(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085320
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】塗布具及びロール体
(51)【国際特許分類】
A61M 35/00 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199791
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】522487273
【氏名又は名称】野村 真木
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野村 真木
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA65
4C267CC01
4C267GG16
(57)【要約】
【課題】手が届きにくい患部に対し他人の手を借りず独力で且つ的確に皮膚外用剤を塗布することができ、更に使い勝手が良好な塗布具を提供する。
【解決手段】皮膚外用剤を皮膚に塗布するための塗布具100であって、シート120と、シート120がロール状に巻かれた巻芯130とを有するロール体110と、ロール体110の少なくとも一方の端部側から延びた支持体150とを備え、シート120は、皮膚外用剤が塗布されるための、外側を向く剥離層122と、内側を向く粘着層126とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚外用剤を皮膚に塗布するための塗布具であって、
シートと、該シートがロール状に巻かれた巻芯とを有するロール体と、
前記ロール体の少なくとも一方の端部側から延びた支持体とを備え、
前記シートは、前記皮膚外用剤が塗布されるための、外側を向く剥離層と、内側を向く粘着層とを有する、塗布具。
【請求項2】
前記シートは、該シートの長手方向に所定の間隔で配列されるとともに、幅方向に沿って形成された複数の切断用のミシン目を有する、請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記巻芯が円筒形状であり、
前記支持体は、前記ロール体の一方の端部側から該巻芯の中心軸方向に沿って延びた、請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
シートと、該シートがロール状に巻かれた巻芯とを有するロール体であって、
前記シートは、皮膚外用剤が塗布されるための、外側を向く剥離層と、内側を向く粘着層とを有する、ロール体。
【請求項5】
前記シートは、該シートの長手方向に所定の間隔で配列されるとともに、幅方向に沿って形成された複数の切断用のミシン目を有する、請求項4に記載のロール体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布具及びロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚外用剤を皮膚(特に患部)に塗布するために、自らの手で塗布している。しかしながら、手が届きにくい背中や腰等の患部に皮膚外用剤を塗布するために、無理な姿勢で自ら塗布するか、他人の手を借りて塗布する必要がある。
【0003】
手の届きにくい背中や腰等の患部に対し楽な姿勢で皮膚外用剤を自ら塗布することができる技術としては、例えばハンドル部材を用いた塗布具が知られている。例えば、特許文献1には、「ハンドル部材(1)と回転体(5)を備え、さらに、該回転体(5)は、一面(6)に平滑な軟膏ぬり面(3)を有し、他面(7)に複数の掻き用突起部(8)から成るまごの手部(4)を有し、上記回転体(5)を上記ハンドル部材(1)の先端(2)に、軟膏ぬり面(3)とまごの手部(4)とを回転切換自在に取付けたことを特徴とする軟膏ぬり具。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、患部に対し2種類の皮膚外用剤を重ねて塗布することがある。特許文献1では、軟膏ぬり具を用いて患部に皮膚外用剤を塗布し、再度、別種の皮膚外用剤を回転体の軟膏ぬり面に塗布する場合、別種の皮膚外用剤を塗布する前に軟膏ぬり面を予め洗浄しておく必要がある。洗浄時には、回転体から軟膏ぬり面を有する軟膏ぬり体を一度、取り外さなければならない(特許文献1の段落0019参照)。そのため、特許文献1の軟膏ぬり具は、使い勝手が良いと言い難い。
【0006】
上記事情を勘案し、特許文献1の公知技術を改良することが要求されている。
【0007】
そこで、本発明の一実施形態では、手が届きにくい患部に対し他人の手を借りず独力で且つ的確に皮膚外用剤を塗布することができ、更に使い勝手が良好な塗布具を提供することを目的の一つとする。また、広範囲に手軽に皮膚外用剤を塗り伸ばすことが可能な塗布具を提供することを別の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討した結果、塗布具は、シートと、該シートがロール状に巻かれた巻芯とを有するロール体と、ロール体の少なくとも一方の端部側から延びた支持体とを備え、上記シートが、皮膚外用剤が塗布されるための、外側を向く剥離層と、内側を向く粘着層とを有することが有用であることを見出した。
【0009】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
皮膚外用剤を皮膚に塗布するための塗布具であって、
シートと、該シートがロール状に巻かれた巻芯とを有するロール体と、
前記ロール体の少なくとも一方の端部側から延びた支持体とを備え、
前記シートは、前記皮膚外用剤が塗布されるための、外側を向く剥離層と、内側を向く粘着層とを有する、塗布具。
[2]
前記シートは、該シートの長手方向に所定の間隔で配列されるとともに、幅方向に沿って形成された複数の切断用のミシン目を有する、[1]に記載の塗布具。
[3]
前記巻芯が円筒形状であり、
前記支持体は、前記ロール体の一方の端部側から該巻芯の中心軸方向に沿って延びた、[1]又は[2]に記載の塗布具。
[4]
シートと、該シートがロール状に巻かれた巻芯とを有するロール体であって、
前記シートは、皮膚外用剤が塗布されるための、外側を向く剥離層と、内側を向く粘着層とを有する、ロール体。
[5]
前記シートは、該シートの長手方向に所定の間隔で配列されるとともに、幅方向に沿って形成された複数の切断用のミシン目を有する、[4]に記載のロール体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、手が届きにくい患部に対し他人の手を借りず独力で且つ的確に皮膚外用剤を塗布することができ、更に使い勝手が良好な塗布具を提供することができる。また、広範囲に手軽に皮膚外用剤を塗り伸ばすことが可能な塗布具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る塗布具を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る塗布具に備わるロール体を軸方向一方側から見た正面図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明に係る塗布具に備わるロール体のシートの拡大断面図であり、
図3(B)は、本発明に係る塗布具に備わるロール体のシートの変形例の拡大断面図である。
【
図4】本発明に係る塗布具に備わるロール体が剥離層を外側にして巻かれたシートを模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)~(C)は、本発明に係る塗布具の使用例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0013】
[塗布具]
図1に示す塗布具100の具体的な構造について以下に詳述する。塗布具100は、シートと、該シート120がロール状に巻かれた巻芯とを有するロール体110と、ロール体110の少なくとも一方の端部側から延びた支持体150とを備え、シート120は、皮膚外用剤が塗布されるための、外側を向く剥離層122と、内側を向く粘着層とを有する。当該塗布具100によれば、そのロール体の剥離層122の表面に皮膚外用剤を塗布した後、手が届きにくい背中又は腰等の患部に他人の手を借りず独力で且つ的確に皮膚外用剤を塗布することができる。また、当該塗布具100は、例えば背中の広範な領域に対し手軽に皮膚外用剤を塗布することができる。また、シート120から皮膚外用剤が塗布された使用後シートを切断目印線121に沿って引き剥がし、それを廃棄すればよいので、使い勝手が良好である。また、使用後シートを引き剥がした後、次回以降に未使用であるシート120に皮膚外用剤を塗布するので、衛生性が良好である。さらに、当該塗布具100は、患部に皮膚外用剤を塗布するだけでなく、2種類の皮膚外用剤を重ねて塗布することにも適してる。なお、皮膚外用剤としては、例えば軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、フォーム剤及び泡タイプ等が挙げられ、中でも軟膏剤、クリーム剤及びローション剤が好適である。
【0014】
(ロール体)
図2に示すように、ロール体110は、全体として略円筒状に形成されている。このロール体110は、帯状のシート120と、該シート120がロール状に巻かれた巻芯130とを有する。すなわち、ロール体110は、巻芯130の径方向外側に複数のシート120が積層されている。
【0015】
(シート)
図3(A)に示すように、シート120は、紙やプラスチック等の基材124と、基材124の一方の表面に、皮膚外用剤が塗布されるための、外側(巻芯130側と反対側)を向く剥離層122と、基材124のもう一方の表面(剥離層122と反対側の表面)に、内側を向く粘着層126とを有する。すなわち、シート120は、その剥離層122の表面が外側へ露出状態となるように巻き付けられている。
ここで、剥離層122は、シリコーン系樹脂等を含有していればよく、粘着層126は、アクリル系樹脂等を含有していればよい。基材124の一方の表面の全面にわたって剥離層122を有し、且つ基材124のもう一方の表面の全面にわたって粘着層126を有してもよい。
また、
図3(B)に示すように、基材124のもう一方の表面の幅方向の端縁125に粘着層126を有さなくてもよい。これにより、使用後シートを使用者の手でつまみ易くすることで、未使用であるシート120から使用後シートを容易に切り離すことができる。
【0016】
また、
図1に示すように、シート120は、切断の目印となる切断目印線121を有する。例えば、
図4に示すように、切断目印線として、シート120は、その長手方向に所定の間隔で配列されるとともに、幅方向に沿って形成された複数の切断用のミシン目121aを有している。これにより、未使用のシート120から使用後シートをミシン目121aに沿って容易に引き剥がすことができる。なお、ミシン目121aの配列については、上記態様に限定されるものではない。
【0017】
(巻芯)
巻芯130は、円筒形状であって、内周面側に中空部132を有する。本発明では、ロール状であるシート120の粘着層126は、内側を向いているので、巻芯130の外周面は、粘着層126と接着されている。また、上記中空部132には、回転体170が挿入される。
なお、巻芯は、例えば紙、プラスチックや金属等で構成されている。
【0018】
(ロール体の作製例)
ロール体の作製方法の一例として以下に簡潔に記述する。
まず、帯状の基材124の一方の表面に、シリコーン系樹脂等の剥離剤を用いて既存の処理を施すことで剥離層122が形成される。次いで、基材124のもう一方の表面に、アクリル系樹脂等の粘着剤を用いて既存の処理を施すことで粘着層126が形成される。これにより、一方の表面に剥離層122と、もう一方の表面に粘着層126とを有する、帯状のシート120が得られる。なお、剥離層122を粘着層126より先に形成しているが、粘着層126を剥離層122より先に形成してもよく、剥離層122及び粘着層126を同時に形成してもよい。また、剥離層122及び粘着層126の形成については、公知の方法にて対応可能である。
次に、帯状のシート120の粘着層126を、巻芯130の外周面と接着させた後、帯状のシート120を巻芯130の中空部132に挿入させたリール等で巻き取る。このとき、巻芯130の軸心方向の長さとシート120の幅方向の幅とがほぼ揃うように位置合わせを行う。これにより、表面が外側に露出状態である剥離層122を有するロール体110が得られる。
【0019】
(支持体)
図1及び
図4に示すように、支持体150は、棒部材160と、該棒部材160の一方の端部に設けられ、ロール体110の巻芯130の中空部132に挿通された回転体170と、該棒部材160のもう一方の端部に設けられた把持部180とを有する。また、支持体150は、ロール体110の一方の端部側から延びている。
【0020】
(棒部材)
棒部材160は、ロール体110の一方の端部側から円筒形状の巻芯130の中心軸方向に沿って延びている。これにより、手が届きにくい背中や腰の患部に対しより確実に皮膚外用剤を塗布することができる。また、棒部材160については、長さを調節する伸縮機構(不図示)を有してもよい。
なお、棒部材160については、変形例として公知であるアーム状部材であってもよい。
【0021】
(回転体)
回転体170は、既存の構造でよく、例えば、棒部材160を挿通するための軸受孔(不図示)を有する。該軸受孔には、棒部材160が挿通される。回転体170の断面形状は円形であり、回転体170の中心軸が回転軸となる。したがって、本発明の塗布具100では、回転体170が周方向に回転することで、該回転体170が挿入された巻芯130を有するロール体110は、該回転体170と一体となって揺動しながら回転する。このとき、回転体170の外周面と、巻芯130の内周面との隙間は、ほぼ無いことが好適である。
【0022】
(把持部)
把持部180は、使用者の手で握り易く且つ塗布具100の使用時に意図せずに手から離れることを防ぐ観点から、中心軸方向の外側に向かって拡径していてもよい。すなわち、把持部180の形状としては、例えば円錐台が挙げられる。また、上記観点と同様、把持部180の表面には、複数の突起部をランダムに配列してもよい。
【0023】
なお、棒部材160、回転体170及び把持部180については、プラスチックや金属等で構成されていればよい。
【0024】
[使用例]
本発明の塗布具100の使用例について、
図5(A)~(C)を用いて以下説明する。
まず、
図5(A)に示すように、塗布具100のロール体110のシート120の剥離層122の表面の少なくとも一部に所定量の皮膚外用剤Eを塗布する。このとき、剥離層122の表面の全面にわたって、皮膚外用剤Eを塗布してもよい。
次に、
図5(B)に示すように、使用者が手で塗布具100の把持部180を握って、使用者の手では届きにくい背中の肩甲骨付近に存在する患部にロール体110の剥離層122を介して皮膚外用剤Eを塗布する。このとき、塗布具100の回転体170が周方向に回転することで、該回転体170が挿通された巻芯130を有するロール体110は、該回転体170と一体となって回転しながら、矢印方向(図示上、左右方向)に移動することにより、剥離層122の表面に塗布された皮膚外用剤Eを背中の肩甲骨付近に存在する患部に塗布することができる。また、使用者は皮膚外用剤Eが塗布された剥離層122を有するロール体110を回転させながら所定の領域内で複数回往復させることにより、皮膚外用剤Eを当該領域内に万遍なく塗布することができる。また、使用者は、皮膚外用剤Eが塗布された剥離層122を有するロール体110の回転により、広範囲に手軽に皮膚外用剤Eを塗り伸ばすことができる。また、使用者は、剥離層122の表面に皮膚外用剤Eが塗布されていることにより、自身の皮膚に違和感を持たず皮膚外用剤Eを患部に塗布することができる。また、使用者は、支持体150がロール体110の一方の端部側から延びていることにより、手が届きにくい患部に皮膚外用剤Eを塗布することができる。
次に、
図5(C)に示すように、塗布具100で患部に皮膚外用剤Eを塗布した後、皮膚外用剤Eが塗布された使用後シート128を、未使用であるシート120からミシン目121aに沿って容易に引き剥がすことができる。引き剥がした使用後シート128を廃棄すればよいので、使い勝手が良好である。また、使用後シートを引き剥がした後、次回以降に未使用であるシート120に皮膚外用剤を塗布するので、衛生性が良好である。
なお、当該塗布具100によれば、使用者が椅子やベッドの上に腰掛けていたとしても、手が届きにくい患部に皮膚外用剤Eを塗布することができる。
【符号の説明】
【0025】
100 塗布具
110 ロール体
120 シート
121 切断目印線
121a ミシン目
122 剥離層
124 基材
125 端縁
126 粘着層
128 使用後シート
130 巻芯
132 中空部
150 支持体
160 棒部材
170 回転部
180 把持部
E 皮膚外用剤