IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特開2024-85349偏光子およびその製造方法、ならびに、該偏光子を含む光学積層体および画像表示装置
<>
  • 特開-偏光子およびその製造方法、ならびに、該偏光子を含む光学積層体および画像表示装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085349
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】偏光子およびその製造方法、ならびに、該偏光子を含む光学積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240619BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240619BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240619BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240619BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20240619BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240619BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/30 102
B32B27/18 Z
B29C55/06
G02F1/1335 510
G02F1/13363
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205759
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2022199740
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南川 善則
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
4F100
4F210
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149AB23
2H149BA02
2H149BA12
2H149BB07
2H149BB10
2H149BB17
2H149BB18
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA18
2H149DA27
2H149DB28
2H149EA03
2H149EA04
2H149EA12
2H149EA19
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FC03
2H149FD05
2H149FD22
2H149FD30
2H149FD32
2H149FD35
2H149FD47
2H291FA22X
2H291FA30X
2H291FA40X
2H291FA94X
2H291FA95X
2H291FB02
2H291FB05
2H291FB22
2H291FC05
2H291FC07
2H291LA04
2H291LA06
2H291PA04
2H291PA07
2H291PA24
2H291PA42
2H291PA44
2H291PA52
2H291PA53
2H291PA64
2H291PA79
4F100AA05B
4F100AJ06C
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK03C
4F100AK21B
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK42A
4F100AK45E
4F100AK53D
4F100BA02
4F100BA05
4F100BA07
4F100EA02A
4F100EC182
4F100EH46B
4F100EH46E
4F100EJ37B
4F100EJ37E
4F100EJ42B
4F100GB41
4F100JA05A
4F100JA05D
4F100JA07D
4F100JB16A
4F100JD08E
4F100JK07B
4F100JK09E
4F100JN01
4F100JN10
4F100JN10B
4F100JN18E
4F210AA19
4F210AG01
4F210AG03
4F210AH73
4F210AR06
4F210AR20
4F210QA03
4F210QC02
4F210QD01
4F210QD07
4F210QD13
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG15
4F210QG18
4F210QM15
(57)【要約】
【課題】端部脱色が抑制された薄型の偏光子を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による偏光子は、厚みが8μm以下であり、押し込み弾性率が9.5GPa以下であり、かつ、押し込み硬さが0.65GPa以上である。このような偏光子の製造方法は、長尺状の熱可塑性樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体とすること;および、積層体に、空中補助延伸処理と、染色処理と、水中延伸処理と、長手方向に搬送しながら加熱することにより、幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理と、をこの順に施すこと;を含み、空中補助延伸処理における延伸温度は140℃以上であり、かつ、延伸倍率は2.5倍以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが8μm以下であり、押し込み弾性率が9.5GPa以下であり、かつ、押し込み硬さが0.65GPa以上である、偏光子。
【請求項2】
二色性物質を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成されている、請求項1に記載の偏光子。
【請求項3】
配向関数が0.30以上である、請求項2に記載の偏光子。
【請求項4】
長尺状の熱可塑性樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体とすること;および、
該積層体に、空中補助延伸処理と、染色処理と、水中延伸処理と、長手方向に搬送しながら加熱することにより、幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理と、をこの順に施すこと;を含み、
該空中補助延伸処理における延伸温度が140℃以上であり、かつ、延伸倍率が2.5倍以上である、
偏光子の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の偏光子と、該偏光子の一方の側に配置された保護層と、を含む、光学積層体。
【請求項6】
前記偏光子に隣接して配置された樹脂層をさらに含み、該樹脂層は、ガラス転移温度が85℃以上で重量平均分子量Mwが25000以上の樹脂を含む、請求項5に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記樹脂層の偏光子と反対側に、円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層をさらに含む、請求項6に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記位相差層が樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されており、そのRe(550)が100nm~200nmであり、Re(450)<Re(550)の関係を満足し、該位相差層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°である、請求項7に記載の光学積層体:
ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内位相差である。
【請求項9】
前記位相差層の樹脂層と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する、請求項8に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記保護層の偏光子と反対側にハードコート層が形成されている、請求項5に記載の光学積層体。
【請求項11】
請求項5に記載の光学積層体を含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子およびその製造方法、ならびに、該偏光子を含む光学積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置(例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、量子ドット表示装置)には、その画像形成方式に起因して、多くの場合、表示パネルの少なくとも一方の側に偏光板が配置されている。しかし、偏光板は、実質的に偏光板の光学特性を支配する偏光子の光学特性が高温高湿環境下で低下するという耐久性の問題がある。より具体的には、偏光子は、高温高湿環境下において端部の偏光性能が消失し、結果として、いわゆる色抜け(端部脱色)という現象が生じる場合がある。近年、画像表示装置の狭額縁化(場合によっては、いわゆるベゼルレス化)の要望が強まっており、端部の色抜け防止の必要性が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-338329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、端部脱色が抑制された薄型の偏光子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による偏光子は、厚みが8μm以下であり、押し込み弾性率が9.5GPa以下であり、かつ、押し込み硬さが0.65GPa以上である。
[2]上記[1]において、上記偏光子は、二色性物質を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成されている。
[3]上記[1]または[2]において、上記偏光子は、配向関数が0.30以上である。
[4]本発明の別の局面によれば、偏光子の製造方法が提供される。この製造方法は、長尺状の熱可塑性樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体とすること;および、該積層体に、空中補助延伸処理と、染色処理と、水中延伸処理と、長手方向に搬送しながら加熱することにより、幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理と、をこの順に施すこと;を含み、該空中補助延伸処理における延伸温度が140℃以上であり、かつ、延伸倍率が2.5倍以上である。
[5]本発明のさらに別の局面によれば、光学積層体が提供される。この光学積層体は、上記[1]から[3]のいずれかの偏光子と、該偏光子の一方の側に配置された保護層と、を含む。
[6]上記[5]において、上記光学積層体は、上記偏光子に隣接して配置された樹脂層をさらに含み、該樹脂層は、ガラス転移温度が85℃以上で重量平均分子量Mwが25000以上の樹脂を含む。
[7]上記[6]において、上記光学積層体は、上記樹脂層の偏光子と反対側に、円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層をさらに含む。
[8]上記[7]において、上記位相差層は樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されており、そのRe(550)は100nm~200nmであり、Re(450)<Re(550)の関係を満足し、該位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度は40°~50°である。
[9]上記[7]または[8]において、上記光学積層体は、上記位相差層の樹脂層と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する。
[10]上記[5]から[9]のいずれかにおいて、上記光学積層体は、上記保護層の偏光子と反対側にハードコート層が形成されている。
[11]本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記[5]から[10]のいずれかの光学積層体を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、端部脱色が抑制された薄型の偏光子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.偏光子
本発明の実施形態による偏光子は、上記のとおり、厚みが8μm以下であり、押し込み弾性率が9.5GPa以下であり、かつ、押し込み硬さが0.65GPa以上である。このように、本発明の実施形態によれば、押し込み弾性率が比較的低いにもかかわらず、押し込み硬さが非常に大きい偏光子が得られ得る。このような偏光子は、非常に薄型でありながら端部脱色が良好に抑制され得る。より詳細には以下のとおりである。端部脱色を抑制する手段として、代表的には、偏光子の耐水性を向上させることが挙げられる。偏光子の耐水性を向上させる手段として、代表的には、偏光子を剛直にする(硬くする)ことが挙げられる。偏光子が剛直であれば、水分による膨潤が起こりにくいので、偏光子中のヨウ素の流出を抑制することができる。一方、偏光子を薄型化するとヨウ素密度が高くなり、偏光子中のポリビニルアルコール(PVA)の分子間相互作用が妨げられる傾向にある。その結果、薄型の偏光子の剛直性(硬さ)は不十分となる場合が多い。ホウ酸などによる化学架橋も偏光子の剛直性に寄与し得るが、架橋点を増やすと延伸しにくくなることから、限定された範囲でしか使用できない。本発明の実施形態による偏光子は、上記のとおり、押し込み弾性率が比較的低いにもかかわらず、押し込み硬さが非常に大きい。このような偏光子は、硬いことによる利点(端部脱色の抑制)を維持しつつ、延伸しやすいので薄型化が容易である。このような偏光子は、後述するように、薄型偏光子の製造方法における空中補助延伸処理において、従来よりも高温かつ高延伸倍率で延伸することにより得られ得る。
【0011】
偏光子の厚みは、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは2μm~7μmであり、さらに好ましくは3μm~6μmである。上記のとおり、このような非常に薄い偏光子において、本発明の実施形態による効果が顕著なものとなる。さらに、偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0012】
偏光子の押し込み弾性率は、好ましくは7.5GPa~9.4GPaであり、より好ましくは8.0GPa~9.3GPaであり、さらに好ましくは8.2GPa~9.2GPaであり、特に好ましくは8.5GPa~9.2GPaである。偏光子の押し込み硬さは、好ましくは0.65GPa~0.80GPaであり、より好ましくは0.66GPa~0.76GPaであり、さらに好ましくは0.67GPa~0.74GPaであり、特に好ましくは0.68GPa~0.72GPaである。上記のとおり、本発明の実施形態による偏光子は、押し込み弾性率が比較的低いにもかかわらず、押し込み硬さが非常に大きいという特徴を有する。その結果、本発明の実施形態による偏光子は、非常に薄型でありながら、端部脱色(特に、高温高湿環境下における端部脱色)を顕著に抑制することができる。なお、押し込み硬さおよび押し込み弾性率は、代表的には、押し込み試験機(代表的には、ナノインデンター)を用いたナノインデンテーション法により測定され得る。より具体的には、押し込み硬さは、測定対象とされる偏光子の表面に探針(圧子)を押し当てて得られる変位-荷重ヒステリシス曲線から得られる最大荷重Pmax、および、圧子と偏光子との間の接触射影面積Aから、以下の式により算出される。
押し込み硬さ(GPa)=Pmax/A
また、押し込み弾性率は、上記接触射影面積A、変位-荷重ヒステリシス曲線の除荷曲線の接線の傾き(接触剛性)S、および、円周率πから、以下の式により算出される。
押し込み弾性率(GPa)=(√π/2)×(S/√A)
【0013】
偏光子の配向関数は、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは0.35以上であり、さらに好ましくは0.37以上であり、特に好ましくは0.40以上である。偏光子の配向関数がこのような範囲であれば、押し込み弾性率および押し込み硬さを上記所望の範囲とすることが容易である。偏光子の配向関数の上限は、例えば0.50であり得る。配向関数(y)は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用い、偏光を測定光として、全反射減衰分光(ATR:attenuated total reflection)測定により求められる。具体的には、測定光の偏光方向に対し、偏光子の延伸方向を平行および垂直にした状態で測定を実施し、得られた吸光度スペクトルの2941cm-1の強度を用いて、下記式に従って算出される。ここで、強度Iは、3330cm-1を参照ピークとして、2941cm-1/3330cm-1の値である。なお、y=1のとき完全配向、y=0のときランダムとなる。また、2941cm-1のピークは、偏光子中のPVAの主鎖(-CH-)の振動に起因する吸収であると考えられている。
y=(3<cosθ>-1)/2
=(1-D)/[c(2D+1)]
=-2×(1-D)/(2D+1)
ただし、
c=(3cosβ-1)/2で、2941cm-1の振動の場合は、β=90°である。
θ:延伸方向に対する分子鎖の角度
β:分子鎖軸に対する遷移双極子モーメントの角度
D=(I)/(I//) (この場合、PVA分子が配向するほどDが大きくなる)
:測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が垂直の場合の吸収強度
// :測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が平行の場合の吸収強度
【0014】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは41.5%~43.5%であり、より好ましくは42.0%~43.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。本発明の実施形態によれば、単体透過率が上記のような範囲であっても、偏光度をこのような範囲に維持することができる。
【0015】
偏光子は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含むポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムで構成されている。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体系部分ケン化物が挙げられる。
【0016】
PVA系樹脂は、好ましくはアセトアセチル変性されたPVA系樹脂を含む。このような構成であれば、所望の機械的強度を有する偏光子が得られ得る。アセトアセチル変性されたPVA系樹脂の配合量は、PVA系樹脂全体を100重量%としたときに、好ましくは5重量%~20重量%であり、より好ましくは8重量%~12重量%である。配合量がこのような範囲であれば、より優れた機械的強度を有する偏光子が得られ得る。
【0017】
偏光子は、好ましくは、ヨウ化物または塩化ナトリウム(まとめてハロゲン化物と称する場合がある)を含む。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。偏光子におけるハロゲン化物の含有量は、PVA系樹脂100重量部に対して、好ましくは5重量部~20重量部であり、より好ましくは10重量部~15重量部である。ハロゲン化物は、後述の製造方法において、偏光子の前駆体であるPVA系樹脂層を形成する塗布液に配合され、最終的に偏光子に導入され得る。偏光子にハロゲン化物を導入することにより、偏光子におけるPVA分子の配向性を高めることができるので、所望の配向関数および押し込み硬さを実現することができる。さらに、優れた光学特性(代表的には、高い偏光度と高い単体透過率との両立)を有する偏光子を実現することができる。
【0018】
偏光子のヨウ素濃度は、好ましくは4重量%~10重量%であり、より好ましくは5.5重量%~8重量%である。本明細書において「ヨウ素濃度」とは、偏光子に含まれるすべてのヨウ素の量を意味する。より具体的には、偏光子中においてヨウ素はI、I、I 、I 等の形態で存在するところ、本明細書におけるヨウ素濃度は、これらの形態をすべて包含したヨウ素の濃度を意味する。ヨウ素濃度は、例えば、蛍光X線分析による蛍光X線強度とフィルム(偏光子)厚みとから算出され得る。
【0019】
偏光子は、代表的には、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を用いて得られ得る。積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0020】
本発明の実施形態においては、空中補助延伸処理における延伸温度は140℃以上であり、かつ、延伸倍率は2.5倍以上である。延伸温度は、好ましくは145℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは155℃以上である。延伸温度の上限は、例えば170℃であり得る。延伸倍率は、好ましくは2.5倍~3.2倍であり、より好ましくは2.6倍~3.1倍であり、さらに好ましくは2.7倍~3.0倍である。従来の薄型偏光子の製造方法においては、代表的には、熱可塑性樹脂基材(代表的には、ポリエチレンテレフタレート(PET))のガラス転移温度(Tg)+15℃以上であり、かつ、PVA系樹脂の急速な結晶化を抑制し得る温度で空中補助延伸処理が行われている。このような延伸温度は、具体的には130℃近傍である。また、従来の薄型偏光子の製造方法における空中補助延伸処理の延伸倍率は、通常2.0倍~2.4倍に設定されている。空中補助延伸処理と水中延伸処理との延伸総倍率は一定(例えば、5.5倍~6.0倍)であることが好ましいことから、130℃近傍で延伸する場合、2.5倍を超える延伸倍率では、水中延伸処理の延伸倍率を下げる必要があり、ヨウ素の配向が低下することによって光学特性が低下する場合があるからである。また、130℃を超える温度では、上記のとおりPVA系樹脂の急速な結晶化の抑制が困難であり、さらに、延伸性の制御が困難である。本発明者らは、従来実施されていなかった高温かつ高延伸倍率で空中補助延伸処理を行うことにより、所望の光学特性(高い単体透過率と高い偏光度との両立)を維持しつつ、硬い薄型偏光子を実現できることを見出した。
【0021】
B.光学積層体
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100は、偏光子11と、偏光子11の一方の側に配置された保護層12と、を含む。目的および光学積層体の所望の構成に応じて、偏光子11のもう一方の側に別の保護層(図示せず)が配置されていてもよい。保護層12の偏光子11と反対側には、ハードコート層(図示せず)が形成されていてもよい。なお、偏光子は、上記A項で記載した本発明の実施形態による偏光子である。
【0022】
光学積層体100は、偏光子と保護層とで構成される偏光板10であってもよく、偏光板10と目的に応じた適切な機能層とを有する積層体であってもよい。光学積層体100は、図示例のように、偏光子11(別の保護層が存在する場合には別の保護層)に隣接して配置された樹脂層20をさらに含んでいてもよい。樹脂層20は、バリア機能を有し得る。樹脂層20は、高温高湿環境下における水分の移動を抑制し得、偏光子の端部脱色を抑制し得る。また、樹脂層20は、偏光子に含まれ得るヨウ素の移動を抑制し得、偏光子が他の部材に与え得る影響を低減し得る。例えば、光学積層体を画像表示装置(例えば、有機EL表示装置)に搭載した場合に、画像表示装置の金属部材の腐食を抑制し得る。このような樹脂層を本発明の実施形態による偏光子に隣接して設けることにより、高温高湿環境下における端部脱色をさらに良好に抑制することができる。なお、本明細書において「偏光子に隣接して配置されている」とは、樹脂層が偏光子に直接形成されていること、または、樹脂層が接着層(代表的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層されていることを意味する。言い換えれば、偏光子と樹脂層との間に光学機能層が介在しないことを意味する。
【0023】
光学積層体100は、図示例のように、樹脂層20の偏光子11と反対側に、円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層30をさらに含んでいてもよい。このような構成であれば、優れた反射防止特性を有する光学積層体を得ることができる。この場合、光学積層体100は、図示例のように、位相差層30の樹脂層20と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層40をさらに有していてもよい。このような別の位相差層を設けることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。
【0024】
実用的には、光学積層体は、別の位相差層40側(画像表示パネル側)の最外層として粘着剤層(図示せず)を有し、画像表示セルに貼り付け可能とされている。この場合、粘着剤層の表面には、光学積層体が使用に供されるまで、はく離ライナーが仮着されていることが好ましい。はく離ライナーを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、光学積層体のロール形成が可能となる。
【0025】
以下、光学積層体の構成要素について説明する。
【0026】
C.偏光板
偏光子11については上記A項で説明したとおりである。
【0027】
保護層12は、偏光子の保護フィルムとして用いられ得る任意の適切な樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムを構成する材料としては、代表的には、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂の代表例としては、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報に記載されている。これらの公報は、本明細書に参考として援用されている。異形加工の容易性等の観点から、セルロース系樹脂が好ましく、TACがより好ましい。透湿度が低く、耐久性に優れた偏光板が得られるという観点からは、シクロオレフィン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0028】
光学積層体は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理が挙げられる。本発明の実施形態においては、ハードコート処理(ハードコート層の形成)が好ましい。ハードコート層については後述する。ハードコート処理と他の表面処理とが組み合わせて施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、光学積層体は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0029】
保護層12の厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは12μm~40μmであり、さらに好ましくは15μm~35μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0030】
ハードコート層は、代表的には、任意の適切な活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光線、電子線)硬化型樹脂の硬化層である。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。当該添加剤の代表例としては、無機系微粒子および/または有機系微粒子が挙げられる。ハードコート層の厚みは、例えば1μm~10μmであり得、また例えば3μm~7μmであり得る。
【0031】
D.樹脂層
樹脂層は、代表的には、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または硬化物である。このような構成によれば、偏光子との密着性に優れ得る。具体的には、樹脂層は、接着層を介することなく、偏光子に直接形成され得る。また、樹脂層の厚みを非常に薄くすることができる。樹脂層の厚みは、例えば10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.7μm以下である。樹脂層の厚みは、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは0.08μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上であり、特に好ましくは0.2μm以上である。
【0032】
1つの実施形態においては、樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は85℃以上であり、かつ、重量平均分子量(Mw)は25000以上である。樹脂層を構成する樹脂のTgは、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。Tgは、例えば200℃以下であり得る。また、樹脂層を構成する樹脂のMwは、好ましくは30000以上であり、より好ましくは35000以上であり、さらに好ましくは40000以上である。樹脂層を構成する樹脂のTgおよびMwがこのような範囲であることにより、厚みが非常に薄いにもかかわらず、優れたバリア機能を実現することができる。
【0033】
樹脂層を構成する樹脂としては、有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または硬化物(例えば、熱硬化物)を形成し得る、任意の適切な樹脂を用いることができる。樹脂層を構成する樹脂として、好ましくは、上記のようなTgおよびMwを有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられ、より好ましくは、熱可塑性樹脂が用いられる。樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂とを組み合わせて用いてもよい。
【0035】
アクリル系樹脂は、代表的には、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位を主成分として含有する。アクリル系樹脂は、目的に応じた任意の適切な共重合単量体由来の繰り返し単位を含有し得る。共重合単量体(共重合モノマー)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。モノマー単位の種類、数、組み合わせおよび共重合比等を適切に設定することにより、上記所定のMwを有するアクリル系樹脂が得られ得る。アクリル系樹脂の具体例としては、特開2021-117484号公報の[0034]~[0056]に記載のホウ素含有アクリル系樹脂、ラクトン環等含有アクリル系樹脂が挙げられる。
【0036】
エポキシ樹脂としては、好ましくは芳香族環を有するエポキシ樹脂が用いられる。芳香族環を有するエポキシ樹脂をエポキシ樹脂として用いることにより、樹脂層と偏光子との密着性が向上し得る。さらに、樹脂層に隣接して粘着剤層を配置した場合に、粘着剤層の投錨力が向上し得る。芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
樹脂層は、代表的には、上記樹脂の有機溶媒溶液を塗布して塗布膜を形成し、得られた塗布膜を固化または熱硬化させることにより形成され得る。有機溶媒としては、上記樹脂を溶解または均一に分散し得る任意の適切な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。溶液の樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部~20重量部である。このような樹脂濃度であれば、均一な塗布膜を形成することができる。
【0038】
溶液は、別途準備した基材に塗布してもよいが、偏光板(偏光子)に塗布することが好ましい。溶液を基材に塗布する場合には、基材上に形成された塗布膜の固化または硬化物(樹脂層)を、偏光板(偏光子)に転写する。転写は、代表的には、接着層を介して行われることから、溶液を偏光板(偏光子)に塗布することにより、樹脂層を直接形成し、接着層を省略することができる。溶液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)が挙げられる。
【0039】
上記塗布膜の固化または熱硬化の加熱温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50℃~70℃である。加熱温度がこのような範囲であれば、偏光子に対する悪影響を防止することができる。加熱時間は、例えば1分~10分であり得る。
【0040】
樹脂層(実質的には、上記樹脂の有機溶媒溶液)は、目的に応じて任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、紫外線吸収剤;レベリング剤;ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーまたは無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;難燃剤等が挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0041】
E.位相差層
位相差層40は、上記のとおり、代表的には円偏光機能または楕円偏光機能を有する。位相差層は、単一層であってもよく、二層以上の積層構造を有していてもよい。位相差層が単一層で構成される場合、当該位相差層はλ/4板であり得る。位相差層が積層構造を有する場合、当該位相差層はλ/2板とλ/4板との積層体であり得る。位相差層は、任意の適切な材料で構成され得る。具体的には、位相差層は、液晶化合物の配向固化層であってもよく、樹脂フィルム(代表的には、延伸フィルム)であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。本発明の実施形態においては、位相差層は、代表的には、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成され得る。この場合、位相差層は、代表的には単一層(λ/4板)であり得る。以下、単一層である樹脂フィルムの延伸フィルムについて簡単に説明する。
【0042】
位相差層は、上記のとおりλ/4板として機能し得る。この場合、位相差層の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、好ましくは110nm~170nmであり、より好ましくは130nm~160nmである。この場合、位相差層は、好ましくは屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の実施形態による効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。
【0043】
位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。このような関係を満たすことにより、得られる光学積層体を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0044】
位相差層は、代表的には上記のとおりnx>nyの関係を示すので、遅相軸を有する。1つの実施形態においては、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度θは、例えば40°~50°であり、好ましくは42°~48°であり、より好ましくは約45°である。角度θがこのような範囲であれば、位相差層をλ/4板とすることにより、非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する光学積層体が得られ得る。
【0045】
位相差層の厚みは、代表的には、λ/4板として適切に機能し得る厚みに設定され得る。位相差層の厚みは、例えば10μm~60μmであり得る。
【0046】
位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。1つの実施形態においては、位相差層は、逆分散波長特性を示す。この場合、位相差層のRe(450)/Re(550)は、例えば0.8以上1未満であり、好ましくは0.8以上0.95以下である。このような構成であれば、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
【0047】
位相差層(樹脂フィルム)を構成する樹脂の代表例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて(例えば、ブレンド、共重合)用いてもよい。位相差層が逆分散波長特性を示す樹脂フィルムで構成される場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)が好適に用いられ得る。
【0048】
ポリカーボネート系樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位および/または下記一般式(2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を含む。これらの構造単位は、2価のオリゴフルオレンに由来する構造単位であり、以下、オリゴフルオレン構造単位と称する場合がある。このようなポリカーボネート系樹脂は、正の屈折率異方性を有する。
【化1】
【化2】
【0049】
位相差層は、代表的には、アクリル系樹脂をさらに含有する。アクリル系樹脂の含有量は0.5質量%~1.5質量%である。
【0050】
位相差層に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および位相差層の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報、国際公開第2015/159928号、特開2021-67762号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0051】
F.別の位相差層
別の位相差層40は、上記のとおり、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。別の位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。この場合、別の位相差層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、別の位相差層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
【0052】
別の位相差層は、任意の適切な材料で形成され得る。別の位相差層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、別の位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0053】
G.画像表示装置
上記B項~F項に記載の光学積層体は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような光学積層体を用いた画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、代表的には、その視認側に上記B項~F項に記載の光学積層体を備える。光学積層体は、偏光板が視認側となるようにして配置される。
【実施例0054】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
1.偏光子の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、140℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に3.0倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温64℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み5.5μmの偏光子P1を形成し、樹脂基材/偏光子P1の構成を有する偏光板を得た。偏光子P1の単体透過率Tsは43.0%であり、押し込み弾性率は8.77GPaであり、押し込み硬さは0.688GPaであった。
【0056】
なお、押し込み弾性率および押し込み硬さは、ナノインデンター(Hysitron Inc社製、「Triboindenter」)を用いて、以下の測定条件の下、ナノインデンテーション法により測定した。具体的には、偏光板の偏光子の面にナノインデンターの探針(圧子)を押し込み、変位-荷重ヒステリシス曲線から以下の式により算出した。
押し込み硬さ(GPa)=Pmax/A
押し込み弾性率(GPa)=(√π/2)×(S/√A)
ここで、Pmaxは変位-荷重ヒステリシス曲線から得られる最大荷重であり、Aは圧子と偏光子との間の接触射影面積であり、Sは変位-荷重ヒステリシス曲線の除荷曲線の接線の傾き(接触剛性)であり、πは円周率である。
(測定条件)
・測定方法:単一押し込み法
・測定温度:25℃
・押し込み速度:約2nm/sec
・押し込み深さ:約300nm
・使用圧子:ダイヤモンド製、Berkovich型(三角錐型)
【0057】
2.偏光板の作製
上記で得られた偏光板の偏光子P1の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、紫外線硬化型接着剤を介して、HC-TACフィルムを貼り合わせた。なお、HC-TACフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)にHC層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。次いで、樹脂基材を剥離してHC層/TACフィルム(保護層)/偏光子P1の構成を有する偏光板を得た。
【0058】
3.端部脱色
上記で得られた偏光板から、偏光子の延伸方向および当該延伸方向に直交する方向をそれぞれ対向する二辺とする試験片(50mm×50mm)を切り出し、粘着剤で試験片を無アルカリガラス板に貼り合わせて測定試料とした。この測定試料を65℃および95%RHのオーブン内で240時間放置して加熱・加湿した後、標準偏光板とクロスニコルの状態に配置した時の、偏光子の端部脱色の状態を顕微鏡により調べた。具体的には、偏光子端部からの脱色の大きさ(端部脱色量:μm)を測定した。顕微鏡としてOlympus社製、MX61Lを用い、倍率10倍で撮影した画像から端部脱色量を測定した。延伸方向の端部脱色量aおよび延伸方向と直交する方向の端部脱色量bの平均値を端部脱色量とした。端部脱色量の評価基準は以下のとおりである。評価結果を表1に示す。
○(良好):端部脱色量が400μm以下
×(不良):端部脱色量が400μmより大きい
【0059】
[実施例2]
空中補助延伸処理における延伸温度を150℃としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂基材/偏光子P2の構成を有する偏光板を得た。偏光子P2の単体透過率Tsは43.0%であり、押し込み弾性率は9.01GPaであり、押し込み硬さは0.711GPaであった。偏光子P2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子P2の構成を有する偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例3]
空中補助延伸処理における延伸温度を160℃としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂基材/偏光子P3の構成を有する偏光板を得た。偏光子P3の単体透過率Tsは43.0%であり、押し込み弾性率は8.84GPaであり、押し込み硬さは0.688GPaであった。偏光子P3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子P3の構成を有する偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例4]
空中補助延伸処理における延伸温度を150℃としたこと、および、延伸倍率を2.7倍としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂基材/偏光子P4の構成を有する偏光板を得た。偏光子P4の単体透過率Tsは43.0%であり、押し込み弾性率は8.77GPaであり、押し込み硬さは0.700GPaであった。偏光子P4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子P4の構成を有する偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例5]
空中補助延伸処理における延伸温度を150℃としたこと、および、単体透過率が42.5%となるよう染色条件を調整としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂基材/偏光子P5の構成を有する偏光板を得た。偏光子P5の単体透過率Tsは42.5%であり、押し込み弾性率は9.09GPaであり、押し込み硬さは0.681GPaであった。偏光子P5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子P5の構成を有する偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例6]
空中補助延伸処理における延伸温度を150℃としたこと、および、単体透過率が42.0%となるよう染色条件を調整としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂基材/偏光子P6の構成を有する偏光板を得た。偏光子P6の単体透過率Tsは42.0%であり、押し込み弾性率は8.60GPaであり、押し込み硬さは0.665GPaであった。偏光子P6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子P6の構成を有する偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
空中補助延伸処理における延伸温度を130℃としたこと、延伸倍率を2.4倍としたこと、単体透過率が42.0%となるよう染色条件を調整としたこと、および、水中延伸処理におけるホウ酸水溶液温度を70℃としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂基材/偏光子PC1の構成を有する偏光板を得た。偏光子PC1の単体透過率Tsは42.0%であり、押し込み弾性率は9.09GPaであり、押し込み硬さは0.611GPaであった。偏光子PC1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子PC1の構成を有する偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例2]
空中補助延伸処理における延伸温度を130℃としたこと、延伸倍率を2.4倍としたこと、単体透過率が41.0%となるよう染色条件を調整としたこと、および、水中延伸処理におけるホウ酸水溶液温度を70℃としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂基材/偏光子PC2の構成を有する偏光板を得た。偏光子PC2の単体透過率Tsは41.0%であり、押し込み弾性率は8.30GPaであり、押し込み硬さは0.576GPaであった。偏光子PC2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子PC2の構成を有する偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例3]
空中補助延伸処理における延伸温度を150℃としたこと、延伸倍率を2.4倍としたこと、単体透過率が41.0%となるよう染色条件を調整としたこと、および、水中延伸処理におけるホウ酸水溶液温度を70℃としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂基材/偏光子の構成を有する偏光板の作製を試みた。しかし、水中延伸処理において積層体が破断してしまい、偏光板は得られなかった。
【0067】
[比較例4]
空中補助延伸処理における延伸温度を140℃としたこと、延伸倍率を2.4倍としたこと、単体透過率が41.0%となるよう染色条件を調整としたこと、および、水中延伸処理におけるホウ酸水溶液温度を70℃としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂基材/偏光子PC4の構成を有する偏光板を得た。偏光子PC2の単体透過率Tsは41.0%であり、押し込み弾性率は8.32GPaであり、押し込み硬さは0.582GPaであった。偏光子PC4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子PC4の構成を有する偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0068】
[参考例1]
厚み30μmのPVA系樹脂フィルムを30℃水浴中に1分間浸漬させつつ搬送方向に1.2倍に延伸した後、ヨウ素濃度0.04重量%、カリウム濃度0.3重量%の30℃水溶液中に浸漬して染色しながら、全く延伸していないフィルム(元長)を基準として2倍に延伸した。次いで、この延伸フィルムを、ホウ酸濃度3重量%、ヨウ化カリウム濃度3重量%の30℃の水溶液中に浸漬しながら、元長基準で3倍までさらに延伸し、続いて、ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%の60℃水溶液中に浸漬しながら、元長基準で5.5倍までさらに延伸し、70℃で2分間乾燥することにより、厚み12μmの偏光子PR1を得た。得られた偏光子PR1の単体透過率Tsは42.5%であり、押し込み弾性率は10.22GPaであり、押し込み硬さは0.634GPaであった。
次いで、偏光子の両面に、PVA系樹脂水溶液(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z-200」、樹脂濃度:3重量%)を塗布し、シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、Zeonor ZF14、厚さ:13μm)およびトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製、KC4UY)をそれぞれ貼り合わせ、60℃に維持したオーブンで5分間加熱して、偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0069】
[参考例2]
厚み45μmのPVA系樹脂フィルムを用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光子PR2を得た。得られた偏光子PR2の単体透過率Tsは42.0%であり、押し込み弾性率は10.80GPaであり、押し込み硬さは0.707GPaであった。以下の手順は参考例1と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、薄型の偏光子において端部脱色を抑制することができる。さらに、参考例1および2から明らかなように、本発明の実施例による効果は、薄型(例えば、厚みが8μm以下)の偏光子に特有のものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の実施形態による偏光子および光学積層体は、画像表示装置(代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置)に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0073】
10 偏光板
11 偏光子
12 保護層
20 樹脂層
30 位相差層
40 別の位相差層
100 光学積層体
図1