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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008538
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】油圧バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20240112BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20240112BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F15B11/00 M
F15B11/17
F15B11/00 N
E02F9/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110489
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 佑一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 祐介
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA01
2D003BB02
2D003CA02
2D003DA02
3H089AA22
3H089AA27
3H089AA74
3H089AA78
3H089BB10
3H089BB15
3H089BB19
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC12
3H089DA02
3H089DA03
3H089DA07
3H089DA13
3H089DB13
3H089DB75
3H089DB86
3H089GG02
3H089HH01
3H089HH05
3H089HH16
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】2つの走行用油圧機器を備えた作業機械の直進性を向上させる。
【解決手段】油圧機器と油圧ポンプとの間に介在し、バルブ本体20に設けられたスプールを動作させることにより、油圧機器に対して油圧ポンプからの油の供給制御を行う油圧バルブ装置1であって、バルブ本体20は、2つの走行用油圧モータ7に対応して設けられた個別の走行用スプール34と、油圧シリンダ11,12に対応して設けられたシリンダ用スプール33と、ポンプポート22A,22Bを介して油圧ポンプに接続される2つのポンプ油路21A,21Bとを備え、2つの走行用スプール34は、ポンプポート22A,22Bからの距離が互いに等しくなる位置においてそれぞれ他のスプール33,35を経由することなく個別のポンプ油路21A,21Bに接続されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧機器と油圧ポンプとの間に介在し、バルブ本体に設けられたスプールを動作させることにより、前記油圧機器に対して前記油圧ポンプからの油の供給制御を行う油圧バルブ装置であって、
前記バルブ本体は、
2つの走行用油圧機器に対応して設けられた個別の走行用スプールと、
作業機用油圧機器に対応して設けられた作業機用スプールと、
ポンプポートを介して油圧ポンプに接続される2つのポンプ油路と
を備え、
2つの走行用スプールは、前記ポンプポートからの距離が互いに等しくなる位置においてそれぞれ他のスプールを経由することなく個別のポンプ油路に接続されていることを特徴とする油圧バルブ装置。
【請求項2】
前記2つのポンプ油路は、互いに平行となるように前記バルブ本体に設けられ、
前記ポンプポートは、それぞれのポンプ油路の中間部に設けられ、
前記作業機用スプールは、前記ポンプ油路において前記ポンプポートよりも一方側に位置する部分に接続され、前記走行用スプールは、前記ポンプ油路において前記ポンプポートよりも他方側に位置する部分に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ装置。
【請求項3】
前記2つのポンプ油路は、いずれか一方の端部の間が合分流切換バルブを有した合分流油路を介して互いに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧バルブ装置に関するもので、詳細には走行用油圧機器に対応して設けられた走行用スプール及び作業機用油圧機器に対応して設けられた作業機用スプールを備えた油圧バルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業機械においては、走行用油圧機器である油圧モータ及び作業機用油圧機器である油圧シリンダが設けられており、これらの油圧機器を適宜動作させることによって所望の作業を行うようにしている。それぞれの油圧機器と、油の供給源となる油圧ポンプとの間には、油圧機器に対する油圧ポンプからの油の供給制御を行う油圧バルブ装置が設けられている。すなわち、油圧バルブ装置は、バルブ本体にそれぞれの油圧機器に対応して設けられた個別のスプールを備えており、スプールを動作させることによって油圧機器に対する油の供給制御を行うことが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-113809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な作業機械では、履帯等の走行装置が車体の左右にそれぞれ設けてあり、これらの走行装置を駆動するための油圧モータも2つ設けられている。このため、左右の走行装置を独立して駆動することにより、前進や後進の他、作業機械の進行方向を適宜変更して所望の軌道に沿って走行することが可能となっている。しかしながら、上述の油圧バルブ装置では、左右の油圧モータに対する油の供給流量が同じとなるように2つの走行用スプールを操作した場合にも、実際の油圧モータに供給される油の圧力や流量に差が生じ、作業機械が直進しない事態が生じ得るのが実情である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、2つの走行用油圧機器を備えた作業機械に適用した場合にその直進性を向上させることのできる油圧バルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る油圧バルブ装置は、油圧機器と油圧ポンプとの間に介在し、バルブ本体に設けられたスプールを動作させることにより、前記油圧機器に対して前記油圧ポンプからの油の供給制御を行う油圧バルブ装置であって、前記バルブ本体は、2つの走行用油圧機器に対応して設けられた個別の走行用スプールと、作業機用油圧機器に対応して設けられた作業機用スプールと、ポンプポートを介して油圧ポンプに接続される2つのポンプ油路とを備え、2つの走行用スプールは、前記ポンプポートからの距離が互いに等しくなる位置においてそれぞれ他のスプールを経由することなく個別のポンプ油路に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポンプポートから2つの走行用スプールの距離が同一であるため、油の通過経路長の相違に起因する問題が生じない。しかも、途中に他のスプールが介在しないため、圧力損失の相違に起因する問題も生じない。これらの結果、2つの走行用油圧機器に対して油の供給流量が同じとなるように走行用スプールを操作すれば、実際に2つの走行用油圧機器に対する油の供給圧力及び供給流量を等しくすることができ、適用する作業機械の直進性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態である油圧バルブ装置の内部を概念的に示す透視斜視図である。
図2図2は、図1に示した油圧バルブ装置の内部を別の角度から概念的に示す透視斜視図である。
図3図3は、図1に示した油圧バルブ装置において作業機用スプールの構成についてのみ示したもので、(a)は図1に対応した透視斜視図、(b)は図2に対応した透視斜視図である。
図4図4は、図1に示した油圧バルブ装置において走行用スプールの構成についてのみ示したもので、(a)は図1に対応した透視斜視図、(b)は図2に対応した透視斜視図である。
図5図5は、図1に示した油圧バルブ装置において旋回用スプールの構成についてのみ示したもので、(a)は図1に対応した透視斜視図、(b)は図2に対応した透視斜視図である。
図6図6は、図1に示した油圧バルブ装置の適用対象となる作業機械を示すもので、(a)は側面図、(b)は後面図、(c)は平面図である。
図7図7は、図1に示した油圧バルブ装置を適用した作業機械の油圧回路を模式的に示した平面図である。
図8図8は、図1に示した油圧バルブ装置を前面から見た正面図である。
図9図9は、図8の左側面図である。
図10図10は、図8の右側面図である。
図11図11は、図8の背面図である。
図12図12は、図8の平面図である。
図13図13は、図8の底面図である。
図14図14は、図8におけるX1-X1線断面図である。
図15図15は、図8におけるX2-X2線断面図である。
図16図16は、図8におけるX3-X3線断面図である。
図17図17は、図8におけるX4-X4線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る油圧バルブ装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1図5は、本発明の実施の形態である油圧バルブ装置を概念的に示したものである。ここで例示する油圧バルブ装置1は、図6図7に示すように、下部走行体2の上部に上部旋回体3、ブーム4、アーム5を備えた作業機械を適用対象とするものである。下部走行体2は、両側に履帯6を備えるとともに、それぞれの履帯6に対応した個別の走行用油圧モータ(走行用油圧機器)7を備えるもので、走行用油圧モータ7を介して履帯6を駆動することにより走行することが可能である。上部旋回体3は、下部走行体2に対して上下に沿った旋回軸回りに回転可能に支持させたものである。下部走行体2と上部旋回体3との間には、下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回させることができるように旋回用油圧モータ8が設けてある。走行用油圧モータ7及び旋回用油圧モータ8は、それぞれ2つの供給ポート7a,8aを有したもので、油の供給方向を変更することにより正逆双方向に回転することが可能である。上部旋回体3には、油圧ポンプ9が搭載してある。油圧ポンプ9は、エンジン10によって駆動されるもので、最大吐出流量が同一となるものが上部旋回体3に2つ用意してある。図示の例では、上部旋回体3の後方部において左側にエンジン10が搭載してあり、このエンジン10に隣接する状態で上部旋回体3の後方部において右側となる部分に2つの油圧ポンプ9が搭載してある。ブーム4は、水平方向に沿った支持軸により、基端部を介して上部旋回体3に回転可能に支持させてある。アーム5は、水平方向に沿った支持軸により、基端部を介してブーム4の先端部に回転可能に支持させてある。上部旋回体3とブーム4との間にはブーム用油圧シリンダ(作業機用油圧機器)11が設けてあり、ブーム4とアーム5との間にはアーム用油圧シリンダ(作業機用油圧機器)12が設けてある。ブーム用油圧シリンダ11及びアーム用油圧シリンダ12は、それぞれ単一のピストンロッドを備えた片ロッド複動型のものである。ブーム用油圧シリンダ11は、シリンダ本体11aを介して上部旋回体3に支持してあり、かつピストンロッド11bを介してブーム4に支持してある。アーム用油圧シリンダ12は、シリンダ本体12aを介してブーム4に支持してあり、かつピストンロッド12bを介してアーム5に支持してある。
【0011】
油圧バルブ装置1は、上述した走行用油圧モータ7、旋回用油圧モータ8、ブーム用油圧シリンダ11、アーム用油圧シリンダ12(以下、これらを油圧機器と総称する場合がある)と油圧ポンプ9との間に介在し、油圧機器7,8,11,12に対して油圧ポンプ9からの油の供給制御を行うもので、図1に示すように、バルブ本体20を備えている。バルブ本体20は、図1において上下方向に沿って縦長となる直方体状に構成したものである。以下の説明においては便宜上、図1においてバルブ本体20の右斜め手前に位置する面を前面20aと称し、前面20aに平行となる面を後面20b、両側に位置する2つの面を側面20c,20dと称する。また、図1において上方に位置する面を上面20e、下方に位置する面を下面20fと称する。
【0012】
図1図5図8図17に示すように、バルブ本体20には、内部に2本のポンプ油路21A,21Bが設けてある。ポンプ油路21A,21Bは、それぞれがバルブ本体20の上下方向に沿って直線状に延在するもので、互いに同一の内径を有するように形成してある。図示の例では、後面20b側に片寄った部分に互いに平行となる状態で2つのポンプ油路21A,21Bが左右対称となる位置に並設してある。図には明示していないが、2つのポンプ油路21A,21Bの下端は、いずれも閉塞してある。ポンプ油路21A,21Bの下端を閉塞する場合には、一旦油路を形成した後にプラグを装着するようにしても良い。2つのポンプ油路21A,21Bの上端は、それぞれバルブ本体20の上面20eに開口している。本実施の形態では、それぞれのポンプ油路21A,21Bがポンプポート22A,22Bを介して個別の油圧ポンプ9に接続してある。ポンプポート22A,22Bは、ポンプ油路21A,21Bから後方に向けて直線状に延在したもので、バルブ本体20の後面20bに開口している。図には明示していないが、ポンプポート22A,22Bから油圧ポンプ9までの距離は互いに等しい。
【0013】
それぞれのポンプ油路21A,21Bには、ポンプポート22A,22Bとの接続部よりも上方に位置する部分にシリンダ用スプール孔23が上下に2つずつ設けてある。また、それぞれのポンプ油路21A,21Bには、ポンプポート22A,22Bとの接続部よりも下方に位置する部分に走行用スプール孔24が1つずつ設けてある。さらにバルブ本体20の前面20aから見て左側に配置されたポンプ油路21Aには、走行用スプール孔24よりも下方に位置する部分に旋回用スプール孔25が1つ設けてある。シリンダ用スプール孔23、走行用スプール孔24、旋回用スプール孔25は、それぞれバルブ本体20の前後方向に沿って直線状に延在するもので、対応するポンプ油路21A,21Bを貫通することによってそれぞれのポンプ油路21A,21Bに連通している。それぞれのスプール孔23,24,25の両端は、いずれも閉塞してある。
【0014】
シリンダ用スプール孔23には、バルブ本体20の前面20a側に近接した部分にそれぞれシリンダポート23aが設けてある。シリンダポート23aは、個々のシリンダ用スプール孔23においてバルブ本体20の側面20c,20dに対向する側方部分からそれぞれ側面20c,20dに向けて延在した後、前面20a側に向けて屈曲したもので、バルブ本体20の前面20aに開口している。バルブ本体20の前面20aから見て右上に開口するシリンダポート23aには、ブーム用油圧シリンダ11のロッド室11Hとの間を連通するブーム用ロッド油路11Haが接続してある。バルブ本体20の前面20aから見て右下に開口するシリンダポート23aには、ブーム用油圧シリンダ11のボトム室11Bとの間を連通するブーム用ボトム油路11Baが接続してある。同様に、バルブ本体20の前面20aから見て左上に開口するシリンダポート23aには、アーム用油圧シリンダ12のボトム室12Bとの間を連通するアーム用ボトム油路12Baが接続してある。バルブ本体20の前面20aから見て左下に開口するシリンダポート23aには、アーム用油圧シリンダ12のロッド室12Hとの間を連通するアーム用ロッド油路12Haが接続してある。
【0015】
走行用スプール孔24には、それぞれ中間部及びバルブ本体20の前面20a側に近接した部分に走行モータポート24a1,24a2が設けてある。走行用スプール孔24の中間部に設けた走行モータポート24a1は、それぞれバルブ本体20の上面20eに対向する上方部分から上面20eに向けて延在した後、前面20a側に向けて屈曲したもので、バルブ本体20の前面20aに開口している。バルブ本体20の前面20aに近接した部分に設けた走行モータポート24a2は、それぞれバルブ本体20の側面20c,20dに対向する側方部分から側面20c,20dに向けて延在した後、前面20a側に向けて屈曲したもので、バルブ本体20の前面20aに開口している。バルブ本体20の前面20aから見て左側に開口する2つの走行モータポート24a1,24a2には、それぞれ下部走行体2の右側に配置された走行用油圧モータ7の供給ポート7aとの間を連通する走行用油圧モータ油路24MA1,24MA2に接続してある。バルブ本体20の前面20aから見て右側に開口する2つの走行モータポート24a1,24a2には、それぞれ下部走行体2の左側に配置された走行用油圧モータ7の供給ポート7aとの間を連通する走行用油圧モータ油路24MB1,24MB2に接続してある。それぞれの走行用油圧モータ7に対する油の供給条件は左右で同一である。つまり一方の走行用油圧モータ7に接続した走行用油圧モータ油路24MA1+24MA2の経路長と、もう一方の走行用油圧モータ7に接続した走行用油圧モータ油路24MB1+24MB2の経路長とは互いに等しく、走行用油圧モータ油路24MA1,24MA2,24MB1,24MB2の内径も互いに同一である。
【0016】
旋回用スプール孔25には、それぞれ中間部及びバルブ本体20の前面20a側に近接した部分に旋回モータポート25a1,25a2が設けてある。旋回用スプール孔25の中間部に設けた旋回モータポート25a1は、バルブ本体20の前面20aから見て右側の側面20dに対向する側方部分から側面20dに向けて延在した後、前面20a側に向けて屈曲したもので、バルブ本体20の前面20aに開口している。バルブ本体20の前面20aに近接した部分に設けた旋回モータポート25a2は、バルブ本体20の前面20aから見て左側の側面20cに対向する側方部分から側面20cに向けて延在した後、バルブ本体20の前面20a側に向けて屈曲したもので、バルブ本体20の前面20aに開口している。2つの旋回モータポート25a1,25a2には、それぞれ旋回用油圧モータ8の供給ポート8aとの間を連通する旋回用油圧モータ油路25Mに接続してある。
【0017】
上述したシリンダ用スプール孔23、走行用スプール孔24、旋回用スプール孔25には、それぞれ個別のスプールが配設してある。スプールは、図には明示していないが、個別のEPCバルブ(電磁比例制御バルブ)からパイロット圧が与えられた場合に軸心方向に沿って移動するものである。より具体的に説明すると、シリンダ用スプール孔23に配設したシリンダ用スプール(作業機用スプール)33は、軸方向に沿って移動することにより、ポンプ油路21A,21Bとシリンダポート23aとの間の断続状態を切り替えるもので、シリンダ用スプール孔23とによってシリンダ用方向切換バルブ33Vを構成している。同様に、走行用スプール孔24に配設した走行用スプール34は、軸方向に沿って移動することにより、ポンプ油路21A,21Bと走行モータポート24a1,24a2との間の断続状態を切り替えるものであり、走行用スプール孔24とによって走行用方向切換バルブ34Vを構成している。旋回用スプール孔25に配設した旋回用スプール35は、軸方向に沿って移動することにより、ポンプ油路21Aと旋回モータポート25a1,25a2との間の断続状態を切り替えるもので、旋回用スプール孔25とによって旋回用方向切換バルブ35Vを構成している。図には明示していないが、それぞれのスプール33,34,35に対応した複数のEPCバルブは、バルブ本体20の後面20bに設けた収容ボックスEPCBに収容してある。
【0018】
また、バルブ本体20の上面20eには、合分流切換ユニット40のユニットブロック41が配設してある。ユニットブロック41は、バルブ本体20の上面20eに開口した2つのポンプ油路21A,21Bの開口を同時に覆うことのできる大きさを有したもので、内部に合分流油路42及びバルブスプール孔43を有している。合分流油路42は、ユニットブロック41の内部において左右方向に延在した後、それぞれの端部が下方に向けて屈曲し、ユニットブロック41の下面に開口したものである。この合分流油路42は、下端開口を介してそれぞれポンプ油路21A,21Bの上端に接続してある。バルブスプール孔43は、前後方向に沿って直線状に延在するもので、合分流油路42において左右に延在する部分の中間部を貫通することによって合分流油路42に連通している。バルブスプール孔43の両端部は、いずれも閉塞してある。このバルブスプール孔43には、合分流用スプール44が配設してある。合分流用スプール44は、EPCバルブからパイロット圧が与えられた場合に軸心方向に沿って移動することにより、合分流油路42の断続状態を切り替えるもので、バルブスプール孔43とによって合分流切換バルブ44Vを構成している。
【0019】
上述の油圧バルブ装置1は、バルブ本体20の前面20aを作業機械の前方に向け、かつ上面20eが上方となる状態で、上部旋回体3においてエンジン10よりも前方、かつ左右方向のほぼ中央となる位置に搭載してある。この油圧バルブ装置1を備えた作業機械では、図示せぬ操作レバーを操作すると、EPCバルブを介して対応するスプール33,34,35,44が適宜動作することになり、油圧機器7,8,11,12に対する油圧ポンプ9からの油の供給状態が変更される。例えば、バルブ本体20の前面20aから見て右上に位置する部分に配設したシリンダ用スプール33の動作によってポンプ油路21Bとシリンダポート23aとの間が連通された場合には、油圧ポンプ9からの油がポンプ油路21B、シリンダポート23a、ブーム用ロッド油路11Haを介してブーム用油圧シリンダ11のロッド室11Hに供給されることになる。この結果、ブーム用油圧シリンダ11が縮退することになり、作業機械に対してブーム4の先端を下方に移動する動作を実施させることが可能となる。同様に、バルブ本体20の前面20aから見て左上に位置する部分に配設したシリンダ用スプール33の動作によってポンプ油路21Aとシリンダポート23aとの間が連通された場合には、油圧ポンプ9からの油がポンプ油路21A、シリンダポート23a、アーム用ボトム油路12Baを介してアーム用油圧シリンダ12のボトム室12Bに供給されることになる。この結果、アーム用油圧シリンダ12が伸長することになり、作業機に対してアーム5の先端を上部旋回体3に引き寄せる動作を実施させることが可能となる。
【0020】
この間、合分流用スプール44によって合分流油路42を遮断している状態では、いずれか一方のポンプ油路21A,21Bを通じて油圧シリンダ11,12に油が供給されることになる。これに対して、合分流用スプール44によって合分流油路42を連通状態とすると、バルブ本体20において一方の油圧ポンプ9から一方のポンプ油路21Aに供給された油と、他方の油圧ポンプ9から他方のポンプ油路21Bに供給された油とを合流させることが可能となる。これにより、一方のポンプ油路21Aに接続されたシリンダポート23aに対して他方のポンプ油路21Bからも油を供給することができ、油圧シリンダ11,12の動作を高速化することができるようになる。しかも、上述の油圧バルブ装置1によれば、合分流用スプール44によって構成される合分流切換バルブ44Vが、それぞれのポンプ油路21A,21Bの上端部を接続する合分流油路42に設けてあるとともに、それぞれのポンプ油路21A,21Bにおいてポンプポート22A,22Bとの接続部よりも上方に位置する部分にシリンダ用スプール33が接続してある。従って、合分流切換バルブ44Vを通過した油が目的のシリンダ用スプール33に至るまでに、ポンプポート22A,22Bとの接続部よりも下方に配設した走行用スプール34や旋回用スプール35を通過することがない。さらに、合分流切換バルブ44Vを通過した油が目的のシリンダ用スプール33に至るまでに他方の油圧ポンプ9から供給された油と合流することがないため、油路での圧力損失を抑えることが可能となる。これらの結果、圧力損失を最小限に抑えた状態で目的のシリンダ用スプール33に対してより多くの油を効率良く供給することが可能となる。
【0021】
一方、操作レバーを操作して走行用油圧モータ7に油を供給すれば、履帯6を介して作業機械を走行させることができ、また旋回用油圧モータ8に油を供給すれば下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回させることが可能となる。ここで、上述の油圧バルブ装置1によれば、それぞれのポンプ油路21A,21Bにはポンプポート22A,22Bとの接続部よりも下方に位置する部分に走行用スプール34が設けてある。ポンプポート22A,22Bからそれぞれの走行用スプール34までの油の経路は互いに同一である。しかも、ポンプポート22A,22Bよりも下方に位置する部分においてはいずれも最初に走行用スプール34が接続してあり、他のスプール33,35は介在していない。つまり、上述の油圧バルブ装置1によれば、2つの走行用スプール34に対して油の通過経路長の相違に起因する問題が生じることはなく、また、圧力損失の相違に起因する問題も生じることがない。これらの結果、操作レバーによって直進操作を行えば、2つの走行用スプール34に対して油の供給圧力及び供給流量を等しくすることができ、適用する作業機械の直進性を向上させることが可能となる。
【0022】
なお、上述した実施の形態では、作業機用スプールとして、作業機械のブーム4及びアーム5に対応して設けられた4つのシリンダ用スプール33を備えるものを例示しているが、その他の作業機用スプールを設けて油圧バルブ装置を構成することも可能である。例えば、上述の作業機械であれば、アーム5の先端部に設けられたバケット13を動作させるためのバケット用油圧シリンダに対応してバケット用スプールを設けた油圧バルブ装置を構成しても良い。
【0023】
また、上述した実施の形態では、ポンプ油路21A,21Bにおいてポンプポート22A,22Bとの接続部よりも一方側となる上方部分に作業機用スプール(シリンダ用スプール33)を設ける一方、ポンプポート22A,22Bとの接続部よりも他方側となる下方部分に走行用スプール34を設けるようにしているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、2つの走行用スプール34が、ポンプポート22A,22Bからの距離が互いに等しくなる位置においてそれぞれ他のスプール33,35を経由することなく個別のポンプ油路21A,21Bに接続されていれば、2つの走行用スプール34がポンプポート22A,22Bとの接続部よりも上方部に設けてあっても良いし、一方の走行用スプール34がポンプポートとの接続部よりも上方で、他方の走行用スプール34がポンプポートとの接続部よりも下方に設けてあっても構わない。なお、ポンプ油路21A,21Bに対応して個別の油圧ポンプ9を接続するようにしているが、単一の油圧ポンプからの油をポンプ油路に供給するようにしても良い。
【0024】
さらに、上述した実施の形態では、2つのポンプ油路21A,21Bの間を、合分流切換バルブ44Vを有した合分流油路42を介して互いに接続しているが、本発明は必ずしも合分流油路42を有している必要はない。
【符号の説明】
【0025】
1 油圧バルブ装置
7 走行用油圧モータ
9 油圧ポンプ
11 ブーム用油圧シリンダ
12 アーム用油圧シリンダ
20 バルブ本体
21A,21B ポンプ油路
22A,22B ポンプポート
33 シリンダ用スプール
34 走行用スプール
42 合分流油路
44V 合分流切換バルブ
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