(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008542
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電子黒板システム
(51)【国際特許分類】
B43L 1/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B43L1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110497
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】523330721
【氏名又は名称】一般社団法人日本未来黒板研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(72)【発明者】
【氏名】坂和 勝紀
(57)【要約】
【課題】比較的低コストにて設置でき、多くの人が手馴れているスマホ操作にて手軽に使用できるために、教師にも抵抗なく受け入れられ、使用時に機器に衝撃が加わることがないために、衝撃による機器の故障のおそれがない電子黒板システムを提供することを課題とする。
【解決手段】正面壁1に設置される既設の又は新設の筆記用ボード2と、正面壁1の筆記用ボード2の横に据え付けられる電子黒板3とから成り、筆記用ボード2の上辺中央部にプロジェクター4が配備され、プロジェクター4と電子黒板3を単一の携帯端末5で操作可能にした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面壁に設置される既存の又は新設の筆記用ボードと、前記正面壁の前記筆記ボードの横に配置される電子黒板とから成り、
前記筆記用ボードの上辺中央部にプロジェクターが配備され、前記プロジェクターと前記電子黒板を単一の携帯端末で操作可能にしたことを特徴とする電子黒板システム。
【請求項2】
前記プロジェクターは、電子黒板機能を搭載した超短焦点壁掛け型のプロジェクターである、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項3】
前記携帯端末は、スマートフォン又はタブレットである、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項4】
前記プロジェクターは、前記携帯端末の画面ミラーリングが可能である、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項5】
前記電子黒板は、前記携帯端末の画面ミラーリングが可能である、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項6】
前記プロジェクターにキャスト機能とミラーリング機能とを付与する小型デバイスが接続され、前記小型デバイスと前記携帯端末とが無線接続される、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項7】
前記電子黒板は、水平方向に揺動させての角度調整が可能に設置される、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項8】
前記電子黒板は、前記正面壁に固定設置される、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項9】
前記筆記用ボードは、上下動可能に設置される、請求項1に記載の電子黒板システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子黒板システムに関するものであり、より詳細には、令和元年に発表されたGIGAスクール構想の実現に寄与し得る電子黒板システムであって、特に、電子黒板の操作に不慣れな人であっても簡単な操作で使用することができる電子黒板システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
令和元年にGIGAスクール構想の実現パッケージが発表されたことを受けて、各学校において校内LANが整備され、学校ICT導入・利活用が急速に進んでいる。このGIGAスクール構想の骨子は、児童・生徒1人1人に個別化され、創造性を育む教育ICT環境の構築である。具体的には、児童・生徒1人1人に学習者用端末(タブレット)が与えられ、各教室に配備される電子黒板を用いての授業ということになる。
【0003】
しかるに、各教室には黒板が設置されていて、古くから学校における授業は黒板への板書を基本に進められてきており、児童・生徒、教師共に馴染のある授業法であり、たとえICT教育が進んだとしても捨てがたいものである。一方、教室ごとに従来の黒板等の他に電子黒板を用意することは、予算の面及び設置スペースの面で限度がある。特に、黒板に代わるような大型の電子黒板を導入することは、極めて困難なことである。
【0004】
そこで、既存の黒板やホワイトボードを利用し、ボード上部にプロジェクターを配設し、ボードに映写することでボードを電子黒板化(インタラクティブ化)することが考えられている。そしてその場合、映写範囲が狭いために、プロジェクターを左右に移動可能にし、映写位置が変えられるようにすることが考えられている(特開2021-128299号公報、特開2018-189925号公報)。また、プロジェクターによる映写の場合、電子黒板に比較して画像が不鮮明であるところから、電子黒板を黒板の前側に設置して、黒板への板書の邪魔にならないように左右にスライド可能にするタイプの提案もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-128299号公報
【特許文献2】特開2018-189925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来提案されている上記システムのうち、プロジェクターによって、既存の黒板等を電子黒板化する方法の場合は、画像が不鮮明であるという問題があり、また、左右に移動させるタイプの場合は移動端においてプロジェクターに多少なりとも衝撃が加わるために故障の原因となり、更に、近時急速に性能が向上している電子黒板の利点を生かせないという不利な点がある。また、電子黒板を黒板の前側に設置して左右にスライド可能にするタイプの場合も、重量のある電子黒板をスライド可能に支持する機構の設置にコストがかかり、更にこの場合も、移動端において衝撃が加わることにより、電子黒板が故障しやすいという問題もある。
【0007】
本発明は、上記従来のシステムにおける問題に鑑みてなされたもので、比較的低コストにて設置でき、多くの人が手馴れているスマホ操作にて手軽に使用できるために、教師にも抵抗なく受け入れられ、使用時に機器に衝撃が加わることがないために、衝撃による機器の故障のおそれがない電子黒板システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、正面壁に設置される既設の又は新設の筆記用ボードと、前記正面壁の前記筆記用ボードの横に据え付けられる電子黒板とから成り、前記筆記用ボードの上辺中央部にプロジェクターが配備され、前記プロジェクターと前記電子黒板を単一の携帯端末で操作可能にしたことを特徴とする電子黒板システムである。
【0009】
一実施形態においては、前記プロジェクターは、電子黒板機能を搭載した超短焦点壁掛け型のプロジェクターである。また、前記携帯端末は、スマートフォン又はタブレットである。
【0010】
一実施形態においては、前記プロジェクターは、前記携帯端末の画面ミラーリングが可能である。また、前記電子黒板は、前記携帯端末の画面ミラーリングが可能である。
【0011】
一実施形態においては、前記プロジェクターにキャスト機能とミラーリング機能とを付与する小型デバイスが接続され、前記小型デバイスと前記携帯端末とが無線接続される。
【0012】
前記電子黒板は、水平方向に揺動させての角度調整が可能に設置され、また、前記電子黒板は、前記正面壁に固定設置される場合がある。前記筆記用ボードは、上下動可能に設置される場合がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のとおりであって、各教室に比較的低コストにて設置することができ、多くの人が手馴れているスマホ操作にて手軽に使用できるので、教師にも抵抗なく受け入れられ、使用時に機器に衝撃が加わることがないために、衝撃による機器の故障のおそれがない電子黒板システムを提供し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る電子黒板システムの構成を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る電子黒板システムを実施するための形態につき、添付図面を参照して説明する。本発明に係る電子黒板システムは、主に学校の教室の正面壁1に設置されるものであって、既設の又は新設の筆記用ボード2と、正面壁1の筆記用ボード2の横に据え付けられる電子黒板3とから成り、筆記用ボード2の上辺中央部にプロジェクター4が配備され、プロジェクター4と電子黒板3を単一の携帯端末5で操作可能にしたことを特徴とするものである。
【0016】
筆記用ボード2は、既設の黒板、あるいは、ホワイトボードをそのまま利用することができるが、筆記用ボード2は筆記用途の他にプロジェクター4による投写スクリーンとなるものであるので、必要に応じて、表面材の張替えや塗り替えを行う。筆記用ボード2は、通例、壁固定式であるが、上下動可能に構成されることもある。上下動可能にするための構成は、既存の周知の構成を採用することができる。
【0017】
プロジェクター4は電子黒板機能を搭載した、好ましくは、超短焦点壁掛け型のプロジェクターであり、筆記用ボード2の上辺中央部に、あるいは、筆記用ボード2の中央部に向くようにして正面壁1に、取り付けアームを介して取り付けられる。プロジェクター4は、携帯端末5の画面ミラーリングが可能なものとされる。プロジェクター4としてこのミラーリング機能を搭載したものを用いる場合は、そのプロジェクターメーカーが提供する専用アプリを携帯端末5にインストールする。また、そのような機能を搭載していないプロジェクター4を用いる場合は、プロジェクター4に、キャスト機能とミラーリング機能とを有するデバイスであるストリーミングデバイスをHDMI(登録商標)接続し、これに携帯端末5をWi-Fi接続する。
【0018】
ストリーミングデバイスとしては、広く出回っていて、5千円以下で入手できるグーグル社のクロームキャストを用いることが推奨される。なお、ここにいうキャスト機能とは、携帯端末5からストリーミングデバイスに転送される視聴中の動画を、プロジェクター4を介して筆記用ボード2に、より大きく投写させる機能である。また、ミラーリング機能は、携帯端末5に保存されているコンテンツ画面を、プロジェクター4を介してそのまま筆記用ボード2に投写して画面共有可能にする機能である。
【0019】
電子黒板3は、市販されている任意のものを用いることができる。近時、電子黒板3は急速に進化しており、画面が鮮明なだけでなく、種々の操作が簡単で便利な機能を多く搭載しており、携帯端末5やPCと無線で接続して画面共有し得る機能を備えたものも市販されている。ここで用いる電子黒板としては、4K対応で80インチ以上のものが好適である。また、左右約30度揺動しての角度調整が可能なスイング式のものであることが望ましい。本発明に係るシステムに用いる電子黒板3としては、すべての児童に見やすくするために、このスイング式のものを採用することが推奨される。電子黒板3は、筆記用ボード2の横にスペースがある場合は、壁面固定により設置され、十分なスペースがない場合は、専用スタンドを用いて設置される。
【0020】
本発明に係る電子黒板システムを教育現場において実施する場合は、携帯端末5において教材等のコンテンツを作成、編集して保存しておく。教材は、市販されている電子教材や、無償で提供されている教材をインストールしてそのまま利用することができ、また、それを教師が独自にカスタマイズしたものを用いることもできる。更に、テレビやYouTube(登録商標)等の画面を利用することもできる。使用教材の作成、編集は、別途PCを用いて行い、携帯端末5に保存しておくこともできる。
【0021】
教師は、筆記用ボード2から離れた位置において携帯端末5を手元操作(片手での操作が可能)して、その表示部に選択表示させたコンテンツ画面を、そのままプロジェクター4を介して筆記用ボード2にミラーリング投写させることができる。最近では、老若男女を問わず、多くの人がスマートフォン3の操作に慣れているので、そのための操作は決して難しいものではない。プロジェクター4からは、筆記用ボード2のサイズに対応して大きく投影することができるので、大画面で後ろの席の生徒もしっかり見ることができる。
【0022】
例えば、筆記用ボード2に五線紙等のテンプレート映像を投写し、その映像の上からチョークで書き込みすることができる。また、授業内容に応じて投射位置を左・中央・右にスライドさせたり、左右に2画面投射させたりすることもできるので、授業展開が非常にスムーズになる。例えば、左側に電子教科書の画面、右側に生徒たちの回答をサムネイル投影することも可能で、その比較表示により、様々な考えを確認でき、新たな気付きを促したり、新しいアイディアの創出に繋がることが期待できる。更に、携帯端末5でリアルタイムに撮影した動画や写真を、その場で直ちに投影することができ、しかも、その画面に電子ペンで書き込んでの保存も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は上記のとおりであって、各教室に比較的低コストにて設置することができ、多くの人が手馴れているスマホ操作にて手軽に使用できるので、教師にも抵抗なく受け入れられ、使用時に機器に衝撃が加わることがないために、衝撃による機器の故障のおそれがない電子黒板システムを提供し得る効果があり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0024】
1 正面壁
2 筆記用ボード
3 電子黒板
4 プロジェクター
5 携帯端末