(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085327
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】ブランケット、および、ブランケットの面取り装置
(51)【国際特許分類】
B41N 10/04 20060101AFI20240619BHJP
B41C 1/055 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B41N10/04
B41C1/055 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199805
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】高取 偉織
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 明
【テーマコード(参考)】
2H084
2H114
【Fターム(参考)】
2H084CC06
2H114AA05
2H114CA04
2H114DA46
2H114EA08
(57)【要約】
【課題】 水なし平版印刷において刷版への傷付与性が低く、従って刷版に高い耐刷性が得られ、その結果、高い印刷効率が得られるブランケットおよびこのブランケットを得るためのブランケットの面取り装置を提供すること。
【解決手段】 ブランケットは、水なし平版印刷機のブランケットホイールの外周面に装着され、版胴上の刷版と回転接触することにより一面上にインク画像が形成される平板状のブランケットであって、前記インク画像が形成される一面を有する最外層がゴム層よりなり、前記ブランケットホイールの外周面上に装着されたときに刷版との回転接触方向に延びる両側縁の少なくとも一方における前記一面側の角縁部が、面取りされた傾斜面よりなることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水なし平版印刷機のブランケットホイールの外周面に装着され、版胴上の刷版と回転接触することにより一面上にインク画像が形成される平板状のブランケットであって、
前記インク画像が形成される一面を有する最外層がゴム層よりなり、
前記ブランケットホイールの外周面上に装着されたときに刷版との回転接触方向に延びる両側縁の少なくとも一方における前記一面側の角縁部が、面取りされた傾斜面よりなることを特徴とするブランケット。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記ゴム層に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブランケット。
【請求項3】
前記傾斜面が30~40°の角度を有することを特徴とする請求項1に記載のブランケット。
【請求項4】
前記ゴム層の厚みは200~400μmであることを特徴とする請求項1に記載のブランケット。
【請求項5】
前記ブランケットが、前記ゴム層の直下に布層を有する積層体よりなり、
前記傾斜面は、前記ゴム層のみに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブランケット。
【請求項6】
水なし平版印刷機のブランケットホイールの外周面に装着され、版胴上の刷版と回転接触することにより一面上にインク画像が形成される平板状のブランケットの側縁における前記一面側の角縁部を面取りするための面取り装置であって、
前記ブランケットの側縁に対する、前記ブランケットの側縁を研磨する研磨工具の相対角度を規定する角度規定機構と、
前記ブランケットと、前記角度規定機構によって決定された角度で前記ブランケットの側縁に接触させた前記研磨工具とを、前記ブランケットの側縁に沿って相対的に移動させる位置決め移動機構とを有することを特徴とするブランケットの面取り装置。
【請求項7】
前記位置決め移動機構が、搬送路において搬送されるブランケットの姿勢を保持する姿勢保持ガイド部材を有することを特徴とする請求項6に記載のブランケットの面取り装置。
【請求項8】
前記ブランケットと前記研磨工具との相対的な移動速度が1~5cm/secとされることを特徴とする請求項6に記載のブランケットの面取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水なし平版印刷機に用いる面取り処理されたブランケット、およびブランケットの面取り処理を行うことができるブランケットの面取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の内容物を収容可能な2ピース缶に各種の印刷を施す印刷システムにおいては、印刷層は、一般にオフセット方式の印刷機で缶体の外周面に施される。このようなオフセット印刷機においては、版胴上の刷版と、刷版から回転接触によりインキ層を受領してこれを缶体胴部に転写させるためのブランケットとが用いられ、その印刷方式としては、従来、刷版が樹脂凸版であるドライオフセット印刷が用いられてきたが、近年では、文字再現や網点による階調再現において優れている刷版が水なし平版である水なし平版印刷が試みられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところが、水なし平版印刷に用いられる刷版においては、特許文献1に開示されているように、非画線部がインキ反発性のシリコーン樹脂層で形成されており、シリコーン樹脂層が比較的軟らかい材料であることから、印刷時にブランケットのエッジが接触する箇所で版面に傷付きが発生しやすい、という問題がある。水なし平版オフセット印刷では、版面のシリコーン樹脂層が非画線部となり、このインキ反発性を利用して印刷が行われているため、シリコーン樹脂層の傷付きによりインキ反発性が部分的に失われると、本来非画線部であるべき部分にインキが転移し、その結果、得られる印刷物にインキ汚れが生じて印刷精度が低くなる、という問題点がある。すなわち、水なし平版印刷においては、従来の樹脂凸版を用いた印刷と比較して、耐刷性において大幅に劣っているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、水なし平版印刷において刷版への傷付与性が低く、従って刷版に高い耐刷性が得られ、その結果、高い印刷効率が得られるブランケットおよびこのブランケットを得るためのブランケットの面取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のブランケットは、水なし平版印刷機のブランケットホイールの外周面に装着され、版胴上の刷版と回転接触することにより一面上にインク画像が形成される平板状のブランケットであって、
前記インク画像が形成される一面を有する最外層がゴム層よりなり、
前記ブランケットホイールの外周面上に装着されたときに刷版との回転接触方向に延びる両側縁の少なくとも一方における前記一面側の角縁部が、面取りされた傾斜面よりなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のブランケットにおいては、前記傾斜面は、前記ゴム層に形成されていることが好ましい。
また、前記傾斜面が30~40°の角度を有することが好ましい。
また、前記ゴム層の厚みは200~400μmであることが好ましい。
【0008】
また、本発明のブランケットにおいては、前記ブランケットが、前記ゴム層の直下に布層を有する積層体よりなり、
前記傾斜面は、前記ゴム層のみに形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明のブランケットの面取り装置は、水なし平版印刷機のブランケットホイールの外周面に装着され、版胴上の刷版と回転接触することにより一面上にインク画像が形成される平板状のブランケットの側縁における前記一面側の角縁部を面取りするための面取り装置であって、
前記ブランケットの側縁に対する、前記ブランケットの側縁を研磨する研磨工具の相対角度を規定する角度規定機構と、
前記ブランケットと、前記角度規定機構によって決定された角度で前記ブランケットの側縁に接触させた前記研磨工具とを、前記ブランケットの側縁に沿って相対的に移動させる位置決め移動機構とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のブランケットの面取り装置においては、前記位置決め移動機構が、搬送路において搬送されるブランケットの姿勢を保持する姿勢保持ガイド部材を有することが好ましい。
【0011】
本発明のブランケットの面取り装置においては、前記ブランケットと前記研磨工具との相対的な移動速度が1~5cm/secとされることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブランケットによれば、側縁に傾斜面を有することにより、刷版に対して凸となるエッジが面取りされていることになるので、水なし平版印刷機の刷版と接触したときの刷版への傷付与性が極めて低くなり、従って刷版に高い耐刷性が得られ、その結果、刷版の交換頻度を低くすることができて水なし平版印刷機に高い印刷効率が得られる。
また、最外層であるゴム層のみに傾斜面が形成されたブランケットによれば、ゴム層の下層が布層である構成のブランケットであっても繊維クズ等が露出することがないので、刷版に繊維クズによる画像不良が生じることや、繊維クズによる刷版への傷付与を防止することができ、刷版により高い耐刷性を与えることができる。
【0013】
本発明のブランケットの面取り装置によれば、ブランケットとこのブランケットの側縁を研磨する研磨工具とが、ブランケットの側縁に沿って相対的に移動されるので、上記ブランケットを簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のブランケットが適用される印刷機の構成を示す説明図である。
【
図2】本発明のブランケットが適用される水なし平版印刷機の版胴上の刷版を説明するための模式図である。
【
図3】本発明のブランケットの構成の一例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のX-X線断面の一部を示す断面図である。
【
図4】本発明のブランケットの構成の別の例を示す説明図である。
【
図5】本発明のブランケットの面取り装置の構成の一例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図6】本発明のブランケットの面取り装置の構成の別の一例を示す説明用平面図である。
【
図7】本発明のブランケットの面取り装置の構成のさらに別の一例を示す説明用平面図である。
【
図8】実施例1に係るブランケットの断面を示す写真である。
【
図9】比較例1に係るブランケットの断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るブランケットおよびブランケットの面取り装置の実施の形態について,
図1~
図7を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態に係る水なし平版印刷機は、2ピース缶を被印刷体として缶体の外周面に印刷するものであって、ブランケットホイール1の外周面に沿って8個の版胴2が固定位置に配置された、8色重ね刷りが可能なオフセット印刷機である。この印刷機における版胴2の各々には、各色のインキ装置3が配置されている。この印刷機において、版胴2の各々には、各色のデザイン画像の刷版20が装着され、各版胴2が回転することによって、各版胴2上の刷版20の外周面にインキ装置3からインキが転移され、各刷版20の版面の画線部に相当する箇所にインキが付着する。従って、ブランケットホイール1が回転すると、当該ブランケットホイール1に装着されたブランケット10のブランケット面と刷版20の版面とが順次回転接触することにより、ブランケット面には多色のインク画像が形成される。
【0016】
一方、印刷対象である2ピース缶等の缶体は、インフィードシュート5からターレットホイール6に供給され、ターレットホイール6の回転に応じて図示しないマンドレルホイールのマンドレルに嵌合移載され、回転するブランケットホイール1と回転接触することによって、ブランケット面上に形成された画像が缶体の周面に転写されて印刷される。なお、
図1において、7は、印刷が施された缶体の周面に仕上げワニスを塗布するためのアプリケーターローラであり、8は、移載用トランスファディスクであり、印刷が終了して仕上げワニスが塗装された缶体が、マンドレルホイールから移載用トランスファディスク8に受け渡され、次工程に送られる。
【0017】
版胴2に装着される刷版20は、
図2に示されるように、インキがのらない非画線部がシリコーン樹脂層等にて形成された水なし平版であり、具体的には、例えば、アルミベース21上に、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等の疎水性樹脂からなるインキ反発層による非画線部22と、疎水性樹脂がなくインクがのる画線部23とにより構成されたものである。すなわち、水なし平版は、アルミベース21上に非画線部22が相対的に凸部として形成され、画線部23が相対的に凹部として形成されている。
【0018】
ブランケットホイール1に装着されるブランケット10は、最外層にゴム層11を有するものであり、例えば、ゴム製のシートと布製のシートにスポンジゴムなどの圧縮層材料を介層させたエアーブランケット(エアークッションブランケット)が挙げられる。本実施形態に係るブランケット10は、具体的には、剥離紙を剥離することによって貼り付け対象(ブランケットホイール)に接着することができる剥離紙付きの糊層16、繊維体よりなる布層15、多孔質のクッション層14、繊維体よりなる布層13がこの順に積層された支持体層12と、この支持体層12上に設けられたゴム層11とを有するものである。
ブランケット10においてはゴム層11の外表面が、インク画像が形成される一面(ブランケット面)となる。
ゴム層11の厚みは、例えば200~400μmである。
また、ブランケット10の全体の厚みは、例えば1.00~3.00mmである。
なお、本発明のブランケット10は、エアーブランケットの構成であることに限定されず、公知の種々の構成のブランケットに適用することができる。
【0019】
ブランケット10は、ブランケットホイール1の外周面に貼り付け可能な可撓性を有するものであって、
図3に示されるように、水平に展開すると矩形平板状となるものである。
そして、刷版20の版面との回転接触方向(
図3(a)において両矢印で示す。)に延びる両側縁19,19におけるブランケット面側の角縁部が、各々面取りされた傾斜面18により形成されている。すなわち、側縁19とブランケット面とが傾斜面18によって接続されている。ブランケット10に傾斜面18が形成されていることにより、両側縁19,19のエッジが落とされた状態とされる。
傾斜面18は、ブランケット面から、その反対側の基板16の裏面(
図3(b)において下方)に向かうに従って両側縁19,19の外方(
図3(b)において左方)に位置する状態に全体的に傾斜する面である。本実施形態において、傾斜面18は、おおよそ平面からなるが、そのブランケット面側の端部は、上外方(
図3(b)において左上方)に凸となるR面部18aを介してブランケット面に接続している。これにより、刷版20に対してエッジが立っている状態となることが防止される。なお、傾斜面18は、ブランケット面と傾斜面18の角度が十分な鈍角となって刷版20への傷付与が生じないのであれば、完全に平面から形成されていてもよい。また、本発明のブランケット10においては、
図4(a)に示すように、傾斜面は、例えば上外方に凸となるR面のみからなる傾斜面18Aとして構成されていてもよく、
図4(b)に示すように、側縁19側が下内方に凸となるR面であり、ブランケット面側が上外方に凸となるR面である複数の曲面の組み合わせ面である傾斜面18Bとして構成されていてもよい。さらに、平面と各種曲面の組み合わせであってもよい。
【0020】
傾斜面18の傾斜角θは、例えば側縁19に沿った方向から30~40°であることが好ましい。傾斜面18が曲面部分を含むものである場合、傾斜角θは、ブランケット10の縦断面において、側縁19に沿った直線に対する、ブランケット面の端縁g1と側縁19の端縁g2を結ぶ直線の角度として規定される。
また、傾斜面18は、ゴム層11にのみ形成されていることが好ましい。すなわち、側縁19の端縁g2がゴム層11内に存在していることが好ましい。
【0021】
〔ブランケットの面取り装置〕
本発明の面取り装置30は、以上のようなブランケット10を作製することができるものである。
面取り装置30は、
図5に示されるように、ブランケット10の側縁19を研磨する研磨工具31と、ブランケット10の側縁19に対する研磨工具31の相対角度を規定する角度規定機構と、このブランケット10および角度規定機構によって決定された角度でブランケット10の側縁19に接触させた研磨工具31を、ブランケット10の側縁19に沿って相対的に移動させる位置決め移動機構とを有する。
角度規定機構においては、ブランケット10に形成すべき傾斜面18が、30~40°の傾斜角となるような角度で研磨工具31をブランケット10に対向させる。具体的には、研磨工具31の角度を自在に設定することができるように、面取り装置30の設置面(水平面)に対して研磨工具31の支持ロッドを上下方向、左右方向(搬送路32の方向)、前後方向(搬送路32に垂直な水平方向)、円周方向に調整可能で、さらに、研磨工具31の角度も調整可能な構成とした。
位置決め移動機構は、ブランケット10を搬送する搬送路32と、搬送路32において搬送されるブランケット10の姿勢を保持可能な姿勢保持ガイド部材33とを備え、搬送路32上には、角度規定機構によって規定された角度で研磨工具31が固定的に配置されている。
位置決め移動機構において、ブランケット10または研磨工具31若しくはその両方を移動させる具体的な方法としては、適宜の公知の機構を採用することができる。本実施形態においては、ブランケット10を搬送路32に沿って移動させるが、機械的に移動させてもよく、手動で移動させてもよい。
【0022】
位置決め移動機構の姿勢保持ガイド部材33は、搬送路32の構成する載置台34と、この載置台34上に被研磨体であるブランケット10を載置したときに、一方の側縁19に沿う状態に配置された側縁規制部35と、ブランケット10のブランケット面に接触して面接触するブランケット面規制部36とよりなる。側縁規制部35およびブランケット面規制部36は、それぞれ、直線状に延びる搬送路32の搬送方向に平行に伸びるものであり、滑り性の高い平板(
図5(a)参照)や、複数の自由回転ローラが並んで設けられたローラ群(
図6参照)などから構成されている。また、載置台34は、上面が滑り性の高い平板から構成されている。なお、自由回転ローラは、搬送方向に垂直な方向に延びた軸(側縁規制部35においては上下方向に延びる軸、ブランケット面規制部36において水平方向に延びる軸)によって支持されて回転する。
ブランケット面規制部36は、被研磨体であるブランケット10のブランケット面の全面に接触するものでなくてもよく、搬送路32における搬送中にブランケット10に浮きやバタつきが生じない程度に押さえることができる程度の大きさのものであればよい。また、ブランケット面規制部36においては、
図7(a)に示されるように、周面が双円錐台の周面形状を有する自由回転ローラ36aを用いて形成することが好ましい。このような周面形状の自由回転ローラ36aを用いることにより自由回転ローラ36aがブランケット面に点的に接触し、
図7(b)に示されるような、その周面が線的にブランケット面や側縁に接触する円柱状の自由回転ローラ(ストレートロール)36bを用いる場合よりも、ブランケット10の面取り動作中の水平方向へのズレを抑制することができ、ブランケット10の面取りの部分的な実施抜けを抑止することができる。
自由回転ローラを用いた規制部35,36としては、例えば、オークラ輸送機社製「コロコンミニ KB150」を用いることができる。
側縁規制部35は、載置台34に対して固定的に設けられている。一方、ブランケット面規制部36は、載置台34に対して固定的に設けられていてもよく、また、適宜の開閉機構により載置台34の蓋のように挙動させて開閉可能に設けられていてもよい。
また、本実施形態の面取り装置30においては、姿勢保持ガイド部材33が被研磨体であるブランケット10の三方(一方の側縁19、ゴム層11のブランケット面、基板16の裏面)に接触してその姿勢を保持する構成のものであるが、研磨時のブランケット10の姿勢を一定方向に保持することができれば、上記構成に限定されない。
【0023】
研磨工具31としては、例えばミニター「アングロン M212RA」(ミニター社製)を、「POWER PACK」(ミニター社製)や「SAND PAPER ♯800」ミニター専用(ミニター社製)と組み合わせて用いることができる。
面取り装置30には、搬送路32の研磨工具31の近傍に、削りクズを吸い込む掃除機などの空間清掃部材(図示せず)が設けられていることが好ましい。
また、搬送路32の出口には、面取り後のブランケット10に付着した削りクズを除去するための掃除機、ブロワー、粘着部材、除電部材、およびこれらの組み合わせなどよりなるクリーニング部材(図示せず)が設けられていることが好ましい。
【0024】
本発明のブランケット10の面取り装置30においては、以下のようにブランケット10の側縁19の面取りが行われる。
まず、載置台34上にブランケット面を上にしてブランケット10を載置し、側縁規制部35に一方の側縁19が全辺で接触するように押し当てる。また、ブランケット面規制部36をブランケット10のブランケット面に接触した状態として、ブランケット10の姿勢を保持する。この側縁規制部35に一方の側縁19が押し当てられた状態で、略一定速度で搬送路32に沿ってすなわち側縁規制部35に沿ってブランケット10を移動させると、搬送路32の中ほどに設けられた研磨工具31によって、ブランケット10の一方の側縁19の全辺においてゴム層11が面取りされて傾斜面18が形成される。搬送路32から搬出されたブランケット10は、クリーニング部材によって削りクズが除去される。以上の面取り動作をブランケット10の他方の側縁19に対しても行うことにより、両側縁19,19が面取りされたブランケット10が得られる。
【0025】
ブランケット10の研磨速度すなわちブランケット10と研磨工具31との相対的な移動速度は、例えば1~5cm/secとされる。
【0026】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、上記実施形態に係る面取り装置30においては、ブランケット10を搬送路32に沿って搬送し、固定的に設けられた研磨工具31によって面取りを行う構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、固定的に保持したブランケット10に対して研磨工具31を相対的に移動させる構成のものとすることもできる。なお、ブランケット10を固定して研磨工具31を移動させて面取を行うと仕上がり面にバラツキが生じることがあるため、研磨工具31を固定的に設け、ブランケット10を移動させながら面取りする構成がより好ましい。
【実施例0027】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
図3に示す層構成のブランケット「エアータックFS」(株式会社金陽社製)を用い、下記の傾斜面を形成したものを、
図1の構成の水なし平版印刷機に装着し、2ピース缶100万缶に印刷する耐刷テストを行ったところ、100万缶目においても、刷版のシリコーン樹脂層に傷付与は認められず、インキ汚れは発生しなかった。
実施例1に用いたブランケットの断面を示す写真を
図8に示す。
・ゴム層の厚み:300μm
・傾斜面の傾斜角θ:30°
・傾斜面の深さ:280μm(布層は露出していない。)
【0028】
〔比較例1〕
ブランケットとして、傾斜面を形成しなかったものを用いたことの他は実施例1と同様にして耐刷テストを行ったところ、刷版のシリコーン樹脂層に傷付与が認められ、30万缶前後においてインキ汚れの発生が確認された。
比較例1に用いたブランケットの断面を示す写真を
図9に示す。