IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社MIRAISOZAIの特許一覧 ▶ 株式会社タナカアンドカンパニーの特許一覧

特開2024-85418生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品
<>
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図1
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図2
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図3
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図4
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図5
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図6
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図7
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図8
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図9
  • 特開-生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085418
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】生地、生地を用いて構成される衣類及び生地を用いて構成される繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/14 20060101AFI20240619BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20240619BHJP
   D03D 13/00 20060101ALI20240619BHJP
   D03D 15/37 20210101ALI20240619BHJP
   D03D 15/44 20210101ALI20240619BHJP
   D03D 15/217 20210101ALI20240619BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240619BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20240619BHJP
   D03D 15/20 20210101ALN20240619BHJP
【FI】
D04B1/14
D03D15/283
D03D13/00
D03D15/37
D03D15/44
D03D15/217
A41D31/00 503C
A41D31/00 503E
A41D31/00 502A
A41D31/00 503F
A41D31/00 503G
A41D31/00 502B
A41D31/04 C
A41D31/04 Z
A41D31/00 503Z
D03D15/20 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211236
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022199205
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521482079
【氏名又は名称】株式会社MIRAISOZAI
(71)【出願人】
【識別番号】512242608
【氏名又は名称】株式会社タナカアンドカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002114
【氏名又は名称】弁理士法人河野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128624
【弁理士】
【氏名又は名称】穂坂 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138483
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 晃一
(72)【発明者】
【氏名】松井 善孝
【テーマコード(参考)】
4L002
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA02
4L002AA05
4L002AA06
4L002AA07
4L002AB00
4L002AB01
4L002AB02
4L002AC06
4L002BB02
4L002EA00
4L002EA01
4L002EA03
4L002FA01
4L048AA08
4L048AA13
4L048AA20
4L048AA24
4L048AA37
4L048AA39
4L048AA42
4L048AA54
4L048AA56
4L048AB01
4L048AB06
4L048AC01
4L048AC15
4L048BA02
4L048CA00
4L048CA07
4L048CA10
4L048DA01
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】
高い吸水速乾機能と高い紫外線遮蔽機能を備えた生地を提供すること、高い紫外線遮蔽機能を備えた生地であって木綿100%の生地と外観と質感に大きな違いがなく吸水速乾性についても木綿100%で成る生地に遜色ない生地を提供することを課題とする。
【解決手段】
木綿で成る異型断面糸(中空糸を含む)と、木綿又は化学繊維で成る異型断面糸(中空糸を含む)で構成される生地によって課題を解決する。また、木綿で成る中空糸の表糸と、化学繊維のフルダル繊維で成る中空糸の裏糸とで構成され、プレーティング編みで編まれた編み生地によって課題を解決する。表糸が木綿で成る中空糸、裏糸が中空のフルダルのナイロン長繊維で構成され、プレーティング編みで編まれた編み生地を例に吸水速乾性、紫外線遮蔽性、等を試験したところ、良好なデータを得られた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木綿で成る中空糸と、
木綿又は化学繊維で成る異型断面糸(中空糸を含む)で構成される生地。
【請求項2】
前記化学繊維がナイロン、ポリエステル、ナイロンの再生繊維又はポリエステルの再生繊維であることを特徴とする請求項1に記載の生地。
【請求項3】
木綿で成る中空糸の表糸と、
化学繊維のフルダル繊維で成る異型断面糸(中空糸を含む)の裏糸で構成され、
プレーティング編みで編まれた請求項1に記載の編み生地。
【請求項4】
経糸を木綿で成る中空糸とし、
緯糸を木綿で成る中空糸として構成される請求項1に記載の織り生地。
【請求項5】
請求項3に記載の生地を用いて構成される衣類であって、当該衣類はフルダル繊維が着衣者の肌側に向いて配置される衣類。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の生地を用いて構成される繊維製品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
織り生地又は編み生地である生地であって高い吸水速乾性と高い紫外線遮蔽性を備えた生地、及びそのような生地を用いて構成される衣類・繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生地や、生地を用いて構成される製品には、高い吸水速乾性又は高い紫外線遮蔽性が求められることが多い。また、生地を用いて構成される製品には、衣類等、デザイン性が重視されるものがあるところ、従来の外観や質感を維持しつつかつ高い吸水速乾性や高い紫外線遮蔽性を得ることも求められてきた。
【0003】
木綿100%で成る生地との比較で、質感や外観が木綿100%で成る生地とほぼ同じであり、かつ木綿100%で成る生地よりも高い紫外線遮蔽性を備えた生地であって、吸水速乾性については木綿100%で成る生地に遜色ないものを得ることができれば、そのような生地は、これまでの木綿100%の生地で成る衣類や繊維製品に代わるものとして市場での利用が見込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高い吸水速乾機能と高い紫外線遮蔽機能を備えた生地を提供することを課題とする。高い紫外線遮蔽機能を備えた生地であって、木綿100%の生地と外観と質感に大きな違いがなく、吸水速乾性についても木綿100%で成る生地に遜色ない生地を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)木綿で成る中空糸と、木綿又は化学繊維で成る異型断面糸(中空糸を含む)で構成される生地によって課題を解決する。
(2)前記化学繊維がナイロン、ポリエステル、ナイロンの再生繊維又はポリエステルの再生繊維であることを特徴とする(1)に記載の生地によって課題を解決する。
(3)木綿で成る中空糸の表糸と、化学繊維のフルダル繊維で成る異型断面糸(中空糸を含む)の裏糸で構成され、プレーティング編みで編まれた(1)に記載の編み生地によって課題を解決する。
(4)経糸を木綿で成る中空糸とし、緯糸を木綿で成る中空糸として構成される(1)に記載の織り生地によって課題を解決する。
(5)(3)に記載の生地を用いて構成される衣類であって、当該衣類はフルダル繊維が着衣者の肌側に向いて配置される衣類によって課題を解決する。
(6)(1)から(4)のいずれかに記載の生地を用いて構成される繊維製品によって課題を解決する。
【0006】
生地には織り生地と編み生地の二種類があるところ、経糸と緯糸のいずれにも異形断面氏(中空糸を含む、以下この明細書において同じ)を用いた織り生地、あるいは、表糸と裏糸のいずれにも異形断面糸を用いた編み生地、によって課題を解決する。生地を異形断面氏で構成することにより、空気層を多く備えた生地となり、外気温の肌への影響が緩和される。また、繊維の内部の細長い空洞により細い管が構成され、毛細現象がもたらされる。生地の周囲の水は毛細管現象により生地に吸収され、生地内を移動し、素早く外部に放出される。このため、表糸と裏糸のいずれにも中空糸を用いた生地は吸水速乾性が高い。
【0007】
ナイロン又はポリエステルで成る繊維自体はほとんど水を吸わない。このため、ナイロン又はポリエステルでなる中空糸を用いることにより、毛細管現象による吸水とあいまって、吸水速乾性はさらに高い。
【0008】
フルダル繊維を用いることにより、紫外線の遮蔽性が高まる。フルダル繊維とは、つや消しされ光沢のほとんどない繊維であるところ、光の透過や反射が妨げられ紫外線の遮蔽性が高まる。
【0009】
木綿で成る中空糸と化学繊維のフルダル繊維で成る中空糸とで構成される生地とは、経糸か緯糸のいずれかが木綿の中空糸で他のいずれかが化学繊維のフルダル繊維で成る中空糸で成る織り生地、または、表糸か裏糸のいずれかが木綿の中空糸で他のいずれかが化学繊維のフルダル繊維の中空糸で成る編み生地のことである。
【0010】
木綿で成る中空糸は、例えば、綿繊維の中に可溶性ポリエステルを加え、染色生産の過程でポリエステルを溶解して綿繊維のみを残して得る。なお、実際には全ての可溶性ポリエステルを取り除くことはできず、20%ほどの可溶性ポリエステルが残留する。
【0011】
アパレル業界において、製品の外観や質感は非常に重要な要素である。木綿100%で構成されていた生地、あるいは大半が木綿で構成されていた生地に、高い吸水速乾性や高い紫外線遮蔽性の機能を付加させるにあたり、生地を構成するすべてを化学繊維のフルダル繊維の中空糸とするのではなく、経糸か緯糸のいずれか、あるいは表糸か裏糸のいずれかのみを化学繊維のフルダル繊維の中空糸とし、木綿糸については中空の木綿糸とすることにより、外観や質感への影響を最小限にしつつ、高い吸水速乾性や高い紫外線遮蔽性の付加が実現できる。
【0012】
ナイロン又はポリエステルで成る繊維によりプレーティング編みで編成された場合、プレーティング面上に水分が保有されず、水分はプレーティング面上を移動する。この結果、生地への保水が減少し、生地の速乾性が上がる。プレーティング編みでは、二本の糸(糸Aと糸B)を、一箇所に設けられた二つの給糸口に各別にガイドさせてニッティングポイントへ給糸する。給糸された二本の糸は、生地の表裏両面に振り分けられ、プレーティング編みで編成された生地では、生地の一の面に糸Aが現れ、生地の他の面に糸Bが現れる。
【0013】
異型断面糸にあっては、隣り合う繊維間で繊維の長さ方向に延びる空洞ができ、その結果、中空繊維と同様の効果がみられる。すなわち、異型断面糸にあっては多くの空気層が形成され、空気の熱伝導率が低いことにより外気温の肌への影響が緩和される。また中空繊維と同様の原理により毛細管現象がもたらされ吸水速乾性が高まる。異型断面糸は中空糸よりも安価であり、中空糸に代えて異型断面糸を用いることは、製品のコスト削減につながる。
【0014】
木綿で成る中空糸と、化学繊維のフルダル繊維で成る中空糸とで構成される生地を用いて構成される衣類において、フルダル繊維を着衣者の肌側に向けて配置すると、肌と接する側に化学繊維のフルダル繊維で成る中空糸が配置され、衣類の外側に木綿で成る中空糸が現れる。この結果、衣類が木綿100%の生地と同様の外観を呈することを助成する。このことは、衣類に限らず、他の布製品にも当てはまる。外界の紫外線は、木綿に形成された空洞により一度屈折し、化学繊維のフルダル繊維により遮蔽されることに加えて、遮蔽を免れた紫外線は化学繊維のフルダル繊維が形成する空洞で二度目の屈折をし、肌面にはほとんど届かない。
【0015】
繊維製品には包帯や医療用のサポータ等、吸水速乾性や紫外線遮蔽性が求められるすべての繊維製品が含まれる。
【発明の効果】
【0016】
高い吸水速乾機能と高い紫外線遮蔽機能を備えた生地が得られる。高い紫外線遮蔽機能を備えた生地であって、木綿100%の生地と、外観と質感に大きな違いがなく、吸水速乾性についても木綿100%で成る生地と同様の生地を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1及び実施例2と比較例の各種試験データを示す表である。
図2】実施例1の熱線受光の体温度変化ついての試験データを示す表である。
図3図2の試験データを示すグラフである。
図4】実施例3と比較例の各種試験データを示す表である。
図5】実施例3の試料の拡散性残留水分率(ISO17617)のデータを示すグラフである。
図6】実施例3の試料の遮熱性試験(JISL1951)のデータを示す表である。
図7図6の試験データを示すグラフである。
図8】実施例3の試料の吸湿性試験のデータを示すグラフである。
図9】実施例1の生地と比較例の生地のそれぞれ表面の写真データである。
図10】実施例1の生地と比較例の生地のそれぞれ裏面を写真データである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[試験方法]
繊維製品の接触冷感性評価方法(JIS L 1927)による試験は、人が触れたときに、冷たく感じる機能を評価するために行う試験であり、次のとおりに行う。
1.室温と試料(測定台)を同じ温度に設定する。
2.室温の+10℃(ΔT=10℃)に加熱した測定部を試料に接触させる。
3.接触初期の熱源板の温度を測定し、熱流束を算出する。熱流束の極大値(W/cm2)をQ-MAXとする。
Q-MAX0.100以上を、接触冷感性良好と評価する場合が多い。
【0020】
繊維製品の吸水性試験方法(JIS L 1907)による試験は、汗や湿気を吸い取って素早く蒸発させる機能を評価するために行う試験であり、次のとおりに行う。
1.200mm×200mmの試験片を試験片保持枠に取り付ける。
2.試験片表面からビュレット先端の距離を10mmにする。
3.水を1滴滴下させ、試験片上に水滴が落ちた時から水滴が完全に試験片に吸収されるまでの時間を計測する。
編み物では、2秒以内を、吸水速乾性良好と評価する場合が多い。
【0021】
Textiles -- Determination of moisture drying rate(ISO 17617)による試験は、速乾性能についての試験であり、次のとおりに行う。
水を生地中央に0.3ml滴下し、水分の拡散乾燥にともなう、試験片重量を5分間隔で自動測定する。次の計算式による。
拡散性残留水分率(%)=任意の時間の水分重量(g)/測定開始時の水分重量(g)×100
60分後に拡散性残留水分率30%以下を、良好と評価する場合が多い。
【0022】
生地の遮熱性試験方法(JIS L 1951)による試験は、太陽光などから発生する放射熱を生地が遮ることによって、温度上昇を抑制する性能を評価する試験であって、次のとおりに行う。
試料背面に熱線受光体を非接触で配置し、試料を透過した日射の熱(放射熱)を熱線受光体に吸収させる。光を照射して30分後の試料を装着した熱線受光体と、裸の熱線受光体(ブランク)の上昇温度をそれぞれ測定し、次の計算式により遮熱率を求める。光源は人工太陽光源を用いる。
遮熱率S=[(ΔTb-ΔTs)/ΔTb]×100
ΔTs:試料の平均上昇温度(℃)
ΔTb:ブランクの平均上昇温度(℃)
【0023】
遮熱率区分記号では、S25は遮熱率25%以上35%未満、S35は遮熱率35%以上45%未満、S45は遮熱率45%以上55%未満、にそれぞれ相当する。
S35以上を遮熱性両行と評価する場合が多い。
【0024】
繊維製品の紫外線遮蔽評価方法(JIS L 1925)による試験は、紫外線の遮蔽性についての試験であり、次のとおりに行う。
分光光度計を使用し、波長290~400nmの紫外線に対する透過率を測定して、次の計算式により紫外線遮蔽率を求める。
紫外線遮蔽率(%)=100-紫外線に対する平均透過率(%)
紫外線遮蔽率90%以上を紫外線の遮蔽性良好と評価する場合が多い。
【0025】
紫外線防護係数(AS/NZS規格)は、日焼けを防止する能力を示す係数であり、Minimum(=格付け15)、Good(=格付け30)、Excellent(=格付け50又は50+)で表す。
【0026】
GB/T18830-2009は、UPF、UVAの透過率(T(UVA)、及びUVBの透過率(T(UVB))に関する中国における検査規格である。EN13758-1:2001+A1:2006は、UPF、UVAの透過率(T(UVA)、及びUVBの透過率(T(UVB))に関するヨーロッパにおける検査規格である。
【実施例0027】
[実施例1と比較例]
実施例1の生地は、表糸が木綿で成る中空糸、裏糸が中空のフルダルのナイロン長繊維で構成され、プレーティング編みで編まれた編み生地である。生地の色は白である。プレーティング編みすることにより、生地の表面にはほぼ表糸である木綿で成る中空糸のみが現れ、生地の裏面にはほぼ裏糸である中空のフルダルのナイロン長繊維のみが現れる。
比較例の生地は、木綿の天竺編みである。生地の色は白である。
【0028】
[試験データ]
実施例1及び比較例について、JIS L 1927、JIS L 1907、ISO 17617、JIS L 1951、JIS L 1925、に基づく各試験を行った。試験の結果(試験データ)は図1のとおりである。なお、JISとは日本工業規格である。ISOとは国際標準機構である。
【0029】
繊維製品の接触冷感性評価方法(JIS L 1927)による試験の結果、実施例1はQ-MAXが0.138であり、比較例はQ-MAXが0.121であった。実施例1は、接触冷感性が良好であり、かつ、比較例よりも少し接触冷感性が高いものの微差であることがわかった。
【0030】
繊維製品の吸水性試験方法(JIS L 1907)による試験の結果、実施例1は吸水速度が1秒未満であり、比較例は吸水速度が1秒未満であった。実施例1と比較例は同様であり、いずれも吸水速乾性が良好であることがわかった。
【0031】
Textiles -- Determination of moisture drying rate(ISO 17617)による試験の結果、拡散性残留水分率が、実施例1は32.6%であり、比較例では水分率が43.6%であった。比較例である木綿100%の平織りよりも10%以上、水分率を下げることができている。実施例1では、生地の外観が木綿100%の平織りとほとんど変わることがないにもかかわらず、拡散性残留水分率を10%以上下げることができ、この点は木綿100%の製品に代えて実施例1の生地を採用するに際しての利点である。
【0032】
生地の遮熱性試験方法(JIS L 1951)による試験の結果、実施例1では遮熱性が49%であり、比較例では遮熱性が45%であった。いずれも遮熱率区分記号がS45であり、遮熱性が良好である。遮熱性試験(JIS L 1951)の結果については、30分毎の温度データを図2に示し、30分毎の温度データをグラフにしたものを図3に示す。
【0033】
繊維製品の紫外線遮蔽評価方法(JIS L 1925)による試験の結果、実施例1は98.5%であり、比較例では82.9%であった。このように、紫外線遮蔽性試験では、実施例1では高い紫外線遮蔽性があることがわかる。外観と質感に関し木綿100%の生地と同様であるにもかかわらず、98.5%の紫外線遮蔽性を得られたことは、非常に好ましい。
【0034】
GB/T18830-2009とEN13758-1:2001+A1:2006に関し、これらは検査方法が同じであるため検査結果は同じであり次のとおりであった。UPFについては、実施例1はUPF50以上であり、比較例はUPF15未満であった。UVAの透過率(T(UVA))については、実施例1は1.64%であり、比較例は19.17%であった。UVBの透過率(T(UVB))については、実施例1は1.37%であり、比較例は9.87%であった。
【0035】
実施例1の生地と比較例の生地の外観に関し、両者を、図4及び図5を参照して比較する。図4に示す通り、実施例1の生地と比較例の生地の外観は、表面では差異がない。表面の外観に差異がない理由は、実施例1の生地ではプレーティング編みにより表面には木綿で成る中空糸が現れるためと考えられる。図5に示す通り、実施例1の生地と比較例の生地の外観は、裏面においても肉眼での差異はほとんど見られない。手で触れた際の触感に、実施例1の生地ではサラサラした触感があるのに対し、比較例ではそのような触感がない、という差異がある。このような差異がある理由は、実施例1ではプレーティング編みにより裏面に中空のフルダルのナイロン糸が現れるためと考えられる。
【0036】
[実施例2と比較例]
実施例2の生地は、表糸が木綿で成る中空糸、裏糸が十字断面の異型断面糸のフルダルのナイロン長繊維で構成され、プレーティング編みで編まれた編み生地である。生地の色は白である。プレーティング編みすることにより、生地の表面にはほぼ表糸である木綿で成る中空糸のみが現れ、生地の裏面にはほぼ裏糸である十字断面の異型断面糸のフルダルのナイロン長繊維のみが現れる。
比較例の生地は、木綿の天竺編みである。生地の色は白である。
【0037】
[試験データ]
実施例2及び比較例について、JIS L 1927、JIS L 1907、ISO 17617、JIS L 1951、JIS L 1925、に基づく各試験を行った。試験の結果(試験データ)は図1のとおりである。なお、JISとは日本工業規格である。ISOとは国際標準機構である。
【0038】
繊維製品の接触冷感性評価方法(JIS L 1927)による試験の結果、実施例2はQ-MAXが0.123であり、比較例はQ-MAXが0.121であった。実施例2は、接触冷感性が良好であり、かつ、比較例よりも少し接触冷感性が高いものの微差であることがわかった。
【0039】
繊維製品の吸水性試験方法(JIS L 1907)による試験の結果、実施例2と比較例はいずれも吸水速度が1秒未満であった。実施例1と比較例は同様であり、いずれも吸水速乾性が良好であることがわかった。
【0040】
Textiles -- Determination of moisture drying rate(ISO 17617)による試験の結果、拡散性残留水分率が、実施例2は17.6%であり、比較例では水分率が43.6%であった。比較例である木綿100%の平織りよりも26%、水分率を下げることができている。実施例2では、生地の外観が木綿100%の平織りとほとんど変わることがないにもかかわらず、拡散性残留水分率を26%下げることができ、この点は木綿100%の製品に代えて実施例2の生地を採用するに際しての利点である。
【0041】
生地の遮熱性試験方法(JIS L 1951)による試験の結果、実施例2では遮熱性が49%であり、比較例では遮熱性が45%であった。いずれも遮熱率区分記号がS45であり、遮熱性が良好である。
【0042】
繊維製品の紫外線遮蔽評価方法(JIS L 1925)による試験の結果、実施例2は98.4%であり、比較例では82.9%であった。このように、紫外線遮蔽性試験では、実施例2では高い紫外線遮蔽性があることがわかる。外観と質感に関し木綿100%の生地と同様であるにもかかわらず、98.4%の紫外線遮蔽性を得られたことは、非常に好ましい。
【0043】
UPFについては、実施例2はUPF50+であり、比較例はUPF15未満であった。
【0044】
[実施例3と比較例]
実施例3の生地は、表糸(経糸)が木綿で成る中空糸、裏糸(緯糸)が木綿で成る中空糸で構成され、織り生地である。
【0045】
比較例の生地は、表糸(経糸)が木綿糸、裏糸(緯糸)が木綿糸で構成された織り生地である。比較例の生地では、表糸も裏糸も中空糸ではない。生地の色は白である。
【0046】
[試験データ]
実施例3及び比較例について、JIS L 1927、JIS L 1907、ISO 17617、JIS L 1951、JIS L 1925、に基づく各試験を行った。実施例3については吸湿発熱、保湿性(ISL1096A)、保温性(Clo値)、短期吸放湿性も行った。試験の結果(試験データ)は図4のとおりである。
【0047】
繊維製品の接触冷感性評価方法(JIS L 1927)による試験の結果、実施例3はQ-MAX0.162であり、比較例はQ-MAX0.092であった。実施例3は、接触冷感性が良好であることがわかった。
【0048】
繊維製品の吸水性試験方法(JIS L 1907)による試験の結果、実施例3は吸水速度が4秒未満であり、比較例は吸水速度が53秒未満であった。実施例3と比較例はいずれも吸水速乾性が良好であることがわかった。
【0049】
Textiles -- Determination of moisture drying rate(ISO 17617)による試験の結果、拡散性残留水分率が、実施例3は13.3%であり、比較例では水分率が55.5%であった。比較例である木綿100%の織物よりも40%以上、水分率を下げることができている。実施例3では、生地の外観が木綿100%の織物とほとんど変わることがないにもかかわらず、拡散性残留水分率を40%下げることができ、この点は木綿100%の製品に代えて実施例3の生地を採用するに際しての利点である。
【0050】
実施例3の拡散性残留水分率について、原布(未洗濯のもの)と、洗濯10回後のものの、10分毎の拡散性残留水分率の値を図6に示す。
【0051】
生地の遮熱性試験方法(JIS L 1951)による試験の結果、実施例3では遮熱性が42%であり、比較例では遮熱性が49%であった。実施例3は遮熱率区分記号がS35であり、比較例では、遮熱率区分記号がS45であった。実施例3は遮熱性が良好である。遮熱性試験(JIS L 1951)の結果については、30分毎の温度データを図7に示し、30分毎の温度データをグラフにしたものを図8に示す。
【0052】
繊維製品の紫外線遮蔽評価方法(JIS L 1925)による試験の結果、実施例3は99.9%以上であった。実施例3では高い紫外線遮蔽性があることがわかる。外観と質感に関し木綿100%の織物と同様であるにもかかわらず、99.9%の紫外線遮蔽性を得られたことは、非常に好ましい。
【0053】
実施例3では、吸湿発熱はΔTが2.7℃から3.0℃であり、保湿性(ISL1096A)は14.0%であり、保温性(Clo値)は0.10であり、短期吸放湿性は吸湿量が72.6mg/gであり、放湿率が87.1%であった。吸湿量に関し二時間の間の変化を図9に示す。
【0054】
実施例1の生地と比較例の生地の外観に関し、両者を、図9及び図10を参照して比較する。図9に示す通り、実施例1の生地と比較例の生地の外観は、表面では差異がない。表面の外観に差異がない理由は、実施例1の生地ではプレーティング編みにより表面には木綿で成る中空糸が現れるためと考えられる。図10に示す通り、実施例1の生地と比較例の生地の外観は、裏面においても肉眼での差異はほとんど見られない。手で触れた際の触感に、実施例1の生地ではサラサラした触感があるのに対し、比較例ではそのような触感がない、という差異がある。このような差異がある理由は、実施例1ではプレーティング編みにより裏面に中空のフルダルのナイロン糸が現れるためと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
繊維製品の吸水性試験方法(JIS L 1907)による試験は、汗や湿気を吸い取って素早く蒸発させる機能を評価するために行う試験であり、次のとおりに行う。
1.200mm×200mmの試験片を試験片保持枠に取り付ける。
2.試験片表面からビュレット先端の距離を10mmにする。
3.水を1滴滴下させ、試験片上に水滴が落ちた時から水滴が完全に試験片に吸収されるまでの時間を計測する。
編み物では、2秒以内を、吸水性良好と評価する場合が多い。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
実施例1の生地と比較例の生地の外観に関し、両者を、図9及び図10を参照して比較する。図9に示す通り、実施例1の生地と比較例の生地の外観は、表面では差異がない。表面の外観に差異がない理由は、実施例1の生地ではプレーティング編みにより表面には木綿で成る中空糸が現れるためと考えられる。図10に示す通り、実施例1の生地と比較例の生地の外観は、裏面においても肉眼での差異はほとんど見られない。手で触れた際の触感に、実施例1の生地ではサラサラした触感があるのに対し、比較例ではそのような触感がない、という差異がある。このような差異がある理由は、実施例1ではプレーティング編みにより裏面に中空のフルダルのナイロン糸が現れるためと考えられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
繊維製品の吸水性試験方法(JIS L 1907)による試験の結果、実施例2と比較例はいずれも吸水速度が1秒未満であった。実施例1と比較例は同様であり、いずれも吸水性が良好であることがわかった。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
繊維製品の吸水性試験方法(JIS L 1907)による試験の結果、実施例3は吸水速度が4秒未満であり、比較例は吸水速度が53秒未満であった。実施例3と比較例はいずれも吸水性が良好であることがわかった。