(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085352
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】台車及びそれを用いたタイヤ取り付け装置
(51)【国際特許分類】
B62B 3/02 20060101AFI20240619BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240619BHJP
B60B 33/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B62B3/02 H
B62B3/00 Z
B60B33/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022212902
(22)【出願日】2022-12-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ビジネスマッチ東北2022秋 令和4年11月10日
(71)【出願人】
【識別番号】523006642
【氏名又は名称】シンワールド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 朋巳
(72)【発明者】
【氏名】菅原 道晴
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 満
(72)【発明者】
【氏名】山邉 茂之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 猛
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB03
3D050DD03
3D050EE09
3D050EE18
3D050FF03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な構造で、重量物を積載した状態でも、搬送したい位置へ、高精度で位置決めができる台車と、それを用いたタイヤ交換補助装置を提供する。
【解決手段】台車を、相対的な上下方向の位置を調整可能な、二つのフレームによって構成し、一方のフレームには、自在キャスターと固定キャスターを取り付け、他方のフレームには、一方のフレームに取り付けられている固定キャスターとは移動容易方向が垂直な固定キャスターを取り付け、一方のフレームの固定キャスターが床面から浮き上がるまで、他方の固定キャスターを下降させることで、移動容易方向を切り替える機構とする。これをタイヤの運搬手段とすることで、タイヤのホイールとハブを容易に正対させることが可能となり、作業性向上に寄与できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略四角形の第一のフレームと、
前記第一のフレームの一辺の両端の、床面側に配されてなる、前記一辺と垂直な方向に回転可能な、複数の第一の固定キャスターと、
前記一辺と対向する側の他方の辺の、床面側に配されてなる、少なくとも1箇の自在キャスターと、
前記一辺の床面とは反対側に、垂直に植接されてなる、少なくとも1本の支柱と、
前記支柱に上下動可能な状態で取り付けられてなる、第二のフレームと、
前記第二のフレームの床面側に、前記第一の固定キャスターと回転方向が垂直な複数の第二の固定キャスターが取り付けられ、前記第二のフレームが、前記第二の固定キャスターが床面に接し、前記第一の固定キャスターが床面から離間する状態となるまで、床方向に移動可能であることを特徴とする台車。
【請求項2】
前記第二のフレームに、タイヤの積載手段が備えられてなることを特徴とする、タイヤ交換補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物を搭載した際の、移動方向の切り替えが容易な台車と、それを用いたタイヤ交換補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷物を搬送するための一般的な台車や、大型店舗で用いられるショッピング用カートには、自在キャスターが用いられている、自在キャスターは、取付座と称される板状の部材に、フォークと称される車輪を回転可能な状態で挟持する部材が、360°回転可能な状態で取り付けられ、取付座の中心軸の延長線が、車輪の回転軸と一致しない構造である。
【0003】
このような構造により、車輪の回転軸に対して垂直な方向、つまり車輪の移動方向が、台車を押す方向に直ちに追従するので、狭い場所での運用に利点となる。しかし、重量物を積載すると、取付座に加わる荷重のために、自在キャスターの円滑な動きが妨げられ、意図した方向に動かすのが困難になることがある。
【0004】
一方、自動車のタイヤの交換作業は、車体をジャッキアップして、交換の対象となるタイヤを、床面から浮かせた状態にして、ハブボルトとナットの螺合を解除して外し、交換の対象となるタイヤを取り外し、その後、別のタイヤを取り付けることになるが、タイヤとホイールを合わせた重量のため、タイヤを持ち上げ、ホイールのハブボルト挿通穴とハブボルトの位置を合わせる作業に多大の労力を要する。
【0005】
このような問題には、タイヤを載置する部分の高さの調整が可能な台車を用いることで対処できるが、作業用に広いスペースが確保できない場合は、台車をなるべく小型化する必要があり、タイヤの重量のため、前記の自在キャスターの動作の問題が顕在化する可能性がある。
【0006】
タイヤ交換の作業性を向上するための装置として、特許文献1には、容易かつ安全にタイヤ交換作業を行うことができ、コンパクトな構成のタイヤ交換装置、及びタイヤ交換ユニットを提供することを目的として、自動車の交換用タイヤを支持してタイヤ交換を補助するタイヤ交換装置であり、水平方向を長手方向とし、支持する前記交換用タイヤの回転中心線に対して平行な第一支持ローラと、水平方向を長手方向とし、支持する前記交換用タイヤの前記回転中心線に対して平行であり、前記第一支持ローラとともにタイヤを定置させる第二支持ローラと、前記第一支持ローラの両端及び前記第二支持ローラの両端を支持するフレームと、前記フレームを上下に移動させる上下移動手段と、前記フレームを水平方向に移動させるフレーム移動手段と、を備えたタイヤ交換装置が開示されている。しかし、ここに開示されているタイヤ交換装置は、前記のキャスターの動作の不具合の対処方法が開示されていない。
【0007】
また、特許文献2には、簡便な構造でタイヤの運搬と位置調整が可能なタイヤ交換治具として、タイヤが軸心回りに回転可能なように、そのタイヤを立てた状態で支持可能なタイヤ支持部材と、四隅に車輪を備え、前記タイヤ支持部材を支えられるように構成された台車と、前記台車上に設けられており、前記タイヤ支持部材を地上位置と所定高さ位置間で昇降させる昇降機構とを有しており、前記昇降機構は、前記台車上の支点を中心に上下回動可能に構成されて、先端部が前記タイヤ支持部材に上下回動可能な状態で連結された梃子状部材と、前記タイヤ支持部材の姿勢を保持するため、そのタイヤ支持部材の一部と前記台車の一部を連結するリンク部材とを備えており、前記台車上に設けられた前記梃子状部材の支点は、四隅の車輪に囲まれる範囲内に設けられていることを特徴とするタイヤ交換冶具が開示されている。ここに開示されているタイヤ交換治具においても、前記のキャスターの動作の不具合への対処方法が開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許公報2】
特開2012-046126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前記の問題点に鑑み、簡単な構造で、重量物を積載した状態でも、搬送したい位置へ、高精度で位置決めができる台車と、それを用いたタイヤ交換補助装置を提供することである。
【0010】
本発明者らは、前記の課題解決のため、台車に用いるキャスターの構成と配置を鋭意検討した結果、本発明をなしたものである。
【0011】
上記課題を解決するための、本発明の一態様に係る台車は、略四角形の第一のフレームと、前記第一のフレームの一辺の両端の、床面側に配されてなる、前記一辺と垂直な方向に回転可能な、複数の第一の固定キャスターと、前記一辺と対向する側の他方の辺の、床面側に配されてなる、少なくとも1箇の自在キャスターと、前記一辺の床面とは反対側に、垂直に植接されてなる、少なくとも1本の支柱と、前記支柱に上下動可能な状態で取り付けられてなる、第二のフレームと、前記第二のフレームの床面側に、前記第一の固定キャスターと回転方向が垂直な複数の第二の固定キャスターが取り付けられ、前記第二のフレームが、前記第二の固定キャスターが床面に接し、前記第一の固定キャスターが床面から離間する状態となるまで、床方向に移動可能であることを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するための、本発明の一態様に係る台車は、前記第二のフレームに、タイヤの積載手段が備えられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、自在スキャナーが台車を押した方向に追従して、比較的容易に移動方向が、変えられるが、固定スキャナーは、車輪の回転軸と垂直な方向には動かすのが容易で、車輪の回転軸と平行な方向には動かすのが困難であるという、特徴を活用したものである。
【0014】
本発明に係る台車は、少なくとも一つの自在キャスターと、移動が容易な方向が、互いに垂直な二組の固定キャスターを備え、第二の固定キャスターが取り付けられている第二のフレームの上下動により、必要に応じて、用いる固定キャスターを簡単に切り替えることが可能である。これによって、自在キャスターのみを用いた場合よりも、運搬の対象物を必要な位置に正確に設置できる。
【0015】
また、本発明の台車にタイヤの積載手段を取り付けることにより、タイヤ交換の際に、タイヤを設置すべき位置に、可能な限り近い場所に設置し、タイヤのホイールとタイヤを取り付けるハブが略正対するように、タイヤの方向を調製した後、床面における位置決めを、二組の固定キャスターを使い分けることにより、正確に行うことが可能となる。位置決めが終了した後は、第二のフレームの高さ調整機構を用いて、タイヤをハブの位置に上昇させ、ハブにタイヤを取り付けることができる。
【0016】
さらに、タイヤの積載手段を、積載したタイヤが回転可能な状態とするとことと、タイヤの積載手段の第二のフレームへの取付部を、第二のフレーム上で上下動可能とすることで、ホイールのハブボルトの挿通穴とハブボルトの位置合わせが容易となり、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】 本発明に係るタイヤ交換補助装置の一例の正面図
【
図2】 本発明に係るタイヤ交換補助装置の一例の側面図
【
図3】 本発明に係るタイヤ交換補助装置の床面での動きを示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について、本発明に係る台車をタイヤ交換補助装置に応用した例を挙げ、具体的な図を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るタイヤ交換補助装置の一例の正面図で、
図2は、本発明に係るタイヤ交換補助装置の一例の側面図である。
【0019】
図に示したように、本発明に係るタイヤ交換補助装置は、四角形状の第一のフレーム1の床面9側の面に、第一の固定キャスター4と、自在キャスター6が取り付けられ、反対側の面には、支柱2が取り付けられている。第一の固定キャスター4は、第一のフレーム1を構成する一辺の両端に取り付けられ、
図1における左右の方向が移動容易方向である。
【0020】
また、第一の固定キャスターが取り付けられた一辺に対向する側の辺の両端には、自在キャスター6が取り付けられている。ここに示す例では、取り付けられている自在キャスターは2箇であるが、第一のフレームは、キャスターが3箇あれば支持可能なので、1箇でもよい。
【0021】
そして、支柱2には、上下動が可能な状態で、第二のフレーム3が取り付けられ、第二のフレーム3の床面9側の面には、第二のの固定キャスター5が取り付けられている。第二のフレーム3は、支柱2に設けられた摺動レール2aに、摺動部材3aを介して取り付けられ、摺動レール2aに沿って上下動する構成である。
【0022】
これによって、第一の固定キャスター4が、床面から乖離するまで、第二の固定キャスター5を下降させ、ここに示したタイヤ交換補助装置を、第二の固定キャスター5と自在キャスター6で支持することができる。第二の固定キャスターの移動容易方向は。
図2における左右方向なので、タイヤ交換補助装置の移動容易方向を互いに垂直に切り替えることができる。
【0023】
図3は、本発明に係るタイヤ交換補助装置の、床面での動きを示す図である。
図3(a)本発明に係るタイヤ交換補助装置、
図3(b)は、キャスターをすべて自在キャスターとした場合を示す。本発明に係るタイヤ交換補助装置では、任意の位置で、移動方向を直角に変えることができるが、自在キャスターのみでは、重量物を積載していると、押す方向に移動方向が、即時に追従しないので、
図3(b)に示したように、移動の経路が曲線となるを避けるのは困難である。タイヤの取付作業においては、タイヤのホイールの中心とハブの中心を正確に正対させることが必要なので、特に狭い車庫内などでは、この機構が効を奏することになる。
【0024】
また、ここに示した例では、第二のフレーム3に、円柱形状の一対のタイヤ載置用部材7が設けられている。これは、タイヤ載置用部材取付軸7aによって回転可能になっているので、第二のフレーム3の上下動機能との協働で、載置したタイヤのホールのハブボルト挿入穴とハブボルトの位置合わせを行える。なお、ここに示した例では、タイヤ載置用部材取付軸7aは、第二のフレーム3に固定されているが、第二のフレーム3の上で上下動可能とすることも可能で、これにより作業性が向上するのは勿論である。
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、移動の方向を任意の位置で直角方向に変えることが容易な台車と、それを応用したタイヤ交換補助装置を提供できる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1・・・第一のフレーム 2・・・支柱
2a・・・摺動レール 3・・・第二のフレーム
3a・・・摺動部材 4・・・第一の固定キャスター
5・・・第二の固定キャスター 6・・・自在キャスター
7・・・タイヤ載置用部材 7a・・・タイヤ載置用部材取付軸
8,8a,8b・・・タイヤ 9・・・床面
10a7,10b・・・ハブ