)中、Rは、それぞれ独立に、1価の脂肪族基を表し、Lは、それぞれ独立に、単結合、又は、2価の連結基を表し、Rは、それぞれ独立に、置換基を表し、mは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、nは、0~5の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び、活性エステル樹脂を含む、樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、
は、それぞれ独立に、1価の脂肪族基を表し、
Lは、それぞれ独立に、単結合、又は、2価の連結基を表し、
は、それぞれ独立に、置換基を表し、
mは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、
nは、0~5の整数を表す。)
【請求項2】
が、それぞれ独立に、アルキル基を表す、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
が、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基を表す、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
Lが、それぞれ独立に、2価の脂肪族基を表す、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
Lが、それぞれ独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表す、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに無機充填材を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、無機充填材の含有量が40質量%以上である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、式(1)で表されるエポキシ樹脂の含有量が1質量%以上45質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
式(1)で表されるエポキシ樹脂に対する活性エステル樹脂の質量比[活性エステル樹脂/式(1)で表されるエポキシ樹脂]が1以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
回路基板の絶縁層用である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
支持体と、該支持体上に設けられた請求項1~10の何れか1項に記載の樹脂組成物の層とを含む、樹脂シート。
【請求項12】
支持体が、熱可塑性樹脂フィルム又は金属箔である、請求項11に記載の樹脂シート。
【請求項13】
請求項1~10の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項14】
請求項1~10の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、回路基板。
【請求項15】
請求項14に記載の回路基板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、樹脂シート、硬化物、回路基板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂とその硬化剤を含む樹脂組成物は、絶縁性、耐熱性、密着性などに優れる硬化物をもたらすことから、プリント配線板や半導体チップパッケージの再配線基板などの回路基板の絶縁材料として広く使われてきた。
【0003】
他方、近年の通信の高速化に伴い、回路基板の絶縁材料には、高周波環境で作動させる際の伝送損失を低減すべく、誘電特性(低誘電正接)に優れる絶縁材料が必要とされている。誘電特性に優れる絶縁材料としては、エポキシ樹脂の硬化反応において2級水酸基のような極性基が生じることを低減・抑制し得る活性エステル樹脂などの特定の硬化剤を用いたり、無機充填材を高配合したりするなど、特定の組成を採用したものが知られている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-157027号公報
【特許文献2】特開2020-94213号公報
【特許文献3】特開2020-152780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載されるような、良好な誘電特性に寄与する組成を採用した樹脂組成物を用いて絶縁層を形成した場合、その絶縁層は、高温高湿環境への暴露後における導体層との密着性が悪化する傾向にあることを見出した。
【0006】
本発明の課題は、良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる、新規の樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を有する樹脂組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1]
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び、活性エステル樹脂を含む、樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、
は、それぞれ独立に、1価の脂肪族基を表し、
Lは、それぞれ独立に、単結合、又は、2価の連結基を表し、
は、それぞれ独立に、置換基を表し、
mは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、
nは、0~5の整数を表す。)
[2]
が、それぞれ独立に、アルキル基を表す、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
が、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基を表す、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
Lが、それぞれ独立に、2価の脂肪族基を表す、[1]~[3]の何れかに記載の樹脂組成物。
[5]
Lが、それぞれ独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表す、[1]~[4]の何れかに記載の樹脂組成物。
[6]
さらに無機充填材を含む、[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物。
[7]
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、無機充填材の含有量が40質量%以上である、[6]に記載の樹脂組成物。
[8]
樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、式(1)で表されるエポキシ樹脂の含有量が1質量%以上45質量%以下である、[1]~[7]の何れかに記載の樹脂組成物。
[9]
式(1)で表されるエポキシ樹脂に対する活性エステル樹脂の質量比[活性エステル樹脂/式(1)で表されるエポキシ樹脂]が1以上である、[1]~[8]の何れかに記載の樹脂組成物。
[10]
回路基板の絶縁層用である、[1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物。
[11]
支持体と、該支持体上に設けられた[1]~[10]の何れかに記載の樹脂組成物の層とを含む、樹脂シート。
[12]
支持体が、熱可塑性樹脂フィルム又は金属箔である、[11]に記載の樹脂シート。
[13]
[1]~[10]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[14]
[1]~[10]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、回路基板。
[15]
[14]に記載の回路基板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる、新規の樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<用語の説明>
本明細書において、化合物又は基についていう「置換基を有していてもよい」という用語は、該化合物又は基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該化合物又は基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
【0011】
本明細書において、「置換基」という用語は、特に説明のない限り、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基、アルキリデン基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、シリル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基及びオキソ基を意味する。
【0012】
置換基として用いられるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。置換基として用いられるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3である。置換基として用いられるアルケニル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2~12、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2又は3である。置換基として用いられるシクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~12、より好ましくは3~6である。置換基として用いられるアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~6である。置換基として用いられるシクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは3~12、より好ましくは3~6である。置換基として用いられるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~14、より好ましくは6~10である。置換基として用いられるアリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~14、より好ましくは6~10である。置換基として用いられるアリールアルキル基の炭素原子数は、好ましくは7~15、より好ましくは7~11である。置換基として用いられるアリールアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは7~15、より好ましくは7~11である。置換基として用いられる1価の複素環基とは、複素環式化合物の複素環から水素原子1個を除いた基をいう。該1価の複素環基の炭素原子数は、好ましくは3~15、より好ましくは3~9である。該1価の複素環基には、1価の芳香族複素環基(ヘテロアリール基)も含まれる。置換基として用いられるアルキリデン基とは、アルカンの同一の炭素原子から水素原子を2個除いた基をいう。該アルキリデン基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。置換基として用いられるアシル基は、式:-C(=O)-R表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アシル基の炭素原子数は、好ましくは2~13、さらに好ましくは2~7である。置換基として用いられるアシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-Rで表される基(式中、Rは上記と同義)である。該アシルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは2~13、より好ましくは2~7である。上述の置換基は、さらに置換基(「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0013】
本明細書において、「脂肪族基」という用語は、脂肪族化合物の脂肪族炭素に結合した水素原子を1個以上除いた基をいう。詳細には、1価の脂肪族基とは、脂肪族化合物の脂肪族炭素に結合した水素原子を1個除いた基をいい、2価の脂肪族基とは、脂肪族化合物の脂肪族炭素に結合した水素原子を2個除いた基をいう。1価の脂肪族基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアルカポリエニル基(二重結合の数は好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、さらにより好ましくは2)が挙げられる。また2価の脂肪族基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいシクロアルケニレン基、置換基を有していてもよいアルカポリエニレン基(二重結合の数は好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、さらにより好ましくは2)が挙げられる。ここで、アルキル基、アルケニル基、アルカポリエニル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルカポリエニレン基は何れも、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。本明細書において、脂肪族基の炭素原子数は、特に記載のない限り、好ましくは1以上、より好ましくは2以上又は3以上であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、8以下又は6以下である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
【0014】
本明細書において、「C~C」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C~Cアルキル基」は、炭素原子数1~6のアルキル基を示し、「C~C10シクロアルキル基」は、炭素原子数6~10のシクロアルキル基を示す。
【0015】
以下、本発明について、実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0016】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び、活性エステル樹脂を含む。
【化2】
(式(1)中、
は、それぞれ独立に、1価の脂肪族基を表し、
Lは、それぞれ独立に、単結合、又は、2価の連結基を表し、
は、それぞれ独立に、置換基を表し、
mは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、
nは、0~5の整数を表す。)
【0017】
先述のとおり、良好な誘電特性に寄与する従来の樹脂組成物(例えば、エポキシ樹脂の硬化反応において2級水酸基のような極性基が生じることを低減・抑制し得る活性エステル樹脂などの特定の硬化剤を用いたり、無機充填材を高配合したりするなど、特定の組成を採用した樹脂組成物)を用いて絶縁層を形成したところ、高温高湿環境への暴露後における導体層との密着性が悪化する傾向にあることを見出した。また、高温高湿環境への暴露後における導体層との密着性の悪化は、いっそう良好な誘電特性をもたらすべく、活性エステル樹脂などの特定の硬化剤を高配合したり、無機充填材をより高配合したりする場合において、顕著となることを確認している。
【0018】
これに対し、エポキシ樹脂として上記式(1)で表される特定のエポキシ樹脂を用いる本発明によれば、良好な誘電特性に寄与する特定の組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる。さらには、エポキシ樹脂として上記式(1)で表される特定のエポキシ樹脂を用いる本発明によれば、いっそう低い誘電正接など、誘電特性自体がより良好となることも確認している。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂を含む限り、その他のエポキシ樹脂を含んでもよい。以下、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂を「(A-1)式(1)で表されるエポキシ樹脂」あるいは単に「(A-1)成分」といい、その他のエポキシ樹脂を「(A-2)その他エポキシ樹脂」あるいは単に「(A-2)成分」という。また、これら(A-1)成分と(A-2)成分を総称して「(A)エポキシ樹脂」あるいは単に「エポキシ樹脂」や「(A)成分」という。
【0020】
以下、各成分について説明する。
【0021】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、エポキシ樹脂を含み、該エポキシ樹脂が、(A-1)式(1)で表されるエポキシ樹脂を含むことを特徴とする。
【化3】
(式(1)中、
は、それぞれ独立に、1価の脂肪族基を表し、
Lは、それぞれ独立に、単結合、又は、2価の連結基を表し、
は、それぞれ独立に、置換基を表し、
mは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、
nは、0~5の整数を表す。)
【0022】
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、1価の脂肪族基を表す。Rで表される1価の脂肪族基としては、先述のとおりであるが、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は、置換基を有していてもよいシクロアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~12のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基がより好ましい。
【0023】
中でも、良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際にいっそう良好な導体層との密着性を呈する硬化物を実現し得る観点から、Rで表される1価の脂肪族基は、置換基を有していてもよいアルキル基であることが好適であり、アルキル基であることがより好適である。該アルキル基の炭素原子数は、脂肪族基について先述したとおりであるが、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6又は1~4である。
【0024】
したがって好適な一実施形態において、Rは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、より好適には炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0025】
式(1)中、Lは、それぞれ独立に、単結合、又は、2価の連結基を表す。Lで表される2価の連結基としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる1個以上(例えば1~50個、1~20個、1~10個)の骨格原子からなる2価の有機基が挙げられ、中でも、2価の脂肪族基が好ましい。したがって好適な一実施形態において、Lは、それぞれ独立に、単結合、又は、2価の脂肪族基を表し、より好適には2価の脂肪族基を表す。
【0026】
Lで表される2価の脂肪族基としては、先述のとおりであるが、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、又はそれらの組み合わせからなる2価の基が好ましく、炭素原子数1~12のアルキレン基、炭素原子数2~12のアルケニレン基、炭素原子数3~12のシクロアルキレン基、又はそれらの組み合わせからなる2価の基が好ましい。
【0027】
中でも、良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際にいっそう良好な導体層との密着性を呈する硬化物を実現し得る観点から、Lで表される2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、又はそれらの組み合わせからなる2価の基が好適であり、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はそれらの組み合わせからなる2価の基がより好適であり、アルキレン基又はシクロアルキレン基がさらに好適である。該アルキレン基の炭素原子数は、脂肪族基について先述したとおりであるが、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6又は1~4である。また該シクロアルキレン基の炭素原子数は、脂肪族基について先述したとおりであるが、好ましくは6~12、より好ましくは6~10である。
【0028】
したがって好適な一実施形態において、Lは、それぞれ独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し、より好適には、炭素原子数1~6のアルキレン基、炭素原子数6~10のシクロアルキレン基、又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表す。
【0029】
良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に一際良好な導体層との密着性を呈する硬化物を実現し得る観点から、Lは、それぞれ独立に、下記式(2)で表される2価の基であることが好ましい。
【0030】
【化4】
(式(2)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、ここで、RとRとは一体となって環を形成していてもよい。)
【0031】
及びRにおけるアルキル基は、脂肪族基について先述したとおりであるが、その炭素原子数は好ましくは1~6である。また、RとRとが一体となって環を形成する場合、形成される環は、好ましくは4~10員の飽和炭素環、より好ましくは6~10員の飽和炭素環である。該飽和炭素環は、R及びRに由来する置換基を有していてもよい。
【0032】
及びRにおけるアルキル基が有していてもよい置換基は先述のとおりであるが、本発明の効果をより享受し得るから、ハロゲン原子又はアルキル基が好ましい。
【0033】
例えば、RとRが共に水素原子を表す場合、式(2)で表される2価の基はメチレン基である。RとRが共にメチル基を表す場合、式(2)で表される2価の基はプロピレン基(プロパン-2,2-ジイル基)である。RとRが共にトリフルオロメチル基を表す場合、式(2)で表される2価の基はヘキサフルオロプロピレン基(ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基)である。RとRが一体となって6員の飽和炭素環を形成する場合、式(2)で表される2価の基はシクロヘキシレン基(シクロヘキサン-1,1-ジイル基)である。上記のとおり、該飽和炭素環は、R及びRに由来する置換基を有していてもよく、例えば、置換基を有する6員の飽和炭素環としては、トリメチルシクロヘキシレン基(例えば3,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,1-ジイル基など)が挙げられる。
【0034】
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、置換基を表す。Rで表される置換基としては、先述のとおりであるが、本発明の効果をより享受し得る観点から、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアリール基が好ましく、ハロゲン原子がより好ましい。
【0035】
式(1)中、mは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際にいっそう良好な導体層との密着性を呈する硬化物を実現し得る観点から、mは、それぞれ独立に、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0を表す。
【0036】
良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に一際良好な導体層との密着性を呈する硬化物を実現し得る観点、さらにはいっそう低い誘電正接など、誘電特性自体がより良好となる硬化物を実現し得る観点から特に好適な式(1)で表されるエポキシ樹脂の例を以下に示す。
【0037】
好適な一実施形態において、式(1)中、
は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
Lは、それぞれ独立に、(i)単結合、又は、(ii)置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、若しくはそれらの組み合わせからなる2価の基を表し、
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアリール基を表し、
mは、それぞれ独立に、0又は1を表し、
nは、0~5の整数を表す。
【0038】
より好適な一実施形態において、式(1)中、
は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
Lは、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキレン基、炭素原子数6~10のシクロアルキレン基、又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し、
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表し、
mは、それぞれ独立に、0又は1(さらに好適には0)を表し、
nは、0~5の整数を表す。
【0039】
さらに好適な一実施形態において、式(1)中、
は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
Lは、それぞれ独立に、上記式(2)で表される2価の基を表し、
mは、それぞれ独立に、0又は1(さらに好適には0)を表し、
nは、0~5の整数を表す。
【0040】
本発明の効果をより享受し得る観点から、式(1)において明示されるベンゼン環に対するLの結合位置は、同じく明示される酸素原子(Rに対しオルト位に結合した酸素原子)の結合位置との関係において、パラ位であることが好ましい。
【0041】
良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物を実現し得る観点から、(A-1)成分のエポキシ基当量は、好ましくは160g/eq.以上、より好ましくは170g/eq.以上、175g/eq.以上、又は180g/eq.以上であり、その上限は、好ましくは600g/eq.以下、より好ましくは500g/eq.以下、400g/eq.以下、又は300g/eq.以下である。なお、エポキシ基当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定することができる。
【0042】
以下、(A-1)成分、すなわち式(1)で表されるエポキシ樹脂の合成手順について一例を示す。
【0043】
一実施形態において、(A-1)成分は、
(x1)下記一般式(x1)で表される2価ヒドロキシ化合物と、
(x2)エピハロヒドリンと
の反応物(エポキシ化物)である。
【0044】
【化5】
(式中、R、L、R、mは上記と同じである。)
【0045】
-(x1)2価ヒドロキシ化合物-
2価ヒドロキシ化合物(x1)としては、目的とする(A-1)成分の構造を達成すべく、適宜決定してよい。(A-1)成分の構造、すなわち式(1)で表される構造の好適な例は先述のとおりである。例えば、斯かる2価ヒドロキシ化合物(x1)としては、ヒドロキシ基との位置関係においてオルト位にRが結合したビフェニル化合物、ヒドロキシ基との位置関係においてオルト位にRが結合したビスフェノール化合物等が挙げられる。具体的には、RがC~Cアルキル基、Lがメチレン基、mが0である式(1)の構造をもたらすものとして4,4’-メチレンビス(2-C~Cアルキルフェノール)を用いればよく、RがC~Cアルキル基、Lがプロパン-2,2-ジイル基、mが0である式(1)の構造をもたらすものとして2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-C~Cアルキルフェニル)プロパンを用いればよく、RがC~Cアルキル基、Lがシクロヘキサン-1,1-ジイル基、mが0である式(1)の構造をもたらすものとして1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-C~Cアルキルフェニル)シクロヘキサンを用いればよい。
【0046】
-(x2)エピハロヒドリン-
エピハロヒドリン(x2)としては、エピクロロヒドリンやエピブロモヒドリンを用いればよい。
【0047】
(x1)成分及び(x2)成分の反応は、2価ヒドロキシ化合物とエピハロヒドリンを用いた従来公知のエポキシ化反応によって実施してよい。反応は、溶媒を使用せずに無溶媒系で進行させてもよいし、有機溶媒を使用して有機溶媒系で進行させてもよい。反応に用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶媒;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤が挙げられる。有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
反応においては、塩基を用いてもよい。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)や水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)等の第3級アミン類等が挙げられる。塩基は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。反応においてはまた、縮合剤や層間移動触媒を用いてよい。これらは、従来公知の任意のものを用いてよい。
【0049】
反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、例えば、50~150℃の範囲としてよい。また反応時間は、目的とする(A-1)成分の構造が達成される限り特に限定されず、例えば、1~10時間の範囲としてよい。
【0050】
斯かる反応において、(x1)成分と(x2)成分の量比等を調整することにより、多量化の程度(式(1)中のn;(x2)成分の量が少ないほどnは大きくなる傾向にある)を調整することができ、得られる(A-1)成分のエポキシ基当量を調整することができる。式(1)の構造を効率よく達成するにあたり、(x2)成分の量は(x1)成分の量より多くする必要があり、通常、(x1)成分1モルに対し(x2)成分は2モル以上、好ましくは3モル以上である。
【0051】
反応後、過剰の(x2)成分を留去し、(A-1)成分を得ることができる。また、(A-1)成分を精製してもよい。例えば、反応後、副生塩や過剰量の出発原料を系内から除去するために、水洗や精密濾過などの精製工程を施してもよい。詳細には、過剰の(x2)成分を留去して得られた残留物を有機溶媒に溶解し、濾過し、水洗して副生塩を除去し、次いで有機溶媒を留去することにより(A-1)成分を精製してよい。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、上記の(A-1)成分を含む限りにおいて、(A-2)その他エポキシ樹脂を含んでよい。
【0053】
(A-2)成分は、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のエポキシ基を有する限り、その種類は特に限定されない。(A-2)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0054】
(A-2)成分は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)に分類し得るが、本発明の樹脂組成物が(A-2)成分を含む場合、液状エポキシ樹脂のみをさらに含んでもよく、固体状エポキシ樹脂のみをさらに含んでもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との組み合わせをさらに含んでもよい。
【0055】
(A-2)成分のエポキシ基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。
【0056】
(A-2)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。エポキシ樹脂のMwは、GPC法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0057】
良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物を実現し得る観点から、樹脂組成物中の(A-1)成分、すなわち式(1)で表されるエポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、4質量%以上又は5質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、11質量%以上又は12質量%以上である。該含有量の上限は、特に限定されず、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、後述する(B)活性エステル樹脂との組み合わせにおいていっそう良好な誘電特性を呈する硬化物を実現し得る観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下又は40質量%以下である。したがって一実施形態において、樹脂組成物中の(A-1)成分の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、1質量%以上45質量%以下である。
【0058】
本発明において、樹脂組成物についていう「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する不揮発成分のうち、後述する(D)無機充填材を除いた成分をいう。
【0059】
本発明の樹脂組成物が(A-2)成分、すなわちその他エポキシ樹脂を含む場合、(A)成分の全体(不揮発成分の合計)を100質量%としたとき、(A-1)成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上又は30質量%以上である。(A)成分の全体に占める(A-1)成分の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってよいが、例えば、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下などとしてもよい。
【0060】
本発明の樹脂組成物において、(A)成分の合計含有量は、上記の(A-1)成分の含有量や(A)成分の全体に占める(A-1)成分の含有量の好適範囲を満たすように適宜決定してよい。例えば、樹脂組成物中の(A)成分の合計含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、25質量%以上、26質量%以上、28質量%以上又は30質量%以上である。該含有量の上限は、特に限定されず、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、後述する(B)活性エステル樹脂との組み合わせにおいていっそう良好な誘電特性を呈する硬化物を実現し得る観点から、好ましくは、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下又は50質量%以下などとし得る。
【0061】
<(B)活性エステル樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(B)成分として、活性エステル樹脂を含有する。
【0062】
活性エステル樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。
【0063】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0064】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0065】
本発明の効果をより享受し得る観点から好ましい活性エステル樹脂の具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂が挙げられる。中でも、上記(A-1)成分との組み合わせにおいて、高温高湿環境に曝露した際に一際良好な導体層との密着性を呈すると共に、一際良好な誘電特性を呈する硬化物を実現し得る観点から、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0066】
(B)成分の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、「EXB-9451」、「EXB-9460」、「EXB-9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「HPC-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「HP-B-8151-62T」(DIC社製);りん含有活性エステル樹脂として「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0067】
(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(B)成分の活性エステル基当量(本明細書において、「活性基当量」と略す場合がある。)は、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは50g/eq.~400g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性エステル基当量は、活性エステル基1当量あたりの活性エステル樹脂の質量である。
【0069】
良好な誘電特性をもたらす樹脂組成物を実現し易い観点から、樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、35質量%以上又は40質量%以上である。該含有量の上限は、特に限定されず、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、例えば、70質量%以下、65質量%以下又は60質量%以下などとし得る。
【0070】
本発明の樹脂組成物において、(A-1)成分に対する(B)成分の質量比((B)成分/(A-1)成分)は、誘電特性に優れる硬化物をもたらす観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上、1.5以上、1.6以上、1.8以上又は2以上である。上記のとおり、(A-1)成分を使用する本発明の樹脂組成物によれば、優れた誘電特性を実現できる程度に(B)成分を含む場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる。例えば、本発明の樹脂組成物において、(A-1)成分に対する(B)成分の質量比は、2.5以上、3以上又は3.5以上にまで高めてよい。該質量比((B)成分/(A-1)成分)の上限は、例えば、10以下、8以下、6以下、5以下などとしてよい。
【0071】
本発明の樹脂組成物において、(A)成分に対する(B)成分の質量比((B)成分/(A)成分)は、誘電特性に優れる硬化物をもたらす観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上である。上記のとおり、(A-1)成分を使用する本発明の樹脂組成物によれば、優れた誘電特性を実現できる程度に(B)成分を含む場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる。例えば、本発明の樹脂組成物において、(A)成分に対する(B)成分の質量比は、1.1以上、1.2以上又は1.3以上にまで高めてよい。該質量比((B)成分/(A)成分)の上限は、例えば、2以下、1.9以下、1.8以下などとしてよい。
【0072】
<(C)その他硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、(B)成分以外の硬化剤(「その他硬化剤」ともいう。)をさらに含んでもよい。
【0073】
(C)成分としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アミン系硬化剤などが挙げられる。(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤、含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。
【0075】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0076】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「MH-700」等が挙げられる。
【0077】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0078】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216g/eq.)、V-05(カルボジイミド基当量:262g/eq.)、V-07(カルボジイミド基当量:200g/eq.);V-09(カルボジイミド基当量:200g/eq.);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302g/eq.)が挙げられる。
【0079】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられる。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0080】
本発明の樹脂組成物が(C)成分を含む場合、樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。(C)成分の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下などとし得る。
【0081】
先述のとおり、誘電特性に優れる硬化物をもたらす観点から、本発明の樹脂組成物は、活性エステル樹脂、すなわち(B)成分を含む。本発明の樹脂組成物において、(B)成分と(C)成分の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、(B)成分の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、75質量%以上又は80質量%以上である。(B)成分と(C)成分の合計に占める(B)成分の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよいが、例えば、95質量%以下、90質量%以下などとしてもよい。
【0082】
<(D)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、(D)成分として、さらに無機充填材を含んでもよい。(D)成分を含有させることにより、線熱膨張率や誘電正接をさらに低下させることができる。
【0083】
(D)成分の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
(D)成分の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」;太平洋セメント社製の「セルフィアーズ」、「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」、「BA-1」などが挙げられる。
【0085】
(D)成分の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、2μm以下、1μm以下又は0.7μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上又は0.2μm以上である。(D)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0086】
(D)成分の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは1m/g以上、3m/g以上又は5m/g以上である。該比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m/g以下、より好ましくは80m/g以下、さらに好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。(D)成分の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0087】
(D)成分は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(D)成分の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、酸無水物系シランカップリング剤等のシランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の非シランカップリング-アルコキシシラン化合物;シラザン化合物等が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0089】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、好ましくは0.2~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。
【0090】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0091】
本発明の樹脂組成物が(D)成分を含む場合、樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、いっそう良好な誘電特性をもたらす樹脂組成物を実現し易い観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上である。先述のとおり、(A-1)成分を用いる本発明によれば、良好な誘電特性に寄与する特定の組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる。例えば、本発明の樹脂組成物において、(D)成分の含有量は、60質量%以上、65質量%以上又は70質量%以上にまで高めてよい。該(D)成分の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば90質量%以下、85質量%以下などとし得る。
【0092】
<(E)熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(E)成分として、熱可塑性樹脂を含んでもよい。
【0093】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000~70,000の範囲が好ましく、10,000~60,000の範囲がより好ましく、20,000~60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0095】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YX7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0096】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、デンカ社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0097】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0098】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0099】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0100】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0101】
本発明の樹脂組成物が(E)成分を含む場合、樹脂組成物中の(E)成分の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.8質量%以上又は1質量%以上である。(E)成分の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、15質量%以下などとし得る。
【0102】
<(F)ラジカル重合性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(F)成分として、ラジカル重合性樹脂を含んでもよい。
【0103】
ラジカル重合性樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル重合性不飽和基を有する限り、その種類は特に限定されない。ラジカル重合性樹脂としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基として、マレイミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、及びマレオイル基から選ばれる1種以上を有する樹脂が挙げられる。中でも、いっそう良好な誘電特性を呈する硬化物をもたらす観点からは、ラジカル重合性樹脂は、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチリル樹脂から選ばれる1種以上が好ましい。
【0104】
マレイミド樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有する限り、その種類は特に限定されない。マレイミド樹脂としては、例えば、(1)「BMI-3000J」、「BMI-5000」、「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-689」(いずれもDesigner Molecules社製)、「SLK6895-T90」(信越化学工業社製)などの、脂肪族骨格(好ましくはダイマージアミン由来の炭素原子数36の脂肪族骨格)を含むマレイミド樹脂;(2)発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載される、インダン骨格を含むマレイミド樹脂;(3)「MIR-3000-70MT」(日本化薬社製)、「BMI-4000」(大和化成社製)、「BMI-80」(ケイアイ化成社製)などの、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環骨格を含むマレイミド樹脂が挙げられる。
【0105】
(メタ)アクリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)の(メタ)アクリロイル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。ここで、「(メタ)アクリロイル基」という用語は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。メタクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートモノマーのほか、例えば、「A-DOG」(新中村化学工業社製)、「DCP-A」(共栄社化学社製)、「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」(何れも日本化薬社製)などの、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0106】
スチリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のスチリル基又はビニルフェニル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。スチリル樹脂としては、スチレンモノマーのほか、例えば、「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(何れも三菱ガス化学社製)などの、スチリル樹脂が挙げられる。
【0107】
本発明の樹脂組成物が(F)成分を含む場合、樹脂組成物中の(F)成分の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上又は0.6質量%以上である。(F)成分の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下などとし得る。
【0108】
<(G)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、(G)成分として、硬化促進剤を含んでもよい。
【0109】
(G)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
本発明の樹脂組成物が(G)成分を含む場合、樹脂組成物中の(G)成分の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下又は1質量%以下である。
【0111】
<任意の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、さらに任意の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。斯かる添加剤の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよい。
【0112】
<有機溶媒>
本発明の樹脂組成物は、揮発性成分として、さらに有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶媒;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
本発明の樹脂組成物は、例えば、任意の調製容器に(A-1)成分、(B)成分、また、必要に応じて(A-2)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分、その他の添加剤や有機溶剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、加えて混合する過程において又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。また、撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
【0114】
先述のとおり、(A-1)成分を含む本発明の樹脂組成物は、良好な誘電特性に寄与する特定の組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる。
【0115】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電正接(Df)が低いという特徴を呈する。例えば、後述する<誘電正接の測定>欄に記載のように5.8GHz、23℃で測定した場合、本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接(Df)は、好ましくは0.008以下、0.006以下、0.004以下、0.0038以下、0.0036以下、0.0034以下、0.0032以下、又は0.003以下となり得る。
【0116】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、高温高湿環境に曝露した際に導体層との密着性が高いという特徴を呈する。例えば、後述する<高温高湿環境試験(HAST)後の銅箔ピール強度の測定>欄に記載のように130℃、85%RHの高温高湿条件に100時間曝露させた場合、高温高湿条件曝露後の導体箔との密着強度は、好ましくは0.4kgf/cm以上、0.42kgf/cm以上、0.44kgf/cm以上、又は0.45kgf/cm以上である。
【0117】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、めっき導体層との密着性が高いという特徴を呈する。例えば、後述する<めっき導体層のピール強度の測定>欄に記載のようにめっき導体層を形成した場合、めっき導体層との密着強度は、好ましくは0.4kgf/cm以上、0.42kgf/cm以上、0.44kgf/cm以上、又は0.45kgf/cm以上である。
【0118】
先述のとおり、本発明の樹脂組成物は、良好な誘電特性に寄与する特定の組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる。さらには、本発明によれば、いっそう低い誘電正接など、誘電特性自体がより良好となることも確認している。したがって本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶層間縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、半導体パッケージの再配線基板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(再配線基板の絶縁層用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。なお、本発明においては、プリント配線板や再配線基板を総称して「回路基板」ともいい、したがって本発明の樹脂組成物は、回路基板の絶縁層用として好適に使用することができる。
【0119】
本発明の樹脂組成物はさらに、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、封止樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途で広範囲に使用できる。
【0120】
[シート状積層材料(樹脂シート、プリプレグ)]
本発明の樹脂組成物は、そのまま使用することもできるが、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いてもよい。
【0121】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0122】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物の層(以下、単に「樹脂組成物層」という。)とを含み、樹脂組成物層が本発明の樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0123】
樹脂組成物層の厚さは、用途によって好適値は異なり、用途に応じて適宜決定してよい。例えば、樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板や半導体パッケージの薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下又は30μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上などとし得る。
【0124】
支持体としては、例えば、熱可塑性樹脂フィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、熱可塑性樹脂フィルム、金属箔が好ましい。したがって好適な一実施形態において、支持体は、熱可塑性樹脂フィルム又は金属箔である。
【0125】
支持体として熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0126】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0127】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0128】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0129】
支持体として金属箔を用いる場合、薄い金属箔に剥離が可能な支持基材を張り合わせた支持基材付き金属箔を用いてよい。一実施形態において、支持基材付き金属箔は、支持基材と、該支持基材上に設けられた剥離層と、該剥離層上に設けられた金属箔とを含む。支持体として支持基材付き金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、金属箔上に設けられる。
【0130】
支持基材付き金属箔において、支持基材の材質は、特に限定されないが、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、銅合金箔等が挙げられる。支持基材として、銅箔を用いる場合、電解銅箔、圧延銅箔であってよい。また、剥離層は、支持基材から金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。
【0131】
支持基材付き金属箔において、金属箔の材質としては、例えば、銅箔、銅合金箔が好ましい。
【0132】
支持基材付き金属箔において、支持基材の厚さは、特に限定されないが、10μm~150μmの範囲が好ましく、10μm~100μmの範囲がより好ましい。また、金属箔の厚さは、例えば、0.1μm~10μmの範囲としてよい。
【0133】
一実施形態において、樹脂シートは、必要に応じて、任意の層をさらに含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0134】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0135】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0136】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0137】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0138】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0139】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板や半導体チップパッケージの薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
【0140】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0141】
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0142】
本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶層間縁層用)により好適に使用することができる。本発明のシート状積層材料はまた、半導体パッケージの再配線基板の絶縁層を形成するため(再配線基板の絶縁層用)に好適に使用することができる。すなわち、本発明のシート状積層材料は、回路基板の絶縁層用として好適に使用することができる。
【0143】
[回路基板]
本発明の樹脂組成物を用いて回路基板の絶縁層を形成することができる。本発明は、斯かる回路基板、すなわち本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む回路基板も提供する。
【0144】
<プリント配線板>
一実施形態において、本発明の回路基板はプリント配線板である。
【0145】
プリント配線板は、例えば、上記の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
【0146】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0147】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスしてもよく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスしてもよい。
【0148】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0149】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0150】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0151】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。なお、支持体として、金属箔を使用した場合、支持体を剥離することなく、該金属箔を用いて導体層を形成してよい。また、支持体として、支持基材付き金属箔を使用した場合、支持基材(と剥離層)を剥離すればよい。そして、金属箔を用いて導体層を形成することができる。
【0152】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0153】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは140℃~250℃、より好ましくは150℃~240℃、さらに好ましくは180℃~230℃である。硬化時間は好ましくは5分間~240分間、より好ましくは10分間~150分間、さらに好ましくは15分間~120分間とすることができる。
【0154】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~140℃、好ましくは60℃~135℃、より好ましくは70℃~130℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0155】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0156】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0157】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0158】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去(デスミア)も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0159】
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0160】
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0161】
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0162】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0163】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0164】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0165】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0166】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。微細な配線を形成し易い観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0167】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0168】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0169】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0170】
あるいは、樹脂シートの支持体として、金属箔や、支持基材付き金属箔を使用した場合、該金属箔を用いて導体層を形成してよいことは先述のとおりである。
【0171】
<半導体パッケージの再配線基板>
一実施形態において、本発明の回路基板は、半導体パッケージの再配線基板(再配線層)である。以下、半導体パッケージの製造方法に即して説明する。
【0172】
半導体パッケージは、再配線基板の絶縁層として、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む。なお、半導体パッケージは、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる封止層を含んでもよい。
【0173】
半導体パッケージは、例えば、本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて、下記(1)乃至(6)の工程を含む方法により製造することができる。工程(5)の再配線形成層(再配線基板を形成するための絶縁層)あるいは工程(3)の封止層を形成するために、本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いればよい。以下、樹脂組成物や樹脂シートを用いて再配線形成層や封止層を形成する一例を示すが、半導体パッケージの再配線形成層や封止層を形成する技術は公知であり、当業者であれば、本発明の樹脂組成物や樹脂シートを用いて、公知の技術に従って半導体パッケージを製造することができる。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0174】
-工程(1)-
基材に使用する材料は特に限定されない。基材としては、シリコンウェハ等の半導体ウェハ;ガラスウェハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板(例えばFR-4基板);ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)からなる基板などが挙げられる。
【0175】
仮固定フィルムは、工程(4)において半導体チップから剥離することができると共に、半導体チップを仮固定することができれば材料は特に限定されない。仮固定フィルムは市販品を用いることができる。市販品としては、日東電工社製のリヴァアルファ等が挙げられる。
【0176】
-工程(2)-
半導体チップの仮固定は、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の公知の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体パッケージの生産数等に応じて適宜設定することができ、例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に整列させて仮固定することができる。
【0177】
-工程(3)-
本発明の樹脂シートの樹脂組成物層を、半導体チップ上に積層、又は本発明の樹脂組成物を半導体チップ上に塗布し、硬化(例えば熱硬化)させて封止層を形成する。
【0178】
例えば、半導体チップと樹脂シートの積層は、樹脂シートの保護フィルムを除去した後支持体側から樹脂シートを半導体チップに加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを半導体チップに加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、半導体チップの表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。半導体チップと樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してもよく、その積層条件は、プリント配線板の製造方法に関連して説明した積層条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0179】
積層の後、樹脂組成物を熱硬化させて封止層を形成する。熱硬化の条件は、プリント配線板の製造方法に関連して説明した熱硬化の条件と同様である。
【0180】
樹脂シートの支持体は、半導体チップ上に樹脂シートを積層し熱硬化した後に剥離してもよく、半導体チップ上に樹脂シートを積層する前に支持体を剥離してもよい。
【0181】
本発明の樹脂組成物を塗布して封止層を形成する場合、その塗布条件としては、本発明の樹脂シートに関連して説明した樹脂組成物層を形成する際の塗布条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0182】
-工程(4)-
基材及び仮固定フィルムを剥離する方法は、仮固定フィルムの材質等に応じて適宜変更することができ、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡(又は膨張)させて剥離する方法、及び基材側から紫外線を照射させ、仮固定フィルムの粘着力を低下させ剥離する方法等が挙げられる。
【0183】
仮固定フィルムを加熱、発泡(又は膨張)させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100~250℃で1~90秒間又は5~15分間である。また、基材側から紫外線を照射させ、仮固定フィルムの粘着力を低下させ剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm~1000mJ/cmである。
【0184】
-工程(5)-
本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて再配線形成層(再配線基板の絶縁層)を形成する。
【0185】
再配線形成層を形成後、半導体チップと後述する導体層を層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。ビアホールは、再配線形成層の材料に応じて、公知の方法により形成してよい。
【0186】
-工程(6)-
再配線形成層上への導体層の形成は、プリント配線板の製造方法に関連して説明した工程(V)と同様に実施してよい。なお、工程(5)及び工程(6)を繰り返し行い、導体層(再配線層)及び再配線形成層(絶縁層)を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0187】
半導体パッケージを製造するにあたって、(7)導体層(再配線層)上にソルダーレジスト層を形成する工程、(8)バンプを形成する工程、(9)複数の半導体パッケージを個々の半導体パッケージにダイシングし、個片化する工程をさらに実施してもよい。これらの工程は、半導体パッケージの製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0188】
良好な誘電特性に寄与する組成を採用する場合であっても、高温高湿環境に曝露した際に良好な導体層との密着性を呈する硬化物をもたらすことができる本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて再配線形成層(絶縁層)を形成することにより、半導体パッケージが、ファンイン(Fan-In)型パッケージであるかファンアウト(Fan-Out)型パッケージであるかの別を問わず、伝送損失の極めて少ない半導体パッケージを、導体密着性の低下の懸念なしに実現することができる。一実施形態において、本発明の半導体パッケージは、ファンアウト(Fan-Out)型パッケージである。本発明の樹脂組成物、樹脂シートは、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)の別を問わず、適用できる。一実施形態において、本発明の半導体パッケージは、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)又はファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)である。
【0189】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の樹脂組成物層の硬化物からなる層を含む。本発明の半導体装置は、本発明の回路基板を用いて製造することができる。
【0190】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0191】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0192】
<合成例1:エポキシ樹脂Aの合成>
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン100gをエピクロルヒドリン1050gに溶解させ、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.25gを加え、減圧下70℃において48%水酸化ナトリウム水溶液90gを5時間かけて滴下した。生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、溜出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下後、2時間反応を継続し、その後濾過により生成した塩を除き、さらに水洗したのちエピクロルヒドリンを留去した。得られたエポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン400gに溶解し、85℃にて10%水酸化ナトリウム水溶液10gを加え2時間反応させた。反応後、濾過、水洗しメチルイソブチルケトンを留去することにより、単黄色液状のエポキシ樹脂Aを129g得た。該エポキシ樹脂Aは下記式(A)で表される構造(式中、nは0~5)を有し、そのエポキシ基当量は193であった。
【0193】
【化6】
【0194】
<合成例2:エポキシ樹脂Bの合成>
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン100gに代えて、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェノール)90gを使用した以外は、合成例1と同様の手順により単黄色液状のエポキシ樹脂Bを145g得た。該エポキシ樹脂Bは下記式(B)で表される構造(式中、nは0~5)を有し、そのエポキシ基当量は184であった。
【0195】
【化7】
【0196】
<合成例3:エポキシ樹脂Cの合成>
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン100gに代えて、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン116gを使用した以外は、合成例1と同様の手順により単黄色固体状のエポキシ樹脂Cを155g得た。該エポキシ樹脂Cは下記式(C)で表される構造(式中、nは0~5)を有し、そのエポキシ基当量は220であった。
【0197】
【化8】
【0198】
[実施例1]
(1)樹脂組成物の調製
合成例1にて合成したエポキシ樹脂Aを10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」、エポキシ基当量約277)20部をトルエン20部、MEK20部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、活性エステル樹脂(DIC社製「HP-B-8151-62T」、活性基当量238、固形分62質量%のトルエン溶液)65部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX6954BH30」、固形分30%のMEK・シクロヘキサノン混合溶液)10部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」の固形分10%のMEK溶液)5部、無機充填材(アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm))210部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を得た。
【0199】
(2)樹脂シートの製造
支持体として、表面にアルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)による離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃)を用意した。この支持体上に、樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、70℃から100℃で3分間乾燥することにより、支持体上に樹脂組成物層を形成した。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を貼り合わせた。これにより、支持体/樹脂組成物層/保護フィルムの層構成を有する樹脂シートを得た。
【0200】
[実施例2]
カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50%のトルエン溶液)6部をさらに添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートを得た。
【0201】
[実施例3]
ビスマレイミド樹脂(Designer Molecules社製「BMI-689」、マレイミド基当量約345)3部をさらに添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートを得た。
【0202】
[実施例4]
ビスマレイミド樹脂(Designer Molecules社製「BMI-1500」、マレイミド基当量約750)3部をさらに添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートを得た。
【0203】
[実施例5]
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法で合成されたマレイミド樹脂(以下、「マレイミド樹脂C」ともいう。)のMEK溶液(固形分70質量%)4.3部をさらに添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートを得た。
【0204】
[実施例6]
(1)樹脂組成物の調製
合成例2にて合成したエポキシ樹脂Bを10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」、エポキシ基当量約277)20部をトルエン20部、MEK20部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、活性エステル樹脂(DIC社製「HP-B-8151-62T」、活性基当量238、固形分62質量%のトルエン溶液)65部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX6954BH30」、固形分30%のMEK・シクロヘキサノン混合溶液)10部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50%のトルエン溶液)6部、ビスマレイミド樹脂(Designer Molecules社製「BMI-1500」、マレイミド基当量約750)3部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」の固形分10%のMEK溶液)5部、無機充填材(アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm))210部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を得た。
【0205】
(2)樹脂シートの製造
上記(1)で調製した樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0206】
[実施例7]
エポキシ樹脂A10部に代えて、合成例3にて合成したエポキシ樹脂C10部を使用した以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートを得た。
【0207】
[実施例8]
活性エステル樹脂(DIC社製「HP-B-8151-62T」、活性基当量238、固形分62質量%のトルエン溶液)65部に代えて、活性エステル樹脂(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223g、固形分65質量%のトルエン溶液)62部を使用した以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートを得た。
【0208】
[実施例9]
(1)樹脂組成物の調製
合成例1にて合成したエポキシ樹脂Aを10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」、エポキシ基当量約277)20部をトルエン20部、MEK20部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、活性エステル樹脂(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223g、固形分65質量%のトルエン溶液)62部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX6954BH30」、固形分30%のMEK・シクロヘキサノン混合溶液)50部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」の固形分10%のMEK溶液)5部、無機充填材(フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(平均粒径0.3μm、比表面積30.7m/g、デンカ社製「UFP-30」)105部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を得た。
【0209】
(2)樹脂シートの製造
上記(1)で調製した樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0210】
[実施例10]
(1)樹脂組成物の調製
合成例1にて合成したエポキシ樹脂Aを30部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」、エポキシ基当量約277)10部をトルエン20部、MEK20部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、活性エステル樹脂(DIC社製「HP-B-8151-62T」、活性基当量238、固形分62質量%のトルエン溶液)65部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50%のトルエン溶液)6部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX6954BH30」、固形分30%のMEK・シクロヘキサノン混合溶液)16.7部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」の固形分10%のMEK溶液)5部、無機充填材(フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(平均粒径0.3μm、比表面積30.7m/g、デンカ社製「UFP-30」)105部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を得た。
【0211】
(2)樹脂シートの製造
上記(1)で調製した樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0212】
[比較例1]
エポキシ樹脂A10部に代えて、ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828US」、エポキシ基当量約188)10部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートを得た。
【0213】
[比較例2]
エポキシ樹脂A10部に代えて、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000HK」、エポキシ基当量約185)10を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートを得た。
【0214】
[比較例3]
エポキシ樹脂A10部に代えて、ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828US」、エポキシ基当量約188)10部を使用した以外は、実施例9と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートを得た。
【0215】
<無機充填材の平均粒径の測定>
無機充填材100mg、分散剤(サンノプコ社製「SN9228」)0.1g、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散した。レーザー回折式粒径分布測定装置(堀場製作所社製「LA-960」)を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。
【0216】
<誘電正接の測定>
実施例及び比較例で得た樹脂シートから保護フィルムを剥がして、200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離した。得られた硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断した。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0217】
<めっき導体層のピール強度の測定>
(1)内層基板の用意
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0218】
(2)樹脂シートの積層
実施例及び比較例で得た樹脂シートから保護フィルムを剥がして、樹脂組成物層を露出させた。バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスして平滑化した。
【0219】
(3)樹脂組成物層の熱硬化
その後、樹脂シートが積層された内層基板を、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで180℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層/内層基板/絶縁層の構造を有する硬化基板を得た。
【0220】
(4)粗化処理
硬化基板を、粗化処理としてのデスミア処理に付した。デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
(湿式デスミア処理)
硬化基板を、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で15分間浸漬し、最後に、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後、80℃で15分間乾燥した。得られた基板を粗化基板と称する。
【0221】
(5)導体層の形成
セミアディティブ法に従って、粗化基板の表面に導体層を形成した。すなわち、粗化基板を、PdClを含む無電解メッキ液に40℃で5分間浸漬し、次いで無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによりパターン形成を行った。その後、硫酸銅電解メッキを行い、厚さ30μmの導体層を形成し、アニール処理を200℃にて60分間行った。得られた基板を評価基板Aと称する。
【0222】
(6)めっき導体層のピール強度の測定
めっき導体層のピール強度の測定は、日本工業規格(JIS C6481)に準拠して行った。具体的には、評価基板Aの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。測定には、引っ張り試験機(TSE社製「AC-50C-SL」)を使用した。
【0223】
<高温高湿環境試験(HAST)後の銅箔ピール強度の測定>
(1)銅箔の下地処理
三井金属鉱山社製「3EC-III」(電界銅箔、35μm)の光沢面をマイクロエッチング剤((メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行い、次いで防錆処理(CL8300)を施した。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。得られた銅箔をCZ銅箔という。
【0224】
(2)内層基板の用意
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0225】
(3)評価基板の作製
実施例及び比較例で得た樹脂シートから保護フィルムを剥がして、樹脂組成物層を露出させた。バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスして平滑化した。平滑化の後、支持体を剥離した。露出した樹脂組成物層上に、CZ銅箔の処理面を、上記と同様の条件で積層した。その後、200℃、90分間の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、CZ銅箔/絶縁層/内層基板/絶縁層/CZ銅箔の構造を有する評価基板Bを作製した。
【0226】
(4)HAST後の銅箔ピール強度の測定
得られた評価基板Bについて、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)を用いて、130℃、85%RHの条件で100時間の高温高湿環境試験を実施した。その後、上述しためっき導体層のピール強度の測定時と同様に、JIS C6481に準拠して、銅箔のピール強度を測定した。すなわち、銅箔の一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機、「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0227】
実施例1~10、比較例1~3の結果を表1に示す。
【0228】
【表1】