(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085401
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】パイ(π)字形プリフォームおよびその結合ジョイント
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
C08J5/04 CFC
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209243
(22)【出願日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】18/065,850
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】504242618
【氏名又は名称】ロッキード マーティン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LOCKHEED MARTIN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ワーナー クーン
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス ニャンチャウ グエン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エイチ ヘクト
(72)【発明者】
【氏名】カール キュー ルソー
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB06
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AD23
4F072AG03
4F072AG17
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL02
(57)【要約】
【課題】例えば複合航空機構造体分野において、低コストのパイ(π)字形プリフォームを提供する。
【解決手段】ベース部材(12)および1対の軸方向に細長いレッグ(14,16)を有するパイ(π)字形プリフォーム(10)が提供され、1対の軸方向に細長いレッグ(14,16)は、これら1対の軸方向に細長いレッグ(14,16)相互間にチャネルを形成するようベース部材に結合されている。1対の軸方向に細長いレッグは、プライスタック内で配向したプレプレグのプライを含み、プレプレグの少なくとも一部分は、不連続の整列した繊維を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイ(π)字形プリフォームであって、
ベース部材と、
1対の軸方向に細長いレッグとを有し、前記1対の軸方向に細長いレッグは、前記軸方向に細長いレッグ相互間にチャネルを画定するよう前記ベース部材に結合され、前記1対の軸方向に細長いレッグは、プライスタック内で配向したプレプレグのプライを含み、前記プレプレグの少なくとも一部分は、不連続の整列した繊維を含む、パイ字形プリフォーム。
【請求項2】
前記ベース部材と前記一対の軸方向に細長いレッグとの間の第1の空間内に配置された充填材をさらに有する、請求項1記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項3】
前記一対の軸方向に細長いレッグを前記ベース部材に結合する接着剤をさらに有する、請求項1記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項4】
前記1対の軸方向に細長いレッグは、第1のL字形部材と第2のL字形部材に結合されたU字形部材を含み、前記第2のL字形部材は、前記第1のL字形部材の反対側に位置決めされ、
充填材が
(i)前記U字形部材と前記第1のL字形部材との間に形成された第1の空間、および
(ii)前記U字形部材と前記第2のL字形部材との間に形成された第2の空間内に配置されている、請求項1記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項5】
接着剤をさらに含み、前記接着剤は、
(i)前記U字形部材と前記第1のL字形部材を結合し、
(ii)前記U字形部材と前記第2のL字形部材を結合し、
(iii)前記第1のL字形部材と前記ベース部材を結合し、
(iv)前記第2のL字形部材と前記ベース部材を結合している、請求項4記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項6】
前記プレプレグは、前記不連続整列繊維が埋め込まれたポリマーマトリックス材料を含み、前記ポリマーマトリックス材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項7】
前記不連続整列繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、グラファイト繊維、ホウ素繊維、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項8】
前記プレプレグのプライの個々のプライ中の前記不連続整列繊維は、第1の軸線に沿って整列し、前記個々のプライ中の前記不連続整列繊維は、前記第1の軸線から5゜未満の角度をなして整列している、請求項1記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項9】
前記プレプレグのプライの前記個々のプライに隣接して位置する第2のプライ中の前記不連続整列繊維は、前記第1の軸線に対して角度をなして位置決めされた第2の軸線に沿って整列している、請求項8記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項10】
第1の軸線に対して0゜、90゜、または180°の角度をなして前記プライスタック内で配向したプレプレグの個々のプライは、連続した整列繊維を含み、前記第1の軸線に対して0゜、90゜、または180°以外の角度をなして前記プライスタック内で配向したプレプレグの個々のプライは、不連続の整列繊維を含む、請求項1記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項11】
前記プレプレグのプライの各個々のプライは、不連続の整列繊維を含む、請求項1記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項12】
パイ(π)ジョイント組立体であって、
ベース部材を含み、
1対の軸方向に細長いレッグを含み、前記1対の軸方向に細長いレッグは、前記軸方向に細長いレッグ相互間にチャネルを画定するよう前記ベース部材に結合され、前記1対の軸方向に細長いレッグは、プライスタック内で配向したプレプレグのプライを含み、前記プレプレグの少なくとも一部分は、不連続の整列した繊維を含み、
前記ベース部材に結合された第1の材料を含み、
前記軸方向に細長いレッグ相互間の前記チャネルの内面に結合された第2の材料を含む、パイジョイント組立体。
【請求項13】
接着剤をさらに含み、前記接着剤は、
(i)前記第1の材料を前記ベース部材に結合し、
(ii)前記第2の材料を前記軸方向に細長いレッグに結合している、請求項12記載のパイジョイント組立体。
【請求項14】
前記プレプレグは、前記不連続整列繊維が埋め込まれたポリマーマトリックス材料を含む、請求項12記載のパイジョイント組立体。
【請求項15】
前記プレプレグのプライの個々のプライ中の前記不連続整列繊維は、第1の軸線に沿って整列し、前記個々のプライ中の前記不連続整列繊維は、前記第1の軸線から5゜未満の角度をなして整列している、請求項12記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項16】
前記プレプレグのプライの前記個々のプライに隣接して位置する第2のプライ中の前記不連続整列繊維は、前記第1の軸線に対して角度をなして位置決めされた第2の軸線に沿って整列している、請求項12記載のパイ字形プリフォーム。
【請求項17】
パイ(π)字形プリフォームを製造する方法であって、
ベース部材および1対の軸方向に細長いレッグを得るために、プライスタック内にプレプレグのプライを布設するステップを含み、前記プレプレグの少なくとも一部分は、不連続の整列した繊維を含み、
前記プレプレグのプライを前記ベース部材および前記1対の軸方向に細長いレッグの形状に熱成形するステップを含み、
前記1対の軸方向に細長いレッグを前記ベース部材に結合して前記パイ字形プリフォームを形成するステップを含む、方法。
【請求項18】
U字形部材、第1のL字形部材、および第2のL字形部材を得るために、プライスタック内にプレプレグのプライを布設するステップと、
前記プレプレグのプライを前記U字形部材、前記第1のL字形部材、および前記第2のL字形部材の形状に熱成形するステップと、
充填材を前記U字形部材と前記第1のL字形部材との間の第1の空間内に配置するとともに、充填材を前記U字形部材と前記第2のL字形部材との間の第2の空間内に配置するステップと、
前記第1のL字形部材、前記U字形部材、前記第2のL字形部材、および前記ベース部材を結合して前記パイ字形プリフォームを形成するステップをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
結合ステップは、(i)前記U字形部材と前記第1のL字形部材との間、(ii)前記U字形部材と前記第2のL字形部材との間、(iii)前記第1のL字形部材と前記ベース部材との間、および(iv)前記第2のL字形部材と前記ベース部材との間に設けられた接着剤を硬化させるステップを含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記プレプレグのプライの個々のプライ中の前記不連続整列繊維は、第1の軸線に沿って整列し、前記個々のプライ中の前記不連続整列繊維は、前記第1の軸線から5゜未満の角度をなして整列している、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示(本発明)は、一般に、同種または異種材料を接合する構造的支持体、特に、パイ(π)字形プリフォームおよびその結合ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
一体型複合構造体は、航空機構造体重量および製造費を減少させる有望な方法を提供するものとして認識されている。3D織物パイ字形プリフォーム(短く「パイプリフォーム」と呼ばれる場合がある)は、現在のところ、複合航空機構造体内に、剪断および引き離し強さの面で許容範囲内の機械的性能レベルを達成する堅牢な接着ジョイントを実現するベースラインとしての方法を提供している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、3D織物パイ字形プリフォームのコストは、高性能接着剤ジョイントから恩恵を受けることになりそうな数多くの用途にとっては、とてつもなく高くつく。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のシステムおよび方法は、従来のパイ字形プリフォーム技術と比較して幾つかの技術的利点を提供し、かかる技術的利点としては、(i)3D織物パイプリフォームと比較して製造費が節減されること、(ii)剪断強さが向上すること(例えば、本明細書において提供されるパイ字形プリフォームの実施形態は、ベースライン3Dパイプリフォームの約220%剪断強さを実証している)、および(iii)機械的性質を維持しながら(例えば、向上した剪断強さおよび同等の引き離し強さを維持しながら)所望のレイアップを備えた個々の部材(コンポーネント)からのパイ字形プリフォームの複雑な形状の創成を許容するプレプレグ内の不連続整列繊維を一つの要因として生じる可撓性のある構造および優れた成形性が得られることが挙げられる。
【0005】
パイ字形複合プリフォームの形成は、その設計に固有の急変する幾何学的特徴に起因して達成するのが困難である。3D織物パイプリフォームは、パイ字形プリフォームの製造の際に用いられてきており、そして性能としての剪断強さと引き離し強さの所望の組み合わせを実証してきた。技術の現状の自動織成および/または編成技術を用いて3D織物パイプリフォームを製造するための費用は、多岐にわたる研究にもかかわらず、高いままである。本発明は、達成すべきパイプリフォームの複雑な幾何学的形状を許容する不連続で整列した繊維から成るパイ字形プリフォームを提供する。さらに、繊維の不連続の整列した性状および所望の機械的性質が得られるようプライシーケンスを自由に設定できるということに起因して、機械的性能を維持しまたは向上させる。
【0006】
一実施形態によれば、本発明は、ベース部材と、1対の軸方向に細長いレッグとを有するパイ(π)字形プリフォームを提供し、1対の軸方向に細長いレッグは、軸方向に細長いレッグ相互間にチャネルを画定するようベース部材に結合されている。1対の軸方向に細長いレッグは、プライスタック内で配向したプレプレグのプライを含み、プレプレグの少なくとも一部分は、不連続の整列した繊維を含む。
【0007】
もう1つの実施形態によれば、本発明は、ベース部材と、1対の軸方向に細長いレッグとを含むパイ(π)ジョイント組立体を提供し、1対の軸方向に細長いレッグは、これら1対の軸方向に細長いレッグ相互間にチャネルを画定するようベース部材に結合される。1対の軸方向に細長いレッグは、プライスタック内で配向したプレプレグのプライを含み、プレプレグの少なくとも一部分は、不連続の整列した繊維を含む。パイジョイントは、ベース部材に結合された第1の材料および軸方向に細長いレッグ相互間のチャネルの内面に接合された第2の材料を有する。
【0008】
一実施形態によれば、パイ(π)字形プリフォームを製造する方法を提供する。本方法は、ベース部材および1対の軸方向に細長いレッグを得るために、プライスタック内にプレプレグのプライを布設するステップを含み、プレプレグの少なくとも一部分は、不連続の整列した繊維を含む。本方法は、プレプレグのプライをベース部材および1対の軸方向に細長いレッグの形状に熱成形するステップと、1対の軸方向に細長いレッグをベース部材に結合してパイ字形プリフォームを形成するステップとをさらに含む。
【0009】
他の技術的利点は、以下の図、以下の説明、および以下の特許請求の範囲の記載から当業者には容易に明らかになろう。さらに、特定の利点を上記において列挙したが、種々の実施形態は、列挙した利点のうちの全て、いくつかを含む場合があり、あるいは、これら列挙した利点のうちのどれも含まない場合がある。
【0010】
次に、本発明およびその利点のより完全な理解を得るため、添付の図面と関連して以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ある特定の実施形態に従ってパイ字形プリフォームを示す図である。
【
図2】ある特定の実施形態に従って
図1のパイ字形プリフォームの個々のプライを示す図である。
【
図3】ある特定の実施形態に従って
図1のパイ字形プリフォームのプライスタックを示す図である。
【
図4】ある特定の実施形態に従ってパイジョイント組立体を示す図である。
【
図5】ある特定の実施形態に従ってパイ字形プリフォームを製造する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
3D織物パイプリフォームは、現時点では、接着剤によって結合されたジョイントを複合航空機構造体内に実現するために用いられている。3D織物パイ字形プリフォームのコストは、高性能接着剤ジョイントから恩恵を受けることになりそうな数多くの用途にとっては、とてつもなく高くつく。典型的な3D織物パイプリフォームと関連したこれらの課題および他の課題を解決するため、開示する実施形態は、性能の犠牲を最小限に抑えたレベルから全く生じさせないで、それどころか、さらに高い性能を持たせて、3D織物パイプリフォームに対する低コストの選択肢であるパイ字形プリフォームを提供する。したがって、本発明の提供するパイ字形プリフォームは、複合設計内での広範な用途に対するパイジョイント形態の使用を可能にする。
【0013】
本発明の良好な理解を容易にするため、ある特定の実施形態についての実施例を以下に示す。以下の実施例が本発明の範囲を限定しまたは定めるよう読まれることは全くない。本発明の実施形態および本発明の利点は、添付の図を参照することによって最もよく理解でき、図中、同一の参照符号は、同一及び対応の部分を示すために用いられている。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態としてのパイ字形プリフォーム要素または「プリフォーム」10の略図である。断面で見て、プリフォーム10は、ベース部材12、およびベース部材12に結合された1対の軸方向に延びるレッグ(脚)14,16を備えたギリシャ文字“π”、すなわち「パイ」を逆さまにした形状に似ている。1対の軸方向に延びるレッグ14,16は、構造体に適合するようベース部材12に対して垂直であってもよく、あるいは角度が付けられていてもよい。チャネル18が軸方向に細長いレッグ14,16相互間に形成されている。幾つかの実施形態では、チャネル18は、クレビスジョイントである。
【0015】
幾つかの実施形態では、パイ字形プリフォーム10は、種々の部材によって形成できる複合材料である。例えば、軸方向に細長いレッグ14,16は、U字形部材20を、第1のL字形部材22および第1のL字形部材22の反対側に位置決めされた第2のL字形部材24に結合することによって形成されるのがよい。充填材(フィラー)26がU字形部材20と第1のL字形部材22との間に形成された第1の空間内に配置され、充填材26は、U字形部材20と第2のL字形部材24との間に形成された第2の空間内に配置されている。幾つかの実施形態では、オプションとしての接着剤28が種々の部材相互間に配置されてこれらを直接的または間接的に結合している。例えば、接着剤28は、(i)U字形部材20と第1のL字形部材22との間、(ii)U字形部材20と第2のL字形部材24との間、(iii)第1のL字形部材22とベース部材12との間、および(iv)第2のL字形部材24とベース部材12との間に設けられ、それによりこれらの部材を互いに結合することができる。接着剤28は、U字形部材20と充填材26との間にも設けられるのがよい。
【0016】
幾つかの実施形態では、パイ字形プリフォーム10は、プライスタックで配向したプレプレグ30のプライを含む。
図2は、プレプレグ30の個々のプライの略図であり、
図3は、プライスタック内で配向したプレプレグ30のプライの略図である。幾つかの実施形態では、ベース部材12および1対の軸方向に細長いレッグ14,16は各々、プレプレグ30のプライを含む。例えば、軸方向に細長いレッグ14,16のU字形部材20、第1のL字形部材22、および第2のL字形部材24は各々、それぞれのプライスタック36内に配置されたプレプレグ30のプライを含むのがよい。
【0017】
パイプリフォームを整列繊維複合材の別々のプライで構成することができるようにすることによって、プライの向きおよび体積は、各ボンド用途の機械的要件を満たすよう容易にかつ費用効果のよい仕方で自由に設定できる。現行の3D織物パイプリフォームは、特定の機械的要件を満たすことを目的として迅速にかつ費用効果のよい仕方では変更できない。
【0018】
幾つかの実施形態では、プレプレグ30のプライは、ポリマーマトリックス(母材)32を含む。幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、プレプレグ30の全重量を基準として、10%~60%(w/w)のポリマーマトリックス32を含む。幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、プレプレグ30の全重量を基準として、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%~35%未満、40%未満、45%未満、50%未満、55%未満、または60%未満(w/w)のポリマーマトリックスを含む。幾つかの実施形態では、ポリマーマトリックス32は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、またはこれらの組み合わせを含む。
【0019】
適当な熱可塑性樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリアクリルエステル、ポリ(メチルメタクリレート)、アクリロニトリルブタジエンスチレンポリマー、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、熱可塑性樹脂は、市販のポリマーまたは市販のポリマーよりも分子量が小さいオリゴマーである。
【0020】
適当な熱硬化性樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、加硫ゴム、フェノール‐ホルムアルデヒドポリマー、メラミンポリマー、ビスマレイミドポリマー(BMI樹脂)、ポリエポキシド(エポキシ樹脂)、ポリベンゾオキサジン、ポリイミド、ポリシアヌレート、ポリフラン、ポリシリコーン、ポリフェノール、ポリビニルエステル、ポリチオライト、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、熱硬化性樹脂は、市販のポリマーまたは市販のポリマーよりも分子量が小さいオリゴマーである。
【0021】
幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、硬化剤を含む。幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、プレプレグ30の全重量を基準として、0.1%~15%(w/w)の硬化剤または架橋剤を含む。幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、プレプレグ30の全重量を基準として、少なくとも0.1%の硬化剤、または少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、または少なくとも5%~10%未満、11%未満、12%未満、13%未満、14%未満、または15%未満(w/w)の硬化剤を含む。
【0022】
適当な硬化剤としては、ポリエチレンテトラアミン、ジシアンジアミド、フェニレンジアミン(特にメタ異性体)、ビス(4‐アミノ‐3,5‐ジメチルフェニル)‐1,4‐ジイソプロピルベンゼン、ビス(4‐アミノ‐フェニル)1,4‐ジイソプロピルベンゼン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン、メチレンジアニリンとポリメチレンポリアニリン化合物の混合物、ジアミノジフェニルスルホン、フェノール系硬化剤、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
【0023】
幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、添加剤を含む。幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、プレプレグ30の全重量を基準として、0.1%~15%(w/w)のポリマー添加剤を含む。幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、プレプレグ30の全重量を基準として、少なくとも0.1%(w/w)の添加剤、または少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、または少なくとも5%~10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、40%未満、または50%未満(w/w)の添加剤を含む。
【0024】
例示の添加剤は、充填剤、促進剤、またはこれらの組み合わせを含む。適当な充填剤としては、炭酸カルシウム、カオリン、水酸化マグネシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンブラック、フライアッシュ、ナノ充填剤(例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン)、ポリマー発泡ビーズ、カルボキシレート化ゴムまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。適当な促進剤としては、3‐フェニル‐1,1‐ジメチル尿素、3‐(3‐クロロフェニル)‐1,1,‐ジメチル尿素、3‐(3,4‐ジクロロフェニル)‐1,1‐ジメチル尿素、2,4‐トルエンビスジメチル尿素、2,6‐トルエンビスジメチル尿素、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
【0025】
連続繊維複合材料を用いてパイ字形プリフォームに複雑な形状(例えば、L字形部材やU字形部材)を形成することは、この形成プロセス中には過度の欠陥が必ず生じ、例えばプライにしわが生じるので、難題である。かかる欠陥により、パイ字形プリフォーム10の機械的性能が許容限度を超えるほどになる。
図2を参照すると、プレプレグ30には不連続の整列した繊維34が埋め込まれている。本明細書で用いられる「不連続」という用語は、プレプレグ30内の繊維34を指しており、これら繊維34は、繊維34がプレプレグ30内の軸線44に沿って延びているときに少なくとも1つの隙間または間隔を含む。幾つかの実施形態では、繊維34は、個々のプレプレグ30内の軸線44から5゜未満の角度をなして、あるいは個々のプレプレグ30内の軸線44から4゜未満、3゜未満、2゜未満、1゜未満、または0.5゜未満の角度をなして整列している。
【0026】
幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、プレプレグ30の全重量を基準として、30%~85%(w/w)の不連続整列繊維34を含む。幾つかの実施形態では、プレプレグ30は、少なくとも30%(w/w)の不連続整列繊維34、あるいは少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%~60%未満、65%未満、70%未満、75%未満、80%未満、または85%未満(w/w)の不連続整列繊維34を含む。適当な不連続整列繊維34としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、グラファイト繊維、ホウ素繊維、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、不連続整列繊維34の公称繊維長さは、少なくとも0.25インチ(0.64cm)、少なくとも0.5インチ(1.27cm)、少なくとも1インチ(2.54cm)、少なくとも1.5インチ(3.81cm)、少なくとも2インチ(5.08cm)~2.5インチ(6.35cm)未満、3インチ(7.62cm)未満、3.5インチ(8.89cm)未満、または4インチ(10.16cm)未満である。幾つかの実施形態では、不連続整列繊維34は、これとほぼ同じ公称繊維長さを有する(例えば、不連続整列繊維の各々に関する公称繊維長さは、公称繊維長さの0.1%~10%の範囲内にある)。
【0027】
図3を参照すると、プレプレグ30のプライは、プライスタック36内に配置されるのがよい。プライスタック36は、プレプレグ30の個々のプライのレイアップを含む。幾つかの実施形態では、プレプレグ30のプライは、不連続整列繊維34の配向がプライスタック36内におけるプレプレグ30の隣り合うプライ相互間で異なるよう積み重ねられるのがよい。例えば、第1のプレプレグ38中の不連続整列繊維34は、第1の軸線40に沿って整列するのがよく、第1のプレプレグ38に隣接して位置する第2のプレプレグ42中の不連続整列繊維34は、第2の軸線44に沿って整列するのがよい。第2の軸線44は、第1の軸線40に対して角度46をなして位置決めされるのがよい。角度46は、任意の角度であってよいが、幾つかの例示の実施形態では、角度46は、±30゜、±45゜、±60゜、または±90゜である。
【0028】
幾つかの実施形態では、プレプレグ30のプライは、プライスタック36内でプライシーケンスをなして配置されている。本明細書で用いる「プライシーケンス」という表現は、プライスタック36の少なくとも一部分にわたり、またはプライスタック36全体にわたって繰り返されるプレプレグ30のプライに関するスタック配置状態を意味している。プライシーケンスは、パイ字形プリフォーム10の所望の構造的性質に基づいて選択されるのがよい。非限定的な一実施例では、ベース部材12または軸方向に細長いレッグ14,16に関するプレプレグ30のプライは、[45/0/-45/90]sまたは[0/45/-45/0/-45/90/45/-45/-45/0]tから選択されたプライシーケンスをなして配置されるのがよく、ここで0は、第1の軸線40と整列するよう配向した不連続整列繊維34を指している。このように、プライシーケンスを自由に設定して全体的パイ字形プリフォーム10に望ましい等方性性能を達成できるようにすることにより、現行の3D織物パイプリフォームと比較して、優れた機械的性能が得られる。
【0029】
上述したように、不連続整列繊維34は、複雑なパイ字形幾何学的形状を達成するために成形性と性能の組み合わせを提供する。加うるに、プライスタック36および特定のレイアップは、パイ字形プリフォーム10の性能をもたらす一方で、従来の技術と比較してコストを減少させるよう特別に作られるのがよい。幾つかの実施形態では、プライスタック36中のプレプレグ30の個々のプライの各々は、不連続整列繊維34を含む。しかしながら、幾つかの用途に関し、パイ字形プリフォーム10の強度を増大させることが望ましい場合がある。したがって、幾つかの実施形態では、プライスタック36中のプレプレグ30の個々のプライの少なくとも一部分は、連続した整列繊維を含むのがよい。本明細書で用いる「連続」という用語は、隙間もしくは間隔なしでプレプレグ30の全長にわたって延びる繊維34、または隙間もしくは間隔なしでプレプレグ30の長さの少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%にわたって延びる繊維34を指している。幾つかの実施形態では、第1の軸線40に対して0゜、90゜、または180°の角度をなしてプライスタック36内で配向したプレプレグ30の個々のプライは、連続した整列繊維を含み、第1の軸線に対して0゜、90゜、または180°以外の角度をなしてプライスタック内で配向したプレプレグ30の個々のプライは、不連続整列繊維34を含む。
【0030】
図4は、本発明の幾つかの実施形態としてのパイジョイント組立体48を示している。パイジョイント組立体48は、
図1~
図3に記載したのと同一の部材を有するパイ字形プリフォーム10を含む。パイ字形プリフォーム10は、第1の材料50を第2の材料52に接合するために用いられるのがよい。幾つかの実施形態では、第1の材料50は、航空機の外板であり、第2の材料52は、航空機のウェブである。幾つかの実施形態では、第1および第2の材料50,52は、金属材料または複合材料であるのがよい。第1の材料50は、パイ字形プリフォーム10のベース部材12に結合されるのがよく、第2の材料52は、軸方向に細長いレッグ14,16相互間のチャネル18の内面54に結合されるのがよい。幾つかの実施形態では、オプションとしての接着剤28(
図4には示さず)が第1の材料50をベース部材12に結合するとともに、第2の材料52を軸方向に細長いレッグ14,16に結合している。
【0031】
幾つかの実施形態では、第1の材料50は、熱硬化性複合材料であり、この場合、熱硬化性複合材料は、未硬化であってもよく、部分的に硬化していてもよく、または完全に硬化していてもよい。幾つかの実施形態では、第2の材料52は、熱硬化性複合材料であり、この場合、熱硬化性複合材料は、未硬化であってもよく、部分的に硬化していてもよく、または完全に硬化していてもよい。幾つかの実施形態では、第1の材料50は、熱硬化性複合材料であり、第2の材料52は、第1の材料の樹脂と同種またはこれとは異種の樹脂および第1の材料の繊維と同種またはこれとは異種の繊維から成る熱硬化性複合材料であり、これに対して、熱硬化性複合材料のうちの一方またはこれら両方は、未硬化であってもよく、部分的に硬化していてもよく、または完全に硬化していてもよい。完全硬化状態では、熱硬化性複合材料は、最大ガラス転移温度に達することができる。
【0032】
図5は、パイ字形プリフォーム10を製造する方法100を示している。この方法100は、作業102で始まるのがよく、この作業102は、ベース部材12および1対の軸方向に細長いレッグ14,16を得るために、プレプレグ30のプライをプライスタック36内に布設するステップを含む。幾つかの実施形態では、作業102は、U字形部材20、第1のL字形部材22、および第2のL字形部材24を得るために、プライスタック内にプレプレグ30のプライを布設するステップをさらに含むのがよい。充填材26を形成するために用いられる材料は、所定寸法に切断される。
【0033】
作業104では、方法100は、プレプレグ30のプライを圧密化してこれらプライをベース部材12および1対の軸方向に細長いレッグ14,16の形状に熱成形するステップを含む。例えば、作業104は、プレプレグ30のプライをU字形部材20、第1のL字形部材22、および第2のL字形部材24の形状に熱成形するステップを含むのがよい。熱成形ステップでは、プレプレグ30のプライ30を、ポリマーマトリックス32を剪断するのに適した温度プロフィールまで加熱して構造的形状を作るのがよく、また熱成形は、プレプレグ30のプライを互いに一体的に連携させる化学結合を促進することができる。バウンダリーツーリング(boundary tooling:例えばシリコーンゴム、金属、または他の物質の成形後の形状)がプライスタック36をベース部材12および1対の軸方向に細長いレッグ14,16の所望の形状に付形するためのテンプレートとして使用できる。作業104は、プレプレグ30のプライを圧力または真空下で配置してプレプレグ30のプライをバウンダリーツーリングの形状に合わせるステップをさらに含むのがよい。専用ツーリングは、プライスタックを圧密化して、最終のプリフォーム中にしわを生じさせないで鋭利なコーナー部を達成するために用いられる。作業104は、熱成形およびツーリングを用いて充填材26を
図1に示すような形状に成形するステップを含むのがよい。
【0034】
作業106では、方法100は、1対の軸方向に細長いレッグ14,16をベース部材12に結合してパイ字形プリフォーム10を形成するステップを含む。例えば、作業106は、充填材26を1対の軸方向に細長いレッグ14,16とベース部材との間の第1の空間内に配置するステップを含むのがよい。幾つかの実施形態では、作業106は、充填材26をU字形部材20と第2のL字形部材24との間の第1の空間内に配置するステップを含むのがよい。作業106は、第1のL字形部材22、U字形部材20、第2のL字形部材24、およびベース部材12を結合してパイ字形プリフォーム10を形成するステップをさらに含むのがよい。幾つかの実施形態では、方法100は、第1の材料50をベース部材12に結合するとともに、第2の材料52をチャネル18の内面54に接合することによってパイジョイント組立体48を製造するステップをさらに含む。接合は、上述の部材相互間に配置された複合材、具体的には接着剤を硬化させるステップを含むのがよい。複合材または接着剤を硬化させるステップは、任意の硬化方法により、例えば光硬化または熱硬化により実施されるのがよい。
【0035】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されているが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
実施例1および比較サンプルA
【0037】
実施例1:パイ字形プリフォーム
【0038】
不連続ET‐40の形態をしたトレカ(Torayca)(商標)プレプレグT800/3900‐2を用いて、ベース部材、第1のL字形部材、第2のL字形部材、およびU字形部材を作る。ベース部材は、[0/45/-45/0/-45/-45/90/45/-45/0/-45/-45/-45/0]tプライシーケンスをなして配列されたプレプレグの13枚のプライを含んでいた。第1および第2のL字形部材は、[45/0/-45/90]sプライシーケンスをなして配列されたプレプレグの8枚のプライを含んでいた。U字形部材は、[45/0/-45/90]sプライシーケンスをなして配列されたプレプレグの8枚のプライを含んでいた。従属的な部材(サブコンポーネント)としてのスタックプライ幅をプライ2枚目ごとに減少させてテーパ付きの縁部を作った。充填材は、T800/3900‐2プレプレグの軸方向整列プライで構成されており、このプライは、適正な体積を形成するために所定幅に切断され、圧延され、そしてほぼ60℃の状態にある扁平なプレート上で丸形ツールにより充填材の形状に合わせて成形されたものである。第1のL字形部材とU字形部材との間に位置する第1の空間は、充填材を含み、第2のL字形部材とU字形部材との間に位置する第2の空間は、充填材を含む。組立部品をベース上の中央に置き、ツーリングをチャンネル中にかつL字形部材の外側に挿入し、そしてこれをバギング(bag)してデバルキング(de-bulk)し、そしてパイジョイント組立体の状態に最終的に形成する。
【0039】
組み立てた後に硬化させたSolvay IM7-977-3エポキシ樹脂プレリプレグで構成された複合スキン・ウェブの積層体と一緒にパイ字形プリフォームを用いてパイジョイント組立体を組み立てた。0.193インチ(0.5cm)厚さの布地補強ウェブパネルおよび布地外側プライ補強スキンを備えた0.266インチ(0.7cm)厚さのユニテープは、ガラス布地/977‐3エポキシの外側剥離プライと共に疑似等方性プレプレグスタックシーケンスを利用したものである。硬化済みパネルを、7インチ(17.8cm)幅、37インチ(94.0cm)長さ(ウェブ)および36インチ(91.4cm)長さ(スキン)に切断した。接合されるべきウェブの縁部をわずかに丸めて、パイ字形プリフォームのクレビス幾何学的形状に良好に合わせた。編組キャリアを備えた3M(商標)AF191(商品名)0.08ポンド/平方フィート接着剤の4インチ(10.2cm)×36インチ(91.4cm)ストリップを過剰幅で内部クレビスおよび底部のベース表面を覆うよう切断し、それにより、過剰な接着剤を部品領域のジョイント端部に供給した。パイ字形プリフォームをスキンパネルが扁平な硬化ツール上の中心に位置するよう組み立て、剥離プライを中央の4.5インチ(11.4cm)幅分から除去して接合性の高いエポキシ表面を露出させ、そしてAF191の1つのストリップを剥離した区分の中央に被着させる。パイジョイント組立体をAF191上の中央に配置し、これを押さえてくっつける。パイジョイント中に接合されるべきウェブパネルの最初の2.5インチ(6.4cm)分の両面を剥離して接着剤の塗布を行う。AF191接着剤の第2のストリップを二つ折りし、そして剥離後のウェブに巻き付け、その後、パイ字形プリフォームのクレビス中に挿入する。ウェブを垂直の関節運動ツールバーに取り付け、これらツールバーは、スキンパネルに対して90゜の向きを維持し、そして、ウェブを狭いクレビス中に引き込むための力を加えるねじファスナー部品を備えている。パイ字形プリフォームのベースとレッグのスキン、接着剤、およびジョイントスタックの推定積み重ね高さに等しい複合シムを過剰ウェブ長さ分の下に挿入し、ツールプル締結具を用いてこれらを引き締め、それにより、適正なジョイント幾何学的形状およびプライごとの厚さを定める。組み立て状態の“T”パネルジョイント部材を業界標準の材料でバギングしてこれにシリコーンのオーバープレスを施し、それにより硬化中、成形後の形状を維持する。テフロン膜インサートを用いて、“T”パネルの接合を阻止し、次にこれらを除去して剪断クーポン機械加工を行う。ジョイントを2時間かけて180℃および90psiで硬化させた。
【0040】
比較サンプルA:
【0041】
IM73D織物プリフォーム(LMdrwg#LMA-MB0031,スタイルA1111)を用いて3D織物パイプリフォームを作製した。3D織物パイプリフォームにSolvay IM7-977-3エポキシ樹脂を浸透させた。組み立てた後に硬化させたSolvay IM7-977-3エポキシ樹脂プレリプレグで構成された複合スキン・ウェブの積層体と一緒に3D織物パイプリフォームを用いてパイジョイント組立体を組み立てた。0.166インチ(0.4cm)厚さの布地補強ウェブパネルおよび布地外側プライ補強スキンを備えた0.266インチ(0.676cm)厚さのユニテープは、ガラス布地/977‐3エポキシの外側剥離プライと共に疑似等方性プレプレグスタックシーケンスを利用したものである。硬化済みパネルを、7インチ(17.8cm)幅、37インチ(94.0cm)長さ(ウェブ)および36インチ(91.4cm)長さ(スキン)に切断した。接合されるべきウェブの縁部をわずかに丸めて、クレビス幾何学的形状に良好に合わせた。編組キャリアを備えた3M(商標)AF191(商品名)0.08ポンド/平方フィート接着剤の4インチ(10.2cm)×36インチ(91.4cm)ストリップを過剰幅で内部クレビスおよび底部のベース表面を覆うよう切断し、それにより、過剰な接着剤を部品領域のジョイント端部に供給した。3D織物パイプリフォームをスキンパネルが扁平な硬化ツール上の中心に位置するよう組み立て、剥離プライを中央の4.5インチ(11.4cm)幅分から除去して接合性の高いエポキシ表面を露出させ、そしてAF191の1つのストリップを剥離した区分の中央に被着させる。パイジョイント組立体をAF191上の中央に配置し、これを押さえてくっつける。パイジョイント中に接合されるべきウェブパネルの最初の2.5インチ(6.4cm)分の両面を剥離して接着剤の塗布を行う。AF191接着剤の第2のストリップを二つ折りし、そして剥離後のウェブに巻き付け、その後、3D織物パイプリフォームのクレビス中に挿入する。ウェブを垂直の関節運動ツールバーに取り付け、これらツールバーは、スキンパネルに対して90゜の向きを維持し、そして、ウェブを狭いクレビス中に引き込むための力を加えるねじファスナー部品を備えている。3D織物パイプリフォームのベースとレッグのスキン、接着剤、およびジョイントスタックの推定積み重ね高さに等しい複合シムを過剰ウェブ長さ分の下に挿入し、ツールプル締結具を用いてこれらを引き締め、それにより、適正なジョイント幾何学的形状およびプライごとの厚さを定める。組み立て状態の“T”パネルジョイント部材を業界標準の材料でバギングしてこれにシリコーンのオーバープレスを施し、それにより硬化中、成形後の形状を維持する。テフロン膜インサートを用いて、“T”パネルの接合を阻止し、次にこれらを除去して剪断クーポン機械加工を行う。ジョイントを2時間かけて180℃および90psiで硬化させた。
【0042】
剪断強さ試験:
【0043】
剪断強さ試験が実施例1および比較サンプルAについて実施される。剪断強さ試験は、ウェブパネルを接合済みパイジョイントからこのジョイントの軸方向長さに沿って引き出すことによって実施される。検査ジグは、アライメントを維持し、それにより検査クーポンを検査フレームのグリップに結合する。最終的な強度および荷重と強度の関係を記録する。実施例1は、非常に高い剪断強さを示した。具体的には、実施例1は、比較サンプルAと比較して約220%の剪断強さを示した。
【0044】
引き離し強さ試験:
【0045】
引き離し強さ試験が実施例1および比較サンプルAについて実施された。引き離し強さ試験は、検査フレームがロッドによって支持されたウェブおよびスキンを把持した状態でウェブを通常、ジョイントから引き出すことによって実施される。最終的な強度および荷重と強度の関係を記録する。実施例1は、比較サンプルAと比較して同等な引き離し強さを示した。具体的には、実施例1は、比較サンプルAと比較して約85%の引き離し強さを示した。
【0046】
比較サンプルAと比較して低コストの代替例であるにもかかわらず、実施例1は、向上した剪断強さおよび同等の引き離し性能を提供している。
【0047】
本明細書において、「または」は、文脈上別段の明示の指定または別段の指示がなければ、包括的であって、排他的ではない。したがって、本明細書において「AまたはB」は、文脈上別段の明示の指定または別段の指示がなければ、「A、B、または両方」を意味している。さらに、「および(と)」は、文脈上別段の明示の指定または別段の指示がなければ、連帯して(jointly and severally)の意である。したがって、本明細書において「AおよびB」は、文脈上別段の明示の指定または別段の指示がなければ、「AとBを連帯して」を意味している。
【0048】
本発明の範囲は、当業者が理解する本明細書において説明しまたは図示した例示の実施形態に対するあらゆる変更、置換、変形、代替、および改造を含む。本発明の範囲は、本明細書において説明しまたは図示した例示の実施形態には限定されない。さらに、本発明は、特定のコンポーネント、要素、機能、作用、またはステップを含むものとして本明細書においてそれぞれの実施例を説明するとともに図示しているが、これら実施形態のうちの任意のものは、当業者が理解する本明細書における任意の場所において説明しまたは図示したコンポーネント、要素、機能、作用、またはステップのうちの任意の組み合わせまたは並び替えを含むことができる。さらに、特許請求の範囲において、装置もしくはシステム、または装置およびシステムのコンポーネントが、特定の機能を実行するように適合され、配置され、機能し、構成され、実施可能とされ、作動可能とされ、または動作可能とされ、という記載は、当該装置、システム、またはコンポーネントがそのように適合され、配置され、機能し、構成され、実施可能とされ、作動可能とされ、または動作可能とされている限り、その特定の機能が発揮されているか、オン状態にされているか、ロック解除されているかどうかにかかわらず、当該装置、システム、またはコンポーネントを含む。
【符号の説明】
【0049】
10 プリフォーム
12 ベース部材
14,16 レッグ(脚)
18 チャネル
20 U字形部材
22,24 L字形部材
26 充填材
28 接着剤
32 ポリマーマトリックス
34 繊維
36 スタック
38 プレプレグ