(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085388
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】λ/4型電波吸収体
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240619BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240619BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240619BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240619BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H05K9/00 M
B32B7/025
B32B27/18 B
B32B27/00 M
H01Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203533
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2022199321
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筧 鷹麿
(72)【発明者】
【氏名】福本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】出口 英寛
(72)【発明者】
【氏名】小山 健史
(72)【発明者】
【氏名】武藤 勝紀
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
5J020
【Fターム(参考)】
4F100AA19A
4F100AA19H
4F100AA34A
4F100AA34H
4F100AB01B
4F100AK25A
4F100AK25G
4F100CB05A
4F100CB05G
5E321AA41
5E321BB25
5E321BB32
5E321GG11
5J020EA04
5J020EA10
(57)【要約】
【課題】高周波数帯域における電波吸収性及び誘電体層の粘着性を備え、且つ薄膜化が可能なλ/4型電波吸収体を提供すること。
【解決手段】粘着性の誘電体層を含み、前記誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率が4以上であり、前記誘電体層100重量%に対して無機材料の含有量が75重量%以下である、λ/4型電波吸収体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性の誘電体層を含み、
前記誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率が4以上であり、
前記誘電体層100重量%に対して無機材料の含有量が75重量%以下である、λ/4型電波吸収体。
【請求項2】
前記無機材料として無機誘電性材料を含み、
前記誘電体層100重量%に対して前記無機誘電性材料の含有量が15重量%以上である、請求項1に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項3】
前記無機誘電性材料がチタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項4】
前記無機材料が無機難燃材料を含む、請求項1に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項5】
前記無機難燃材料が水酸化アルミニウムである、請求項4に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項6】
前記誘電体層が無機難燃材料及び無機誘電性材料を含み、
前記誘電体層100重量%に対して、前記無機難燃材料及び前記無機誘電性材料の合計の含有量が40重量%以上である、請求項1に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項7】
支持体、抵抗層、誘電体層、及び反射層を含む、請求項1、2、4または6に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項8】
前記支持体、前記抵抗層、及び前記誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体の厚みが500μm以下である、請求項7に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項9】
前記支持体、前記抵抗層、及び前記誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体がUL94HB以上の難燃性を有する、請求項7に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項10】
前記支持体、前記抵抗層、及び前記誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体を85℃且つ85%RHの雰囲気下で1000時間放置した後の前記抵抗層の抵抗値変化率が20%未満である、請求項7に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項11】
垂直入射測定において周波数帯域55GHz以上90GHz以下における吸収性能15dB以上の吸収範囲が4GHz以上である、請求項7に記載の電波吸収体。
【請求項12】
前記誘電体層は粘着剤を含み、前記誘電体層100重量%に対して粘着剤の含有量が20重量%以上50重量%以下である、請求項1、2、4または6に記載のλ/4型電波吸収体。
【請求項13】
前記粘着剤がアクリル系粘着剤である、請求項12に記載の電波吸収体。
【請求項14】
粘着性の誘電体層を含み、
前記誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率が4以上であり、
前記誘電体層100重量%に対して無機材料の含有量が75重量%以下である、
λ/4型電波吸収体用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、λ/4型電波吸収体等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信機器の普及が急速に進んでおり、また自動車等において多くの電子機器が搭載されるようになり、これらから発生する電波・ノイズを原因とする電波障害、他の電子機器の誤動作等の問題が多発している。このような電波障害、誤動作等を防止する方策として、各種の電波吸収体が検討されている。
【0003】
また、自動車分野においては近年、自動運転の技術開発が進んでおり、必要な電子機器として高精度カメラやレーダーの開発が進められている。中でも遠距離の車間距離測定や短・中距離での歩行者や障害物といった周辺検知に適したミリ波レーダーについては、検知性能を向上させるため、従来の周波数(24GHz)よりも高い周波数(76GHz,79GHz)のミリ波を使用したレーダーの利用が進められている。そのため、高周波帯域においてノイズを高吸収する電磁波吸収体が必要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-098367号公報
【特許文献2】特開2020-031121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載レーダーに対しては、車載レーダーの薄型化などレーダーの設計の自由度を高める狙いから、電波吸収体に対して薄膜化が要請される場合がある。さらに、電波吸収体をレーダーに設置する際には、接着剤やテープを使用してレーダーの構成体であるシールドケースやレドームに取り付ける方法や、ボルトなどを
使用して物理的に固定する方法などがあるが、作業工程の効率化からより簡易的に設置できることが望ましい。
【0006】
特許文献1には、電波吸収体の薄膜化に対しては、誘電体層の比誘電率を高くすることにより、薄膜化を実現しているが、熱可塑性のEVA樹脂に高誘電率のフィラーを練り込む方法により高誘電率化を実現しており、誘電体層に粘着性能が付与されていない。このため、電波吸収体製造の過程で誘電体層を反射シートや抵抗膜シートに接着する際に、加熱プレス等の工程が必要となり、製造工程が煩雑になってしまう。また、反射シートの代替としてミリ波レーダーの構成体であるレドームやシールドケースなどの金属被着体を活用し、これに電波吸収体を誘電体層の面で接着させる場合についても、同様に加熱圧着等の作業が必要となり、製造時のタクトタイムが長くなってしまう。
【0007】
特許文献2には、誘電体層に無機難燃材料が配合された難燃性に優れた電波吸収体が開示されているものの、誘電体層の比誘電率が周波数10GHzでの測定で3.67以下と低くなっており、高周波数領域での電波吸収性能についても開示されていない。
【0008】
本発明は、高周波数帯域における電波吸収性及び誘電体層の粘着性を備え、且つ薄膜化が可能なλ/4型電波吸収体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を進め、粘着性を備える誘電体層が無機誘電性材料を含む場合、比誘電率が高く制御されて薄膜化が容易となる一方、誘電体層の粘着性が劣りやすくなることを見出した。そこで、誘電体層の比誘電率を所定範囲としつつ、誘電体層における無機材料の含有量を制御することで高周波数帯域(例えば、10GHz以上の周波数帯域)における電波吸収性及び誘電体層の粘着性を備え、且つ薄膜化できることを見出した。本発明者はこれらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0010】
項1. 粘着性の誘電体層を含み、
前記誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率が4以上であり、
前記誘電体層100重量%に対して無機材料の含有量が75重量%以下である、λ/4型電波吸収体。
【0011】
項2. 前記無機材料として無機誘電性材料を含み、
前記誘電体層100重量%に対して前記無機誘電性材料の含有量が15重量%以上である、項1に記載のλ/4型電波吸収体。
【0012】
項3. 前記無機誘電性材料がチタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムからなる群より選択される少なくとも1種である、項2に記載のλ/4型電波吸収体。
【0013】
項4. 前記無機材料が無機難燃材料を含む、項1に記載のλ/4型電波吸収体。
【0014】
項5. 前記無機難燃材料が水酸化アルミニウムである、項4に記載のλ/4型電波吸収体。
【0015】
項6. 前記誘電体層が無機難燃材料及び無機誘電性材料を含み、
前記誘電体層100重量%に対して、前記無機難燃材料及び前記無機誘電性材料の合計の含有量が40重量%以上である、項1に記載のλ/4型電波吸収体。
【0016】
項7. 支持体、抵抗層、誘電体層、及び反射層を含む、項1、2、4または6に記載のλ/4型電波吸収体。
【0017】
項8. 前記支持体、前記抵抗層、及び前記誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体の厚みが500μm以下である、項7に記載のλ/4型電波吸収体。
【0018】
項9. 前記支持体、前記抵抗層、及び前記誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体がUL94HB以上の難燃性を有する、項7に記載のλ/4型電波吸収体。
【0019】
項10. 前記支持体、前記抵抗層、及び前記誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体を85℃且つ85%RHの雰囲気下で1000時間放置した後の前記抵抗層の抵抗値変化率が20%未満である、項7に記載のλ/4型電波吸収体。
【0020】
項11. 垂直入射測定において周波数帯域55GHz以上90GHz以下における吸収性能15dB以上の吸収範囲が4GHz以上である、項7に記載の電波吸収体。
【0021】
項12. 前記誘電体層は粘着剤を含み、前記誘電体層100重量%に対して粘着剤の含有量が20重量%以上50重量%以下である、項1、2、4または6に記載のλ/4型電波吸収体。
【0022】
項13. 前記粘着剤がアクリル系粘着剤である、項12に記載の電波吸収体。
【0023】
項14. 粘着性の誘電体層を含み、
前記誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率が4以上であり、
前記誘電体層100重量%に対して無機材料の含有量が75重量%以下である、
λ/4型電波吸収体用部材。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高周波数帯域における電波吸収性及び誘電体層の粘着性を備え、且つ薄膜化が可能なλ/4型電波吸収体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0026】
1.λ/4型電波吸収体
本発明は、その一態様において、粘着性の誘電体層を含み、前記誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率が4以上であり、前記誘電体層100重量%に対して無機材料の含有量が75重量%以下である、λ/4型電波吸収体(本明細書において、「本発明の電波吸収体」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0027】
<1-1.特性>
<1-1A.特性A>
本発明の電波吸収体は、垂直入射測定において周波数帯域55GHz以上90GHz以下における吸収性能15dB以上の吸収範囲が4GHz以上である、という特性(本明細書において、「本発明の特性A」と示すこともある。)を備えることが好ましい。この特性を備えることにより、より良好な電波吸収性を発揮することが可能である。
【0028】
「周波数帯域55GHz以上90GHz以下における吸収性能15dB以上の吸収範囲」とは、換言すれば、周波数帯域55GHz以上90GHz以下中、吸収性能15dB以上(=反射減衰量が-15dB以下)を示す周波数帯域の幅(単位GHz)である。
【0029】
本発明の特性Aにおける上記吸収範囲は、好ましくは6GHz以上、より好ましくは8GHz以上、さらに好ましくは13GHz以上である。
【0030】
本発明の電波吸収体は、好ましくは、垂直入射測定において周波数帯域55GHz以上90GHz以下における吸収性能20dB以上の吸収範囲が4GHz以上である、という特性(本明細書において、「本発明の特性A’」と示すこともある。)を備えることができる。
【0031】
本発明の特性A’における上記吸収範囲は、好ましくは5GHz以上、より好ましくは6GHz以上である。
【0032】
本発明の特性A及びA’における上記吸収範囲は、以下の方法により測定する。
PNAマイクロ波ネットワーク・アナライザ N5227A(キーサイト社製)、PNA-Xシリーズ2ポート用ミリ波コントローラ N5261A(キーサイト社製)、ホーンアンテナ FSS-07(HVS社製)を用いて電波吸収測定装置を構成する。この電波吸収測定装置を用いて、λ/4型電波吸収体の55GHz以上90GHz以下での電波吸収量をJIS R1679に基づいて測定する。なお、λ/4型電波吸収体は、電波入射方向が垂直かつ、支持体側からの入射となるようにセットする。
【0033】
本発明の電波吸収体の厚みを薄く保ちながら、本発明の特性A、A’を発現させる方法としては、例えば、後述するように本発明の電波吸収体の誘電体層に無機誘電性材料を含有させる方法が有効である。
【0034】
<1-1B.特性B>
本発明の電波吸収体は、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体がUL94HB以上の難燃性を有する、という特性(本明細書において、「本発明の特性B」と示すこともある。)を備えることが好ましい。
【0035】
上記積層体は、本発明の電波吸収体の一部を構成する積層体である。当該積層体の最外層が誘電体層であるので、当該積層体の一方の表面は誘電体層である。当該積層体の他方の表面は、支持体、或いは本発明の電波吸収体の支持体側の表面を構成する層である。典型的には、上記積層体は、本発明の電波吸収体の製造過程において得ることができ、或いは本発明の電波吸収体の誘電体層と、それに積層されている層とを分離することにより、得ることができる。例えば、上記積層体は、支持体、抵抗層、誘電体層の順に積層される積層体である。
【0036】
「UL94HB以上の難燃性を有する」とは、UL94HBで定められた水平燃焼試験において判定基準を満たすこと、或いは当該判定基準よりも難燃レベルが高い判定基準を用いる規格の試験(例えば、UL94V-2、V-1、V-0等)においてその判定基準を満たすことを示す。
【0037】
本発明の特性Bを発現させる方法としては、例えば後述するように本発明の電波吸収体の誘電体層に無機難燃材料を含有させる方法が有効である。
【0038】
<1-1C.特性C>
本発明の電波吸収体は、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体を85℃且つ85%RHの雰囲気下で1000時間放置した後の前記抵抗層の抵抗値変化率が20%未満である、という特性(本明細書において、「本発明の特性C」と示すこともある。)を備えることが好ましい。
【0039】
本発明の特性Cを備えることにより、本発明の電波吸収体を車載レーダー用途に適用した際に、電波吸収性能に関して高い信頼性が得られる。
【0040】
上記積層体については、上述の特性Bにおける説明と同様である。
【0041】
本発明の特性Cにおける上記抵抗値変化率は、好ましくは16%以下、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%未満である。
【0042】
本発明の特性Cにおける上記抵抗値変化率は、以下の方法により測定する。
上記積層体を85℃且つ85%RHの雰囲気下で1000時間暴露した後のシート抵抗値(R11)と、耐久試験前(前記雰囲気下への暴露前)のシート抵抗値(R10)をそれぞれ、非接触式抵抗測定器(ナプソン社製 EC-80P)を用いて、渦電流法により、支持体側からシート抵抗値(Ω/□)を測定し、下記式(1)にて表面抵抗値変化率(R1)を算出する。
R1(%)=[(R11-R10)/R10]×100 ・・・式(1)。
【0043】
本発明の特性Bと本発明の特性Cとを共に発現させる方法としては、例えば後述するように本発明の電波吸収体の誘電体層に無機難燃材料を含有させ、有機系難燃材料の含有量を抑える方法が有効である。
【0044】
本発明の電波吸収体は、好ましくは、85℃且つ85%RHの雰囲気下で1000時間放置した後にも、本発明の特性A又は本発明の特性A’を備える。
【0045】
<1-1D.特性D>
本発明の電波吸収体は、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体の前記誘電体層の面をSUS板に貼り付けて25℃且つ50%RHの環境下で24時間放置した後の前記積層体の90度引き剥がし粘着力が3N/25mm以上である、という特性(本明細書において、「本発明の特性D」と示すこともある。)を備えることが好ましい。
【0046】
上記積層体については、上述の特性Bにおける説明と同様である。
【0047】
本発明の特性Dにおける上記粘着力は、好ましくは6N/25mm以上、より好ましくは8N/25mm以上、さらに好ましくは10N/25mm以上、よりさらに好ましくは12N/25mm以上、特に好ましくは15N/25mm以上である。
【0048】
本発明の特性Dにおける上記粘着力は、以下の方法により測定する。
上記積層体を幅25mm×長さ150mmに短冊状に加工し試験片を作製する。試験片の誘電体層の面をSUS板と貼り合わせ、測定サンプルとする。SUS板への貼り合わせは、2kgのローラを10±0.5 mm/sの速度で合計2往復させて行う。貼り合せ後、25℃且つ50%RHの環境下で24時間放置する。その後、試験片の一端を引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)のチャックに固定する。その後、25℃、50%RHの環境下、剥離確度90度、引張速度300mm/minで60mm以上引張り、ロードセルにより検出された荷重(N)の区間平均値(N/25mm)を記録する。同様の測定を3回行い、3点平均を90度引き剥がし粘着力とする。
【0049】
本発明の特性Dを発現させる方法としては、例えば予め目的の粘着力以上の粘着力となるように誘電体層を調整したしたうえで、後述するように無機材料の含有量を制御する方法が有効である。
【0050】
<1-2.支持体>
本発明の電波吸収体は支持体を含むことが好ましい。これにより、抵抗層を保護することができ、電波吸収体としての耐久性を高めることが可能である。支持体は、シート状のものである限り、特に制限されない。支持体としては、特に制限されないが、例えば樹脂基材が挙げられる。
【0051】
樹脂基材は、樹脂を素材として含む基材であって、シート状のものである限り、特に制限されない。樹脂基材は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、樹脂以外の成分が含まれていてもよい。樹脂基材中の樹脂の合計量は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上であり、通常100重量%未満である。
【0052】
樹脂としては、特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
【0053】
これらの中でも、生産性や強度の観点から、好ましくはポリエステル系樹脂、より好ましくはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0054】
樹脂基材は、比誘電率を調整する観点から、酸化チタン等を含有することが好ましい。この場合、樹脂基材における酸化チタンの含有量は、好ましくは1重量%以上20重量%以下、より好ましくは2重量%以上16重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上12重量%以下である。
【0055】
支持体の比誘電率は、特に制限されない。支持体の比誘電率は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~5である。
【0056】
支持体の厚みは、本発明の電波吸収体の支持体、抵抗層、誘電体層の3層の合計厚みを500μm以下に抑えるために、好ましくは5μm以上150μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上70μm以下、特に好ましくは23μm以上50μm以下である。
【0057】
支持体の層構成は特に制限されない。支持体は、1種単独の支持体から構成されるものであってもよいし、2種以上の支持体が複数組み合わされたものであってもよい。
【0058】
<1-3.抵抗層>
λ/4型電波吸収体は抵抗層を含む。抵抗層は、λ/4型電波吸収体において所定の抵抗値を備える層である限り特に制限されない。
【0059】
抵抗層の抵抗値は、本発明の特性を満たし得るものである限り特に制限されない。抵抗層の抵抗値を調節することにより、本発明の特性Aにおける吸収範囲を調節することが可能である。抵抗層の抵抗値(シート抵抗)は、例えば100Ω/□以上800Ω/□以下である。該範囲の中でも、より好ましくは150Ω/□以上750Ω/□以下、さらに好ましくは200Ω/□以上600Ω/□以下である。
【0060】
抵抗層の抵抗値は、表面抵抗計(MITSUBISHI CHEMICALANALYTECH社製、商品名「Loresta-EP」)を用いて、4端子法により測定することができる。
【0061】
抵抗層の厚みは、特に制限されない。抵抗層の厚みは、例えば1nm以上200nm以下、好ましくは2nm以上100nm以下、より好ましくは2nm以上50nm以下である。
【0062】
抵抗層の層構成は特に制限されない。抵抗層は、1種単独の層から構成されるものであってもよいし、2種以上の層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0063】
<1-3-1.酸化インジウム含有抵抗層>
抵抗層としては、例えば酸化インジウム等の抵抗層材料を含有する抵抗層が挙げられる。好ましい一態様において、抵抗層材料としては、酸化インジウムに他の材料(ドーパント)がドープされてなる材料を含有することが好ましい。他の材料としては、特に制限されないが、例えば酸化スズ及び酸化亜鉛、並びにそれらの混合物等が挙げられる。
【0064】
酸化インジウムに酸化スズがドープされてなる材料の中でも、好ましくは、酸化インジウム(III)(In2O3)に酸化スズ(IV)(SnO2)をドープしたもの(酸化インジウムスズ)(tin-doped indium oxide;ITO)が挙げられる。非晶質構造が極めて安定であり、高温多湿の環境下においても抵抗層のシート抵抗の変動を抑えることができる点から、ITO中のSnO2含有量は、好ましくは1重量%以上40重量%以下、より好ましくは2重量%以上35重量%以下である。
【0065】
抵抗層中の上記抵抗層材料の含有量は、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であり、通常100重量%未満である。
【0066】
<1-3-2.モリブデン含有抵抗層>
抵抗層としては、耐久性、シート抵抗の調整が容易である観点から、モリブデンを含有する抵抗層が好ましく用いられる。モリブデンの含有量の下限は特に限定されないが、より耐久性を高める観点から、5重量%が好ましく、7重量%がより好ましく、9重量%が更に好ましく、11重量%がより更に好ましく、13重量%が特に好ましく、15重量%が非常に好ましく、16重量%が最も好ましい。また、上記モリブデンの含有量の上限は、表面抵抗値の調整の容易化の観点から、30重量%が好ましく、25重量%がより好ましく、20重量%が更に好ましい。
【0067】
上記抵抗層は、モリブデンを含有している場合、さらにニッケル及びクロムを含有することがより好ましい。抵抗層にモリブデンに加えてニッケル及びクロムを含有することでより耐久性に優れた電波吸収体とすることができる。ニッケル、クロム及びモリブデンを含有する合金としては、例えば、ハステロイB-2、B-3、C-4、C-2000、C-22、C-276、G-30、N、W、X等の各種グレードが挙げられる。
【0068】
上記抵抗層がモリブデン、ニッケル及びクロムを含有する場合、モリブデンの含有量が5重量%以上、ニッケルの含有量が40重量%以上、クロムの含有量が1重量%以上であることが好ましい。モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量が上記範囲であることで、より耐久性に優れた電波吸収体とすることができる。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が7重量%以上、ニッケル含有量が45重量%以上、クロム含有量が3重量%以上であることがより好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が9重量%以上、ニッケル含有量が47重量%以上、クロム含有量が5重量%以上であることが更に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が11重量%以上、ニッケル含有量が50重量%以上、クロム含有量が10重量%以上であることがより更に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が13重量%以上、ニッケル含有量が53重量%以上、クロム含有量が12重量%以上であることが特に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が15重量%以上、ニッケル含有量が55重量%以上、クロム含有量が15重量%以上であることが非常に好ましい。上記モリブデン、ニッケル及びクロムの含有量は、モリブデン含有量が16重量%以上、ニッケル含有量が57重量%以上、クロム含有量が16重量%以上であることが最も好ましい。また、上記ニッケルの含有量は、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、65重量%以下であることが更に好ましい。上記クロム含有量の上限は、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることが更に好ましい。
【0069】
上記抵抗層は、上記モリブデン、ニッケル及びクロム以外の金属を含有してもよい。そのような金属としては、例えば、鉄、コバルト、タングステン、マンガン、チタン等が挙げられる。上記抵抗層がモリブデン、ニッケル及びクロムを含有する場合、上記モリブデン、ニッケル及びクロム以外の金属の合計含有量の上限は、抵抗層の耐久性の観点から、好ましくは45重量%、より好ましくは40重量%、更に好ましくは35重量%、より更に好ましくは30重量%、特に好ましくは25重量%、非常に好ましくは23重量%である。上記モリブデン、ニッケル及びクロム以外の金属の合計含有量の下限は、例えば1重量%以上である。
【0070】
上記抵抗層が鉄を含有する場合、抵抗層の耐久性の観点から、含有量の好ましい上限は25重量%、より好ましい上限は20重量%、更に好ましい上限は15重量%であり、好ましい下限は1重量%である。上記抵抗層がコバルト及び/又はマンガンを含有する場合、抵抗層の耐久性の観点から、それぞれ独立して、含有量の好ましい上限は5重量%、より好ましい上限は4重量%、更に好ましい上限は3重量%であり、好ましい下限は0.1重量%である。上記抵抗層がタングステンを含有する場合、抵抗層の耐久性の観点から、含有量の好ましい上限は8重量%、より好ましい上限は6重量%、更に好ましい上限は4重量%であり、好ましい下限は1重量%である。
【0071】
上記抵抗層は、ケイ素及び/又は炭素を含有してもよい。抵抗層がケイ素及び/又は炭素を含有する場合、上記ケイ素及び/又は炭素の含有量は、それぞれ独立して、1重量%以下であることが好ましく0.5重量%以下であることがより好ましい。また、抵抗層がケイ素及び/又は炭素を含有する場合、上記ケイ素及び/又は炭素の含有量は、0.01重量%以上であることが好ましい。
【0072】
<1-4.バリア層>
耐久性の観点から、バリア層を含むことが好ましい。バリア層は、抵抗層の少なくとも一方の表面上に配置される。バリア層について以下に詳述する。
【0073】
バリア層は、抵抗層を保護し、その劣化を抑えることができる層である限り、特に制限されない。バリア層の素材としては、例えば金属化合物、半金属化合物、好ましくは金属又は半金属の酸化物、窒化物、窒化酸化物等が挙げられる。バリア層は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、上記素材以外の成分が含まれていてもよい。その場合、バリア層中の上記素材量は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上であり、通常100重量%未満である。
【0074】
バリア層が含む金属元素としては、例えばチタン、アルミニウム、ニオブ、コバルト、ニッケル等が挙げられる。バリア層が含む半金属元素としては、例えばケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス等が挙げられる。
【0075】
上記酸化物としては、例えばMOX[式中、Xは式:n/100≦X≦n/2(nは金属又は半金属の価数である)を満たす数であり、Mは金属元素又は半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0076】
上記窒化物としては、例えばMNy[式中、Yは式:n/100≦Y≦n/3(nは金属又は半金属の価数である)を満たす数であり、Mは金属元素又は半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0077】
上記窒化酸化物としては、例えばMOXNy[式中、XとYは、n/100≦X、n/100≦Y、かつ、X+Y≦n/2(nは金属又は半金属の価数である)であり、Mは金属元素又は半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0078】
上記酸化物又は窒化酸化物の酸化数Xに関しては、例えばMOx又はMOxNyを含む層の断面を、FE-TEM-EDX(例えば、日本電子社製「JEM-ARM200F」)により元素分析し、MOx又はMOxNyを含む層の断面の面積当たりのMとOとの元素比率からXを算出することにより、酸素原子の価数を算出することができる。
【0079】
上記窒化物又は窒化酸化物の窒素化数Yに関しては、例えばMNy又はMOxNyを含む層の断面を、FE-TEM-EDX(例えば、日本電子社製「JEM-ARM200F」)により元素分析し、MNy又はMOxNyを含む層の断面の面積当たりのMとNとの元素比率からYを算出することにより、窒素原子の価数を算出することができる。
【0080】
バリア層の素材の具体例としては、SiO2、SiOx、Al2O3、MgAl2O4、CuO、CuN、TiO2、TiN、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0081】
バリア層の厚みは、特に制限されない。バリア層の厚みは、例えば1nm以上200nm以下、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは1nm以上20nm以下である。
【0082】
バリア層の層構成は特に制限されない。バリア層は、1種単独のバリア層から構成されるものであってもよいし、2種以上のバリア層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0083】
<1-5.誘電体層>
誘電体層は、粘着性を有し、周波数80GHzにおける比誘電率が4以上であり、前記誘電体層100重量%に対して、無機材料の含有量が75重量%以下である。誘電体層はλ/4型電波吸収体において目的の波長に対して誘電体として機能し得るものである。。
【0084】
誘電体層における無機材料の含有量が75重量%以下であることで、誘電体層の粘着性を高めることが容易となる。誘電体層における無機材料の含有量は、好ましくは71重量%以下である。誘電体層における無機材料の含有量は上述の比誘電率の範囲を満たす限り特に限定されないが、例えば20重量%以上である。
【0085】
無機材料は特に限定されないが例えば、無機フィラー、無機微粒子である。本発明の誘電体層は無機誘電性材料を含むことが好ましい。また、本発明の誘電体層は無機難燃材料を含むことが好ましい。
【0086】
無機誘電性材料としては高誘電性の材料が挙げられ、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ストロンチウム、ジルコン酸チタン酸鉛、タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム、ビスマスフェライトなどが挙げられ、中でもチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムが好ましい。チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウムを用いると、少量で比誘電率を所望の範囲に調整できる。そのため、誘電体層の粘着力を低下させることなく、比誘電率を一定以上に調整することが可能となる。
【0087】
誘電体層における無機誘電性材料の含有量は、誘電体層100重量%に対して、5重量%以上75重量%以下であることが好ましく、5重量%以上70重量%以下であることがより好ましく、10重量%以上70重量%以下であることがさらに好ましく15重量%以上70重量%以下であることが特に好ましい。無機誘電性材料の含有量が5重量%以上であると、本発明の電波吸収体の比誘電率をより向上させることができ、狙いの電波吸収性能を確保するために誘電体層の厚みを小さくすることができ、抵抗層、誘電体層の3層の合計厚みを500μm以下に抑えることが可能になる。無機誘電性材料の含有量が75重量%以下であると、誘電体層をより丈夫にでき、取り扱い性をより向上させることができ、また、誘電体層の粘着力をより高めることができ、反射層への粘着性能をより向上させることができる。無機誘電性材料の含有量が70重量%以下であると、取り扱い性と粘着力を高めつつ、さらに異なる無機材料を含有させて異なる機能を付与することができる。
【0088】
本発明の電波吸収体に難燃性を付与するために、誘電体層に無機難燃材料として金属水酸化物、金属塩の水和物などの水和金属化合物を含有させることが好ましい。これらの無機難燃材料を含有することにより、本発明の電波吸収体は高温高湿環境下に長期間さらされた後でも、電波吸収性能の低下を抑えつつ、難燃性を向上させることができる。具体的には、水和金属化合物としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、カルシウム-マグネシウム系水酸化物、ハイドロタルサイト、ベーマイト、タルク、ドーソナイト、硫酸カルシウムの水和物、硫酸マグネシウムの水和物、ホウ酸亜鉛[2ZnO・3B2O5・3.5H2O]などが挙げられる。中でも水酸化アルミニウムが好適に使用される。これらは1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
【0089】
無機難燃材料の形状としては、特に制限されないが、例えば板状、球状、樹枝状、顆粒状等が挙げられる。
【0090】
無機難燃材料の平均粒子径は、特に制限されない。該平均粒子径は、例えば0.3μm以上300μm以下、好ましくは0.5μm以上100μm以下、より好ましくは0.5μm以上50μm以下である。
【0091】
誘電体層における無機難燃材料の含有量は、誘電体層100重量%に対して、5重量%以上75重量%以下であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上60重量%以下であり、さらに好ましくは37重量%以上ことがより好ましい。無機難燃材料の含有量が5重量%以上であると、本発明の電波吸収体の難燃性能をより高めることができ、無機難燃材料の含有量が75重量%以下であると、誘電体層をより丈夫にでき、取り扱い性をより向上させることができ、また、誘電体層の粘着力をより高めることができ、反射層への粘着性能をより向上させることができる。
【0092】
誘電体層における無機難燃材料と無機誘電性材料との合計含有量は、誘電体層100重量%に対して、75重量%以下であり、71重量%以下であることが好ましい。無機難燃材料と無機誘電性材料との合計含有量が75重量%以下であると、誘電体層の粘着性を高めることが容易となる。誘電体層における無機難燃材料と無機誘電性材料との合計含有量は、誘電体層100重量%に対して、20重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることより好ましく、50重量%以上であることがさらに好ましい。無機難燃材料と無機誘電性材料との合計含有量が20重量%以上であると、電波吸収体の難燃性を向上させつつ誘電体層を高誘電化することが容易となる。
【0093】
誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率が4以上であることで、狙いの電波吸収性能を発現するために、誘電体層の厚みをより薄くすることができ、支持体、抵抗層、誘電体層の3層の合計厚みを500μm以下に調整することが可能である。誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率は10以下であることが好ましい。比誘電率が10以下である場合は、誘電体層に含有させる無機誘電性材料の含有量をより減らすことができ、誘電体層をより丈夫にでき、取り扱い性をより向上させることができ、また、誘電体層の粘着力をより高めることができ、反射層への粘着性能をより向上させることができる。誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率は、より好ましくは4.5~9.5、さらに好ましくは5~9である。
【0094】
本発明の電波吸収体の誘電体層を高誘電率化するためには、誘電体層に無機誘電性材料を含有させることが好ましい。無機誘電性材料を含有することにより、本発明の電波吸収体は高周波数領域でも高い比誘電率を保持することができる。また、誘電体層の薄膜化による電波吸収性能の低下を抑えることが出来、支持体、抵抗層、誘電体層の3層の合計厚みを500μm以下に設計することが可能となる。
【0095】
誘電体層の比誘電率は、次のようにして測定する。PNAマイクロ波ネットワーク・アナライザ N5227A(キーサイト社製)、PNA-Xシリーズ2ポート用ミリ波コントローラ N5261A(キーサイト社製)、ホーンアンテナ FSS-07(HVS社製)を使用したフリースペース法により誘電体層のSパラメータを測定し、材料測定ソフトウェアN1500A(キーサイト製)を用いることで、80GHzでの比誘電率を算出する。
【0096】
誘電体層は粘着剤を含むことが好ましい。粘着剤としては、特に制限されず、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、フッ素系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着性能に優れる点から、アクリル系粘着剤の使用が好ましい。
【0097】
誘電体層における粘着剤の含有量は、20重量%以上50重量%以下であることが好ましい。粘着剤の含有量が20重量%以上であると、誘電体層をより丈夫にでき、取り扱い性をより向上させることができ、また、誘電体層の粘着力をより高めることができ、反射層への粘着性能をより向上させることができる。粘着剤の含有量が50重量%以下であると、誘電体層の難燃性能と電波吸収性能をより高いレベルで両立させることができる。
【0098】
誘電体層は、誘電体層100重量%に対して有機系難燃材料を5重量%以下含むことが好ましく、1重量%以下含むことがより好ましく、有機系難燃材料を含まないことがさらに好ましい。有機系難燃材料を5重量%以下で含むことで、高温高湿環境下において有機系難燃材料の影響で抵抗層が劣化し、電波吸収性能が損なわれることを抑制できる。有機系難燃材料としては例えばリン酸エステル系難燃材料が挙げられる。
【0099】
誘電体層の厚みは、高周波帯域における電波吸収性を発現させつつ本発明の電波吸収体の支持体、抵抗層、誘電体層の3層の合計厚みを500μm以下に抑えるために、好ましくは150μm以上475μm以下、より好ましくは200μm以上450μm以下、さらに好ましくは250μm以上430μm以下である。
【0100】
誘電体層の厚みは、例えば、Nikon DIGIMICROSTANDMS-11C+Nikon DIGIMICRO MFC-101によって測定することができる。
【0101】
誘電体層の層構成は特に制限されない。誘電体層は、1種単独の誘電体層から構成されるものであってもよいし、2種以上の誘電体層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0102】
<1-6.反射層>
反射層は、電波吸収体において電波の反射層として機能し得るものである限り、特に制限されない。反射層としては、特に制限されないが、例えば金属膜が挙げられる。
【0103】
金属膜は、金属を素材として含む層である限り、特に制限されない。金属膜は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、金属以外の成分が含まれていてもよい。その場合、金属膜中の金属の合計量は、例えば30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、さらにより好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、非常に好ましくは99重量%以上であり、通常100重量%未満である。
【0104】
金属としては、特に制限されず、例えばアルミニウム、銅、鉄、銀、金、クロム、ニッケル、モリブデン、ガリウム、亜鉛、スズ、ニオブ、インジウム等が挙げられる。また、金属化合物、例えばITO等も、金属膜の素材として使用することができる。これらは1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0105】
反射層の厚みは、特に制限されない。反射層の厚みは、例えば1μm以上500μm以下、好ましくは2μm以上200μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下である。薄膜化の観点から、反射層の厚みは、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
【0106】
反射層の層構成は特に制限されない。反射層は、1種単独の反射層から構成されるものであってもよいし、2種以上の反射層が複数組み合わされたものであってもよい。また、ミリ波レーダーの構成体である金属製のシールドケースやレドームなどを反射層として使用することもできる。
【0107】
<1-7.層構成>
本発明の電波吸収体において、各層は、電波吸収性能を発揮することができる順に配置される。本発明の電波吸収体は、典型的には、支持体、抵抗層、誘電体層、及び反射層は、この順に配置される。
【0108】
本発明の電波吸収体は、支持体、抵抗層、誘電体層、及び反射層以外に、他の層を含むことができる。ただ、薄膜化の観点から、他の層は含まない、或いは他の層の合計厚みは好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、よりさらに好ましくは10μm以下、とりわけ好ましくは5μm以下である。
【0109】
<1-8.電波吸収体の厚み>
本発明の電波吸収体において、前記支持体、前記抵抗層、及び前記誘電体層の3層を含み且つ前記誘電体層が最外層である積層体の厚みは500μm以下である。積層体の厚みを500μm以下とすることにより、本発明の電波吸収体の厚みを薄く(例えば500μm以下に)設計でき、電子機器内の限られたスペースに設置することが出来るため、電子機器の設計において、厚さを薄く設計するなど設計自由度を高めることが出来る。
【0110】
上記積層体の厚み、本発明の電波吸収体の厚みは、好ましくは480μm以下、より好ましくは460μm以下である。当該厚みの下限は、特に制限されず、例えば250μm、300μm、又は330μmである。
【0111】
<2.製造方法>
本発明の電波吸収体は、その構成に応じて、様々な方法、例えば公知の製造方法に従って又は準じて得ることができる。例えば、支持体上に抵抗層、誘電体層、及び反射層を順に積層させる工程を含む方法により、得ることができる。
【0112】
積層方法は特に制限されない。
【0113】
抵抗層は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、パルスレーザーデポジション法等により行うことができる。これらの中でも、膜厚制御性の観点から、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、特に限定されないが、例えば、直流マグネトロンスパッタ、高周波マグネトロンスパッタ及びイオンビームスパッタ等が挙げられる。また、スパッタ装置は、バッチ方式であってもロール・ツー・ロール方式であってもよい。
【0114】
誘電体層や反射層は、例えば誘電体層が有する粘着性を利用して、積層することができる。
【0115】
<3.用途>
本発明の電波吸収体は、不要な電磁波を吸収する性能を有するため、例えば光トランシーバや、次世代移動通信システム(5G)、近距離無線転送技術等における電波対策部材として好適に利用できる。また、その他の用途として自動車、道路、人の相互間で情報通信を行う高度道路交通システム(ITS)や自動車衝突防止システムに用いるミリ波レーダーにおいても、電波干渉抑制やノイズ低減の目的で用いることができる。
【0116】
本発明の電波吸収体が対象とする電波の周波数は、好ましくは10GHz以上150GHz以下、より好ましくは20GHz以上120GHz以下、さらに好ましくは30GHz以上100GHz以下、さらにより好ましくは55GHz以上90GHz以下、特に好ましくは70GHz以上90GHz以下である。
【0117】
<4.λ/4型電波吸収体用部材>
本発明の一態様としては、粘着性の誘電体層を含み、前記誘電体層の周波数80GHzにおける比誘電率が4以上であり、前記誘電体層100重量%に対して無機材料の含有量が75重量%以下である、λ/4型電波吸収体用部材を含む。λ/4型電波吸収体用部材とは、電波を反射する特性を備える部材に配置することで、λ/4型電波吸収体として機能するようになる部材を指す。λ/4型電波吸収体用部材としては特に限定されないが、抵抗層および上述の特性を備える誘電体層を含む積層体であることが好ましい。
【実施例0118】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0119】
(1)λ/4型電波吸収体の製造
(実施例1)
<実施例1-1.支持体への抵抗層の作製>
支持体として、酸化チタン(平均粒径 200μm)を練りこんだポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み50μm、比誘電率3.4、TiO2;10重量%)を用意した。上記PETフィルム上に抵抗値330Ω/□の抵抗層(バリア層1/抵抗層/バリア層2)を次の通りに形成した。まず、DCパルススパッタリングによりArとO2の比率を1:1に調整したがガスを導入して、0.2Paになるように調整してSiO2層(バリア層1:厚さ10nm)を成膜した。続いて、バリア層1上に、DCパルススパッタリングにより抵抗層を形成した。スパッタリングはハステロイC-276(組成:モリブデン16.4重量%、ニッケル55.2重量%、クロム18.9重量%、鉄5.5重量%、タングステン3.5重量%、シリカ0.5重量%)をターゲットに用い、出力0.4kW、Arガス流量100sccmで導入して圧力0.12Paとなるように調整して行った。最後に、バリア層1と同様にしてバリア層2(厚さ5nm)を形成した。
【0120】
<実施例1-2.誘電体層の作製>
<実施例1-2-1.アクリル系粘着剤溶液の調製>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート 50重量部、n-ブチルアクリレート 47重量部、アクリル酸 2.5重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート 0.5重量部、酢酸エチル 100質量部を加え、窒素ガスを30分間吹き込んで窒素置換した後、反応容器を75℃に加熱した。この溶液に、酢酸エチルで溶解したアゾビスイソブチロニトリル溶液4重量部(固形分10重量%)を添加し、75℃の温度で窒素フロー下、8時間攪拌して重合を行い、固形分50重量%、粘度5000mPa・s、重量平均分子量35万のアクリル系共重合体溶液を得た。この溶液に、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(荒川化学工業社製ペンセルD135)の酢酸エチル溶液60重量部(固形分50重量%)を加え、30分攪拌し、アクリル系粘着剤溶液を得た。
【0121】
<実施例1-2-2.誘電体組成物溶液の調製>
ディスク羽根を備えた撹拌機付きの容器に、上記アクリル系粘着剤溶液 100重量部、無機難燃材料として水酸化アルミニウム(林化成社製KH-101、メディアン径1.0μm) 87.5重量部、無機誘電性材料としてチタン酸バリウム(共立マテリアル社製BT-SA、平均粒径1.5μm) 35重量部、分散剤として第一工業製薬社製 プライサーフA-212C 1.5重量部、希釈溶剤として酢酸エチル 70重量部を加え、30分攪拌し配合物を均一に混合させ、粘度8,000mPa・sの誘電体組成物溶液を得た。
【0122】
<実施例1-2-3.誘電体層の作製>
得られた誘電体組成物溶液 224重量部に、架橋剤として三井化学株式会社製コロネートL-45 5重量部を加え、30分間攪拌し、減圧下で脱泡した後に、離型PETフィルムの離型処理面に乾燥後の厚みが200μmになるように塗工し、80℃で10分間乾燥させて粘着剤組成物溶液中の酢酸エチルを除去して、誘電体層を形成した。得られた厚み200μmの誘電体層に、同様の方法で形成した厚み200μmの誘電体層を、誘電体層同士が重なるようにラミネートし、両面に離型PETフィルムを有する厚み400μmの誘電体層を形成した。これを40℃のオーブン中で3日間養生し、誘電体層を得た。
【0123】
<実施例1-3.支持体、抵抗層、誘電体層の3層積層体の作製>
実施例1-2で得られた誘電体層の片側の離型PETフィルムを剥がし、誘電体層の露わになった面を実施例1-1で得られた積層体(支持体/抵抗層(バリア層1/抵抗層/バリア層2))のバリア層2側にラミネートし、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体を作製した。
【0124】
<実施例1-4.λ/4型電波吸収体の作製>
実施例1-3で得られた積層体の誘電体層側の離型PETフィルムを剥がし、誘電体層の露わになった面の上に厚さ12μmの銅からなる反射層を積層して、λ/4型電波吸収体を得た。
【0125】
(実施例2)
無機難燃材料として水酸化アルミニウム(林化成社製KH-101、メディアン径1.0μm)70重量部、無機誘電性材料としてチタン酸バリウム(共立マテリアル社製BT-SA、平均粒径1.5μm)52.5重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0126】
(実施例3)
無機難燃材料として水酸化アルミニウム(林化成社製KH-101、メディアン径1.0μm)40重量部、無機誘電性材料としてチタン酸ストロンチウム(共立マテリアル社製ST-2、平均粒径1.5μm)24重量部を使用したこと、架橋剤として三井化学株式会社製コロネートL-45 4重量部を使用したことと、2枚重ねの誘電体層の厚みを430μm(1層の厚みを215μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0127】
(実施例4)
無機難燃材料として水酸化アルミニウム(林化成社製KH-101、メディアン径1.0μm)36重量部、無機誘電性材料としてチタン酸バリウム(共立マテリアル社製BT-SA、平均粒径1.5μm)90重量部を使用したことと、2枚重ねの誘電体層の厚みを340μm(1層の厚みを170μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0128】
(実施例5)
無機難燃材料を使用しなかったこと、無機誘電性材料としてチタン酸バリウム(共立マテリアル社製BT-SA、平均粒径1.5μm)80重量部を使用したこと、架橋剤として三井化学株式会社製コロネートL-45 3.5重量部を使用したことと、2枚重ねの誘電体層の厚みを350μm(1層の厚みを175μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0129】
(実施例6)
無機難燃材料を使用しなかったこと、難燃剤としてリン酸エステル系分散剤(商品名「プライサーフA-212C」、第一工業製薬株式会社製)5重量部を使用したこと、無機誘電性材料としてチタン酸バリウム(共立マテリアル社製BT-SA、平均粒径1.5μm)45重量部を使用したこと、架橋剤として三井化学株式会社製コロネートL-45 4重量部を使用したことと、2枚重ねの誘電体層の厚みを430μm(1層の厚みを215μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0130】
(実施例7)
支持体への抵抗層の作製においてスパッタリングのターゲットをハステロイC-276からITOに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0131】
(比較例1)
無機難燃材料として水酸化アルミニウム(林化成社製KH-101、メディアン径1.0μm)31重量部、無機誘電性材料としてチタン酸バリウム(共立マテリアル社製BT-SA、平均粒径1.5μm)3重量部を使用したこと、架橋剤として三井化学株式会社製コロネートL-45 3重量部を使用したことと、2枚重ねの誘電体層の厚みを490μm(1層の厚みを245μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗膜、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0132】
(比較例2)
無機難燃材料として水酸化アルミニウム(林化成社製KH-101、メディアン径1.0μm)12.5重量部、無機誘電性材料としてチタン酸バリウム(共立マテリアル社製BT-SA、平均粒径1.5μm)150重量部を使用したことと、2枚重ねの誘電体層の厚みを300μm(1層の厚みを150μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0133】
(比較例3)
無機難燃材料として水酸化アルミニウム(林化成社製KH-101、メディアン径1.0μm)135重量部、無機誘電性材料としてチタン酸バリウム(共立マテリアル社製BT-SA、平均粒径1.5μm)100重量部を使用したことと、2枚重ねの誘電体層の厚みを320μm(1層の厚みを160μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0134】
(比較例4)
無機難燃材料及び無機誘電性材料を使用しなかったこと、架橋剤として三井化学株式会社製コロネートL-45 3重量部を使用したことと、2枚重ねの誘電体層の厚みを560μm(1層の厚みを280μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層からなる積層体、並びにλ/4型電波吸収体を得た。
【0135】
(2)測定及び評価方法
(2-1)比誘電率
PNAマイクロ波ネットワーク・アナライザ N5227A(キーサイト社製)、PNA-Xシリーズ2ポート用ミリ波コントローラ N5261A(キーサイト社製)、ホーンアンテナ FSS-07(HVS社製)を使用したフリースペース法により誘電体層のSパラメータを測定し、材料測定ソフトウェアN1500A(キーサイト製)を用いることで、実施例及び比較例で得られた誘電体層の80GHzでの比誘電率を算出した。
【0136】
(2-2)電波吸収性能
PNAマイクロ波ネットワーク・アナライザ N5227A(キーサイト社製)、PNA-Xシリーズ2ポート用ミリ波コントローラ N5261A(キーサイト社製)、ホーンアンテナ FSS-07(HVS社製)を用いて電波吸収測定装置を構成した。この電波吸収測定装置を用いて、実施例及び比較例で得られたλ/4型電波吸収体の55GHz以上90GHz以下での電波吸収量をJIS R1679に基づいて測定した。なお、λ/4型電波吸収体は、電波入射方向が垂直かつ、支持体側からの入射となるようにセットした。得られた吸収量について、以下の評価基準にて電磁波吸収性能を評価した。
◎:吸収量が15dB以上の帯域幅が13GHz以上
○:吸収量が15dB以上の帯域幅の帯域幅が12GHz以上4GHz以上
×:吸収量が20dB以上の帯域幅の帯域幅が4GHz未満
【0137】
(2-3)難燃性
実施例及び比較例で得られた、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層積層体につき、難燃性評価を行った。難燃性はUL94HB規格に準拠して測定し、HB規格に適合したものを○、適合しなかったものを×とした。
【0138】
(2-4)湿熱試験後の抵抗値変化
実施例及び比較例で得られた、支持体、抵抗層、及び誘電体層の3層積層体を85℃且つ85%RHの雰囲気下で1000時間暴露した後のシート抵抗値(R11)と、耐久試験前(前記雰囲気下への暴露前)のシート抵抗値(R10)をそれぞれ、非接触式抵抗測定器(ナプソン社製 EC-80P)を用いて、渦電流法により、支持体側からシート抵抗値(Ω/□)を測定し、下記式(1)にて表面抵抗値変化率(R1)を算出した。
R1(%)=[(R11-R10)/R10]×100 ・・・式(1)
評価はR1の値をもとに、以下の基準で評価した。
◎:R1が10%未満。
○:R1が10%以上20%以下。
×:R1が20%より大きい。
【0139】
(2-5)誘電体層の90度引き剥がし粘着力
実施例及び比較例で得られた、支持体、抵抗層、誘電体層の3層積層体につき、90度引き剥がし粘着力を、次のようにして測定した。3層積層体を幅25mm×長さ150mmに短冊状に加工し試験片を作製した。試験片の誘電体層の面をSUS板と貼り合わせ、測定サンプルとした。SUS板への貼り合わせは、2kgのローラを10±0.5 mm/sの速度で合計2往復させて行った。貼り合せ後、25℃且つ50%RHの環境下で24時間放置した。その後、試験片の一端を引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)のチャックに固定した。その後、25℃、50%RHの環境下、剥離確度90度、引張速度300mm/minで60mm以上引張り、ロードセルにより検出された荷重(N)の区間平均値(N/25mm)を記録した。同様の測定を3回行い、3点平均を90度引き剥がし粘着力とした。
【0140】
(2-6)湿熱試験後の電波吸収性能
実施例及び比較例で得られたλ/4型電波吸収体を構成する支持体、抵抗層、誘電体層、反射層の4層からなる積層体を85℃且つ85%RHの環境下で1000時間保管した。保管後の積層体について電波吸収性能を測定し、(2-2)と同様の評価基準にて電磁波吸収性能を評価した。
【0141】
(3)結果
結果を表1に示す。
【0142】
【0143】
A:アクリル系粘着剤ポリマー(80GHzでの誘電率 2.5)
B:イソシアネート架橋剤 商品名「コロネートL-45」、三井化学株式会社製
C:リン酸エステル系分散剤 商品名「プライサーフA-212C」、第一工業製薬株式
会社製
D:水酸化アルミニウム 商品名「KH-101」、林化成株式会社製
E:リン酸エステル系難燃剤 商品名「ダイガード-880」、大八化学株式会社製
F:チタン酸バリウム 商品名「BT-SA」、共立マテリアル株式会社製
G:チタン酸ストロンチウム 商品名「ST-2」、共立マテリアル株式会社製