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特開2024-85386アデノウイルス定量用キット及びアデノウイルス定量方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085386
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】アデノウイルス定量用キット及びアデノウイルス定量方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/70 20060101AFI20240619BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20240619BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20240619BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240619BHJP
【FI】
C12Q1/70 ZNA
C12Q1/6888 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023195029
(22)【出願日】2023-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】517448489
【氏名又は名称】合同会社H.U.グループ中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二神 健
(72)【発明者】
【氏名】森 正敏
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】PCRによって、複数の型のアデノウイルスを同時に高精度で定量することが可能なアデノウイルス定量用キットを提供すること。
【解決手段】フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み、前記フォワードプライマーが、それぞれ特定の配列である4種類の混合プライマーからなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、特定の配列を有する混合プライマーであるリバースプライマーを含む、アデノウイルス定量用キットとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の型のアデノウイルスを同時にPCRで定量するための、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマー対を含むキットであり、
前記フォワードプライマーが、
配列番号:1に記載の次の(1):
5’-CSCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(1)
[(1)中、SはG又はCを示し、KはG又はTを示し、DはA又はG又はTを示す。]で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF1、
配列番号:2に記載の次の(2):
5’-CGCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(2)
[(2)中、KはG又はTを示し、DはA又はG又はTを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF2、
配列番号:3に記載の次の(3):
5’-CCCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(3)
[(3)中、KはG又はTを示し、DはA又はG又はTを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF3、及び
配列番号:4に記載の次の(4):
5’-CCCAGTGGKCDTACATGCAYA-3’…(4)
[(4)中、KはG又はTを示し、DはA又はG又はTを示し、YはT又はCを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF4
からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、
前記リバースプライマーが、
配列番号:5に記載の次の(5):
5’-YACNGTGGGGTTTCTAAAY-3’…(5)
[(5)中、Yは互いに独立にT又はCを示し、NはA又はG又はC又はTを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーR1を含む、
アデノウイルス定量用キット。
【請求項2】
前記リバースプライマーが、
配列番号:6に記載の次の(6):
5’-CACAGTGGGATTTCTGAAC-3’…(6)
で示されるヌクレオチド配列を含むプライマーR2、
配列番号:7に記載の次の(7):
5’-TACAGTGGGATTTCTAAAC-3’…(7)
で示されるヌクレオチド配列を含むプライマーR3、及び
配列番号:8に記載の次の(8):
5’-TACGGTAGGATTTCTAAAC-3’…(8)
で示されるヌクレオチド配列を含むプライマーR4
からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載のアデノウイルス定量用キット。
【請求項3】
各プライマーの長さが、それぞれ独立に、19~29塩基である、請求項1に記載のアデノウイルス定量用キット。
【請求項4】
プローブをさらに含み、
前記プローブが、
配列番号:9に記載の次の(9):
5’-CACCAGACCCGGGCTCAGGTACTCC-3’…(9)
で示されるヌクレオチド配列又はその相補配列を含むプローブP1、及び
配列番号:10に記載の次の(10):
5’-CACCAGACCSGGRCTCAGGTACTCC-3’…(10)
[(10)中、SはG又はCを示し、RはG又はAを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列又はそれらの各相補配列を含むプローブを含む混合プローブP2
からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のアデノウイルス定量用キット。
【請求項5】
前記プローブが、
配列番号:11に記載の(11):
5’-CACGAGGCCGGGACTCAGGTACTCC-3’…(11)
で示されるヌクレオチド配列又はその相補配列を含むプローブP3
をさらに含む、請求項4に記載のアデノウイルス定量用キット。
【請求項6】
各プローブが、標識物質及び前記標識物質に由来するシグナルを抑制する物質を備える標識プローブである、請求項4に記載のアデノウイルス定量用キット。
【請求項7】
各プローブの長さが、それぞれ独立に、25~33塩基である、請求項4に記載のアデノウイルス定量用キット。
【請求項8】
試料中の複数の型のアデノウイルスを同時にPCRで定量する方法であり、
試料中のアデノウイルスの標的ヌクレオチド配列を鋳型として、請求項1~7のうちのいずれか一項に記載のキットを用い、ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的ヌクレオチド配列が増幅された増幅産物を得る増幅工程、及び
前記増幅産物を検出して前記アデノウイルスを定量する定量工程
を含む、アデノウイルス定量方法。
【請求項9】
前記キットが請求項6に記載のキットであり、
前記増幅工程が、前記標識プローブがハイブリダイズした前記標的ヌクレオチド配列を鋳型とする工程であり、
前記定量工程において、前記増幅産物の検出が、前記標的ヌクレオチド配列の増幅に伴って分解された標識プローブの標識物質に由来するシグナルの検出である、
請求項8に記載のアデノウイルス定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アデノウイルス定量用キット及びアデノウイルス定量方法に関し、より詳しくは、ヒトアデノウイルス定量用キット及びそれを用いたヒトアデノウイルス定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトに感染するアデノウイルス(AdV、ヒトアデノウイルス(HAdV))は、呼吸器疾患、眼疾患、消化器疾患等を引き起こすウイルスであり、現在、疾患毎にA~Gの7つの種に大きく分類され、100以上の型が存在している。例えば、主にB種(B1種)の3型又は7型の感染によって急性呼吸器疾患が引き起こされ、特に7型によって重症肺炎が引き起こされ、髄膜炎、脳炎、心筋炎等が併発したり、発熱や咳等の症状が長引くことで重症になることが示唆されている。また、咽頭結膜熱(プール熱)は、特に3型によって乳幼児で発症することが多く、高熱及び微熱が4日程続き、かつての流行とされていた。さらに、例えば、主にD種の8型、19型(19a型とも称される)、37型、53型、54型、56型等の新型アデノウイルスによって流行性角結膜炎(EKC)が引き起こされ、主にB種(B2種)の11型によって出血性膀胱炎が引きこされ、主にA種の31型やF種の40型又は41型によって胃腸炎が引き起こされる(非特許文献1、非特許文献2)。また、比較的稀ではあるが、C種(1型、2型、5型、6型等)によって肝炎が引き起こされることも報告されている(非特許文献3)。
【0003】
上述のように様々な疾患がアデノウイルスによって引き起こされるため、アデノウイルスの検出、定量はその診断に重要である。アデノウイルスを検出、定量する方法としては、リアルタイム定量PCRによる方法が迅速な方法として有用であり、例えば、国立感染症研究所(National Institute of Infectious Diseases,NIID)が推奨する方法(非特許文献1)や、アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention,CDC)が推奨する方法(非特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】花岡希ら,「病原体検出・検査マニュアル 腸管アデノウイルス(感染性胃腸炎)」,国立感染症研究所 感染症情報センター,2022年5月 Ver.2
【非特許文献2】国立感染症研究所,「アデノウイルス解説ページ-アデノウイルスの種類と病気」,[on line],2014年1月29日,[2023年7月19日検索],インターネット<https://www.niid.go.jp/niid/ja/adeno-pfc-m/2110-idsc/4th/4326-adeno-virus-page2.html>
【非特許文献3】恩田佳幸,「アデノウイルス肝炎について」,IASR Vol.42,2021年4月号,p.70
【非特許文献4】Albert Heimら,Journal of Medical Virology,70,2003年,p.228-239
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らがアデノウイルス定量方法について検討をおこなったところ、上記の国立感染症研究所が推奨する方法やアメリカ疾病予防管理センターが推奨する方法は複数の型のアデノウイルスを同時に検出することを目的とした方法であるが、これらの方法で得られる定量値は、アデノウイルスの型によっては、理論値から100倍以上の差が認められることを見出した。他方、全ての型に対してそれぞれプライマー対を設計することで複数の型を高精度で定量することは可能となるが、このようなプライマー対はその数が膨大になることから実用的ではない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、PCRによって、複数の型のアデノウイルスを同時に高精度で定量することが可能なアデノウイルス定量用キット、及びそれを用いたアデノウイルス定量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、複数のアデノウイルスの型と極めて膨大な数のプライマーとの組み合わせについて鋭意検討を行なった。その結果、フォワードプライマーとして特定の混合プライマーと、リバースプライマーとして特定の混合プライマーとの組み合わせを用いることにより、全ての型にそれぞれ対応するプライマー対を用いなくとも、多くの型のアデノウイルスに対して、理論値に十分に近い高精度の定量値を得られることを見出した。したがって、かかる特定の必要最小限のプライマーの組み合わせで複数の型のアデノウイルスをPCRにより同時に高精度で定量することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、アデノウイルス定量用キット及びそれを用いたアデノウイルス定量方法に関し、より詳しくは、以下を提供するものである。
[1]
複数の型のアデノウイルスを同時にPCRで定量するための、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマー対を含むキットであり、
前記フォワードプライマーが、
配列番号:1に記載の次の(1):
5’-CSCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(1)
[(1)中、SはG又はCを示し、KはG又はTを示し、DはA又はG又はTを示す。]で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF1、
配列番号:2に記載の次の(2):
5’-CGCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(2)
[(2)中、KはG又はTを示し、DはA又はG又はTを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF2、
配列番号:3に記載の次の(3):
5’-CCCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(3)
[(3)中、KはG又はTを示し、DはA又はG又はTを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF3、及び
配列番号:4に記載の次の(4):
5’-CCCAGTGGKCDTACATGCAYA-3’…(4)
[(4)中、KはG又はTを示し、DはA又はG又はTを示し、YはT又はCを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF4
からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、
前記リバースプライマーが、
配列番号:5に記載の次の(5):
5’-YACNGTGGGGTTTCTAAAY-3’…(5)
[(5)中、Yは互いに独立にT又はCを示し、NはA又はG又はC又はTを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーR1を含む、
アデノウイルス定量用キット。
[2]
前記リバースプライマーが、
配列番号:6に記載の次の(6):
5’-CACAGTGGGATTTCTGAAC-3’…(6)
で示されるヌクレオチド配列を含むプライマーR2、
配列番号:7に記載の次の(7):
5’-TACAGTGGGATTTCTAAAC-3’…(7)
で示されるヌクレオチド配列を含むプライマーR3、及び
配列番号:8に記載の次の(8):
5’-TACGGTAGGATTTCTAAAC-3’…(8)
で示されるヌクレオチド配列を含むプライマーR4
からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含む、[1]に記載のアデノウイルス定量用キット。
[3]
各プライマーの長さが、それぞれ独立に、19~29塩基である、[1]又は[2]に記載のアデノウイルス定量用キット。
[4]
プローブをさらに含み、
前記プローブが、
配列番号:9に記載の次の(9):
5’-CACCAGACCCGGGCTCAGGTACTCC-3’…(9)
で示されるヌクレオチド配列又はその相補配列を含むプローブP1、及び
配列番号:10に記載の次の(10):
5’-CACCAGACCSGGRCTCAGGTACTCC-3’…(10)
[(10)中、SはG又はCを示し、RはG又はAを示す。]
で示される各ヌクレオチド配列又はそれらの各相補配列を含むプローブを含む混合プローブP2
からなる群から選択される少なくとも1つを含む、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載のアデノウイルス定量用キット。
[5]
前記プローブが、
配列番号:11に記載の(11):
5’-CACGAGGCCGGGACTCAGGTACTCC-3’…(11)
で示されるヌクレオチド配列又はその相補配列を含むプローブP3
をさらに含む、[4]に記載のアデノウイルス定量用キット。
[6]
各プローブが、標識物質及び前記標識物質に由来するシグナルを抑制する物質を備える標識プローブである、[4]又は[5]に記載のアデノウイルス定量用キット。
[7]
各プローブの長さが、それぞれ独立に、25~33塩基である、[4]~[6]のうちのいずれか一項に記載のアデノウイルス定量用キット。
[8]
試料中の複数の型のアデノウイルスを同時にPCRで定量する方法であり、
試料中のアデノウイルスの標的ヌクレオチド配列を鋳型として、[1]~[7]のうちのいずれか一項に記載のキットを用い、ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的ヌクレオチド配列が増幅された増幅産物を得る増幅工程、及び
前記増幅産物を検出して前記アデノウイルスを定量する定量工程
を含む、アデノウイルス定量方法。
[9]
前記キットが[6]又は[7]に記載のキットであり、
前記増幅工程が、前記標識プローブがハイブリダイズした前記アデノウイルスの標的ヌクレオチド配列を鋳型とする工程であり、
前記定量工程において、前記増幅産物の検出が、前記標的ヌクレオチド配列の増幅に伴って分解された標識プローブの標識物質に由来するシグナルの検出である、
[8]に記載のアデノウイルス定量方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、PCRによって、複数の型のアデノウイルスを同時に高精度で定量することが可能なアデノウイルス定量用キット、及びそれを用いたアデノウイルス定量方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態について、例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
<アデノウイルス定量用キット>
本発明は、複数の型のアデノウイルスを同時にPCRで定量するための、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマー対を含むキットであり、
前記フォワードプライマーが、
配列番号:1に記載の次の(1):
5’-CSCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(1)
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF1、
配列番号:2に記載の次の(2):
5’-CGCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(2)
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF2、
配列番号:3に記載の次の(3):
5’-CCCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(3)
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF3、及び
配列番号:4に記載の次の(4):
5’-CCCAGTGGKCDTACATGCAYA-3’…(4)
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーF4
からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、
前記リバースプライマーが、
配列番号:5に記載の次の(5):
5’-YACNGTGGGGTTTCTAAAY-3’…(5)
で示される各ヌクレオチド配列を含むプライマーを含む混合プライマーR1を含む、
アデノウイルス定量用キット(本明細書中、場合により単に「本発明のキット」という)を提供する。
【0012】
本明細書中、ヌクレオチド配列中の「S」は、G又はCを示し、「R」は、G又はAを示し、「K」は、G又はTを示し、「D」は、A又はG又はTを示し、「Y」はT又はCを示し、「N」はA又はG又はC又はTを示す。
【0013】
(アデノウイルス)
本発明において「アデノウイルス」とは、より具体的には、アデノウイルス科マストアデノウイルス属に属するヒトアデノウイルスを示す。ヒトアデノウイルスの粒子は、エンベロープ(envelope)を有さない、直径70~90nmの正20面体構造であり、その内側に線状の二本鎖DNAを1本含む。ウイルス構造蛋白質は252個のカプソメア(ウイルス粒子を構成しているタンパク質の微小単位)から成り、カプソメアのうち12個は、前記正20面体の頂点にペントン(Penton)のペントンベースとして位置し、それ以外の240個は、ヘキソン(Hexon)として前記正20面体の面を構成する。ペントンは、ペントンベース及びペントンベースから放射線状に突出しているファイバーから成る。これらのペントンベース、ヘキソン、ファイバーは、それぞれ抗原決定基を有するカプシドタンパク質である。
【0014】
アデノウイルスには、現在、A~Gの7種と、113の型が存在することが報告されており、それらの各カプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列もそれぞれ公知である。これら複数の型のアデノウイルスのゲノムのうち、日本国内で特に重要な90型までのゲノム配列のGenBank accession no.及びその長さ(Genome length)を、下記の表1~2に示す。表1~2の記載は、「Ashrafali M.Ismaliら,frontiers in Microbiology,Vol.9,2018年,doi:10.3389/fmicb.2018.02178」に記載のものであり、アデノウイルス型の欄に「HAdV-XY」の形式で示される表記において、Xで表されるアルファベットはアデノウイルスの種を、Yで表される数字はアデノウイルスの型を、それぞれ示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
本発明においてPCRにより増幅されるアデノウイルスの標的ヌクレオチド配列(検出部位)は、アデノウイルスのヘキソンのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の一部である。この検出部位の典型的ヌクレオチド配列は、C種2型では、GenBank accession no.:AC_000007で示される35937塩基のうちの少なくとも第18857~18989塩基(133塩基)を含む領域である。この検出部位のヌクレオチド配列は型毎に異なり、全113の型において、本発明に係るプライマー及びプローブの設計位置の配列がいずれも共通するもので分類すると、少なくとも21種類存在する。各型のアデノウイルスの標的ヌクレオチド配列は、それぞれ、上記の表1~2に示した各ゲノム配列のうち、上記の典型的ヌクレオチド配列に対応する部位である。前記典型的ヌクレオチド配列に「対応する」部位とは、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等を用いて(例えば、パラメータ:デフォルト値(すなわち初期設定値))、ヌクレオチド配列を整列させた際に、上記典型的ヌクレオチド配列と同列になる範囲のことである。
【0018】
本発明によれば、多くの型のアデノウイルスを同時に高精度で定量することができるが、同時に定量するアデノウイルスの型として好ましくは、1,2,5,6,57,104;3;4;7,16,66;8,54,72,101;11,35,77,78;12;14,55,79;18;9,10,13,15,17,19,22,23,24,25,26,27,28,29,30,32,33,36,37,38,39,42,43,44,45,46,47,48,49,51,53,56,60,62,63,64,65,67,69,70,71,74,75,81,82,83,84,85,86,87,88,89,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100,102,103,107,111,113;20;21,50,76;31;34;40;41;52;58,59;61;68;73型であり、より好ましくは、1,2,5,6,57,104;3;4;7,16,66;8,54,72,101;11,35,77,78;14,55,79;18;9,10,13,15,17,19,22,23,24,25,26,27,28,29,30,32,33,36,37,38,39,42,43,44,45,46,47,48,49,51,53,56,60,62,63,64,65,67,69,70,71,74,75,81,82,83,84,85,86,87,88,89,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100,102,103,107,111,113;21,50,76;34;41型であり、さらに好ましくは、1,2,5,6,57,104;3;4;7,16,66;8,54,72,101;11,35,77,78;14,55,79;18;9,10,13,15,17,19,22,23,24,25,26,27,28,29,30,32,33,36,37,38,39,42,43,44,45,46,47,48,49,51,53,56,60,62,63,64,65,67,69,70,71,74,75,81,82,83,84,85,86,87,88,89,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100,102,103,107,111,113;21,50,76;34型である。
【0019】
(プライマー対)
本発明のキットは、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマー対を含む。
【0020】
本発明において「プライマー」は、PCRにおいて、前記標的ヌクレオチド配列にアニーリングし、DNA複製の起点となるオリゴヌクレオチドであり、1種のヌクレオチドのみ(例えば、DNAのみ)で構成されるオリゴヌクレオチドであっても、複数のヌクレオチド(例えば、DNAとRNA)から構成されるキメラオリゴヌクレオチドであってもよいが、好ましくはDNAのみから構成されるオリゴヌクレオチドである。
【0021】
本発明において、各プライマーを構成する「ヌクレオチド」は、下記の各配列に示すとおり、通常、DNA(アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル)であるが、塩基対結合を形成し得る限り、他の天然ヌクレオチド(RNA)であってもよく、非天然ヌクレオチド(人工ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ)であってもよい。非天然ヌクレオチドとしては、例えば、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、ペプチド核酸(PNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、モルホリノ核酸、トリシクロ-DNA(tcDNA)、2’-O-メチル化核酸、2’-MOE(2’-O-メトキシエチル)化核酸、2’-AP(2’-O-アミノプロピル)化核酸、2’-フルオロ化核酸、2’F‐アラビノ核酸(2'-F-ANA)、BNA(LNA等の架橋化核酸(Bridged Nucleic Acid)が挙げられる。このようなオリゴヌクレオチドは、当業者であれば公知の方法を適宜選択することにより調製することができ、例えば、市販の核酸自動合成機を用いて合成し、必要に応じて逆相カラム等を用いて精製することにより調製することができる。
【0022】
また、本発明において「フォワードプライマー」とは、前記標的ヌクレオチド配列のアンチセンス配列にアニーリングして、ポリメラーゼによる5’末端から3’末端への伸長反応の起点を与えるオリゴヌクレオチド(好ましくはDNA)であり、「リバースプライマー」とは、センス配列にアニーリングして、ポリメラーゼによる5’末端から3’末端への伸長反応の起点を与えるオリゴヌクレオチド(好ましくはDNA)である。
【0023】
本発明に係るプライマー対において、これを構成するフォワードプライマー及びリバースプライマーはそれぞれ複数存在する。かかるフォワードプライマー及びリバースプライマーを構成する各プライマーの長さとしては、互いに同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、19~29塩基であることが好ましく、21~27塩基であることがより好ましい。特にフォワードプライマーを構成する各プライマーの長さとしては、それぞれ独立に、21~29塩基であることが好ましく、23~27塩基であることがさらに好ましい。また、特にリバースプライマーを構成する各プライマーの長さとしては、それぞれ独立に、19~27塩基であることが好ましく、21~25塩基であることがさらに好ましい。また、各プライマーのTm値としては、通常、50~70℃であることが好ましく、55~65℃であることがより好ましい。さらに、各プライマーのGC含有量としては、通常、40~60%であることが好ましく、45~55%であることがより好ましい。
【0024】
〔フォワードプライマー〕
本発明に係るフォワードプライマーは、下記の混合プライマーF1、混合プライマーF2、混合プライマーF3、及び混合プライマーF4からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0025】
混合プライマーF1は、例えば、配列番号:1に記載の次の(1):
5’-CSCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(1)
で示される12種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む12種類のプライマーからなる混合プライマーである。かかる混合プライマーF1は、すなわち、次のF1-1~F1-12:
5’-CGCAGTGGGCATACATGCACA-3’…F1-1、配列番号:23
5’-CGCAGTGGGCGTACATGCACA-3’…F1-2、配列番号:24
5’-CGCAGTGGGCTTACATGCACA-3’…F1-3、配列番号:25
5’-CGCAGTGGTCATACATGCACA-3’…F1-4、配列番号:26
5’-CGCAGTGGTCGTACATGCACA-3’…F1-5、配列番号:27
5’-CGCAGTGGTCTTACATGCACA-3’…F1-6、配列番号:28
5’-CCCAGTGGGCATACATGCACA-3’…F1-7、配列番号:29
5’-CCCAGTGGGCGTACATGCACA-3’…F1-8、配列番号:30
5’-CCCAGTGGGCTTACATGCACA-3’…F1-9、配列番号:31
5’-CCCAGTGGTCATACATGCACA-3’…F1-10、配列番号:32
5’-CCCAGTGGTCGTACATGCACA-3’…F1-11、配列番号:33
5’-CCCAGTGGTCTTACATGCACA-3’…F1-12、配列番号:34
のヌクレオチド配列をそれぞれ含む12種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーである。混合プライマーF1において、各プライマーの混合比としては、互いに等量であることが好ましい。
【0026】
混合プライマーF1としては、構成する各プライマーが上記(1)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プライマーの好ましい条件を満たすように、それぞれ独立に、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このような混合プライマーF1としては、例えば、配列番号:12に記載のヌクレオチド配列:
5’-GCCSCAGTGGKCDTACATGCACATC-3’
で示される12種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーであることが好ましい。なお、これら12種類のプライマーにおいて、(1)で示されるヌクレオチド配列の範囲の具体的配列は、それぞれ、上述のF1-1~F1-12に示したとおりである。
【0027】
混合プライマーF2は、例えば、配列番号:2に記載の次の(2):
5’-CGCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(2)
で示される6種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む6種類のプライマーからなる混合プライマーである。かかる混合プライマーF2は、すなわち、次のF2-1~F2-6:
5’-CGCAGTGGGCATACATGCACA-3’…F2-1、配列番号:23
5’-CGCAGTGGGCGTACATGCACA-3’…F2-2、配列番号:24
5’-CGCAGTGGGCTTACATGCACA-3’…F2-3、配列番号:25
5’-CGCAGTGGTCATACATGCACA-3’…F2-4、配列番号:26
5’-CGCAGTGGTCGTACATGCACA-3’…F2-5、配列番号:27
5’-CGCAGTGGTCTTACATGCACA-3’…F2-6、配列番号:28
のヌクレオチド配列をそれぞれ含む6種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーである。混合プライマーF2において、各プライマーの混合比としては、互いに等量であることが好ましい。
【0028】
混合プライマーF2としては、構成する各プライマーが上記(2)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プライマーの好ましい条件を満たすように、それぞれ独立に、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このような混合プライマーF2としては、例えば、配列番号:13に記載のヌクレオチド配列:
5’-GCCGCAGTGGKCDTACATGCACATC-3’
で示される6種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーであることが好ましい。なお、これら6種類のプライマーにおいて、(2)で示されるヌクレオチド配列の範囲の具体的配列は、それぞれ、上述のF2-1~F2-6に示したとおりである。
【0029】
混合プライマーF3は、例えば、配列番号:3に記載の次の(3):
5’-CCCAGTGGKCDTACATGCACA-3’…(3)
で示される6種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む6種類のプライマーからなる混合プライマーである。かかる混合プライマーF3は、すなわち、次のF3-1~F3-6:
5’-CCCAGTGGGCATACATGCACA-3’…F3-1、配列番号:29
5’-CCCAGTGGGCGTACATGCACA-3’…F3-2、配列番号:30
5’-CCCAGTGGGCTTACATGCACA-3’…F3-3、配列番号:31
5’-CCCAGTGGTCATACATGCACA-3’…F3-4、配列番号:32
5’-CCCAGTGGTCGTACATGCACA-3’…F3-5、配列番号:33
5’-CCCAGTGGTCTTACATGCACA-3’…F3-6、配列番号:34
のヌクレオチド配列をそれぞれ含む6種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーである。混合プライマーF3において、各プライマーの混合比としては、互いに等量であることが好ましい。
【0030】
混合プライマーF3としては、構成する各プライマーが上記(3)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プライマーの好ましい条件を満たすように、それぞれ独立に、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このような混合プライマーF3としては、例えば、配列番号:14に記載のヌクレオチド配列:
5’-GCCCCAGTGGKCDTACATGCACATC-3’
で示される6種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーであることが好ましい。なお、これら6種類のプライマーにおいて、(3)で示されるヌクレオチド配列の範囲の具体的配列は、それぞれ、上述のF3-1~F3-6に示したとおりである。
【0031】
混合プライマーF4は、例えば、配列番号:4に記載の次の(4):
5’-CCCAGTGGKCDTACATGCAYA-3’…(4)
で示される12種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む12種類のプライマーからなる混合プライマーである。かかる混合プライマーF4は、すなわち、次のF4-1~F4-12:
5’-CCCAGTGGGCATACATGCATA-3’…F4-1、配列番号:35
5’-CCCAGTGGGCATACATGCACA-3’…F4-2、配列番号:29
5’-CCCAGTGGGCGTACATGCATA-3’…F4-3、配列番号:36
5’-CCCAGTGGGCGTACATGCACA-3’…F4-4、配列番号:30
5’-CCCAGTGGGCTTACATGCATA-3’…F4-5、配列番号:37
5’-CCCAGTGGGCTTACATGCACA-3’…F4-6、配列番号:31
5’-CCCAGTGGTCATACATGCATA-3’…F4-7、配列番号:38
5’-CCCAGTGGTCATACATGCACA-3’…F4-8、配列番号:32
5’-CCCAGTGGTCGTACATGCATA-3’…F4-9、配列番号:39
5’-CCCAGTGGTCGTACATGCACA-3’…F4-10、配列番号:33
5’-CCCAGTGGTCTTACATGCATA-3’…F4-11、配列番号:40
5’-CCCAGTGGTCTTACATGCACA-3’…F4-12、配列番号:34
のヌクレオチド配列をそれぞれ含む12種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーである。混合プライマーF4において、各プライマーの混合比としては、互いに等量であることが好ましい。
【0032】
混合プライマーF4としては、構成する各プライマーが上記(4)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プライマーの好ましい条件を満たすように、それぞれ独立に、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このような混合プライマーF4としては、例えば、配列番号:15に記載のヌクレオチド配列:
5’-GCCCCAGTGGKCDTACATGCAYATC-3’
で示される12種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーであることが好ましい。なお、これら12種類のプライマーにおいて、(4)で示されるヌクレオチド配列の範囲の具体的配列は、それぞれ、上述のF4-1~F4-12に示したとおりである。
【0033】
本発明に係るフォワードプライマーとしては、混合プライマーF1であることが特に好ましい。なお、混合プライマーF2及び混合プライマーF3は混合プライマーF1に含まれるため、混合プライマーF2及び/又は混合プライマーF3と混合プライマーF1とはいずれか一方であってよい。
【0034】
〔リバースプライマー〕
本発明に係るリバースプライマーは、下記の混合プライマーR1を含む。また、本発明に係るリバースプライマーとしては、下記のプライマーR2、プライマーR3、及びプライマーR4からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含むことが好ましい。
【0035】
混合プライマーR1は、例えば、配列番号:5に記載の次の(5):
5’-YACNGTGGGGTTTCTAAAY-3’…(5)
で示される16種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む16種類のプライマーからなる混合プライマーである。かかる混合プライマーR1は、すなわち、次のR1-1~R1-16:
5’-TACAGTGGGGTTTCTAAAT-3’…R1-1、配列番号:41
5’-TACAGTGGGGTTTCTAAAC-3’…R1-2、配列番号:42
5’-TACGGTGGGGTTTCTAAAT-3’…R1-3、配列番号:43
5’-TACGGTGGGGTTTCTAAAC-3’…R1-4、配列番号:44
5’-TACCGTGGGGTTTCTAAAT-3’…R1-5、配列番号:45
5’-TACCGTGGGGTTTCTAAAC-3’…R1-6、配列番号:46
5’-TACTGTGGGGTTTCTAAAT-3’…R1-7、配列番号:47
5’-TACTGTGGGGTTTCTAAAC-3’…R1-8、配列番号:48
5’-CACAGTGGGGTTTCTAAAT-3’…R1-9、配列番号:49
5’-CACAGTGGGGTTTCTAAAC-3’…R1-10、配列番号:50
5’-CACGGTGGGGTTTCTAAAT-3’…R1-11、配列番号:51
5’-CACGGTGGGGTTTCTAAAC-3’…R1-12、配列番号:52
5’-CACCGTGGGGTTTCTAAAT-3’…R1-13、配列番号:53
5’-CACCGTGGGGTTTCTAAAC-3’…R1-14、配列番号:54
5’-CACTGTGGGGTTTCTAAAT-3’…R1-15、配列番号:55
5’-CACTGTGGGGTTTCTAAAC-3’…R1-16、配列番号:56
のヌクレオチド配列をそれぞれ含む16種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーである。混合プライマーR1において、各プライマーの混合比としては、互いに等量であることが好ましい。
【0036】
混合プライマーR1としては、構成する各プライマーが上記(5)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プライマーの好ましい条件を満たすように、それぞれ独立に、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このような混合プライマーR1としては、例えば、配列番号:16に記載のヌクレオチド配列:
5’-GCYACNGTGGGGTTTCTAAAYTT-3’
で示される16種類のプライマーの組み合わせからなる混合プライマーであることが好ましい。なお、これら16種類のプライマーにおいて、(5)で示されるヌクレオチド配列の範囲の具体的配列は、それぞれ、上述のR1-1~R1-16に示したとおりである。
【0037】
プライマーR2は、配列番号:6に記載の次の(6):
5’-CACAGTGGGATTTCTGAAC-3’…(6)
で示されるヌクレオチド配列を含むプライマーである。プライマーR2としては、上記(6)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プライマーの好ましい条件を満たすように、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このようなプライマーR2としては、例えば、配列番号:17に記載のヌクレオチド配列:
5’-GCCACAGTGGGATTTCTGAACTT-3’
で示されるプライマーが好ましい。
【0038】
プライマーR3は、配列番号:7に記載の次の(7):
5’-TACAGTGGGATTTCTAAAC-3’…(7)
で示されるヌクレオチド配列を含むプライマーである。プライマーR3としては、上記(7)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プライマーの好ましい条件を満たすように、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このようなプライマーR3としては、例えば、配列番号:18に記載のヌクレオチド配列:
5’-GCTACAGTGGGATTTCTAAACTT-3’
で示されるプライマーが好ましい。
【0039】
プライマーR4は、配列番号:8に記載の次の(8):
5’-TACGGTAGGATTTCTAAAC-3’…(8)
で示されるヌクレオチド配列を含むプライマーである。プライマーR4としては、上記(8)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プライマーの好ましい条件を満たすように、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このようなプライマーR4としては、例えば、配列番号:19に記載のヌクレオチド配列:
5’-GCTACGGTAGGATTTCTAAACTT-3’
で示されるプライマーが好ましい。
【0040】
本発明に係るリバースプライマーとしては、混合プライマーR1とプライマーR2との組み合わせ、又は、混合プライマーR1、プライマーR2、プライマーR3、及びプライマーR4の組み合わせであることが特に好ましい。
【0041】
(プローブ)
本発明において「プローブ」は、PCRのうち、リアルタイムPCRにおいて、前記標的ヌクレオチド配列にハイブリダイズし、プライマーの伸長に伴ってポリメラーゼの5’→3’エクソヌクレアーゼにより分解されるオリゴヌクレオチドであり、1種のヌクレオチドのみ(例えば、DNAのみ)で構成されるオリゴヌクレオチドであっても、複数のヌクレオチド(例えば、DNAとRNA)から構成されるキメラオリゴヌクレオチドであってもよいが、好ましくはDNAのみから構成されるオリゴヌクレオチドである。本発明において、各プローブを構成する「ヌクレオチド」としては、上記の各プライマーを構成するヌクレオチドとして述べたものと同様である。
【0042】
本発明において、プローブは複数存在してもよい。この場合、各プローブの長さとしては、互いに同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、25~33塩基であることが好ましく、27~31塩基であることがより好ましい。また、前記プローブのTm値としては、通常、60~80℃であることが好ましく、65~75℃であることがより好ましい。
【0043】
本発明に係るプローブは、下記のプローブP1及び混合プローブP2からなる群から選択される少なくとも1つを含む。また、本発明に係るプローブとしては、下記のプローブP3をさらに含むことが好ましい。
【0044】
プローブP1は、配列番号:9に記載の次の(9):
5’-CACCAGACCCGGGCTCAGGTACTCC-3’…(9)
で示されるヌクレオチド配列又はその相補配列を含むプローブである。プローブP1としては、上記(9)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プローブの好ましい条件を満たすように、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このようなプローブP1としては、例えば、配列番号:20に記載のヌクレオチド配列:
5’-TGCACCAGACCCGGGCTCAGGTACTCCGA-3’
又はその相補配列で示されるプローブが好ましい。
【0045】
混合プローブP2は、配列番号:10に記載の次の(10):
5’-CACCAGACCSGGRCTCAGGTACTCC-3’…(10)
で示される各ヌクレオチド配列又はそれらの各相補配列を含むプローブを含む混合プローブである。
【0046】
混合プローブP2は、例えば、上記(10)で示される4種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む4種類のプローブ又は当該4種類のヌクレオチド配列の相補配列をそれぞれ含む4種類のプローブからなる混合プローブである。かかる混合プローブP2は、すなわち、次のP2-1~P2-4:
5’-CACCAGACCGGGGCTCAGGTACTCC…P2-1、配列番号:57
5’-CACCAGACCGGGACTCAGGTACTCC…P2-2、配列番号:58
5’-CACCAGACCCGGGCTCAGGTACTCC…P2-3、配列番号:9
5’-CACCAGACCCGGACTCAGGTACTCC…P2-4、配列番号:59
のヌクレオチド配列をそれぞれ含む4種類のプローブの組み合わせ又は前記ヌクレオチド配列の相補配列をそれぞれ含む4種類のプローブの組み合わせからなる混合プローブである。混合プローブP2において、各プローブの混合比としては、互いに等量であることが好ましい。
【0047】
混合プローブP2としては、構成する各プローブが上記(10)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プローブの好ましい条件を満たすように、それぞれ独立に、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このような混合プローブP2としては、例えば、配列番号:21に記載のヌクレオチド配列:
5’-TGCACCAGACCSGGRCTCAGGTACTCCGA-3’
で示される4種類のプローブの組み合わせ又はそれらの相補配列で示される4種類のプローブの組み合わせからなる混合プローブであることが好ましい。なお、これら4種類のプローブにおいて、(10)で示されるヌクレオチド配列の範囲の具体的配列は、それぞれ、上述のP2-1~P2-4に示したとおりである。
【0048】
プローブP3は、配列番号:11に記載の(11):
5’-CACGAGGCCGGGACTCAGGTACTCC-3’…(11)
で示されるヌクレオチド配列又はその相補配列を含むプローブである。プローブP3としては、上記(11)で示されるヌクレオチド配列を含んでいればよく、上記プローブの好ましい条件を満たすように、5’末端及び/又は3’末端に複数の塩基(好ましくは3塩基以内、より好ましくは2塩基以内)が付加していてもよい。このようなプローブP3としては、例えば、配列番号:22に記載のヌクレオチド配列:
5’-TGCACGAGGCCGGGACTCAGGTACTCCGA-3’
又はその相補配列で示されるプローブが好ましい。
【0049】
本発明に係るプローブとしては、プローブP1とプローブP3との組み合わせであることが特に好ましい。なお、プローブP1は混合プローブP2に含まれるため、プローブP1とプローブP2とはいずれか一方であってよい。
【0050】
本発明に係るプローブとしては、標識物質及び前記標識物質に由来するシグナルを抑制する物質が結合した標識プローブであるであることが好ましい。前記「シグナル」には、例えば、呈色(発色)、消光、反射光、発光、蛍光等が含まれ、肉眼で確認できるものの他、シグナルの種類に応じた検出方法・装置によって確認できるものも含まれる。
【0051】
前記標識物質とそのシグナルを抑制する物質との組み合わせとしては、例えば、蛍光(シグナル)を発する蛍光色素と、蛍光共鳴エネルギー転移によって前記蛍光を抑制するクエンチャーとの組み合わせが挙げられる。この組み合わせでは、同一プローブに前記蛍光色素と前記クエンチャーとが結合されて近接していると、前記蛍光色素の蛍光は蛍光共鳴エネルギー転移により抑制され、他方、プローブが分解されて両者が離隔すると、抑制が解除されて蛍光が発せられる。そのため、PCRにおいて標的ヌクレオチドにハイブリダイズしたプローブがプライマーの伸長反応、すなわち増幅産物の増量に伴って分解されることで、増幅産物の量に比例して前記蛍光色素に由来する蛍光強度も増大する。よって、かかる蛍光強度を測定することで目的の増幅産物の量を測定することができる。
【0052】
前記蛍光色素としては、例えば、カルボキシフルオレセイン(FAM)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、Cy(例えば、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5)、4,7,2’-トリクロロ-7’-フェニル-6-カルボキシフルオレセイン(VIC)が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上であってもよい。前記クエンチャーとしては、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)等のローダミン系蛍光色素;Black Hole Quencher(例えば、BHQ1、BHQ2、BHQ3)、Iowa Black(例えば、IBRQ、IBFQ)、4-(4-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、4-[[2-クロロ-4-ニトロ-フェニル]-アゾ]-アニリン等のNFQ(Non Fluorescent Quencher)が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上であってもよい。
【0053】
前記標識プローブとしては、プローブの一方の端(好ましくは5’末端)に前記蛍光物質が連結され、他方の端(好ましくは3’末端)に前記クエンチャーが連結されたものであることが好ましい。プローブと前記蛍光物質及び前記クエンチャーとの結合は、ヌクレオチドに直接結合していてもよく、他の物質を介して間接的に結合していてもよい。また、前記標識プローブとしては、MGB(minor groove binder)等で修飾されたものであってもよい。このような標識プローブは、当業者であれば公知の方法を適宜選択することにより調製することができる。
【0054】
(その他)
本発明のキットとしては、他に、定量PCR、より好ましくはリアルタイムPCRに用いるための他の試薬等をさらに含んでいてもよい。例えば、本発明のキットには、後述するポリメラーゼ、及びその他のPCR反応用試薬(基質(dNTP)、イオン又はそれらを供するための塩、緩衝液、添加剤)、及び当該キットの使用説明書を適宜含んでいてもよい。また、本発明のキットが前記プローブを含む場合、当該キットとしては、当該プローブに結合させるための標識物質(好ましくは蛍光色素)、前記標識物質に由来するシグナルを抑制する物質(好ましくはクエンチャー)、及び前記標識物質に由来するシグナルを検出するための試薬をさらに含んでいてもよい。また、PCRの増幅産物の検出方法によっては、これを展開するための担体(例えば、電気泳動方法におけるポリアクリルアミドゲル、核酸クロマト法におけるクロマト用試験紙)及び溶媒、蛍光物質(例えば、インターカレーション法におけるインターカレーター)も、本発明のキットに含まれ得る。さらに、増幅された増幅産物が標的ヌクレオチド配列を鋳型とするものであることを確認するための、DNA分子量マーカー及び陽性コントロール等や、下記の本発明の方法に用いるための、検量線作成のための標準試料、検体採取器具、DNA抽出試薬等も本発明のキットに含めることができる。
【0055】
<アデノウイルス定量方法>
本発明は、試料中の複数の型のアデノウイルスを同時にPCRで定量する方法であり、
試料中のアデノウイルスの標的ヌクレオチド配列を鋳型として、前記本発明のキットを用い、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により前記アデノウイルスの標的ヌクレオチド配列が増幅された増幅産物を得る増幅工程、及び
前記増幅産物を検出して前記アデノウイルスを定量する定量工程
を含む、アデノウイルス定量方法(本明細書中、場合により単に「本発明の方法」という)も提供する。
【0056】
(試料)
本発明において、「試料」は、前記標的ヌクレオチド配列を含有し得る限り、特に制限されないが、例えば、脊椎動物から分離した試料(例えば次の検体:細胞、組織、器官、個体及びその抽出液;唾液、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、うがい液、鼻汁、涙、汗、尿、喀痰、気管支肺胞洗浄液、血液、血清、血漿、髄液、リンパ液、精液、羊水等の体液;糞便)、培養液、環境中の水(河川、湖沼、港湾、水路、地下水、浄水、下水、排水等)や土壌等を、目的に応じて適宜用いることができる。前記脊椎動物としては、ヒト及び動物(例えば、チンパンジーやサル等の霊長類;牛、豚、馬、ニワトリ、ネコ、イヌ等の家畜、家禽や愛玩動物;シカ、イノシシ、アライグマ、イタチ、ネズミ、ハト等の野生動物や野鳥)が挙げられる。これらの中でも、本発明に係る試料としては、前記脊椎動物であるヒトから分離した検体であることが好ましい。
【0057】
本発明に係る試料としては、前記試料をそのまま用いてもよいが、試料の種類に応じて、適宜粉砕や凍結等の処理がなされたものであっても、希釈液で適宜希釈又は懸濁したものであっても、DNA抽出処理がなされたものであってもよい。前記希釈液としては、例えば、水;生理食塩水;ナトリウムリン酸バッファー、Tris緩衝液、リン酸緩衝液、グッド緩衝液等の緩衝液が挙げられる。前記DNA抽出方法としては、前記試料の種類に応じて、適宜公知の方法やそれに準じた方法を特に制限されず採用することができる。このようなDNA抽出方法としては、例えば、ボイル法、アルカリボイル法、SDSフェノール法、boil-spin法、blood-PURE法等が挙げられ、また、市販のDNA抽出キットを適宜用いてもよい。さらに、前記試料としては、例えば、フェノール抽出、クロマトグラフィー、イオン交換、ゲル電気泳動、密度に依存した遠心分離等により精製したものであってもよい。
【0058】
(鋳型)
本発明において「鋳型」とは、下記のPCRの伸長工程における相補鎖合成の基となるヌクレオチドを意味し、前記標的ヌクレオチド配列を含む鎖及びその相補鎖を示す。本発明において、PCRに供される鋳型としては、ポリヌクレオチドの形態であればよく、前記試料に含まれ得る標的ヌクレオチド配列を含むDNAそのものであっても、前記試料から抽出(及び必要に応じて精製)したDNAを鋳型として合成したRNAであっても、これらの断片であっても、これらの全部又は一部が修飾されたものであっても、その全部又は一部に非天然型のヌクレオチドや特定の配列を含むものであってもよい。そのため本発明に係る試料としては、これらの各ポリヌクレオチドを含む試料としてもよい。
【0059】
(増幅工程)
本発明の方法では、増幅工程において、前記試料中のアデノウイルスの標的ヌクレオチド配列を鋳型として、前記本発明のキットを用い、ポリメラーゼ連鎖反応により前記アデノウイルスの標的ヌクレオチド配列が増幅された増幅産物を得る。
【0060】
「ポリメラーゼ連鎖反応(本明細書中、場合により単に「PCR」と称する)」は、温度変化を繰り返すことにより、前記鋳型を増幅させる方法である。本発明においてより具体的には、前記フォワードプライマー及びリバースプライマーを前記標的ヌクレオチド配列(鋳型)にアニーリングさせるための「アニーリング工程」、前記各プライマーを起点としてポリメラーゼにより標的ヌクレオチド配列の相補鎖の伸長反応を行なう「伸長工程」、及び前記伸長工程によって合成された標的ヌクレオチド配列を含む二本鎖を熱変性により解離させ一本鎖とする「熱変性工程」の3工程からなるサイクルで構成される。このサイクルを複数回繰り返すことで、前記標的ヌクレオチド配列が増幅された増幅産物が得られる。なお、最初の1サイクル目のアニーリング工程に先立っては、前記フォワードプライマー及びリバースプライマーをアニーリングさせるために、前記標的ヌクレオチド配列を含む二本鎖を熱変性により解離させる工程(Initial denature)を含むことが好ましく、最後のサイクルにおける最後の熱変性工程は含まないことが好ましい。
【0061】
前記アニーリング工程における温度としては、前記フォワードプライマー及びリバースプライマーと前記標的ヌクレオチド配列との間でアニーリングが生じ、維持できる温度であれば特に制限はなく、非特異的な増幅産物を抑制するという観点から、好ましくは25~65℃であるが、より好ましくは50~60℃である。その保持時間は特に限定されないが、好ましくは1~60秒間、より好ましくは30~60秒間である。また、アニーリング温度は全てのサイクルで同一温度であっても、異なっていてもよい。
【0062】
前記伸長工程における温度としては、相補鎖が合成できる温度であれば特に制限はなく、通常50~80℃であるが、好ましくは50~60℃であり、アニーリング温度と同一温度であることがさらに好ましい。その保持時間は特に限定されないが、好ましくは1~60秒間、より好ましくは30~60秒間である。また、伸長温度は全てのサイクルで同一温度であっても、異なっていてもよい。
【0063】
前記熱変性工程における温度としては、二本鎖を解離できる温度であれば特に制限はなく、通常80~100℃であるが、好ましくは90~100℃ある。その保持時間は特に限定されないが、好ましくは1~30秒間、より好ましくは10~20秒間である。また、熱変性温度は全てのサイクルで同一温度であっても、異なっていてもよい。
【0064】
前記サイクルの回数としては、検出方法に応じてその方法で検出できる程度に標的ヌクレオチド配列を増幅できる限り特に制限はないが、通常10~50サイクルであり、好ましくは20~45サイクルである。
【0065】
このようなPCRにおける反応液には、PCRを行なうために必須な組成、すなわちDNAを増幅するために必要な組成が含まれていれば、その組成は特に限定されない。例えば、前記反応液に含まれるものとしては、上記のプライマー対及び必要に応じてプローブ;ポリメラーゼ;dNTP等の基質;2価イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン)及び1価イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)又はこれらを供するための塩(例えば、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム)及び緩衝液(例えば、トリス塩酸バッファー、リン酸バッファー)が挙げられる。また、前記反応液としては、有機溶媒(例えば、エタノール、メタノール、アセトン)、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、安息香酸)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、TritonX-100)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、トリプトファン)、糖(例えば、グルコース、キシロース、ガラクトース)、ジメチルスルホキシド、ベタイン、DNA結合タンパク質等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0066】
前記PCRに用いられる「ポリメラーゼ」は、前記鋳型に応じてDNAポリメラーゼ及び逆転写酵素から選択できるが、本発明においては前記鋳型がDNAであって前記ポリメラーゼがDNAポリメラーゼであることが好ましい。前記DNAポリメラーゼとしては、前記標的ヌクレオチド配列に対してDNAからなる相補鎖を合成する活性を有するもの(DNA依存性DNAポリメラーゼ)であれば特に制限されず、天然型であっても人工的に改変されたポリメラーゼであってもよく、また、常温性、中温姓、耐熱性のいずれであってもよい。これらの中でも、耐熱性DNAポリメラーゼであることが好ましく、5’→3’エクソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼであることがより好ましい。このようなDNAポリメラーゼとしては、例えば、Pol型DNAポリメラーゼが挙げられ、より具体的には、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0067】
(定量工程)
本発明の方法では、定量工程において、前記増幅産物(すなわち、標的ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)を検出し、検出した増幅産物の量に基づいて前記試料中に含まれるアデノウイルス量を定量する。
【0068】
前記増幅産物は、例えば、PCR終了後、二本鎖DNAである増幅産物に蛍光色素(例えば、エチジウムブロマイド、Syber Green、SYTO63等)をインターカレートして検出、測定される蛍光強度を指標として、前記増幅産物を検出、定量することができる。また、PCR終了後の反応液をそのままアガロースゲル電気泳動することによっても前記増幅産物を検出、定量することができる。また、PCRでは核酸の合成によって核酸基質が大量に消費され、副産物であるピロリン酸イオンが共存するマグネシウムイオンと反応してピロリン酸マグネシウムとなり、反応液が肉眼でも確認できる程に白濁する。したがってこの白濁を、PCR終了後の濁度として、光学的に観察可能な測定機器(例えば、600~700nmの吸光度変化を測定可能な通常の分光光度計)を用いて確認することで、間接的に前記増幅産物を検出、定量することも可能である。さらに、PCR反応液に金属指示薬であるカルセインを添加して、増幅反応の進行に伴う金属イオン濃度の変化(=蛍光の変化)を前記増幅産物の量の変化として検出することもできる。
【0069】
また、前記PCR(増幅工程)と前記増幅産物の検出(定量工程)とをリアルタイムで行なう、すなわちPCRとしてリアルタイムPCR(「リアルタイム定量PCR」ともいう)を行なうことにより、前記検出及び定量を同時に行なうことができる。このようなリアルタイムPCR法としては、例えば、インターカレーション法(いわゆるSyber Green法)に代表される、蛍光色素(例えば、エチジウムブロマイド、Syber Green、SYTO63等)の存在下でPCRを行なう方法や、標識物質を結合させたオリゴヌクレオチドプローブを用いる方法(例えば、プローブ法(5’-ヌクレアーゼ法、いわゆるTaqManプローブ法);標的ヌクレオチド配列と結合すると当該配列中のグアニン塩基と蛍光色素とが近接し、グアニン塩基の消光作用によって蛍光色素の蛍光強度が減少するプローブを用いる方法(いわゆるQプローブ法));RNA及びDNAからなるキメラプローブとRNaseHとを組み合わせたサイクリングプローブ法;前記ピロリン酸マグネシウムによる白濁の検出をPCR反応中の濁度上昇量として経時的に検出する方法が挙げられる。
【0070】
これらの中でも、本発明の方法に係るPCRとしてはリアルタイムPCRであることが好ましく、非特異反応が特に抑制される観点から、プローブ法であることがより好ましく、この場合、上記標識プローブを前記オリゴヌクレオチドプローブとして用いることが特に好ましい。このような方法としてより具体的には、前記増幅工程が、前記標識プローブがアニーリングした前記標的ヌクレオチド配列を鋳型とする工程であり、前記定量工程において、前記増幅産物の検出が、前記標的ヌクレオチド配列の増幅に伴って分解された標識プローブの標識物質に由来するシグナルの検出である方法が挙げられる。
【0071】
これにより、例えば、前記標識プローブが同一プローブに前記蛍光色素と前記クエンチャーとが結合されたプローブである場合、前記伸長工程、すなわち前記増幅産物の増量に伴って前記標的ヌクレオチドにハイブリダイズしたプローブが分解されるため、前記蛍光色素に由来する蛍光強度を測定することでこれに比例する前記増幅産物の量を測定することができる。なおこの場合、前記増幅工程、すなわち前記PCRの1サイクル分と、前記定量工程、すなわち増幅産物の検出(上記の場合、蛍光強度の測定)とは、PCRのサイクル回数分繰り返されるが、PCRの全サイクルにおいて毎回増幅産物の検出を行なっても、複数サイクル毎に増幅産物の検出を行なってもよい。
【0072】
リアルタイムPCRにおいては、測定されるシグナル(上記の場合、蛍光色素に由来する蛍光強度)とサイクル数とから増幅曲線が得られる。そのため、コピー数が既知の鋳型を含む標準試料についてリアルタイムPCRを行なって得られた増幅曲線において、指数関数的に増幅が起こる領域で一定の増幅産物量(上記の場合、蛍光強度)になるサイクル数(Threshhold cycle、Ct値)と前記標準試料中の鋳型コピー数とから検量線を作成する。また、定量対象の試料についても同様にCt値を求めることにより、この値と前記検量線とから同試料中の鋳型コピー数、すなわちアデノウイルスの標的ヌクレオチド配列の量、つまりはアデノウイルスの量を定量することができる。このときの標準試料としては、例えば、本発明の方法に係る標的ヌクレオチド配列とPCR効率が同等である観点から、下記の実施例に記載のコントロールDNA(配列番号:66に記載のヌクレオチド配列)を既知のコピー数で含む試料を好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
本発明の方法によれば、複数の型のアデノウイルスを同時に高精度で検出することができるため、前記試料に含まれるアデノウイルスの型に関わらず、これを全型に共通の1つの基準で定量することができる。本発明の方法でアデノウイルスが定量された試料については、本発明の方法をアデノウイルスを含む試料のスクリーニング方法として、さらに各型に特異的な方法(例えば、各型に特異的なプライマーセットを用いたPCR等)を行なうことによって、その型を特定してもよい。また、例えば、本発明の方法でアデノウイルスが定量された試料がヒトから採取された検体である場合、得られたアデノウイルスの量は、そのヒトがアデノウイルスに感染しているか否かの診断の指標とすることができる。そのため、本発明の方法は、医師による診断のためにアデノウイルスの量を定量する方法、当該アデノウイルスの量を医師に提示する方法、又はアデノウイルスの検査方法とも表現することができる。
【実施例0074】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
<標的ヌクレオチド配列>
サンプルDNAとして、1,2,3,4,5,6,7,8,11,12,14,16,18,19,20,21,31,34,37,40,41,52,58,61,68,73型のアデノウイルスの各ヘキソン遺伝子のヌクレオチド配列(それぞれ、各全ゲノム配列のうちの第18757~19089塩基:333塩基)からなる二本鎖DNAをそれぞれ人工合成し、下記の各リアルタイムPCRの鋳型とした。また、コントロールDNA(IC:internal control)として、配列番号:66に記載のヌクレオチド配列からなる二本鎖DNAを人工合成し、下記の各リアルタイムPCRの鋳型とした。
【0076】
<プローブ、プライマー>
下記の表3に示すフォワードプライマー、表4に示すリバースプライマー、及び表5に示すプローブをそれぞれ人工合成して、下記の各リアルタイムPCRに用いた。表3~5中、F-IC、R-IC、及びP-ICは、上記のコントロールDNA(IC)に対するプライマー及びプローブである。また、表3~4中、comp.F2は、同配列で示される4種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む4種類のプライマーからなる混合プライマーであり、comp.F3は、同配列で示される12種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む12種類のプライマーからなる混合プライマーであり、comp.R2は、同配列で示される4種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む4種類のプライマーからなる混合プライマーであり、comp.R3は、同配列で示される8種類のヌクレオチド配列をそれぞれ含む8種類のプライマーからなる混合プライマーである。表3においてはcomp.F1と配列が異なる塩基、表4においてはcomp.R1と配列が異なる塩基、表5においてはP1と配列が異なる塩基をそれぞれ太字で示す。なお、各プローブにおいて、P1、P2、P3の5’末にはそれぞれFAM(カルボキシフルオレセイン)を、3’末にはFAMのクエンチャーとしてTAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)を、それぞれ結合させ、P-ICの5’末にはVICを、3’末にはMGB及びVICのクエンチャーとしてTAMRAを、それぞれ結合させた。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
(比較例1/CDC法)
従来の複数の型のアデノウイルスを同時に定量する方法である、アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)が推奨する方法(以下、「CDC法」と称する)と同様の方法でリアルタイムPCRを行なった。すなわち、プライマー及びプローブとしてcomp.F1、comp.R1、及びP1を組み合わせ(非特許文献4に記載のプライマー及びプローブの組み合わせ)、1,2,3,4,5,6,7,8,11,14,16,18,19,21,34,37,41型の17種類の型のアデノウイルスのサンプルDNAをそれぞれ鋳型として、リアルタイムPCRを行なった。先ず、次の組成:
(反応液/1反応あたり(15μL))
・TaqPath ProAmp Master Mix:12.50μL
(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)
・Distilled Water(DW):1.40μL
(ニッポンジーン社)
・コントロールDNA(1000 copy/μL):0.10μL
・プライマー・プローブミックス:1.0μL
(プライマー・プローブミックス)
・comp.F1:0.5μM
・comp.R1:0.5μM
・P1:0.1μM
・F-IC:0.1μM
・R-IC:0.1μM
・P-IC:0.1μM
となるように反応液を調製した。調製した反応液は96ウェルプレートに15μL/ウェルで分注し、各サンプルDNAを10μL(10000 copy/ウェル)加えて全量を25μLに調製した。
【0081】
次いで、プレートをリアルタイムPCR装置にセットし、次のPCR条件:
(PCR条件)
ステップ1
(Initial denature)95℃、5分:1サイクル
ステップ2
(熱変性工程)95℃、15秒→(アニーリング工程/伸長工程)60℃、1分:45サイクル
でリアルタイムPCRを行ない、アニーリング工程/伸長工程でFAM及びVICに由来する蛍光強度をそれぞれ検出した。
【0082】
検出された各蛍光強度から、人工合成した2型のアデノウイルスのヘキソン遺伝子のヌクレオチド配列を5、10、100、1000、10000、100000copy/testとなるように調整し、これをスタンダードとして作成した検量線の結果より、検出された各コントロールDNAの定量値(copy/test)を算出した。結果を下記の表6に示す。また、表6には、各コントロールDNAの定量値間の平均値(AVG.)、標準偏差(SD.)及び変動係数(CV%)を合わせて示す。
【0083】
さらに、理論値を10000copy/testとして「定量値/理論値」を算出し、次の基準:
A:定量値/理論値が0.1以上(定量値が1000以上)
B:定量値/理論値が0.05以上0.1未満(定量値が500以上1000未満)
C:定量値/理論値が0.01以上0.05未満(定量値が100以上500未満)
D:定量値/理論値が0.01未満(定量値が100未満)
に基づいて評価した。評価結果を表6に合わせて示す。評価は、Dでは実用不可、C以上で実用可として、AからCの順に感度が優れることを示す。
【0084】
(実施例1、比較例2)
プライマー・プローブミックスを次の組成:
(プライマー・プローブミックス)
・F2:0.5μM
・R1:0.5μM
・P1:0.1μM
・F-IC:0.1μM
・R-IC:0.1μM
・P-IC:0.1μM
として反応液を調製し、1,2,3,4,5,6,7,8,11,14,16,18,19,21,34,37型の16種類の型のアデノウイルスのサンプルDNAをそれぞれ鋳型としたこと以外は比較例1と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(実施例1)。また、R1に代えてcomp.R1を用いたこと以外は実施例1と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(比較例2)。得られた各コントロールDNAの定量値(copy/test)、その平均値(AVG.)、標準偏差(SD.)及び変動係数(CV%)、並びに、評価結果を表6にそれぞれ示す。
【0085】
(実施例2、比較例3~5)
プライマー・プローブミックスを次の組成:
(プライマー・プローブミックス)
・F3:0.5μM
・R1:0.5μM
・P1:0.1μM
・F-IC:0.1μM
・R-IC:0.1μM
・P-IC:0.1μM
として反応液を調製したこと以外は比較例1と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(実施例2)。また、R1に代えてcomp.R1又はcomp.R2を用いたこと以外は実施例2と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(比較例3~4)。さらに、R1に代えてcomp.R3を用い、P1に代えてP2を用いたこと以外は実施例2と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(比較例5)。得られた各コントロールDNAの定量値(copy/test)、その平均値(AVG.)、標準偏差(SD.)及び変動係数(CV%)、並びに、評価結果を下記の表7にそれぞれ示す。
【0086】
(実施例3、比較例6)
F2に代えてF4を用いたこと以外は実施例1と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(実施例3)。また、R1に代えてcomp.R1を用いたこと以外は実施例3と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(比較例6)。得られた各コントロールDNAの定量値(copy/test)、その平均値(AVG.)、標準偏差(SD.)及び変動係数(CV%)、並びに、評価結果を下記の表8にそれぞれ示す。
【0087】
(比較例7、8)
F3に代えてcomp.F2又はcomp.F3を用いたこと以外は実施例2と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(比較例7、8)。得られた各コントロールDNAの定量値(copy/test)、その平均値(AVG.)、標準偏差(SD.)及び変動係数(CV%)、並びに、評価結果を表8にそれぞれ示す。
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
表6に示したように、従来のCDC法(比較例1)では、複数の型(特に、3、18、34、41型)において定量値が理論値と大きくかけ離れて著しく低くなり、多くの型のアデノウイルスを同時に定量することが困難であることが確認された。他方、表6~8に示したように、本発明の方法(例えば、実施例1~3)によれば、試験を実施した16又は17種類の全ての型において理論値に十分に近い定量値を得られ、多くの型を同時に高精度で定量できることが確認された。また、これら本発明の方法以外のプライマー及びプローブの組み合わせ(例えば、比較例2~8)では、プライマー及びプローブが本発明と一部重複していても、少なくとも1以上の型で定量値が理論値と大きくかけ離れて著しく低くなり、本発明のプライマー及びプローブの組み合わせのみが、複数の型のアデノウイルスを同時に高精度で定量できる必要最小限の組み合わせであることが確認された。
【0092】
(実施例4)
プライマー・プローブミックスを次の組成:
(プライマー・プローブミックス)
・F2:0.5μM
・R1:0.5μM
・R2:0.5μM
・P1:0.1μM
・F-IC:0.1μM
・R-IC:0.1μM
・P-IC:0.1μM
として反応液を調製したこと以外は比較例1と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(実施例4)。得られた各コントロールDNAの定量値(copy/test)及び評価結果を下記の表9にそれぞれ示す。
【0093】
(実施例5-1、5-2)
F2に代えてF3を用いたこと以外は実施例4と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(実施例5-1)。また、プライマー・プローブミックスを次の組成:
(プライマー・プローブミックス)
・F3:0.5μM
・R1:0.250μM
・R2:0.250μM
・P1:0.1μM
・F-IC:0.1μM
・R-IC:0.1μM
・P-IC:0.1μM
として反応液を調製したこと以外は実施例5-1と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(実施例5-2)。得られた各コントロールDNAの定量値(copy/test)及び評価結果を表9にそれぞれ示す。
【0094】
(実施例6、7、8-1)
プライマー・プローブミックスを次の組成:
(プライマー・プローブミックス)
・F2:0.5μM
・R1:0.5μM
・R2:0.5μM
・R3:0.5μM
・R4:0.5μM
・P1:0.1μM
・F-IC:0.1μM
・R-IC:0.1μM
・P-IC:0.1μM
として反応液を調製したこと以外は比較例1と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(実施例6)。また、P1に代えてP2を用いたこと以外は実施例6と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(実施例7)。さらに、F2に代えてF1を用いたこと以外は実施例6と同様にしてリアルタイムPCRを行なった(実施例8-1)。得られた各コントロールDNAの定量値(copy/test)及び評価結果を表9にそれぞれ示す。
【0095】
(実施例8-2)
実施例8-1と同じ条件で、1,2,3,4,5,6,7,8,11,12,14,16,18,19,20,21,31,34,37,40,41,52,58,61,68,73型の26種類の型のアデノウイルスのサンプルDNAをそれぞれ鋳型として、リアルタイムPCRを行なった。得られた各コントロールDNAの定量値(copy/test)及び評価結果を表9にそれぞれ示す。
【0096】
(実施例9)
プライマー・プローブミックスを次の組成:
(プライマー・プローブミックス)
・F1:0.5μM
・Mix Rv:0.5μM
・Mixプローブ:0.1μM
・F-IC:0.1μM
・R-IC:0.1μM
・P-IC:0.1μM
(Mix Rv)
・R1:100μM
・R2:100μM
・R3:100μM
・R4:100μM
(Mixプローブ)
・P1:100μM
・P3:100μM
として反応液を調製したこと以外は実施例8-2と同様にしてリアルタイムPCRを行なった。得られた各コントロールDNAの定量値(copy/test)及び評価結果を表9にそれぞれ示す。
【0097】
【表9】
【0098】
表9に示したように、リバースプライマーとして、R2、R3、R4をさらに用いることにより、定量値としてより理論値に近く、かつ、各型間のばらつきがより少ない結果が得られた。また、プライマー濃度を変えたり(実施例5-1、5-2)、プローブとしてP1及びP2のいずれのプローブを用いても(実施例7)上記と同様の結果が得られた。さらに、アデノウイルスの型を26種類とした場合に52型で若干評価の低い結果が得られた(実施例8-2)が、プライマー及びプローブとして、F1、R1~R4、P1、P3を組み合わせて用いることにより(実施例9)、全ての型において特に高評価の定量値が得られた。特に、この組み合わせでは上記52型に加えて、比較例で評価が低い傾向にあった3、7、8、18、19、34、37、41型を漏れなくより高精度で検出できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明によれば、PCRによって、複数の型のアデノウイルスを同時に高精度で定量することが可能なアデノウイルス定量用キット、及びそれを用いたアデノウイルス定量方法を提供することが可能となる。そのため、型の種類に拠らずどの型も同精度でアデノウイルスを検出することができ、例えば、試料に含まれるアデノウイルスの型が未知であっても、当該アデノウイルスを全ての型で共通の単一基準に基づいて同時に、かつ容易に、検出、定量することができる。
【配列表】
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