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  • 特開-尿道カテーテルシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085317
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】尿道カテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20240619BHJP
   A61B 5/20 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A61M1/00 130
A61M1/00 160
A61B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199784
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇央
(72)【発明者】
【氏名】小山 薫
【テーマコード(参考)】
4C038
4C077
【Fターム(参考)】
4C038DD01
4C077AA19
4C077BB10
4C077DD11
4C077DD12
4C077DD21
4C077DD24
4C077DD26
4C077EE04
4C077HH06
4C077HH20
4C077PP01
4C077PP07
(57)【要約】
【課題】より簡易に膀胱内から採尿する技術を提供する。
【解決手段】一端が膀胱に配置され、前記膀胱に連続する尿道に通され、他端が体外に配置される管と、前記管と外部の管とを接続するコネクタと、前記コネクタに含まれる第1接続部とを有するカテーテル部と、一端が前記カテーテル部の前記管の内部に配置され、前記第1接続部を通され、他端が前記コネクタの外側に配置されるチューブと、前記チューブの他端に接続される第2接続部と、前記第2接続部に接続される、前記膀胱の内部の尿を、前記カテーテル部、前記チューブを介し、負圧を印加して吸引する吸引器とを備え、前記管は、前記膀胱に配置される部分に第1開口部を有し、前記チューブは、前記管の内部に配置される部分に第2開口部を有する、尿道カテーテルシステムとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が膀胱に配置され、前記膀胱に連続する尿道に通され、他端が体外に配置される管と、前記管と外部の管とを接続するコネクタと、前記コネクタに含まれる第1接続部とを有するカテーテル部と、
一端が前記カテーテル部の前記管の内部に配置され、前記コネクタ及び前記第1接続部を通され、他端が前記コネクタの外側に配置されるチューブと、
前記チューブの他端に接続される第2接続部と、
前記第2接続部に接続される、前記膀胱の内部の尿を、前記カテーテル部、前記チューブを介し、負圧を印加して吸引する吸引器とを備え、
前記第1接続部は、前記チューブの外部に密着しており、
前記管は、前記膀胱に配置される部分に第1開口部を有し、
前記チューブは、前記管の内部に配置される部分に第2開口部を有する、
尿道カテーテルシステム。
【請求項2】
前記第2接続部は、前記チューブの側から前記吸引器の側にのみ流体を流す一方向弁を含む、
請求項1に記載の尿道カテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿道カテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
周術期(特に心臓手術)の急性腎障害(AKI;Acute Kidney Injury)は患者予後を
著しく悪化させる。よって、AKIを早期に診断することが求められる。しかし、AKIの診断基準には未だに手術後約72時間後に最大値をとる血清クレアチニン値が使用されており治療の遅れを招いている。腎髄質組織酸素分圧と膀胱内の尿中酸素分圧(PuO2)とはリアルタイムで相関し、急性腎障害の早期診断に役立つ可能性がある。尿道カテーテルの先端に特殊な光ファイバープローベ(以下、「特殊プローベ」)を挿入して、PuO2を連続的にモニタリングする方法で多くの研究者により研究が進められておりAKI予測の有効性も示されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-62073号公報
【特許文献2】特開2022-23991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特殊プローベは、高価であり作成にも時間を要し、器機の故障により測定できない事例もみられることが問題である。特殊プローベを使用せず、より簡易に膀胱内から採尿して、PuO2を測定することが求められる。
【0005】
本件開示の技術は、より簡易に膀胱内から採尿する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
【0007】
即ち、第1の態様は、
一端が膀胱に配置され、前記膀胱に連続する尿道に通され、他端が体外に配置される管と、前記管と外部の管とを接続するコネクタと、前記コネクタに含まれる第1接続部とを有するカテーテル部と、
一端が前記カテーテル部の前記管の内部に配置され、前記第1接続部を通され、他端が前記コネクタの外側に配置されるチューブと、
前記チューブの他端に接続される第2接続部と、
前記第2接続部に接続される、前記膀胱の内部の尿を、前記カテーテル部、前記チューブを介し、負圧を印加して吸引する吸引器とを備え、
前記管は、前記膀胱に配置される部分に第1開口部を有し、
前記チューブは、前記管の内部に配置される部分に第2開口部を有する、
尿道カテーテルシステムとする。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、より簡易に膀胱内から採尿する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の尿道カテーテルシステム10の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、発明の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0011】
〔実施形態〕
ここでは、膀胱内から採尿を確実に行うことのできる膀胱カテーテルについて説明する。採尿された尿から、尿中酸素分圧(PuO2)が測定される。尿中酸素分圧(PuO2)を測定する際には、膀胱内から尿が嫌気的に採尿されることが望ましい。尿中酸素分圧測定の対象の尿が空気に触れると、測定結果に影響を与えることがあるからである。
【0012】
(構成例)
図1は、本実施形態の尿道カテーテルシステム10の構成例を示す図である。図1の尿道カテーテルシステム10は、カテーテル部100、吸引システム200、シリンジ300、採尿バッグシステム400を含む。図1の尿道カテーテルシステム10の一部は、尿道を介して膀胱内に挿入されている。
【0013】
カテーテル部100は、本体部110、先端部120、側孔130、バルーン140、コネクタ150、接続部160を備える。カテーテル部100は、先端部120から尿道に挿入される。本体部110は、内部に尿などの流体、吸引システム200のチューブを通すことができるようになっている。先端部120は、本体部110の一端に連続し、開口部を有さない。先端部120が開口部を有すると、吸引システム200が膀胱壁に直接接し、膀胱壁の組織を直接吸引する可能性がある。先端部120が開口部を有さないことで、吸引システム200がカテーテル部100内に留まり、膀胱壁の損傷リスクが低減される。本体部110、先端部120は、シリコン樹脂、ラテックス、天然ゴムなどによって形成される。本体部110、先端部120は、筒状の弾性を有する管である。側孔130は、本体部110の先端部120の近傍に設けられる開口部である。例えば、側孔130は、先端部120の先端から1mm以上5mm以下の位置に設けられる。側孔130は、本体部110の膀胱に配置される部分に設けられる開口部である。本体部110には、1以上の側孔130が設けられる。膀胱内の流体は、側孔130を介して、本体部110の内部に入ることができる。バルーン140は、本体部110を膀胱内に固定する部材である。バルーン140は、本体部110の側孔130よりもコネクタ150側で、本体部110の外側に設けられる。バルーン140は、図示しない送出管路などによって気体や液体を導入されて膀胱内で膨張されることにより、膀胱内に本体部110を固定する。コネクタ150は、本体部110の他端と採尿バッグシステム400とを接続するコネクタである。膀胱から側孔130、本体部110を介して流れた尿は、コネクタ150の内部を通って、採尿バッグシステム400に流れる。本体部110とコネクタ150との接続部分は密着され、本体部110、コネクタ150の内部を流れる尿が当該接続部分から外に漏れないようにされる。また、コネクタ150と採尿バッグシステム400との接続部分は密着され、コネクタ150、採尿バッグシステム400の内部を流れる尿が当該接続部分から外に漏れないようにされる。本体部110とコネクタ150とは、一体化してもよい。また、コネクタ150と採尿バッグシステム400とは、一体化してもよい。
【0014】
接続部160は、本体部110内部の吸引システム200のチューブを、コネクタ150の内部から外部に導く部材である。接続部160は、コネクタ150に設けられ、本体部110の内部の流体が外に漏れないように、吸引システム200のチューブをコネクタ150の内部から外部に導く。接続部160は、例えば、コネクタ150の内部と外部を繋ぐ開口部に弾性を有する樹脂(天然ゴム等)などによる栓をしたものである。また、当該栓には、吸引システム200のチューブが通る穴やスリットが開けられている。例えば
、接続部160において、弾性を有する樹脂で吸引システム200のチューブを覆うことにより、本体部110の内部の流体が外に漏れないようにする。即ち、接続部160は、吸引システム200のチューブの外部に密着している。接続部160が吸引システム200のチューブの外部に密着することで、コネクタ150の内部の流体(尿)が接続部160を介して外部に漏れることがない。接続部160の構成は、他の構成であってもよい。また、本体部110に挿入される吸引システム200のチューブの長さを変えられ、吸引システム200の先端部220をより先端部120に近い位置に留置できるように、吸引システム200のチューブは、接続部160に固定されない。コネクタ150、接続部160は、体外に配置される。また、接続部160と吸引システム200のチューブとの間に弾性を有する樹脂が入れられてもよい。さらに、弾性を有する樹脂がねじ式の部品などで圧迫されてもよい。弾性を有する樹脂がねじ式の部品などで圧迫されることにより、接続部160と吸引システム200のチューブとを固定しつつ、外部の空気や尿が、コネクタ150の内部と外部との間を通過しにくい構造を作り出すことができる。コネクタ150と接続部160とは、一体化してもよい。
【0015】
吸引システム200は、本体部210、先端部220、接続部230を備える。本体部210は、筒状の弾性を有する管(チューブ)である。本体部210は、カテーテル部100の本体部110の内部を通り、内部に尿などの流体を通すことができるようになっている。本体部210の内径は、例えば、0.5mm以上2mm以下である。吸引システム200のチューブの外径は、カテーテル部100の本体部110の内径よりも細い。先端部220は、本体部210の一端に連続し、複数の開口部を有する。即ち、吸引システム200のチューブ(本体部210、先端部220)は、カテーテル部100の管(本体部110、先端部120)の内部に配置される部分に複数の開口部を有する。吸引システム200のチューブの外部の流体は、当該開口部を介して当該チューブの内部に入ることができる。吸引システム200のチューブとして、例えば、臨床で使用されている硬膜外カテーテル用チューブが使用され得る。本体部210及び先端部220は、シリコン樹脂、ラテックス、天然ゴムなどによって形成される。
【0016】
本体部210は、カテーテル部100の接続部160を介して、本体部110の外部に導かれる。接続部230は、本体部210の他端とシリンジ300とを流体が通るように接続する。接続部230は、流体が膀胱側からシリンジ300側にのみ流れる一方向弁を含む。接続部230には、チューブとシリンジ300とを接続する周知に部材が使用され得る。シリンジ300は、接続部230から着脱可能である。吸引システム200の先端部220は、カテーテル部100の先端部120の近傍に達する。コネクタ150には、カテーテル部100の管や採尿バッグシステム400の管が接続されるため、コネクタ150から気体が内部に入りやすくなっている。吸引システム200の先端部220をカテーテル部100の先端部120の近傍に配置することで、吸引システム200の先端部220の開口部がコネクタ150等から遠くなる。これにより、吸引システム200を介して吸引される尿に気体が触れることを低減することができる。
【0017】
シリンジ300は、ピストンを移動させることにより、内部に負圧を印加して、本体部210内部の流体を吸引する吸引器である。シリンジ300は、吸引器の例である。シリンジ300の代わりに他の吸引器が使用されてもよい。シリンジ300によって、吸引された尿は、尿中酸素分圧測定に使用される。接続部230に一方向弁が含まれることにより、シリンジ300は、嫌気的に尿を採取することができ、また細菌などの有害物質を膀胱内に誤注入することを防ぐことができる。また、シリンジ300を使用することで、短時間に尿を採取することができる。
【0018】
採尿バッグシステム400は、膀胱から排出される尿をカテーテル部100の本体部110を介して、採尿する部材である。採尿バッグシステム400は、筒状の管と図示しな
い尿バッグとを含む。採尿バッグシステム400の管の一端は、接続部160に接続されて、本体部110からの尿が通される。採尿バッグシステム400の管の他端は、採尿バッグに接続される。採尿バッグシステム400は、膀胱から排出される尿を接続部160から尿バッグに誘導する。採尿バッグシステム400の尿バッグは、当該尿を蓄尿する。採尿バッグシステムの管は、コネクタ150に接続される外部の管の例である。
【0019】
(尿吸引)
ここでは、尿道カテーテルシステム10による膀胱からの尿吸引について説明する。吸引された尿は、例えば、尿中酸素分圧測定に使用される。
【0020】
尿道カテーテルシステム10のカテーテル部100の先端部120は、尿道を介して膀胱に挿入される。カテーテル部100の本体部110の内部には、あらかじめ、吸引システム200のチューブ(本体部210、先端部220)が挿入されている。吸引システム200のチューブ(本体部210、先端部220)は、カテーテル部100が膀胱に挿入された後に、挿入されてもよい。カテーテル部100のバルーン140まで膀胱に挿入されると、バルーン140に気体または液体を注入してバルーン140を膨張させて、カテーテル部100を膀胱に固定する。
【0021】
カテーテル部100が膀胱に固定されると、吸引システム200の接続部230にシリンジ300を接続する。シリンジ300のピストンを移動させることにより、吸引システム200のチューブの内部に負圧を印加して、尿を吸引する。最初に吸引した尿は、シリンジ300を取り外して、廃棄されてもよい。最初に吸引した尿は、本体部210内に残存する尿や不純物を含むおそれがあるからである。最初に吸引した尿を廃棄した後、測定用のシリンジを接続部230に接続する。測定用のシリンジのピストンを移動させることにより、吸引システム200のチューブの内部に負圧を印加して、尿を吸引する。吸引した尿は、測定用のシリンジに溜まる。測定用のシリンジ内に吸引された尿は、尿中酸素分圧測定に使用される。これにより、膀胱内の尿を、空気に触れることなく採取することができる。
【0022】
(その他)
外腔先端に開口部を有する注入ルーメン、排液ルーメン、及び、バルーンルーメンを備える周知の3wayカテーテルの注入ルーメンを、上記の吸引システム200に改良してもよい。即ち、3wayカテーテルの注入ルーメンの外腔先端の開口部を内腔に設けることで、注入ルーメンを吸引システム200のチューブとして使用することができる。当該注入ルーメンには、吸引システム200の接続部230を介してシリンジ300または測定用のシリンジが接続されて、膀胱から尿が吸引され得る。
【0023】
(実施形態の作用、効果)
本実施形態の尿道カテーテルシステム10は、人の膀胱から尿を嫌気的に吸引する。吸引された尿は、尿中酸素分圧測定に使用される。嫌気的に採尿することで、より正確に尿中酸素分圧を測定することができる。尿道カテーテルシステム10によれば、膀胱から尿を吸引することで、排尿を待つことなく、容易に嫌気的に尿を採取することができる。また、尿道カテーテルシステム10によれば、膀胱に尿中酸素分圧測定に使用する特殊プローベを挿入することなく、尿中酸素分圧を測定することができる。尿道カテーテルシステム10によれば、カテーテル部100の管の内部に、吸引用の吸引システム200のチューブを通すことで、より確実に、嫌気的に採尿をすることができる。
【0024】
以上の各実施形態は、可能な限りこれらを組み合わせて実施され得る。
【符号の説明】
【0025】
10 :尿道カテーテルシステム
100 :カテーテル部
110 :本体部
120 :先端部
130 :側孔
140 :バルーン
150 :コネクタ
160 :接続部
200 :吸引システム
210 :本体部
220 :先端部
230 :接続部
300 :シリンジ
400 :採尿バッグシステム
図1