(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085404
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】サセプタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240619BHJP
C04B 37/02 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C04B37/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209986
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0174914
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0164686
(32)【優先日】2023-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520139620
【氏名又は名称】ミコ セラミックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チ、ミン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、キ-ミョン
【テーマコード(参考)】
4G026
5F131
【Fターム(参考)】
4G026BA03
4G026BA14
4G026BA16
4G026BA17
4G026BB27
4G026BF09
4G026BG04
4G026BH13
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA19
5F131CA02
5F131CA07
5F131CA09
5F131CA17
5F131DA33
5F131DA42
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】本発明は、半導体製造工程でウェハを支持するためのサセプタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ベース部材および前記ベース部材に接着層によって接着された静電チャックプレートを含むサセプタであって、前記接着層は、第1弾性重合体材質からなる複数のスペーサ;および前記スペーサの間を充填し、前記ベースと静電チャックプレートとを接着するための第2弾性重合体材質の接着剤を含むことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材および前記ベース部材に接着層によって接着された静電チャックプレートを含むサセプタであって、
前記接着層は、
第1弾性重合体材質からなる複数のスペーサと、および
前記スペーサの間を充填し、前記ベースと静電チャックプレートとを接着するための第2弾性重合体材質の接着剤と、
を含むことを特徴とする、サセプタ。
【請求項2】
前記第1弾性重合体は、シリコーン樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載のサセプタ。
【請求項3】
前記第2弾性重合体は、シリコーン樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載のサセプタ。
【請求項4】
前記スペーサは、弾性率が1MPa~3MPaであることを特徴とする、請求項1に記載のサセプタ。
【請求項5】
前記スペーサは、破断伸び率が150%~300%であることを特徴とする、請求項1に記載のサセプタ。
【請求項6】
前記スペーサの一端が前記静電チャックプレートに接着されて固定端を形成し、他端は前記ベース部材に接着されず、自由端を形成することを特徴とする、請求項1に記載のサセプタ。
【請求項7】
前記接着層の面積に対する前記複数のスペーサが占める面積の割合が0.1~5%であることを特徴とする、請求項1に記載のサセプタ。
【請求項8】
第1母材および第2母材の接着によりサセプタを製造する方法であって、
第1弾性重合体材質の複数の仮硬化体を作製する段階と、
前記複数の仮硬化体を第1母材に接着して前記第1母材上に複数のスペーサを形成する段階と、
前記第1母材上の前記複数のスペーサの間に第2弾性重合体材質の接着剤を塗布する段階と、および
前記第1母材に前記第2母材を接着する段階と、
を含む、サセプタの製造方法。
【請求項9】
前記第1母材は静電チャックプレートであり、
前記第2母材はベース母材であることを特徴とする、請求項8に記載のサセプタの製造方法。
【請求項10】
前記第1弾性重合体および第2弾性重合体は、シリコーン樹脂を含むことを特徴とする、請求項8に記載のサセプタの製造方法。
【請求項11】
前記複数のスペーサを形成する段階は、
前記複数の仮硬化体を第1母材に接着した後、完全硬化する段階を含むことを特徴とする、請求項8に記載のサセプタの製造方法。
【請求項12】
前記スペーサは、弾性率が1MPa~3MPaであることを特徴とする、請求項8に記載のサセプタの製造方法。
【請求項13】
前記スペーサは、破断伸び率が150%~300%であることを特徴とする、請求項8に記載のサセプタの製造方法。
【請求項14】
前記塗布する段階において、
前記第2弾性重合体材質の接着剤の高さは、前記スペーサの高さより小さいか同じであることを特徴とする、請求項8に記載のサセプタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサセプタに関し、より詳細には半導体製造工程でウェハを支持するためのサセプタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子やディスプレイ素子は、化学気相蒸着(Chemical vapor deposition、CVD)工程、物理気相蒸着(Physical vapor deposition、PVD)工程、イオン注入工程(Ion implantation)、エッチング工程(Etch process)などの半導体プロセスを通じて誘電体層および金属層を含む多数の薄膜層をガラス基板、フレキシブル基板、または半導体ウェーハ基板などに積層およびパターニングして製造される。このような半導体工程を行うためのチャンバには、ガラス基板、フレキシブル基板、半導体ウエハ基板などの様々な基板を支持するためのサセプタが用いられ、代表的には静電気力を利用して当該基板を固定する静電チャック(Electro Static Chuck、ESC)が挙げられる。
【0003】
このような静電チャックは、外部の冷却ガスを用いて静電チャックプレート上の基板を均一に冷却するために、ベースとそれに接着される静電チャックプレートが所定の冷却構造を有する。一般に、ベースに設けられた冷却ガス流路が静電チャックプレートに設けられたガス孔と連通するように冷却構造が設けられる。
【0004】
一方、ベースと静電チャックプレートとの間を接着剤で接着する際に、静電チャック全体にわたって均一な接着厚さを確保するためにスペーサが用いられる。通常、静電チャックのスペーサとしては、所望の接着層厚さに対応するポリイミドフィルムやセラミック材質のものを用いている。
【0005】
このようなサセプタは、通常、常温または高温で基板を支持する用途に使用されている。しかしながら、近年は、基板を-50℃以下または-100℃以下の極低温に冷却した状態で成膜工程を進行したり、エッチング工程を行う必要性が台頭している。
【0006】
特に、超微細半導体の製造のために、半導体積層高さが増加し、回路線幅が減少し、線幅10nm以下の半導体素子や3D NAND型フラッシュなどの製造に必要なエッチング工程の難易度が高くなるにつれて、マイクロブリッジ(線幅が薄くなってエッチングしてはならない部分が互いにつながる欠陥)やポリマーボトルネック現象(回路の入口がポリマーによって狭くなる現象)などの工程問題が頻繁に発生している。このような工程問題を解決するために、チャンバー内部の温度を-100℃まで下げてポリマーなしでもエッチングに必要な気体の動きを最小化して、エッチング深さが深くなっても選択比が向上し、均一にエッチングできるようにする極低温エッチング工程の開発が進んでいる。
【0007】
しかしながら、従来のサセプタは、このような極低温での使用を考慮しておらず、このような極端な状況でも静電チャックプレートとベースとの間の信頼性のある接着特性を確保することに対する考慮は非常に不十分な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】KR2,288,530B
【特許文献2】JP7,052,847B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の発明者らは、ベースと静電チャックプレートとの間の接着時に均一な接着厚さを確保するために、
図1のようにポリイミドフィルムのような従来のスペーサ12を用いると、-40℃の極低温環境で長期間使用時に静電チャックプレートに亀裂が発生することを見出した。
【0010】
本発明の発明者らは、ポリイミドスペーサがシリコーン樹脂などの極低温接着剤と比較して高い弾性率(elastic modulus)および硬度を有する一方、低い伸び率および変形率を有し、極低温応用などの広い温度範囲での応用で経験する温度変化によって、静電チャックプレートに応力を引き起こすことができることに注目した。すなわち、密着する物質1と物質2との熱膨張率差により当該物質から発生する熱応力は、次の数学式1に従い、当該物質の弾性率(E)、物質1および物質2の熱膨張係数差(α1-α2)および温度差(ΔT)に比例するため、高い弾性率を有する物質であるほど、高い熱応力を経験することになる。
【0011】
(数学式1)
熱応力=E(α1-α2)△T
【0012】
したがって、温度変化による熱膨張係数差による反りが発生するとき、剛性スペーサが接着したプレート部分に集中して応力が発生し、静電チャックプレートを構成するセラミックの剥離および/または割れを引き起こすものと理解される。
【0013】
したがって、本発明は、極低温環境のように広い温度範囲で使用される場合でも、良好な接着特性を有する接着層を備えるサセプタを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、スペーサの使用により接着層の厚さの調節を容易にするとともに、広い使用温度範囲で良好な接着特性を示すサセプタを提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、前述したサセプタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記技術的課題を解決するために、本発明は、ベース部材および前記ベース部材に接着層によって接着された静電チャックプレートを含むサセプタであって、前記接着層は、第1弾性重合体材質からなる複数のスペーサ;および前記スペーサの間を充填し、前記ベースと静電チャックプレートとを接着するための第2弾性重合体材質の接着剤を含むことを特徴とするサセプタを提供する。
【0017】
本発明において、前記第1弾性重合体は、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。また、前記第2弾性重合体はシリコーン樹脂を含むことが好ましい。
【0018】
本発明において、前記スペーサは、弾性率が1MPa~3MPaであってもよい。また、前記スペーサは破断伸び率が150%~300%であってもよい。
【0019】
本発明において、前記スペーサの一端は、前記静電チャックプレートに接着して固定端を形成し、他端は前記ベース部材に接着せず、自由端を形成してもよい。
【0020】
また、本発明において、前記接着層の面積に対する前記複数のスペースが占める面積の割合が0.1~5%であってもよい。
【0021】
前記他の技術的課題を解決するために、本発明は、第1母材および第2母材の接着によってサセプタを製造する方法であって、第1弾性重合体材質の複数の仮硬化体を作製する段階;前記複数の仮硬化体を第1母材に接着して前記第1母材上に複数のスペーサを形成する段階;前記第1母材上の前記複数のスペーサの間に第2弾性重合体材質の接着剤を塗布する段階;および前記第1母材に前記第2母材を接着する段階;を含む、サセプタの製造方法を提供する。
【0022】
本発明において、前記第1母材は静電チャックプレートであり、前記第2母材はベース母材であってもよい。
【0023】
この際、前記第1弾性重合体および第2弾性重合体は、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。
【0024】
また、前記複数のスペーサ形成段階は、前記複数の仮硬化体を第1母材に接着した後、完全硬化する段階を含んでもよい。
【0025】
なお、前記塗布段階において、前記第2弾性重合体材質の接着剤の高さは、前記スペーサの高さより小さいか、同じであることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、極低温環境のように広い温度範囲で使用される場合でも、良好な接着特性を有する接着層を備えるサセプタを提供することができるようになる。
【0027】
また、本発明によれば、スペーサの使用にもかかわらず、広い使用温度範囲で良好な接着特性を示すサセプタを提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来のスペーサ使用時、極低温環境で静電チャックプレートに発生した亀裂を撮影した写真である。
【
図2】本発明の一実施形態によるサセプタの断面を模式的に示す図である。
【
図3】応力(stress)-歪み率(strain)曲線を模式的に説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるスペーサの配置姿を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるスペーサの製造方法の各段階を順次示す手順図である。
【
図6】本発明の一実施形態によって作製されたシリコーン樹脂からなる仮硬化スペーサを撮影した写真である。
【
図7】本発明の一実施形態によって静電チャックプレートとベース部材とを接着する接着工程を模式的に示す手順図である。
【
図8】本発明の一実施形態に従って製造されたスペーサの応力(stress)-歪み率(strain)曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
他の形で定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野で熟練した技術者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用された命名法は、当技術分野で周知で、通常使用されるものである。
【0030】
本明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。なお、本明細書において「A材質」という表現は、A物質のみからなるものだけでなく、A物質を主成分(重量50%以上の成分)とするが、A物質以外の他の物質が混合されたもの、またはA物質と他の物質の合成物質を許容する意味で使用される。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態による静電チャック100に対する構造を説明するための断面図である。
【0032】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による静電チャック100は、下部のベース部材120および上部の静電チャックプレート140を含む。前記静電チャック100は円状のタイプであることが好ましいが、場合によっては、楕円形、四角形などの他の形状に設計されてもよい。
【0033】
前記ベース部材120は、複数の金属層からなる多層構造物(multi-layer structure)から形成されてもよい。これらの金属層は、ろう付け(brazing)工程、ウェルディング(welding)工程、またはボンディング(bonding)工程などを介して接合することができる。
【0034】
本発明において、静電チャックプレート140は電極層144を備えてもよい。一例として、前記静電チャックプレートは、絶縁層142、絶縁層142上の電極層144、電極層144上の誘電層146の積層構造を有することができるが、本発明はこれに限定されない。
【0035】
本発明において、前記絶縁層142はセラミック材質で形成されてもよい。一実施形態として、絶縁層142は、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化シリコン(SiC)、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化コバルト(CoO)、酸化錫(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、イットリア(Y2O3)、およびYAG、YAM、YAPなどのイットリウムアルミネートからなる群から選択される少なくとも1つの物質からなってもよい。
【0036】
本発明において、前記電極層144は導電性金属材質からなり、コネクタ180に連結されて静電チャックの外部から電力が供給される。一例として、前記電極層144は、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)およびチタニウム(Ti)のうち少なくとも1つから形成されてもよく、例示的には、タングステン(W)で形成されてもよい。本発明において、前記電極層144は、溶射コーティング工程またはスクリーンプリント工程を用いて形成されてもよい。
【0037】
前記電極層144は、誘電層146の上部に置かれる基板(図示せず)をローディングする際にバイアスを受けて静電気力を発生させてチャッキングを制御することができる。基板(図示せず)をアンローディングする際には、電極層320に反対のバイアスを印加して放電が行われるようにすることでデチャッキングすることができる。
【0038】
本発明において、前記誘電層146はセラミック材質からなってもよい。一実施形態として、誘電層146は、前述の絶縁層142で述べたのと同じ材料で形成されてもよい。例えば、アルミニウム酸化物(Al2O3)、アルミニウム窒化物(AlN)、シリコン炭化物(SiC)、シリコン窒化物(Si3N4)、シリコン酸化物(SiO2)、バリウム酸化物(BaO)、亜鉛酸化物(ZnO)、コバルト酸化物(CoO)、スズ酸化物(SnO2)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、Y2O3、およびYAG、YAM、YAPなどのイットリウムアルミネート材質から選択される1つの物質からなってもよい。
【0039】
本発明において、絶縁層142および誘電層146を含む静電チャックプレート140は、セラミック材質のシートの積層構造からなってもよい。例えば、電極層144を形成した複数のセラミックグリーンシートを積層した後、焼結したり、電極層144を形成した複数のセラミック焼結体シートを積層した後に焼結により接合することで形成されてもよい。これとは異なって、前記絶縁層142および/または誘電層146の一部または全部が、セラミック材質のプラズマ溶射、エアロゾル蒸着などのコーティングによって形成されてもよいことはいうまでもない。
【0040】
本発明において、静電チャックプレート140は、接着層によってベース部材120と接着されている。
【0041】
図示のように、前記静電チャックプレートとベース部材との間には、両者の接着または接合のための接着層160が設けられている。前記接着層160は、静電チャックプレートとベース部材との間の間隔を維持するための複数のスペーサ162を含んでいる。また、前記接着層において前記スペーサ162が形成された領域以外の領域には、前記静電チャックプレートとベース部材とを接着するための接着剤164が塗布されている。
【0042】
本発明において、個々のスペーサ162は、上面および下面のような対向する2つの面の間に所定の厚さを有する立体形状のものであってもよい。本発明においてスペーサの上面および下面は、それぞれ静電チャックプレートおよびベース部材との接触する部分であり、母材(静電チャックプレートおよびベース部材)との接触面積を規定することになる。
【0043】
本発明において、個々のスペーサの接触面積は、スペーサが取り付けられる母材である静電チャックプレートまたはベース部材との取り付け強度を考慮して、適宜設計されてもよい。例えば、本発明において前記スペーサの接触面積は1mm2以上であることが好ましく、スペーサの接触面積が1mm2未満であると、スペーサが母材に固定されて厚さを維持する程度の適切な接着強度を提供することが難しくなる。
【0044】
一方、本発明において、前記静電チャックの接着層に含まれたスペーサの接触面積の総和は、以下の要素を考慮して設計されることができる。
【0045】
全体スペーサの接触面積の和が小さい場合、静電チャック全体にわたって均一な厚さの接着層を確保することが困難になる。一方、後述するように、本発明のスペーサは、仮硬化または完全硬化の状態で提供されるため、静電チャックプレートとベース部材との間の接着には実質的に寄与することができなくなる。したがって、スペーサ全体の面積が増加すると、静電チャックプレートとベース部材との間の接着力は減少することになる。
【0046】
本発明において全接着層面積のうちスペーサが占める面積の総和の割合(以下「面積比率」という)は、0.05%以上、0.1%以上、0.15%以上、0.2%以上、または0.25%以上であることが好ましい。また、前記面積比率は、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下であることが好ましい。
【0047】
本発明において、前記スペーサは、低い弾性率(elastic modulus)を有すると同時に、高い破断伸び率(ultimate elongation)を有する弾性重合体によって具現されることができる。
【0048】
本発明の明細書において破断伸び率(ultimate elongation)は、材料に荷重を加えたときに破断限界前まで得られる最大歪み率を意味し、応力(stress)-歪み率(strain)曲線において降伏応力(σ
y)での歪み率値と表すことができる。なお、弾性率は、線状弾性を有する材料に加えられた力である応力と材料の歪み率との関係を示す係数を意味し、ヤング率ともいう。弾性率および伸び率を
図3に示す。本発明において、応力-歪み率曲線の弾性区間が厳密に線状区間として扱えない場合には、弾性率またはヤング率は、最小二乗法などの通常の数学的近似法によって計算された値を意味する。
【0049】
一方、本発明において前記弾性率および破断伸び率について特別な温度の言及がない場合、この値は-70℃での値を意味する。
【0050】
本発明において前記スペーサの弾性率は、1.0MPa以上、1.5MPa以上、1.6MPa以上、1.7MPa以上、1.8MPa、または1.9MPa以上であってもよい。また、前記スペーサの弾性率は、5.0MPa以下、4.0MPa以下、3.0MPa以下、2.9MPa以下、2.8MPa以下であってもよい。
【0051】
また、本発明において前記スペーサの破断伸び率は、150%以上、200%以上、250%以上、または300%以上であってもよい。また、前記スペーサの破断伸び率は400%以下、380%以下、または350%以下であってもよい。
【0052】
好ましくは、前記弾性重合体としては、シリコーン(silicone)樹脂(またはシリコーンゴム)、ブタジエン、スチレンとアクリロニトリルとの混成重合体、ブチルゴムおよびフルオロゴムからなる群から選択される少なくとも1つの重合体が使用されてもよい。
【0053】
本発明において、前記弾性重合体としてはシリコーン樹脂が好ましい。前記シリコーン樹脂は、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、およびヘキシル基の少なくとも一つが結合した分子構造を有することができる。例示的に、測鎖にフェニル基を含有するシリコーンゴムの場合、-50℃以下の超低温での使用に適している。
【0054】
例示的に、本発明においてシリコーン樹脂は、高分子鎖にフェニル基を含有するPVMQシリコーン(Phenyl Vinyl Methyl Silicone)であってもよい。なお、本発明において前記シリコーン樹脂としては、主剤と硬化剤とに分離された2液型RTV(Room temperature Vulcanizing)が用いられ得ることは勿論である。
【0055】
本発明において、前記弾性重合体は、弾性重合体のマトリックス上に無機粉末が分散されたものであってもよい。例示的に、本発明において前記無機粉末としては、アルミナ(Al2O3)、アルミニウム窒化物(AlN)、シリコン炭化物(SiC)、シリコン窒化物(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化コバルト(CoO)、酸化錫(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、Y2O3、およびYAG、YAM、YAPなどのイットリウムアルミネート材質から選択される1つの物質が使用されてもよい。
【0056】
本発明において、前記スペーサは、-50℃または-100℃以下の極低温または超低温領域で静電チャックプレートまたはベース部材に応力発生時に変形することにより、この応力を解消することができる。これにより、スペーサ本来の機能を行いながらも、極低温で駆動する静電チャックプレートとベース部材との接着界面に発生する応力を緩和することができるようになる。
【0057】
一方、本発明において前記接着層を構成する接着剤としては、前述のスペーサの材質として説明したものと同様の弾性重合体が用いられてもよい。好ましくは、前記接着剤としてはシリコーン樹脂が使用されてもよく、より好ましくは測鎖にフェニル基を含有するシリコーン樹脂が使用されてもよい。また、前記シリコーン樹脂は、スペーサに関して説明したように、無機粉末が分散されたシリコーン樹脂であってもよい。
【0058】
また、本発明の他の側面によれば、接着層を構成するスペーサと接着剤物質との間の熱応力の発生を緩和する観点から、前記スペーサと前記接着剤物質は同じ弾性重合体で構成され得るが、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。
【0059】
一方、本発明において前記接着層の一部を構成するスペーサは、前記静電チャックプレートとベース部材のいずれか一つと接着状態を維持するように装着されてもよい。この場合、スペーサの非接着端は、固定されていない自由端として存在することによって、接着された固定端側に生じた応力を解消するのに有利な構造を提供することができる。
【0060】
これに関し、前記ベース部材として、通常、アルミニウムのような金属、アルミニウム金属合金またはアルミニウム-セラミック複合体のような金属材質の成分が多量に含まれており、発生した応力の解消に有利な材質であり、高い熱膨張率を有してスペーサに、かえって大きな変形を引き起こす可能性があることを考えると、前記スペーサは静電チャックプレートと接着状態を維持することが好ましい。すなわち、前記スペーサの上面は前記静電チャックプレートと接着して固定端を形成する一方、前記スペーサの下面はベース部材に接着されていない端部、すなわち自由端を形成することにより、スペーサは静電チャックプレートに発生する応力解消に、より有利な構造を提供できるようになる。
【0061】
図2に戻ると、前記ベース部材120には外部の冷却ガスを用いて静電チャックプレート140上の基板(例えば、ガラス基板、フレキシブル基板および半導体ウェハ基板など)を均一に冷却させるために、ベース冷却ガスの流れのための通路を提供する冷却ガス流路124が形成されている。静電チャックプレート140の表面には、前記冷却ガス流路124と連通して誘電層146の上部に冷却ガスを噴出するための複数のガス孔48が形成されている。
【0062】
図には、冷却ガス流路124は前記ガス孔48と垂直方向に連結されているものと示されているが、このような配置は例示的なものであり、本発明はこれに限定されない。また、本発明において、前記冷却ガス流路124は、接着層160を貫通して連結されるが、この際、前記冷却ガス流路124は、前記接着層のうち特にスペーサ162を貫通して前記ガス孔48と連結されてもよいことはもちろんである。
【0063】
一方、前記ベース部材120には、前記ベース部材120の温度を調節するための冷媒が循環する冷媒流路124が設けられている。前記冷媒流路124には、ベース部材の外部から冷媒が流入する流入口と、循環した冷媒を流出するための流出口とが設けられてもよい。
【0064】
図4は、本発明の一実施形態によるスペーサの配置姿を模式的に示す図である。
【0065】
図4を参照すると、スペーサは静電チャックプレート140の中心から外周まで均等に分布している。
【0066】
図示されたように、スペーサは放射状に分布してもよいが、これは例示に過ぎず、スペーサは様々な方式で配置されてもよいことはいうまでもない。
【0067】
以下、本発明の一実施形態による静電チャックの製造方法を説明する。
【0068】
図5は、本発明の一実施形態によるスペーサの製造方法の各段階を順次示す手順図である。
【0069】
図5を参照すると、まず、スペーサ成形のための成形モールドを準備する(S110)。成形モールドは、スペーサの形状を有する任意の型枠を使用することができる。また、成形モールドは、複数のスペーサを一度で成形する型枠であってもよい。
【0070】
次に、成形モールドに液状樹脂を注入する(S120)。液状樹脂としては、前述した弾性重合体が用いられ得る。例えば、樹脂としては、シリコーン(silicone)樹脂(またはシリコーンゴム)、ブタジエン、スチレンとアクリロニトリルの混成重合体、ブチルゴムおよびフルオロゴムからなる群から選択される少なくとも1つの重合体を使用することができ、例示的にはシリコーン樹脂が使用されてもよい。
【0071】
続いて、注入された液状樹脂を仮硬化する(S130)。硬化方法としては、様々な方法、例えば熱硬化、光硬化または硬化剤による硬化方法が用いられ得る。例示的に、液状樹脂がシリコーン樹脂である場合、常温~60℃の温度で一定時間保持することにより仮硬化することができる。一方、付加的に、仮硬化過程において、仮硬化体の厚さやサイズ調節のために所定の圧力(例えば1~20kgf/cm)が加えられてもよい。
【0072】
最後に、仮硬化体を所望の厚さとサイズに加工して仮硬化したスペーサを製造する(S140)。
図6は、作製されたシリコーン樹脂からなる仮硬化スペーサを撮影した写真である。
【0073】
図7は、製造された仮硬化スペーサを用いて静電チャックプレートとベース部材とを接着する接着工程を模式的に示す手順図である。
【0074】
図7を参照すると、まず、仮硬化したスペーサを静電チャック部材に接着する(S210)。この際、取り付け対象の部材は静電チャックプレートやベース部材であってもよく、例示的に、取り付け対象部材は静電チャックプレートであってもよい。前述のように、仮硬化スペーサは所定の接着力を有するため、静電チャックプレートに堅固に接着することができる。静電チャックプレートに堅固に接着した後、スペーサは、熱または光硬化などの硬化方式によって完全硬化することができる。
【0075】
次いで、スペーサが取り付けられた静電チャックプレートに液状接着剤を塗布する。前述したように、前記液状接着剤は弾性重合体であることが好ましく、弾性重合体としては、シリコーン(silicone)樹脂(またはシリコーンゴム)、ブタジエン、スチレンとアクリロニトリルの混成重合体、ブチルゴムおよびフルオロゴムからなる群の中から選択された少なくとも1つの重合体が使用されてもよい。好ましくは、前記液状接着剤はシリコーン樹脂であってもよい。
【0076】
前記塗布段階において前記液状接着剤の塗布高さは、スペーサの高さと同じであるか、より小さいことが好ましく、これは、液状接着剤がスペーサの表面に塗布されないようにする1つの方法であり得る。
【0077】
次に、液状接着剤が塗布された静電チャックプレートとベース部材とを接着する(S230)。本接着段階は、所望の接着厚さを維持するために加圧下で行われることができる。
【0078】
その後、熱硬化、光硬化または硬化剤による硬化を経て、静電チャックプレートとベース部材との接着が完了する。
【0079】
<スペーサの製造例1>
【0080】
2液型PVMQシリコーン樹脂をモールドに注入して常温で20時間仮硬化した後、ドッグボーン形状のスペーサを成形した。スペーサを成形した後、120℃の温度で1時間完全硬化してスペーサテスト試片を作製した。使用したシリコーン樹脂の仕様(specification)は以下のとおりである。
【0081】
-伸び率(常温):290%
-弾性係数(常温):2.3MPa
-せん断強度(常温):2MPa
【0082】
硬化したスペーサテスト試片の応力-変形特性を測定し、その結果を
図8に示す。測定および計算された破断応力、弾性率および破断伸び率を以下の表1に示す。
【0083】
【0084】
<スペーサの製造例2>
【0085】
シリコーン樹脂として2液型ポリメチルシロキサンシリコーン(MQ)を用いた点を除いては、製造例1と同様の方法でスペーサテスト試片を作製した。硬化したスペーサテスト試片の応力-変形特性を測定した。測定および計算された破断応力、弾性率および破断伸び率を以下の表2に示す。
【0086】
【0087】
<静電チャックプレート接着例>
【0088】
製造例1と同様に、液状シリコーン樹脂をモールドに注入して常温で20時間仮硬化した後、Φ3mmのスペーサを成形した。
【0089】
成形されたスペーサ40個を、
図4のような放射状配置に沿ってΦ300mmの静電チャックプレートに接着した。次いで、スペーサを大気中で完全硬化した。完全硬化したスペーサの厚さは約300μmであった。
【0090】
次に、スペーサが接着された静電チャックプレートにスペーサと実質的に同じ高さで液状シリコーン樹脂を塗布し、スペーサ表面にシリコーン樹脂が塗布されないようにした。この際、液状シリコーン樹脂はスペーサの材質と同じものを用いた。
【0091】
次いで、液状シリコーン樹脂が塗布されたスペーサをベース部材に接着し、シリコーン樹脂を120℃の温度で10時間保持して完全硬化して静電チャックプレートを製造した。
【0092】
製造された静電チャックプレートを-40℃の温度に冷却した後、接着状態を観察した。セラミックプレート表面に発生するクラックは目視で観察が可能であるが、見えないクラックも確認するために超音波探傷装置でクラック発生の有無を観察した。
【0093】
<比較例>
【0094】
Φ3mmで厚さ300マイクロメーターのポリイミド材質のスペーサ40個を、Φ300mmの静電チャックプレートにシリコーンテープ接着剤で接着した。
【0095】
次に、スペーサが接着された静電チャックプレートにスペーサと実質的に同じ高さで液状シリコーン樹脂を塗布し、スペーサ表面にシリコーン樹脂が塗布されないようにした。この際、液状シリコーン樹脂はスペーサの材質と同じものを用いた。
【0096】
次いで、液状シリコーン樹脂が塗布されたスペーサをベース部材に接着し、シリコーン樹脂を120℃の温度で10時間保持して完全硬化して、静電チャックプレートを製造した。
【0097】
製造された静電チャックプレートを-40℃の温度に冷却した後、接着状態を観察した。
【0098】
冷却後の観察結果、実施例の場合、プレートにクラックが発生しなかったが、比較例の場合、
図1と同様にプレート側に亀裂が発生したことが確認できた。
【0099】
以上、本発明を例示的な実施例および図面により説明したが、これは本発明のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正および変形が可能であることが分かる。したがって、本発明の精神は説明された実施例に限定されてはならず、特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的な変形がある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0100】
48 ・・・ガス孔
100 ・・・静電チャック
120 ・・・ベース部材
140 ・・・静電チャックプレート
142 ・・・絶縁層
144 ・・・電極層
146 ・・・誘電層
160 ・・・接着層
162 ・・・スペーサ
164 ・・・接着剤
180 ・・・コネクタ