IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイナックス稲本株式会社の特許一覧

特開2024-8541業務用洗濯装置及び業務用洗濯装置における予洗水の給水方法
<>
  • 特開-業務用洗濯装置及び業務用洗濯装置における予洗水の給水方法 図1
  • 特開-業務用洗濯装置及び業務用洗濯装置における予洗水の給水方法 図2
  • 特開-業務用洗濯装置及び業務用洗濯装置における予洗水の給水方法 図3
  • 特開-業務用洗濯装置及び業務用洗濯装置における予洗水の給水方法 図4
  • 特開-業務用洗濯装置及び業務用洗濯装置における予洗水の給水方法 図5
  • 特開-業務用洗濯装置及び業務用洗濯装置における予洗水の給水方法 図6
  • 特開-業務用洗濯装置及び業務用洗濯装置における予洗水の給水方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008541
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】業務用洗濯装置及び業務用洗濯装置における予洗水の給水方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 31/00 20060101AFI20240112BHJP
   D06F 33/34 20200101ALI20240112BHJP
【FI】
D06F31/00
D06F33/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110495
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】517260700
【氏名又は名称】アイナックス稲本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】米加田 勇
(72)【発明者】
【氏名】東出 暁博
(72)【発明者】
【氏名】宮田 名菜子
【テーマコード(参考)】
3B167
3B168
【Fターム(参考)】
3B167AC22
3B167AE05
3B167AE07
3B167BA43
3B167BA52
3B167KA12
3B167KA16
3B167KB16
3B167LC05
3B167LC09
3B167LE04
3B167LF01
3B167LF12
3B167LG08
3B168AC22
3B168AE05
3B168AE07
3B168BA43
3B168BA52
3B168JM02
3B168JM03
(57)【要約】
【課題】
すすぎ水や脱水排水を回収して予洗水として再利用する業務用の洗濯装置において、血液汚れの洗浄性を維持しつつ予洗から本洗に移行する際の洗濯水の加熱に必要な時間及びエネルギーを低減する。
【解決手段】
回収水の温度を50℃以上に設定して洗濯を行う。温度の低い回収水と高い回収水を順に供給する、又は回収水を加温する加熱器ないし熱交換器を設けて、設定された予洗水温度にする。回収水を過酸化水素除去装置に1回又は複数回通過させ、適時過酸化水素分解剤を供給し、回収水に洗剤を混合して予洗槽に供給するなどの方法で過酸化水素濃度を低下させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ1個又は複数個の予洗槽、本洗槽、すすぎ槽及び加工槽を備えた連続式洗濯機と当該連続式洗濯機で洗濯された被洗物を脱水する脱水機とを備え、前記加工槽ないし脱水機から回収した回収冷水及び前記すすぎ槽から回収した回収温水に含まれる過酸化水素を除去ないし低減して前記予洗槽で使用する予洗水として再利用する業務用の洗濯設備において、
前記予洗槽に被洗物と共に供給する前記予洗水の温度を50℃以上に設定する予洗水温度設定手段を含む制御器と、前記回収温水の温度を計測する温度計と、前記回収冷水の温度を計測する温度計とを備え、前記制御器は、予洗水温度の設定値に基づいて予洗水として予洗槽に供給する前記回収冷水及び回収温水の量を制御する、業務用洗濯装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記回収冷水を予洗水として予洗槽に供給したあと前記回収温水を予洗槽に供給する、請求項1記載の業務用洗濯装置。
【請求項3】
前記すすぎ槽に供給される新水を本洗槽からの排水で加温する熱交換器を備えている、請求項1又は2記載の業務用洗濯装置。
【請求項4】
前記予洗槽に供給される回収水を本洗槽からの排水で加温する加熱器を備えている、請求項1、2又は3記載の業務用洗濯装置。
【請求項5】
前記加熱器が前記本洗槽からの排水を含む連続式洗濯機からの排水を熱源とする熱交換器である、請求項4記載の業務用洗濯装置。
【請求項6】
それぞれ1個又は複数個の予洗槽、本洗槽、すすぎ槽及び加工槽を備えた連続式洗濯機と当該連続式洗濯機で洗濯された被洗物を脱水する脱水機とを備え、前記加工槽、脱水機又はすすぎ槽から回収した回収水に含まれる過酸化水素を除去ないし低減して前記予洗槽で使用する予洗水として再利用する業務用の洗濯設備において、
前記予洗槽に被洗物と共に供給する前記予洗水の温度を50℃以上に設定する予洗水温度設定手段を含む制御器と、前記回収水の温度を計測する温度計と、前記回収水を加温する加熱器とを備え、前記制御器は、予洗水温度の設定値と前記温度計の検出値に基づいて前記加熱装置の加熱動作を制御する、業務用洗濯装置。
【請求項7】
前記加熱器が前記本洗槽からの排水を含む連続式洗濯機からの排水を熱源とする熱交換器である、請求項6記載の業務用洗濯装置。
【請求項8】
前記回収水を前記予洗槽に導く予洗水供給配管を流れる予洗水に洗剤を供給する洗剤供給装置を備える、請求項1又は6記載の業務用洗濯装置。
【請求項9】
すすぎ槽に供給される新水の金属イオンを除去して硬度10ppm以下とする軟水装置を備えている、請求項1又は6記載の業務用洗濯装置。
【請求項10】
予洗工程、本洗工程、すすぎ工程及び脱水工程を順次行う洗濯脱水機において、
すすぎ工程ないし脱水工程で排出される排水を貯留する回収タンクと、予洗工程で使用する予洗水の温度を50℃以上に設定する予洗水温度設定手段を含む制御器と、前記回収タンク内の回収水を加熱する加熱器と、過酸化水素除去装置とを備え、前記制御器は、予洗水温度の設定値に基づいて前記回収タンク内の回収水を加温し、当該加温した回収水を次の被洗物を洗濯する際の予洗水として使用する、業務用洗濯脱水機。
【請求項11】
前記加熱器が前記本洗工程で排出される排水を含む洗濯脱水機からの排水を熱源とする熱交換器である、請求項10記載の業務用洗濯脱水機。
【請求項12】
前記回収タンク内の回収水を循環させるポンプと、前記加熱器及び過酸化水素除去装置を備えた循環配管とを備え、前記制御器が適時ポンプを運転して回収水を加温する、請求項10又は11記載の業務用洗濯脱水機。
【請求項13】
予洗で使用する予洗水の温度を50℃以上に設定し、
投入される被洗物の量を取得し、
当該量の被洗物を洗濯するのに必要な予洗水の量を求め、
予洗水として利用可能な回収冷水及び回収温水の温度を取得し、
取得した回収冷水温度と回収温水温度と前記設定された予洗水の温度と予洗水の量に基づいて予洗槽に供給する前記回収冷水及び回収温水の量を求め、
求めた量の回収冷水と回収温水とを過酸化水素除去装置を経由してこの順序で予洗槽に供給する、
業務用洗濯装置の予洗水の給水方法。
【請求項14】
予洗で使用する予洗水の温度を50℃以上に設定し、
すすぎ槽、加工槽ないし脱水機からの回収した回収水を回収タンクに貯留し、
貯留した回収水の温度を取得し、
前記設定した温度と取得した温度とに基づいて前記回収タンクから予洗槽に送られる前記回収水を加温かつ過酸化水素除去装置を通過させて予洗槽に供給する、
業務用洗濯装置の予洗水の給水方法。
【請求項15】
予洗で使用する予洗水の温度を50℃以上に設定し、
すすぎ工程時ないし脱水工程時の排水を回収水として貯留し、
貯留した回収水を熱交換器及び過酸化水素除去装置に通過させて前記設定された温度へと加温し、
当該加温した回収水を次の被洗物を洗濯する際の予洗水として洗濯槽に供給する、業務用洗濯脱水機における予洗水の給水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被洗物の予洗、本洗、すすぎ及び脱水の工程を順に行う業務用の洗濯装置に関し、特にすすぎで使用したすすぎ水や脱水で生じた排水を回収して予洗で使用する予洗水として再利用する洗濯装置の構造及び回収水の予洗水としての給水方法に特徴のある装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院で使用されるリネン品の洗濯方法としては、血液汚れなどの蛋白質汚れを除去する目的で40℃以下での予洗を行なった後、被洗物の消毒のために80℃での本洗が行われることが一般的である。
【0003】
大量のリネン品を洗濯する場合には、連続式洗濯機が用いられ、連続式洗濯機では、使用水量を削減する目的で、すすぎ排水や脱水機からの排水を回収し、予洗水として使用している。
【0004】
予洗で使用される予洗水の温度が40℃を超える場合や、予洗水の残留過酸化水素濃度が高い場合には、蛋白質汚れ、特に血液汚れの洗浄性が大幅に低下するため、病院で使用されるリネン品を洗浄する場合には、予洗で使用する予洗水は、温度40℃以下、残留過酸化水素濃度30ppm以下となるように調整が行われている。
【0005】
すすぎ先頭槽からの回収水は、温度が高く、残留過酸化水素濃度も高いため、予洗水には、主に脱水機からの回収水が使用されており、すすぎ先頭槽からの回収水を予洗水として使用する場合には、予洗温度が40℃を超えないように投入量の調整が行われている。
【0006】
例えば特許文献1には、仕上げ工程で、サワー剤と過酸化水素還元剤を含有する中和組成物を含む仕上げ水で処理を行い、残留過酸化水素を中和してリサイクルタンク及び脱水回収水リサイクルタンクに回収された水を第1洗濯槽に対する投入水として再利用することが記載されている。
【0007】
ここで、「被洗物投入水タンクの水における過酸化水素の濃度が所定の数値を超過しないように、脱水回収水リサイクルタンクから供給される水の流量に対するリサイクルタンクから供給される水の流量を調節する。」とし、「第1の洗浄水の温度は、15℃以上60℃以下であることが好ましく、40℃以上55℃以下であることが特に好ましい。」としている。
【0008】
また、「第1の洗浄水における過酸化水素の濃度は、0質量ppm以上10質量ppm以下であることが好ましく、0質量ppm以上1質量ppm以下であることが特に好ましい。」としている。
【0009】
一方、特許文献2には、予めpアルカリ度250ppm~5000ppmで表される洗剤濃度になるように調整され、pH10以上、液温46℃以上の洗浄液を第一の洗濯槽に導入し、第一洗浄工程を実施することで血液ジミを主体とする蛋白質由来の複合汚れを除去する技術が提案されており、蛋白変性が生じる前に被洗物の汚れが洗浄され、血液由来の汚れ及び、血液と無機汚れ由来の蛋白質主体の複合汚れを効率的に除去することが可能となるとされている。
【0010】
本願出願人の出願に係る特許文献3には、血液汚れないし蛋白質汚れの除去性を低下させないで節水運転が可能な業務用洗濯装置を得ることを課題として、連続式洗濯機のすすぎ槽からの回収温水や、連続式洗濯機の最終槽や脱水機からの回収冷水を過酸化水素除去装置を通過させて予洗水として予洗槽に供給することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017-186730号公報
【特許文献2】特開2014-161432号公報
【特許文献3】特開2017-93799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
連続式洗濯機では、40℃以下での予洗後に、本洗での設定温度の80℃まで、短いサイクルタイム(各槽ごとの洗濯時間)で昇温する必要があり、エネルギーの消費量が大きく、高い昇温能力が必要となるため、蒸気ボイラー以外の熱源を利用することが困難な状況となっている。
【0013】
本洗での昇温に必要なエネルギーを減らす目的で、予洗後に排水を行った後、高温のすすぎ排水を供給する方法が行われているが、この方法では、被洗物に吸水されている水を排水することは困難であるため、槽内全体の温度を大幅に上昇させることは、難しく、水の入れ替えにより洗剤濃度が低下するため、洗剤を追加で添加する必要があり、洗剤の使用量が増加する。
【0014】
特許文献1で提案されている方法では、すすぎ先頭槽の排水の残留過酸化水素濃度を大幅に減らすことは困難なため、過酸化水素濃度が所定の数値を超過しないように脱水回収水リサイクルタンクから供給される水の流量に対するリサイクルタンクから供給される水の流量を調節した場合、リサイクルタンクの水を多く使用することになり、一般的な連続式洗濯機では、投入水の温度を50℃以上に上昇させることは困難であると思われる。
【0015】
また、特許文献1の表2には、投入水温度が40℃~48℃の実験例について記載されているが、実験例3は、投入水における過酸化水素濃度が0ppmの条件で、投入水の温度は48℃となっており、投入水温度50℃以上の例は記載されていない。
【0016】
特許文献2には、残留過酸化水素濃度についての記載がなく、第一洗浄工程の洗浄液を50℃以上に上げるためには、残留過酸化水素濃度の高いすすぎ先頭槽の水を多く使用する必要があるため、本方法で、50℃以上での予洗工程を実施しようとすると、残留過酸化水素濃度が高くなり、血液汚れの洗浄性が大幅に低下するおそれがある。
【0017】
また、特許文献2には、第一洗浄工程の洗浄液の液温の上限は好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下とされているが、特許文献1と同様に、表2には第一洗浄工程の温度は、48℃までの実施例しか記載されておらず、残留過酸化水素濃度については記載されていない。
【0018】
この発明は、以上のような実情に鑑み、血液汚れの洗浄性を維持しつつ予洗から本洗に移行する際の洗濯水の加熱に必要な時間及びエネルギーを低下させる技術手段を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明では、すすぎ水として使用されたすすぎ水や脱水により生じた脱水排水を回収して回収水中の過酸化水素を除去ないし濃度を低減して予洗水として再利用する業務用の洗濯設備ないし洗濯機において、予洗水として使用される回収水の温度を50℃以上70℃以下、好ましくは60℃以下に設定して洗濯を行うことにより、上記課題を解決している。
【0020】
予洗水として再利用する回収水として、比較的温度の高いすすぎ槽cからの回収水(回収温水)と比較的温度の低い加工槽(仕上げ槽とも言う。)dや脱水機2ないし脱水工程時の回収水(回収冷水)を個別に回収する構造の連続式洗濯設備では、予洗水として使用する回収温水と回収冷水の割合を調整することにより、予洗水の温度を設定温度とすることができる。
【0021】
この場合、設定温度とするのに必要な回収冷水の量と回収温水の量とを計算し、計算された量の回収冷水を先に予洗槽に供給し、その後回収温水を供給することで、1個の流量計26で回収冷水及び回収温水の量を正確に計測でき、従って予洗水の温度を正確に制御できるとともに、被洗物に先に温度の低い水を吸水させることで、血液汚れの凝固を避けることができる。
【0022】
すすぎ槽cに供給される新水を加温する加熱器9a(図3、4参照)を設けてすすぎ水を加温すれば、予洗槽aに供給される回収水の温度を高くすることができる。また、予洗水供給配管25に加熱器9、9b(図5、6参照)を設けて供給される予洗水の温度を所望の設定温度にすることも可能である。この加熱器9、9a、9bとして、80℃前後の本洗槽bからの排水や他の洗濯設備から排出される高温排水や蒸気ドレン水を含む高温の排水を熱源とする熱交換器とすれば、熱エネルギーの有効活用ができ、省エネになる。
【0023】
温度の異なる回収水を分けないで回収する洗濯設備、又は回収温水若しくは回収冷水のみを予洗水として再利用する洗濯設備では、回収水を加温する加熱器9を設けることにより、回収水の温度を設定した予洗水の温度にまで加温して予洗槽に供給することができる。この場合においても、加熱器9として本洗槽bからの排水を含む高温の排水を熱源とする熱交換器を用いれば、廃棄される熱の有効利用を図ることができる。
【0024】
回収水を予洗槽aに供給する予洗水供給配管25に洗剤供給装置3の洗剤投入口を接続して予洗水を供給するときに当該洗剤投入口から洗剤を投入すれば、予洗水供給配管25を流れる回収水の流れを利用して予洗水に洗剤を混合(ミキシング)することができ、投入直後のタイミングで被洗物の特に血液汚れを速やかに洗浄することが可能になる。
【0025】
なお、すすぎ槽cに供給される新水配管31に金属イオンを除去して硬度10ppm以下とする軟水装置(図示されていない。)を設けることで、予洗槽aに供給される回収水も軟水となり、被洗物の洗浄性を向上させることができる。
【0026】
洗濯設備が洗濯脱水機10のときは、すすぎ工程ないし脱水工程の排水を貯留する回収タンク8と、当該タンク内の回収水を加熱する加熱器9及び過酸化水素除去装置5とを設けて、当該加熱器9で加温した回収水を次の被洗物を洗濯する際の予洗水として使用する。この場合も加熱器9として本洗工程で排出される排水を含む排水を熱源とする熱交換器9bとすれば、熱エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0027】
予洗水供給配管25や冷水タンク6、温水タンク7ないし回収タンク8内の回収水を送水するポンプ17、22、37の吐出側配管に加熱器9及び過酸化水素除去装置5を経て回収水を循環させる循環配管41とを設けて、予洗水の供給を行わない待ち時間の間にポンプ17、22、37を運転して回収水の加温及び過酸化水素の除去を行うようにすれば、加温及び過酸化水素の除去に充分な時間をかけることができ、小容量の熱交換器及び過酸化水素除去装置で必要な加温及び過酸化水素の除去が可能になる。
【発明の効果】
【0028】
高温となる本洗排水やすすぎ排水の熱を利用して予洗水として利用する回収水の温度を50℃以上に上昇させることで、本洗での昇温に必要なエネルギーを減らすことができ、過酸化水素除去装置で回収水中の過酸化水素の濃度を低減することにより、血液汚れの変性を未然に防止することができ、蛋白質汚れの洗浄性を損なうこともない。
【0029】
この発明により、血液汚れの洗浄性を低下させることなく、予洗水の温度を高く設定して予洗を行うことで、予洗から本洗に移行する際の洗濯水の昇温に必要なエネルギー使用量を削減することができると共に、当該昇温を速やかに行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】この発明の第1実施例を示す概略図
図2】過酸化水素除去装置の一例を示す概略図
図3】この発明の第2実施例を示す概略図
図4】この発明の第3実施例を示す概略図
図5】この発明の第4実施例を示す概略図
図6】この発明の第5実施例を示す概略図
図7】この発明の第6実施例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照してこの発明を更に説明する。連続式洗濯機1を含む洗濯装置の実施例を示す図1図3図6において、1は連続式洗濯機、2は連続式洗濯機1から排出された被洗物を脱水する脱水機、3は洗剤供給装置、4は過酸化水素を含む漂白剤を供給する漂白剤供給装置、5は過酸化水素除去装置である。
【0032】
連続式洗濯機1の被洗物投入ホッパ11に投入された被洗物は、各洗濯槽a1、a2、b1~b6、c1~c3、dで所定時間の洗濯が行われた後、隣接する次の槽へ送られ、総ての槽を通過した洗濯済みの被洗物が被洗物排出口12から排出されて、脱水機2に投入される。連続式洗濯機1の洗濯槽は、被洗物の送り方向上流側から予洗槽a(a1、a2)、本洗槽b(b1~b6)、すすぎ槽c(c1~c3)及び加工槽dとされている。
【0033】
なお、図中、○内にTは温度計、○内にLvは水位計、○内にPはポンプ、□内にFMは流量計、ハンドルがT形の弁記号は手動弁、T形の横線の部分が四角形の弁記号は電磁弁であるが、実際の装置に設けられている全てを記載している訳ではない。
【0034】
一般的な連続式洗濯機1は、複数の本洗槽bと複数のすすぎ槽cとを備え、洗濯水及びすすぎ水は、複数の槽間をカウンタフロー又はバッチフローで流れる。カウンタフローは、洗濯水が槽間を被洗物の移送方向と逆方向に流れる方式、バッチフローは、洗濯水が槽間を被洗物と共に移送される方式である。図1図3図6に示す連続式洗濯機1は、本洗がバッチフロー、すすぎがカウンターフローのものである。なお、各槽の洗濯槽の数は、必要に応じて増減され、図示のものに限定される訳ではない。また、すすぎがバッチフローの場合は、各すすぎ槽毎に給排水を行う。
【0035】
なお、図示してないが、連続式洗濯機1の各洗濯槽a~dには、蒸気配管とドレン配管とが設けられており、すすぎ最終槽c3、加工槽d及び予洗槽aや本洗槽bの必要な槽には、新水配管が設けられている。また、洗濯水、特にすすぎ槽に供給される新水は、軟水装置により、硬度成分が除去された硬度10ppm以下の軟水を使用することが望ましく、必要に応じて新水供給配管31に軟水装置(図示されていない。)を設置する。
【0036】
図1及び図3に示す連続洗濯装置では、脱水機2及び加工槽dから回収した比較的温度の低い排水(以下、「回収冷水」と言う。)とすすぎ槽cから回収した比較的温度の高い排水(以下、「回収温水」と言う。)とを区分して再利用するために、冷水タンク6と、温水タンク7とを設けている。冷水タンク6には、脱水回収配管15で脱水機2からの回収冷水が流入し、冷水回収配管14で加工槽dからの回収冷水が流入して貯留される。温水タンク7には、温水回収配管13ですすぎ槽cからの回収温水が流入する。冷水タンク6及び温水タンク7には温度計46、47が設けられている。
【0037】
図1及び図3の装置では、冷水タンク6の回収冷水は、電磁弁16を開いて当該タンクに設置された冷水ポンプ17を駆動することにより冷水供給配管18及び予洗水供給配管25を通して被洗物投入ホッパ11に送られる。温水タンク7の回収温水は、電磁弁21を開いて当該タンクに設置された温水ポンプ22を駆動することにより温水供給配管23及び予洗水供給配管25を通して被洗物投入ホッパ11に送られる。
【0038】
回収冷水及び回収温水を被洗物投入ホッパ11に送る予洗水供給配管25には、流量計26と過酸化水素除去装置5が設けられている。洗濯装置の運転を制御する制御器(図示されていない。)は、被洗物投入ホッパ11に被洗物が投入されるタイミングで電磁弁16を開き冷水ポンプ17を駆動する。そして、冷水ポンプ17を停止して電磁弁16を閉じた後、すなわち、被洗物投入ホッパ11に必要な量の回収冷水を供給した後、電磁弁21の開閉と温水ポンプ22の駆動停止を行う。
【0039】
回収冷水及び回収温水は、予洗水供給配管25を時間的に前後して流れるので、配管25に配置した流量計26で予洗槽a1に投入される回収冷水及び回収温水の量を個別に計測可能で、その検出値は、制御器に送られる。制御器はその検出値が求めた流量に達したとき、ポンプ17、22を停止し、電磁弁16、21を閉じる。
【0040】
制御器は、被洗物量を取得して以下の演算で予洗槽への回収冷水給水量及び回収温水給水量を算定する。
条件1:T2≦TAであれば、W1=0、W2=w×WA
条件2:T2>TAであれば、
W1=w×WA×(T2-TA)/(T2-T1)
W2=w×WA-W1
条件3:T1>TAであれば、
T1≦TAとなるまで電磁弁33を開いて冷水タンク(図4の第3実施例の場合は、加工槽)内に新水を供給した後、条件1又は条件2による。
ここで、
T1は回収冷水温度[℃]
T2は回収温水温度[℃]
TAは予洗水温度の設定値[℃]
wは被洗物量[kg]
WAは被洗物単位量当たりの予洗水量の設定値[L/kg、Lはリットル]
W1は回収冷水の給水量[L]
W2は回収温水の給水量[L]
である。
なお、温水タンク7の水位が下限レベルを下回った場合は、不足分を冷水タンク6から送水し、冷水タンク6の水位が下限レベルを下回った場合は、冷水タンク6に新水を補給する。
【0041】
例えば、TA=60℃、T1=40℃、T2=70℃、WA=5.0L/kg、w=60kgの場合
T2>TAであるから、条件2の式より、
W1=60×5.0×(70-60)/(70-40)=3000/30=100[L]
W2=60×5.0-100=200[L]
となる。
【0042】
なお、図4の装置では、電磁弁34を開いて脱水機タンク28に設けたポンプ29で当該タンクに貯留された回収冷水をすすぎ最終槽c3に送ることができるようになっている。すすぎ最終槽c3に回収冷水を供給することにより、新水のみを供給する場合よりすすぎ性が向上することが、本願の発明者らにより確認されている。そのため、より少ない新水使用量ですすぐことが可能になり、節水になる。
【0043】
過酸化水素除去装置5としては粒状活性炭を充填した容器に過酸化水素含有水を通水し、活性炭の触媒作用により残留過酸化水を分解処理する装置が用いられる。
【0044】
図2は、特許文献3に記載の好ましい構造の過酸化水素除去装置5を示した図である。図2の過酸化水素除去装置は、リントスクリーン51、触媒層52及び砂利層53を備えた触媒タンク54と、バグフィルタ55とを備えている。流入配管61から流入した回収水は、斜めに設置されたリントスクリーン51を流下する間に触媒タンク54内へと流入する。リントスクリーン51で捕捉されたリントは、リント溜り56に流入して排出される。
【0045】
触媒タンク54に流入した回収水は、粒状の活性炭を充填した触媒層52及び砂利層53を通過して、回収水中の過酸化水素が分解されると共に塵埃が濾過されて、ポンプ62でバグフィルタ55に送られ、バグフィルタ55を通過して吐出される。63は、触媒タンク54及びバグフィルタ55からの排水管である。64は、砂利層53及び触媒層52を洗浄(逆洗)するための新水供給管、69は新水供給管64からの新水を吹き出すために触媒タンク54の底部に配置した逆洗パイプである。逆洗は、連続式洗濯機1の操作パネルでの操作により、一日の終業時に自動で行われる。触媒タンク54には、水位計65が設けられており、配管中の必要な個所にはバルブや圧力計66、67、68などが適宜設けられている。
【0046】
スクリーン51は、形式や構造は問わないが、触媒52へのリントや汚れの付着を少なくして連続運転時間を確保するため、目開き1~100μmのものが好ましく、10μm前後のものが最も好ましい。
【0047】
過酸化水素除去装置5としては、上記のような粒状活性炭による方法以外に、UV/オゾン法による接触酸化を利用した装置や、二酸化マンガン触媒を利用した装置を使用してもよい。
【0048】
図3に示す実施例の装置は、連続式洗濯機1からの排水とすすぎ槽cに供給する新水との熱交換を行う熱交換器9aを備え、熱交換器9aで加温された新水をすすぎ最終槽c3へと供給できる構造となっている。
【0049】
連続式洗濯機の特に本洗槽bからの排熱を利用してすすぎ槽に供給する新水の温度を上げることで、追加の熱源を使用することなくすすぎ槽c内の温度が上昇するので、過酸化水素除去装置5を通して予洗槽aに供給される回収温水の温度をより高くすることができ、本洗槽bの洗濯水の温度を上げるための熱エネルギーの消費量を低減することができる。また、すすぎ槽内に残留している過酸化水素の分解を促進させる効果も得られる。
【0050】
また、図3に示す実施例では、予洗水供給配管25に、洗剤供給装置3の洗剤の投入口が接続されており、被洗物と同時に投入される予洗水と洗剤をミキシングしながら予洗槽aに投入することができるようになっている。
【0051】
予洗水供給配管25に洗剤供給装置3の洗剤投入口を接続し、被洗物投入時に予洗水と洗剤をミキシングしながら投入することで、血液の洗浄性を向上させることができ、回収冷水や回収温水に含まれる残留過酸化水素濃度が比較的高い場合でも、血液汚れの洗浄性を大幅に低下させること無く、より高い温度の回収水を用いて予洗を行うことができる。
【0052】
また図3の第2実施例装置では、必要時に電磁弁33を開くことにより冷水タンク6にも新水を供給できるようになっている。冷水タンク6の回収冷水の温度が制御器に設定した設定温度より高い場合や、冷水タンク6から回収冷水を予洗槽aに送水しているときに冷水タンク6の水位が下限値を下回った場合に、制御器が電磁弁33を開いて冷水タンク6に新水が供給される。
【0053】
一方、温水タンク7の温度が制御器に設定された予洗水温度より低い場合は、温水タンク7又は予洗水供給配管25の水を加温する加熱器9(図5参照)を設けて、回収温水の温度が設定温度になるように加温するようにしてもよい。
【0054】
加熱手段としては、熱交換器や電熱ヒーター、ヒートポンプ等を使用することができるが、連続式洗濯機1からの排水や洗濯ラインに設けられたその他の装置からの高温排水を熱源とする熱交換器を設ける構造がエネルギーの有効利用の点で好ましい。
【0055】
また図3の第2実施例装置では、漂白剤を供給する槽b2より後の槽b3の洗濯水の過酸化水素濃度を測定し、必要なときにすすぎ先頭槽c1に過酸化水素分解剤を投入できるようになっている。すなわち、本洗第2槽b2に漂白剤(過酸化水素)供給装置4が接続されており、本洗第3槽b3に過酸化水素濃度計45を備え、すすぎ先頭槽c1に過酸化水素分解剤供給装置35が接続されている。
【0056】
そして、本洗第3槽b3の過酸化水素濃度が規定値を超える場合に、規定値以下となるようにすすぎ先頭槽c1に過酸化水素分解剤(カタラーゼ)を投入する。過酸化水素分解剤の投入槽は、本洗最終槽b6としてもよい。このようにすることにより、過酸化水素濃度の一時的な大きな変動があっても、過酸化水素除去装置5の処理能力を超えることがなくなり、予洗に使用される回収水の過酸化水素濃度を一定濃度以下に維持することが可能となるので、比較的小容量の過酸化水素除去装置5で安定した洗濯を行うことが可能になる。
【0057】
図4に示した第3実施例では、冷水タンクや温水タンクが設けられておらず、加工槽dに接続した電磁弁16を開いて冷水ポンプ17を駆動することにより比較的低温の加工槽dの排水(回収冷水)が配管25を通って被洗物投入ホッパ11に送られ、すすぎ先頭槽c1に接続した電磁弁21を開いて温水ポンプ22を駆動することにより比較的高温のすすぎ槽cの排水(回収温水)が配管25を通って被洗物投入ホッパ11に送られる。
【0058】
この場合にも、加工槽dから予洗槽aに回収冷水を送水した後に、すすぎ先頭槽c1から予洗槽aに回収温水を送水する。加工槽dとすすぎ先頭槽c1には温度計46、47が設けられており、それぞれの槽の洗濯水の温度を計測し、実施例1で説明したと同様の制御により、予洗水の温度と給水量の制御を行う。加工槽dには、新水供給配管31が接続されており、加工槽dの温度が予洗水の設定温度を超えた場合や、予洗槽aへの回収冷水の送水中に槽内の水位が下限を下回った場合に、制御器が電磁弁30を開いて加工槽dに新水を供給する。
【0059】
この発明の洗濯装置の運転を制御する制御器(図示されていない。)は、設定された50℃以上の予洗水温度の設定値を記憶するメモリを備えている。第1ないし第3実施例の洗濯装置に設けられた制御器は、当該洗濯装置が設置された洗濯ライン全体を制御している親制御器(図示されていない。)から次に投入される被洗物の量を取得し、当該量の被洗物を洗濯するのに必要な予洗水の量を求め、予洗水として利用可能な回収冷水及び回収温水の温度を温度計46及び47から取得し、取得した回収冷水温度と回収温水温度と前記メモリに記憶された温度と予洗水の量に基づいて、予洗槽aに供給する回収冷水及び回収温水の量を求め、求めた量の回収冷水と回収温水とを過酸化水素除去装置5を経由してこの順序で予洗槽aに供給する。
【0060】
第1ないし第3実施例は、連続式洗濯機1及び脱水機2から排出される比較的温度の高い回収温水と比較的温度の低い回収冷水とを混合して50℃以上に設定された温度の予洗水を得ようとするものであるが、本願発明の要旨は、予洗水の温度を高く維持して予洗水と本洗水の温度差を小さくして、予洗から本洗に移行する際に必要となる洗濯水を加熱するのに必要なエネルギーの低減を図ろうとするものである。
【0061】
一般的な洗濯運転では、回収冷水と回収温水を混合したときの水温は、50℃より低く、運転条件によっては、回収温水の温度が予洗水として使用可能な温度となることもある。従って、回収水を必要に応じて加温して予洗水とすることも可能である。図5の第4実施例は、回収冷水と回収温水とを共に回収タンク8に貯留して予洗水として使用する例であり、回収水を予洗槽aに供給する予洗水供給配管25の途中に加熱器9が設けられている。また、図6の第5実施例は、回収冷水を加温して予洗水として使用する例であり、回収水を予洗槽aに供給する予洗水供給配管25の途中に熱交換器9bが設けられている。制御器は、予洗水供給配管25に設けた温度計49の検出温度が予洗水の設定温度となるように加熱器9及び熱交換器9bの熱量を制御する。
【0062】
図5の第4実施例では、すすぎ槽c、加工槽d及び脱水機2の排水は全て回収タンク8に貯留される。回収タンク8には、温度計48と回収水ポンプ37が設けられており、電磁弁36を開いて回収水ポンプ37を運転することにより、流量計26で計測された量の回収水が加熱器9及び過酸化水素除去装置5を通って予洗槽aに供給される。回収タンク8の回収水には温度の高いすすぎ排水が含まれているので、従って、加熱器9で昇温する温度は比較的小さくて良く、加熱器9として電気ヒータを用いても、洗濯設備全体としてのエネルギー量を低減できる場合が多い。
【0063】
図5の装置では、予洗水供給配管25に設けた電磁弁38を閉じ、電磁弁39を開いて回収水ポンプ37を運転することにより、循環配管41で、回収タンク8内の回収水を加熱器9及び過酸化水素除去装置5を通して循環させることができるようになっている。予洗水の供給をしないときに適宜この循環を行うことにより、予洗水として使用する際の回収水の塩素濃度を下げることができ、また、時間をかけて回収水の温度を上げることができるので、容量の小さい加熱器9で回収水の温度を設定された温度に加熱することが可能になる。
【0064】
図5の第4実施例の洗濯設備を制御する制御器(図示されていない。)は、すすぎ槽c、加工槽dないし脱水機2から回収した回収水を回収タンク8に貯留し、温度計48で貯留した回収水の温度を取得し、メモリに設定されている予洗水温度と取得した回収水温度とに基づいて回収タンク8から予洗槽aに送られる回収水を加熱器9ないし9bで加温しかつ過酸化水素除去装置5を通過させて予洗槽aに供給する。
【0065】
図6の第5実施例は、加工槽d及び脱水機2から回収した回収冷水のみを熱交換器9bで加熱して予洗槽aに供給している。すすぎ槽aからの排水は、本洗槽bからの排水と共に、集合排水管42を経て排水回収タンク43に貯留される。回収冷水と50℃以上とした予洗水の設定温度との温度差が大きいことを考慮して、回収冷水を予洗槽aに送る際には、同時にポンプ44を運転して、温度の高い排水回収タンク43の排水を熱交換器9bの熱源として利用している。このような熱交換器9bは、第5実施例における加熱器9としても用いることができる。
【0066】
本洗槽b2で添加された過酸化水素は、複数のすすぎ槽cのすすぎ水で除去され、通常は加工槽dと脱水機2からの回収冷水中の過酸化水素濃度が充分に低いと考えられる。この点を考慮して、図6の装置では、過酸化水素除去装置を省略し、冷水タンク6に過酸化水素濃度計45を設けて、過酸化水素濃度が高くなったときに制御器が電磁弁33を開いて冷水タンク6に新水を供給して所定の濃度まで過酸化水素濃度を低下させる。冷水タンク6に過酸化水素分解剤供給装置を接続して過酸化水素分解剤を供給するようにしても良い。
【0067】
この発明は、洗濯脱水機10に適用することもできる。図7の洗濯脱水機10は、すすぎ排水を回収する回収タンク8を備えている。回収タンク8の回収水は、次に洗濯される被洗物を洗濯する際の予洗工程及び本洗工程で使用される。
【0068】
回収水を洗濯槽eに送る予洗水供給配管25には、回収水を加温するための熱交換器9bを備えている。熱交換器9bを通過後の回収水を洗濯脱水機10の洗濯槽eへ送水するための予洗水供給配管25と、回収タンク8へ戻すための循環配管41を備えており、電磁弁38、39の開閉により回収水ポンプ37を運転した際の送水先を切替できるようになっている。回収タンク8にすすぎ排水を回収後、次の被洗物の洗濯を開始するまでの間は、回収水を循環しながら熱交換器9bに通水して加温する。
【0069】
一方、洗濯脱水機10の本洗工程を含む排水を回収するための排水回収タンク43を備え、このタンクに貯留した排水は、ポンプ44で熱交換器9bに通水して回収水を加温するための熱源として利用する。なお、排水回収タンク43には、他の洗濯設備から排出される高温排水や蒸気ドレン水等を回収するようにしてもよい。
【0070】
さらに、図7に示すように、回収タンク8の循環配管41に、過酸化水素除去装置5を接続して、回収水の残留過酸化水素濃度を低減させることがより好ましい。
【0071】
次に、図7に示す洗濯脱水機の洗濯工程を説明する。予洗工程では、前に被洗物のすすぎ工程の際に貯留した回収タンク8の回収水を設定水位まで給水する。そして、予洗時間として設定された時間が経過した後、排水を行わずに次の本洗工程に移行する。汚れ量の多い被洗物を洗濯する場合は、予洗後に排水したあと本洗で用いる洗濯水を供給する。
【0072】
本洗工程では、洗濯水を設定温度まで加温し、設定温度に到達後、漂白剤供給装置4から漂白剤を投入する。必要に応じて洗剤供給装置3から洗剤を投入する。本洗工程時の洗剤は、電磁弁71、72の開閉により、給水と同時または設定水位到達後に洗濯槽e側の洗剤供給口73へ供給する。予洗工程で排水を行った場合は、回収タンク8の回収水を設定水位まで給水しながら、設定温度まで加温する。
【0073】
設定された本洗時間経過後、切換弁74を排水側に切り替えで排水した後、脱水工程または排水工程を行う。排水は電磁弁75を開いて排水回収タンク43に回収する。
【0074】
すすぎ工程では、複数回のすすぎを行う。すすぎ1回目は、回収タンクの水または新水を給水する。設定時間経過後、すすぎ水を排水し、脱水または排水を行う。すすぎ排水は、切換弁74を排水側に切り替えて電磁弁75を開いて排水回収タンク43へ回収するか、又は、切換弁74を回収側に切り替えてポンプ76を駆動することにより回収タンク8へ回収する。
【0075】
すすぎ2回目以降は、回収タンク8の回収水または新水を給水し、設定時間のすすぎを行った後、すすぎ水を排水した後、脱水工程または排水工程を行う。すすぎ排水は、回収タンク8へ回収する。すすぎを2回行う場合は、すすぎ2回目の排水を回収タンク8へ回収し、予洗工程と本洗工程で回収タンク8の回収水を使用する。
【0076】
すすぎを3回以上行う場合は、すすぎ2回目以降の排水を回収タンク8へ回収し、次工程の予洗工程とすすぎ1回目に回収タンク8の回収水を使用するようにしてもよい。
【0077】
図7の洗濯脱水機の制御器(図示されていない。)は、すすぎ工程時ないし脱水工程時の排水を回収水として回収タンク8に貯留し、貯留した回収水を熱交換器9b及び過酸化水素除去装置5に通過させながら設定メモリに設定された50℃以上の温度へと加温し、加温した回収水を次の被洗物を洗濯する際の予洗水として洗濯槽eに供給する。
【符号の説明】
【0078】
2 脱水機
3 洗剤供給装置
5 過酸化水素除去装置
6 冷水タンク
7 温水タンク
8 回収タンク
9 加熱器
9a 熱交換器
10 洗濯脱水機
17 ポンプ
22 ポンプ
25 予洗水供給配管
26 流量計
31 新水配管
37 ポンプ
41 循環配管
a 予洗槽
b 本洗槽
c すすぎ槽
d 加工槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7