(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085354
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】温度補償型発振器の製造装置
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002743
(22)【出願日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】63/432,387
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596041928
【氏名又は名称】株式会社PFA
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 琢三
(72)【発明者】
【氏名】村越 剛
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正樹
(72)【発明者】
【氏名】湊 豊
(72)【発明者】
【氏名】西 信哉
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA39
5J079CA04
5J079CA05
5J079CA15
5J079FB39
5J079FB40
5J079KA06
(57)【要約】
【課題】小型でありながら、製造時間をより短縮できる温度補償型の発振器の製造装置を提供する。
【解決手段】TCXO100の製造装置10は、補償をオフにした状態で前記TCXO100の周波数を測定する複数の測定ユニット12と、補償値をTCXO100に書き込む書き込みユニット14と、前記補償をオンにした状態で周波数を測定する複数の確認ユニット16と、コントローラ20と、を備え、前記測定ユニット12および前記確認ユニット16において、TCXO100およびプローブ60がペルチェ46,70により加熱または冷却され、前記複数の測定ユニット12と、前記書き込みユニット14と、前記複数の確認ユニット16が、略U字状に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化による周波数の変動が補償された温度補償型の発振器の製造装置であって、
前記補償をオフにした状態で前記発振器をターゲット温度に加熱または冷却し、その状態における前記発振器の周波数を測定する複数の測定ユニットであって、前記ターゲット温度が互いに異なる複数の測定ユニットと、
前記補償で用いる補償値を前記発振器に書き込む書き込みユニットと、
前記補償をオンにした状態で前記発振器をターゲット温度に加熱または冷却し、その状態における前記発振器の周波数を測定する複数の確認ユニットであって、前記ターゲット温度が互いに異なる複数の確認ユニットと、
前記発振器を保持するキャリアを、搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
前記複数の測定ユニットで測定された温度と周波数とに応じた前記補償値の書き込みを前記書き込みユニットに指示するとともに、前記複数の確認ユニットで測定された周波数に基づいて書き込まれた前記補償値の適否を判断するコントローラと、
を備え、
前記測定ユニットおよび前記確認ユニットは、いずれも、
前記キャリアを介して前記発振器を加熱または冷却するキャリア側ペルチェと、
前記発振器に接触して、前記発振器の周波数を測定するプローブと、
前記プローブを加熱または冷却するプローブ側ペルチェと、
を有しており、
前記搬送経路は、往路と、折り返し部、復路と、を含む略U字状であり、
前記複数の測定ユニットは、前記搬送経路の往路に配置されており、
前記書き込みユニットは、前記搬送経路の折り返し部に配置されており、
前記複数の確認ユニットは、前記搬送経路の復路に配置されている、
ことを特徴とする温度補償型の発振器の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度補償型の発振器の製造装置であって、
前記測定ユニットの個数は、前記確認ユニットの個数と同じであり、
前記複数の測定ユニットのための複数のターゲット温度の組み合わせは、前記複数の確認ユニットのための複数のターゲット温度の組み合わせと、同じである、
ことを特徴とする温度補償型の発振器の製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の温度補償型の発振器の製造装置であって、
前記複数の測定ユニットは、往路下流側に向かうにつれて、前記ターゲット温度が、所定の方向に変化するように、配置され、
前記複数の確認ユニットは、復路下流側に向かうにつれて、前記ターゲット温度が、前記所定の方向に変化するように、配置される、
ことを特徴とする温度補償型の発振器の製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の温度補償型の発振器の製造装置であって、
前記キャリアは、その上面に形成され、それぞれが前記発振器を収容する複数の収容凹部を有し、
前記プローブは、
プローブ本体と、
前記プローブ本体の底面から突出し、前記収容凹部に収容された前記発振器に接触するプローブ針と、
前記発振器の周波数を測定する測定回路と、
前記プローブ本体および前記プローブ針を冷却または加熱するプローブ側ペルチェと、
断熱材料からなり、前記測定回路と前記プローブ本体との間に配置されて、前記測定回路を断熱する断熱要素と、
を備える、
ことを特徴とする温度補償型の発振器の製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の温度補償型の発振器の製造装置であって、
前記キャリアは、前記収容凹部と連通する吸引孔を有し、
前記測定ユニットおよび前記確認ユニットは、いずれも、
前記キャリアが載置される載置面に形成され、前記吸引孔と連通する吸引溝と、
前記吸引溝および前記吸引孔を介して前記収容凹部を吸引する吸引器と、
を備える、
ことを特徴とする温度補償型の発振器の製造装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の温度補償型の発振器の製造装置であって、
前記測定ユニットおよび前記確認ユニットは、いずれも、
前記キャリアを一時的に収容する検査空間と、
前記検査空間の搬送方向上流端および搬送方向下流端それぞれに設けられ、前記検査空間を開閉する仕切り板と、
前記検査空間にドライエアを供給するドライエア源と、
を備え、前記コントローラは、前記周波数を測定する期間中は、前記仕切り板により前記検査空間を閉鎖し、前記キャリアを搬送する期間中は、前記検査空間を開放するべく前記仕切り板を開位置に移動させる、
ことを特徴とする温度補償型の発振器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、温度変化による周波数の変動が補償された温度補償型発振器の製造装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動子(例えば水晶振動子やMEMS構造の振動子等)を用いた発振器が広く知られている。ここで、振動子の振動周波数は、当該振動子が置かれた環境の温度に応じて変動する。また、振動子の温度に対する周波数の変動特性(以下「温度特性」と呼ぶ)は、振動子の固体によって異なる。そこで、従来から、振動子の温度特性を補償し、高精度基準クロックを出力できる温度補償型発振器が提案されている。
【0003】
温度補償型発振器を製造する場合、温度補償型発振器の温度特性を測定し、測定結果に応じた補償値を温度補償型発振器に書き込む。特許文献1には、こうした補償値を調整するための技術が開示されている。特許文献1に記載の技術の場合、温度補償型発振器を温度槽に収容し、温度槽の温度を変化させながら温度補償型発振器の周波数を測定し、測定された周波数に基づいて補償値データを作成し、温度補償型発振器に補償値データを記憶させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術の場合、単一の温度槽で、複数の温度に対応する周波数を測定している。この場合、温度槽の温度を変化させるために時間がかかるため、温度補償型発振器の製造時間が長期化する。
【0006】
そこで、互いに異なるターゲット温度に設定された複数の温度槽を設けることも考えられる。この場合、温度補償型発振器を複数の温度槽に順番に投入することで、温度補償型発振器の温度を変更できる。かかる構成した場合、加熱または冷却のための時間を大幅に短縮できるため、温度補償型発振器の製造時間を短縮できる。しかし、温度槽は、通常、ヒータや、ヒートポンプ、冷凍機械等を搭載しており、大型である。かかる温度槽を複数設けた場合、製造装置全体が大型化する。
【0007】
そこで、本明細書では、小型でありながら、製造時間をより短縮できる温度補償型発振器の製造装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する温度補償型発振器の製造装置は、温度変化による周波数の変動が補償された温度補償型の発振器の製造装置であって、前記補償をオフにした状態で前記発振器をターゲット温度に加熱または冷却し、その状態における前記発振器の周波数を測定する複数の測定ユニットであって、前記ターゲット温度が互いに異なる複数の測定ユニットと、前記補償で用いる補償値を前記発振器に書き込む書き込みユニットと、前記補償をオンにした状態で前記発振器をターゲット温度に加熱または冷却し、その状態における前記発振器の周波数を測定する複数の確認ユニットであって、前記ターゲット温度が互いに異なる複数の確認ユニットと、前記発振器を保持するキャリアを、搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、前記複数の測定ユニットで測定された温度と周波数とに応じた前記補償値の書き込みを前記書き込みユニットに指示するとともに、前記複数の確認ユニットで測定された周波数に基づいて書き込まれた前記補償値の適否を判断するコントローラと、を備え、前記測定ユニットおよび前記確認ユニットは、いずれも、前記キャリアを介して前記発振器を加熱または冷却するキャリア側ペルチェと、前記発振器に接触して、前記発振器の周波数を測定するプローブと、前記プローブを加熱または冷却するプローブ側ペルチェと、を有しており、前記搬送経路は、往路と、折り返し部、復路と、を含む略U字状であり、前記複数の測定ユニットは、前記搬送経路の往路に配置されており、前記書き込みユニットは、前記搬送経路の折り返し部に配置されており、前記複数の確認ユニットは、前記搬送経路の復路に配置されている、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記測定ユニットの個数は、前記確認ユニットの個数と同じであり、前記複数の測定ユニットのための複数のターゲット温度の組み合わせは、前記複数の確認ユニットのための複数のターゲット温度の組み合わせと、同じであってもよい。
【0010】
また、前記複数の測定ユニットは、往路下流側に向かうにつれて、前記ターゲット温度が、所定の方向に変化するように、配置され、前記複数の確認ユニットは、復路下流側に向かうにつれて、前記ターゲット温度が、前記所定の方向に変化するように、配置されてもよい。
【0011】
また、前記キャリアは、その上面に形成され、それぞれが前記発振器を収容する複数の収容凹部を有し、前記プローブは、プローブ本体と、前記プローブ本体の底面から突出し、前記収容凹部に収容された前記発振器に接触するプローブ針と、前記発振器の周波数を測定する測定回路と、前記プローブ本体および前記プローブ針を冷却または加熱するプローブ側ペルチェと、断熱材料からなり、前記測定回路と前記プローブ本体との間に配置されて、前記測定回路を断熱する断熱要素と、を備えてもよい。
【0012】
また、前記キャリアは、前記収容凹部と連通する吸引孔を有し、前記測定ユニットおよび前記確認ユニットは、いずれも、前記キャリアが載置される載置面に形成され、前記吸引孔と連通する吸引溝と、前記吸引溝および前記吸引孔を介して前記収容凹部を吸引する吸引器と、を備えてもよい。
【0013】
また、前記測定ユニットおよび前記確認ユニットは、いずれも、前記キャリアを一時的に収容する検査空間と、前記検査空間の搬送方向上流端および搬送方向下流端それぞれに設けられ、前記検査空間を開閉する仕切り板と、前記検査空間にドライエアを供給するドライエア源と、を備え、前記コントローラは、前記周波数を測定する期間中は、前記仕切り板により前記検査空間を閉鎖し、前記キャリアを搬送する期間中は、前記検査空間を開放するべく前記仕切り板を開位置に移動させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本明細書で開示する温度補償型の発振器の製造装置によれば、発振器およびプローブがいずれも、ペルチェにより冷却または加熱される。ペルチェは、温度槽に比べて大幅に小さいため、装置全体を小型化できる。また、ターゲット温度ごとに測定ユニットおよび確認ユニットを設けているため、加熱または冷却に要する時間を低減できる。結果として、本明細書で開示する温度補償型の発振器の製造装置によれば、装置の小型化と、製造時間の短縮と、が両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】TCXOの製造装置の概略的な平面図である。
【
図4】水晶振動子の温度特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して温度補償型水晶発振器100(以下「TCXO100」と呼ぶ)の製造装置10について説明する。
図1は、製造装置10の概略的な平面図である。また、
図2は、
図1におけるA-A断面図である。
【0017】
はじめに、製造装置10の説明に先立って、TCXO100について説明する。
図3は、TCXO100の構成を示すブロック図である。TCXO100は、温度変化による周波数の変動を補償した水晶発振器である。具体的に説明すると、TCXO100は、電圧制御水晶発振器106(以下「VCXO106」という)を有する。このVCXO106は、水晶からなる水晶振動子102と、水晶振動子102に電圧を付加する電極104と、発振回路(図示せず)と、可変容量素子(図示せず)と、を有している。発振回路は、水晶振動子102の出力信号を増幅して水晶振動子102にフィードバックすることで、水晶振動子102を発振させ、水晶振動子102の発振に基づく発振信号を出力する。可変容量素子は、発振回路の負荷容量となる。かかる負荷容量を設けることで、後述する補償信号発生回路110からの出力電圧に応じて、VCXO106の出力信号の周波数が変化する。
【0018】
補償信号発生回路110は、温度変化による周波数の変動を補償するための電圧信号を出力する。すなわち、水晶振動子102は、その出力周波数が温度に応じて三次関数で変動する温度特性を有する。また、水晶振動子102の温度特性は、水晶振動子102ごとに個体差がある。
図4は、水晶振動子102の温度特性の一例を示す図である。
図4において、実線、太線、および破線は、それぞれ、ランダムに選択された第一、第二、および第三の水晶振動子102の温度特性を示している。
図4に示す通り、水晶振動子102の周波数偏差は、温度に対して、三次関数で変化する。また、温度特性の具体的な形状そのものは、水晶振動子102ごとにバラツキがある。
【0019】
補償信号発生回路110は、こうした温度変化に起因する周波数変動を補償する電圧信号、すなわち、補償信号を出力する。適切な補償信号が出力されることで、TCXO100からの出力周波数の変動を抑制できる。なお、上述した通り、水晶振動子102の温度特性には個体差がある。そのため、周波数変動を抑制できる適切な補償値は、水晶振動子102ごとに異なる。メモリ112には、この水晶振動子102に適した補償値と温度との対応関係が記録されている。また、温度センサ108は、TCXO100の温度を検出する。補償信号発生回路110は、温度センサ108で検出された温度を、メモリ24に記録されたデータに照らし合わせ、適切な補償値を特定し、特定された補償値に応じた補償信号を出力する。
【0020】
また、TCXO100には、複数の端子120a~120eが設けられている。第一端子120aは、VCXO106に電圧を印加するための端子である。第二端子120bは、TCXO100の出力信号を取り出すための端子である。第三端子120cは、補償信号発生回路110に駆動電圧を印加するための端子である。第四端子120dは、温度センサ108に駆動電圧を印加するための端子である。第五端子120eは、メモリ112にアクセスするために使用される端子である。なお、以下の説明において、複数の端子120a~120eを区別しない場合は、添え字のアルファベットを省略して、「端子120」と呼ぶ。端子120は、
図5に示す通り、TCXO100の一面に形成されている。
【0021】
ここで、こうしたTCXO100を製造するためには、各TCXO100に搭載されている水晶振動子102の温度特性を測定し、その温度特性に適した補償値をメモリ112に記録させる必要がある。また、補償値が記録されたTCXO100は、出荷に先立って、その温度特性が測定され、周波数変動が許容値以下であること、ひいては、記録された補償値が適正であることが確認される必要がある。
図1および
図2に示す製造装置10は、こうした温度特性の測定、補償値の書き込み、および、補償値の確認を行う。
【0022】
製造装置10は、複数の測定ユニット12Tn(n=1,2,・・・,7)と、書き込みユニット14と、複数の確認ユニット16Tnと、搬送機構18と、コントローラ20と、を有する。なお、以下では、測定ユニットおよび確認ユニットの符号において、適宜、「Tn」を省略し、「測定ユニット12」および「確認ユニット16」と表記する。
【0023】
測定ユニット12は、補償信号発生回路110による補償をオフにした状態で、TCXO100の周波数を測定するユニットである。測定ユニット12には、それぞれ、ターゲット温度Tnが設定されている。測定ユニット12は、TCXO100を、ターゲット温度Tnに加熱または冷却した状態で、周波数を測定する。なお、測定ユニット12の詳細な構成については後述する。
【0024】
ここで、「補償をオフ」とは、VCXO106の出力信号の周波数が温度に応じて修正されないのであれば、その具体的な状態は限定されない。したがって、例えば、補償信号発生回路110に駆動電圧を印加しないことで補償をオフしてもよいし、補償信号発生回路110から補償値として意味のない信号(すなわち温度に関わらず常に一定の信号)を出力させることで補償をオフしてもよい。さらに、補償信号発生回路110とVCXO106との間にスイッチを設け、当該スイッチをオフすることで、補償をオフしてもよい。
【0025】
複数のターゲット温度Tnの範囲は、TCXO100の仕様、具体的には、必要とされる動作温度範囲に応じて決定される。例えば、TCXO100の仕様として、-45℃から85℃の動作温度範囲が定められている場合、複数のターゲット温度Tnは、-45℃から85℃の範囲で設定される。すなわち、この場合、ターゲット温度T1=-45℃であり、ターゲット温度T7=85℃である。そして、T1<T2<T3<T4<T5、T6<T7を満たすように、各ターゲット温度Tnが設定される。なお、
図1では、測定ユニット12の個数を7としているが、測定ユニット12の個数は適宜変更されてもよい。測定ユニット12で測定された周波数は、対応するターゲット温度Tnとともに、コントローラ20に出力される。
【0026】
書き込みユニット14は、複数の測定ユニット12を通過したTCXO100に、補償値を書き込むユニットである。TCXO100に書き込む補償値は、コントローラ20から指示される。
【0027】
確認ユニット16は、補償信号発生回路110による補償をオンにした状態で、TCXO100の周波数を測定するユニットである。確認ユニット16にも、それぞれ、ターゲット温度Tnが設定されている。各確認ユニット16は、TCXO100をターゲット温度Tnに加熱または冷却した状態で、周波数を測定する。複数の確認ユニット16のための複数のターゲット温度Tnの組み合わせは、複数の測定ユニット12のための複数のターゲット温度Tnの組み合わせと、同じである。したがって、一つ目の確認ユニット16T1に設定されるターゲット温度T1は、一つ目の測定ユニット12T1に設定されるターゲット温度T1と、同じである。確認ユニット16で測定された周波数は、対応するターゲット温度Tnとともに、コントローラ20に出力される。
【0028】
搬送機構18は、TCXO100を、所定の搬送経路26に沿って搬送する。TCXO100は、後に詳説する通り、
図5に示すキャリア80に収容された状態で搬送される。搬送機構18は、TCXO100をキャリア80とともに搬送できるのであれば、その構成は、特に限定されない。したがって、搬送機構18は、例えばコンベヤや、ローラ等を有してもよい。
【0029】
搬送経路26は、
図1において太線の矢印で示すように、往路26oと、往路26oに対して平行な復路26rと、往路26oから復路26rに折り返す折り返し部26tと、を有する略U字状である。複数の測定ユニット12は、往路26o上に1列に並んで配置されている。また、複数の確認ユニット16は、復路26r上に1列に並んで配置されている。書き込みユニット14は、折り返し部26tに配置されている。TCXO100は、複数の測定ユニット12を順番に通過した後、書き込みユニット14に送られ、その後、複数の確認ユニット16を順番に通過する。
【0030】
次に、測定ユニット12および確認ユニット16の具体的な構成について説明する。確認ユニット16は、周波数を測定する際、TCXO100の補償をオンにする点を除いて、その構成は、測定ユニット12と同じである。したがって、以下では、
図2、
図5を参照して、測定ユニット12の構成を説明する。なお、
図5では、キャリア80の一部を破断して図示している。
【0031】
TCXO100は、
図5に示すキャリア80に収容された状態で、製造装置10に投入される。キャリア80は、熱伝導率の高い金属(例えばアルミニウムや銅等)で構成されたブロック状部材である。キャリア80の上面には、TCXO100を収容する収容凹部82が複数(図示例では8個)形成されている。収容凹部82は、TCXO100のほぼ全体を収容できる大きさである。また、収容凹部82の底面には、厚み方向に貫通する吸引孔84が形成されている。なお、
図5における収容凹部82の形状および個数は、一例である。収容凹部82の形状および個数は、適宜変更されてもよい。TCXO100は、その端子120が上方かつ外部に露出する姿勢で、収容凹部82に嵌め込まれる。
【0032】
図2に示す通り、測定ユニット12は、キャリア80が載置されるベース30と、TCXO100の周波数を測定するプローブ60と、を有する。ベース30には、ステージプレート32が部分的に埋め込まれている。ステージプレート32は、熱伝導率の高い金属からなるプレートである。周波数を測定する際、TCXO100は、このステージプレート32の上に位置する。ステージプレート32の表面には、キャリア80の吸引孔84に連通する吸引溝34が形成されている。吸引器50は、この吸引溝34および吸引孔84を介してTCXO100を吸引する。これによりTCXO100は、収容凹部82の底面に吸着されるため、TCXO100の意図しない浮き上がりが効果的に防止される。
【0033】
ステージプレート32の上側には、検査空間38が形成される。検査空間38は、ステージプレート32、仕切り板36、および蓋部材40で囲まれる空間である。蓋部材40は、検査空間38の上面を覆う板材である。蓋部材40には、後述するプローブ針64を通過させるための検査孔42が複数形成されている。各検査孔42は、キャリア80がステージプレート32に位置したとき、当該キャリア80により保持されたTCXO100の真上に位置している。この検査孔42は、蓋部材40の上側においてスライド可能なシャッタ44により開閉される。
【0034】
仕切り板36は、検査空間38の搬送方向上流端および下流端に配置され、検査空間38を開閉するドアとして機能する。
図2の例では、仕切り板36は、昇降することで、検査空間38を開閉する。仕切り板36が上昇して、検査空間38が開放されることで、キャリア80が、検査空間38の内外に移動できる。また、仕切り板36が下降すると、検査空間38が閉鎖される。
【0035】
検査空間38には、ドライエア源52からドライエアが供給される。ドライエア源52は、例えば、空気を乾燥させるドライヤや、乾燥させた空気を検査室に送り込むポンプ等を含む。そして、このように検査空間38にドライエアを充填することで、キャリア80が冷却された場合でも、結露の発生を効果的に防止できる。
【0036】
ステージプレート32の下側には、キャリア側ペルチェ46が、配置されている。キャリア側ペルチェ46は、ペルチェ素子を有している。ペルチェ素子は、周知の通り、一対の放熱板(図示せず)を有しており、電圧を印加することで、一つの放熱板(以下「発熱板」という)が発熱し、他方の放熱板(以下「吸熱板」という)が吸熱する。キャリア側ペルチェ46は、電圧が印加されることで、ステージプレート32上のキャリア80およびTCXO100を加熱または冷却する。加熱または冷却のいずれを行うかは、ターゲット温度Tnに応じて選択される。ターゲット温度Tnが常温よりも高い場合、キャリア側ペルチェ46は、キャリア80を加熱できるように、発熱板がステージプレート32に接触する姿勢で配置される。ターゲット温度Tnが常温よりも低い場合、キャリア側ペルチェ46は、キャリア80を冷却できるように、吸熱板がステージプレート32に接触する姿勢で配置される。このようにキャリア側ペルチェ46を設けることで、キャリア80およびTCXO100を、効率的に、冷却または加熱できる。
【0037】
キャリア側ペルチェ46の下側には、さらに、キャリア側チラー48が配置されている。キャリア側チラー48は、キャリア側ペルチェ46の発熱板および吸熱板の温度差を小さくするために設けられている。したがって、キャリア側ペルチェ46がキャリア80を加熱する場合、キャリア側チラー48は、キャリア側ペルチェ46の吸熱板を加熱する。また、キャリア側ペルチェ46がキャリア80を冷却する場合、キャリア側チラー48は、キャリア側ペルチェ46の発熱板を冷却する。キャリア側チラー48は、キャリア側ペルチェ46を加熱または冷却するための冷媒が流れる流路(図示せず)を有している。この流路は、測定ユニット12ごとに独立していてもよいし、複数の測定ユニット12で繋がっていてもよい。いずれにしても、キャリア側チラー48を設けることで、キャリア側ペルチェ46の発熱板および吸熱板の温度差を抑制でき、キャリア側ペルチェ46の負荷を軽減できる。
【0038】
なお、上述の説明で明らかな通り、キャリア80とステージプレート32は、キャリア側ペルチェ46からTCXO100に、あるいは、TCXO100からキャリア側ペルチェ46に、熱を伝達する伝熱部材として機能する。この伝熱部材以外の部材(例えば、蓋部材40や仕切り板36、ベース30等)は、熱伝導率の低い素材、例えば、樹脂等で構成してもよい。かかる構成とすることで、キャリア側ペルチェ46による冷却または加熱の効率をより向上できる。
【0039】
蓋部材40の上側には、プローブ60が配置されている。プローブ60は、TCXO100の周波数を測定する。プローブ60は、水平方向および垂直方向に移動することで、任意のTCXO100にアクセスできる。
【0040】
プローブ60は、プローブ本体62と、プローブ針64と、断熱要素68と、測定回路66と、プローブ側ペルチェ70と、プローブ側チラー72と、を有している。プローブ本体62は、熱伝導率の高い金属で構成されている。プローブ針64は、プローブ本体62の底面から下方に突出している針状部材である。プローブ針64は、熱伝導率が高い金属で構成される。プローブ針64は、TCXO100の端子120と機械的に接触することで、当該端子120と電気的に接続される。
【0041】
より具体的に説明すると、プローブ60には、第一端子120a、第二端子120b、第三端子120c、および、第四端子120dそれぞれに接触して電気的に接続される4種類(
図2では2種類のみ図示)のプローブ針64が設けられている。この4種類のプローブ針64を介してTCXO100に電圧が印加される、あるいは、TCXO100から信号を受信することで、TCXO100の周波数を測定できる。なお、周波数を測定する場合、メモリ112へのアクセスは不要であるため、第五端子120eに接触するプローブ針64は、設けられていない。
【0042】
プローブ本体62の側面には、プローブ側ペルチェ70が取り付けられている。プローブ側ペルチェ70は、プローブ本体62およびプローブ針64を、加熱または冷却する。加熱または冷却のいずれを行うかは、ターゲット温度Tnに応じて選択される。さらに、プローブ側ペルチェ70の背後には、プローブ側チラー72が取り付けられている。これにより、プローブ側ペルチェ70の発熱板と吸熱板との温度差が抑えられる。なお、ターゲット温度Tnと常温との差が大きい場合には、
図2の左側に図示したプローブ60のように、複数のペルチェ素子を積層してもよい。
【0043】
測定回路66は、プローブ針64と電気的に接続されたTCXO100の周波数を測定する回路である。かかる測定回路66は、例えば、プローブ針64に駆動電圧を供給するとともに、プローブ針64を介して取得した信号を周波数解析する。
【0044】
断熱要素68は、断熱材料(例えば、発泡体等)からなり、測定回路66とプローブ本体62との間に配置される部材である。この断熱要素68により、測定回路66が、プローブ側ペルチェ70から断熱される。そして、これにより、測定回路66が過度に高温、または、低温になることが防止される。
【0045】
次に、こうした製造装置10により、TCXO100を製造する流れについて説明する。TCXO100は、製造装置10への投入に先立って、予め、キャリア80の収容凹部82に収容される。また、検査空間38には、ドライエア源52により、ドライエアが充填されている。さらに、ペルチェ46,70およびチラー48,72が駆動され、ステージプレート32およびプローブ60が、ターゲット温度Tnに冷却または加熱されている。
【0046】
製造装置10に投入されたキャリア80は、搬送機構18により、最も上流側の測定ユニット12T1のステージプレート32まで搬送される。キャリア80がステージプレート32に到達すると、仕切り板36が降下して、検査空間38が閉鎖される。また、吸引器50が駆動され、TCXO100が、収容凹部82の底面に吸着される。
【0047】
TCXO100およびプローブ60が、ターゲット温度T1=-45℃まで冷却されれば、周波数の測定を開始する。具体的には、まず、シャッタ44が開放される。この状態になれば、プローブ60が、測定対象のTCXO100の真上に移動する。続いて、プローブ針64が、測定対象のTCXO100の端子120に接触するまで、プローブ60が下降する。このとき、プローブ針64は、プローブ側ペルチェ70により、ターゲット温度T1まで冷却されている。したがって、プローブ針64が、TCXO100に接触した場合でも、プローブ針64とTCXO100との間での伝熱は殆んど生じず、TCXO100を、ターゲット温度T1のまま維持できる。
【0048】
プローブ針64が、端子120に接触すれば、プローブ60の測定回路66は、TCXO100に対して適切な電圧および信号を印加し、TCXO100を駆動させる。なお、このとき、補償信号発生回路110による補償は、オフしておく。測定回路66は、TCXO100から出力された信号の周波数を、ターゲット温度T1とともに、コントローラ20に送信する。コントローラ20は、受信した周波数およびターゲット温度T1を、メモリ24に一時記憶する。
【0049】
一つのTCXO100の周波数が測定できれば、プローブ60は、次のTCXO100の真上に移動し、次のTCXO100の周波数を測定する。この動作を繰り返し、プローブ60は、キャリア80で保持された複数のTCXO100全ての周波数を測定する。
【0050】
全てのTCXO100の周波数が測定できれば、キャリア80は、次の測定ユニット12T2に搬送される。具体的には、プローブ60が、上方に退避し、シャッタ44が、閉鎖される。また、吸引器50が駆動停止し、TCXO100の吸着が解除される。さらに、仕切り板36が上昇し、検査空間38か解放される。この状態になれば、搬送機構18は、キャリア80を次の測定ユニット12T2に搬送する。
【0051】
次の測定ユニット12T2でも、同様の手順で、TCXO100の周波数が測定される。こうした周波数の測定を、全ての測定ユニット12Tnにおいて完了すれば、搬送機構18は、キャリア80を、書き込みユニット14に搬送する。
【0052】
書き込みユニット14では、TCXO100のメモリ112に、補償値が書き込まれる。具体的には、コントローラ20は、複数の測定ユニット12T1~12T7で測定されたターゲット温度Tnと周波数との組み合わせに基づいて、TCXO100それぞれに適した補償値を特定する。そして、コントローラ20は、特定された補償値の書き込みを書き込みユニット14に指示する。書き込みユニット14は、TCXO100の第五端子120eを介してメモリ24にアクセスし、メモリ24に補償値を書き込む。
【0053】
全てのTCXO100に補償値が書き込まれれば、搬送機構18は、キャリア80を一つ目の確認ユニット16T1に搬送する。確認ユニット16は、キャリア80で保持されたTCXO100の周波数を測定する。この手順は、測定ユニット12による周波数の測定手順とほぼ同じである。ただし、確認ユニット16は、補償信号発生回路110による補償をオンした状態で、周波数を測定する。例えば、確認ユニット16T1は、第三端子120cを介して補償信号発生回路110に駆動電圧を印加した状態で、TCXO100を駆動させ、出力された信号の周波数を測定する。確認ユニット16T1は、測定された周波数とターゲット温度T1とをコントローラ20に送信する。
【0054】
一つ目の確認ユニット16T1において、全てのTCXO100の周波数が測定できれば、搬送機構18は、キャリア80を次の確認ユニット16T2に搬送する。この確認ユニット16T2においても、同様の手順で、TCXO100の周波数が測定される。そして、こうした周波数の測定を、全ての確認ユニット16T1~16T7において完了できれば、コントローラ20は、各TCXO100に書き込まれた補償値の適否を判断する。すなわち、確認ユニット16では、補償値発生回路による補償をオンした状態で、TCXO100を駆動させている。そのため、補償値が適切であれば、TCXO100から出力される信号の周波数は、ターゲット温度Tnが変化しても、ほぼ一定を保つ。一方、確認ユニット16で測定された周波数がターゲット温度Tnによってバラツキがある場合、補償値に問題があると判断できる。そこで、コントローラ20は、複数の確認ユニット16T1~16T7から送信された周波数およびターゲット温度Tnに基づいて、各TCXO100の補償値の適否を判断する。補償値が不適切なTCXO100は、再度、製造装置10に投入され、再度、補償値の特定、書き込み、確認が行われる。
【0055】
ところで、これまでの説明で明らかな通り、この製造装置10では、キャリア側ペルチェ46を利用して、TCXO100を冷却または加熱している。かかる構成とすることで、温度槽を利用した従来の製造技術に比べて、装置のサイズを大幅に低減できる。すなわち、温度槽を利用する場合、TCXO100よりも十分に大きい温度槽の内部空間全体をターゲット温度Tnまで加熱または冷却する必要がある。この場合、温度槽を加熱または冷却するために、ヒートポンプ装置や、電熱式ヒータ、冷凍機械等を設ける必要がある。しかし、ヒートポンプ装置や電熱式ヒータ、冷凍機械は、いずれも、ペルチェに比べて大幅に大きく、装置の大型化を招いていた。
【0056】
そのため、温度槽を利用する場合、複数の測定ユニット12と複数の確認ユニット16との双方を設けた場合、製造装置全体が、非常に大きくなるという問題があった。そこで、温度槽を用いる場合には、補償値書き込み前の周波数測定と、補償値書き込み後の周波数測定と、を同じ温度槽で行うことが考えられる。これについて、
図8を参照して説明する。
図8は、比較例の製造装置10*の構成を示す模式図である。
【0057】
比較例の製造装置10*は、一列に配置された複数(図示例では7つ)の温度槽200Tnを有する。なお、以下では、温度槽の符号において、ターゲット温度Tnを示す「Tn」を省略する。温度槽200よりも下流側には、書き込みユニット14が配置されている。なお、
図8では、温度槽200を簡略化して図示しているが、通常、温度槽200は大型であるため、製造装置10*の全長は、10m前後となる。また、
図8において、太線矢印は、製造装置10*におけるTCXO100の搬送経路90を示している。
【0058】
比較例の製造装置10*の場合、まず、補償値が書き込まれる前のTCXO100が、複数の温度槽200を順番に通過し、周波数が測定される。コントローラ20は、測定された周波数に基づいて補償値を決定する。書き込みユニット14は、決定された補償値をTCXO100のメモリ112に書き込む。補償値が書き込まれたTCXO100は、搬送機構18により、一つ目の温度槽200まで戻される。そして、TCXO100は、再度、複数の温度槽200を順番に通過し、補償をオンした状態で周波数が測定される。
【0059】
以上の説明、および、
図8から明らかなとおり、温度槽200を用いる比較例の製造装置10*の場合、全体のサイズが大きくなりやすい。また、大型化を避けるために、補償値書き込み前のTCXO100の測定と、補償値書き込み後のTCXO100の測定と、を、同じ温度槽200で行う場合、TCXO100の搬送距離が長くなる。この場合、その分、TCXO100の製造のリードタイムの長期化を招く。また、製造装置10*の場合、温度槽200が大きいため、各温度槽200がターゲット温度Tnに到達するまでの時間がかかる。さらに、比較例の製造装置10*の場合、TCXO100は、搬送キャリアボード(図示せず)と呼ばれる基板に載置されて搬送されるが、この搬送キャリアボードは、大型で、熱容量が大きいことが多い。そのため、所定のターゲット温度Tnに到達した温度槽200に、搬送キャリアボードとともにTCXO100が投入されたとしても、この搬送キャリアボードおよびTCXO100がターゲット温度Tnに到達するまでに時間がかかる。結果として、比較例の製造装置10*の場合、TCXO100の製造のリードタイムの長期化を招く。
【0060】
一方、本願明細書で開示する製造装置10では、キャリア側ペルチェ46は、ステージプレート32およびキャリア80を介して、TCXO100を、加熱または冷却している。そのため、温度槽を利用した比較例に比べて、装置全体を大幅に小型化できる。また、キャリア80は搬送キャリアボードに比べて熱容量が小さいことが多いため、本例によれば、TCXO100を早期にターゲット温度Tnに到達させることができる。結果として、TCXO100の製造のリードタイムを短縮できる
【0061】
また、TCXO100を加熱または冷却するための構成を小型化できるため、測定ユニット12および確認ユニット16を別々に設けることができる。そして、複数の測定ユニット12および複数の確認ユニット16を、
図1に示すように、略U字状に配置できる。この場合、製造装置10の搬送経路26は、
図8に示す比較例の搬送経路90と比べて、大幅に短くなる。その結果、TCXO100の製造のリードタイムが短縮できる。
【0062】
また、製造装置10において、複数の測定ユニット12および複数の確認ユニット16は、いずれも、搬送方向下流側に近づくにつれて、ターゲット温度Tnが増加方向に変化するように配置されている。そのため、水晶振動子102の周波数が、温度の変動方向に対してヒステリシスを持つ場合でも、補償値を適切に確認できる。すなわち、水晶振動子102の中には、周辺温度を増加させたときに得られる温度特性と、周辺温度を低下させた時に得られる温度特性と、が異なる場合がある。この場合、温度を増加方向に変化させながら測定された周波数に基づいて設定された補償値の適否を、温度を低下方向に変化させながら測定された周波数で判断できない。
図1に示す製造装置10では、補償値設定のために使用される複数の測定ユニット12のターゲット温度Tnの変化方向を、補償値の適否判断のために使用される複数の確認ユニット16のターゲット温度Tnの変化方向と一致させている。そのため、水晶振動子102が、ヒステリシスを持つ場合でも、補償値の適否を適切に判断できる。
【0063】
なお、これまで説明した構成は、いずれも一例である。製造装置10は、請求項1に記載の構成を有するのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、測定ユニット12および確認ユニット16の個数は適宜変更されてもよい。さらに、ターゲット温度Tnは、一方向にのみ変化するのではなく、
図6に示すように、増加したあと低下、あるいは、低下したあと増加させてもよい。かかる構成とすることで、TCXO100を搬送経路26に沿って一巡させれば、かかる構成とすることで、温度増加時に適用される補償値と、温度低下時に適用される補償値と、の双方を特定および確認できる。また、TCXO100が、温度ヒステリシスを有さない場合、
図7に示すように、複数の測定ユニット12におけるターゲット温度Tnの変化方向を、複数の確認ユニット16におけるターゲット温度Tnの変化方向と異ならせてもよい。
【0064】
さらに、プローブ60や、検査空間38周辺の構成も適宜変更されてもよい。例えば、TCXO100の温度を適切にコントロールできるのであれば、検査空間38は、常時開放された構成でもよい。また、結露を防止できるのであれば、ドライエア源52は省略されてもよい。また、本願の製造装置は、上述したTCXOに限らず、他の発振器、例えば、MEMS発振器や、RTC用の発振器の製造に用いられてもよい。また、一部または全部のキャリア側チラー48およびプローブ側チラー72に替えて、他の放熱要素、例えば、フィン等を設けてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10,10* 製造装置、12 測定ユニット、14 書き込みユニット、16 確認ユニット、18 搬送機構、20 コントローラ、24 メモリ、26 搬送経路、26o 往路、26r 復路、26t 折り返し部、30 ベース、32 ステージプレート、34 吸引溝、36 仕切り板、38 検査空間、40 蓋部材、42 検査孔、44 シャッタ、46 キャリア側ペルチェ、48 キャリア側チラー、50 吸引器、52 ドライエア源、60 プローブ、62 プローブ本体、64 プローブ針、66 測定回路、68 断熱要素、70 プローブ側ペルチェ、72 プローブ側チラー、80 キャリア、82 収容凹部、84 吸引孔、90 搬送経路、100 TCXO、102 水晶振動子、104 電極、106 電圧制御水晶発振器、108 温度センサ、110 補償信号発生回路、112 メモリ、120 端子、200 温度槽。