(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085407
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】合成ポリイソプレンおよびポリイソプレンを合成する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 136/08 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
C08F136/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023210037
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】18/065,676
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】515189922
【氏名又は名称】ルクセンブルク インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー(エルアイエスティー)
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ベイデルト
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ・ニキシュキン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンデル・シャプロブ
(72)【発明者】
【氏名】クレメント・ミュゲマナ
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AS03P
4J100CA01
4J100CA10
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA25
4J100FA08
4J100FA19
4J100JA29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】既存のポリイソプレンと比べて異なる化学的および/または物理的な特性および/または構造を有する新規のポリイソプレンを提供する。また、他のイソプレン形態の含有率と組み合わせた高cis1,4イソプレン含有率を有する合成ポリイソプレンを提供する。
【解決手段】1,4イソプレン繰り返し単位と3,4イソプレン繰り返し単位とを含むイソプレン繰り返し単位を含む合成ポリイソプレンであって、前記合成ポリイソプレンの全イソプレン繰り返し単位の少なくとも5%が、3,4イソプレン繰り返し単位であることを特徴とし、そして前記合成ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の少なくとも96%が、cis1,4イソプレン単位であることを特徴とする、合成ポリイソプレンとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4イソプレン繰り返し単位と3,4イソプレン繰り返し単位とを含むイソプレン繰り返し単位を含む合成ポリイソプレンであって、
前記合成ポリイソプレンの全イソプレン繰り返し単位の少なくとも5%が、3,4イソプレン繰り返し単位であることを特徴とし、そして
前記合成ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の少なくとも96%が、cis1,4イソプレン単位であることを特徴とする、合成ポリイソプレン。
【請求項2】
前記ポリイソプレンのガラス転移温度が、-58℃よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の合成ポリイソプレン。
【請求項3】
前記ポリイソプレンのガラス転移温度が、-40℃~-55℃の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の合成ポリイソプレン。
【請求項4】
前記ポリイソプレンの数平均分子量が、少なくとも80000g/モルであることを特徴とする、請求項1に記載の合成ポリイソプレン。
【請求項5】
前記ポリイソプレンの数平均分子量が、100000g/モル~800000g/モルの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の合成ポリイソプレン。
【請求項6】
少なくとも500個のcis1,4イソプレン繰り返し単位;
少なくとも50個の3,4イソプレン繰り返し単位;
最大で11000個のcis1,4イソプレン繰り返し単位;
最大で6000個の3,4イソプレン繰り返し単位;および
最大で10個の1,2イソプレン繰り返し単位
のうちの1つ以上を特徴とする、請求項1に記載の合成ポリイソプレン。
【請求項7】
少なくとも40重量%の1,4イソプレン;
少なくとも10重量%の3,4イソプレン;
50重量%~95重量%の1,4イソプレン;
5重量%~50重量%の3,4イソプレン
のうちの1つ以上を特徴とする、請求項1に記載の合成ポリイソプレン。
【請求項8】
前記合成ポリイソプレンの全重量に基づいて、重量で、1,4イソプレンを主に含むことを特徴とする、請求項1に記載の合成ポリイソプレン。
【請求項9】
前記ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の少なくとも99.1%が、cis1,4イソプレン繰り返し単位であることを特徴とする、請求項1に記載の合成ポリイソプレン。
【請求項10】
2~5の範囲内の重量平均分子量と数平均分子量との比を有する、請求項1に記載の合成ポリイソプレン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、ポリイソプレン、ポリイソプレンを製造する方法、およびそのようなポリイソプレンを含むゴム組成物を対象とする。さらに、本発明は、上記ポリイソプレンを含むゴム組成物を含む製造品、例えばタイヤを対象とする。
【背景技術】
【0002】
[0002]多様なポリイソプレンが当業界で公知である。ポリイソプレンは、天然ゴムの形態で利用可能であるが、様々な微細構造を有する複数の合成ポリイソプレンもまた存在する。合成ポリイソプレンは、典型的には、イソプレンの溶液重合によって作られ得る。天然ゴムポリマーの構造単位でもあるイソプレンモノマーは、4種の異性体形態で、すなわち、trans1,4付加、cis1,4付加、ペンダントビニル基を残す1,2付加、および3,4付加で重合することができる。しかし、様々な微細構造は、合成されたポリイソプレンの、様々な化学的特性および/または物理的特性をもたらす。例えば、trans1,4付加または1,2付加のいずれかから得られる、異性体イソプレン単位の高含有率は、限定された引裂強度、限定された引張強度、限定された復元力、変動する硬化速度、高レベルの分枝、および他のジエン系ゴムとのブレンドにおける限定された相容性のうちの1つ以上ゆえに、一部の用途において望ましくない。したがって、上記特性のうちの少なくとも1つを改善する、新規の合成ポリイソプレンを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,698,643号
【特許文献2】米国特許第5,451,646号
【特許文献3】米国特許第6,608,125号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0130535号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)
【非特許文献3】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0003]本発明の1つの目的は、好ましくは、既存のポリイソプレンと比べて異なる化学的および/または物理的な特性および/または構造を有する新規のポリイソプレンを提供することであり得る。
【0006】
[0004]本発明の別の目的は、好ましくは、他のイソプレン形態の含有率と組み合わせた高cis1,4イソプレン含有率を有する合成ポリイソプレンを提供することであり得る。
【0007】
[0005]本発明のさらに別の目的は、これまでに利用可能なものよりも高いガラス転移温度Tgを有する、および/または既存のポリイソプレンと相容性である、合成ポリイソプレンを提供することであり得る。
【0008】
[0006]本発明のさらに別の目的は、ポリイソプレンを合成するための、新規の、好ましくは有効な方法および/または費用効果の高い方法を提供することであり得る。
[0007]本発明のさらに別の目的は、他のジエン系ゴム、例えば、ポリイソプレン、特に高cisポリイソプレンとの改善された相容性/混和性を有するポリイソプレンを提供することであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0008]本発明は、添付の独立請求項(複数可)によって画定される。さらに好ましい実施形態は、本明細書の以下の、従属請求項において、および発明の概要において提供される。
【0010】
[0009]したがって、第1の態様において、本発明は、1,4イソプレン繰り返し単位および3,4イソプレン繰り返し単位を含むイソプレン繰り返し単位を含む(合成)ポリイソプレンであって、合成ポリイソプレンの全イソプレン繰り返し単位の少なくとも5%が、3,4イソプレン繰り返し単位であり、合成ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の少なくとも96%が、cis1,4イソプレン単位である、(合成)ポリイソプレンを対象とする。
【0011】
[0010]したがって、本発明者らは、その1,4イソプレン含有率において極めて高い程度のcis1,4イソプレンを有し、同時にある程度の数の3,4イソプレン単位を有する、新規のポリイソプレンを見出し、それによって、新規の用途を可能にする、および/または改善された材料特性をもたらす、特異な微細構造が提供される。
【0012】
[0011]一実施形態において、ポリイソプレンのガラス転移温度は、-58℃よりも高く、好ましくは-56℃よりも高い。特に、ポリイソプレンは、特に、既存の天然ゴムおよび同等の合成ポリイソプレンと比較して、相対的に高いガラス転移温度を有する。
【0013】
[0012]別の実施形態において、ポリイソプレンのガラス転移温度Tgは、-40℃(好ましくは-45℃)~-58℃(好ましくは-55℃)の範囲内にある。ゴムブレンド、または言い換えればゴム組成物の所与のガラス転移温度の場合、そのようなガラス転移温度範囲により、既存の他のジエン系ポリマー、特に高cisポリイソプレンなどのポリイソプレンとの新規のブレンドが可能になる。
【0014】
[0013]さらに別の実施形態において、ポリイソプレンの数平均分子量は、少なくとも80000g/モルである。したがって、ポリイソプレンは、単にやや小さい分子ではなく、ある程度の大きさを有する。
【0015】
[0014]さらに別の実施形態において、ポリイソプレンの数平均分子量は、80000g/モル、好ましくは100000g/モル~800000g/モルの範囲内である。さらに別の実施形態において、合成ポリイソプレンは、以下のもの:少なくとも500個のcis1,4イソプレン繰り返し単位;少なくとも50個の3,4イソプレン繰り返し単位;最大で11000個のcis1,4繰り返し単位;最大で6000個の3,4イソプレン繰り返し単位;最大で20個の、好ましくは最大で10個の、さらにより好ましくは5個未満の、または0個でさえの、1,2イソプレン繰り返し単位、好ましくは0個の1,2イソプレン繰り返し単位のうちの1つ以上を含む。
【0016】
[0015]さらに別の実施形態において、合成ポリイソプレンは、重量またはモル%で、少なくとも40%の1,4イソプレン;重量またはモル%で、少なくとも5%(好ましくは少なくとも10%)の3,4イソプレン;重量またはモル%で、50%~95%(好ましくは55%から、または60%から、90%まで、または85%まで)の1,4イソプレン;重量またはモル%で、5%~50%(好ましくは8%から、または10%から、45%まで、または40%まで)の3,4イソプレン;すべて重量またはモル%で、1%未満、好ましくは0.1%未満、またはさらに0%の1,2イソプレン、のうちの1つ以上を含む。
【0017】
[0016]さらに別の実施形態において、ポリイソプレンは、好ましくはシリカにカップリングするように、1種以上のの官能基で官能化される。そのような基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シロキサン基、シラノール基、アルコキシ基、アミン基、イミン基、エポキシ基、または他の官能基のうちの1つ以上から選択されるものなどの、当業者に公知であるいずれの基であってもよい。
【0018】
[0017]さらに別の実施形態において、合成ポリイソプレンは、合成ポリイソプレンの全重量に基づいて、重量で1,4イソプレンを主に含む。
[0018]さらに別の実施形態において、ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99.1%、またはより好ましくは少なくとも99.6%、またはさらにより好ましくは少なくとも99.9%、またはさらにより好ましくは100%が、cis1,4イソプレン繰り返し単位である。そのようなcis含有率は、先には知られていなかった。特に、むしろ最大で95%までの含有率が可能であると考えられた。
【0019】
[0019]さらに別の実施形態において、合成ポリイソプレンは、1.5~10、好ましくは2~10の範囲内、より好ましくは2.1~9.9の範囲内、またはさらにより好ましくは2.1~5の範囲内の重量平均分子量と数平均分子量との比を有する。
【0020】
[0020]第2の態様において、本発明は、(合成)ポリイソプレンを合成する(言い換えれば、製造する、または作る)方法であって、方法が:
(A)イソプレンモノマーを用意するステップ;
(B)式(I)の有機金属化合物を含む触媒を用意するステップ:
LALBMX2 (I)
[式中、Mは、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから選択される(第IV/IVB族および/または遷移)金属であり;Xは、ヒドロカルビルまたはハロゲン化物の1種以上から独立に選択される配位子であり(言い換えれば、一方のXは、その2つのX配位子のうちの他方のXと異なってもよい);LAおよびLBは、式(II)の、独立に置換された(任意に、サリチルアルジミン)配位子であり:
C6H4-m(OH)RmCH=NC6H4-nRn (II)
式中、Rは、水素、ヒドロカルビル置換基、置換ヒドロカルビル置換基、およびヘテロ原子置換基から独立に選択され、nは、0、1、2、3、および4から選択され、mは、0、1、2、3、および4から選択される。];
(C)触媒を活性化して(活性触媒を得る)ステップ;および
(D)上記触媒または上記活性触媒を用いてイソプレンモノマーを重合するステップ
のうちの1つ以上のステップを含む、方法を対象とする。
【0021】
本明細書において、例えば、活性剤による活性化で「触媒」または活性触媒になる、「プレ触媒」としてステップ(B)で言及されたものなどの触媒を挙げることもできる。
一実施形態において、触媒は、構造(III)を有する。
【0022】
【0023】
[式中、R1およびR2は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヒドロカルビル、エーテル、アミン基、およびその組み合わされた基から独立に選択され;R3、R5、R6、R8は、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、およびその組み合わされた基から独立に選択され;R4、R7は、水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アミン基、およびその組み合わされた基から独立に選択される(好ましくは、R1~R8のそれぞれは、最大で12個の炭素原子を含有する)。]
分子および/または錯体の構造は、本発明の記述において二次元で示されるが、本明細書で描かれる二次元表現に完全に描くことのできない、逸脱した三次元の配置または形状を有し得ることに留意されたい。
【0024】
[0021]別の実施形態において、方法は:
トリエチルアルミニウム(TEA)、(好ましくは)トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、メチルアルミノキサン(MAO)、および修飾メチルアルミノキサン(MMAO)のうちの1つ以上から選択される共触媒を用意するステップ;
Li[B(C6F5)4]、Ph3C[B(C6F5)4]、PhNMe2H[B(C6F5)4]、Ag[B(C6F5)4]、アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、B(C6F5)3、およびAgSbF6のうちの1つ以上から選択される活性剤を用意するステップ;ならびに
(好ましくは)シクロヘキサン、(好ましくは)メチルシクロヘキサン、ヘキサン、トルエン(やや好ましい)、およびジクロロベンゼン(やや好ましい)のうちの1つ以上から選択される溶媒を用意するステップ
のうちの1つ以上のステップを含む。
【0025】
さらに別の実施形態において、方法は、以下のステップ:
任意に、1℃~50℃、好ましくは10℃~40℃の範囲内の温度で、触媒、共触媒、および任意に溶媒を混合して、第1の混合物を得るステップ;
任意に、1℃~50℃、好ましくは10℃~40℃の範囲内の温度で、第1の混合物を1種の/その活性剤、任意に溶媒と混合して、1種の/その活性触媒を得、第2の混合物を得るようにする、ステップ;ならびに
任意に、1℃~50℃、好ましくは10℃~40℃の範囲内の温度で、第2の混合物をイソプレンモノマーと、任意に溶媒と混合するステップ;
20℃~70℃の範囲内の温度で、好ましくは30℃~60℃の温度で、またはさらにより好ましくは35℃~50℃の温度で、イソプレンモノマーを重合するステップ
のうちの1つ以上を含む。
【0026】
[0022]第3の態様において、本発明は、(合成)ポリイソプレンを合成する(言い換えれば、製造する、または作る)方法であって、方法が:
(A)イソプレンモノマーを用意するステップ;
(B)構造(III)を有する触媒を用意するステップ
【0027】
【0028】
[式中、R1およびR2は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヒドロカルビル、エーテル、アミン基、およびその組み合わされた基から独立に選択され;R3、R5、R6、R8は、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、およびその組み合わされた基から独立に選択され;R4、R7は、水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アミン基、およびその組み合わされた基から独立に選択され、それぞれ最大で12個の炭素原子を含有する(好ましくはR1~R8のそれぞれが最大で12個の炭素原子を含有する)。];
(C)例えば、活性剤によって触媒を活性化して、活性触媒を得るステップ;および
(D)上記触媒または上記活性触媒を用いてイソプレンモノマーを重合するステップ
のうちの1つ以上のステップを含む、方法を対象とする。
【0029】
[0023]本発明の第2の態様の実施形態はまた、本発明の第3の態様の好ましい実施形態でもあり得ることが強調される。
[0024]本発明の第4の態様において、本発明は、本発明の第2の態様または第3の態様による方法によって得られる(合成)ポリイソプレンを対象とする。
【0030】
[0025]一実施形態において、ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の少なくとも96%は、cis1,4イソプレン単位であり、ポリイソプレンの全イソプレン単位の少なくとも5%は、3,4イソプレン単位である。
【0031】
[0026]特に、本発明の第1の態様の実施形態はまた、本発明の第4の態様の好ましい実施形態でもあり得る。
[0027]本発明の第5の態様において、ゴム組成物は、本発明の前述された態様の1つ以上(任意に、前述された実施形態の1つ以上)に従って画定された、および/または得られた合成ポリイソプレンを少なくとも5phr(好ましくは少なくとも10phr)含み、任意に充填剤を少なくとも20phr含む。
【0032】
[0028]一実施形態において、上記ゴム組成物は:
[0029]合成ポリイソプレン5phr~95phr(好ましくは10phr~50phr、またはさらにより好ましくは10phr~45phr);
[0030]i)天然ゴムならびにii)高cis1,4ポリイソプレンおよび/または3,4ポリイソプレンなどの別のポリイソプレンのうちの1種以上5phr~95phr(好ましくは50phr~90phr、またはさらにより好ましくは55phr~90phr)
のうちの1つ以上を含み、
ただし、高cisは、cis1,4含有率少なくとも92重量%、または任意にcis1,4含有率少なくとも96重量%を意味する。
【0033】
[0031]そのような実施形態において、合成ポリイソプレンは、従来のポリイソプレンと共にゴム組成物中に合わされ、それにより、特にゴム/ポリイソプレンマトリックスのガラス転移温度の改善、および/または調節が可能になる。これは、例えば、タイヤトレッドの摩耗特性および静止摩擦特性のバランス、ならびに/またはヒステリシス、裂け目、もしくは剥離のバランスを改善するのに役立つ。
【0034】
[0032]一実施形態において、ゴム組成物は、少なくとも1種のジエン系ゴムおよび/または1種の追加のジエン系ゴムを含むことができる。代表的な合成ポリマーは、ブタジエンならびにその同族体および誘導体、例えば、メチルブタジエン、ジメチルブタジエン、およびペンタジエンの単独重合生成物、ならびにブタジエンまたはその同族体もしくは誘導体から形成されたものなどの、他の不飽和モノマーとのコポリマーであってもよい。後者の中には、アセチレン、例えば、ビニルアセチレン;オレフィン、例えばイソプレンと共重合してブチルゴムを形成するイソブチレン;ビニル化合物、例えば、アクリル酸、アクリロニトリル(ブタジエンと重合してNBRを形成する)、メタクリル酸およびスチレン(後者は、ブタジエンと重合してSBRを形成する。)、ならびにビニルエステルおよび様々な不飽和アルデヒド、ケトンおよびエーテル、例えばアクロレイン、メチルイソプロペニルケトンおよびビニルエチルエーテルであってもよい。合成ゴムの特定の例としては、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(cis1,4-ポリブタジエンを含む)、ポリイソプレン(cis1,4-ポリイソプレンを含む)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、例えばクロロブチルゴムまたはブロモブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートなどのモノマーとの、1,3-ブタジエンまたはイソプレンのコポリマー、ならびに、またエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)としても知られるエチレン/プロピレンターポリマー、および特に、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーが含まれる。使用されてもよいゴムの追加の例としては、アルコキシシリル末端官能化溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBRおよびSIBR)、シリコンカップリング化、およびスズカップリング化星形分枝高分子が含まれる。好ましいゴムまたはエラストマーは、一般に、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、およびSSBRまたはESBRを含むSBRであってもよい。SBRまたはSSBRなどのゴムは、シリカにカップリングするように官能化されてもよい。
【0035】
[0033]一実施形態において、さらなる合成または天然のポリイソプレンゴムを使用してもよい。合成cis-1,4-ポリイソプレンおよび天然ゴムは、それ自体はゴム技術の当業者に周知されている。特に、cis1,4-微細構造含有率は、少なくとも90%であってもよく、典型的には、少なくとも95%以上である。明確にするために、そのようなゴムは、通常、有意な3,4イソプレン含有率を有さず、特に、全体の、またはほぼ全体のcis-1,4イソプレン含有率と組み合わせた、そのような含有率を有さないことに留意されたい。
【0036】
[0034]一実施形態において、cis-1,4-ポリブタジエンゴム(BRまたはPBD)が使用される。適切なポリブタジエンゴムは、例えば1,3-ブタジエンの有機溶液重合によって調製することができる。BRは、好都合には、例えば、少なくとも90パーセントのcis-1,4-微細構造含有率(「高cis」含有率)、および-95℃~-110℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とすることができる。The Goodyear Tire & Rubber CompanyからBudene(登録商標)1207、Budene(登録商標)1208、Budene(登録商標)1223またはBudene(登録商標)1280などの適切なポリブタジエンゴムが市販されている。これらの高cis-1,4-ポリブタジエンゴムは、例えば、参照によって明細書に組み込まれた、米国特許第5,698,643号および米国特許第5,451,646号に記載のように(1)有機ニッケル化合物、(2)有機アルミニウム化合物、および(3)フッ素含有化合物の混合物を含むニッケル触媒系を使用して合成することができる。
【0037】
[0035]エラストマーの、ガラス転移温度すなわちTgは、その未硬化状態のそれぞれのエラストマーのガラス転移温度を表す。エラストマー組成物のガラス転移温度は、その硬化状態のエラストマー組成物のガラス転移温度を表す。Tgは、示差走査熱量計(DSC)によって、ASTM D3418または同等物に従って毎分10℃の温度上昇率で転移中点として(転移領域の中点として)求められる。
【0038】
[0036]本明細書において、および慣行的実務に従って使用される用語「phr」は、「ゴムまたはエラストマー100重量部当たりの各材料の重量部」を指す。一般に、この慣例を使用して、ゴム組成物は100重量部のゴム/エラストマーで構成される。クレームの組成は、クレームのゴム/エラストマーのphr値がクレームのphr範囲と一致し、かつ組成のすべてのゴム/エラストマーの量が合計100部のゴムに帰着する限り、クレームに明示的に挙げられる以外のゴム/エラストマーを含んでもよい。例として、組成は、SBR、SSBR、ESBR、PBD/BR、NR、および/または合成ポリイソプレンなどの、1種以上の追加のジエン系ゴムを、1phr~10phr、任意に1phr~5phrさらに含んでもよい。別の例において、組成は、追加のジエン系ゴムを5phr未満、好ましくは3phr未満含んでもよく、または、またそのような追加のジエン系ゴムを本質的に含まなくてもよい。用語「コンパウンド」および「組成物」、ならびに「配合物」は、本明細書において他の方法で示されなければ、交換して使用することができる。用語「ゴム」および「エラストマー」もまた、本明細書において交換して使用することができる。
【0039】
[0037]エラストマー/ゴムの分子量、例えばMn(数平均分子量)、Mw(重量平均分子量)、およびMz(z平均分子量)は、本明細書において、RI検出器およびポリスチレン校正標準を使用したASTM5296-11または同等物に従って40℃で、THF中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して求められる。
【0040】
[0038]別の実施形態において、ゴム組成物は、好ましくは、20℃よりも高いガラス転移温度Tgを有する樹脂を1phr~80phr、または5phr~80phr含む。樹脂のTgは、示差走査熱量計(DSC)によって、ASTM D6604または同等物に従って、毎分10℃の温度上昇率で転移中点として(転移領域の中点として)求められる。好ましくは、樹脂は、ASTM E28によって求められる、場合によりリングアンドボール軟化点とも称されてもよい、70℃よりも高い軟化点を有する。一実施形態において、ゴム組成物は、樹脂を10phr~60phrまたは20phr~60phrまたは30phr~60phr含む。
【0041】
[0039]別の実施形態において、樹脂は、クマロン-インデン樹脂、石油炭化水素樹脂、テルペンポリマー/テルペン樹脂、スチレン/アルファメチルスチレン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン誘導樹脂、ならびにそのコポリマーおよび/または混合物からなる群から選択される。
【0042】
[0040]クマロン-インデン樹脂は、好ましくは、樹脂骨格(主鎖)を作り上げるモノマー成分としてクマロンおよびインデンを含有する。骨格に組み込まれ得る、クマロンおよびインデン以外のモノマー成分は、例えば、メチルクマロン、スチレン、アルファメチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、ならびにイソプレンおよびピペリレンなどのジオレフィンである。クマロン-インデン樹脂は、好ましくは、10℃~160℃の範囲の軟化点(環球法によって測定される)を有する。さらにより好ましくは、軟化点は、30℃~100℃の範囲である。
【0043】
[0041]好適な石油樹脂は、芳香族型および非芳香族型の両方を含む。いくつかの種類の石油樹脂が利用可能である。一部の樹脂は、低い不飽和度および高い芳香族含有率を有するが、一部は、高度に不飽和であり、さらに一部は、芳香族構造を全く含有しない。樹脂における違いは、大半は、樹脂が誘導される原材料中のオレフィンによるものである。そのような樹脂の、従来の誘導体には、いずれかのC5種(平均5個の炭素原子を含有するオレフィンおよびジオレフィン)、例えば、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ジオレフィン、例えば、イソプレンおよびピペリレン、ならびにいずれかのC9種(平均9個の炭素原子を含有するオレフィンおよびジオレフィン)、例えば、ビニルトルエン、アルファメチルスチレン、およびインデンが挙げられる。そのような樹脂は、前述されたC5種およびC9種から形成されたいずれかの混合物によって作られ、C5/C9コポリマー樹脂として知られている。典型的には、10℃~120℃の範囲の軟化点を有する石油樹脂が利用可能である。好ましくは、軟化点は、30~100℃の範囲である。
【0044】
[0042]一実施形態において、C5樹脂は、以下のモノマー:1,3-ペンタジエン(例えば、cisまたはtrans)、2-メチル-2-ブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、およびジシクロペンタジエンのうちの1種以上から作られた脂肪族樹脂である。
【0045】
[0043]別の実施形態において、C9樹脂は、好ましくは、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、およびメチルスチレン(例えば、アルファ-メチルスチレン)の群から選択される、1種以上の芳香族モノマーから作られた樹脂である。
【0046】
[0044]なお別の実施形態において、C9修飾樹脂は、好ましくは、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、およびメチルスチレン(例えば、アルファメチルスチレン)の群から選択される、1種以上の芳香族モノマーで修飾された、またはそれで官能化された樹脂(例えば、C5樹脂)である。
【0047】
[0045]テルペン樹脂は、好ましくは、リモネン、アルファピネン、ベータピネン、およびデルタ-3-カレンのうちの少なくとも1種のポリマーで構成される。10℃~135℃の範囲の軟化点を有する、そのような樹脂が利用可能である。
【0048】
[0046]テルペン-フェノール樹脂は、フェノールモノマーとテルペン、例えば、リモネン、ピネン、およびデルタ-3-カレンとの共重合によって誘導され得る。
[0047]ロジンから誘導される樹脂およびその誘導体の代表的なものは、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、およびトール油ロジンである。ガムロジン、ウッドロジン、およびトール油ロジンは、同様の組成を有するが、ロジンの成分の量は様々であり得る。そのような樹脂は、二量化され、重合化され、または不均化されることがある。そのような樹脂は、ロジン酸およびポリオール、例えば、ペンタエリスリトールまたはグリコールのエステルの形態であってもよい。
【0049】
[0048]スチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、本明細書において、約0.05~約1.50の範囲のスチレン/アルファメチルスチレンモル比を有する、スチレンおよびアルファメチルスチレンの(好ましくは、相対的に短い分子鎖)コポリマーであると考えられる。一態様において、そのような樹脂は、好適には、例えば、炭化水素溶媒中のスチレンおよびアルファメチルスチレンのカチオン共重合によって調製され得る。したがって、企図されたスチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、例えば、その化学構造、すなわち、そのスチレン含有率およびアルファメチルスチレン含有率によって、そのガラス転移温度、分子量および分子量分布によって特徴づけられ得る。
【0050】
[0049]一実施形態において、上記樹脂は、部分的に、または完全に水素化される。
[0050]一実施形態において、ゴム組成物は、オイル、例えばプロセスオイルを含む。エラストマーを増量するために典型的に使用される増量油として、オイルがゴム組成物に含まれていてもよい。オイルはまた、ゴム配合時のオイルの直接添加によってゴム組成物に含まれてもよい。使用されるオイルは、エラストマー中に存在する増量油、および配合時に添加される(プロセス)油の両方に含まれていてもよい。適切なオイルは、芳香族、パラフィン、ナフテン、植物油、ならびにMES、TDAE、SRAEおよび重質ナフテン油などの低PCA油を含む、当業界で公知である様々なオイルを含んでいてもよい。適切な低PCA油は、IP346法によって求めて3重量パーセント未満の多環式芳香族含有率を有するものを含んでいてもよい。IP346法の手順は、the Institute of Petroleum, United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版に見出すことができる。使用され得る植物油の、一部の代表的な例は、ダイズ油、ヒマワリ油、キャノーラ(菜種)油、コーン油、ココナッツ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、およびサフラワー油を含む。ダイズ油およびコーン油は、典型的には、好ましい植物油である。使用される場合、ゴム組成物は、プロセスオイルを最大で70phrまで、好ましくは5phr~25phr含むこともできる。または、代替としてオイル10phr未満、好ましくは5phr未満であってもよい。
【0051】
[0051]オイルのガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計(DSC)によって、ASTM E1356または同等物に従って毎分10℃の温度上昇率で転移中点として(転移領域の中点として)求められる。
【0052】
[0052]一実施形態において、ゴム組成物はシリカを含む。シリカは、例えば、火成シリカ/フュームドシリカまたは沈降シリカであってもよい。好ましい実施形態において、沈降シリカが使用される。シリカは、例えば窒素ガスを使用して測定するBET表面積を有することを特徴とすることができる。一実施形態において、BET表面積は、1グラム当たり40~600平方メートルの範囲にあってもよい。別の実施形態において、BET表面積は、1グラム当たり50~300平方メートルの範囲であってもよい。BET表面積は、ASTM D6556または同等物に従って求められ、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)に記載されている。シリカは、ASTM D2414または同等物に従って求められる、100cm3/100g~400cm3/100gの範囲、代替として150cm3/100g~300cm3/100gの範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値を有することによっても特徴づけられ得る。シリカは、電子顕微鏡によって求められる平均最終粒径、例えば、0.01~0.05ミクロンの範囲を有し得るが、シリカ粒子は、サイズにおいて、さらにより小さいか、または可能性としてより大きいこともあり得る。シリカ使用の範囲は、例えば、5phrから200phrまでの間であり得る。本明細書において、例としてのみ、限定することなく、PPG Industriesより、名称210、315G、EZ160GなどのHi-Sil商標で市販されているシリカ;Solvayより、例えば、名称Z1165MPおよびPremium200MPなどで利用可能なシリカ;ならびにEvonik AGより、例えば、名称VN2およびUltrasil 6000GR、9100GRなどで利用可能なシリカなどの様々な市販のシリカが使用され得る。
【0053】
[0053]さらに別の実施形態において、ゴム組成物は、例えば、130m2/gから210m2/gまでの間、任意に、130m2/gから150m2/gまでの間、および/または190m2/gから210m2/gまでの間、またはさらに195m2/gから205m2/gまでの間のCTAB吸着表面積を有し得る、事前シラン化シリカおよび/または疎水化シリカを含むことができる。シリカ表面積を求めるためのCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)方法(ASTM D6845)は、当業者に公知である。別の実施形態において、使用される事前シラン化シリカは、それをゴム組成物に添加する前に、少なくとも1種のシランで処理することによって、疎水化される。適切なシランは、これらに限定されないが、アルキルシラン、アルコキシシラン、有機アルコキシシリルポリスルフィド、および有機メルカプトアルコキシシランを含む。
【0054】
[0054]本発明の実施に好適な、事前処理されたシリカ(すなわち、シランで事前に表面処理されたシリカ)の一部の非限定的な例には、それに限定されないが、メルカプトシランで事前処理されたシリカCiptane(登録商標)255LDおよびCiptane(登録商標)LP(PPG Industries)、ならびにオルガノシランビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(Si69)とUltrasil(登録商標)VN3シリカとの反応生成物であるCoupsil(登録商標)8113(Degussa)、ならびにCoupsil(登録商標)6508、PPG IndustriesからのAgilon(登録商標)400シリカ、PPG IndustriesからのAgilon(登録商標)454シリカ、ならびにPPG IndustriesからのAgilon(登録商標)458シリカが挙げられる。
【0055】
[0055]一実施形態において、ゴム組成物が、従来の/非事前シラン化シリカ(上記事前シラン化シリカに加えて)を含有する場合、上記ゴム組成物は、添加されたシリカカップラー(上記ゴム組成物に(別に)添加されるシリカカップラー)を含有し、ただし、上記シリカカップラーは、上記シリカおよび上記事前シラン化シリカのヒドロキシル基(例えば、シラノール基)と反応性である部分、ならびにゴム組成物のエラストマーと相互作用する、別の異なる部分を有する。一実施形態において、上記ゴム組成物に添加された上記シリカカップラーは、そのポリスルフィドブリッジにおいて、平均で約2~約4個の、連結した硫黄原子を有するビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドで構成される。
【0056】
[0056]事前シラン化シリカおよびシリカのヒドロキシル基と反応性である部分、ならびに上記エラストマーと相互作用する、別の部分を有する前述されたシリカカップラー(言い換えれば、シリカカップリング剤)の代表的なものは、例えば:(A)その連結ブリッジにおいて、平均で約2~約4個の範囲の、代替として約2~約2.6個の範囲の、または約3.2~約3.8個の範囲の、硫黄原子を含有するビス(3-トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド、または(B)アルコキシ有機メルカプトシラン、または(C)その組み合わせで構成され得る。そのようなビス(3-トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドの代表的なものは、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドで構成される。示されたように、事前シラン化シリカについて、シリカカップラーは、望ましくは、アルコキシ有機メルカプトシランであってもよい。非事前シラン化シリカについて、シリカカップラーは、望ましくは、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドで構成され得る。
【0057】
[0057]一実施形態において、ゴム組成物はカーボンブラックを含んでもよい。そのようなカーボンブラックの代表的な例としては、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991等級が含まれる。これらのカーボンブラックは、9g/kg~145g/kgの範囲のヨウ素吸収、および34cm3/100g~150cm3/100gの範囲のDBP数を有する。ヨウ素吸収値は、ASTM D1510または同等物に従って求められる。一般に用いられるカーボンブラックは、1phr~150phrの範囲の量で、従来の充填剤として使用され得る。別の実施形態において、カーボンブラック1phr~50phrが使用され得る。レース用タイヤについて、そのような含有率は、有意により高いことがある。
【0058】
[0058]他の実施形態において、カーボンブラックの含有率は、最大で10phr、好ましくは8phr未満、または4phr未満である。
[0059]典型的には、カーボンブラック含有率は、少なくとも0.1phrである。
【0059】
[0060]一実施形態において、ゴム組成物は、硫黄含有有機ケイ素化合物または^1シランを含有することができる。適切な硫黄含有有機ケイ素化合物の例は、式:
【0060】
【0061】
である[式中、Zは、
【0062】
【0063】
からなる群から選択され、式中、R1は、1~4個の炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり;R2は、1~8個の炭素原子のアルコキシ、または5~8個の炭素原子のシクロアルコキシであり;Alkは、1~18個の炭素原子の二価炭化水素であり、nは整数2~8である。]。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、および/または3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって、式Iについて、Zは、
【0064】
【0065】
であり得る[式中、R2は、2~4個の炭素原子、代替として2個の炭素原子のアルコキシであり;Alkは、2~4個の炭素原子、代替として3個の炭素原子の二価炭化水素であり;nは、整数2~5、代替として2または4である。]。別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物には、米国特許第6,608,125号に開示されている化合物が含まれる。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物には、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、Momentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されているCH3(CH2)6C(=O)-S-CH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3が含まれる。別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物には、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものが含まれる。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はDegussaからのSi-363である。ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤のレベルに依存して様々であってもよい。一般に、コンパウンドの量は、0.5phrから20phrまでの範囲であってもよい。一実施形態において、量は、1phr~10phrの範囲である。
【0066】
[0061]ゴム組成物が、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば、活性剤および遅延剤、ならびにオイルなどの加工添加剤、粘着性樹脂および可塑剤を含む樹脂、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤およびオゾン劣化防止剤および釈解薬などの様々な一般に使用される添加材料との、様々な構成要素の硫黄加硫性ゴムの混合などのゴム配合技術において一般に公知の方法によって配合することができることは、当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫性材料および硫黄加硫材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記に挙げた添加剤が選択され、一般に従来の量で使用される。硫黄供与体の、一部の代表的な例は、元素の硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーのポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。一実施形態において、硫黄加硫剤は元素の硫黄である。硫黄加硫剤は、例えば、0.5phr~8phrの範囲、代替として1.5phr~6phrの範囲内の量で使用されてもよい。典型的な量の粘着性付与樹脂は、使用される場合、例えば、0.5phr~10phr、通常1phr~5phrを含む。典型的な量の加工助剤は、使用される場合、例えば1phr~50phrを含む(これは特にオイルを含むことができる)。典型的な量の抗酸化剤は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでもよい。代表的な抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁に開示されているものなどであってもよい。オゾン劣化防止剤の典型的な量は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでもよい。使用される場合、ステアリン酸を含むことができる脂肪酸の典型的な量は、例えば0.5phr~3phrを含んでもよい。ワックスの典型的な量は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでもよい。多くの場合、微晶質ワックスが使用される。釈解剤の典型的な量は、使用される場合、例えば0.1phr~1phrを含んでいてもよい。典型的な釈解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0067】
[0062]促進剤は、加硫のために必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善するために使用することが好ましいが、必要ではないこともある。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤(複数可)は、0.5phr~4phr、代替として0.8phr~1.5phrの範囲の合計量において使用されてもよい。別の実施形態において、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、活性化し加硫物の特性を改善するために0.05phr~3phrなどのより少ない量で使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な特性に相乗効果を生み出すと予想することができ、どちらかの促進剤の単独使用によって製造されたものより多少良好である。さらに、正常な加工温度に影響を受けないが、通常の加硫温度で満足すべき硬化を生ずる遅効性促進剤も使用されてもよい。加硫遅延剤もまた使用されてもよい。本発明において使用されてもよい適切な種類の促進剤は、例えばアミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンセートである。一実施形態において、一次促進剤はスルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤は、例えばグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物であり得る。好適なグアニジンには、ジフェニルグアニジンなどが挙げられる。好適なチウラムには、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、およびテトラベンジルチウラムジスルフィドが挙げられる。
【0068】
[0063]ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術における当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、典型的に、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的な(ノンプロダクティブ)段階、続いて生産的(プロダクティブ)混合段階において混合されてもよい。硫黄加硫剤を含む最終硬化薬は、典型的に、従来は「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階において混合されてよく、ここで、典型的には、先行する非生産的混合段階(複数可)の混合温度(複数可)より低い、ある温度または最終温度で混合が行われる。「非生産的」および「生産的」混合段階という用語は、ゴム混合技術の当業者には周知されている。実施形態において、ゴム組成物は、熱機械的混合ステップにかけられてもよい。熱機械的混合ステップは、一般に、例えば140℃から190℃までのゴム温度を生ずるのに適切な期間、混合機または押出機での機械式作業を含む。熱機械的作業の好適な継続時間は、運転条件ならびに成分の量および性質の関数として変動する。例えば、熱機械的作業は1~20分であってもよい。
【0069】
[0064]第6の態様において、本発明は、前述された態様のうちの1つ以上によるゴム組成物および/または合成ポリイソプレンを含む製造品を対象とする。
[0065]一実施形態において、製造品は、タイヤ、伝動ベルト、ホース、トラック、エアスリーブ、およびコンベアベルトから選択される。好ましくは、製造品はタイヤである。
【0070】
[0066]ゴム組成物を、タイヤの多様なゴム成分(または言い換えればタイヤ成分)に組み込むことができる。例えば、ゴム成分は、トレッド(トレッドキャップおよび/またはトレッドベースを含む)、サイドウォール、アペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤーコート、またはインナーライナーであってもよい。
【0071】
[0067]タイヤは、例えば、空気入りタイヤまたは非空気入りタイヤ、レース用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用タイヤ、運搬車用タイヤ、オフロード(OTR)タイヤ、トラック用タイヤ、またはオートバイ用タイヤであってもよい。タイヤはまた、ラジアルタイヤまたはバイアスタイヤであってもよい。
【0072】
[0068]本発明の空気入りタイヤの加硫は、例えば100℃~200℃の範囲の従来の温度で実行されてもよい。一実施形態において、加硫は110℃~180℃の範囲内の温度で行われる。プレスまたは型中での加熱、過熱蒸気または熱風を用いる加熱などの通常の加硫方法のうちのいずれを使用してもよい。そのようなタイヤは、当業者にとって公知で、容易に明白であろう様々な方法によって組み立て、付形、成型および硬化することができる。
【0073】
[0069]好ましい態様および実施形態が本明細書に記載されるが、すべての態様および実施形態の特徴は、互いに組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0074】
[0070]本発明者らは、本発明の実施形態による多様な合成ポリイソプレンを調製した。
[0071]そのようなポリイソプレンを作るために、本発明者らは、イソプレンモノマーを重合するための触媒を特定して、所望の合成ポリイソプレンを得た。
【0075】
好ましい一実施形態において、上記触媒は以下の構造(III)を有する:
【0076】
【0077】
[式中、R1およびR2は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヒドロカルビル、エーテル、アミン基、およびその組み合わされた基から独立に選択され、R1およびR2のそれぞれは、最大で12個の炭素原子を含有する。R3、R5、R6、R8は、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、およびその組み合わされた基から独立に選択され、R3、R5、R6、R8のそれぞれは、最大で12個の炭素原子を含有する。R4およびR7は、水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アミン基、およびその組み合わされた基から独立に選択され、それぞれは、いずれも最大で12個の炭素原子を含有する。]
[0072]特に、上記触媒LALBMX2(I)は、ホモ配位子(LA=LB)プレ触媒またはヘテロ配位子(LA≠LB)触媒を含むことができる。本発明の実施形態によるそれぞれの例は、本明細書において以下に列挙される。
【0078】
[0073]第1の非限定的な実施形態において、触媒は、以下の構造Cat1を有し、それは、本明細書におけるホモ配位子触媒に対応する。
【0079】
【0080】
[0074]第2の非限定的な実施形態において、触媒は、以下の構造Cat2を有し、それもまた、ホモ配位子触媒に対応する。
【0081】
【0082】
[0075]第3の非限定的な実施形態において、触媒は、以下の構造Cat3を有し、それは、ヘテロ配位子触媒に対応する。
【0083】
【0084】
[0076]第4の非限定的な実施形態において、触媒は、以下の構造Cat4を有し、それは、別のヘテロ配位子触媒に対応する。
【0085】
【0086】
[0077]第5の非限定的な実施形態において、触媒は、以下の構造Cat5を有し、それは、別のホモ配位子触媒に対応する。
【0087】
【0088】
[0078]第6の非限定的な実施形態において、触媒は、以下の構造Cat6を有し、それは、別のヘテロ配位子触媒に対応する。
【0089】
【0090】
[0079]前述された実施形態において、すべての触媒はチタン系である。しかし、本発明は、そのような金属のみに限定されない。特に、他の第IV族遷移金属もまた好ましい金属である。
【0091】
[0080]以下の表1に列挙されるように、触媒Cat1~触媒Cat6を使用してポリイソプレンを調製した。表1に示すように、得られたポリイソプレンは、11モル%~31モル%の範囲の3,4イソプレン量および69モル%~89モル%の範囲の、対応する1,4イソプレン含有率を有する。注目すべきことは、1,2イソプレンおよびtrans-1,4イソプレンの含有率がゼロであることである。得られたガラス転移温度は、当業界で公知の従来のポリイソプレンと比較して相対的に高く、それにより、例えば、ゴムコンパウンディングにおける新規の用途が可能になる。また、全体のcis-1,4イソプレン含有率と組み合わせた、得られた3,4イソプレン含有率は、(trans-1,4ポリイソプレンの欠如に関して)他のジエン系ゴム、特に天然ゴムまたは合成高cis1,4ポリイソプレンとの良好な混和性をもたらす。非限定的な例のガラス転移温度(Tg)は、-47℃~-55℃の範囲内であり、ゆえに特に天然ゴムと比較して相対的に高い。
【0092】
【0093】
[0081]次の比較として、以下の表2は、(モル)パーセントの、それらのcis-1,4イソプレン含有率、trans-1,4イソプレン含有率、3,4イソプレン含有率、および1,2イソプレン含有率について、様々なポリイソプレンの微細構造をさらに詳細に比較する。さらに、重合において得られたゴム含有率およびそれぞれのガラス転移温度が示される。天然ゴムは、高cis-1,4イソプレン含有率(典型的には100%)を有するが、3,4イソプレンを含まず、かつ-70℃程度の相対的に低いガラス転移温度を有する。配位ポリイソプレン(coordination polyisoprene)は、様々なガラス転移温度を有することができ、それらは、天然ゴムのガラス転移温度よりも高くてもよい。しかし、しばしば3,4イソプレン含有率は低く、それぞれのポリイソプレンは、通常trans-1,4単位を有することになる。ポリイソプレンがアニオン重合によって合成される場合、より高い3,4イソプレン量を得ることができるが、同時に、それぞれのポリイソプレンは、典型的には、有意なtrans-1,4イソプレン含有率および相対的に低いガラス転移温度を有する。表2の最後の列に記された、表1の実施形態によれば、天然ゴムと同様に、trans-1,4含有率は一様にゼロであるが、有意な3,4イソプレン含有率およびより高いガラス転移温度を有する。
【0094】
【0095】
[0082]触媒を利用して、イソプレンモノマーを合成ポリイソプレンに重合するための、本発明による一例のステップを以下の反応スキームAに示す。
[0083]反応スキームAによれば、触媒を、初めに溶媒中で共触媒と混合する(ステップi))。本発明の実施例において、共触媒はTIBA(トリイソブチルアルミニウム)であるが、例えば本明細書において前述されたように、代替の材料であってもよい。好ましくは、この第1のステップは、室温で実行されるが、本明細書において上記で列挙されたように、他の温度も可能である。溶媒として、本発明の非限定的な実施形態において、シクロヘキサンが使用される。
【0096】
[0084]次のステップ(ステップii))において、触媒、共触媒、および溶媒の混合物は、活性剤の一例であり、触媒を活性化して活性触媒および/またはカチオン触媒を得るようにする、Li[B(C6F5)4](リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートまたはLiFABAとしても公知である)とさらに混合される。
【0097】
[0085]さらなる1ステップにおいて、合成ポリイソプレンを得るように、活性触媒は、さらに溶媒シクロヘキサン中でイソプレン(モノマー)と混合される。本実施例において、重合は、温度40℃で起こる。他の温度は、原則として可能である。反応スキームAにおけるcis-1,4イソプレン単位および3,4イソプレン単位は、典型的には、そのような種類の単位の2個のブロックで分布されない。むしろ、cis-1,4イソプレン単位および3,4イソプレン単位は、部分的に交互であってもよく、および/またはランダムであってもよい。そのような単位の正確な構造および/またはシーケンスは、本明細書において特に興味を引くものではない。典型的には、本発明の一実施形態による方法によって得られる分子量(Mn)は、100000g/モル~800000g/モルの範囲内である。
【0098】
【0099】
[0086]当業者は、反応スキームAの上記の記述および知識を用いて合成ポリイソプレンを重合することができることに留意されたい。特定の例を提供するためだけに、さらなる非限定的な詳細が以下に提供される。多様な、提供された詳細は、利用可能な装置および化学に従って、ならびに/または必要とされるポリマーの規模に従って適応させることができると強調される。
【0100】
[0087]第1の重合例において、用いられた材料は、イソプレン、Ti(L1)2Cl2、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(LiFABA)をモル比200/1/5/1(材料の同じ順序)で含み、Ti(L1)2Cl2は、本明細書において前述されたCat2に対応する。特に、Ti(L1)2Cl2(79.4mg、0.1mmol)を不活性雰囲気下でシュレンクフラスコに装入し、TIBAのトルエン溶液(1.1Mのトルエン中溶液0.5mmol、0.45mL)を室温で添加する。撹拌するステップを室温で1時間続け、得られた暗緑溶液は、LiFABA(64.8mg、0.1mmol)を含有する別のシュレンクフラスコに移される。反応混合物をさらに5~10分間、室温で撹拌し、イソプレン6.67Mの無水シクロヘキサン中溶液(3mL、20mmol)を活性触媒に添加する。温度を40℃に上げ、撹拌するステップを24時間続ける。得られた粘性溶液をジクロロメタン10mLで希釈し、過剰の酸性メタノール(5%HCl)中に沈降させる。ポリイソプレンをろ過によって回収し、アセトンで洗浄し、55℃/0.3mbarで8時間乾燥させる。
【0101】
[0088]第2の重合例は、モル比200/1/5/1のイソプレン/Ti(L1L2)Cl2/TIBA/LiFABAおよびTi(L1L2)Cl2種の触媒を含む。上記触媒(70.9mg、0.1mmol)を不活性雰囲気下でシュレンクフラスコに装入し、TIBAのトルエン溶液(1.1Mトルエン中溶液0.5mmol、0.45mL)を室温でシュレンクフラスコに添加する。撹拌するステップを室温で1時間続け、得られた溶液は、LiFABA(64.8mg、0.1mmol)を含有する別のシュレンクフラスコに移される。反応混合物をさらに5~10分間、室温で撹拌し、イソプレン6.67Mの無水シクロヘキサン中溶液(3mL、20mmol)を活性触媒に添加する。温度を40℃に上げ、撹拌するステップを24時間続ける。得られた粘性溶液をジクロロメタン10mLで希釈し、過剰の酸性メタノール(5%HCl)中に沈降させる。ポリイソプレンをろ過によって回収し、アセトンで洗浄し、55℃/0.3mbarで8時間乾燥させる。
【0102】
[0089]重合方法について、好適な触媒に関して、本発明の実施形態によるものを調製する様々な手段がある。一部の非限定的な手段は、本明細書において以下に表される。しかし、当業者は、本発明の記述を読むことで、様々なステップ、化学品、条件、および装置を使用して、そのような材料を合成することができる。
【0103】
[0090]触媒を調製する、第1の非限定的な例において、ホモ配位子チタン錯体[(L1)2TiCl2]が調製される。置換サリチリデンアルジミン、(E)-2,4-ジ-tert-ブチル-6-(((4-メトキシフェニル)イミノ)メチル)フェノールの0.1M撹拌溶液(678mg、2mmol、無水テトラヒドロフラン(THF)20mL中)に、BuLi(2.5Mのヘキサン中溶液、2mmol、0.8mL)を-60℃で、不活性雰囲気下で添加する。得られた溶液を-60℃で1時間撹拌し、それからTiCl4(1Mのトルエン中溶液1mmol、1mL)を添加する。混合物を室温(22℃)に温め、撹拌するステップを2~3時間続ける。減圧下ですべての揮発性物質を取り除いた後、残留物を無水CH2Cl2およびシクロヘキサンの混合物(1:1体積で)20mL中に溶解させる。沈降物をろ過し、ろ液の体積を10分の1に減らした後、結晶化用の冷凍機に設置する。-18℃で10~15時間後、チタン錯体は、不活性雰囲気下でろ過され、22℃/0.3mbarで20時間乾燥させた、深い赤色の結晶として得られる。
【0104】
[0091]第2の非限定的な例において、ヘテロ配位子チタン錯体[(L1L2)TiCl2]が調製される。置換サリチリデンアルジミン、(E)-2,4-ジ-tert-ブチル-6-(((4-メトキシフェニル)イミノ)メチル)フェノール(配位子1、L1)の0.1Mの無水テトラヒドロフラン(THF)10mL中撹拌溶液(339mg、1mmol)に、BuLi(2.5Mのヘキサン中溶液、1mmol、0.4mL)を-60℃で、不活性雰囲気下で滴下添加する。得られた溶液は、-60℃で1時間撹拌され、それから0℃まで温められ、Me3SiCl(0.13mL、1mmol)を滴下添加する。混合物を室温までさらに温め、室温で1時間撹拌し、次いで-50℃に再び冷却する。そのように得られた溶液に、TiCl4(1Mのトルエン中溶液1mmol、1mL)を-50℃で滴下添加する。混合物は、-50℃で1時間撹拌されて、モノライゲート化(monoligated)チタン錯体を形成する。次いで、第2の置換サリチリデンアルジミン、(E)-2-(tert-ブチル)-6-((フェニルイミノ)メチル)フェノール(配位子2、L2)(253mg、1mmol)は、配位子1と同じ手順を厳密に使用して、無水THF10mL中にBuLi(2.5Mのヘキサン中溶液、1mmol、0.4mL)を含む別のフラスコにおいて脱プロトン化される。リチウム化配位子2の得られた溶液を、-50℃で、カニューラを介してモノライゲート化チタン錯体の溶液に添加する。混合物を室温に温め、撹拌するステップを終夜続ける。減圧下ですべての揮発性物質を取り除いた後、残留物を無水CH2Cl2およびシクロヘキサンの混合物(1:1体積で)20mL中に溶解させる(反応におけるものと同じ体積)。沈降物をろ過し、ろ液の体積を10分の1に減らした後、結晶化用の冷凍機に設置する。-18℃で10~15時間後、チタン錯体は、不活性雰囲気下でろ過され、室温/0.3mbarで20時間乾燥させた、結晶として得られる。
【0105】
[0092]本発明における変更は、本明細書で提供された記述に鑑みて可能である。ある特定の代表的な実施形態および詳細は、本発明を説明するために示されてきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更および改変を行えることは当業者に明らかである。それゆえに、記載された特定の実施形態において変更することができ、それは、以下に添付の特許請求の範囲によって画定された本発明の、全体の意図された範囲内にあることを理解されたい。
[発明の態様]
[1]
1,4イソプレン繰り返し単位と3,4イソプレン繰り返し単位とを含むイソプレン繰り返し単位を含む合成ポリイソプレンであって、
前記合成ポリイソプレンの全イソプレン繰り返し単位の少なくとも5%が、3,4イソプレン繰り返し単位であり、
前記合成ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の少なくとも96%が、cis1,4イソプレン単位である、合成ポリイソプレン。
[2]
前記ポリイソプレンのガラス転移温度が、-58℃よりも高い、1に記載の合成ポリイソプレン。
[3]
前記ポリイソプレンのガラス転移温度が、-40℃~-55℃の範囲内である、1に記載の合成ポリイソプレン。
[4]
前記ポリイソプレンの数平均分子量が、少なくとも80000g/モルである、1に記載の合成ポリイソプレン。
[5]
前記ポリイソプレンの数平均分子量が、100000g/モル~800000g/モルの範囲内である、1に記載の合成ポリイソプレン。
[6]
少なくとも500個のcis1,4イソプレン繰り返し単位;
少なくとも50個の3,4イソプレン繰り返し単位;
最大で11000個のcis1,4イソプレン繰り返し単位;
最大で6000個の3,4イソプレン繰り返し単位;および
最大で10個の1,2イソプレン繰り返し単位
のうちの1つ以上を含む、1に記載の合成ポリイソプレン。
[7]
少なくとも40重量%の1,4イソプレン;
少なくとも10重量%の3,4イソプレン;
50重量%~95重量%の1,4イソプレン;
5重量%~50重量%の3,4イソプレン
のうちの1つ以上を含む、1に記載の合成ポリイソプレン。
[8]
前記合成ポリイソプレンの全重量に基づいて、重量で、1,4イソプレンを主に含む、1に記載の合成ポリイソプレン。
[9]
前記ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の少なくとも99.1%が、cis1,4イソプレン繰り返し単位である、1に記載の合成ポリイソプレン。
[10]
前記ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の少なくとも99.9%が、cis1,4イソプレン繰り返し単位である、1に記載の合成ポリイソプレン。
[11]
2~5の範囲内の重量平均分子量と数平均分子量との比を有する、1に記載の合成ポリイソプレン。
[12]
ポリイソプレンを合成する方法であって、前記方法が、少なくとも以下のステップ:
(A)イソプレンモノマーを用意するステップ;
(B)式(I)の有機金属化合物を含む触媒を用意するステップ:
LALBMX2 (I)
[式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムから選択される金属であり;
Xは、ヒドロカルビルおよびハロゲン化物の1種以上から独立に選択される配位子であり;
LAおよびLBは、式(II)の、独立に置換された配位子である:
C6H4-m(OH)RmCH=NC6H4-nRn (II)
式中、
Rは、水素、ヒドロカルビル置換基、置換ヒドロカルビル置換基、およびヘテロ原子置換基から独立に選択され、
nは、0、1、2、3、および4から選択され、
mは、0、1、2、3、および4から選択される。];
(C)前記触媒を活性化して、活性触媒を得るステップ;および
(D)前記活性触媒を用いて前記イソプレンモノマーを重合するステップ
を含む、方法。
[13]
前記触媒が、構造(III)を有する
【0106】
【0107】
[式中、
R1およびR2は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヒドロカルビル、エーテル、アミン基、およびその組み合わされた基から独立に選択され、R1およびR2のそれぞれは、最大で12個の炭素原子を含有し;
R3、R5、R6、R8は、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、およびその組み合わされた基から独立に選択され、R3、R5、R6、R8のそれぞれは、最大で12個の炭素原子を含有し;
R4、R7は、水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アミン基、およびその組み合わされた基から独立に選択され、R4、R7のそれぞれは、最大で12個の炭素原子を含有する]
12に記載の方法。
[14]
トリエチルアルミニウム(TEA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、メチルアルミノキサン(MAO)、および修飾メチルアルミノキサン(MMAO)のうちの1つ以上から選択される共触媒を用意するステップ、
Li[B(C6F5)4、Ph3C[B(C6F5)4];PhNMe2H[B(C6F5)4]、アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、およびB(C6F5)3のうちの1つ以上から選択される活性剤を用意するステップ、
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、トルエン、およびo-ジクロロベンゼンのうちの1つ以上から選択される溶媒を用意するステップ
のうちの1つ以上のステップをさらに含む、12に記載のポリイソプレンを合成する方法。
[15]
さらなる以下のステップ:
1℃~50℃の範囲内の温度で、前記触媒、前記共触媒、および前記溶媒を混合して、第1の混合物を得るステップ;
1℃~50℃の範囲内の温度で、前記第1の混合物を前記活性剤と混合して、前記活性触媒を得、それによって、第2の混合物を得るステップ;
前記第2の混合物を前記イソプレンモノマーと混合するステップ;
20℃~70℃の範囲内の温度で、前記イソプレンモノマーを重合するステップ
のうちの1つ以上を含む、14に記載のポリイソプレンを合成する方法。
[16]
12に記載の方法によって得られるポリイソプレン。
[17]
前記ポリイソプレンの全1,4イソプレン繰り返し単位の少なくとも96%が、cis1,4イソプレン単位であり、前記ポリイソプレンの全イソプレン単位の少なくとも5%が、3,4イソプレン単位である、16に記載のポリイソプレン。
[18]
1に記載の合成ポリイソプレン少なくとも5phr;および
充填剤少なくとも20phr
を含むゴム組成物。
[19]
前記合成ポリイソプレン5phr~95phr;
i)天然ゴムおよびii)別のポリイソプレンのうちの1種以上5phr~95phr;ならびに
1種以上のさらなるジエン系ゴム0phr~90phr
のうちの1つ以上を含む、18に記載のゴム組成物。
[20]
前記合成ポリイソプレン10phr~45phr;
i)天然ゴムおよびii)別のポリイソプレンのうちの1種以上55phr~90phr;ならびに
1種以上のさらなるジエン系ゴム0phr~10phr
を含む、18に記載のゴム組成物。
【外国語明細書】